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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 B42D |
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管理番号 | 1271738 |
審判番号 | 不服2011-22701 |
総通号数 | 161 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-21 |
確定日 | 2013-03-22 |
事件の表示 | 特願2010- 90691「偉人カレンダー」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 1日出願公開、特開2011-240489〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成22年4月9日に出願したものであって、平成23年7月6日に手続補正がなされ、同年7月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2 本願発明 本願請求項1に係る発明は、平成23年7月6日になされた手続補正後の特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)を分節し、(A)ないし(C)を付して記載すると、次のとおりである。 「(A)西暦年度、見出し、偉人図又は写真及び前記偉人図又は写真の近傍に当該偉人の読み方を併記した偉人名記載欄並びに読み方を示した当該偉人の偉人伝要約欄を有する1月から12月までのカレンダーに使用する偉人表示欄を表記した表紙と、 (B)上部には当該偉人の読み方を併記した名記載欄と偉人図又は写真、当該偉人に縁のある写真又は絵図表示欄、偉人の出身地を示した地図、偉人の生存期間記載欄を設け、中央部には代表的な業績を読み方とともに記載した偉人伝要約欄、偉人の生涯、業績、エピソードを読み方とともに記載した偉人伝概説欄を設け、下部には年度欄、月表示欄、曜日欄、日付欄を設けたカレンダー部と、 (C)からなることを特徴とする偉人カレンダー。」 3 特許法第29条柱書きについて (1)特許法は、「発明」について、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義し(特許法第2条第1項)、また、「産業上利用することができる発明」に対して、所定の要件を充足した場合に、特許を受けることができると規定する(同法第29条第1項)。 したがって、たとえ技術的思想の創作であったとしても、その思想が、専ら、人間の精神的活動を介在させた原理や法則、社会科学上の原理や法則、人為的な取り決めを利用したものである場合には特許を受けることができない。この点は、技術的思想の創作中に、自然法則を利用した部分が全く含まれない場合はいうまでもないが、仮に、自然法則を利用した部分が含まれていても、ごく些細な部分のみに含まれているだけで、技術的な意味を持たないような場合も、同様に、特許を受けることができないというべきである。 (2)そこで、本願発明について検討する。 ア 上記本願発明の(A)は、カレンダーの「表紙」に表記される内容を「西暦年度、見出し、偉人図又は写真及び前記偉人図又は写真の近傍に当該偉人の読み方を併記した偉人名記載欄並びに読み方を示した当該偉人の偉人伝要約欄を有する1月から12月までのカレンダーに使用する偉人表示欄」と特定するものである。 イ 上記本願発明の(B)は、カレンダーの「カレンダー部」の内容を「上部には当該偉人の読み方を併記した名記載欄と偉人図又は写真、当該偉人に縁のある写真又は絵図表示欄、偉人の出身地を示した地図、偉人の生存期間記載欄を設け、中央部には代表的な業績を読み方とともに記載した偉人伝要約欄、偉人の生涯、業績、エピソードを読み方とともに記載した偉人伝概説欄を設け、下部には年度欄、月表示欄、曜日欄、日付欄を設けた」と特定するものである。 ウ 上記本願発明の(C)は、カレンダーが(A)と(B)からなることを特徴とする「偉人カレンダー」であることを特定するものである。 (3)本願明細書に従来例として挙げられている特開平8-183270号公報に記載されているようなカレンダーが公知である(後記4(1)参照。)ところ、本願発明は「表紙」に表記される内容が「西暦年度、見出し、偉人図又は写真及び前記偉人図又は写真の近傍に当該偉人の読み方を併記した偉人名記載欄並びに読み方を示した当該偉人の偉人伝要約欄を有する1月から12月までのカレンダーに使用する偉人表示欄」であること、「カレンダー部」の内容が「上部には当該偉人の読み方を併記した名記載欄と偉人図又は写真、当該偉人に縁のある写真又は絵図表示欄、偉人の出身地を示した地図、偉人の生存期間記載欄を設け、中央部には代表的な業績を読み方とともに記載した偉人伝要約欄、偉人の生涯、業績、エピソードを読み方とともに記載した偉人伝概説欄を設け、下部には年度欄、月表示欄、曜日欄、日付欄を設けた」ものであることに創作的特徴があり、そのような情報内容を有するカレンダーを「偉人カレンダー」と称しているものといわざるを得ない。 (4)そうすると、本願発明の創作的特徴は「表紙」及び「カレンダー部」の情報内容そのものといえる。即ち、本願発明の創作的特徴は、情報の単なる提示にすぎず、情報の内容をどのようにするかは、人間の精神活動そのものであって、上記情報の提示に技術的特徴を見いだすことができず、自然法則を利用した創作ということができない。 (5)請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」「(1)拒絶の理由1について」「2)審査基準との対比」において、以下のように主張している。 「本願発明は、『提示される情報の内容に特徴を有するものであって、情報の提示を主たる目的とする』ものであったとしても、それら情報をカレンダーを媒体にいかにカレンダーを目視する人に対してその情報を記憶させるか工夫されたものであって、情報の配置その他に技術的思想が介在していること、技術的特徴が存在することは明白である。 即ち、本願発明は、偉人情報等の集合、情報等の配置(手段・方法)に特徴があり、審査基準が情報の単なる提示にあたらないとするケースに該当する。」 しかしながら、本願請求項1の(A)には「前記偉人図又は写真の近傍に当該偉人の読み方を併記した偉人名記載欄並びに読み方を示した当該偉人の偉人伝要約欄」と記載され、「偉人図又は写真」と「偉人名記載欄」並びに「偉人伝要約欄」が近傍に位置していることが特定されているが、それ以外の記載は、カレンダーを目視する人に対して提示する情報の内容にすぎず、また(B)には「上部」、「中央部」及び「下部」それぞれに設けられる情報の内容が特定されているにすぎず、(A)及び(B)いずれもカレンダーを目視する人に対して提示する情報の内容と漠然とした位置を特定しているにすぎず、技術的特徴を有していない。 (6)以上のとおり、本願発明は、特許法第2条第1項にいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。 4 進歩性について 上記3で検討したように、本願発明は、特許法にいう発明とはいえないものであるが、本願発明が特許法上の発明であるとの仮定に立った上で、進歩性についても検討する。 (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平8-183270号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載が図とともにある。 ア 【請求項1】 上部には西暦年度と見出しを表記し、中央部には月欄・番号短歌欄及び作者名欄を有する1月から12月までのカレンダーに使用する各月使用短歌絵図を表記し、下部には解説欄を設けるとともに百人一首と表記した表紙と、上部には短歌絵図欄と番号・短歌欄と解説欄を設け、前記解説欄の下方左部には当月の月欄・英語欄及び日付曜日欄を設けるとともに、前記解説欄の下方右部には次月の月欄・英語欄及び日付曜日欄を設けた各月カレンダーとからなることを特徴とする百人一首カレンダー。 イ 【0002】 【従来の技術】従来のカレンダーは、主として年月日及び曜日が見易いカレンダーであれば、それで充分であった。 【0003】しかしながら、年月日及び曜日のみの表示だけでは、少なくとも、毎日一度は見るカレンダーでは教養を養う機能を有するカレンダーは存在しなかった。特に、日本古来の短歌(百人一首)を見て覚えるためのカレンダーは全く存在しなかった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、毎日1度は見るカレンダ-により、日本古来の文化である短歌、特に、百人一首を見て自然に覚えられるとともに、当該月が経過して不要になったカレンダ-中に描かれている絵図及び短歌を切り取り、額に入れ保存できるカレンダ-を提供することを目的とするものである。 ウ 【図2】から、上下方向中央より若干下方に横切取線18を設け、前記横切取線18より上方に短歌絵図欄6dと番号・短歌欄6bと解説欄6gを設け、横切取線18より下方に年度欄14d、月欄14a、15a、曜日欄14b、15b及び日付欄14c、15cを設けた各月カレンダーが看取できる。 エ 上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「上部には西暦年度と見出しを表記し、中央部には月欄・番号短歌欄及び作者名欄を有する1月から12月までのカレンダーに使用する各月使用短歌絵図を表記し、下部には解説欄を設けるとともに百人一首と表記した表紙と、 上下方向中央より若干下方に横切取線18を設け、前記横切取線18より上方に短歌絵図欄6dと番号・短歌欄6bと解説欄6gを設け、横切取線18より下方に年度欄14d、月欄14a、15a、曜日欄14b、15b及び日付欄14c、15cを設けた各月カレンダーと、 からなる百人一首カレンダー。」(以下「引用発明」という。) (2)対比 ア 本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「西暦年度」、「『見出し』或いは『百人一首』との表記」、「表紙」、「年度欄14d」、「月欄14a、15a」、「曜日欄14b、15b」、「日付欄14c、15c」及び「各月カレンダー」は、それぞれ本願発明の「西暦年度」、「見出し」、「表紙」、「年度欄」、「月表示欄」、「曜日欄」、「日付欄」及び「カレンダー部」に相当する。 イ 引用発明の「表紙」は「中央部には月欄・番号短歌欄及び作者名欄を有する1月から12月までのカレンダーに使用する各月使用短歌絵図を表記し、下部には解説欄を設け」たものであるから、本願発明の「偉人図又は写真及び前記偉人図又は写真の近傍に当該偉人の読み方を併記した偉人名記載欄並びに読み方を示した当該偉人の偉人伝要約欄を有する1月から12月までのカレンダーに使用する偉人表示欄を表記した表紙」とは「1月から12月までのカレンダーに使用する情報表示欄を表記した表紙」の点で共通する。 ウ 引用発明の「各月カレンダー」(カレンダー部)は「上下方向中央より若干下方に横切取線18を設け、前記横切取線18より上方に短歌絵図欄6dと番号・短歌欄6bと解説欄6gを設け、横切取線18より下方に年度欄14d、月欄14a、15a、曜日欄14b、15b及び日付欄14c、15cを設けた」ものであるから、本願発明の「上部には当該偉人の読み方を併記した名記載欄と偉人図又は写真、当該偉人に縁のある写真又は絵図表示欄、偉人の出身地を示した地図、偉人の生存期間記載欄を設け、中央部には代表的な業績を読み方とともに記載した偉人伝要約欄、偉人の生涯、業績、エピソードを読み方とともに記載した偉人伝概説欄を設け、下部には年度欄、月表示欄、曜日欄、日付欄を設けたカレンダー部」とは「上部及び中央部には図又は写真とそれに関連した情報を記載した情報部を設け、下部には年度欄、月表示欄、曜日欄、日付欄を設けたカレンダー部」の点で共通する。 エ 引用発明の「百人一首カレンダー」と、本願発明の「偉人カレンダー」とは「情報を有するカレンダー」の点で共通する。 オ 上記アないしエから、本願発明と引用発明は、 「西暦年度、見出し、1月から12月までのカレンダーに使用する情報表示欄を表記した表紙と、 上部及び中央部には図又は写真とそれに関連した情報を記載した情報部を設け、下部には年度欄、月表示欄、曜日欄、日付欄を設けたカレンダー部と、 からなる情報を有するカレンダー。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]表紙に関し、本願発明は「偉人図又は写真及び前記偉人図又は写真の近傍に当該偉人の読み方を併記した偉人名記載欄並びに読み方を示した当該偉人の偉人伝要約欄を有する1月から12月までのカレンダーに使用する偉人表示欄を表記した」と特定されているのに対し、引用発明は、1月から12月までのカレンダーに使用する情報を表記するものの、本願発明のようなものではない点。 [相違点2]カレンダー部の情報部に関し、本願発明は「上部には当該偉人の読み方を併記した名記載欄と偉人図又は写真、当該偉人に縁のある写真又は絵図表示欄、偉人の出身地を示した地図、偉人の生存期間記載欄を設け、中央部には代表的な業績を読み方とともに記載した偉人伝要約欄、偉人の生涯、業績、エピソードを読み方とともに記載した偉人伝概説欄を設け」と特定されているのに対し、引用発明は、短歌絵図欄6dと番号・短歌欄6bと解説欄6gが設けられているものの、本願発明のようなものではない点。 [相違点3]カレンダーに関し、本願発明は「偉人カレンダー」と特定されているのに対し、引用発明は、百人一首カレンダーである点。 (3)判断 ア 上記相違点2について検討する。 (ア)刊行物1の上記イに記載のように、引用発明は、毎日1度は見るカレンダーに百人一首に関連する絵図等の情報を記載し、百人一首を自然に覚え教養を養うことを目的としているものである。 刊行物1には、養うべき教養として短歌、特に、百人一首のみが挙げられているが、養うべき教養は、短歌に限らず多種存在し、偉人に関する教養もその一種である。 (イ)また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された登録実用新案第3099048号公報(以下「刊行物2」という。)には、カレンダーに偉人に関する情報を記載することが記載されている。 (ウ)偉人に関する教養も養うべき一種であり、刊行物2には、カレンダーに偉人に関する情報を記載することが記載されているから、引用発明において、百人一首に関する情報に代え、偉人に関する情報をカレンダー部に設け、カレンダーを見る者に自然に偉人に関する情報を覚えられるようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。その際、カレンダーを見る者に覚えてもらいたい情報をどのようなものとするか、また、その情報をどの位置に配置するかは設計事項にすぎない。 よって、引用発明において、本願発明の上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことである。 イ 上記相違点1について検討する。 (ア)引用発明は、表紙に「1月から12月までのカレンダーに使用する各月使用短歌絵図を表記」するものである。 (イ)上記アで検討したように、カレンダー部に偉人に関する情報を設けることが想到容易であるから、カレンダー部の情報に合わせ、表紙にも月から12月までのカレンダーに使用する偉人表示欄を表記することは当業者が容易になし得る程度のことであり、その際、偉人表示欄に表記される情報をどのようなものとするか、どのように配置するかは設計事項にすぎない。 よって、引用発明において、本願発明の上記相違点1に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことである。 ウ 上記相違点3について検討する。 本願発明の上記相違点1及び相違点2については、上記ア及びイで既に検討しており、本願発明の上記相違点1及び2に係る構成を有する引用発明を「偉人カレンダー」と称することができる。 エ 以上のとおりであるから、本願発明の相違点1ないし3に係る構成は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2記載の事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も当業者が予測できる範囲のものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、産業上利用することができる発明であるとは認められないから、特許法第29条柱書きに該当せず、仮に、本願発明が特許法上の発明であるとしても刊行物1に記載された発明及び刊行物2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-02 |
結審通知日 | 2011-12-05 |
審決日 | 2011-12-16 |
出願番号 | 特願2010-90691(P2010-90691) |
審決分類 |
P
1
8・
14-
Z
(B42D)
P 1 8・ 121- Z (B42D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮本 昭彦 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 小林 英司 |
発明の名称 | 偉人カレンダー |
代理人 | 中川 邦雄 |