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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1272007
審判番号 不服2012-7882  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-27 
確定日 2013-03-28 
事件の表示 特願2007-164234「入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月 8日出願公開、特開2009- 3716〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年6月21日の出願であって平成24年1月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年4月27日に拒絶査定に対する審判が請求されたものである。
そして、その請求項1に係る発明は平成23年9月26日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。
「有効エリアを複数表示する表示手段と、
前記表示手段の前面に該表示手段と関連付けて配設されるタッチパネルと、
前記有効エリアに対応する前記タッチパネルの位置への押圧に応じて、前記ユーザが感知できる感知情報を発生する感知情報発生手段と、
前記有効エリア内における、前記タッチパネルへの押圧の位置に応じて前記感知情報を発生する態様を変更するように前記感知情報発生手段を制御し、かつ、前記タッチパネルへの押圧の位置が前記複数の有効エリアにまたがる場合には前記感知情報を発生しないように前記感知情報発生手段を制御する制御手段と、
を備えている入力装置。」

2.引用刊行物
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開2007-115157号公報」(以下、「引用刊行物」という。)には図面とともに以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、キー操作感覚付与方法及び携帯情報装置に係り、より詳しくは、例えば携帯電話装置等、キー入力機構を有して構成される携帯情報装置の利用者に、振動子の振動によるキー操作感覚を付与するためのキー操作感覚付与方法、及び、このキー操作感覚付与方法を使用して、上記キー操作感覚を利用者認識可能に構成した携帯情報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボタンスイッチ等の機械的なキー入力機構を有して構成される携帯電話装置等の携帯情報装置においては、同携帯情報装置の利用者によってキー押下操作が行われたことを利用者自身に認識させるため、その押下に際し、キーに内設された機構部品によりクリック感を発生させたり、押下認識のための電子音をスピーカから短時間放音させたりするのが一般的であった。また、近年その利用が拡大しているタッチパネル方式のキー入力機構を採用した携帯情報装置にあっては、タッチパネル直下に内設されたLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置にキー表示領域を表示させ、これに対応してタッチパネルに割り付けられた感圧反応領域に対してタッチ操作が行われたときに、該当するキー表示領域の表示色を反転させるなどの技術も知られている。
【0003】
さらに、上記タッチパネル方式を採用したキー入力機構に関しては、タッチパネルを振動可能に設けられた振動子により、上記感圧反応領域に対してタッチ操作が行われたときにタッチパネル全体を瞬間的に振動させ、この振動をもってキークリック感を擬似的に発生させる技術(特許文献1参照;以下、「従来例」という)が開示されている。この種の技術は、故障発生率の高い従前の機械的なキー入力機構に代わるものとして、更なる技術開発が期待されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005-190290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来例の技術により得られるキークリック感は、従前の機械的なキー入力機構において得られていたキークリック感とは異質な、いわば平面的なものであった。これは、従来例の技術が、タッチパネルに割り付けられた感圧反応領域(表示装置上のキー表示領域)に対してタッチ操作が行われたときに、当該領域中におけるより局所的な位置を考慮することなく、その全領域に関して一様な振動を発生させているためと考えられる。事実、従前の機械的なキー入力機構にあっては、ボタンスイッチに対して行われたキー押下操作の局所的位置(例えば、周縁部や中心部)の違いに応じて異なった感覚を生じさせる、いわば立体的なキークリック感が得られるものであった。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、利用者に対してより実際的なキークリック感を付与することの可能なキー操作感覚付与方法及び携帯情報装置を提供することを目的とする。」(第3頁)

「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の観点からすると、1以上のキー表示領域を有して構成された入力操作画面を視認可能に設けられたタッチパネルを有する操作入力部を備える携帯情報装置において、前記操作入力部の操作時に利用者に対してキー操作感覚を付与するためのキー操作感覚付与方法であって、前記入力操作画面の前記キー表示領域と対応する感応領域パターンにより定義される前記タッチパネル上の感圧反応領域に対してタッチ操作が行われたときに、前記感圧反応領域内における前記タッチ操作の局所的位置を検出するタッチ位置検出工程と;前記タッチ位置検出工程により検出された局所的位置に対応する振動パターンに従って前記タッチパネルを振動させる振動付与工程と;を備えるキー操作感覚付与方法である。
【0008】
このキー操作感覚付与方法では、タッチ位置検出工程において、入力操作画面のキー操作領域と対応する感応領域パターンにより定義されるタッチパネル上の感圧反応領域に対してタッチ操作が行われたときに、感圧反応領域内におけるタッチ操作の局所的位置が検出される。次に、振動付与工程において、タッチ位置検出工程により検出された局所的位置に対応する振動パターンに従って前記タッチパネルが振動させられる。
【0009】
したがって、本発明のキー操作感覚付与方法では、タッチパネル上の感圧反応領域に対して行われたタッチ操作の当該感圧反応領域における局所的位置に応じた振動を携帯情報装置の利用者に付与することができる。これにより、携帯情報装置の利用者に対し、同利用者のタッチ操作が、感圧反応領域内におけるいずれの局所的位置に対して行われたのかにつき、これを利用者の指に伝わる振動の形態上の差異(キークリック感の差異)をもって認識させることが可能となる。
【0010】
本発明のキー操作感覚付与方法では、前記タッチ位置検出工程において、前記タッチパネル上の前記感圧反応領域に対する前記タッチ操作が前記感圧反応領域の周縁部から中心部にかけてのいずれの局所的位置に対して行われたかが識別される。この場合には、携帯情報装置の利用者に対し、同利用者のタッチ操作が感圧反応領域における周縁部寄りの領域と中心部寄りの領域とのいずれに対して行われたのかにつき、これを利用者の指に伝わる振動の形態上の差異をもって認識させることが可能となる。
【0011】
また、本発明のキー操作感覚付与方法では、前記タッチ位置検出工程において、前記タッチパネル上の前記感圧反応領域に対する前記タッチ操作が前記感圧反応領域の一端部から他端部にかけてのいずれの局所的位置に対して行われたかが識別される。この場合には、携帯情報装置の利用者に対し、同利用者のタッチ操作が感圧反応領域における一端部寄りの領域と他端部寄りの領域とのいずれに対して行われたのかにつき、これを利用者の指に伝わる振動の形態上の差異をもって認識させることが可能となる。」(第4頁)

「【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明のキー操作感覚付与方法によれば、携帯情報装置の利用者に対して、より実際的なキークリック感を付与することができるという効果を奏する。また、本発明の携帯情報装置によれば、より実際的なキークリック感を付与可能な装置構成を得ることができるという効果を奏する。」(第6頁)

「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図1?図3Cを参照しつつ説明する。本実施形態では、携帯情報装置である携帯電話装置を例示して説明する。
【0021】
[構成]
図1には、一実施形態に係る携帯情報装置である携帯電話装置10の外観構成が正面図にて概略的に示されている。図1に示されるように、この携帯電話装置10は、(a)携帯電話本体11と、(b)電話番号を入力するためのテンキーや、動作モードの切替等の各種指令に関するファンクションキー等、1以上のキー表示領域12A(図では15個のキー表示領域12A)を有して構成された入力操作画面を表示するキー入力用表示部(本発明にいう「表示装置」(「操作入力部」の一部))12と、(c)キー入力用表示部に表示された入力操作画面を視認可能な形態に外設されたデジタル出力が可能なタッチパネル(本発明にいう「操作入力部」の一部)13と、(d)タッチパネル13を振動可能な形態に携帯電話本体11に内設された振動子14と、(e)操作案内、動作状況、受信メッセージ等を表示する画像出力用表示部15と、(f)通話時に通信相手から送られてきた音声信号を再生する通話用スピーカ16と、(g)集音時に音を入力したり、通話時に音声を入力したりするためのマイクロフォン17と、(h)無線基地局との間で無線信号を授受するためのアンテナ18とを備えている。
【0022】
なお、ここで用いられるタッチパネル13の種類は任意であり、例えば、抵抗膜式、静電容量結合方式、赤外線走査方式、超音波表面弾性波方式等といった種々の形態のものを適用することができる。ただし、製品としてのタッチパネル13の中には、デジタル出力を行わないものもあるため、この種の製品を適用する場合には、制御部21との間にADC(Analog to Digital Converter)を介在させるとよい。また、タッチパネル13は、あらかじめ振動子14と一体に構成されたものを適用してもよい。
【0023】
携帯電話本体11の内部構成は、図2の機能ブロック図にて示されている。図2に示されるように、(i)携帯電話装置10全体の動作を統括制御し、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、デジタル信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)等を備えて構成される制御部21と、(ii)制御部21の制御下で、キー入力用表示部12及び画像出力用表示部15における画像表示に関する信号処理全般を行う画像処理部22と、(iii)制御部21の制御下で、通話用スピーカ16及びマイクロフォン17において放音及び集音される音声に関しての信号処理全般を行う音声処理部23と、(iv)制御部21の制御下で、アンテナ18を介しながら無線基地局との間で無線信号の送受信を行う送受信部24と、(v)フラッシュメモリ等から構成され、制御部21によるデータの読出し及び書込みが可能な記憶部25と、(vi)DAC(Digital to Analog Converter)等により構成され、制御部21の制御下で振動子14を駆動する振動子駆動部(本発明にいう「振動子駆動装置」)26とを備えている。」(第6頁)

「【0025】
また、制御部21は、(i)上記記憶部25の表示パターン記憶領域25Aから表示パターンを読み出す表示パターン読出部21Aと、(ii)上記感応領域パターン記憶領域25Bから感応領域パターンを読み出す感応領域パターン読出部(本発明にいう「感応領域パターン読出手段」)21Bと、(iii)前記タッチパネルの感圧反応領域13Aに対するタッチ操作を検出するタッチ位置検出部(本発明にいう「タッチ位置検出手段」)21Cと、(iv)上記振動パターン記憶領域25Cから振動パターンを読み出す振動パターン読出部(本発明にいう「振動パターン読出手段」)21Dとを備えている。」(第7頁)

「【0028】
タッチ位置検出部21Cは、感圧反応領域13A内におけるタッチ操作の局所的位置を検出し、この検出結果を振動パターン読出部21Dに通知する機能を有する。かかる機能の動作は、感応領域パターン読出部21Bから通知された上記感応領域パターンにより定義されるタッチパネル13上の感圧反応領域13Aに対して、携帯電話装置10の利用者によりタッチ操作が行われたときに行われる。
【0029】
振動パターン読出部21Dは、振動パターン記憶領域25Cから対応する振動パターンを読み出し、これを振動子駆動部26に通知する機能を有する。なお、振動パターンの読出しに際して、振動パターン読出部21Dは、タッチ位置検出部21Cから通知された上記タッチ操作の局所的位置についての検出結果に対応する振動パターンを読み出す。
【0030】
振動子駆動部26は、振動パターン読出部21Dから通知された上記振動パターンに応じて振動子14を駆動する機能を有する。」(第7頁)

「【0032】
以上のタッチ位置検出部21C及び振動パターン読出部21Dの機能につき、図3A?図3Cを参照しつつ、詳述する。ここで、図3A?図3Cには、それぞれ、キー入力用表示部12に表示される通話/待受けモード時、シンプルモード時、及び、地図表示モード時の入力操作画面の例が示されている。
【0033】
図3A及び図3Bに示される例においては、キー入力用表示部12に表示された入力操作画面に、発信キー、クリアキー、切断キー、テンキー、割付キー等の複数のキー表示領域12Aが設定されている。このキー入力用表示部12の有効表示面上方に重積して設けられたタッチパネル13には、上記複数のキー表示領域12Aの配置パターンと対応した(合致した)複数の感圧反応領域13Aが割り付けられている。
【0034】
ここで、上記複数のキー表示領域12Aに対応する複数の感圧反応領域13Aに、上述した機能を具備させるには、例えば、テンキーや割付キー等のキー表示領域12Aに対する指定操作時に、該当する感圧反応領域13Aへのタッチ操作がその周縁部寄りの領域に対して行われた場合には、弱い振動がタッチパネル13(振動子14)に得られるよう振幅の小さい振動パターンを当該領域に対応づける。一方、タッチ操作がその中心部寄りの領域に対して行われた場合には、強い振動がタッチパネル13に得られるよう振幅の大きい振動パターンを当該領域に対応づけるとよい。これにより、携帯電話装置10の利用者に、より実際的なキークリック感(平面的ではないキークリック感)を付与することが可能となる。」(第8頁)

「【0039】
利用者が上記タッチ操作を行うと、まず、携帯電話装置10の制御部21におけるタッチ位置検出部21Cが、該当する感圧反応領域13Aにおけるタッチ操作の局所的位置を検出し、この検出結果を振動パターン読出部21Dに通知する(本発明にいう「タッチ位置検出工程」)。
【0040】
次に、振動パターン読出部21Dは、タッチ位置検出部21Cから通知された上記タッチ操作の局所的位置についての検出結果が、例えば、該当する感圧反応領域13Aの周縁部寄りの領域であった場合には、記憶部25の振動パターン記憶領域25Cから、当該領域に対応づけられた振幅の小さい振動パターンを読み出し、これを振動子駆動部26に通知する。そして、振動子駆動部26は、振動パターン読出部21Dから通知された振幅の小さい振動パターンに応じて、所要の弱い振動がタッチパネル13に得られるよう振動子14を駆動する(本発明にいう「振動付与工程」)。
【0041】
これに対し、タッチ位置検出部21Cから通知された上記タッチ操作の局所的位置についての検出結果が、例えば、該当する感圧反応領域13Aの中心部寄りの領域であった場合、振動パターン読出部21Dは、記憶部25の振動パターン記憶領域25Cから、当該領域に対応づけられた振幅の大きい振動パターンを読み出し、これを振動子駆動部26に通知する。そして、振動子駆動部26は、振動パターン読出部21Dから通知された振幅の大きい振動パターンに応じて、所要の強い振動がタッチパネル13に得られるよう振動子14を駆動する(本発明にいう「振動付与工程」)。
【0042】
以上の結果、タッチパネル13は、タッチ操作が感圧反応領域13Aの周縁部寄りに行われたときには弱く、中心部寄りに行われたときには強く振動するようになり、これにより、携帯電話装置10の利用者に対し、従前の機械的なキー入力機構におけるそれと類似した、いわば立体的なキークリック感が付与されるようになる。」(第9頁)

「【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明のキー操作感覚付与方法は、キー入力機構としてタッチパネルを採用した携帯情報装置におけるキークリック感の付与に関する技術に適用することができる。また、本発明の携帯情報装置は、キー入力機構としてタッチパネルを採用した携帯情報装置に適用することができる。」(第11頁)

これら引用刊行物の記載から、引用刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「複数のキー表示領域12Aを有するキー入力用表示部12と、キー入力用表示部12に表示された入力操作画面を視認可能な形態に外設されたタッチパネル13と、タッチパネル13を振動可能に設けられた振動子14と、制御部21の制御下で振動子14を駆動する振動子駆動部26と、を有する携帯情報装置であって、振動子駆動部26は、制御部21から通知される振動パターンに基づいて、キー表示領域12Aに対するタッチ操作が、感圧反応領域13Aの中心部寄りの領域であった場合に強い振動で振動子14を駆動し、タッチ操作が感圧反応領域13Aの周縁部寄りの領域に対して行われた場合には、弱い振動で振動子14を駆動する、携帯情報装置。」

原査定において周知技術を示すものとして引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平6-131094号公報」(以下、「周知刊行物1」という。)には図面とともに以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、マトリックス状に配置されたディジタルスイッチ素子より構成されるタッチパネル入力装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は、タッチパネル入力装置の外観を図示し、図5は該装置の内部回路を図示したものである。図4において、1はキーであり、操作者が、該キー上に刻印された表示文字に従って押下すると、予め定義されている座標コード情報が出力されるというものである。また図5において、2(A_(1) ,A_(2) …An )、及び(B_(1) ,B_(2) ,…Bn )は各々縦方向、横方向に配置されたディジタルスイッチより構成された電極群であり、この例では(A_(1) ,B_(1) ),(A_(1) ,B_(2) )…(An ,Bm )のm×n個の電極対を形成している。4は、縦方向配列電極群の検出回路、5は横方向配列電極群の検出回路である。図6は、誤操作によるキー押下の例を図示したもので、6は複数キーにまたがった指の状態を示している。
【0003】従来のタッチパネル入力装置は、上記のように構成されていたので、例えば図4において操作者が、ある特定のキーを選択するために指で押下すると、図5における縦方向配列電極群2と、横方向配列電極群3に接続されている検出回路4、及び5によって、押下された電極の組(Ai ,Bi )を認識し、予め該電極対に対して割り当てられていた座標コードを上位制御装置(図示せず)に出力する。このようにして、図4で図示したタッチパネル入力装置のような多項目入力を目的とした装置では、キー上に刻印されている項目(テレビ、ステレオなど)キーを選択すると、該キーと、これを構成する電極群が1:1に対応して該当座標コードを発生していたため、キーの大きさと指先の大きさの関係、スイッチ位置に視差が生じた場合、さらにタッチパネル装置のように表面が、平坦かつ滑らかな装置においては、隣接したキーに触れて該入力してしまうことがよくあった。
【0004】例えば、図6において隣接したキーの双方に指の領域6がかかった場合、キーAとキーB、またはキーAとキーCの双方の電極がONされる結果となり、この場合、制御方式の違いにより先に検出されたキーを有効とする方法や、ある設定時間内に複数キーが押下された時に、無効入力としてどのキーも入力しない方法などがあるが、いずれにしても、これらの結果は操作者の意図とは異なったもので、再度キー入力操作を行う必要があり、操作性の悪さを否定することはできなかった。」(第2頁)

同じく、原査定において周知技術を示すものとして引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開2005-327064号公報」(以下、「周知刊行物2」という。)には図面とともに以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを用いて操作指示を入力する入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タッチパネルを用いて操作指示を行うディスクプレーヤが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このディスクプレーヤでは、メニュー画面に含まれる「プレイ」、「チャプタ」等の各選択部を直接指で触ることによりこれらの選択部の表示内容に応じた操作指示を行うことができる。また、操作の対象となった選択部がハイライト表示されるため、利用者は、所望の選択部を操作することができたか否かを目視によって確認することができるようになっている。
【0003】
また、車載のディスクプレーヤ等の場合には小さな表示装置が用いられることが多いため、各選択部の面積が小さく、しかも隣接した各選択部が接近している場合には、1回の操作で複数の選択部を同時に触ってしまう場合がある。このような不都合を回避するための従来技術としては、複数の選択部を同時に触ってしまった場合には、拡大した各選択部を表示して再度の操作を促すタッチパネル式の入力装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。利用者は、拡大した各選択部の中から再度一つを選択すればよいため、正確な操作指示を行うことができる。
【特許文献1】特開2003-85959号公報(第4-7頁、図1-2)
【特許文献2】特開平8-234909号公報(第3-5頁、図1-11)」(第2?3頁)

「【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の入力装置は、複数の選択部を含む操作画面を表示する操作画面表示手段と、操作画面内のいずれかが操作されたときにその操作位置を検出する操作位置検出手段と、操作位置検出手段によって検出された操作位置が操作画面に含まれる複数の選択部のいずれに対応しているかを判定する入力制御手段と、入力制御手段によって操作位置が複数の選択部に対応していると判定されたときに、入力制御手段による指示に応じて操作画面を振動させる振動発生手段とを備えている。操作画面内の複数の選択部が同時に指し示されたときに操作画面自体が振動して、正しく操作が行われなかったことを利用者に容易かつ確実に伝えることができる。特に、利用者は、操作画面内の各操作部の位置を確認するために一時的に操作画面を見た後は操作対象となる選択部を注視する必要がないため、車載機のように長時間視点位置を固定しにくい場合の用途に適している。」(第3?4頁)

「【0013】
図1は、一実施形態のディスク再生装置の構成を示す図である。図1に示すディスク再生装置100は、スピンドルモータ12、光ピックアップ14、送りモータ16、サーボ制御部18、RFアンプ22、デジタル信号処理部24、4個のバッファ用RAM26、34、38、42、ストリーム分離部30、オーディオデコーダ32、ビデオデコーダ36、サブピクチャデコーダ40、ビデオプロセッサ44、ビデオエンコーダ46、ディスプレイ装置47、デジタル-アナログ(D/A)変換器48、スピーカ49、操作部58、タッチパネル60、振動発生部62、システムコントローラ70を含んで構成されている。」(第4頁)

「【0022】
本実施形態のディスク再生装置100はこのような構成を有しており、次にその動作について説明する。図2は、ディスク再生装置100の動作手順を示す流れ図であり、操作画面としてのメニュー画面の操作に関連する一連の動作手順が示されている。ディスク再生装置100が動作を開始すると、システムコントローラ70は、操作部58が操作されてメニュー画面の表示が要求されたか否かを判定する(ステップ100)。なお、表示画面の一部に「メニュー」等のボタンを表示しておいて、このボタンが指し示されたか否かをタッチパネル60から出力される検出位置信号に基づいて判定することにより、メニュー画面表示要求の有無を判定するようにしてもよい。この要求がなされない場合にはステップ100の判定において否定判断が行われ、この判定が繰り返される。
【0023】
また、利用者によってメニュー画面の表示が要求されるとステップ100の判定において肯定判断が行われ、次に、メニュー画面を再生するために必要なデータがDVD10から読み出され、ビデオデコーダ36によって所定のデコード処理が行われる。システムコントローラ70は、このデコードされたメニュー画面の映像データを取得してビデオプロセッサ44に送ることにより、ディスプレイ装置47の画面上にメニュー画面が表示される(ステップ101)。
【0024】
図3は、メニュー画面の一例を示す図である。図3に示すメニュー画面では、背景画像の一部の領域に複数の選択部を有する操作領域100が含まれている。例えば、この操作領域100にはA?Hで示された8つの選択部が含まれており、利用者が直接指し示した画面上の位置がこれら8つの選択部A?Hのいずれかに対応している場合には、指し示された選択部の選択状態が決定したものとしてそれ以後の処理が行われる。
【0025】
メニュー画面が表示された後、システムコントローラ70は、タッチパネル60から出力される検出位置信号を監視することにより、メニュー画面に含まれる各選択部が指し示されたか否かを判定する(ステップ102)。いずれの選択部も指し示されていない場合には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、いずれかの選択部が指し示された場合にはステップ102の判定において肯定判断が行われ、次に、システムコントローラ70は、指し示された選択部は2つ以上か否かを判定する(ステップ103)。同時に2つ以上が指し示されていない場合、すなわち一つの選択部のみが指し示された場合には否定判断が行われ、次に、システムコントローラ70は、一つの選択部が正しく指し示されたことを利用者に通知するために振動発生部62を所定のパターンAで一定時間振動させるとともに(ステップ104)、この指し示された選択部に対応する処理を実行する(ステップ105)。その後、ステップ100に戻ってメニュー画面の表示要求の有無判定以降の処理が繰り返される。
【0026】
また、同時に2つ以上の選択部が指し示された場合にはステップ103において肯定判断が行われ、次に、システムコントローラ70は、2つ以上の選択部が誤って指し示されたことを利用者に通知するために振動発生部62を所定のパターンB(パターンAと異なる振動パターンであることを利用者が判断できればよい)で一定時間振動させた後(ステップ106)、この2つ以上の選択部を同時に指し示す操作が2回目であるか否かを判定する(ステップ107)。この操作が1回目である場合には否定判断が行われ、ステップ102に戻って、メニュー画面に含まれる各選択部が指し示されたか否かの判定が繰り返される。図4は、2つの選択部A、Bが同時に指し示された例を示す図であり、指し示された範囲がハッチングを付して示されている。ディスプレイ装置47が小さい場合には各選択部も小さくなってしまうため、利用者が指で操作しようとすると、これら2つあるいは3つ以上の選択部を同時に指し示してしまうことが多い。
【0027】
2つ以上の選択部を同時に指し示す操作が2回目である場合にはステップ107において肯定判断が行われ、次に、システムコントローラ70は、メニュー画面上の所定位置に、操作ボタンを重ねて表示する(ステップ108)。
【0028】
図5は、メニュー画面上に重ねて表示される操作ボタンの具体例を示す図である。図5に示す例では、決定ボタン100Eとその周囲に配置された4つの切替ボタン100A、100B、100C、100Dからなる操作ボタンが表示される。これらの操作ボタンが表示されると同時に、一の選択部(例えば選択部A)が強調表示された状態になる。利用者は、この状態で決定ボタン100Eを指し示すことにより、選択部Aのみを直接指し示した場合と同じ操作状態になる。また、強調表示された選択部を変更したい場合には、利用者は、4つの切替ボタン100A?100Dのいずれかを指し示して強調表示される選択部の位置を変更すればよい。」(第6?7頁)

「【0033】
また、2つの操作部を同時に指し示す誤操作を行った場合だけでなく、所望の選択部を正しく指し示した場合についてもディスプレイ装置47を振動させ、しかも操作が正しいか否かで振動パターンを異ならせることにより、これらの両方について容易かつ確実に確認することができる。」(第8頁)

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「キー表示領域12A」及び「キー入力用表示部12」は、それぞれ、本願発明の「有効エリア」及び「表示手段」に相当する。
引用発明のタッチパネル13は、キー入力用表示部12に表示された入力操作画面を視認可能な形態に外設されており、引用発明の「タッチパネル13」は、本願発明の、表示手段の前面に該表示手段と関連付けて配設される「タッチパネル」に相当する。
引用発明において、振動子駆動部26は、制御部21から通知される振動パターンに基づいて、キー表示領域12Aに対するタッチ操作が、感圧反応領域13Aの中心部寄りの領域であった場合に強い振動で振動子14を駆動し、タッチ操作が感圧反応領域13Aの周縁部寄りの領域に対して行われた場合には、弱い振動で振動子14を駆動させ、これにより、発明の詳細な説明の段落【0010】に記載されているように、利用者に対し、タッチ操作が感圧反応領域における周縁部寄りの領域と中心部寄りの領域とのいずれに対して行われたのかについて認識させることが可能となるから、引用発明の「振動子14」及び、制御部21の制御下で振動子14を駆動する「振動子駆動部26」は、本願発明の、有効エリアに対応するタッチパネルの位置への押圧に応じて、ユーザが感知できる感知情報を発生する「感知情報発生手段」に相当し、引用発明の「制御部21」は、本願発明の有効エリア内における、前記タッチパネルへの押圧の位置に応じて前記感知情報を発生する態様を変更するように前記感知情報発生手段を制御する「制御手段」に相当する。
引用発明の、携帯情報装置のキー入力用表示部12と、タッチパネル13と、制御部21と、振動子駆動部26と、タッチパネル13を振動可能に設けられた振動子14は、本願発明の「入力装置」に相当する。

したがって、両者は
「有効エリアを複数表示する表示手段と、
前記表示手段の前面に該表示手段と関連付けて配設されるタッチパネルと、
前記有効エリアに対応する前記タッチパネルの位置への押圧に応じて、前記ユーザが感知できる感知情報を発生する感知情報発生手段と、
前記有効エリア内における、前記タッチパネルへの押圧の位置に応じて前記感知情報を発生する態様を変更するように前記感知情報発生手段を制御する制御手段と、
を備えている入力装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点
本願発明の制御手段は、タッチパネルへの押圧の位置に応じて前記感知情報を発生する態様を変更するように前記感知情報発生手段を制御し、かつ、前記タッチパネルへの押圧の位置が前記複数の有効エリアにまたがる場合には前記感知情報を発生しないように前記感知情報発生手段を制御するのに対して、引用発明の制御手段は、タッチパネルへの押圧の位置に応じて前記感知情報を発生する態様を変更するように前記感知情報発生手段を制御するが、タッチパネルへの押圧の位置が前記複数の有効エリアにまたがる場合には前記感知情報を発生しないように前記感知情報発生手段を制御することについて記載がない点。

4.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
引用発明には、複数の有効エリアにまたがって押圧がなされた場合にどのような処理を行うかについて記載はないが、一般に、多数の入力キーが配置されている場合に、(特定のキーの組合せを除いて)隣接キーを共に押下することが誤入力であることは技術常識である。そして、隣接キーを共に押下した場合に、当該入力を誤入力として、当該入力自体を無効とすることは周知刊行物1(従来のタッチパネル入力装置について記載した段落【0004】に、ある設定時間内に複数キーが押下された時に、無効入力としてどのキーも入力しない方法などがある旨記載されている。)、周知刊行物2(段落【0003】に、複数の選択部を同時に触ってしまった場合には、拡大した各選択部を表示して再度の操作を促すと記載され、段落【0026】には、同時に2つ以上の選択部が指し示された場合に、選択部による入力を認めず、利用者に誤りであることを通知することが記載されている。)に記載されているように周知である。
そうすると、引用発明の制御手段に上記周知技術を適用して、引用発明の制御手段が、タッチパネルへの押圧の位置が前記複数の有効エリアにまたがる場合には前記感知情報を発生しないように前記感知情報発生手段を制御するように構成することは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用発明、及び周知技術から予想できる程度のものであって、格別のものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の「(c)本願発明と引用発明の対比」の項において、引用発明に周知刊行物1に記載の技術を適用すると、引用発明における、機械的なキー入力機構におけるキークリック感を付与するといった目的と反する方向に、発明の目的および技術的特徴を変更することになる旨主張している。しかしながら、引用発明には誤入力に対する対応については記載がないところ、引用発明において、周知技術である誤入力に対する対応を適用することは、引用発明の機械的なキー入力機構におけるキークリック感を付与するといった目的と何ら矛盾するものではなく、審判請求人の主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-23 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2007-164234(P2007-164234)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼瀬 健太郎土居 仁士  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 入力装置  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  

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