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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1271782
審判番号 不服2011-14505  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-05 
確定日 2013-03-21 
事件の表示 特願2006- 20751「移動型放送受信装置及び視聴情報送信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月 9日出願公開、特開2007-202031〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年1月30日の出願であって、平成22年10月4日付で拒絶の理由が通知され、平成22年12月13日付で意見書・手続補正書が提出され、平成22年12月27日付で拒絶の理由が通知され、平成23年3月14日付で意見書・手続補正書が提出されたものの、平成23年3月30日付で拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成23年7月5日付で請求された拒絶査定不服審判であって、その審判請求と同時に手続補正書が提出され、当審において、前置報告書の内容について審判請求人の意見を求めるために、平成24年4月13日付で審尋がなされ、平成24年6月18日で回答書が提出され、平成24年7月18日付で拒絶の理由が通知され、平成24年9月24日付で意見書・手続補正書が提出され、平成24年10月11日付で最後の拒絶理由通知として拒絶の理由が通知され、平成24年12月17日付で意見書・手続補正書が提出されている。

第2.平成24年12月17日付手続補正書による手続補正に対する補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年12月17日に提出された手続補正書による補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成24年12月17日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の明細書の特許請求の範囲の請求項1,2を補正して、補正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1,2とするとともに、明細書段落【0011】【0018】の補正を行うものであり、補正前後の請求項1,2は各々次のとおりである。

[補正前の特許請求の範囲(平成24年9月24日付手続補正書で補正されたもの)]
「【請求項1】
ネットワークを介した情報の送受信を行う送受信部と、
放送波を受信する放送受信部と、
放送番組の視聴情報が記録される記録部と、
ネットワーク上のサーバへ送信するために、放送番組の視聴履歴と放送波に含まれるエリアコードとを視聴情報として関連付け、当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする移動型放送受信装置。
【請求項2】
放送波を受信し、ネットワーク上のサーバへ送信するために、放送番組の視聴履歴と該視聴を行った放送波に含まれるエリアコードとを視聴情報として関連付け、当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該番組の視聴情報をネットワーク上のサーバへ送信することを特徴とする視聴情報送信方法。」

[補正後の特許請求の範囲]
「【請求項1】
ネットワークを介した情報の送受信を行う送受信部と、
放送波を受信する放送受信部と、
放送番組の視聴情報が記録される記録部と、
ネットワーク上のサーバへ送信するために、放送番組の視聴履歴と放送波に含まれるエリアコードとを視聴情報として関連付け、当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする移動型放送受信装置。
【請求項2】
放送波を受信し、ネットワーク上のサーバへ送信するために、放送番組の視聴履歴と該視聴を行った放送波に含まれるエリアコードとを視聴情報として関連付け、当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報をネットワーク上のサーバへ送信することを特徴とする視聴情報送信方法。」

すなわち、本件補正は、請求項1,2に係る発明を特定するために必要な事項である「制御部」が「前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する」「視聴情報」について「受信した際に視聴中である番組に関する」という限定を付加するものである。

2.新規事項についての判断
ここで、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には以下の記載がある。

「【0030】
図7は、視聴情報記録処理を説明するためのフローチャート図である。放送受信装置3の制御部100は、図3に示したステップ34において視聴情報記録機能を有効にし、その後ユーザの操作によりデジタル放送受信機能の起動を入力部111から入力されると、デジタル放送受信機能を起動する。そして、起動した時の時刻を視聴開始時刻とし、多重分離部103から視聴中の番組情報や受信地域情報を入力する。ここで、視聴中の番組情報とは、例えばNITに含まれるサービスIDやEIT(Event Information Table)に含まれるイベントIDをいい、受信地域情報とは、例えばNITに含まれるエリアコードをいう。尚、GPSにより得た放送受信装置3の位置情報を受信地域情報としてもよい。」
「【0031】
制御部100は、視聴開始時刻、視聴中の番組情報、受信地域情報等を視聴情報として視聴番組記録部112に記録する(ステップS100)。そして、入力部111を介して選局情報を入力し(ステップS101)、ユーザの選局等の操作により視聴する番組が変わった場合には、制御部100は、そのタイミングを選局前の番組の視聴終了時刻として、視聴番組記録部112に記録して視聴情報に追加する。さらに、選局後の番組に関して、同様に視聴開始時刻、番組情報、受信地域情報等を視聴情報として視聴番組記録部112に記録する(ステップS105)。」
「【0032】
制御部100は、ユーザの操作によりデジタルテレビ受信機能の終了を入力部111から入力すると(ステップS102)、当該機能を終了する。そして、終了した時の時刻を番組の視聴終了時刻とし、視聴番組記録部112に記録して視聴情報に追加する(ステップS103)。そして、終了処理を行う(ステップS104)。」
『【0033】
図6は、視聴番組記録部112に記録された視聴情報の例を示す図である。図6において、「エリア・コード」が受信地域情報に、「サービスID」や「イベントID」が視聴中の番組情報に、「開始時間」が視聴開始時刻に、「終了時間」が視聴終了時刻にそれぞれ相当する。制御部100は、図6に示したような番組毎の視聴情報を視聴番組記録部112に記録するが、ユーザ操作により視聴番組記録部112にアクセスできないようになっている。具体的には、制御部100は、ユーザ操作による視聴番組記録部112へのアクセスを入力部111を介して入力しても、その入力を拒否する。このように、視聴情報をユーザへ提示することがないから、データは閲覧されず、データの改ざんを防止することができる。』
「【0034】
〔視聴情報送信・収集処理〕
次に、視聴情報送信・収集処理について説明する。図8は、タイマーによる視聴情報送信・収集処理を説明するためのフローチャート図であり、放送受信装置3がタイマー設定された時刻になると視聴情報を送信し、集計サーバが視聴情報を収集する処理が示されている。図3に示したように、放送受信装置3の制御部100が、視聴情報記録機能を有効にする際に(ステップS34)調査協力許諾の応答をサーバへ送信すると、サーバは、当該応答を受信し、視聴情報をタイマーにて毎日収集する場合には、それを示す時間情報のメッセージを放送受信装置3へ送信する。制御部100は、当該時間情報を取得し、送信時刻をタイマーに設定する。そして、制御部100は、タイマーが満了して送信時刻であることを判断すると(ステップS200)、視聴情報を視聴番組記録部112から読み出し(ステップS201)、集計サーバへ送信する(ステップS202)。そして、読み出した視聴情報を視聴番組記録部112から消去する(ステップS203)。」
「【0035】
図9は、プッシュ型SMSメッセージ(ショートメッセージ)による視聴情報送信・収集処理を説明するためのフローチャート図であり、放送受信装置3がSMSサーバから受信したショートメッセージにより起動されて視聴情報を送信し、集計サーバが視聴情報を収集する処理が示されている。サーバは、視聴情報の収集対象となる放送受信装置3を選定し、選定した放送受信装置3に対して、視聴情報送信用のショートメッセージ(SMSプッシュ)を送信する。放送受信装置3は、当該ショートメッセージを受信し(ステップS300)、番組を視聴中であると判断した場合に(ステップS301)、ショートメッセージを受信した時刻を番組の視聴終了時刻として視聴番組記録部112に記録する(ステップS302)。そして、視聴情報を視聴番組記録部112から読み出し(ステップS303)、集計サーバへ送信する(ステップS304)。そして、読み出した視聴情報を視聴番組記録部112から消去する(ステップS305)。」
「【0036】
図9に示した送信を起動させるショートメッセージによる視聴情報送信・収集処理により、集計サーバは、放送受信装置3毎に視聴情報を収集するようにしたので、個々の放送受信装置3からの送信時刻を分散することができ、ネットワークの負荷を軽減することができる。また、リアルタイムに情報を収集することもできる。」
「【図6】


「【図7】


「【図8】


「【図9】



ここで、上記段落【0030】?【0032】【図7】の記載、および、上記段落【0034】の「そして、読み出した視聴情報を視聴番組記録部112から消去する(ステップS203)。」、上記段落【0035】の「そして、読み出した視聴情報を視聴番組記録部112から消去する(ステップS305)。」との記載からみて、明細書記載の発明の視聴番組記録部112には、前回視聴情報を視聴番組記録部112から読み出し、集計サーバへ送信した以降の視聴情報が記録されているものと認められる。また、上記【図9】に記載されるフローチャートでは、処理S300にて「センターからSMSを受信」した後、判断S301にて「TV視聴中?」という判断を行い、YESとなった場合には処理S302にて「SMS受信時刻を受信時刻としてメモリに追加保存する」という処理を行った後に、処理S303,S304に移行していくのに対し、判断S301にてNOとなった場合には、直接、処理S303における「エリア・コード、サービスID、イベントID、受信開始時刻、受信終了時刻をメモリから読み出し」という処理、処理S304における「データ送信処理」という処理に移行することが記載されている。すなわち、上記段落【0035】には「放送受信装置3は、当該ショートメッセージを受信し(ステップS300)、番組を視聴中であると判断した場合に(ステップS301)、ショートメッセージを受信した時刻を番組の視聴終了時刻として視聴番組記録部112に記録する(ステップS302)。そして、視聴情報を視聴番組記録部112から読み出し(ステップS303)、集計サーバへ送信する(ステップS304)。」との記載はあるが、明細書段落【0030】?【0032】【0034】【0035】及び【図7】【図9】の記載をすべて勘案すると、本願明細書記載の発明は、センターからSMSを受信し、その時点でTV視聴中ではない場合には、視聴番組記録部112に記憶されている視聴情報全てを集計サーバに送信し、その時点でTV視聴中であった場合には、既に視聴情報記録部112に記憶されている現在視聴中であった番組の視聴情報に含まれる受信終了時刻を書き換えた上で、現在視聴中であった番組の視聴情報を含む、視聴番組記録部112に記憶されている視聴情報全てを集計サーバに送信するものと認められる。

これに対し、補正後の請求項1には「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する」、補正後の請求項2には「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報をネットワーク上のサーバへ送信する」と記載されているが、平成24年12月17日付意見書において審判請求人が「また、引用発明2は、視聴状況情報の送出指示の信号を受信すると、全視聴状況情報を送信するものであって、当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴状況情報を送信するものではなく、上述した本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載ではありません。」と主張しているところからみて、この補正後の請求項1,2に係る発明において「ネットワーク上のサーバへ送信」されるのは「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報」のみであって、「当該受信した際に」視聴番組記録部112に記録されている過去の番組(前回視聴情報を送信した以降のもの)に関する視聴情報は送信されないものと解釈すべきものと認められるが、この点は、上記したように、明細書段落【0030】?【0032】【0034】【0035】及び【図7】【図9】に記載されるものでも、示唆されるものでもない。
また、これら明細書段落【0030】?【0032】【0034】【0035】及び【図7】【図9】以外の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面にも、この点に関する記載も示唆もない。
したがって、この点は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項に該当する。

すなわち、補正後の請求項1の「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する」、補正後の請求項2の「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報をネットワーク上のサーバへ送信する」という点は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内ではない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.独立特許要件
次に、本件補正後の請求項1の「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する」、補正後の請求項2の「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報をネットワーク上のサーバへ送信する」という点は、明細書段落【0030】?【0032】【0034】【0035】及び【図7】【図9】の記載に基づき、「ネットワーク上のサーバへ送信」されるのは「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報」のみではなく、「当該受信した際に」放送番組の視聴情報が記録される記録部に記録されている過去の番組(前回視聴情報を送信した以降のもの)に関する視聴情報も送信されると解釈すべきものであって、本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定に適合し、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであったと仮定し、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

4.1.引用刊行物
4.1.1.引用例1
当審における平成24年10月11日の拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前に頒布された特開2005-20053号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

「【請求項4】
少なくとも放送信号を送信している送信局を特定するための送信局識別情報と放送時刻情報とが多重化された放送信号を受信し、選局する選局手段と、
前記選局手段により選局された前記放送信号に多重化されている前記送信局識別情報と前記放送時刻情報とを抽出する抽出手段と、
前記選局手段により選局された前記放送信号の受信状態を示す情報を検出する検出手段と、
前記抽出手段により抽出された情報と前記検出手段により検出された情報とを関連付けた履歴情報を記憶保持する蓄積手段と、
前記蓄積手段に蓄積されている前記履歴情報を、所定の通信装置を通じて、あるいは、直接に、通信ネットワークを介して目的とするサーバー装置に提供するようにする提供手段と
を備えることを特徴とする受信機。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、DAB(Digital Audio Broadcasting)などのデジタルラジオ放送やFM多重データ放送(RDS:Radio Data System)などの付加情報が多重化された放送信号を受信して利用するための装置、その装置を用いて構成するシステムに関する。」
「【0002】
【従来の技術】
テレビ放送番組の視聴率調査は、例えば、予め選定した数百世帯の視聴者のテレビ受信機を対象にし、所定の時間間隔毎に、選局された放送チャンネルの番号と選局された時点の時間情報とを取得し、これを視聴データとして、当該テレビ受信機に取り付けられた記憶機能を備えた視聴データ収集装置に記憶する。この視聴データ収集装置は、例えば、電話回線ネットワーク等の通信ネットワークを介して、放送事業者側の集計センターの集計装置との間で通信回線を接続することができるようにされている。」
「【0003】
放送事業者側の集計センターは、所定のタイミングで個々の視聴データ収集装置との間に通信回線を接続し、視聴データの転送要求を送出して、個々の視聴データ収集装置から視聴データを収集する。そして、収集した各視聴データ収集装置からの視聴率データを集計することにより、各テレビ放送番組の平均視聴率や瞬間視聴率などの情報を得ることができるようにされている。」
「【0004】
また、近年においては、視聴データを取得する際にユーザーが実際に番組をみているか否かを確認できるようにする技術(特開2000-32500号公報)が提案されている。この技術を用いることにより、実際には誰も視聴していないのに、テレビ受信機の電源が投入されているために、視聴事実としてカウントされた場合と、実際に誰かが視聴している場合を視聴事実としてカウントした場合とを区別し、視聴率を視聴実態に即して把握することができるようにされる。」
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、テレビ受信機やラジオ受信機の小型化、軽量化は年々進んでおり、小型化、軽量化された携帯用のテレビ受信機やラジオ受信機が提供され、これらを持ち運んで、外出先などにおいて、テレビ放送やラジオ放送を利用することが行われている。また、従来からほとんどの自動車にはラジオ受信機が搭載されており、移動しながらラジオ放送番組を聴取することは普通に行われている。」
「【0007】
このように、テレビ受信機やラジオ受信機が持ち運ばれて(移動しながら)利用される場合が多いことを考慮すると、放送番組が視聴あるいは聴取するようにされた位置(どこで番組が利用されたか)を把握することが重要になってくる。しかし、放送信号の受信機にGPS(Global Positioning System)などの測位装置を搭載することは大きなコストアップにつながるし、また、更なる小型化、軽量化を阻害することにもなりかねない。」
「【0008】
このため、放送信号の受信機の製造コストをアップさせたり、小型化や軽量化を阻害したりすること無く、できるだけ簡単に、放送番組の視聴位置あるいは聴取位置となる放送信号の受信位置を把握できるようにし、受信位置をも考慮した詳細な視聴率調査を行って、これを有効に活用したいとする要求がある。」
「【0009】
一方、放送信号の受信機のユーザーからすると、自動車に搭載されたラジオ受信機や携帯受信機を用いて放送番組を利用した場合に、どこで放送番組を利用しているのか、あるいは、どこで放送番組を利用したのかを知ることができれば、現在位置の確認や自分の移動経路を確認することができるなど便利である。」
「【0018】
[受信位置推定システムの概要について]
図1は、この発明によるシステムが適用されて構成された受信位置推定システムを適用するための図である。図1に示すように、この実施の形態の受信位置推定システムは、デジタルオーディオ放送(DAB)を行う放送局1と、放送局1から送信された放送信号を中継する複数の送信局2と、ユーザー(聴取者)のラジオ受信機(単に、受信機という。)3およびネットワーク端末4とからなるものである。」
「【0025】
なお、図1においては、説明を簡単にするために、受信機3は1台しか示していないが、受信機3は、多数のユーザーのそれぞれ毎に存在するものであり、実際には多数の受信機3が存在することになる。」
「【0026】
また、各ユーザーの受信機3と、各ユーザーのネットワーク端末4とは、所定のインターフェースを通じて接続可能にされている。この実施の形態においては、後述もするように、受信機3とネットワーク端末4とはUSB(Universal Serial Bus)によって接続することができるようにされている。これにより、後述もするように、ネットワーク端末4は、受信機3に蓄積された蓄積データを吸い上げたり(収集したり)、また、各受信機3に対して必要なデータを供給したりすることができるようにされる。」
「【0027】
そして、受信機3のユーザー側のネットワーク端末4と、放送局側のサーバー装置13とは、通信ネットワーク5を通じて通信回線を接続し、データの送受を行うことができるようにしている。これにより、ユーザー側のネットワーク端末4は、受信機3から収集した情報をサーバー装置13に送信したり、サーバー装置13から必要な情報の提供を受けて、これをユーザーに提供したりすることができるようにされる。」
「【0036】
[受信機3の構成と動作について]
次に、上述したようなフレーム構造を有するDABの放送信号を受信して復調するこの実施の形態の受信機3について説明する。図4は、この実施の形態の受信機3を説明するためのブロック図である。」
「【0037】
この実施の形態の受信機3は、以下に説明するように、受信したDABの放送信号を復調して再生することができると共に、受信したDABの放送信号から抽出される付加情報のうち、送信局識別情報や放送時刻情報などの受信位置の推定処理やDABの所定の放送信号が確かに受信選局されていたか否かの認証処理等のために必要となる情報を聴取履歴情報として蓄積する。」
「【0038】
そして、蓄積した聴取履歴情報を用いて自己の受信位置位置を推定したり、また、蓄積した聴取履歴情報を放送局2側のサーバー装置13に送信して、サーバー装置13側において、DABの所定の放送信号が確かに受信選局されていたか否かの認証処理を行うなどのために利用できるようにしたりしている。」
「【0039】
そして、この実施の形態の受信機3では、アンテナ31で、DABの放送信号が受信され、フロントエンド(図4においてはF/Eと記載。)32で、その受信信号がダウンコンバートされて中間周波信号に変換され、A/D(Analog/Digital)コンバータ33で、その中間周波信号がデジタル信号に変換され、そのデジタル信号が、直交復調回路(図3においてはDIQと記載。)34で、同相成分(inphase)と直交成分(quadrature)に分解され、FFT(Fast Fourier Transform)復調回路35で、周波数領域のデータに復調される。」
「【0053】
そして、この実施の形態の受信機3の制御部51は、図4に示したように、ビタビ復号回路39からのビタビ復号後のFICデータから聴取履歴情報として残しておくべき送信局識別情報などのデータを抽出すると共に、これらの抽出したデータと、フロントエンド32において測定するようにした受信電界強度と、品質測定部45において測定したDABの放送信号の伝送エラーレートとを関連付けた聴取履歴情報を情報蓄積メモリー61に蓄積するようにしている。」
「【0054】
図5は、受信機3の情報蓄積メモリー61に蓄積される聴取履歴情報(履歴情報)の一例を説明するための図である。図4に示すように、この実施の形態の受信機3において、制御部51は、ビタビ複号回路39から供給されるFICデータから抽出するようにした(1)放送局識別情報、(2)放送時刻情報、(3)番組識別情報、(4)プログラムタイプ、(5)送信局識別情報と、測定して得た(6)受信電界強度と(7)受信信号の伝送エラーレートとを対応付けて蓄積するようにしている。」
「【0055】
また、制御部51には、放送局情報メモリー62が接続されている。この放送局情報メモリー62には、予め放送局や送信局の識別情報と、それら放送局や送信局の送信出力や位置を示す情報等を記憶保持している。」
「【0056】
図6は、放送局情報メモリー62に予め記憶保持される放送局情報の一例を説明するための図である。図6に示すように、この実施の形態においては、予め各放送局、送信局に割り当てられている識別情報(放送局識別情報または送信局識別情報)と、その放送局または送信局の送信出力を示す情報と、その放送局または送信局の位置を示す情報(緯度経度情報)とが関連付けられて記憶されている。」
「【0057】
そして、この実施の形態の受信機3の制御部51は、詳しくは後述するように、情報蓄積メモリー61に蓄積された情報と、放送局情報メモリー62に保持されている情報とに基づいて、受信した放送信号の送信局の位置を基準として、自機の受信位置を推定し、これを例えば表示部55を通じてユーザーに通知することができるものである。」
「【0058】
そして、この実施の形態の受信機3の制御部51は、情報蓄積メモリー61に蓄積された聴取履歴情報を、USB(Universal Serial Bus)インターフェース(図4においてはUSBI/Fと記載。)を通じて、例えば、パーソナルコンピュータであるネットワーク端末4に提供することができるものである。なお、受信機3とネットワーク通信端末4との接続インターフェース(図4の63)は、USBなどの有線接続に限らず、Bluetoothなどの無線接続も可能である。」
「【0059】
ネットワーク端末4は、USBインターフェースを通じて自機に接続された受信機3からこれに蓄積されている聴取履歴情報を収集する。そして、ネットワーク端末4は、通信ネットワーク5を介して放送局側のサーバー装置13との間に通信回線を接続し、受信機3から収集した蓄積データと当該ネットワーク端末4自身の識別情報とを、サーバー装置13に送信する。」
「【0060】
サーバー装置13は、詳しくは後述もするが、ネットワーク端末4からの受信機3から収集した聴取履歴情報に基づいてコンテンツデータベース11に蓄積されている情報を検索し、聴取履歴情報が示す放送番組を選局してユーザーが聴取できるようにしていたかの認証を取るようにすることができるようにされる。」
「【0061】
また、サーバー装置4は、ネットワーク端末4から提供された聴取履歴情報に基づいて、DABの放送信号により提供された放送番組を聴取できるようにしていたときの当該受信機3の位置(受信位置)を推定してどこでDABの放送信号2より提供された放送番組が利用するようにされていたのかを確認したり、また、聴取履歴情報に基づいて、聴取率を算出したり、視聴者プレゼントの当選者を選んだりするなどのことができるようにしている。」
「【0062】
このようなサーバー装置13においての処理の結果得られた情報は、通信ネットワーク5を通じて、聴取履歴情報の送信元のネットワーク端末4に返信される。ネットワーク端末4は上述もしたように、例えばパーソナルコンピュータであり、サーバー装置13からの処理の結果得られた情報の提供を受け、これを自機のディスプレイに表示するなどして、受信機3のユーザーに提供し、サーバー装置3からの処理結果をユーザーが利用可能することができる。」
「【0063】
なお、上述の説明からわかるように、この実施の形態の受信機3において、主に、フロントエンド32が選局手段としての機能を実現し、A/Dコンバータ33、直交復調回路34、FFT復調回路35、デインターリーブ処理回路38、ビタビ復号回路39からなる復調処理系と制御部51とが少なくとも送信局識別情報や送信時刻情報などの必要な情報を抽出する抽出手段としての機能を実現している。」
「【0064】
また、この実施の形態においては、受信電界強度と伝送エラーレートとを受信状態(受信品質)を示す情報として用いるようにしており、受信電界強度の検出機能を備えたフロントエンド32と、受信品質測定回路45とが、受信状態を示す情報を検出する検出手段としての機能を実現している。また、情報蓄積メモリー61が聴取履歴情報(履歴情報)を蓄積する蓄積手段としての機能を実現し、USBインターフェース63とネットワーク端末4とが、履歴情報をサーバー装置13に提供する提供手段としての機能を実現している。」
「【0077】
[受信位置推定システムを構成する各装置の処理について]
次に、この実施の形態の受信位置推定システムを構成する装置のうち、受信機3、ネットワーク端末4、サーバー装置13のそれぞれにおいて行われる処理について、フローチャートを参照しながら説明する。」
「【0078】
[受信機においての処理]
まず、この実施の形態の受信機3において行われる処理について説明する。図8は、受信機3において行われる処理を説明するためのフローチャートである。図8に示す処理は、受信機3に電源が投入された場合に、受信機3の制御部51の制御によって行なわれる処理である。」
「【0079】
受信機3に電源が投入されると、制御部51は、DSP36を通じて受信系の各部を制御し、DABの放送信号を受信、選局し、復調処理を行って再生するようにする処理を開始する(ステップS101)。ここで、復調処理は、上述もしたように、直交復調回路34、FFT復調回路35、デインターリーブ処理回路38、ビタビ復調回路39、MPEGデコーダ41の各処理回路での一連の処理である。このステップS101の処理により、受信機3を通じてのラジオ放送番組の聴取が可能となる。」
「【0080】
なお、このステップS101の処理では、電源の投入直後の場合には、制御部51は、いわゆるラストチャンネルメモリー機能を用いて、前回電源が落とされる直前まで、受信、選局し、再生するようにしていたDABの放送信号と同じ周波数のDABの放送信号を受信、選局し、復調処理を開始するようにする。また、ユーザーからの選局を変更する指示を受け付けた場合には、制御部51は、その変更指示に応じて、選局している放送信号を変更し、選局変更後の放送信号の復調処理を開始するようにしている。」
「【0081】
そして、上述もしたように、ビタビ復号回路39において、復号されたFICデータは、制御部51に供給されて種々の制御に用いられるが、制御部51は、ビタビ復号回路39からのFICデータのうち、放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報などの受信位置推定処理や認証処理に必要になるデータを抽出する(ステップS102)。」
「【0082】
また、制御部51は、フロントエンド32の機能により検出される、選局しているDABの放送信号の受信電界強度を、A/Dコンバータ47を通じて取得すると共に、受信品質測定回路45において、ビタビ復号回路39からの復号されたデータに基づいて検出される受信信号(受信したDABの放送信号)についての伝送エラーレートを取得する(ステップS103)。」
「【0083】
そして、制御部51は、ステップS102において抽出した必要なデータと、ステップS103において取得した受信電界強度および伝送エラーレートとを対応付けて、情報蓄積メモリー61に蓄積する(ステップS104)。この後、蓄積した情報の内の送信局識別情報に基づいて、送信局情報メモリー62を参照し、送信局に関する情報である該当送信局の送信出力情報と当該送信局の位置とを取得する(ステップS105)。」
「【0084】
この後、制御部51は、ステップS105において取得した、受信している放送信号の送信局に関する情報(送信出力と位置)と、ステップS104において取得した受信電界強度および伝送エラーレートとに基づいて、当該送信局の位置を基準とし、その送信局からの放送信号を受信している受信機3の受信位置を算出する(ステップS106)。」
「【0085】
このステップS106においての処理は、上述もしたように、受信機3における受信したDABの放送信号の受信電界強度と伝送エラーレートとは、当該DABの放送信号を送信している送信局から当該受信機3までの距離に応じて変化するものである。つまり、受信電界強度は送信局からの距離に逆比例し、また、伝送エラーレートは送信局からの距離に比例するという関係を有している。」
「【0086】
この関係を利用し、この実施の形態の受信機3においては、受信している放送信号の送信局の送信出力と、その放送信号を受信している受信機におけるその放送信号の受信電界強度とに基づいて、所定の計算式にしたがって、送信局から受信機3までの距離を算出する。このように、ステップS106の処理は、送信局の送信出力と、受信機3で検出した受信電界強度とに基づいて、送信局の位置(所在地)を基準とする受信機の受信位置を推定する受信位置推定処理を実現している。」
「【0087】
そして、制御部51は、ステップS106において算出した受信位置、および、ステップS104においてメモリーに蓄積した放送時刻などの情報を、表示制御部56を通じて表示部55に表示することにより、受信機3のユーザーに通知するようにする(ステップS107)。」
「【0088】
このステップS107の通知処理においての受信位置の通知は、例えば、送信局の位置を中心とし、半径何キロの範囲内などのように、受信位置の属するであろう範囲を通知するようにしたり、簡単な地図情報などを利用することにより、送信局の位置を基準として、XX県XX市付近などのように通知したりすることができるようにされる。」
「【0089】
この後、制御部51は、操作部53を通じて、ユーザーから選局の変更指示を受け付けたか否かを判断し(ステップS108)、選局の変更指示を受け付けたと判断した時には、この図8に示すステップS101からの処理を繰り返し、新たに選局するようにした放送信号について、上述した処理を行って、当該受信機3がDABの放送信号を受信している
位置を推定するようにする。」
「【0090】
ステップS108の判断処理において、ユーザーからの選局の変更指示を受け付けていないと判断したときには、制御部51は、当該受信機3の電源をオフにする操作が行われたか否かを判断する(ステップS109)。ステップS109の判断処理において、電源をオフにする操作はされていないと判断した時には、制御部51は、受信、選局したDABの放送信号の復調を行い再生する処理を続行すると共に、ステップS102からの判断処理を繰り返し、受信位置の推定処理および受信位置などの通知処理を繰り返すようにする。」
「【0091】
また、ステップS109の判断処理において、電源をオフにする操作を受け付けと判断したときには、制御部51は、電源投入時において、前回電源をオフにする直前まで、受信、選局していた放送信号を再度受信し選局するための情報を制御部51に設けられたEEPROMなどの不揮発性メモリーに格納し、各部について電源を落とせる状態に遷移させて、電源を落とすようにする終了処理を実行して(ステップS111)、この図8に示す処理を終了する。」
「【0092】
なお、受信電界強度と伝送エラーレートとを用いることにより、例えば、受信電界強度が高いのに、伝送エラーレートが低い場合などには、妨害波が多く、受信位置の算出には利用できないと判断し、再度、受信電界強度と伝送エラーレートとの検出を行うようにして確認し、両者の検出情報の関係が正常な値となった後に受信位置の算出を行うようにしてもよい。」
「【0093】
また、受信位置の推定処理において、受信位置を計算により求めるようにする場合には、受信している放送信号の送信局の送信出力と、その放送信号を受信している受信機におけるその放送信号についての伝送エラーレートとに基づいて、所定の計算式にしたがって、送信局から受信機3までの距離を算出するようにしてもよい。」
「【0094】
また、受信している放送信号の送信局の送信出力と、その放送信号を受信している受信機におけるその放送信号の受信電界強度および伝送エラーレートとに基づいて、所定の計算式にしたがって、送信局から受信機3までの距離を算出するようにしてもよい。つまり、受信電界強度と伝送エラーレートとの一方または両方を用いることが可能である。」
「【0095】
また、ここでは、受信機3におけるDABの放送信号の受信位置の推定処理においては、計算式により求めるものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、送信局の送信出力と受信電界強度と送信局からの距離との関係、あるいは、送信局の送信出力と伝送エラーレートと送信局からの距離とのの関係、あるいは、送信局の送信出力と、受信電界強度および伝送エラーレートと、送信局からの距離との関係を予め計算により求めるか、予め測定しておくことにより得ておくようにする。」
「【0096】
そして、予め得るようにした上述の関係を示す情報をテーブル化して内部メモリーあるいは受信機3に着脱可能とされた外部メモリーに予め記憶保持させておき、これを用いて受信位置を推定するようにすることもできる。つまり、送信出力が何kWの時に受信電界強度が何V/mであれば、送信局からの距離は何kmというように、上述した受信位置を推定するための各パラメータ同士の関係をテーブル化しておく。」
「【0097】
このようなテーブル情報を用いることにより、受信している放送信号の送信局の送信出力と、受信電界強度、あるいは、伝送エラーレート、あるいは、受信電界強度と伝送エラーレートがわかれば、それらの情報に基づいて、単にテーブル情報を参照するだけで、迅速に送信局を基準とする受信機3の受信位置を比較的に正確に推定することができる。」
「【0098】
[ネットワーク端末の処理]
次に、上述したように、受信機3の情報蓄積メモリーに蓄積される情報を放送局側のサーバー装置3に送信する場合に、受信機3のユーザー側において用いられるネットワーク端末4においての処理について説明する。図9は、ネットワーク端末4においての処理を説明するためのフローチャートである。」
「【0099】
上述もしたように、ネットワーク端末4は、通信機能を備えたパーソナルコンピュータや携帯電話端末等の機器であり、この実施の形態においては、USBインターフェースを通じてこの実施の形態の受信機3が接続される。」
「【0100】
ネットワーク端末4は、ユーザーから受信機3の蓄積情報である聴取履歴情報を収集することの指示入力を受け付けると、図9に示す処理を実行し、USB接続された受信機3に対して聴取履歴情報の提供を要求し、これに応じて受信機3からUSBインターフェースを通じて送信されてくる聴取履歴情報を取り込む(ステップS201)。」
「【0101】
そして、ネットワーク端末4は、ユーザーからの指示に応じて、通信ネットワーク5を通じてサーバー装置13との間に通信回線を接続し、受信機から取り込んだ聴取履歴情報を当該ネットワーク端末の識別情報と共にサーバー装置13に送信する(ステップS202)。」
「【0102】
ネットワーク端末4は、サーバー装置13からの返信を待ち、サーバー装置13から受信位置の推定結果などが送信されて来たときには、サーバー装置13からの受信位置の推定結果などを受信し(ステップS203)、これをユーザーに通知し(ステップS204)、この図9の処理を終了する。」
「【0103】
なお、サーバー装置14においての受信場所の推定処理等にある程度の時間がかかる場合には、ステップS203の後に、一旦通信回線を切断し、サーバー装置13からの接続要求に応じて、再度、通信回線を接続した後に、返信されてきた情報を受信するようにしてもよい。」
「【0104】
このように、この実施の形態においては、受信機3において蓄積された聴取履歴情報は、ネットワーク端末4と通信ネットワーク5とを通じて、サーバー装置13に送られ、サーバー装置13において後述もするように、検索処理、認証処理、受信位置推定処理が行われ、その結果の返信を受けて、ユーザーに通知することができるようにしている。」
「【0112】
[その他]
なお、上述した実施の形態においては、受信機3において蓄積した聴取履歴情報は、受信機3とは別体の例えばパーソナルコンピュータや携帯電話端末等のネットワーク端末を介してサーバー装置4に送信する場合を例にして説明したが、これに限るものではない。」
「【0113】
受信機3が通信機能を備えるものであれば、図1において点線で示したように、受信機3自身が自己の通信機能を用いて通信ネットワーク5を介してサーバー装置13との間に通信回線を接続し、直接にサーバー装置3に対して聴取履歴情報を送信したり、サーバー装置13からの処理結果の提供を受けたりすることが可能である。また、この場合には、サーバー装置13からの接続要求に応じてサーバー装置13との間に通信回線を接続するようにすることも可能である。」
「【0128】
また、利用する放送信号は、ラジオ放送信号に限るものではなく、テレビ放送信号であってもよく、この場合には、受信機として画像表示用の表示素子を沿いなえたテレビ受信機となる。」
「【図1】


「【図4】


「【図5】


「【図8】


「【図9】



ここで、上記記載を検討する。

第一に、上記段落【0006】?【0009】【0112】【0113】の記載からみて、引用例1記載の発明は「小型化、軽量化された携帯用の放送受信機」である。
第二に、上記段落【0128】の記載からみて、引用例1記載の発明の「小型化、軽量化された携帯用の放送受信機」は「テレビ放送受信機」である。
第三に、上記段落【0039】の記載からみて、引用例1記載の発明の「小型化、軽量化された携帯用の受信機」は「放送信号を受信するアンテナ31と、その受信信号がダウンコンバートされて中間周波信号に変換されるフロントエンド32と、その中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog/Digital)コンバータ33と、そのデジタル信号を同相成分(inphase)と直交成分(quadrature)に分解する直交復調回路34と、FFT(Fast Fourier Transform)復調回路35」を有しており、上記段落【0001】の記載からみて、この「放送信号」は「付加情報が多重化された放送信号」である。
第四に、上記段落【0053】【0054】の記載からみて、引用例1記載の発明の「小型化、軽量化された携帯用の受信機」は「聴取履歴情報を蓄積する情報蓄積メモリー61」を有している。
第五に、上記段落【0054】および【図5】の記載からみて、引用例1記載の発明の「情報蓄積メモリー61」が記憶している「聴取履歴情報」には「放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報」が含まれている。
第六に、上記段落【0098】?【0104】【0112】【0113】および【図1】【図9】の記載からみて、引用例1記載の発明の「小型化、軽量化された携帯用の受信機」は「ユーザーからの指示に応じて、自己の通信機能を用いて通信ネットワーク5を通じてサーバー装置13との間に通信回線を接続し、聴取履歴情報をサーバー装置13に送信」している。
第七に、上記段落【0080】【0081】?【0083】【0089】【0090】および【図8】の記載からみて、引用例1記載の発明の「小型化、軽量化された携帯用の受信機」は、「電源をオフにする操作はされていないと判断した時には、受信、選局した放送信号の復調を行い再生する処理、放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報の抽出処理を繰り返す」ものである。

したがって、引用例1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)

「付加情報が多重化された放送信号を受信するアンテナ31と、その受信信号がダウンコンバートされて中間周波信号に変換されるフロントエンド32と、その中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog/Digital)コンバータ33と、そのデジタル信号を同相成分(inphase)と直交成分(quadrature)に分解する直交復調回路34と、FFT(Fast Fourier Transform)復調回路35と、放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報を含む聴取履歴情報を蓄積する情報蓄積メモリー61を有し、ユーザーからの指示に応じて、通信ネットワーク5を通じてサーバー装置13との間に通信回線を接続し、聴取履歴情報をサーバー装置13に送信する小型化、軽量化された携帯用の受信機であって、電源をオフにする操作はされていないと判断した時には、受信、選局した放送信号の復調を行い再生する処理、放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報の抽出処理を繰り返す小型化、軽量化された携帯用のテレビ放送受信機。」

4.1.2.引用例2
当審における平成24年10月11日の拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前に頒布された特開2005-176067号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

「【0001】
本発明は視聴情報(視覚情報及び/又は聴覚情報)収集システムに関し、特に、携帯端末で視聴されたテレビ番組などのコンテンツの視聴情報を収集するシステムに関する。」
「【背景技術】
【0002】
従来のアナログ地上波の視聴率調査の場合、個人宅に固定されているテレビに視聴状況調査用装置を設置し、視聴しているチャンネルの情報及びその視聴時間の情報を収集して調査していた。」
「【0003】
しかしながら、従来のアナログ地上波の視聴率調査の場合、個人宅に固定されているテレビ放送を対象に情報を収集しているため、装置が設置されている個人宅の家族の内、実際にそのチャンネルを視聴した視聴者を特定することができず、そのチャンネルを視聴した視聴者の性別、年齢層、職種等の情報まで提供することができなかった。」
「【0004】
一方、近年の携帯端末のサービスでは、テレビ放送を携帯端末に送信するサービスが行われようとしており、このようなテレビ放送を視聴できる携帯端末を対象にした視聴情報の収集技術がいくつか提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002-232604 この技術は、地上波デジタル放送を用いて送信される映像広告とメニュー画面とを携帯端末が受信し、携帯端末はメニュー画面から選択された映像広告を視聴後、この映像広告を視聴したことを示す情報を携帯端末の電話番号と共に映像広告サービス者に送信する。そして、映像広告サービス者は、映像広告を視聴した携帯端末の電話番号に基づいて、通信事業者の加入者個人情報から個人情報を得、各通信事業者に携帯端末の電話番号及び個人情報とを送信する。」
「【実施例4】
【0147】
次に本発明における実施例4について説明する。」
「【0148】
上述した実施例3では、メモリ部135に格納された視聴状況情報がある一定の量を超えると、端末識別情報とメモリ部135に格納された全視聴状況情報を送信する構成について説明した。」
「【0149】
本実施例では、携帯端末100が視聴状況情報の送出指示の信号を受信すると、端末識別情報とメモリ部135に格納された全視聴状況情報と端末識別情報とを送信する構成について説明する。尚、上述した実施例3と同様の構成については同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。」
「【0150】
図13は、本実施例における視聴情報収集システムの構成図である。」
「【0151】
上述した実施例3と基本的には同様な構成であるため、上述した実施例3と異なる所を中心に説明する。」
「【0152】
上述した実施例3と異なる点は、携帯端末100は、上述した実施例3の構成に加えて、携帯端末100が判別部136を有する。」
「【0153】
判別部136は、無線通信部110が受信した信号の中に、視聴状況情報の送信を示す情報送信信号があるかを判別する。更に判別部136は、情報送信信号があると判別すると、視聴状況情報と端末識別情報との送信を制御部130に要求する。」
「【0154】
次に、本実施例における動作の説明をする。尚、通信事業者200で行われる動作は実施例3と同一のため、省略する。」
「【0155】
図14は、本実施例における携帯端末100で行われる動作を説明するためのフローチ
ャートである。」
「【0156】
テレビ放送受信のアプリケーションが起動されると、制御部130は時計134から現在の時刻情報を視聴開始時刻として取り込む(ステップS401)。」
「【0157】
制御部130は、視聴開始時刻を取り込むと、携帯端末で視聴されているチャンネル識別情報と視聴開始時刻とからなる視聴状況情報を生成し、メモリ部135に記憶させる(ステップS402)。」
「【0158】
次に、制御部130は、チャンネルが変更されたかを認識する(ステップS403)。ここで、チャンネルの変更が認識された場合、ステップS401に戻る。」
「【0159】
一方、チャンネルの変更が認識されない場合、制御部130はテレビ放送受信が終了させられたかを認識する(ステップS404)。ここで、テレビ放送受信の終了が認識されない場合、ステップS403に戻る。
テレビ放送受信の終了が認識された場合、時計134から現在の時刻情報を視聴終了時刻として取り込む(ステップS405)。視聴終了時刻を取り込むと、視聴終了を示す識別情報と視聴終了時刻とから視聴状況情報を生成してメモリ部135に格納する(ステップS406)。」
「【0160】
判別部136は、無線通信部110が受信した信号の中に、視聴状況情報の送信を示す情報送信信号があるかを判別する(ステップS407)。」
「【0161】
判別部136が、無線通信部110が受信した信号の中に情報送信信号がないと判別すると、ステップS403に戻る。 判別部136が、無線通信部110が受信した信号の中に情報送信信号があると判別すると、制御部130に対して視聴状況情報と端末識別情報との送信を要求する(ステップS408)。」
「【0162】
制御部130は、視聴状況情報と端末識別情報との送信要求を受信すると、端末識別情報とメモリ部135に累積されている視聴状況情報とを、無線通信部110を介して通信事業者200に送信する(ステップS409)。」
「【0163】
上述した構成をとると、視聴状況情報をまとめて送信しているので、有効な通信に影響を及ぼすこと無く、視聴状況情報を送信することが出来る。」
「【0164】
尚、本実施例では、携帯端末100が視聴状況情報の情報送信信号を受信すると、メモリ部135に格納された全視聴状況情報を送信する構成について記載したが、これに限るものではない。すなわち、実施例3のように、制御部130に、メモリ部135に格納された視聴状況情報がある一定の量を超えているかを認識させ、視聴状況情報の情報送信信号を受信する前に、メモリ部135に格納された視聴状況情報がある一定の量を超えた場合、メモリ部135に格納された全視聴状況情報を送信する構成にしても良い。」
「【実施例5】
【0165】
次に本発明における実施例5について説明する。」
「【0166】
上述した実施例4では、携帯端末100が情報送信信号を受信すると、端末識別情報とメモリ部135に格納された全視聴状況情報とを送信する構成について説明した。」
「【0167】
本実施例では、携帯端末100が視聴状況情報と端末識別情報とを送信する時刻を指定する情報を含んだ情報送信信号を受信し、送信指定時刻に端末識別情報とメモリ部135
に格納された全視聴状況情報とを送信する構成について説明する。尚、上述した実施例と同様の構成については同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。」
「【0168】
図15は、本実施例における視聴情報収集システムの構成図である。」
「【0169】
上述した実施例4と基本的には同様な構成であるため、上述した実施例3と異なる所を中心に説明する。」
「【0170】
上述した実施例4と異なる点は、携帯端末100は、上述した実施例3の構成に加えて、指定時刻認識部137を有する。」
「【0171】
指定時刻認識部137は、判別部136が情報送信信号を受信したと認識すると、受信した情報送信信号の中から、視聴状況情報と端末識別情報とを送信する時刻を指定する送信時刻指定情報を取り出して記憶する。更に、送信指定時刻になると制御部130に、視聴状況情報と端末識別情報との送信を要求する。」
「【0172】
次に、本実施例における動作の説明をする。尚、通信事業者200で行われる動作は実施例3及び4と同一のため、省略する。」
「【0173】
図16は、本実施例における視聴状況情報を生成する動作を説明するためのフローチャートである。」
「【0174】
テレビ放送受信のアプリケーションが起動されると、制御部130は時計134から現在の時刻情報を視聴開始時刻として取り込む(ステップS501)。」
「【0175】
制御部130は、視聴開始時刻を取り込むと、携帯端末で視聴されているチャンネル識別情報と視聴開始時刻とからなる視聴状況情報を生成し、メモリ部135に記憶させる(ステップS502)。」
「【0176】
次に、制御部130は、チャンネルが変更されたかを認識する(ステップS503)。ここで、チャンネルの変更が認識された場合、ステップS501に戻る。」
「【0177】
一方、チャンネルの変更が認識されない場合、制御部130はテレビ放送受信が終了させられたかを認識する(ステップS504)。ここで、テレビ放送受信の終了が認識されない場合、ステップS503に戻る。」
「【0178】
テレビ放送受信の終了が認識された場合、時計134から現在の時刻情報を視聴終了時刻として取り込む(ステップS505)。視聴終了時刻を取り込むと、視聴終了を示す識別情報と視聴終了時刻とから視聴状況情報を生成してメモリ部135に格納する(ステップS506)。」
「【0179】
判別部136は、無線通信部110が受信した信号の中に、視聴状況情報と端末識別情報との送信を示す情報送信信号があるかを判別する(ステップS507)。」
「【0180】
判別部136が、無線通信部110が受信した信号の中に情報送信信号がないと判別すると、ステップS503に戻る。」
「【0181】
判別部136が、無線通信部110が受信した信号の中に情報送信信号があると判別すると、指定時刻認識部137は、受信した情報送信信号の中から、視聴状況情報と端末識別情報とを送信する時刻を指定する送信時刻指定情報を取り出して記憶する(ステップS
508)。」
「【0182】
そして、指定時刻認識部137は、送信指定時刻になると制御部130に、視聴状況情報の送信を要求する(ステップS509)。」
「【0183】
制御部130は、視聴状況情報の送信要求を受信すると、端末識別情報とメモリ部135に累積されている視聴状況情報とを、無線通信部110を介して通信事業者200に送信する(ステップS510)。」
「【0184】
上述した構成をとると、視聴状況情報をまとめて送信しているので、有効な通信に影響を及ぼすこと無く、視聴状況情報を送信することが出来る。」
「【0185】
尚、本実施例では、送信指定時刻に、視聴状況情報を送信する構成について記載したが、これに限るものではない。すなわち、実施例3のように、制御部130に、メモリ部135に格納された視聴状況情報がある一定の量を超えているかを認識させ、送信指定時刻前に、メモリ部135に格納された視聴状況情報がある一定の量を超えた場合にも送信する構成にしても良い。」
「【図13】


「【図14】


「【図15】


「【図16】



4.2.対比
ここで、本願補正発明と引用発明1を比較する。

[ネットワークを介した情報の送受信を行う送受信部]
引用発明1の「小型化、軽量化された携帯用のテレビ放送受信機」は「ユーザーからの指示に応じて、自己の通信機能を用いて通信ネットワーク5を通じてサーバー装置13との間に通信回線を接続し、聴取履歴情報をサーバー装置13に送信」するものであるから、引用発明1と本願補正発明は「ネットワークを介した情報の送受信を行う送受信部」を有する点で一致する。

[放送波を受信する放送受信部]
引用発明1の「小型化、軽量化された携帯用のテレビ放送受信機」は「付加情報が多重化された放送信号を受信するアンテナ31と、その受信信号がダウンコンバートされて中間周波信号に変換されるフロントエンド32と、その中間周波信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog/Digital)コンバータ33と、そのデジタル信号を同相成分(inphase)と直交成分(quadrature)に分解する直交復調回路34と、FFT(Fast Fourier Transform)復調回路35」を有し、これらは放送信号が受信するためのものであるから、引用発明1と本願補正発明は「放送波を受信する放送受信部」を有する点で一致する。

[放送番組の視聴情報が記録される記録部]
引用発明1の「小型化、軽量化された携帯用のテレビ放送受信機」は「放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報を含む聴取履歴情報を蓄積する情報蓄積メモリー61」を有しているから、引用発明1の「聴取履歴情報」と本願補正発明の「視聴情報」が一致し、引用発明1の「情報蓄積メモリー61」と本願発補正発明の「放送番組の視聴情報が記録される記録部」が一致する。

[放送番組の視聴履歴と放送波に含まれるエリアコードとを視聴情報として関連付け]
引用発明1の「聴取履歴情報」は「放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報を含」んでおり、これら情報は関連付けられて記憶されているから、この「放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ」と本願補正発明の「放送番組の視聴履歴」が対応し、また、上記したように、引用発明1の「聴取履歴情報」と本願補正発明の「視聴情報」が一致するから、引用発明1と本願発明は「放送番組の視聴履歴」を「視聴情報と」する点で一致しているが、本願補正発明は、この放送番組の視聴履歴と「放送波に含まれるエリアコード」とを関連付け視聴情報とするのに対し、引用発明1は、これら放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報と「送信局識別情報」を関連付け聴取履歴情報とする点で相違する。

[ネットワーク上のサーバへ送信するために、・・・当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該受信した際に・・・視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する]
引用発明1の「小型化、軽量化された携帯用のテレビ放送受信機」は「ユーザーからの指示に応じて、通信ネットワーク5を通じてサーバー装置13との間に通信回線を接続し、聴取履歴情報をサーバー装置13に送信する」ものであって、上記したように引用発明1の「聴取履歴情報」と本願補正発明の「視聴情報」が一致するから、引用発明1と本願補正発明は「ネットワーク上のサーバへ送信するために、・・・・・・視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する」点で一致し、本願補正発明が「当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該受信した際に」送信するのに対し、引用発明1は「ユーザーからの指示に応じて」送信する点で相違する。

[視聴中である番組に関する視聴情報を・・・送信]
既に述べたように、本願補正発明の「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する」という点は、明細書段落【0030】?【0032】【0034】【0035】及び【図7】【図9】の記載に基づき、「ネットワーク上のサーバへ送信」されるのは「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報」のみではなく、「当該受信した際に」放送番組の視聴情報が記録される記録部に記録されている過去の番組(前回視聴情報を送信した以降のもの)に関する視聴情報も送信されると解釈することを前提とする。
ここで、引用発明1は「電源をオフにする操作はされていないと判断した時には、受信、選局した放送信号の復調を行い再生する処理、放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報の抽出処理を繰り返」し、抽出された「放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報を含む聴取履歴情報」を「情報蓄積メモリー61」に蓄積し、「ユーザーからの指示に応じて、通信ネットワーク5を通じてサーバー装置13との間に通信回線を接続し、聴取履歴情報をサーバー装置13に送信する」ものであるが、「電源をオフにする操作はされていないと判断した時には、受信、選局した放送信号の復調を行い再生する処理、放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報の抽出処理を繰り返す」ことから「情報蓄積メモリー61」に蓄積されている「聴取履歴情報」は、その時点で視聴中である番組の「放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報、プログラムタイプ、送信局識別情報を含む」最新のものとなっているものと認められる。
すなわち、引用発明1において「ユーザーからの指示に応じて、通信ネットワーク5を通じてサーバー装置13との間に通信回線を接続し、聴取履歴情報をサーバー装置13に送信する」時の「聴取履歴情報」には、「ユーザーからの指示」があった時点で視聴中である番組に関する「聴取履歴情報」も含まれているから、結局、引用発明1と本願補正発明は「視聴中である番組に関する視聴情報を・・・送信」する点で一致している。

[移動型放送受信装置]
引用発明1は「小型化、軽量化された携帯用のテレビ放送受信機」であるから、本願補正発明と引用発明1は「移動型放送受信装置」という点で一致している。

4.3.一致点・相違点
したがって、本願補正発明と引用発明1は、

「ネットワークを介した情報の送受信を行う送受信部と、
放送波を受信する放送受信部と、
放送番組の視聴情報が記録される記録部と、
ネットワーク上のサーバへ送信するために、放送番組の視聴履歴を視聴情報とし、当該視聴中である番組に関する視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする移動型放送受信装置。」

という点で一致し、

(1) 本願補正発明は、放送番組の視聴履歴と「放送波に含まれるエリアコード」とを関連付け視聴情報とするのに対し、引用発明1は、放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報と「送信局識別情報」を関連付け聴取履歴情報とする点。
(2) 本願補正発明は「当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該受信した際に」送信するのに対し、引用発明1は「ユーザーからの指示に応じて」送信する点

という点で相違する。

4.4.判断
[相違点(1)]
引用例1段落【0065】?【0097】の記載からみて、引用例1には「送信局識別情報」を用いて「放送局情報メモリー62」を検索して「その放送局または送信局の送信出力を示す情報」「その放送局または送信局の位置を示す情報(緯度経度情報)」を取り出し、これらと受信電界強度から、受信位置の推定処理を行うことが記載されており、引用発明1の「送信局識別情報」はこの推定処理に用いられるものである。
ここで、デジタルテレビ放送においてエリアコードを送信することは規格(ARIB STD-B10)で規定されており、この規格によれば、このエリアコードはサービスエリアをあらわすものであるところ、放送波の干渉を防ぐために一つのサービスエリアに複数の送信局を設置することは許されない、すなわち、一つのサービスエリアには一つの送信局しか存在しないから、エリアコードが定まれば、その放送の送信局は一意に決定できることとなる。すなわち、この「エリアコード」を用いても受信位置の推定を行うことができることとなる。
そして、引用例1記載の発明は「携帯用のテレビ放送受信機」であって「付加情報が多重化された放送信号」を受信するもの、すなわち、デジタルテレビ放送を受信する携帯用のテレビ放送受信機であるから、規格に従って、この「デジタルテレビ放送」にも「エリアコード」が含まれているものと認められるところ、互換性を保つためにできるだけ規格に定められた情報を用い、独自に定義した情報を用いることを最小限に留めることは、当業者が自然に考えつくことであるから、引用発明1の「送信局識別情報」に代えて「エリアコード」を用いることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。

[相違点(2)]
引用例1に従来例として「放送事業者側の集計センターは、所定のタイミングで個々の視聴データ収集装置との間に通信回線を接続し、視聴データの転送要求を送出して、個々の視聴データ収集装置から視聴データを収集する。」(段落【0003】)と記載され、引用例2に「携帯端末100が視聴状況情報の送出指示の信号を受信すると、端末識別情報とメモリ部135に格納された全視聴状況情報と端末識別情報とを送信する」(段落【0149】)と記載されているように、視聴率調査において、センター側から端末側に視聴データの転送要求を送出し端末側は転送要求に応答して視聴データをセンター側に送ることは良く行われていることと認めることができる。
ここで、引用例1に「また、この場合には、サーバー装置13からの接続要求に応じてサーバー装置13との間に通信回線を接続するようにすることも可能である。」(段落【0113】)との記載があることからみて、引用発明1においても「サーバ装置13」から「受信機3」側に回線を接続することが想定されている。そして、回線の有効活用を図る観点から、通信回線が接続された時にできるだけ多くのデータ転送を行うことは当業者は自然に考えつくことであるから、引用発明1において「サーバ装置13」から「受信機3」側に回線を接続したときに、上記引用例1段落【0003】、引用例2段落【0149】に記載されるように、センター側から端末側に視聴データの転送要求を送出し端末側は転送要求に応答して視聴データをセンター側に送ること、すなわち、「当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御」したことは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。

加えて、本願補正発明の奏する作用効果も当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は引用発明1、および、引用例2に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである。

4.5.独立特許要件についての結論
すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
平成24年12月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年9月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ネットワークを介した情報の送受信を行う送受信部と、
放送波を受信する放送受信部と、
放送番組の視聴情報が記録される記録部と、
ネットワーク上のサーバへ送信するために、放送番組の視聴履歴と放送波に含まれるエリアコードとを視聴情報として関連付け、当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする移動型放送受信装置。」

第4.引用刊行物
平成24年10月11日の拒絶の理由で引用された引用例、その記載事項、および、引用発明は、上記「第2.」「4.1.引用刊行物」に記載したとおりである。

第5.対比・判断
上記「第2.」「4.2.対比」の「[視聴中である番組に関する視聴情報を・・・送信]」の欄で述べたように、平成24年12月17日付の手続補正で追加された「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する」という点は引用例1に記載されたものであって新たな相違点ではなかったから、本願発明と引用発明1の相違点は、上記「第2.」「4.3.一致点・相違点」にて述べたとおりの以下のものとなる。

[相違点]
(1) 本願発明は、放送番組の視聴履歴と「放送波に含まれるエリアコード」とを関連付け視聴情報とするのに対し、引用発明1は、放送局識別情報、放送時刻情報、番組識別情報と「送信局識別情報」を関連付け聴取履歴情報とする点。
(2) 本願発明は「当該視聴情報を収集するためのメッセージ受信に応じて、当該受信した際に」送信するのに対し、引用発明1は「ユーザーからの指示に応じて」送信する点

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに平成24年12月17日付の手続補正で追加された「当該受信した際に視聴中である番組に関する視聴情報を前記送受信部によりネットワーク上のサーバへ送信制御する」という点を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2.」「4.4.判断」で述べたように、引用発明1、および、引用例2に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1、および、引用例2に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-18 
結審通知日 2013-01-22 
審決日 2013-02-04 
出願番号 特願2006-20751(P2006-20751)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (H04N)
P 1 8・ 575- WZ (H04N)
P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 松尾 淳一
特許庁審判官 渡邊 聡
涌井 智則
発明の名称 移動型放送受信装置及び視聴情報送信方法  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  

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