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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1271998
審判番号 不服2012-4349  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-06 
確定日 2013-03-28 
事件の表示 特願2005-251272「オートフォーカス装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月15日出願公開、特開2007- 65290〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年8月31日の出願であって、平成23年4月18日付けで手続補正がなされたが、同年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年3月6日に審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成24年11月6日付けで上記平成24年3月6日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶理由が通知された。
これに対し、平成25年1月15日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

第2 補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年1月15日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正発明
平成25年1月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として以下のとおりのものに補正された。
「撮影レンズを通して被写体像を撮像する撮像部と、
前記撮像部から出力された画像信号を用いて人物の顔を複数回検出する顔検出部と、
前記画像信号のコントラストに基づいてフォーカスレンズの駆動を制御するフォーカス制御部と、を含み、
前記フォーカス制御部は、前記顔検出部によって複数回連続して顔が検出され、かつ、前記顔検出部によって検出される顔の位置が移動している第1条件を満たす場合、又は、前記顔検出部によって複数回連続して顔が検出され、かつ、前記顔検出部によって検出される顔の大きさが変化している第2条件を満たす場合に前記フォーカスレンズの駆動を行う第1制御と、前記第1条件及び前記第2条件を満たさない場合、前記フォーカスレンズの駆動を行わない第2制御とを繰り返し行うことを特徴とするオートフォーカス装置。」

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2.特許法第36条第6項第2号に関する検討
(1)特定事項1
補正発明を特定する事項である「前記顔検出部によって複数回連続して顔が検出され」(以下「特定事項1」という。)について検討する。
(あ)技術的意義が一義的に明確に理解できるかどうかの検討
補正発明の「複数回検出する顔検出部」という事項とともに、特定事項1の有する技術的意義を検討すると、特定事項1は、(a)顔検出部自体が、例えば連写機能と同様な検出機能を有し、1度のレリーズ動作によって複数回の顔検出を連続して行うもの、(b)顔検出部自体は1度の顔検出しか行わないものの、何らかの条件によっては顔検出動作が連続して繰り返されるもの、(c)顔検出部に複数の検出手段を備え、それらを連続して動作されるもの、等、多義的な解釈が可能であるから、特定事項1は、その技術的意義が一義的に明確に理解できるとはいえない。
(い)本願明細書又は図面を参酌した理解
上記(あ)のとおり、特定事項1は、その技術的意義が一義的に明確に理解できないから、本願明細書又は図面を参酌する。
本願明細書及び図面には、特定事項1を直接的に記載した箇所は認められない。
そこで、本願明細書又は図面に特定事項1を示唆する記載があるかどうかを検討する。
本願明細書及び図面には「顔検出部」と「複数回連続」に関して「顔検出連続失敗回数」(段落【0043】等)の記載が認められるが、当該記載は顔検出に失敗した回数に関するものであるから、特定事項1の「複数回連続して顔が検出され」ることに関する記載でないことは明らかである。
また、本願明細書及び図面には「顔検出結果履歴の(今回)」及び「顔検出結果履歴の(前回)」(段落【0051】等)の記載も認められる。これらの記載から、顔検出部による顔の検出が複数回行われるものであることは理解できるものの、それらが「連続して」行われるかどうかは明らかでない。むしろ、図2及びそれに関連する明細書の記載を参酌すれば、(前回)の顔検出と(今回)の顔検出とは連続しては行われていないというべきである。
他に本願明細書又は図面に特定事項1を示唆する記載は見当たらない。
したがって、特定事項1は本願明細書又は図面を参酌してもその指し示す技術的意味を特定することはできない。

(2)特定事項2
同じく補正発明を特定する事項である「第1制御と、・・・第2制御とを繰り返し行う」(以下「特定事項2」という。)について検討する。
(あ)技術的意義が一義的に明確に理解できるかどうかの検討
特定事項2は、(a)第1制御と第2制御が独立して、それぞれを繰り返し行う場合、(b)第1制御と第2制御とを交互に繰り返し行うもの、等、多義的な解釈が可能である。
さらに、第1制御が、「第1条件を満たす場合」又は「・・・第2条件を満たす場合」の複数の選択肢を包含することから、特定事項2はさらに多くの解釈が可能となる。
したがって、特定事項2は、その技術的意義が一義的に明確に理解できるとはいえない。
(い)本願明細書又は図面を参酌した理解
上記(あ)のとおり、特定事項2も、その技術的意義が一義的に明確に理解できないから、本願明細書又は図面を参酌する。
本願明細書及び図面には、特定事項2を直接的に記載した箇所は認められない。
そこで、本願明細書又は図面に特定事項2を示唆する記載があるかどうかを検討する。
特定事項2を特定する「第1制御」及び「第2制御」は、ともに特定事項1をその構成要素としている。
そして、上記(1)のとおり、特定事項1は、その指し示す技術的意味を特定することはできないのであるから、同様の理由により特定事項2もその指し示す技術的意味を特定することはできない。

(3)小括
上記のとおりであるから、補正発明は明確とはいえない。
したがって、補正発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願の特許性
1.請求項1の記載
平成25年1月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1の記載は、平成23年4月18日付けの手続補正書に記載された、以下のとおりのものである。
「撮影レンズを通して被写体像を撮像する撮像部と、
前記撮像部から出力された画像信号を用いて人物の顔を検出する顔検出部と、
前記画像信号のコントラストに基づいてフォーカスレンズの駆動を制御するフォーカス制御部とを含み、
前記フォーカス制御部は、前記顔検出部によって検出される顔の位置が移動せず、かつ前記顔の大きさが変化しないとき、前記フォーカスレンズの駆動を制限することを特徴とするオートフォーカス装置。」

2.特許法第36条第6項第1号に関する検討
当審の拒絶理由で示したとおり、請求項1の「フォーカスレンズの駆動を制限する」の記載に関して、本願の発明の詳細な説明には段落【0041】に「ステップS208へ戻る場合は、顔検出エリアが移動せず、かつ顔検出エリア面積が変化していない。この場合の制御装置1は、AF処理を行わずにステップS208へ戻る。」と、また段落【0088】に「ステップS208以降では、顔検出処理によって検出された顔検出エリア(顔エリア)が移動せず(ステップS222を否定判定)、かつ顔エリアの面積(範囲)が変化しない(ステップS225を否定判定)場合は、AF処理(ステップS230)を行わずにステップS208へ戻るようにした。」等と記載されている。
これらの記載事項に基づけば、上記請求項1の「フォーカスレンズの駆動を制限する」とは、「フォーカスレンズの駆動を行わない」ことを意味することは明らかである。
これに対して、上記「フォーカスレンズの駆動を制限する」という記載が、それ以外の、例えば「駆動範囲を制限する」ことや「駆動回数を制限する」こと等の種々の事項を包含する概念であることは明らかである。
しかしながら、「フォーカスレンズの駆動を行わない」以外の上記事項については、本願の発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
そして、請求項1に記載された発明において、そのような事項が本願の出願時、当業者にとって技術常識であったとする根拠もない。
すなわち、請求項1に記載された発明は、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなる。
したがって、本願の請求項1に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない発明を含む。
よって、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.特許法第36条第6項第2号に関する検討
同じく当審の拒絶理由で示したとおり、請求項1の「検出される顔の位置が移動せず、かつ前記顔の大きさが変化しないとき」とは、具体的のどのような事項を指し示すのか、その技術的外縁が不明確である。
例えば、通常、フォーカス処理が終了し、レリーズ動作が行われる直前の状態は、まさにそのような「とき」に該当するが、そうであるとするならば、顔検出部を備えるオートフォーカス装置(例えば原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2002-333652号公報や、同じく拒絶査定時に引用文献4として示された特開2003-289468号公報に記載されているもの)は、全て本願請求項1に記載された発明に含まれることになる。
したがって、請求項1に係る発明は明確でない。
よって、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-28 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2005-251272(P2005-251272)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (G02B)
P 1 8・ 537- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 登丸 久寿  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 土屋 知久
伊藤 昌哉
発明の名称 オートフォーカス装置  
代理人 永井 冬紀  
代理人 渡辺 隆男  

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