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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1272005
審判番号 不服2012-7528  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-24 
確定日 2013-03-28 
事件の表示 特願2006- 31443「携帯端末及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日出願公開、特開2007-213245〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成18年2月8日の出願であり、平成24年1月20日付けで拒絶査定がなされ、それに対して平成24年4月24日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成23年9月12日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「ディスプレイと、カメラから入力された判定対象物の移動軌跡に関連付けられた動作を実行するカメラ入力インタフェースと、を備える携帯端末であって、
前記ディスプレイの操作ガイダンス情報表示領域に、前記判定対象物の移動軌跡と該移動軌跡に関連付けられた動作との対応関係を示す操作ガイダンス情報を出力する手段と、
入力を受け付けた前記判定対象物の移動軌跡を前記ディスプレイの表示内容に重ねるように描画する手段と、を備えたこと、
を特徴とする携帯端末。」

第2 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-174356号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は車載情報機器を始めとする各種の情報機器に対し、操作入力を行う操作入力装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の中には、カー・ナビゲーションを始め、オーディオ装置、TV、ビデオ装置、携帯電話、エアコンなど数多くの情報機器、電装機器が搭載されるようになっている。車内で電話をかけるだけでなく、電子メールの読み書き、インターネットへのアクセスさえ可能である。この傾向は今後もますます進み、自動料金収受システムや安全走行支援システムなども導入され、車はまさに走るコンピュータになろうとしている状況である。」(段落【0001】、【0002】)

(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は自動車を運転する運転者が、前方を注視したままで、安定して車載機器の操作を行うことが難しかった現状を解決しようとするものである。また、その際に有効である、形状ジェスチャ、方向ジェスチャをより効率的に安定して入力できるようにすることを目的とする。
【0013】
さらに、これは運転者だけでなく、助手席者も操作することも想定し、画面を見ながら操作する際の効果的な操作方法を発明する。また、車載という特殊な環境の中でより安全に、安定して動作させることも目的とする。また、車載に限らず、さまざまな機器で用いることのできる、汎用的なジェスチャ入力方法の確立を目的とする。」(段落【0012】、【0013】)

(ウ)「【0019】
<詳しい構成> 図1をより具体的に示したのが図2である。ここでは第1のジェスチャ検出部は、形状ジェスチャを検出する、形状ジェスチャ検出部7であり、第2のジェスチャ検出部は方向ジェスチャを検出する方向ジェスチャ検出部8である。
【0020】
ここで、「形状ジェスチャ」とは「手の形で表されるジェスチャ」であり、「方向ジェスチャ」とは「動いた方向を示すジェスチャ」である。この中で、形状ジェスチャの場合には、必ずしも手が動いていなくても良く、その意味で「ジェスチャ」という言葉が当てはまりにくいこともあるが、ここでは広く捉えて、形状の提示もジェスチャのひとつとして扱う。
【0021】
<検出手段の詳述> ここで、2つのジェスチャ検出部について、詳述する。具体例として、上記の形状ジェスチャとは、「グー」「チョキ」「パー」といったじゃんけんで提示するような手の形状である。あるいは、「5本の指のうちどの指を伸ばすか」、あるいは「人差し指と親指で丸を作る」など手によって表現されるさまざまな形のことを指す。
【0022】
形状ジェスチャの例を図3に示す。本来「ジェスチャ」とは動きを伴う意味を含んでおり、必ずしも静止した手形状をジェスチャとは呼ばないこともあるが、これらの形状を提示する際には、操作者は、他の形からこれらの形へ、手の形を変形させているのであるから、その意味で広義のジェスチャとして扱う。また、検出処理方法を考えると、これらを静止形状として扱うのが比較的容易であるが、実際にはこれらの形状の時系列的な組み合わせ、形状と動きを伴うものなどもあり得る。
【0023】
具体的に、手の形状を捉えるための手段としては、小型CCDカメラなどを用いて手を撮像し、その画像を解析することで形状を検出することが可能である。」(段落【0019】?【0023】)

(エ)「【0029】
<静止してから形状認識開始> 形状の認識をする場合、精度よく行おうとすればするほど、処理に時間がかかる。従って、入力される画像のフレーム毎に認識処理を行うと、処理コストが増大してしまう。形状を提示する場合は、操作者が形状を提示して一定時間静止している場合に、認識処理を開始するのが望ましい。これは操作者が意志を持って形状を出す場合は、静止させるという動作は自然であるからである。
【0030】
また、静止状態を見つけたときのみ認識処理を行えばよいから、計算コストを下げることができる。また、ジェスチャを提示する意志無しに、動かした動作は、それが静止しない限り、ジェスチャ提示と誤認識してしまうことがない。
【0031】
一方、方向ジェスチャは、このような画像入力装置から得られる画像から、手の動き方向を抽出することによって行える。例えば、特開平10-177449における画像入力装置を用いた場合、画像には背景は写らず、手の形状のみが写っているので、この画像の重心計算を行えば、手の位置が求められる。その軌跡を追跡することで基本的な動きを検出することが可能である。
【0032】
手首付近はほとんど動かさず、指先だけを動かすような場合には、手全体の重心計算を行うと、検出される動きの精度が悪いことがある。このような場合は、手の形状を細かく考慮した処理を行うことが考えられる。
【0033】
例えば、カメラに向かって指を伸ばしている場合、指の先端はカメラに最も近く、したがって反射光が最も大きく、画像中で極大点ととなっていることが多い。このような点を検出し、それらの最も近いもの、あるいは極大点の平均などを求めることで、手全体の重心点を求めるのに比べ、実際の動きに対し感度のよい評価値として、位置情報を得ることができる。この場合、複数ある極大点の画像フレーム間の対応関係などを求めておくと、画像の端のほうに存在していた極大点が画像外に出てしまった場合などの位置の挙動がおかしくなるのを防ぐことができる。
【0034】
いずれにしても、得られた手形状データから、位置の情報を取り出し、その軌跡を解析することによって動きジェスチャを検出するのがよい。通常のCCDカメラを使った場合でも色情報などにより、手の形状がきちんと切り出すことができれば、そこから位置情報を取り出すことが可能である。方向ジェスチャを検出する方法については、実施例の後の方で詳しく述べる。」(段落【0029】?【0034】)

(オ)「【0035】
<操作状態遷移> この2種類のジェスチャ検出を用いて、構成した操作における、状態遷移図を図4に示す。まず始めは何も行っていない状態である。ここで第1のジェスチャ検出部で検出する。いずれかのジェスチャを提示すると、それが検出され、操作モードの1つに入る。例えば、ジェスチャ1が提示されるとカー・ナビゲーションのビューを操作するモードに入り、ジェスチャ2が提示されるとエアコンの操作モードに入り、ジェスチャ3が提示されるとオーディオ操作のモードに入る。各操作モード内では、4方向の方向ジェスチャによっていくつかのパラメータが調整できるようになっている。
【0036】
例えばオーディオ操作モードにおいては、上方向のジェスチャの提示により音量が大きくなり、下方向のジェスチャの提示により音量が小さくなる。また、右方向のジェスチャ提示により音楽CDなどの次曲選択、左方向のジェスチャ提示により前曲選択が行える。また、オーディオ関係だけ考えても、操作対象として、音楽CD、音楽MD、カセットテープ、ラジオ、場合によってTVなど様々ある。始めにジェスチャ3を提示することによりオーディオ操作モードになったが、そのときは現在動いている対象の操作が行えるようになっている。
【0037】
例えば、音楽CDが流れていれば、CDの選曲、音量調整ができるようになっている。ジェスチャ3を繰り返し提示することでこの操作対象を切り替えることができる。例えば、2回繰り返すと音楽MD、もう1度提示するとラジオというように順に切り替わっていく。このとき操作の対象によって、方向ジェスチャによる変更パラメータが変わることがある。
【0038】
例えば、CDやMDの場合は、右,左の方向ジェスチャで次曲,前曲を選択したが、ラジオの場合にはラジオ局を登録した順に次局、前局を選択するようになる。音量調整はどの操作対象に関しても頻繁に使うので、上下の方向ジェスチャに関してはどの場合でも音量調整を行うようにする。
【0039】
形状ジェスチャと操作対象の対応付けを覚えておけば、運転者は操作パネルを見ずに、操作モードを選ぶことができる。また、選んだ操作モード内の操作も、上下の方向ジェスチャで、音量の大小、というように非常に覚えやすいものであるため、一連の操作全てが、視線を前方に維持したまま、操作パネルを見ずに行うことができる。
【0040】
例えば、カー・ナビゲーションを利用しているときには画面にはマップが表示されていることが多いが、このときオーディオの操作を行いたければ、表示のジェスチャを提示することで直ちにオーディオ操作パネルが表示される。通常であれば一旦メインメニューを表示し、メインメニューの中からオーディオ操作の項目を探し、それを選択してはじめてオーディオ操作パネルが表示される。
【0041】
このように比較すれば、ジェスチャ提示によって、頻繁に用いる機能に素早くアクセスできることの効果は大きい。
<ジェスチャ・アイコン> これらのジェスチャによる操作は非常に簡便であり、よく使用する形状ジェスチャは容易に記憶することができる。また、方向ジェスチャに関しては動きと効果(音量を上げる、下げるなど)が上手く関連づけられているので、覚えやすい。しかしながら、使用を始めたばかりの使用者や、長期間使用をしていなかった後などにおいて、どのようなジェスチャを行えば、何を制御できたか、ということを忘れてしまうことがある。そのような場合に、わざわざ取扱説明書を取り出して読まなくてはならないとしたら、非常に不便である。
【0042】
ここではさらに、ジェスチャを表示したアイコンを画面上に同時に表示することで、操作を忘れた場合も、容易に行うべきジェスチャを知ることができる。これを図5に示す。この図では画面下部にジェスチャの形状を示すアイコン9とそのジェスチャを提示したときに行える操作を一緒に表示してある。このように、実行できる形状ジェスチャとそれで何を操作できるかを表示しておけば、忘れた場合はこの画面を見ることですぐに思い出せる。
【0043】
操作ごとにこの画面のジェスチャ・アイコンを見るようでは、操作パネルを見るのと同じであり、運転者の注意が逸れることになるが、この場合は、操作を忘れたときに見るだけなので、安全性は保たれている。むしろ、操作を忘れてしまい、取扱説明書を見る方がよほど危険である。」(段落【0035】?【0043】)

(カ)「【0050】
<音のフィードバック> 操作に迷ったときなどに、音声で現在の状態をフィードバックすると効果があることを述べたが、これ以外にも、操作が実行されたときに音でフィードバックするとさらに効果がある。従来のボタンによる操作パネルでは、操作者はボタンに触ったことが分かり、またボタンを押すことによって手に戻ってくる感触を手がかりにきちんとボタンが押せたかどうかが分かるし、さらには音量が変わる、曲が変わるなどの効果を実際に感じることによって、操作が実際に行われたことを知ることができる。
【0051】
しかし、ジェスチャによって操作を行う場合は、どこにも触れないことから、操作感に乏しいという問題がある。同様のことが例えば、コンピュータにおける操作が上げられる。
【0052】
例えば、マウスでデスクトップのアイコンをダブルクリックし、あるアプリケーションを起動するとき、通常起動するには、ハードディスクなどの記憶装置からプログラムをロードし、画面に表示する時間がかかるため、ダブルクリックした後、瞬時には起動しない。従って、ダブルクリックした後、本当に起動画面が表示されるまでは操作が成功したかどうか分からずに不安である。
【0053】
多くのコンピュータおよびソフトウエアでは、この問題に対処するために、ダブルクリックしてプログラムを起動させると、直ちにマウスカーソルの表示を変化させ、起動が行われていることを知らせるようにしている。例えば、矢印状のカーソルが砂時計の形に変わり、起動のための準備をしていることを示したりする。この事実は、なんらかのフィードバックが重要であることを示している。
【0054】
一方、車載機器を運転者が運転中に操作することを考えると、このようにカーソルの形状を変えるなど、画面上の変化でフィードバックを行うことは適切でない。なぜならば、フィードバックを確認するために、前方から注意を逸らさなくてはならないからである。音でフィードバックを返すことは、運転者が前方から注意を逸らさずに確認することができ、特に本発明のような、ジェスチャによる操作入力装置には極めて有効である。音声によるフィードバックには時間がかかるため、毎回聞かされると煩わしく感じるが、音によるフィードバックは瞬時に行われるため、煩わしさはなく、むしろ操作が完了したことを確認できて安心するという効果がある。
【0055】
さらに、ジェスチャの種類によって音を変えると、正しいジェスチャが行われたどうかも判断することができる。例えば、「ビュー」のジェスチャを提示したときは「ピッ」、「エアコン」のジェスチャを提示したときは「プッ」、「オーディオ」のジェスチャを提示したときは「ポッ」という音をフィードバックするようにすると、「オーディオ」操作を選択したつもりでも、「ピッ」という音が聞こえれば、操作が正しく行われなかったと知ることができる。
【0056】
実際には使用者は、「オーディオ」と「ポッ」という音が関係していると明確に記憶することは少ないかも知れないが、「オーディオ」のジェスチャに対し、常に「ポッ」という音を聞いていると、たまに異なる音が鳴ると違和感を覚えるものである。従って、明確に何を間違ったかまでは分からなくとも、「正しく行われなかった」ことを知ることはできる。」(段落【0050】?【0056】)

(キ)「【0060】
<他のジェスチャ> 本実施例においては、第1のジェスチャ検出部は形状ジェスチャを検出し、第2のジェスチャ検出部は方向ジェスチャを検出という例で説明した。しかし、実施例はこれに限らず、あらゆる種類のジェスチャから、異なるカテゴリに属するジェスチャを2群選び、それを使って操作モード選択とパラメータ調整を行うものでもよい。
【0061】
またその特殊な例として、第1と第2のジェスチャ検出部が同じ種類のジェスチャを検出する場合も含まれる。例えば、はじめに方向ジェスチャで4つの操作モードを選び、次に方向ジェスチャでパラメータを変更する方法がある。
【0062】
この場合、同じ方向ジェスチャが検出されたときにそれがどちらを制御するジェスチャなのかの判断は、現在操作モードが選択されているかどうかで決まる。
操作モードが選択されていなければ、ジェスチャは操作選択のためのジェスチャであると判断され、既に操作モードが選択されていれば、ジェスチャはパラメータ変更のためのジェスチャであると判断される。
【0063】
また、上述の例では、方向ジェスチャは、どちらかの方向へのジェスチャがあったかどうかだけを判定した。そうではなく、手を上下左右に動かすことで連続的に値を変えることも可能である。例えば前述した実施例では、上方向ジェスチャを1回行う毎に、音量が少しずつ大きくなり、大幅に大きくしたいときには何度も上方向ジェスチャを提示しなくてはならない。これを手の上下方向に動かすとそれに従って音量が変わる。そして、一定時間静止させるか、左右方向の動きを検出すると、その音量で固定する。素早くパラメータを変えたいものにはこのような方法も適している。」(段落【0060】?【0063】)

(ク)「【0074】
<音のフィードバック> また、方向ジェスチャを入力する際にも、音をフィードバックさせ、操作者に入力が受け付けられたことを知らせるのは有効である。図8の場合は、最後の静止状態で方向ジェスチャの検出が完了した時点で音を発生させる。また、入力された方向によって異なる音を発生させると、使用者は正しい入力が行われたことを確実に知ることができる。
【0075】
<2度の音でフィードバック> 音をフィードバックさせるときに、2段階で音を発生させると、さらに効果的な場合がある。図8中で、いずれかの方向に一定量動いたことを検出した時点で、一つ目の音を鳴らし、戻って静止して、方向ジェスチャが検出されたとき2つ目の音を鳴らす。
【0076】
このときに、いずれかの方向に動いた音と、戻って方向ジェスチャが検出されたときの音を変えておく。すると、万一、戻る動作が、はじめのいずれかの方向に動く動作と誤って認識されたときでも、使用者にはそれがすぐに判る。また、一つ目の音は、方向によって異ならせても良いが、戻る音は、いずれの場合でも同じにしたほうがよい。
【0077】
例えば、上下左右の一つ目の音を「パ」「ピ」「プ」「ペ」、2つ目の音を全て「ポ」にすると、上下左右の音フィードバックとして、使用者には、「パポ」「ピポ」「プポ」「ペポ」と聞こえることになる。スムーズに操作が行えるようになれば、これらはそれぞれひとつの効果音のようにも聞こえ、使用者にとって、違和感はない。
【0078】
<戻らないとキャンセル> いずれかの方向に一定量動かした後、あるいは動かそうとしているときに、間違いに気づいたり、気が変わったりした場合に、キャンセルしたいことがある。上記の方法を採っていれば、キャンセルしたい場合は、その動きのままカメラの視野外に手を出してしまうことによりキャンセルできる。
【0079】
あるいは、途中で、動きを止めてしまうことで、キャンセルすることもできる。図8のフローチャートでは、一定時間経つと初期状態に戻るようになっている。
<元に戻るジェスチャ> 上記の例では、方向ジェスチャだけについて述べたが、一般的に、位置の軌跡によって情報を提示する場合、「ある領域から始まり、その領域に到達して終わる」一連のジェスチャというのは、連続して入力するのに非常に適している。例えば、図9に示すようなジェスチャはいずれもそうであり、これにより方向だけでなく、様々なジェスチャを入力することができる。
・・・中略・・・
【0084】
より具体的には、ある方向の方向ジェスチャが検出された直後に、反対方向の動きが検出され、しかもそのときの距離情報が、前回の方向ジェスチャに比べ遠い場合、これは戻るための動作であると判断する。方向ジェスチャと判定されれば、操作実行部36に方向ジェスチャの情報を伝達し、必要に応じて音でフィードバックを発生させる。戻りの動きであると判定されれば、操作実行部には何も伝達せず、また音フィードバックも発生させない。
【0085】
音フィードバックに関しては、右、左で音を変え、戻りが音を発生させないようにすれば、戻り動作が誤って、方向ジェスチャとして検出されてしまった場合は、使用者はすぐに気づくことができる。
【0086】
<2回目の動きを戻り動作と判定する> 距離情報を取得できない画像センサを用いても、このような処理は必ずしも不可能ではない。動き情報しか取得できない画像センサの場合、動きの時系列を見て、戻り動作が何であるかを判断することができる。
【0087】
例えば、「右」「左」「右」「左」「右」という入力があれば、これは右方向に3回の入力を行い、中の2つの左ジェスチャは戻り動作であると判定する。しかし、単純にこれだけだと、途中で左ジェスチャに変えることができない。それはそれぞれの動いている間の時間間隔、いわゆる「間(ま)」を上手く利用することで、判定できる。
【0088】
例えば、「右」「左」「右」(間)「左」「右」「左」という入力があった場合は、「右」「右」の入力の後、「左」「左」という入力がされたと判定できる。」(段落【0074】?【0088】)

(ケ)「【0152】
第5の発明によれば、表示手段に、選択可能な操作モードとそれを選択するための形状ジェスチャを表す画像、あるいは変更可能なパラメータとそれを変更するための方向を表す画像を併せて表示するので、操作者がジェスチャを忘れたときには、わざわざ取扱説明書を開かなくとも、ジェスチャの種類を知ることができる。」(段落【0152】)

以上の記載によれば、この引用文献には、以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「装置入力装置によって操作入力を行う車載情報機器を始めとする各種の情報機器であって、
2種類のジェスチャ検出を用いており、形状ジェスチャを捉えるための手段としては、小型CCDカメラなどの画像入力装置を用いて手を撮像し、その画像を解析することで形状を検出することが可能であり、方向ジェスチャは、画像入力装置から得られる画像から、手の動き方向を抽出することによって行え、例えば、手の形状の画像の重心計算を行えば、手の位置が求められ、その軌跡を追跡することで基本的な動きを検出することが可能であり、
形状ジェスチャのいずれかを提示すると、それが検出され、操作モードの1つに入り、例えば、ジェスチャ1が提示されるとカー・ナビゲーションのビューを操作するモードに入り、ジェスチャ2が提示されるとエアコンの操作モードに入り、ジェスチャ3が提示されるとオーディオ操作のモードに入り、
各操作モード内では、4方向の方向ジェスチャによっていくつかのパラメータが調整でき、例えばオーディオ操作モードにおいては、上方向のジェスチャの提示により音量が大きくなり、下方向のジェスチャの提示により音量が小さくなり、右方向のジェスチャ提示により音楽CDなどの次曲選択、左方向のジェスチャ提示により前曲選択が行え、オーディオ関係だけでも、操作対象として、音楽CD、音楽MD、カセットテープ、ラジオ、場合によってTVなど様々あり、ジェスチャ3を提示することによりオーディオ操作モードになったが、そのときは現在動いている対象の操作が行えるようになっており、例えば、音楽CDが流れていれば、CDの選曲、音量調整ができるようになっており、ジェスチャ3を繰り返し提示することでこの操作対象を切り替えることができ、2回繰り返すと音楽MD、もう1度提示するとラジオというように順に切り替わっていき、このとき操作の対象によって、方向ジェスチャによる変更パラメータを変えることができ、
さらに、ジェスチャを表示したアイコンを画面上に同時に表示し、例えば、画面下部にジェスチャの形状を示すアイコン9とそのジェスチャを提示したときに行える操作を一緒に表示し、操作を忘れた場合も、容易に行うべきジェスチャを知ることができ、
第1と第2のジェスチャ検出部が同じ種類のジェスチャを検出するものであってもよく、例えば、はじめに方向ジェスチャで4つの操作モードを選び、次に方向ジェスチャでパラメータを変更してもよく、
また、方向ジェスチャは、どちらかの方向へのジェスチャがあったかどうかだけを判定するものではなく、手を上下左右に動かすことで連続的に値を変えることも可能であり、例えば、手の上下方向に動かすとそれに従って音量が変わり、一定時間静止させるか、左右方向の動きを検出すると、その音量で固定することも可能であり、
方向ジェスチャを入力する際に、音をフィードバックさせ、操作者に入力が受け付けられたことを知らせ、最後の静止状態で方向ジェスチャの検出が完了した時点で音を発生させ、入力された方向によって異なる音を発生させると、使用者は正しい入力が行われたことを確実に知ることができ、
表示手段に、選択可能な操作モードとそれを選択するための形状ジェスチャを表す画像、あるいは変更可能なパラメータとそれを変更するための方向を表す画像を併せて表示するので、操作者がジェスチャを忘れたときには、わざわざ取扱説明書を開かなくとも、ジェスチャの種類を知ることができることを特徴とする情報機器。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「画面」は、本願発明の「ディスプレイ」に相当する。

(イ)引用発明は、「小型CCDカメラなどの画像入力装置を用いて手を撮像し、その画像を解析することで形状を検出することが可能であり、方向ジェスチャは、画像入力装置から得られる画像から、手の動き方向を抽出することによって行え、例えば、手の形状の画像の重心計算を行えば、手の位置が求められ、その軌跡を追跡することで基本的な動きを検出することが可能」であるから、引用発明の「手の形状の画像」の「方向ジェスチャ」は、本願発明の「カメラから入力された判定対象物の移動軌跡」に相当するといえる。
そして、引用発明の「第1と第2のジェスチャ検出部が同じ種類のジェスチャを検出するものであってもよく、例えば、はじめに方向ジェスチャで4つの操作モードを選び、次に方向ジェスチャでパラメータを変更してもよく、また、方向ジェスチャは、どちらかの方向へのジェスチャがあったかどうかだけを判定するものではなく、手を上下左右に動かすことで連続的に値を変えることも可能であり、例えば、手の上下方向に動かすとそれに従って音量が変わり、一定時間静止させるか、左右方向の動きを検出すると、その音量で固定することも可能」な操作入力装置の構成は、本願発明の「カメラから入力された判定対象物の移動軌跡に関連付けられた動作を実行するカメラ入力インタフェース」に相当するといえる。

(ウ)引用発明の「情報機器」は、本願発明の「携帯端末」とは、「ディスプレイと、カメラから入力された判定対象物の移動軌跡に関連付けられた動作を実行するカメラ入力インタフェースとを、備えた情報機器」である点で共通する。

(エ)引用発明の「ジェスチャを表示したアイコンを画面上に同時に表示し、例えば、画面下部にジェスチャの形状を示すアイコン9とそのジェスチャを提示したときに行える操作を一緒に表示し、操作を忘れた場合も、容易に行うべきジェスチャを知ることができ」、「表示手段に、選択可能な操作モードとそれを選択するための形状ジェスチャを表す画像、あるいは変更可能なパラメータとそれを変更するための方向を表す画像を併せて表示するので、操作者がジェスチャを忘れたときには、わざわざ取扱説明書を開かなくとも、ジェスチャの種類を知ることができる」構成は、「第1と第2のジェスチャ検出部が同じ種類のジェスチャを検出するものであってもよく、例えば、はじめに方向ジェスチャで4つの操作モードを選び、次に方向ジェスチャでパラメータを変更してもよく」という構成を考慮すれば、本願発明の「前記ディスプレイの操作ガイダンス情報表示領域に、前記判定対象物の移動軌跡と該移動軌跡に関連付けられた動作との対応関係を示す操作ガイダンス情報を出力する手段」に相当するといえる。

したがって、本願発明の用語を用いて表現すると両者は、
「ディスプレイと、カメラから入力された判定対象物の移動軌跡に関連付けられた動作を実行するカメラ入力インタフェースと、を備える情報機器であって、
前記ディスプレイの操作ガイダンス情報表示領域に、前記判定対象物の移動軌跡と該移動軌跡に関連付けられた動作との対応関係を示す操作ガイダンス情報を出力する手段と、を備えたこと、
を特徴とする情報機器。」
で一致するものであり、次の(1)、(2)の点で相違している。

(1)本願発明は、「入力を受け付けた前記判定対象物の移動軌跡を前記ディスプレイの表示内容に重ねるように描画する手段」を備えるのに対して、引用発明は、「方向ジェスチャ」の軌跡を画面に描画するものではない点。
(2)本願発明は、「携帯端末」であるのに対して、引用発明は、「車載情報機器を始めとする各種の情報機器」である点。

第4 当審の判断
・相違点(1)について
入力を受け付けた判定対象物の移動軌跡をディスプレイに表示(描画)し、判定対象物の移動軌跡に関連付けられた動作(命令)を実行する情報処理装置は、本願出願日前周知の技術(例えば、特開2001-16606号公報段落【0080】「以上のようにして認識された指の本数や動きの方向に何らかの意味付けをすることによって、動作認識システムに接続された情報処理装置8を制御するための様々な入力を行うことが可能となる。また、上記のシステムは、手の動きを追跡している間に、認識された指の本数や特定された位置を、情報処理装置8に入力することが可能となっている。したがって、例えばモニタ上で手の動きの軌跡を表示することによって、使用者は動作認識システムに認識されている動作の確認を行うことができる。また、この機能を利用すれば、使用者に動作入力のガイダンスを行うことも可能となる。」、特開2001-306243号公報段落【0059】「当該サイバージェスチャープログラムに基づいてCCDカメラ8で撮像したユーザの手の動きを認識し、その認識結果に応じた所定の処理をアプリケーションソフトウェアに基づくアクティブウィンドウ画面上で実行するようになされている。」、段落【0110】「当該ビジュアルフィードバック画面191を生成し、当該ビジュアルフィードバック画面191を介して、ユーザが実際に動かした手の動き(ジェスチャー)を示す軌跡に対応して、軌跡表示枠120内に予め斜めに配置されたターゲット107A?107E上にポインタ108を重ねて矢印C方向に移動させながら表示することにより、実際の手の動きの認識過程をユーザに対して視覚的に確認させ得るようになされている。」の記載、特開平8-329192号公報段落【0026】「尚「ジェスチャ」は電子ペン122によって描画される軌跡であり、予め軌跡の形態に対応する命令を設定しておくことで、軌跡を描画するだけで所望の命令を実行させることができる。」の記載、特開2005-275652号公報段落【0041】?【0042】「ペン3によって手書の軌跡が書かれたときには、その軌跡は、位置座標データ群として、CPU2-6に読み取られる。・・・中略・・・手書き軌跡データを画像表示部に表示し」、段落【0189】「例えば、図20のW型の「削除」ジェスチャーを「海の写真.JPG」のファイルアイコン上に書き込むと、ステップS24-5において、「削除」ジェスチャーであると認識され、「海の写真.JPG」ファイルが削除されて、図21の様な表示画面になる。」の記載、参照。)である。
引用発明は、「方向ジェスチャを入力する際に、音をフィードバックさせ、操作者に入力が受け付けられたことを知らせ、最後の静止状態で方向ジェスチャの検出が完了した時点で音を発生させ、入力された方向によって異なる音を発生させると、使用者は正しい入力が行われたことを確実に知る」ことができるものであり、利用者が方向ジェスチャを入力する際に、入力された方向を知らせて正しい入力が行われるようにフィードバックをすることが示されている。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、入力を受け付けた前記判定対象物の移動軌跡を前記ディスプレイに描画する手段を備えるようにすることは容易になし得ることであり、その際に、ディスプレイの表示内容に重ねるように描画するようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項(この点に関し、本願明細書の発明の詳細な説明段落【0033】に「波形の軌跡が移動軌跡300であり、当初画面に表示されていたボタンやテキストの上から重ねるように描画されている。」と記載されているが、「表示内容に重ねるように描画」される点に格別な困難性は認めらない。)にすぎない。

・相違点(2)について
引用文献には、「近年、自動車の中には、カー・ナビゲーションを始め、オーディオ装置、TV、ビデオ装置、携帯電話、エアコンなど数多くの情報機器、電装機器が搭載されるようになっている。」(段落【0002】)及び「車載に限らず、さまざまな機器で用いることのできる、汎用的なジェスチャ入力方法の確立を目的とする。」(段落【0013】)と記載されており、引用発明を、携帯端末とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-25 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2006-31443(P2006-31443)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽鳥 友哉  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 稲葉 和生
衣川 裕史
発明の名称 携帯端末及びプログラム  
代理人 加藤 朝道  
代理人 加藤 朝道  

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