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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1271783
審判番号 不服2011-15126  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-13 
確定日 2013-03-21 
事件の表示 特願2007- 51272「画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-216436〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
特許出願: 平成19年3月1日
拒絶査定: 平成23年4月22日(送達日:同年4月26日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成23年7月13日
手続補正: 平成23年7月13日
拒絶理由通知: 平成24年10月9日(発送日:同年10月16日)
(以下、「当審拒絶理由」という。)
手続補正: 平成24年12月14日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成24年12月14日(以下、「本件意見書」という。)


2.本願発明
当審拒絶理由への応答としてなされた本件補正は、請求項1における「複数の表示領域に分割された表示部と、」なる記載を「複数の表示領域に分割された1画面の表示部と、」と補正し、これに対応する明細書の段落【0013】を同様に補正するものである。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の記載を明確にしたものであり、しかも、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、適法である。
してみると、本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明を次のとおりのものと認定する。

「複数本配列された走査線に走査線駆動信号を送る走査線駆動回路と、その走査線に交差するように複数本配列された信号線に映像信号を送る信号線駆動回路とによってスイッチング素子を駆動させ画像信号を表示部に表示する画像表示装置において、
複数の表示領域に分割された1画面の表示部と、
前記表示領域各々に対して、独立して配された走査線と信号線と、
前記表示領域毎に独立して配された走査線駆動回路及び前記表示領域毎に独立して配された信号線駆動回路に独立したタイミング信号を生成して供給する駆動回路制御手段と、
複数の画像信号の入力を受け付け、該画像信号各々を独立して画像処理する画像処理部と、を具備し、
前記駆動回路制御手段は、前記画像処理された画像信号を、該信号の画像を表示する表示領域に配された信号線駆動回路に出力するとともに前記複数の画像信号毎に独立した前記タイミング信号を生成することを特徴とする画像表示装置。」(以下、「本願発明」という。)

なお、請求項1には「前記駆動回路制御手段は、前記画像処理された画像信号を、該信号の画像を表示する表示領域に配された走査線駆動回路と信号線駆動回路とに出力する・・・」と記載されているが、技術常識から見て画像信号が走査線駆動回路に出力されることはなく、また、明細書及び図面の記載を参酌しても画像信号が出力されているのは信号線駆動回路であるので、該記載を誤記と認めて、本願の請求項1に係る発明を上記のように認定した。


3.当審拒絶理由
これに対し、当審拒絶理由の概要は、本願の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-187103号公報(発明の名称:表示装置、出願人:株式会社東芝、公開日:平成10年7月14日、以下、「引用例」という。)に記載された発明、及び本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-91347号公報(発明の名称:マルチ画面液晶表示装置、出願人:株式会社日立製作所、公開日:平成14年3月27日、以下、「周知例1」という。)に記載されているような周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


4.引用例記載の事項・引用発明
(1)記載事項
引用例には、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。

(a)「【0006】この発明は、上述した技術課題に対処して成されたものであって、メモリ規模を大きくせずに複数の画像情報を画面分割により簡便に表示させることができる表示装置を提供することを目的としている。」

(b)「【0010】図1に示すように、このカー・ナビゲーション・システム1は、対角6インチ、アスペクト比9:16の表示領域103を備えて構成される液晶表示装置100と、この液晶表示装置100の表示動作を制御する表示装置制御部500と、この表示装置制御部500に制御信号並びに映像信号を出力するカー・ナビゲーション・システム部900とを含む。なお、以下の説明は表示される画像がカラー画像であるものとして説明するが、白黒画像であっても同様に実施できることは勿論である。
【0011】カー・ナビゲーション・システム部900は、図2に示すように、ナビゲーション・システム制御部911、ナビゲーション・システム制御部911からの出力に基づいて地図情報あるいはテレビジョン情報等の第1映像信号(VR1,VG1,VB1)を出力する第1映像信号供給部921、ナビゲーション・システム制御部911からの出力に基づいてメニュー画面情報、渋滞情報等の第2映像信号(VR2,VG2,VB2)を出力する第2映像信号供給部931とを含む。
【0012】・・・
【0013】この結果、ナビゲーション・システム部900から表示装置制御部500には、読み出された地図と現在位置を示す第1映像信号(VR1,VG1,VB1)、メニューなどの第2映像信号(VR2,VG2,VB2)、制御信号(Cont.)並びに画面切り替え信号(SW1)がそれぞれ出力される。
【0014】表示装置制御部500は、ナビゲーション・システム部900からの制御信号(Cont.)に基づいて、液晶表示装置100に水平クロック信号(CK1)、水平スタ一卜信号(ST1)、ラッチ出力信号(SW2)、垂直クロック信号(CK2)及び垂直スタート信号(ST2)のそれぞれを出力するコントローラ回路511を含む。
【0015】即ち、表示装置制御部500は、コントローラ回路511からの水平クロック信号(CK1)を、ナビゲーション・システム部900からの画面切り替え信号(SW1)に基づいて位相を異ならしめて出力する水平クロック制御部521と、水平スター卜信号(ST1)をナビゲーション・システム部900からの画面切り替え信号(SW1)に基づいてオン期間を異ならしめて出力する水平スタート制御部531とを備えている。
【0016】更に、表示装置制御部500は、ナビゲーション・システム部900からの第1映像信号(VR1,VG1,VB1)を、画面切り替え信号(SW1)に基づいて、図3に示す液晶表示装置100の第1映像信号供給ラインR1,G1,B1と第2映像信号供給ラインR2,G2,B2とに所定のタイミングで供給する場合と、第1映像信号供給ラインR1,G1,B1に第1映像信号(VR1,VG1,VB1)を供給し,第2映像信号供給ラインR2,G2,B2に第2映像信号(VR2,VG2,VB2)を供給する場合とを選択的に切り替える選択出力回路541を備えて構成されている。
【0017】次に、この実施例の液晶表示装置100について、図3を参照して説明する。この液晶表示装置100は、アクティブマトリクス型の液晶パネル200と、この液晶パネル200を水平方向に駆動するための4個のX駆動回路部301,302,303、304及び垂直方向に1個のY駆動回路部400とを備えて構成される。
【0018】・・・
【0019】アレイ基板は、320×3本の信号線Xi(i=1、2、・・・、960)と240本の走査線Yj(j=1、2、・・・、240)とが略直交するように配置されている。各信号線Xiと各走査線Yjとの交点近傍には、それぞれ活性層に非晶質シリコン薄膜が用いられて成る逆スタガ型の薄膜トランジスタ(以下、TFTと略称する。)221を介してI.T.0.(Indium TinOxide)から成る画素電極225が配置されている。図3では4個の画素部分のみ代表して示してある。」

(c)「【0065】図13は図3に示したアクティブマトリクス型液晶表示装置の他の構成例を示す。図3においては水平クロック信号(CK1)がすべてのシフトレジスタSR1,SR2,SR3,SR4に同時に供給されているのに対して、図13の例では第1の水平クロック信号(CK1)がシフトレジスタSR1,SR2,SR3およびクロック切り替え回路312の一方の接点に供給され、第2の水平クロック信号(CK3)がクロック切り替え回路312の他方の接点に供給される。このクロック切り替え回路312は第1、第2の水平クロック信号(CK1)、(CK3)を画面切り替え信号(SW1)に基づいて選択し、シフトレジスタSR4に供給する。
【0066】図13の実施例において、クロック切り替え回路312が第1の水平クロック信号(CK1)の側に切り替えられると、同時にクロック切り替え回路311も水平スタート信号(ST1)側に切り替えられる。この結果、水平スタート信号(ST1)が第1の水平クロック信号(CK1)に従ってすべてのシフトレジスタSR1,SR2,SR3,SR4に順次転送され、すべての表示領域103に亘る単一の画像表示が行われる。
【0067】また、クロック切り替え回路312が第2の水平クロック信号(CK3)の側に切り替えられると、同時にクロック切り替え回路311も水平スタート信号(ST3)側に切り替えられる。この結果、シフトレジスタSR1,SR2,SR3には水平スタート信号(ST1)が第1の水平クロック信号(CK1)に従って順次転送される。一方、シフトレジスタSR3には水平スタート信号(ST3)が第2の水平クロック信号(CK3)に従って順次転送される。
【0068】これにより、第1映像信号(R1、G1、B1)による第1の映像が表示領域105に表示され、第2映像信号(R2、G2、B2)による第2の映像が表示領域107に表示される。
【0069】図14は図13に示した液晶表示装置100を用いた場合の表示装置制御部500の他の実施例を示すブロック図である。図14において、コントローラ回路511は第1の水平クロック信号(CK1)とは周波数の異なる水平クロック信号(CK3)を水平クロック信号供給ラインに供給する。
【0070】この水平クロック信号(CK3)は図4(b)のアスペクト比9:4の画像を表示領域107に表示する場合、図4(a)のアスペクト比9:16の画面分割しない画像を表示する場合と比べて周波数が1/4となるように制御され、図13の液晶表示装置100のクロック切り替え回路312を介してシフトレジスタSR4に供給される。
【0071】この結果、図15の表示領域107に示したように、図4(a)のアスペクト比9:16の画像が水平方向に圧縮されてアスペクト比9:4の画像として表示される。」

(d)「【0076】図19は図18におけるナビゲーション・システム部900の第2映像信号供給部931から出力される映像信号の構成例を示す図である。
【0077】図19の映像は図4(b)と同様に全体としてアスペクト比9:16を有する表示領域119に表示されるもので、4個のアスペクト比9:4の表示領域108、109、110、111で構成される。
【0078】・・・これらの表示領域108-111の周辺部において表示される画像信号のレベルは、図20(b)に示したようにレベル611?615,621?625,631?635として示すように互いに等しくするか、あるいは、図20(c)に示したようにRGB信号の夫々においてレベル611?615,621?625,631?635が夫々等しくなるように構成される。
【0079】これにより、図19の表示領域108-111の周辺部において表示される画像の色相、輝度レベルが同一となる。さらに、表示領域108、109、110、111に表示される映像120、121、122、123は各々の表示領域108-111の周辺部において境界線112、113、114、115に接することがないように構成される。
【0080】・・・
【0081】・・・
【0082】図21は図20に示した信号R2:VR2,G2:VG2,B2:VB2の変形例を示す波形図である。
【0083】図21において、表示期間1-4は図7の第2表示領域107の水平期間の長さと同一であり、表示期間1-4を合わせた期間が図19のアスペクト比9:16の表示領域119と同一あるいはそれ以上であるように構成される。
【0084】・・・
【0085】図22は図21の信号形式による信号R2:VR2,G2:VG2,B2:VB2を縦9、横16もしくはそれ以上のアスペクト比の表示領域128に表示した場合の信号の構成例を示す図である。図において、境界線112、113、114を境にして、映像部120?127の周辺部115、116、11、118の色相、輝度あるいは色相と輝度が隣接する周辺部で異なるレベルとなっている。 この場合は夫々の表示領域の境目が常に一定の色の差、輝度の差を持つことから、領域108?111の間の差異が明瞭であり、いずれの画像を第2表示領域に表示するかの選択の際に極めて分かりやすい。
【0086】以上種々の実施例で説明したように、9:16のアスペクト比を持つ画面における9:4のアスペクト比を持つ第2表示領域に画像を表示する際、この第2表示領域に表示する画像を第1表示領域の画像とは独立した画像として容易に選択して表示することができる。
【0087】また、表示される画像は、たとえば縦9、横16のアスペクト比の表示領域を垂直方向に2分割以上、たとえば4分割し、この各々の表示領域に種々の画像を表示し選択することができる。これにより、第1の表示領域に表示された画像に対してユーザが必要とする所定の画像を第2表示領域に表示することができ、2個の独立した画像を最適の内容で組み合わせて表示することができるようになった。」

(2)引用発明
・前記記載(a)ないし(d)、及び図1-4,13-15,19-22の内容を総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。

「複数本配列された走査線(Yj)に走査パルスを送るY駆動回路部(400)と、その走査線に略直交するように複数本配列された信号線(Xi)に映像信号を送るX駆動回路部(301,302,303,304)とによって薄膜トランジスタ(221)を駆動させ映像信号を表示領域(103)に表示する表示装置において、
複数の表示領域(105,107,108,109,110,111)に分割された表示領域(103)と、
前記表示領域各々に対して、独立して配された信号線と、
前記表示領域毎に独立して配されたX駆動回路部に水平クロック信号(CK1,CK3)を生成して供給する表示装置制御部(500)と、
映像信号各々を独立して処理する第1映像信号供給部(921)及び第2映像信号供給部(931)と、を具備し、
前記表示装置制御部は、前記処理された映像信号を、該信号の画像を表示する表示領域に配されたX駆動回路部に出力するとともに前記複数の映像信号毎に独立した前記水平クロック信号を生成することを特徴とする表示装置。」(以下、「引用発明」という。)


5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

まず、引用発明における、「複数本配列された走査線(Yj)に走査パルスを送るY駆動回路部(400)と、その走査線に略直交するように複数本配列された信号線(Xi)に映像信号を送るX駆動回路部(301,302,303,304)とによって薄膜トランジスタ(221)を駆動させ映像信号を表示領域(103)に表示する表示装置」が、本願発明における、「複数本配列された走査線に走査線駆動信号を送る走査線駆動回路と、その走査線に交差するように複数本配列された信号線に映像信号を送る信号線駆動回路とによってスイッチング素子を駆動させ画像信号を表示部に表示する画像表示装置」に相当することは明らかである。
同様に、引用発明における、「複数の表示領域(105,107,108,109,110,111)に分割された表示領域(103)」が、本願発明における、「複数の表示領域に分割された1画面の表示部」に、引用発明における、「前記表示領域各々に対して、独立して配された信号線」が、本願発明における、「前記表示領域各々に対して、独立して配された」信号線に、引用発明における、「前記表示領域毎に独立して配されたX駆動回路部に水平クロック信号(CK1,CK3)を生成して供給する表示装置制御部(500)」が、本願発明における、「前記表示領域毎に独立して配された信号線駆動回路に独立したタイミング信号を生成して供給する駆動回路制御手段」に、引用発明における、「映像信号各々を独立して処理する第1映像信号供給部(921)及び第2映像信号供給部(931)」が、本願発明における、「複数の画像信号の入力を受け付け、該画像信号各々を独立して画像処理する画像処理部」に、引用発明における、「前記表示装置制御部は、前記処理された映像信号を、該信号の画像を表示する表示領域に配されたX駆動回路部に出力するとともに前記複数の映像信号毎に独立した前記水平クロック信号を生成することを特徴とする表示装置」が、本願発明における、「前記駆動回路制御手段は、前記画像処理された画像信号を、該信号の画像を表示する表示領域に配された信号線駆動回路に出力するとともに前記複数の画像信号毎に独立した前記タイミング信号を生成することを特徴とする画像表示装置」に、それぞれ相当することは明らかである。

してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
「複数本配列された走査線に走査線駆動信号を送る走査線駆動回路と、その走査線に交差するように複数本配列された信号線に映像信号を送る信号線駆動回路とによってスイッチング素子を駆動させ画像信号を表示部に表示する画像表示装置において、
複数の表示領域に分割された1画面の表示部と、
前記表示領域各々に対して、独立して配された信号線と、
前記表示領域毎に独立して配された信号線駆動回路に独立したタイミング信号を生成して供給する駆動回路制御手段と、
複数の画像信号の入力を受け付け、該画像信号各々を独立して画像処理する画像処理部と、を具備し、
前記駆動回路制御手段は、前記画像処理された画像信号を、該信号の画像を表示する表示領域に配された信号線駆動回路に出力するとともに前記複数の画像信号毎に独立した前記タイミング信号を生成することを特徴とする画像表示装置。」

(相違点)
本願発明においては「表示領域各々に対して、独立して配された走査線」及び「表示領域毎に独立して配された走査線駆動回路」を備え、「駆動回路制御手段」が該回路へ「独立したタイミング信号を生成して供給する」ようにされているのに対し、引用発明はそのような構成とされていない点。


6.判断
上記相違点について検討する。

周知例1にも、

「【0009】このマルチ画面液晶表示装置の用途の代表的なものとしては、例えば企業等の広告、駅構内等での各種案内の表示手段、その他の公共の場所での各種の情報表示を行う手段がある。この情報表示では、構成する個々の液晶パネルに独立した画面を表示したり、全ての液晶パネルに1つの画面を表示するような使用がなされる。」

「【0061】図8は本発明によるマルチ画面液晶表示装置の第4実施例を説明する模式平面図であり、4個の液晶パネルを横方向(長辺方向)と縦方向(短辺方向)に2段に配置して構成した4面マルチ画面液晶表示装置における液晶パネル駆動用基板の配置例を示す。
【0062】横方向に2個配置した液晶パネルPNLを縦方向に2段で配置した場合、各液晶パネルの走査線駆動基板PCB1-1とPCB1-2をそれぞれ各液晶パネルの短辺側に配置し、信号線駆動基板PCB2-1,PCB2-2,PCB2-3,PCB2-4はそれぞれ長辺)側に配置する。」

と記載されているように、一般に、表示装置において縦横方向に分割された4面以上の表示領域各々に独立した形態の表示を行うようにすることは周知技術(以下、「周知技術1」という。)であり、また分割された領域ごとに走査線駆動回路、及び信号線駆動回路を設けて、独立したタイミング信号による制御を行うことによって、各領域で独立した表示が可能であることも当業者にとって自明な事項である。
よって、引用発明において、上記周知技術1や自明な事項を考慮すれば、横方向と同様に、縦方向にも独立した走査線及び走査線駆動回路を設けて独立したタイミング信号を供給するようにし、表示領域を上下にも分割するようになすことは、当業者が容易になし得たものであるといえる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1から当業者が予測可能なものであって、格別のものではない。

したがって、本願発明は引用発明および周知技術1に基づいて当業者が容易に発明し得たものといえる。


7.請求人の主張について
審判請求人は、本件意見書において、概略、以下のように主張しているので、検討する。
(1)請求人の主張の概要
「このように、引用刊行物2(当審注:周知例1のことである。)には、4つの画面、すなわち4台の表示装置をタイル状に配置する際に、表示装置間のつなぎ目を無くすことを課題とした発明が開示されております。すなわち、引用刊行物2において用いられる表示装置は、4台の表示装置をタイル状に配置したものと同等です。つまり、引用刊行物2には、タイル状に配置したの4台の表示装置それぞれに対して独立の駆動回路を配置する技術が開示されているにすぎず、本願発明のように1画面の表示部を分割してなる複数の表示領域毎に独立して駆動回路が配置されることについては一切開示も示唆もなされておりません。
なお、引用刊行物2の段落0009には「全ての液晶パネルに1つの画面を表示するような使用がなされる。」との記載がございますが、引用刊行物2の上記記載における「1つの画面」とは、本願発明1のようにハードウェアとして1つ(1台)の画面という意味ではなく、表示される内容として1つの画面(1つの映像)という意味であり、文字としては同じであるものの、意味するものは大きく異なります。
以上のような引用刊行物2に関する検討に基づき、引用刊行物2と上記相違点との関係について以下のように検討いたします。
引用刊行物1(当審注:引用例のことである。)に係る発明は1画面の表示部に関する発明です。一方、引用刊行物2に係る課題は、複数台の表示装置をタイル状に配置する際に初めて生じうる課題です。そのため、引用刊行物1に係る発明において、引用刊行物2に係る技術的課題は生じ得ず、引用刊行物2のように構成することについての動機付けは一切ございません。
さらに、たとえ引用刊行物1に係る発明と引用刊行物2に係る発明とを組み合わせたとしても、単に引用刊行物1に係る表示装置が複数枚タイル状に配置された装置が構築されるに過ぎません。すなわち、引用刊行物1に係る表示装置毎に独立した1組の駆動回路が配置されるにすぎず、本願発明1の構成には至りません。
以上のことから、引用刊行物1に開示された発明から本願発明1を想到することは、当業者といえども困難であるといえます。よって、本願発明1は、進歩性を有するものであると思料いたします。」

(2)検討
請求人は「引用刊行物2の上記記載における「1つの画面」とは、本願発明1のようにハードウェアとして1つ(1台)の画面という意味ではなく、表示される内容として1つの画面(1つの映像)という意味であり、文字としては同じであるものの、意味するものは大きく異なります。」と主張している。
しかしながら、仮に本願の請求項1における「1画面」なる記載が、「ハードウェアとして1つ(1台)の画面」であるもののみを指すとしても、引用発明はまさにそのような構成を有する表示装置であり、表示部が「1画面」であることは本願発明と引用発明との間の相違点とはなり得ない。
次に、「引用刊行物2には、4つの画面、すなわち4台の表示装置をタイル状に配置する際に、表示装置間のつなぎ目を無くすことを課題とした発明が開示されております。」「引用刊行物1に係る発明は1画面の表示部に関する発明です。一方、引用刊行物2に係る課題は、複数台の表示装置をタイル状に配置する際に初めて生じうる課題です。そのため、引用刊行物1に係る発明において、引用刊行物2に係る技術的課題は生じ得ず、引用刊行物2のように構成することについての動機付けは一切ございません。」との主張に関して検討する。
上記「6.判断」で示したように、周知例1は、「一般に、表示装置において縦横方向に分割された4面以上の表示領域各々に独立した形態の表示を行うようにすること」という周知技術1を示す例として挙げたものである。請求人の言う「表示装置間のつなぎ目を無くすこと」という課題が、4面以上の表示領域各々に独立した形態の表示を行うことにより解決されるものでないことは明らかであって、該課題は周知技術1の適用に関する動機付けとは無関係であり、周知技術1の適用を妨げる要因ともならない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。


8.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は当審拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-16 
結審通知日 2013-01-22 
審決日 2013-02-05 
出願番号 特願2007-51272(P2007-51272)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福村 拓一宮 誠  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 山川 雅也
中塚 直樹
発明の名称 画像表示装置  
代理人 森 隆一郎  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 松尾 直樹  

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