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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20129701 審決 特許
不服201126007 審決 特許
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不服20127054 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1271813
審判番号 不服2011-26373  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-06 
確定日 2013-03-21 
事件の表示 特願2001-232224号「天井パネルの取付構造、天井パネル取付具」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月13日出願公開、特開2003-41705号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年7月31日の出願であって、平成23年8月29日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成23年12月6日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成24年6月4日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、回答書は提出されなかった。

第2 平成23年12月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年12月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「【請求項1】
天井から吊した天井フレームに、天井パネルの一部を載せて取り付ける天井パネルの取付構造において、
前記天井パネルの上面を下方に押圧すると共に、前記天井パネルの下面からの押上力により、この天井パネルの上方への取り外しを許容する天井パネル取付具を設け、
この天井パネル取付具の上部に天井フレームの保持部を上方から挟み込む取付部を有するとともに、その下方に一対に設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する傾斜片を備え、弾性力により前記傾斜片の下部がパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有し、前記取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなり、これら対をなす凸部の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状を有することを特徴とする天井パネルの取付構造。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である天井パネル取付具について、「下方に一対に設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する傾斜片を備え」、弾性力により「前記傾斜片の下部が」パネルの上面を下方に押圧する押圧部を有し、前記取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けて「なり、これら対をなす凸部の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状を有する」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭48-140029号(実開昭50-83020号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、天井板の押え金具に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「まず、この考案の構成を一実施例として示した図面に従つて説明する。
(1)は金属製の天井桟で、両側には上枠(2)と下枠(3)が形成され、下枠(3)の外側には天井板受枠(4)が形成されている。(5)は押え金具で、一枚の金属板を折曲して成り、一端には天井桟(1)の下枠(3)に嵌合する傾斜状の係合片(6)を形成し、中央部を下方へ折曲して天井桟(1)の上枠(2)に嵌合する係合部(7)を形成し、垂下した部分に略円弧状の弾力性を有する押圧片(8)が形成されている。(9)は天井板で、天井桟(1)の天井板受枠(4)に設置される。」(明細書第1頁第16行?第2頁第7行)
(イ)「次いで天井板(9)を、上方より押え金具(5)の押圧片(8)をその弾力に抗して押圧しながら天井桟(1)の天井板受枠(4)に係合させて固定する。この状態において、天井板(9)は上方より押え金具(5)に設けた押圧片(8)の弾発力によつて押圧され、下方より天井桟(1)の天井板受枠(4)によつて支持されている・・・」(明細書第2頁第13?19行)
(ウ)第1図には、
天井桟(1)の天井板受枠(4)に、天井板(9)の端部を載せて設置する天井板(9)の設置構造であって、
天井板(9)の上面角部を下方に押圧する押え金具(5)を左右一対設け、
左右一対の押え金具(5)それぞれの上部に、天井桟(1)の上枠(2)に挟み込まれる屈曲部を有するとともに、それぞれの下方に設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する部分を備え、その弾力により傾斜する部分の下部が天井板(9)の上面角部を下方に押圧する押圧片(8)を有する
天井板(9)の設置構造が記載されている。

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「天井桟(1)の天井板受枠(4)に、天井板(9)の端部を載せて設置する天井板(9)の設置構造であって、
天井板(9)の上面角部を下方に押圧する押え金具(5)を左右一対設け、
左右一対の押え金具(5)それぞれの上部に、天井桟(1)の上枠(2)に挟み込まれる屈曲部を有するとともに、それぞれの下方に設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する部分を備え、その弾力により傾斜する部分の下部が天井板(9)の上面角部を下方に押圧する押圧片(8)を有する
天井板(9)の設置構造」

(2)本願出願前に頒布された刊行物である実願昭52-91125号(実開昭54-18010号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、天井板の接続装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「本考案は、略逆U字状に鋼板を曲成して形成せる押え具(1)の両下端より外方へそれぞれ押え片(2)を延出すると共に押え具(1)の両内側面に係止突起(3)を突設し、下端両側に外方へ一対の下押え片(4)を延設し上端に係合突部(5)を突設した略I字状の下押え具(6)を2枚の天井板(7)の端面間に挿入して下押え片(4)(4)を夫々の天井板(7)(7)下面に当接せしめ、下押え具(6)に上方より被嵌せる押え具(1)の両係止突起(3)(3)を係合突部(5)の両側下端に弾性的に係合せしめると共に両押え片(4)(4)を夫々の天井板(7)(7)端部上面に圧接せしめて成る天井板の接続装置に係り、その目的とするところは薄物の軟弱な天井板でも確実に接続できる天井板の接続装置を提供するにある。」(明細書第1頁第17行?第2頁第11行)
なお、図面において、押え具(1)の天井板(7)(7)端部上面に設する部分は、押え片(2)(2)であるので、「両押え片(4)(4)」は「両押え片(2)(2)」の誤記と認める。
(イ)「尚、第6図のように係止突起(3)は側片(8)を内方へ曲成して形成してあつてもよく、この場合は第7図(a)(b)(c)の如く側片(8)の傾斜部(11)によつて押し広げられた側片(8)の弾発力で係止突起(3)が係合突部(5)に係止される。」(明細書第4頁第4?9行)
(ウ)第6?7図には、
上部に、下押え具(6)の係合突部(5)を上方から挟み込む部分を有するとともに、
その下方に、一対に設けられる押え片(2)を備え、
押え片(2)が天井板(7)の上面に圧接せしめる下面を有し、
係合突部(5)を上方から挟み込む部分の下側に、下押え具(6)の係合突部(5)の下面に側片(8)の弾発力で係止される係止突起(3)(3)を設けてなり、係止突起(3)(3)の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状の押え具(1)
を用いた天井板(7)の取付構造
が記載されている。

すると、刊行物2には、図6?7記載の押え具に着目して、次の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が開示されているものということができる。
「上部に、下押え具(6)の係合突部(5)を上方から挟み込む部分を有するとともに、
その下方に、一対に設けられる押え片(2)を備え、
押え片(2)が天井板(7)の上面に圧接せしめる下面を有し、
係合突部(5)を上方から挟み込む部分の下側に、下押え具(6)の係合突部(5)の下面に側片(8)の弾発力で係止される係止突起(3)(3)を設けてなり、係止突起(3)(3)の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状の押え具(1)
を用いた天井板(7)の取付構造」

3.本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「天井桟(1)」は、本願補正発明の「天井フレーム」に相当し、以下同様に、
「天井板(9)」は、「天井パネル」に、
「天井板(9)の端部を載せて設置する」ことは、「天井パネルの一部を載せて取り付ける」ことに、
「天井板(9)の設置構造」は、「天井パネルの取付構造」に相当する。
(b)引用発明の「天井板(9)の上面角部を下方に押圧する押え金具(5)」と、本願補正発明の「天井パネルの上面を下方に押圧すると共に、前記天井パネルの下面からの押上力により、この天井パネルの上方への取り外しを許容する天井パネル取付具」とは、「天井パネルの上面を下方に押圧する天井パネル取付具」である点で共通する。
(c)引用発明の「左右一対の押え金具(5)」と、本願補正発明の「天井パネル取付具」とは、「天井パネル取付具」である点で共通する。
また、引用発明の「天井桟(1)」の「上枠(2)」は、本願補正発明の「天井フレーム」の「保持部」に相当する。
そして、引用発明の「左右一対の押え金具(5)それぞれの上部に、天井桟(1)の上枠(2)に挟み込まれる屈曲部を有する」ことと、本願補正発明の「天井パネル取付具の上部に、天井フレームの保持部を上方から挟み込む取付部を有する」こととは、「天井パネル取付具の上部に、取付部を有する」点で共通する。
(d)引用発明の「左右一対の押え金具(5)」において、「そのそれぞれの下方に設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する部分を備え、その弾力により傾斜する部分の下部が天井板(9)の上面角部を下方に押圧する押圧片(8)を有する」ことと、本願補正発明の「天井パネル取付具」において、「その下方に一対に設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する傾斜片を備え、弾性力により前記傾斜片の下部がパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有し、前記取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなり、これら対をなす凸部の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状を有する」こととは、「天井パネル取付具」において、「その下方に一対設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する傾斜片を備え、弾性力により前記傾斜片の下部がパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有する」点で共通する。

(2)両発明の一致点
「天井フレームに、天井パネルの一部を載せて取り付ける天井パネルの取付構造において、
前記天井パネルの上面を下方に押圧する天井パネル取付具を設け、
この天井パネル取付具の上部に、取付部を有するとともに、その下方に一対設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する傾斜片を備え、弾性力により前記傾斜片の下部がパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有する天井パネルの取付構造。」

(3)両発明の相違点
ア.本願補正発明は、天井フレームが、「天井から吊した」ものであるのに対して、引用発明は、天井から吊したものか、否か、明らかでない点。
イ.本願補正発明は、天井パネル取付具が、「天井パネルの下面からの押上力により、この天井パネルの上方への取り外しを許容する」ものであるのに対して、引用発明は、上方への取り外しを許容するか、否か、明らかでない点。
ウ.本願補正発明は、天井パネル取付具が、上部に「天井フレームの保持部を上方から挟み込む」取付部を有し、下方に「一対に設けられ」る傾斜片を備え、「取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなり、これら対をなす凸部の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状を有する」ものであるのに対して、引用発明は、天井パネル取付具が「左右一対の押え金具(5)」として構成され、左右一対の押え金具(5)で傾斜片が左右一対設けられるものであり、さらに、上部に「天井フレームの保持部を上方から挟み込む」取付部を有し、「取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなり、これら対をなす凸部の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状を有する」ものでない点。

4.容易想到性の検討
(1)相違点ア.について
天井パネルの取付構造において、天井フレームを天井から吊す態様のものは、周知慣用のものであり、引用発明の天井桟(1)(本願補正発明の「天井フレーム」に相当するもの)を、該周知慣用の態様の天井から吊すものとして、相違点ア.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点イ.について
引用発明は、押え金具(5)が「下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する部分を備え、その弾力により傾斜する部分の下部が天井板(9)の上面角部を下方に押圧する」押圧片(8)を有するものであり、かつ、押圧片(8)は、刊行物1記載事項(イ)の「天井板(9)を、上方より押え金具(5)の押圧片(8)をその弾力に抗して押圧しながら天井桟(1)の天井板受枠(4)に係合させて固定する」様に動作するものであることを考慮すると、天井板(9)の下面からの押上力が加わった際には、下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する部分の作用により、押圧片(8)を側方又は上方に押圧する力が発生して、天井板(9)が上方へ取り外されると考えられる、すなわち、実質的に天井パネル取付具が、「天井パネルの下面からの押上力により、この天井パネルの上方への取り外しを許容する」ものといえるので、相違点イ.は、実質的に相違点ではない。

(3)相違点ウ.について
(a)刊行物2には、刊行物2記載の発明が記載されており、その「下押え具(6)」は、本願補正発明の「天井フレーム」に相当し、以下同様に、
「係合突部(5)」は、「保持部」に、
「係合突部(5)を上方から挟み込む部分」及び「係合突部(5)を上方から挟み込む部分の下側」は、「保持部を上方から挟み込む取付部」に、
「天井板(7)」は、「天井パネル」に、
「天井板(7)の上面に圧接せしめる下面」は、「パネルの上面を下方に押圧する押圧部」に、
「下押え具(6)の係合突部(5)の下面に側片(8)の弾発力で係止される係止突起(3)(3)」は、「前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部」に、
「係止突起(3)(3)の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状の押え具(1)」の構成は、「天井パネル取付具」が「これら対をなす凸部の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状を有する」ことに、
相当する。
また、刊行物2記載の発明の「押え具(1)」の「下方に一対に設けられる押え片(2)を備え」ることと、本願補正発明の「天井パネル取付具」の「下方に一対に設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する傾斜片を備え」ることとは、「天井パネル取付具」の「下方に一対に設けられた部材を備え」る点で共通する。
また、刊行物2記載の発明の「押え片(2)が天井板(7)の上面に圧接せしめる下面を有し」と、本願補正発明の「弾性力により前記傾斜片の下部がパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有し」とは、「天井パネル取付具の下方に一対に設けられた部材の下部がパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有し」た点で共通する。

そうすると、刊行物2記載の発明は、本願補正発明の表現に倣えば「上部に天井フレームの保持部を上方から挟み込む取付部を有するとともに、その下方に一対に設けられた部材を備え、前記天井パネル取付具の下方に一対に設けられた部材の下部がパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有し、前記取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなり、これら対をなす凸部の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状を有する天井パネル取付具を用いた天井パネルの取付構造」と言い換えることができる。

(b)刊行物2記載の発明は、天井パネルの上面を下方に押圧する押圧部を有する天井パネル取付具を用いた天井パネルの取付構造という基本構成において引用発明と共通するものであるとともに、引用発明も工業製品である以上、コスト等の観点から部品点数の減少が望ましいと認識されるので、一対設けられる押え金具(5)に代えて、刊行物2記載の発明の係止突起(3)(3)(本願補正発明の「一対の凸部」に相当するもの)を備えた押え具(1)を1個使用して、傾斜片を、1個の天井パネル取付具に「一対に設けられ」るものとし、取付部も、刊行物2記載の発明の様に、天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなり、これら対をなす凸部の上面が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する形状とした、天井フレームの保持部を上方から挟み込む態様のものとして、相違点ウ.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(4)総合判断
そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、刊行物2記載の発明から、当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成23年12月6日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成23年1月28日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
天井から吊した天井フレームに、天井パネルの一部を載せて取り付ける天井パネルの取付構造において、
前記天井パネルの上面を下方に押圧すると共に、前記天井パネルの下面からの押上力により、この天井パネルの上方への取り外しを許容する天井パネル取付具を設け、
この天井パネル取付具の上部に天井フレームの保持部を上方から挟み込む取付部を有するとともに、その下方に弾性力によりパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有し、前記取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなることを特徴とする天井パネルの取付構造。」

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭51-177480号(実開昭53-93906号)のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という。)には、設備プレート固定装置に関して、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「挟持部(4a)と上向きの切起こし係止片(5)と押付部(4b)とを形成した弾性板からなるプレート押え(4)の挟持部(4a)でTバー(3)のウエブ部(3a)を挟持し、係止片(5)を前記ウエブ部(3b)側面に突出した肩部(6)に下方から係合させ、押付部(4b)で前記Tバー(3)のフランジ部(3b)上に載せた設備プレート(2)を上方から押付け、このプレート(2)をTバー(3)に固定したことを特徴とする設備プレート固定装置。」(実用新案登録請求の範囲)
なお、「前記ウエブ部(3b)」は「前記ウエブ部(3a)」の誤記と認める。
(イ)「この考案は、設備プレートをプレート押えを用いてTバーに簡単な操作で確実に固定し、前述した不具合を解消しようとするものである。」(明細書第2頁第9?11行)
(ウ)「設備プレート(2)を固定する作業も少ない労力で簡易にできる効果がある。」(明細書第4頁第2?3行)
(エ)第2?4図には、
上部に、Tバー(3)の上部を覆う断面ほぼ円形の部分(4c)及び、Tバー(3)のウエブ部(3a)を挟持する挟持部(4a)を有するとともに、
その下方に、設備プレート(2)を上方から押付け、このプレート(2)をTバー(3)に固定する押付部(4b)を有し、
円形の部分(4c)内側の挟持部(4a)の上側部分に、Tバー(3)のウエブ(3a)側面に突出した肩部(6)の下面に接する係止片(5)を設けた、弾性板からなるプレート押え(4)
を用いた設備プレート(2)の取付構造
が記載されている。

すると、刊行物3には、次の発明(以下「刊行物3記載の発明」という。)が開示されているものということができる。
「上部に、Tバー(3)の上部を覆う断面ほぼ円形の部分(4c)及び、Tバー(3)のウエブ部(3a)を挟持する挟持部(4a)を有するとともに、
その下方に、設備プレート(2)を上方から押付け、このプレート(2)をTバー(3)に固定する押付部(4b)を有し、
円形の部分(4c)内側の挟持部(4a)の上側部分に、Tバー(3)のウエブ(3a)側面に突出した肩部(6)の下面に接する係止片(5)を設けた、弾性板からなるプレート押え(4)
を用いた設備プレート(2)の取付構造」

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「天井桟(1)」は、本願発明の「天井フレーム」に相当し、以下同様に、
「天井板(9)」は、「天井パネル」に、
「天井板(9)の端部を載せて設置する」ことは、「天井パネルの一部を載せて取り付ける」ことに、
「天井板(9)の設置構造」は、「天井パネルの取付構造」に相当する。
(b)引用発明の「天井板(9)の上面角部を下方に押圧する押え金具(5)」と、本願発明の「前記天井パネルの上面を下方に押圧すると共に、前記天井パネルの下面からの押上力により、この天井パネルの上方への取り外しを許容する天井パネル取付具」とは、「天井パネルの上面を下方に押圧する天井パネル取付具」である点で共通する。
(c)引用発明の「左右一対の押え金具(5)」と、本願発明の「天井パネル取付具」とは、「天井パネル取付具」である点で共通する。
また、引用発明の「天井桟(1)」の「上枠(2)」は、本願発明の「天井フレーム」の「保持部」に相当する。
そして、引用発明の「左右一対の押え金具(5)それぞれの上部に、天井桟(1)の上枠(2)に挟み込まれる屈曲部を有する」ことと、本願発明の「天井パネル取付具の上部に天井フレームの保持部を上方から挟み込む取付部を有するとともに、」「前記取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなること」こととは、「天井パネル取付具の上部に取付部を有する」点で共通する。
(d)引用発明の「左右一対の押え金具(5)」において、「そのそれぞれの下方に設けられそれぞれ山形形状を形成するとともにその下部が下方に向かうにつれ相寄る方向に傾斜する部分を備え、その弾力により傾斜する部分の下部が天井板(9)の上面角部を下方に押圧する押圧片(8)を有する」ことは、本願発明の「天井パネル取付具」において、「その下方に弾性力によりパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有」することに相当する。

(2)両発明の一致点
「天井フレームに、天井パネルの一部を載せて取り付ける天井パネルの取付構造において、
前記天井パネルの上面を下方に押圧する天井パネル取付具を設け、
この天井パネル取付具の上部に、取付部を有するとともに、その下方に弾性力によりパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有する天井パネルの取付構造。」

(3)両発明の相違点
ア.本願発明は、天井フレームが、「天井から吊した」ものであるのに対して、引用発明は、天井から吊したものか、否か、明らかでない点。
イ.本願発明は、天井パネル取付具が、「天井パネルの下面からの押上力により、この天井パネルの上方への取り外しを許容する」ものであるのに対して、引用発明は、上方への取り外しを許容するか、否か、明らかでない点。
ウ’.本願発明は、天井パネル取付具が、上部に「天井フレームの保持部を上方から挟み込む」取付部を有し、「取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなる」ものであるのに対して、引用発明はそうでない点。

4.容易想到性の検討
(1)相違点ア.について
上記相違点ア.は前記の「第2 3.(3)ア.」の相違点であり、前記「第2 4.(1)」で検討したように当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点イ.について
上記相違点イ.は前記の「第2 3.(3)イ.」の相違点であり、前記「第2 4.(2)」で検討したように実質的に相違点ではない。

(3)相違点ウ’.について
(a)刊行物3には、刊行物3記載の発明が記載されており、その「Tバー(3)」は、本願発明の「天井フレーム」に相当し、以下同様に、
Tバー(3)の「ウエブ部(3a)」の挟持部(4a)で挟持される部分及び「ウエブ(3a)側面に突出した肩部(6)」でなる部分は、「天井フレームの保持部」に、
「Tバー(3)の上部を覆う断面ほぼ円形の部分(4c)」及び「Tバー(3)のウエブ部(3a)を挟持する挟持部(4a)」からなる部分は、「天井フレームの保持部を上方から挟み込む取付部」に、
「設備プレート(2)」は、「天井パネル」に、
「設備プレート(2)を上方から押付け、このプレート(2)をTバー(3)に固定する押付部(4b)」は、刊行物3記載の発明のプレート押え(4)が「弾性板からなる」ものであることを考慮すると、「弾性力によりパネルの上面を下方に押圧する押圧部」に、
「係止片(5)」は、「凸部」に、
「プレート押え(4)」は、「天井パネル取付具」に相当する。

そうすると、刊行物3記載の発明は、本願発明の表現に倣えば「上部に天井フレームの保持部を上方から挟み込む取付部を有するとともに、その下方に弾性力によりパネルの上面を下方に押圧する押圧部を有し、前記取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する凸部を設けてなる天井パネルの取付構造。」と言い換えることができる。

(b)刊行物3記載の発明は、天井パネルの上面を下方に押圧する押圧部を有する天井パネル取付具を用いた天井パネルの取付構造という基本構成において引用発明と共通するものであるとともに、引用発明も「少ない労力で簡易に出来」ることは望ましいことと認識されるので、押え金具(5)(本願発明の「天井パネル取付具」に対応するもの。)の天井桟(1)に対する取付け構成を、刊行物3記載の発明のプレート押え(4)の構成のものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、刊行物3記載の発明のプレート押え(4)の係止片(5)(本願発明の「凸部」に相当するもの)は、刊行物3の第3図に、1つ設けた態様で記載されたものであるが、係止部の数は、所望する強度等を考慮して適宜選択するものであり、対向する側に一対配置することも当業者が適宜し得る設計事項である。
そうすると、引用発明の押え金具(5)の天井桟(1)に対する取付け構成を、刊行物3記載の発明のプレート押え(4)の構成のものとするとともに、その係止片(5)を一対配置した態様として、天井パネル取付具が、上部に「天井フレームの保持部を上方から挟み込む」取付部を有し、「取付部に前記天井フレームの保持部の下面に接する一対の凸部を設けてなる」ものとして、相違点ウ’.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(4)総合判断
そして、本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物3記載の発明から、当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-18 
結審通知日 2013-01-22 
審決日 2013-02-04 
出願番号 特願2001-232224(P2001-232224)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
P 1 8・ 575- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 中川 真一
筑波 茂樹
発明の名称 天井パネルの取付構造、天井パネル取付具  
代理人 赤澤 一博  

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