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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B02C
管理番号 1272102
審判番号 無効2012-800062  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-04-23 
確定日 2013-02-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第4210537号発明「剪断式破砕機の切断刃」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第4210537号の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成15年3月20日の出願であって、平成20年10月31日にその発明について特許権の設定登録がなされたものである。これに対し、平成24年4月23日に株式会社浪速刃物製作所(以下、「請求人」という。)より本件無効審判の請求がなされ、平成24年7月27日に株式会社キンキ(以下、「被請求人」という。)より審判事件答弁書が提出された。その後、平成24年11月22日に第1回口頭審理が実施され、請求人及び被請求人は、各々の口頭審理陳述要領書を陳述した。その後、平成24年12月3日付けで被請求人から上申書が提出され、平成24年12月5日付けで請求人から上申書が提出された。

第2.本件特許発明
本件特許第4210537号の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許第4210537号の特許登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ケーシングに支持した軸にスペーサを挟んで切断刃取付台を設け、該切断刃取付台の周囲に複数の刃取付部を形成し、該刃取付部に切断刃の後部に形成した係止部を係止する突出段部を形成し、該突出段部で切断刃の係止部を係止した状態で該切断刃に形成した固定ボルト孔に固定ボルトを設けて切断刃を前記切断刃取付台に固定し、該切断刃を固定することにより前記刃取付部の外周が露出しないようにするとともに、該切断刃の内側側面を前記スペーサで挟んだ状態にして前記切断刃取付台の側面がほぼ露出しないようにして使用し、交換時には切断刃交換装置の押圧部材を前記固定ボルト孔に挿入して拡径させることにより該押圧部材を切断刃と密接させ、該押圧部材とともに切断刃を一体的に前記切断刃取付台から半径方向に取外して交換するようにした剪断式破砕機の切断刃において、
前記切断刃を前記切断刃取付台に固定する前記固定ボルト孔の固定段部よりも入口側に、該切断刃の交換時に前記固定ボルト孔に挿入して拡径させる前記切断刃交換装置の押圧部材が係合するように該固定ボルト孔の内面から半径方向に拡径する環状凹部で形成した係合部を具備させた剪断式破砕機の切断刃。
【請求項2】
請求項1記載の剪断式破砕機の切断刃において、
前記固定ボルト孔の軸方向に所定間隔で複数本の係合部を形成した剪断式破砕機の切断刃。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の剪断式破砕機の切断刃において、
前記係合部を前記固定ボルト孔の軸方向と所定角度で交差させて形成した剪断式破砕機の切断刃。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の剪断式破砕機の切断刃において、
前記係合部の固定ボルト孔入口側に、該入口側に向けて鋭角となった角部を形成した剪断式破砕機の切断刃。」

第3.請求人が主張する無効理由の概要

1.主張の要点
請求人は、「特許第4210537号の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」との趣旨で特許無効審判を請求しており、その理由は以下のとおりである。
特許第4210537号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、
(1)各種固形処理物を破砕・粉砕する切断刃あるいは解砕歯に関する主引例甲第1号証の引用発明と、
(2)同じく各種固形処理物を破砕・粉砕する切断刃あるいは解砕歯に関する甲第9号証の記載と、
(3)甲第2?8号証を周知例とした周知技術と、に基づいて、
又は、
(1)主引例甲第1号証の引用発明と、
(2)甲第9号証の記載と、
(3)甲第10号証の記載と、
(4)甲第2?8号証を周知例とした周知技術と、に基づいて、
すなわち、甲第1号証及び甲第9号証に記載された発明並びに周知技術に基づき、または、甲第1号証、甲第9号証及び甲第10号証に記載された発明並びに周知技術に基づき、本件特許発明が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明は無効とすべきものである。

2.証拠方法
請求人は、証拠として、以下の甲第1ないし10号証を提出している。

甲第1号証:実願平3-44866号(実開平4-131443号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開平6-79642号公報
甲第3号証:実願昭60-86887号(実開昭61-205774号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭60-86223号(実開昭61-201774号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実公平7-15737号公報
甲第6号証:特開平2-298473号公報
甲第7号証:実願昭57-160470号(実開昭59-66578号)のマイクロフィルム
甲第8号証:実公昭52-5037号公報
甲第9号証:特開2001-334156号公報
甲第10号証:特開平2-211627号公報

3.主張の概要
請求人が提出した審判請求書、平成24年11月8日付け口頭審理陳述要領書、平成24年11月22日第1回口頭審理調書及び平成24年12月5日付け上申書を参照すると、主張の概要は、以下のとおりである。

3-1.本件特許発明の分説
「(請求項1)
A[1]-1 ケーシングに支持した軸にスペーサを挟んで切断刃取付台を設け、
A[1]-2 該切断刃取付台の周囲に複数の刃取付部を形成し、
A[1]-3 該刃取付部に切断刃の後部に形成した係止部を係止する突出段部を形成し、
A[2] 該突出段部で切断刃の係止部を係止した状態で該切断刃に形成した固定ボルト孔に固定ボルトを設けて切断刃を前記切断刃取付台に固定し、
A[3]-1 該切断刃を固定することにより前記刃取付部の外周が露出しないようにするとともに、
A[3]-2 該切断刃の内側側面を前記スペーサで挟んだ状態にして前記切断刃取付台の側面がほぼ露出しないようにして使用し、
A[4] 交換時には切断刃交換装置の押圧部材を前記固定ボルト孔に挿入して拡径させることにより該押圧部材を切断刃と密接させ、該押圧部材とともに切断刃を一体的に前記切断刃取付台から半径方向に取外して交換するようにした
A[5] 剪断式破砕機の切断刃において、
B[6] 前記切断刃を前記切断刃取付台に固定する前記固定ボルト孔の固定段部よりも入口側に、該切断刃の交換時に前記固定ボルト孔に挿入して拡径させる前記切断刃交換装置の押圧部材が係合するように
B[7] 該固定ボルト孔の内面から半径方向に拡径する環状凹部で形成した係合部を具備させた
B[8] 剪断式破砕機の切断刃。」
(なお、上記した[1]ないし[8]は、審判請求書における丸付き数字の1ないし8である。以下、同様に表記する。)

3-2.甲第1ないし10号証の記載

(1)甲第1号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(実願平3-44866号(実開平4-131443号)のマイクロフィルム)には、以下の記載がある。

ア.「シュレッダー(当審注:甲第1号証では「シユレツダー」。以下、同様。)用切断刃」(【考案の名称】)

イ.「この考案は、剪断作用により各種の固形処理物を連続的に破砕するシュレッダー用の切断刃の改良に係り、詳しくはケーシングに軸支された回転軸上に装着される切断刃を、取付台部分と刃先部分とによって分割形成して、・・・その交換が容易にできるシュレッダー用切断刃に関する。」(段落【0001】)

ウ.「各軸1、2の両軸端は軸受3を介して回転自在に箱形のケーシング4に支承されている。」(段落【0013】)

エ.「上記2つの平行な軸1、2上には、後述するような構成を有する円盤状の切断刃10がスペーサ11を密着状態に挟んで交互に、その側面同士(当審注:「志」。)が互いに密接ラップした状態で嵌合装着されている。」(段落【0014】)

オ.「切断刃10は、矩形断面の軸1、2に嵌着される取付台14の部分とこれを取り囲む刃先13の部分とに分割、形成されている。この刃先13と取付台14とは後述する如く接離(着脱)可能になっている。しかも、刃先13の部分は、周方向に幾つか分割されている。つまり、刃先13は、一つの爪10aを含む略鉤状の刃先片13aを周方向に幾つか接合連設することにより(当審注:「によって」。)形成されている。」(段落【0018】)

カ.「刃先13と取付台14との接合境界面Cは、表面に露出しない、つまり、取付台14の外周全体が表面に露出しないように刃先片13aによって完全に取り囲まれた形に囲繞されている。・・・なお、取付台14の外周には各刃先片13aに噛合する如く段状歯部14aが突出形成されており、この歯部14aにより軸回転力を刃先13部分に確実に伝達できるようになっていると共に、切断時に反力をこの歯部14aで受け持つ。」(段落【0019】)

キ.「各刃先片13aにはボルト孔15が開設されており、このボルト孔15にボルト16を挿入して取付台14側に形設した雌ねじ孔17に螺着することにより、各刃先片13aは取付台14の外周に接離(着脱)可能に一体化され、一つの切断刃10が形成されるようになっている。」(段落【0020】)

ク.「スペーサ11の外径Dは取付台14の外径dより(当審注:「よりも」。)大きい(D>d)関係をもつように形成されており、この結果図示する如く、スペーサ11側面の(この例では突出した段状歯部14aの部分を除く)斜線部分11aが取付台14の外形よりはみ出すように構成される。こうすることによって、取付台14の外周面上に接合される各刃先片13aが、両側のスペーサ11に(当審注:「の」。)はみ出し部分(図上斜線部分)11aによって挟まれ、その幅方向の位置がズレないよう固定されることになる。」(段落【0021】)

(2)甲第2号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平6-79642号公報)には、以下の記載がある。

ア.「本発明の更に他の目的は、・・・内周部を把持しなければならない目的物をも容易に取り外すことができる引き抜き具を提供することにある。」(段落【0008】)

イ.「図6及び図7の実施例は、軸62″上に示された目的物60″のように、内周部を把持して取り外す必要のある目的物60″を取り外すのに使用される。」(段落【0027】)

ウ.「ジョー50″は外方に配向された把持爪52″を有している。」(段落【0028】)

エ.「ナット22は、図6に破線で示すように、ジョー50″がリンク70により引き寄せられている初期位置から、手動により回転され、ねじロッド20″を引き上げる。これにより、頂カラー12及びプレート28が一体となって移動し、従って、リンク70とジョー50″とが協働してジョー50″を押し拡げ、目的物60″と係合させる(図6には、破線位置と実線位置とを対比して示してある)。目的物60″がジョー50″によりひとたび適当に把持されたならば、他の実施例と同様にプッシャ26″を回転させて、カラー12、プレート28、リンク70及びジョー50″を、把持した目的物60″と一緒に引き上げる。」(段落【0029】)

(3)甲第3号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証(実願昭60-86887号(実開昭61-205774号)のマイクロフィルム)には、以下の記載がある。

ア.「本考案は以上の要望に対し、これに応えんとするもので、簡易迅速に前記シートリング(5)を取り外すように構成した抜き治具を提供せんとするものである。」(明細書第3ページ第14行ないし第4ページ第2行)

イ.「メカニカルシール(4)のシートリング(5)を軸孔(2)から引き出す場合には、まず、第1図(当審注:「まず第1図」。)の常態からナット(30)をボディ(21)に対し相対的に回転させ・・・各係合爪(23)を(当審注:「・・・」。)内径方向へ向けて弾性的に斜向変形させる。(当審注:「・・・」。)この状態から各係合爪(23)の先端に形成した係合突起(25)を、シートリング(5)の後端面に形成した係合凹部(5a)の内径側に遊嵌挿入し、続いてナット(30)をボディ(21)に対して後退移動させる。しかして・・・各係合爪(23)が第2図の斜向姿勢から第1図の常態へ復帰し、第1図に示したように先端の係合突起(25)をシートリング(5)の係合凹部(5a)に係合させるようになり、爾後、当該治具全体を後方へ引くことによりシートリング(5)を取り出すことができる。」(明細書第6ページ第13行ないし第8ページ第4行)

(4)甲第4号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証(実願昭60-86223号(実開昭61-201774号)のマイクロフィルム)には、以下の記載がある。

ア.「本考案は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業が簡単で、しかも効率よく行えるばかりでなく、取扱の容易なリング状部材の引き抜き工具を提供することを目的としている。」(明細書第3ページ第5ないし8行)

イ.「リング状部材11の引き抜き作業について説明する。まず引き抜き工具Aのエキスパンドブロック6をレバー4の上部側へ移動させておき、レバー4の先部をすぼめる(第1図の状態)。次いで、このレバー4の先部をフレーム10に穿設された穴部10aに挿通する。そして、ねじ軸1を回転させて、エキスパンドブロック6をレバー4の爪4b側へ移動させる。・・・そして、さらにねじ軸1を回転させると、・・・レバー4が上昇する。すると、このレバー4の先部に形成された爪4bが、・・・レバー4の上昇に伴い枠体11aのフランジ部11bに掛止される(第4図の状態)。そして、さらにねじ軸1を回転させると、・・・レバー4の爪4bがリング状部材11の枠体11aを穴部10aの内壁10bから除々に引き抜く(第5図の状態)。」(明細書第7ページ第7行ないし第9ページ第5行)

(5)甲第5号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証(実公平7-15737号公報)には、以下の記載がある。

ア.「本考案は、上記(当審注:「は上記」)従来の不具合に着目してなされたものであり、作動片の爪体が軸に装着する部品から脱落することなく、確実かつ容易に軸装部品を軸から離脱可能とすることを目的とする(当審注:「としている」。)。」(段落【0006】)

イ.「図5は本考案の第3実施例に係る軸装部品の離脱具を示す一部破断の側面図である。この軸装部品の離脱具41は外軸42に内挿されるハブ43を該外軸42から離脱するための工具に係る。」(段落【0021】)

ウ.「この軸装部材の離脱具41を用い、ハブ43を外軸42から離脱する場合、先ずセンターボルト15を軸線方向(X方向)に対応させ、当圧部16を内軸53の端部中心位置Pに衝合する。この状態でハブ43の内径に合わせてナット49を螺動調整し、スライド体47をスライドさせることで作動片44の先端部をボルト51のS点を中心に揺動させる。こうして、ハブ43内に各作動片44の先端部を挿入するとともに、爪体50をハブ43の係合部54に係着させる。続いてセンターボルト15の頭部に六角レンチを結合させ、矢印F方向にボルトを回転させる。これにより、爪体50によってハブ43が軸線方向(X方向)に沿って引張られることとなり、」(段落【0023】)

(6)甲第6号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(特開平2-298473号公報)には、以下の記載がある。

ア.「レバー(6)を閉じたプーリー抜き工具(5)をオイルシール穴(9)の下端に挿入し、シャフト(1)を右回転させると、レバー(6)の先端が徐々に開いて拡がり、オイルシール(10)の下端の空隙に喰い込むと共に、レバー(6)は固定される。・・・ナット(2)を締めてゆくと、・・・レバー(6)はオイルシール(10)を徐々に上方に引き上げ、それに伴ってオイルシール(11)も共に引き上げられ、やがてオイルシール(10及11)はオイルシール穴(9)から抜き取ることができる。」(第2ページ左上欄第11行ないし右上欄第6行)

イ.「以上に詳述したように、本発明のオイルシール抜き工具を使用すると、次のような諸効果がある。・・・(4)操作が簡単で熟練を要せず、初心者でも容易に使用できる。」(第2ページ左下欄第19行ないし右下欄第10行)

(7)甲第7号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(実願昭57-160470号(実開昭59-66578号)のマイクロフィルム)には、以下の記載がある。

ア.「本考案の目的は、・・・金型から直接ダイスを確実迅速かつ簡単容易に取外し得るコスト低廉にして取扱操作簡便至極な孔あけ用ダイス取外し工具を創作して提供することである。」(明細書第3ページ第12ないし18行)

イ.「第2図は挿入部12をダイス4の孔6内に挿入した状態を示し、この挿入時には広径鉤15、15・・・の外端面が孔6内に挿入し得るように内方に位置している。第3図は第2図の状態下において雌ねじ14に雄ねじ棒17をねじ込み進入させた状態を示し、ねじ棒17の進入に伴なって割り溝13、13・・・が徐々に開かれて挿入部12の外径が拡大し、広径鉤15、15・・・の段差16、16・・・がダイス4の径違い段差部に引掛かる。そこで、雄ねじ棒17を強く引けば、ダイス4が金型8から取り外される。」(明細書第5ページ第10行ないし第6ページ第1行)

(8)甲第8号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証(実公昭52-5037号公報)には、以下の記載がある。
(当審注:甲第8号証において、「ブッシュ」は「ブツシユ」である。)

ア.「この考案は、上記の問題を解決するためになされたもので、排気弁の弁棒ガイドブッシュなどのブッシュをきわめて簡単に取除き得るブッシュ抜き出し具(当審注:「抜出し具」。)の構造を提供することを目的とする」(第1ページ第1欄第36行ないし第1ページ第2欄第1行)

イ.「この考案の上記ブッシュ抜出し具は、第2?4図に示すように、まず抜出すべきブッシュ3内に抜出し棒4を挿入し、そのテーパ部6をブッシュの下端より下方に位置せしめる。ついでこの抜出し棒4に掛爪筒7を嵌め被せ、掛爪8を抜出し棒4のテーパ部6にのせた状態で抜出し棒4を上昇せしめ、掛爪8をブッシュの下端に引掛ける。そしてこの状態において、ナット9を抜出し棒4の雄ねじ部5にその略下端までねじ込み、抜出し棒4と掛爪筒7をブッシュ3に一体的に固定する。・・・ねじ上げ筒12をこの逆U形の支持筒10の上面より突き出している抜出し棒4の雄ねじ5にねじ込み、ねじ上げ筒12の下端が逆U形の支持筒10の上面に接するまでねじ込んだ後、さらに強くこれを回動せしめてブッシュ3を抜出すものである。」(第1ページ第2欄第26行ないし第2ページ第3欄第7行)

(9)甲第9号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証(特開2001-334156号公報)には、以下の記載がある。

ア.「【請求項4】回転駆動されるロータの外周に被破砕物を破砕するための複種類の破砕歯を有したロールクラッシャにおいて、
半径方向に開けられた穴である解砕歯固定穴を有し、回転駆動される円筒状のロータ本体と、
前記解砕歯固定穴に挿入部が挿入固定され、回転方向に角度を有して連続する2つのくさび面を有し、主に楔効果により被破砕物を破砕するための複数の解砕歯と、
前記解砕歯固定穴の側壁と前記解砕歯の挿入部との間に配置された解砕歯取付コッタと前記解砕歯取付コッタが移動しないように固定するためのコッタ固定金具とことからなるロールクラッシャ。」(【請求項4】)

イ.「【請求項5】請求項4に記載のロールクラッシャにおいて、
前記コッタ固定金具を係合するために前記解砕歯固定穴に形成された係合部と、前記コッタ固定金具と前記コッタ固定金具とを一体に連結するボルトとからなることを特徴とするロールクラッシャ。」(【請求項5】)

ウ.「解砕歯固定穴30には、解砕歯10の挿入部27と傾斜面31との間の隙間に解砕歯取付コッタ35が挿入されている。解砕歯取付コッタ35は、L字状にの形をしており先端が細いテーパー状を成している。従って、解砕歯取付コッタ35を挿入部27と解砕歯固定穴30の傾斜面31との間に圧入すると、解砕歯10は解砕歯固定穴30内に固定されることになる。」(段落【0028】)

エ.「解砕歯取付コッタ35の上端の鍔部36は、第1ロータ本体6の外周面7に接している。鍔部36の上面には、ネジ穴37が形成されている。ネジ穴37は、解砕歯取付コッタ35を解砕歯固定穴30から引き抜くためにボルト等をねじ込み、これを治具で引き抜くためのものである。ネジ穴37は、通常は使用しないのでゴミが入らないようにネジがねじ込んである。」(段落【0029】)

オ.「図6は、解砕歯の他の取付け構造を示す断面図である。解砕歯固定穴30の側面には、固定金具係合穴41が形成されている。固定金具係合穴41には、コッタ固定金具42の一端が挿入されている。解砕歯10の挿入部27と傾斜面31との間の隙間に解砕歯取付コッタ43が挿入されている。解砕歯取付コッタ43は、L字状にの形をしており先端が細いテーパー状を成している。従って、解砕歯取付コッタ43を挿入部27と解砕歯固定穴30の傾斜面31との間に圧入すると、解砕歯10は解砕歯固定穴30内に固定されることになる。」(段落【0041】)

カ.「解砕歯取付コッタ43の上端の鍔45は、第1ロータ本体6の外周面7に接している。鍔45の上面からコッタ固定金具42の方向にネジ穴が形成されている。ネジ穴にはボルト44がねじ込まれている。ボルト44をコッタ固定金具42にねじ込むことによって、コッタ固定金具42と解砕歯取付コッタ43とは一体に固定される。ネジ結合であるから、着脱が容易となる。」(段落【0042】)

(10)甲第10号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証(特開平2-211627号公報)には、以下の記載がある。

ア.「固定ボルト19を挿着させる固定孔23(当審注:「22」。)の内壁最上部に、雌ネジ23が形成されている。」(第3ページ左上欄第13及び14行)

イ.「固定孔22に取外しボルト25を挿入する。この取外しボルト25、は(当審注:「25は」。)、頭部25aの下に、固定孔22の雌ネジ23に螺合するネジ部25bを形成する・・・そしてこの様な取外しボルト25のネジ部25bを固定孔22の雌ネジ23に螺合させて、その先端をネジ穴17の底部に当接させ、更にスパナ等の道具でねじ込んでいくと、・・・ターンテーブル2は浮上する様にスピンドル3から離脱する。」(第3ページ左下欄第3行ないし右下欄第1行)

3-3.対比、検討

(1)本件特許発明と甲第1号証に記載されたものとの対比

(1-1)相違及び一致について
本件特許発明と甲第1号証に記載されたものとを対比すると、両者は、本件特許発明においては、構成要件B[6]「前記切断刃を前記切断刃取付台に固定する前記固定ボルト孔の固定段部よりも入口側に、該切断刃の交換時に前記固定ボルト孔に挿入して拡径させる前記切断刃交換装置の押圧部材が係合するように」及び構成要件B[7]「該固定ボルト孔の内面から半径方向に拡径する環状凹部で形成した係合部を具備させた」を備えるものであるのに対し、甲第1号証に記載されたものにおいては、構成要件B[6]及びB[7]を備えていない点で両者は相違し、その他の構成(切断刃の形態)については一致している。

(1-2)構成要件A[4]について
構成要件A[4]は、甲第1号証に記載されている事項ではないが、構成要件A[4]の「押圧部材を前記固定ボルト孔に挿入して拡径させることにより該押圧部材を切断刃と密接させ、該押圧部材とともに切断刃を一体的に」「取外して交換する」という技術的事項は、切断刃の形態を特定する技術的事項ではなく、構成要件B[6]の記載と共に、本件特許発明の切断刃の使用態様や用途を特定することで構成要件B[7]に記載された「環状凹部で形成した係合部」の機能を特定する技術的事項である。
そのため、構成要件A[4]の技術的事項は、切断刃の形態に相違を生じさせることはことはないが、構成要件B[7]の「環状凹部で形成した係合部」の機能を特定する点で発明を特定する事項であり、引用発明から相違点に係る構成要件B[6]及びB[7]を採用して本件特許発明を想到できたか否かを検討する上で、あわせて検討すべき技術的事項である。

(2)組合せについて

(2-1)甲第9号証に記載された事項
回転駆動されるロータ本体6の外周に解砕歯10を有したロールクラッシャにおいて、解砕歯10の挿入部27とロータ本体6に設けられた解砕歯固定穴30の傾斜面31との間に解砕歯取付コッタ35を圧入して、解砕歯10を解砕歯固定穴30内に固定すること、及び、解砕歯10の交換時に解砕歯取付コッタ35に設けたネジ穴37にボルト等をねじ込みこれを治具で引き抜いて交換すること。

(2-2)周知技術
甲第2ないし8号証の記載から、軸や軸孔内に固定された引き抜き対象物を軸線方向に引き抜くための治具の技術分野において、引き抜き対象物を容易に引き抜くという課題を解決するための技術として次の2つの技術が周知技術として広く知られている。
(ア)引き抜き対象物に設けられた孔に挿入して拡径させることで引き抜き対象物の孔の内面に密着させて引き抜き対象物を軸方向に引き抜く治具(以下、「周知技術(ア)」という。)。
(イ)周知技術(ア)に係る引き抜き治具が係合する環状凹部で形成した係合部を、孔の内面に設けること(以下、「周知技術(イ)」という。)。

また、周知技術(ア)の「軸方向」に関して具体的には、「引き抜き対象物に設けられた孔に挿入して拡径させることで引き抜き対象物に設けられた孔の内面に治具を密着させて引き抜き対象物に設けられた孔の軸方向に引き抜く治具。」である(第1回口頭審理調書参照。)。

(2-3)甲第1及び9号証に開示された発明並びに周知技術(ア)及び(イ)の組合せ

ア.甲第1号証には、本件特許発明の解決課題である、切断刃が錆等で切断刃取付台と強固に密着しても半径方向に効率良く取外すことができる剪断式破断機の切断刃を提供することは記載されていない。しかし、甲第1号証の刃先片13aは、一定の使用期間を経過すると新しいものに交換することを前提としており、このような交換式のものにおいて取外し交換作業を効率良く行うという課題は一般的に生じる課題である。特に、錆等で取外しの際に切断刃が強固に密着して交換作業が困難になればなおのことである。つまり、本件特許発明の解決課題は、交換式であることから当然に生じる自明の課題であり、解決課題の設定に困難性はない。

イ.甲第9号証は、圧入されることでそのままでは引き抜くことができなくなる解砕歯取付コッタ35を取付台から引き抜く技術であり、取付台に強固に密着するに至った原因が本件特許発明との間で相違しているが、本件特許発明と同種の各種固形処理物を破砕・粉砕する切断刃あるいは解砕歯に関し取付台に強固に密着する部材の交換時に径方向へ効率良く引き抜く点で本件特許発明と課題が共通している。そして、甲第9号証は、本件特許発明と共通の課題を解決するためにボルトを螺合させて引き抜くことが開示されている。
つまり、軸や軸孔内に固定された引き抜き対象物を軸線方向に引き抜くための治具の技術分野において、引き抜き対象物を容易に引き抜くという課題を解決する周知技術として周知技術(ア)及び(イ)が甲第2ないし8号証に開示され、甲第9号証に交換式の切断刃の分野においても切断刃を効率よく取り替えるという普遍的課題が開示されている。

ウ.上記ア.及びイ.からすれば、甲第1号証の引用発明に接した当業者が、交換式の刃先片であることから当然に生じる自明の課題を解決するために、甲第9号証の開示内容に鑑みて、交換時に強固に密着する刃先片を半径方向に効率良く取外すことを期待して、引用発明に係る刃先片に設けたネジ穴にボルト等を螺合させてこれを取外すことは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、軸や軸孔内に固定された引き抜き対象物を軸線方向に引き抜くための治具の技術分野において、引き抜き対象物を容易に引き抜くという課題を解決する技術として周知技術(ア)及び(イ)が周知技術として広く知られているので、引用発明の甲第1号証に、甲第9号証と、この甲第9号証と解決課題が共通する周知技術(ア)及び(イ)と、を適用して、つまり、甲第9号証に記載されたネジ穴とボルトとの螺合により刃先片を取外すことに代えて、周知技術(ア)に係る引き抜き治具と周知技術(イ)に係る環状凹部で形成した係合部との係合によって刃先片を取外すことは、当業者が容易に想到し得るものである。

エ.なお、本件特許発明は、環状凹部で形成した係合部を設ける位置が固定段部よりも入口側にあるが(つまり、構成要件B[6]の相違点に相当)、係合部を固定ボルト孔のどの位置に設けるのかは、技術の具体的適用に伴い当然検討せざるを得ない事項であって、その構成自体に格別の作用効果がなく技術的意義はないので、この相違点については設計事項にすぎない。本件特許発明は、甲第1号証と、甲第9号証と、甲第2ないし8号証を周知例とした周知技術と、に基づいて容易に発明できたものである。

(2-4)甲第1、9及び10号証に記載された発明並びに周知技術(ア)及び(イ)の組合せ
甲第10号証には、固定ボルト19を挿着させる固定孔22の固定段部より入口側に、取外しのための取外しボルト25と螺合する係合部(雌ネジ)23を設けることが記載されている。そのため、係合部を設ける位置に関する相違点に何らかの技術的意義があったとしても、本件特許発明は、甲第1号証と甲第9号証及び甲第10号証の記載並びに甲第2ないし8号証を周知例とした周知技術に基づいて容易に発明できたものである。

(2-5)組合せのまとめ
主引例甲第1号証と、甲第9号証と、周知技術とに基づいて、又は、甲第1号証と、甲第9号証と、甲第10号証と、周知技術とを組み合わせることにより、甲第1号証に記載された引用発明において、固定ボルト孔の固定段部より入口側に環状凹部で形成した係合部であって、切断刃の交換時に押圧部材が係合するという機能を発揮する係合部を具備させるという相違点に係る構成を採用して本件特許発明とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(3)平成24年12月5日付け上申書の概要
・甲第9号証の解砕歯取付コッタ35は、ロータ本体(回転軸)6の外周面に設けられた解砕歯固定穴30に解砕歯10とともに圧入状態で嵌め込まれ、解砕歯固定穴30の内部で解砕歯10と密着して実質的に一体となってロータ本体6に固定されるものである。そのため、甲第9号証では、本件特許発明における切断刃に相当するものが、解砕歯10と解砕歯固定取付コッタ35との2つに分割されているにすぎず、解砕歯取付コッタ35は、本件特許発明の切断刃と異なる部材ではない。
・本件特許発明は、隣接する切断刃あるいはスペーサと切断刃との隙間に被破砕物が挟み込まれる等によって、隣接する切断刃及びスペーサにより区画された凹部から取外しが困難になった切断刃を効率良く取外す技術に関するもので、凹部(解砕歯固定穴30)に密着状態で嵌め込まれた切断刃(解砕歯取付コッタ35)を取外す点で甲第9号証と共通する課題を有する同一技術分野に属する技術であり、また、隣接する刃先片及びスペーサにより区画された凹部に嵌め込まれた刃先片を交換時に当該凹部から取外す点で甲第1号証とも共通する課題を有する同一技術分野に属する技術である。
・以上のように、甲第1号証及び甲第9号証は、本件特許発明と技術分野が同一であるだけでなく、凹部(解砕歯固定穴30)に嵌め込まれ固定される点で切断刃(解砕歯取付コッタ35)の取付形態も同一であるため、甲第1号証及び甲第9号証に記載された発明を組み合わせることの動機付けが、甲第1号証及び甲第9号証には存在する。

第4.被請求人の主張

1.主張の要点
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」としている。

2.証拠方法
被請求人は、証拠として、以下の乙第1ないし7号証を提出している。

乙第1号証:被請求人の侵害警告に対する請求人の回答書
乙第2号証:被請求人の侵害警告に対する請求人の回答書
乙第3号証:平成23年(ワ)第13054号に係る平成24年4月18日付け第4準備書面(被告)
乙第4号証:同平成24年6月14日付け準備書面(2)(原告)
乙第5号証:同平成24年7月31日付け第5準備書面(被告)
乙第6号証:同平成24年9月21日付け準備書面(3)(原告)
乙第7号証:同平成24年10月26日付け第6準備書面(被告)

3.主張の概要

(1)一致点について
本件特許発明と甲第1号証開示発明とを対比すると、本件特許発明の構成要件A[1]-1、A[1]-2、A[1]-3、A[2]、A[3]-1、A[3]-2、A[5]及びB[8]は、甲第1号証に記載されている。

(2)相違点について
本件特許発明の構成要件A[4]は、切断刃の交換時における交換の態様を、切断刃交換装置の構成を示して特定している。これに対して、甲第1号証開示発明は、甲第1号証の記載から、「切断刃を切断刃取付台から半径方向に取外して交換する」ことができることが認められるが、本件特許発明の構成要件A[4]のように切断刃交換装置を用いて切断刃を切断刃取付台から取外すことについて一切記載されていないことから、甲第1号証には、構成要件A[4]が記載されていないことは明らかである。
構成要件A[4]の記載は、構成要件B[7]に密接に関連するものであり、本件特許発明に係る剪断式破砕機の切断刃を特定する構成であることから、これを無視して本件特許発明の構成要件を認定することは許されない。
したがって、本件特許発明と甲第1号証開示発明とは、請求人が審判請求書の(4-3-3)において相違点として認めている構成要件B[6]及びB[7]に加え、構成要件A[4]においても相違している。

(3)甲第1号証及び甲第9号証に開示された発明の適用について
甲第1号証開示発明には、本件特許発明の課題である、切断刃が錆等で切断刃取付台と強固に密着しても半径方向に効率良く取外すことができる剪断式破砕機の切断刃を提供することについては、記載も示唆もなされていない。
甲第1号証開示発明において、切断刃は切断刃取付台から半径方向に取外すことができるように構成されているため、切断刃を切断刃取付台から取外す際に、本件特許発明のように切断刃交換装置を用いることは想定しておらず、また、本件特許発明の課題を認識できるのは、甲第1号証開示発明をなし、当該発明の実施製品の切断刃の交換作業を行う被請求人及びその関係者に限られる(その理由は、切断刃の交換作業は、被請求人及びその関係者が行うのが通常であるためである。)ことから、甲第1号証開示発明と甲第9号証開示発明とを組み合わせる動機付けは何ら存在せず、また、仮に、甲第1号証開示発明と甲第9号証開示発明とを組み合わせたとしても、本件特許発明は想到されるものではない。
甲第9号証開示発明の解砕歯取付コッタ35は、圧入されることでそのままでは引き抜くことができなくなる解砕歯取付コッタ35を、解砕歯取付コック35の鍔部36に設けたネジ穴37にボルト等をねじ込みこれを治具で引き抜くという極めて限定された技術であり、甲第1号証開示発明と組み合わせて本件特許発明に到らすための具体的な動機付けとなるものは何ら存在しない。
請求人は、審判請求書の(4-4-3)において、「甲1及び甲9には、いずれも本件特許発明と同一の技術分野に属する技術、つまり、破砕機と、破砕機のロータ外周に固定された交換式の切断刃に関する技術が開示されており、両者を組み合わせる動機付けを妨げるような事由などない。・・・」と主張しているが、本件特許発明の課題が仮に公知であったとしても、圧入されることでそのままでは引き抜くことができなくなる解砕歯取付コッタ35を用いる甲第9号証開示発明と、このようなコッタを用いることのない甲第1号証開示発明とを組み合わせる動機付けは存在しない。

(4)甲第2ないし8号証に記載された周知技術について
甲第2ないし8号証に開示された周知技術は、軸や軸孔内に同軸状に固定あるいは装着された目的物を孔内(機内)から軸線方向に機外に引き出すあるいは引き抜く取り出し治具に関するものであり、甲第2ないし8号証には、当該甲第2ないし8号証に開示された周知技術を、甲第1号証開示発明に適用可能な程度まで普遍化できる記載や示唆は存在しない。

また、周知技術(ア)の「軸方向」に関して具体的には、「引き抜き対象物に設けられた孔に挿入して拡径させることで引き抜き対象物の孔の内面に密着させて引き抜き対象物を引き抜き対象物が装着されている軸又は孔の軸方向に引き抜く治具。」である(第1回口頭審理調書参照。)。

(5)甲第10号証に開示された発明について
甲第10号証開示発明は、半導体の製造工程等において洗浄処理後の半導体ウエハ等の水分除去、乾燥を行う回転乾燥装置において、ターンテーブル2に形成した固定ボルト19を挿着させる固定孔22の内壁最上部に、取外しボルト25を螺合する雌ネジ23を形成し、取外しボルト25を雌ネジ23にねじ込むことにより、ターンテーブル2をスピンドル3から離脱させるようにした回転乾燥装置に関するものであり、甲第10号証には、当該甲第10号証開示発明を、甲第1号証開示発明に適用可能な程度まで普遍化できる記載や示唆は存在しない。

第5.当審の判断
本件特許第4210537号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、本件特許第4210537号の特許登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記「第2.【請求項1】」のとおりのものである。

1.甲第1号証ないし甲第10号証の記載

(1)甲第1号証
甲第1号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 シュレッダーのケーシングに軸支された軸にスペーサを挟んで装着される切断刃において、この切断刃を該軸に嵌着される取付台部分とこれを取り囲む刃先部分とで分割形成し、しかもこの刃先部分を周方向に分割して複数個の刃先片で形成し、各刃先片を該取付台に接離可能に構成する共に、該刃先部分で該取付台の外周が表面に露出しないよう囲繞したことを特徴とするシュレッダー用切断刃。
【請求項2】 切断刃の両側に密着してスペーサを配装し、このスペーサの外径を取付台外径より大きく形成して該取付台からはみ出す部分を形成し、このスペーサのはみ出し部分により各刃先片の幅方向の固定を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載のシュレッダー用切断刃。」(【実用新案登録請求の範囲】)

b.「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、剪断作用により各種の固形処理物を連続的に破砕するシュレッダー用の切断刃の改良に係り、詳しくはケーシングに軸支された回転軸上に装着される切断刃を、取付台部分と刃先部分とによって分割形成して、摩耗が刃先部分のみに生じるように構成すると共に、その交換が容易にできるシュレッダー用切断刃に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、剪断力を効果的に利用してプラスチック、木片、紙、金属、ゴム、繊維、皮革に至るまであらゆる固形処理物を粉砕する、剪断式粉砕機が知られている(例えば実公昭55-41309号公報参照)。
【0003】
この種の剪断式粉砕機(以下、シュレッダーともいう)においては、上下にそれぞれ処理物の投入口と排出口を有するケーシング内に、2つの軸が平行に軸受を介して対向回転可能に支承されており、各軸上にはスペーサを挟んで交互に、一体物である円盤状の切断刃が配設されている。交互に配設された切断刃は、片側側面同志が相互に密接すると共に、切断刃の外周面同志が一部ラップして、所謂スリットカッタを形成している。 ・・・(後略)・・・ 」(段落【0001】ないし【0003】)

c.「【0006】
本考案は、かかる従来技術の課題に鑑みなされたもので、切断刃を軸に装着する取付台の部分と摩耗し易い刃先部分とに分割して、刃先部分を取付台に接離可能に構成し、刃先部分のみを取り替えればよいようにした分割タイプのシュレッダー刃を提供することを目的とする。」(段落【0006】)

d.「【0009】
【作用】
上記構成において、取付台の部分は刃先部分により表面に露出しないように取り囲まれているため、処理物を破砕する際の摩耗から保護され、使用によって摩耗するのは、刃先部分だけとなる。刃先部分の取り替えの際には、周方向に分割されてなる刃先片を個々に取付台から取り外すだけでよい。そして、新しい刃先部分を取付台にボルト等で接合締結して切断刃として一体化する。かかる構成の切断刃においては、ケーシングや軸受などを取り外さなくても、切断刃のうちの摩耗した刃先部分のみを取り替えることによって、簡単に刃先の取替作業が行える。」(段落【0009】)

e.「【0013】
これらの図において、2つの矩形断面をした回転軸である、主軸1と従軸2が一定間隔をおいて平行に並設されており、各軸1、2の両軸端は軸受3を介して回転自在に箱形のケーシング4に支承されている。主軸1に連なる軸1aが継手5を介して電動機6の駆動軸7に連結されている。この主軸1に連なる軸1a上には平歯車8が装着され、従軸2の一端部に設けた平歯車9と噛合している。従って、電動機6を駆動して主軸1を左回転させると、従軸2はこれと反対の右方向に回転、つまり、2つの軸1、2は内方に向かって(図6の矢印方向に)対向回転するように構成されている。
【0014】
上記2つの平行な軸1、2上には、後述するような構成を有する円盤状の切断刃10がスペーサ11を密着状態に挟んで交互に、その側面同志が互いに密接ラップした状態で嵌合装着されている。各切断刃10の外周には処理物を引き込み且つ切断用の複数の爪10a(図6の切断刃10を参照)が一定の間隔で設けられている。 ・・・(後略)・・・ 」(段落【0013】及び【0014】)

f.「【0018】
そこで、本考案にかかる切断刃10は、図1の如く構成されている。すなわち、図1に示すように、切断刃10は、矩形断面の軸1、2に嵌着される取付台14の部分とこれを取り囲む刃先13の部分とに分割、形成されている。この刃先13と取付台14とは後述する如く接離(着脱)可能になっている。しかも、刃先13の部分は、周方向に幾つか分割されている。つまり、刃先13は、?つの爪10aを含む略鉤状の刃先片13aを周方向に幾つか接合連設することによって形成されている。
【0019】
刃先13と取付台14との接合境界面Cは、表面に露出しない、つまり、取付台14の外周全体が表面に露出しないように刃先片13aによって完全に取り囲まれた形に囲繞されている。これにより、摩耗は刃先13の部分にのみ生じ、取付台14の部分には生じない。かくして、取付台14の部分は、刃先13の部分によって保護されて摩耗しないから、交換は刃先13部分のみでよくなる。なお、取付台14の外周には各刃先片13aに噛合する如く段状歯部14aが突出形成されており、この歯部14aにより軸回転力を刃先13部分に確実に伝達できるようになっていると共に、切断時の反力をこの歯部14aで受け持つ。
【0020】
各刃先片13aにはボルト孔15が開設されており、このボルト孔15にボルト16を挿入して取付台14側に形設した雌ねじ孔17に螺着することにより、各刃先片13aは取付台14の外周に接離(着脱)可能に一体化され、一つの切断刃10が形成されるようになっている。
【0021】
図2は切断刃10の両側に密着挟装したスペーサ11と取付台14との大小関係を示す。すなわち、スペーサ11の外径Dは取付台14の外径dよりも大きい(D>d)関係をもつように形成されており、この結果図示する如く、スペーサ11側面の(この例では突出した段状歯部14aの部分を除く)斜線部分11aが取付台14の外形よりはみ出すように構成される。こうすることによって、取付台14の外周面上に接合される各刃先片13aが、両側のスペーサ11のはみ出し部分(図上斜線部分)11aによって挟まれ、その幅方向の位置がズレないよう固定されることになる。かくして、各刃先片13aは軸1に直角方向は前述したようにボルト16で固定され、軸方向(即ち、刃先の幅方向)は刃先片13aの両側に密着したスペーサ11のはみ出し部分によって挟持固定されることから、長時間の使用にもガタを生じることがなく、その引き込み及び破断機能に支障を来さない。
【0022】
従って、摩耗した刃先13部分を交換する際には、単に、締結用のボルト16を取り外して刃先片13aを取付台14から取り外せばよく、従来のようにケーシングや軸受をばらした後軸から切断刃全体を引き抜くような作業は不要である。また、刃先片13aの取付台14への装着も簡単に行える。通常、かかるシュレッダーには相当数の切断刃が備わっているので、本案を採用した場合、交換作業が大幅に省力化される。」(段落【0018】ないし【0022】)

g.「【0024】
【考案の効果】
以上説明した本考案にかかる切断刃は、軸に嵌着される取付台の部分とこれを取り囲む刃先部分とによって分割形成され、刃先も周方向に分割されて幾つかの刃先片で形成され、各刃先片を取付台に着脱可能に構成したので、使用によって刃先部分のみが摩耗するだけとなる。そして、摩耗した刃先部分の取り替えは、従来の一体物の切断刃の場合と異なり、ケーシングや軸受をばらすことなく、ボルト等を外すことにより簡単に行えるため、取替作業が大幅に省力化され、保守管理が非常にやり易くなる。」(段落【0024】)

(2)甲第2号証
甲第2号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は引き抜き具(引抜き具)に関し、より詳しくは、軸から目的物を取り外すのに使用する引き抜き具に関する。」(段落【0001】)

b.「【0008】本発明の更に他の目的は、外周部を把持しなければならない目的物だけでなく、内周部を把持しなければならない目的物をも容易に取り外すことができる引き抜き具を提供することにある。」(段落【0008】)

c.「【0027】より詳しく説明すると、図6及び図7の実施例は、軸62″上に示された目的物60″のように、内周部を把持して取り外す必要のある目的物60″を取り外すのに使用される。 ・・・(中略)・・・
【0028】 ・・・(中略)・・・ ジョー50″は外方に配向された把持爪52″を有している。 ・・・(中略)・・・
【0029】すなわち、ナット22は、図6に破線で示すように、ジョー50″がリンク70により引き寄せられている初期位置から、手動により回転され、ねじロッド20″を引き上げる。これにより、頂カラー12及びプレート28が一体となって移動し、従って、リンク70とジョー50″とが協働してジョー50″を押し拡げ、目的物60″と係合させる(図6には、破線位置と実線位置とを対比して示してある)。目的物60″がジョー50″によりひとたび適当に把持されたならば、他の実施例と同様にプッシャ26″を回転させて、カラー12、プレート28、リンク70及びジョー50″を、把持した目的物60″と一緒に引き上げる。」(段落【0027】ないし【0029】)

(3)甲第3号証
甲第3号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「 [産業上の利用分野]
本考案は、軸封技術に係るメカニカルシールのシートリングを機器ハウジングの軸孔内から機外へ取り外す作業に用いられるシートリング抜き治具に関するものである。」(明細書第2ページ第2ないし6行)

b.「本考案は以上の要望に対し、これに応えんとするもので、簡易迅速に前記シートリング(5)を取り外すように構成した抜き治具を提供せんとするものである。」(明細書第3ページ第14行ないし第4ページ第2行)

c.「メカニカルシール(4)のシートリング(5)を軸孔(2)から引き出す場合には、まず第1図の常態からナット(30)をボディ(21)に対し相対的に回転させて矢示X方向に進行移動させる。 ・・・(中略)・・・ 各係合爪(23)を ・・・(中略)・・・ 内径方向へ向けて弾性的に斜向変形させる。 ・・・(中略)・・・ この状態から各係合爪(23)の先端に形成した係合突起(25)を、シートリング(5)の後端面に形成した係合凹部(5a)の内径側に遊嵌挿入し、続いてナット(30)をボディ(21)に対して後退移動させる。しかして ・・・(中略)・・・ 各係合爪(23)が第2図の斜向姿勢から第1図の常態へ復帰し、第1図に示したように先端の係合突起(25)をシートリング(5)の係合凹部(5a)に係合させるようになり、爾後、当該治具全体を後方へ引くことによりシートリング(5)を取り出すことができる。」(明細書第6ページ第13行ないし第8ページ第4行)

(4)甲第4号証
甲第4号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「[産業上の利用分野]
本考案は、フレームの穴部に圧入されているニードルベアリングなどのリング状部材を、穴部を傷付けることなく簡単に抜き取ることが出来るリング状部材の引き抜き工具に関する。」(明細書第1ページ第15ないし19行)

b.「本考案は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業が簡単で、しかも効率よく行えるばかりでなく、取扱の容易なリング状部材の引き抜き工具を提供することを目的としている。」(明細書第3ページ第5ないし8行)

c.「リング状部材11の引き抜き作業について説明する。
まず引き抜き工具Aのエキスパンドブロック6をレバー4の上部側へ移動させておき、レバー4の先部をすぼめる(第1図の状態)。
次いで、このレバー4の先部をフレーム10に穿設された穴部10aに挿通する。そして、ねじ軸1を回転させて、エキスパンドブロック6をレバー4の爪4b側へ移動させる。 ・・・(中略)・・・
そして、さらにねじ軸1を回転させると ・・・(中略)・・・ レバー4が上昇する。
すると、このレバー4の先部に形成された爪4bが ・・・(中略)・・・ レバー4の上昇に伴い枠体11aのフランジ部11bに掛止される(第4図の状態)。
そして、さらにねじ軸1を回転させると ・・・(中略)・・・ レバー4の爪4bがリング状部材11の枠体11aを穴部10aの内壁10bから除々に引き抜く(第5図の状態)。」(明細書第7ページ第7行ないし第9ページ第5行)

(5)甲第5号証
甲第5号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、例えば軸に装着されるベアリング、止め輪等の軸装部品を軸線方向に引張り、軸から離脱するための軸装部品の離脱具に関する。」(段落【0001】)

b.「【0006】本考案は上記従来の不具合に着目してなされたものであり、作動片の爪体が軸に装着する部品から脱落することなく、確実かつ容易に軸装部品を軸から離脱可能とすることを目的としている。」(段落【0006】)

c.「【0021】図5は本考案の第3実施例に係る軸装部品の離脱具を示す一部破断の側面図である。この軸装部品の離脱具41は外軸42に内挿されるハブ43を該外軸42から離脱するための工具に係る。 ・・・(後略)・・・」(段落【0021】)

d.「【0023】この軸装部材の離脱具41を用い、ハブ43を外軸42から離脱する場合、先ずセンターボルト15を軸線方向(X方向)に対応させ、当圧部16を内軸53の端部中心位置Pに衝合する。この状態でハブ43の内径に合わせてナット49を螺動調整し、スライド体47をスライドさせることで作動片44の先端部をボルト51のS点を中心に揺動させる。こうして、ハブ43内に各作動片44の先端部を挿入するとともに、爪体50をハブ43の係合部54に係着させる。続いてセンターボルト15の頭部に六角レンチを結合させ、矢印F方向にボルトを回転させる。これにより、爪体50によってハブ43が軸線方向(X方向)に沿って引張られることとなり ・・・(後略)・・・」(段落【0023】)

(6)甲第6号証
甲第6号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「 [産業上の利用分野]
本発明は、トラック等の大型自動車のブレーキ倍力装置に嵌着されているオイルシール抜きに使用する工具に関するものである。」(第1ページ左下欄第20行ないし右下欄第3行)

b.「シャフト(1)の回転により、先端のレバー(6)が開閉するので、まず、レバー(6)を閉じたプーリー抜き工具(5)をオイルシール穴(9)の下端に挿入し、シャフト(1)を右回転させると、レバー(6)の先端が徐々に開いて拡がり、オイルシール(10)の下端の空隙に喰い込むと共に、レバー(6)は固定される。 ・・・(中略)・・・ ナット(2)を締めてゆくと ・・・(中略)・・・ レバー(6)はオイルシール(10)を徐々に上方に引き上げ、それに伴ってオイルシール(11)も共に引き上げられ、やがて、オイルシール(10及11)はオイルシール穴(9)から抜き取ることができる。」(第2ページ左上欄第11行ないし右上欄第6行)

c.「[発明の効果]
以上に詳述したように、本発明のオイルシール抜き工具を使用すると、次のような諸効果がある。 ・・・(中略)・・・ (4) 操作が簡単で熟練を要せず、初心者でも容易に使用できる。」(第2ページ左下欄第18行ないし右下欄第10行)

(7)甲第7号証
甲第7号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「a.産業上の利用分野
この考案はプレス加工における孔あけ作業に使用するダイス(別称ボタン台座)を取外し交換するための工具に関する。」(明細書第2ページ第2ないし5行)

b.「本考案の目的は、 ・・・(中略)・・・ 金型から直接ダイスを確実迅速かつ簡単容易に取外し得るコスト低廉にして取扱操作簡便至極な孔あけ用ダイス取外し工具を創作して提供することである。」(明細書第3ページ第12ないし18行)

c.「第2図は挿入部12をダイス4の孔6内に挿入した状態を示し、この挿入時には広径鉤15、15…の外端面が孔6内に挿入し得るように内方に位置している。
第3図は第2図の状態下において雌ねじ14に雄ねじ棒17をねじ込み進入させた状態を示し、ねじ棒17の進入に伴なって割り溝13、13…が徐々に開かれて挿入部12の外径が拡大し、広径鉤15、15…の段差16、16…がダイス4の径違い段差部に引掛かる。
そこで、雄ねじ棒17を強く引けば、ダイス4が金型8から取り外される。」(明細書第5ページ第10行ないし第6ページ第1行)

(8)甲第8号証
甲第8号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「この考案は、上記の問題を解決するためになされたもので、排気弁の弁棒ガイドブツシユなどのブツシユをきわめて簡単に取除き得るブツシユ抜出し具の構造を提供することを目的とする」(第1ページ第1欄第36行ないし第2欄第1行)

b.「この考案の上記ブツシユ抜出し具は、第2?4図に示すように、まず抜出すべきブツシユ3内に抜出し棒4を挿入し、そのテーパ部6をブツシユの下端より下方に位置せしめる。ついでこの抜出し棒4に掛爪筒7を嵌め被せ、掛爪8を抜出し棒4のテーパ部6にのせた状態で抜出し棒4を上昇せしめ、掛爪8をブツシユの下端に引掛ける。そしてこの状態において、ナット9を抜出し棒4の雄ねじ部5にその略下端までねじ込み、抜出し棒4と掛爪筒7をブツシユ3に一体的に固定する。 ・・・(中略)・・・ ねじ上げ筒12をこの逆U形の支持筒10の上面より突き出している抜出し棒4の雄ねじ5にねじ込み、ねじ上げ筒12の下端が逆U形の支持筒10の上面に接するまでねじ込んだ後、さらに強くこれを回動せしめてブツシユ3を抜出すものである。」(第1ページ第2欄第26行ないし第2ページ第3欄第7行)

(9)甲第9号証
甲第9号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「【請求項4】回転駆動されるロータの外周に被破砕物を破砕するための複種類の破砕歯を有したロールクラッシャにおいて、
半径方向に開けられた穴である解砕歯固定穴を有し、回転駆動される円筒状のロータ本体と、
前記解砕歯固定穴に挿入部が挿入固定され、回転方向に角度を有して連続する2つのくさび面を有し、主に楔効果により被破砕物を破砕するための複数の解砕歯と、
前記解砕歯固定穴の側壁と前記解砕歯の挿入部との間に配置された解砕歯取付コッタと前記解砕歯取付コッタが移動しないように固定するためのコッタ固定金具とことからなるロールクラッシャ。
【請求項5】請求項4に記載のロールクラッシャにおいて、
前記コッタ固定金具を係合するために前記解砕歯固定穴に形成された係合部と、 前記コッタ固定金具と前記コッタ固定金具とを一体に連結するボルトとからなることを特徴とするロールクラッシャ。」(【請求項4】及び【請求項5】)

b.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンクリート、アスファルト、自然石を所定の大きさ塊に解砕するためのロールクラッシャに関する。更に詳しくは、道路、コンクリート構造物等を補修、建て替え等のとき排出されるコンクリート、アスファルト等の廃材のリサイクルのための解砕、又は自然石を所定の大きさの塊に破砕するためのロールクラッシャに関する。」(段落【0001】)

c.「【0028】解砕歯固定穴30には、解砕歯10の挿入部27と傾斜面31との間の隙間に解砕歯取付コッタ35が挿入されている。解砕歯取付コッタ35は、L字状にの形をしており先端が細いテーパー状を成している。従って、解砕歯取付コッタ35を挿入部27と解砕歯固定穴30の傾斜面31との間に圧入すると、解砕歯10は解砕歯固定穴30内に固定されることになる。
【0029】解砕歯取付コッタ35の上端の鍔部36は、第1ロータ本体6の外周面7に接している。鍔部36の上面には、ネジ穴37が形成されている。ネジ穴37は、解砕歯取付コッタ35を解砕歯固定穴30から引き抜くためにボルト等をねじ込み、これを治具で引き抜くためのものである。ネジ穴37は、通常は使用しないのでゴミが入らないようにネジがねじ込んである。」(段落【0028】及び【0029】)

d.「【0041】[実施の形態2]図6は、解砕歯の他の取付け構造を示す断面図である。解砕歯固定穴30の側面には、固定金具係合穴41が形成されている。固定金具係合穴41には、コッタ固定金具42の一端が挿入されている。解砕歯10の挿入部27と傾斜面31との間の隙間に解砕歯取付コッタ43が挿入されている。解砕歯取付コッタ43は、L字状にの形をしており先端が細いテーパー状を成している。従って、解砕歯取付コッタ43を挿入部27と解砕歯固定穴30の傾斜面31との間に圧入すると、解砕歯10は解砕歯固定穴30内に固定されることになる。
【0042】解砕歯取付コッタ43の上端の鍔45は、第1ロータ本体6の外周面7に接している。鍔45の上面からコッタ固定金具42の方向にネジ穴が形成されている。ネジ穴にはボルト44がねじ込まれている。ボルト44をコッタ固定金具42にねじ込むことによって、コッタ固定金具42と解砕歯取付コッタ43とは一体に固定される。ネジ結合であるから、着脱が容易となる。」(段落【0041】及び【0042】)

(10)甲第10号証
甲第10号証には、例えば、以下の事項が記載されている。
a.「本発明は、半導体の製造工程等において洗浄処理後の半導体ウエハ等の水分除去、乾燥を行う回転乾燥装置に関する。」(第1ページ右下欄第1ないし3行)

b.「本発明の回転乾燥装置の特徴は、ターンテーブル2の中央に設けられる固定キャップ部21の構造にあり、更に詳しくは固定キャップ部21の回転軸上に貫通した状態で設けられる固定孔22の構造にある。
即ち固定ボルト19を挿着させる固定孔22の内壁最上部に、雌ネジ23が形成されている。この雌ネジ23の径D_(1)は、固定孔22に対する固定ボルト19の挿脱時にそのネジ部19aが接触しない様に固定ボルト19のネジ径D_(2)より大きく設定されている。しかもこの実施例の場合には、固定ボルト19の頭部19bも遊挿し得る大きさとされている。
又固定孔22には、上記雌ネジ23を形成した大径部分22aの下方に、固定ボルト19の頭部19bを挿通させない小径部分22bと、スピンドル3の鉛直部3bを挿入させる中径部分22cとが形成されている。」(第3ページ左上欄第8行ないし右上欄第4行)

c.「即ちキャップ24と固定ボルト19を取外した後、固定キャップ部21の固定孔22に取外しボルト25を挿入する。この取外しボルト25は、頭部25aの下に、固定孔22の雌ネジ23に螺合するネジ部25bを形成する ・・・(中略)・・・ そしてこの様な取外しボルト25のネジ部25bを固定孔22の雌ネジ23に螺合させて、その先端をネジ穴17の底部に当接させ、更にスパナ等の道具でねじ込んでいくと、 ・・・(中略)・・・ ターンテーブル2は浮上する様にスピンドル3から離脱する。」(第3ページ左下欄第2行ないし右下欄第1行)

2.甲第1号証、甲第9号証及び甲第10号証に記載された発明並びに周知技術

(1)甲第1号証に記載された発明
上記「第5.1.(1)」及び図面の記載から、次のことが分かる。

a.上記「第5.1.(1)」、図1及び2、並びに、図6の回転方向の記載から、取付台14の周囲に複数の刃取付部を形成し、該刃取付部に刃先片13aの後部に形成した係止部を係止する段状歯部14aを形成することが分かる。

b.上記「第5.1.(1)」並びに図1ないし5の記載から、刃先片13a及び取付台14がそれぞれ内側側面及び側面を有することは明らかであるから、刃先片13aを固定することにより刃取付部の外周が露出しないようにするとともに、該刃先片13aの内側側面をスペーサ11で挟んだ状態にして取付台14の側面がほぼ露出しないようにして使用することが分かる。

上記「第5.1.(1)」及び上記「第5.2.(1)a.及びb.」を総合すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「ケーシング4に支承した軸1、2にスペーサ11を挟んで取付台14を設け、該取付台14の周囲に複数の刃取付部を形成し、該刃取付部に刃先片13aの後部に形成した係止部を係止する段状歯部14aを形成し、該段状歯部14aで刃先片13aの係止部を係止した状態で該刃先片13aに形成したボルト孔15にボルト16を設けて刃先片13aを前記取付台14に固定し、該刃先片13aを固定することにより前記刃取付部の外周が露出しないようにするとともに、該刃先片13aの内側側面を前記スペーサ11で挟んだ状態にして前記取付台14の側面がほぼ露出しないようにして使用し、刃先片13aを取付台14から半径方向に取外して交換するようにしたシュレッダー用切断刃。」

(2)周知技術
甲第2ないし8号証の記載から、軸や軸孔内に固定された引き抜き対象物を軸線方向に引き抜くための治具の技術分野において、引き抜き対象物を容易に引き抜くという課題を解決するための技術として、次の2つが周知技術である。
(ア)引き抜き対象物に設けられた孔に挿入して拡径させることで引き抜き対象物に設けられた孔の内面に治具を密着させて引き抜き対象物に設けられた孔の軸方向に引き抜く治具(以下、「周知技術(ア)」という。)。
(イ)引き抜き治具が係合する環状凹部で形成した係合部を、孔の内面に設けること(以下、「周知技術(イ)」という。)。

なお、被請求人が主張する周知技術(ア)「引き抜き対象物に設けられた孔に挿入して拡径させることで引き抜き対象物の孔の内面に密着させて引き抜き対象物を引き抜き対象物が装着されている軸又は孔の軸方向に引き抜く治具。」については、以下、「周知技術(アの2)」という。

(3)甲第9号証に記載された発明
上記「第5.1.(9)」及び図3の記載を総合すると、甲第9号証には以下の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されていると認められる。

「半径方向に開けられた解砕歯固定穴30に圧入された解砕歯取付コッタ35を半径方向に引き抜いて取り外すために、解砕歯取付コッタ35の鍔部36の上面に設けたネジ穴37にボルト等をねじ込みこれを治具で引き抜く技術。」

(4)甲第10号証に記載された発明
上記「第5.1.(10)」及び図面の記載から、次のことが分かる。

a.上記「第5.1.(10)b.」の「固定ボルト19の頭部19bを挿通させない小径部分22b」は、第1及び2図の記載から、固定段部であることが分かる。

b.上記「第5.1.(10)」、第1及び2図の記載及び上記「第5.2.(4)a.」から、固定孔22の固定段部より入口側の内壁最上部に、取外しボルト25を螺合する雌ネジ23を形成することが分かる。

上記「第5.1.(10)」及び図面の記載並びに上記「第5.2.(4)a.及びb.」を総合すると、甲第10号証には以下の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されていると認められる。

「半導体の製造工程等において洗浄処理後の半導体ウェハ等の水分除去、乾燥を行う回転乾燥装置において、ターンテーブル2に形成した固定ボルト19を挿着させる固定孔22の固定段部より入口側の内壁最上部に、取外しボルト25を螺合する雌ネジ23を形成し、取外しボルト25を雌ネジ23にねじ込むことにより、ターンテーブル2をスピンドル3から離脱させる技術。」

3.対比
本件特許発明と甲1発明とを対比すると、その機能、構造または技術的意義からみて、甲1発明における「ケーシング4」は、本件特許発明における「ケーシング」に相当し、以下同様に、「支承」は「支持」に、「軸1、2」は「軸」に、「スペーサ11」は「スペーサ」に、「取付台14」は「切断刃取付台」に、「刃先片13a」は「切断刃」に、「段状歯部14a」は「突出段部」に、「ボルト孔15」は「固定ボルト孔」に、「ボルト16」は「固定ボルト」に、「シュレッダー用切断刃」は「剪断式破砕機の切断刃」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明における「刃先片13aを取付台14から半径方向に取外して交換する」は、本件特許発明における「交換時には切断刃交換装置の押圧部材を前記固定ボルト孔に挿入して拡径させることにより該押圧部材を切断刃と密接させ、該押圧部材とともに切断刃を一体的に前記切断刃取付台から半径方向に取外して交換する」に、「切断刃を取付台から半径方向に取外して交換する」という限りにおいて相当する。

したがって、本件特許発明と甲1発明とは、
「ケーシングに支持した軸にスペーサを挟んで切断刃取付台を設け、該切断刃取付台の周囲に複数の刃取付部を形成し、該刃取付部に切断刃の後部に形成した係止部を係止する突出段部を形成し、該突出段部で切断刃の係止部を係止した状態で該切断刃に形成した固定ボルト孔に固定ボルトを設けて切断刃を前記切断刃取付台に固定し、該切断刃を固定することにより前記刃取付部の外周が露出しないようにするとともに、該切断刃の内側側面を前記スペーサで挟んだ状態にして前記切断刃取付台の側面がほぼ露出しないようにして使用し、切断刃を取付台から半径方向に取外して交換するようにした剪断式破砕機の切断刃。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

本件特許発明においては、交換時には切断刃交換装置の押圧部材を固定ボルト孔に挿入して拡径させることにより該押圧部材を切断刃と密接させ、該押圧部材とともに切断刃を一体的に前記切断刃取付台から半径方向に取外して交換するようにした剪断式破砕機の切断刃において、切断刃を切断刃取付台に固定する固定ボルト孔の固定段部よりも入口側に、該切断刃の交換時に固定ボルト孔に挿入して拡径させる切断刃交換装置の押圧部材が係合するように該固定ボルト孔の内面から半径方向に拡径する環状凹部で形成した係合部を具備させるのに対し、甲1発明においては、刃先片13aを取付台14から半径方向に取外して交換するものの、他の事項を有しない点 (以下、「相違点」という。)。

4.判断
上記相違点について検討する。

(1)周知技術(ア)及び(イ)について
上記「第5.2.(2)」で述べたとおり、周知技術(ア)は、「引き抜き対象物に設けられた孔に挿入して拡径させることで引き抜き対象物に設けられた孔の内面に治具を密着させて引き抜き対象物に設けられた孔の軸方向に引き抜く治具。」であり、周知技術(イ)は、「引き抜き治具が係合する環状凹部で形成した係合部を、孔の内面に設けること。」である。しかしながら、周知技術(ア)または(イ)は、上記相違点に係る本件特許発明の発明特定事項を備えているとはいえない。
また、上記「第5.2.(2)」で述べたとおり、周知技術(アの2)は、「引き抜き対象物に設けられた孔に挿入して拡径させることで引き抜き対象物の孔の内面に密着させて引き抜き対象物を引き抜き対象物が装着されている軸又は孔の軸方向に引き抜く治具。」であるが、前記周知技術(ア)と同様に、上記相違点に係る本件特許発明の発明特定事項を備えているとはいえない。

(2)甲9発明について
上記「2.(3)」で述べたとおり、甲9発明は、「半径方向に開けられた解砕歯固定穴30に圧入された解砕歯取付コッタ35を半径方向に引き抜いて取り外すために、解砕歯取付コッタ35の鍔部36の上面に設けたネジ穴37にボルト等をねじ込みこれを治具で引き抜く技術。」であり、甲9発明は、上記相違点に係る本件特許発明の発明特定事項を備えているとはいえない。

(3)甲10発明について
上記「2.(4)」で述べたとおり、甲10発明は、「半導体の製造工程等において洗浄処理後の半導体ウェハ等の水分除去、乾燥を行う回転乾燥装置において、ターンテーブル2に形成した固定ボルト19を挿着させる固定孔22の固定段部より入口側の内壁最上部に、取外しボルト25を螺合する雌ネジ23を形成し、取外しボルト25を雌ネジ23にねじ込むことにより、ターンテーブル2をスピンドル3から離脱させる技術。」であり、甲10発明は、上記相違点に係る本件特許発明の発明特定事項を備えているとはいえない。

(4)甲1発明及び甲9発明、並びに、周知技術(ア)及び(イ)の組合せについて
請求人は、本件特許発明は、甲1発明及び甲9発明並びに周知技術(ア)及び(イ)とに基づいて容易にできたものであることを主張している。
そこで、該主張について、以下に検討する。
甲1発明が、種々の固形処理物を切断するシュレッダー用切断刃が交換可能な切断刃であるのに対し、甲9発明は、種々の固形処理物を解砕又は破砕する解砕歯が交換可能な解砕歯であることから、両者は、歯(刃)を交換可能とすることを含め技術的に類似するものである。また、周知技術(ア)及び(イ)は、種々の技術分野において広く採用される治具を用いた部材の取り外しに係る技術的事項であり、特に周知技術(イ)の「環状凹部」は、治具を係合させて引き抜くためのものである。
しかしながら、甲9発明は、解砕歯を固定する取付コッタの上面に設けたネジ穴37にボルト等をねじ込みこれを治具で引き抜くものであって、交換するための解砕歯自体を直接治具で引き抜くものではない。また、周知技術(ア)及び(イ)は、歯(刃)を引き抜くことを前提とするものではないし、歯(刃)におけるどの部位を利用して治具で引き抜くかを明らかにするものでもない。特に、周知技術(ア)及び(イ)の周知例として提示された甲第2ないし8号証の記載を参照しても、歯(刃)の交換に係る技術分野において、周知技術(ア)及び(イ)を積極的に用いることを開示するものはない。したがって、相違点に係る本件特許発明の発明特定事項である「切断刃を切断刃取付台に固定する固定ボルト孔の固定段部よりも入口側に、該切断刃の交換時に固定ボルト孔に挿入して拡径させる切断刃交換装置の押圧部材が係合するように該固定ボルト孔の内面から半径方向に拡径する環状凹部で形成した係合部」(構成要件B[6]及びB[7])について、当業者が容易に想到することはできないといえる。
さらに、前記容易に想到することができないとされた発明特定事項は、「交換時には切断刃交換装置の押圧部材を固定ボルト孔に挿入して拡径させることにより該押圧部材を切断刃と密接させ、該押圧部材とともに切断刃を一体的に前記切断刃取付台から半径方向に取外して交換するようにした」(構成要件A[4])ことを技術的に具体化するものでもあるから、上記相違点に係る本件特許発明の発明特定事項を当業者が容易に想到することはできないといえる。
したがって、甲1発明及び甲9発明並びに周知技術(ア)及び(イ)を組み合わせることにより、上記相違点に係る本件特許発明の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
なお、周知技術(アの2)についても同様の理由により、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(5)甲1発明、甲9発明及び甲10発明、並びに、周知技術(ア)及び(イ)の組合せについて
請求人は、係合部を設ける位置に関する相違点に何らかの技術的意義があったとしても、甲第10号証には、固定ボルト19を挿着させる固定孔22の固定段部より入口側に、取外しのための取外しボルト25と螺合する係合部(雌ネジ)23を設けることが記載されていることから、本件特許発明は、容易に発明できたものであると主張している。
しかしながら、甲10発明は、「半導体の製造工程等において洗浄処理後の半導体ウェハ等の水分除去、乾燥を行う回転乾燥装置」であることで、甲1発明とは異なる技術分野に属するものであるし、甲10発明の「雌ネジ23」は、治具の拡径に係る係合部であるところの「環状凹部」形状とは異なるものである。
したがって、上記「第5.4.(4)」で述べた理由と同様に、甲1発明、甲9発明及び甲10発明並びに周知技術(ア)及び(イ)を組み合わせることにより、上記相違点に係る本件特許発明の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(6)その他
周知技術の例として提示された甲第2ないし8号証のそれぞれには、上記「第5.1.(2)ないし(8)」の技術的事項が記載されているものの、上記「第5.4.(4)」の周知技術(ア)及び(イ)について述べた理由と同様に、それらを適宜組み合わせても上記相違点に係る本件特許発明の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、甲1発明に、甲9発明及び甲10発明並びに周知技術(ア)、(アの2)及び(イ)を適宜組み合わせたとしても、上記相違点に係る本件特許発明の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない。

なお、請求人は、甲第9号証は、圧入されることでそのままでは引く抜くことのできなくなる解砕歯取付コッタを取付台から引き抜く技術であることについて主張しているが、請求人の摘記箇所を含め甲第9号証には、該主張に係る技術は明記されてないし、該コッタの圧入の説明に続く段落【0030】の溶接固定される「コッタ固定金具40」による「解砕歯取付コッタ35」の上部を押さえる態様は、該コッタに抜け防止が必須であること若しくは該コッタの固定に付加固定要素が必須であることを開示するものといえる。してみると、甲第9号証に係る引き抜き技術は、特殊な原因により強固に密着してそのままでは引く抜くことのできなくなるものを引き抜く技術とはいえず、通常の引き抜き技術の域を超えるものとはいえない。したがって、上記請求人の主張は採用できない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明についての特許を無効とすることはできない。
また、他に本件特許発明についての特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-11 
結審通知日 2012-12-14 
審決日 2013-01-09 
出願番号 特願2003-77351(P2003-77351)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (B02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 志水 裕司  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 藤原 直欣
中川 隆司
登録日 2008-10-31 
登録番号 特許第4210537号(P4210537)
発明の名称 剪断式破砕機の切断刃  
代理人 松田 誠司  
代理人 井上 周一  
代理人 三山 峻司  
代理人 雨宮 沙耶花  
代理人 富田 克幸  
代理人 夫 世進  
代理人 有近 康臣  
代理人 木村 広行  
代理人 蔦田 正人  
代理人 森 治  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 中村 哲士  
代理人 藤川 義人  

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