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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02B |
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管理番号 | 1272288 |
審判番号 | 不服2011-28234 |
総通号数 | 161 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-12-28 |
確定日 | 2013-04-04 |
事件の表示 | 特願2007- 46980「リンク機構の軸受構造」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月11日出願公開、特開2008-208783〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成19年2月27日の出願であって、平成23年6月22日付けの拒絶理由通知に対して、平成23年8月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月28日付けで拒絶査定に対する審判請求がされると同時に、同日付けで明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成24年6月18日付けの書面による審尋がなされ、平成24年7月18日付けで回答書が提出され、平成24年11月7日付けで上記平成23年12月28日付けの手続補正書による手続補正が却下されるとともに、平成24年11月21日付けで拒絶理由が通知され、平成25年1月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 そして、その請求項1及び2に係る発明は、上記平成25年1月17日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書並びに出願時に願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「 【請求項1】 二股状に対向して配置された二股軸受部を有する第1リンクと、 前記二股軸受部の間に配置される軸受部を有する第2リンクと、を備え、 前記第1リンクの二股軸受部と前記第2リンクの軸受部とを連結ピンで連結するリンク機構の軸受構造であって、 前記連結ピンを前記第1リンクの二股軸受部に圧入し、 前記リンク機構は、ピストンにピストンピンを介して連結されるアッパリンクと、クランクシャフトのクランクピンに回転自由に装着されるとともに、前記アッパリンクにアッパピンを介して連結されるロアリンクと、前記ロアリンクにコントロールピンを介して連結されるコントロールリンクと、を備える機関圧縮比の変更が可能な内燃機関の複リンク式ピストンストローク機構であり、 前記第1リンクが、ロアリンクであり、 前記第2リンクが、アッパリンク又はコントロールリンクであり、 前記連結ピンが、アッパピン又はコントロールピンであり、 前記ロアリンクは、略中央に前記クランクピンが嵌合するクランクピン軸受部を備えるとともに、前記クランクピン軸受部の中心を通る分割面に沿って、前記二股軸受部を有するロアリンクアッパと同じく前記二股軸受部を有するロアリンクロアとに分割され、 前記ロアリンクアッパと前記ロアリンクロアとが、前記クランクピン軸受部の両側に配置された2本のボルトによって一体に固定され、 前記2本のボルトは、前記分割面に対して略垂直にロアリンクロアを貫通するボルト挿入孔に挿入され、かつ、前記分割面から前記二股軸受部の谷間へ向けてロアリンクアッパを貫通するねじ孔に螺合する第1ボルトと、前記分割面に形成されてロアリンクアッパを貫通するボルト挿入孔に挿入され、かつ、前記分割面から前記二股軸受部の谷間へ向けてロアリンクロアを貫通するねじ孔に螺合する第2ボルトであり、 前記連結ピンを前記第1リンクの二股軸受部に圧入する際の圧入の程度を、前記リンク機構に燃焼荷重が作用しても前記連結ピンと前記第1リンクの二股軸受部との間に隙間が生じない程度にする、 ことを特徴とするリンク機構の軸受構造。」 2.引用文献 2.-1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 本願の出願前に頒布され、当審における平成24年11月21日付けの拒絶理由通知において拒絶の理由に引用された刊行物である特開2006-177272号公報(以下、「引用文献1」という。)には、【請求項1】、【請求項9】、【請求項12】、段落【0009】、【0010】、【0048】及び図6の記載からみて、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用文献1記載の発明」という。)。 「二股状に対向して配置された二股軸受部を有する一のリンク部材と、 前記二股軸受部の間に配置される軸受部を有する他のリンク部材と、を備え、 前記一のリンク部材の二股軸受部と前記他のリンク部材の軸受部とをピンで連結するリンク機構の軸受構造であって、 前記ピンは前記一のリンク部材の二股軸受部に取り付けられ、 前記リンク機構は、ピストンにピストンピンを介して連結されるアッパリンクと、クランクシャフトのクランクピンに回転自由に装着されるとともに、前記アッパリンクにアッパピンを介して連結されるロアリンクと、前記ロアリンクにコントロールピンを介して連結されるコントロールリンクと、を備える機関圧縮比の変更が可能な内燃機関の複リンク式ピストンストローク機構であり、 前記一のリンク部材が、ロアリンクであり、 前記他のリンク部材が、アッパリンク又はコントロールリンクであり、 前記ピンが、アッパピン又はコントロールピンであり、 前記ロアリンクは、略中央に前記クランクピンが嵌合するクランクピン軸受部を備えるとともに、前記クランクピン軸受部の中心を通る分割面に沿って、前記二股軸受部を有するロアリンクアッパと同じく前記二股軸受部を有するロアリンクロアとに分割され、 前記ロアリンクアッパと前記ロアリンクロアとが、前記クランクピン軸受部の両側に配置された2本のボルトによって一体に固定され、 前記2本のボルトは、前記分割面に対して略垂直にロアリンクロアを貫通するボルト挿入孔に挿入され、かつ、前記分割面から前記二股軸受部の谷間へ向けてロアリンクアッパを貫通するねじ孔に螺合する一のボルトと他のボルトであるリンク機構の軸受構造。」 2.-2 引用文献2 本願の出願前に頒布され、当審における平成24年11月21日付けの拒絶理由通知において拒絶の理由に引用された刊行物である特開2005-180657号公報(以下、「引用文献2」という。)には、【特許請求の範囲】の【請求項1】及び段落【0015】の記載からみて、「複リンク式ピストンストローク機構において、ロアリンクアッパ部品とロアリンクロア部品とを締結する2本のボルトに関し、コントロールピン寄りに配置されるボルトをロアリンクアッパ部品側から締結することにより、ボルト孔周辺部に応力集中が生じにくくなり、この部分の強度を確保することが容易になること」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。 3.対比 本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「一のリンク部材」は、その構成及び機能からみて、本願発明における「第1リンク」に相当し、以下同様に、「他のリンク部材」は「第2リンク」に、「ピン」は「連結ピン」に、「一のボルト」は「第1ボルト」に、「他のボルト」は「第2ボルト」にそれぞれ相当する。 したがって、両者は、次の1)及び2)の2点において相違し、その余の点で一致している。 1)連結ピンを第1リンクの二股軸受部に取り付けるにあたり、本願発明においては、連結ピンを第1リンクの二股軸受部に圧入し、その圧入の程度を、前記リンク機構に燃焼荷重が作用しても前記連結ピンと前記第1リンクの二股軸受部との間に隙間が生じない程度にしているのに対し、引用文献1記載の発明においては、ピンを一のリンクの二股軸受部にどのように取り付けるのか不明である点。(以下、「相違点1」という。) 2)本願発明においては、2本のボルトが、分割面に対して略垂直にロアリンクロアを貫通するボルト挿入孔に挿入され、かつ、前記分割面から二股軸受部の谷間へ向けてロアリンクアッパを貫通するねじ孔に螺合する第1ボルトと、前記分割面に形成されてロアリンクアッパを貫通するボルト挿入孔に挿入され、かつ、前記分割面から二股軸受部の谷間へ向けてロアリンクロアを貫通するねじ孔に螺合する第2ボルトであるのに対し、引用文献1記載の発明においては、2本のボルトがともに、分割面に対して略垂直にロアリンクロアを貫通するボルト挿入孔に挿入され、かつ、前記分割面から二股軸受部の谷間へ向けてロアリンクアッパを貫通するねじ孔に螺合する一のボルト及び他のボルトである点。(以下、「相違点2」という。) 4.判断 まず、上記相違点1について検討する。 内燃機関のクランク機構において、連結ピンを二股軸受け部に取り付ける際に圧入することは、慣用技術(以下、「慣用技術」という。例えば、特開2004-44776号公報(段落【0016】)及び特開平4-4343号公報(第2ページ左下欄第6及び7行)等参照。)である。 そして、引用文献1記載の発明において、上記慣用技術を用いることによって、一のリンク部材の二股軸受部と前記他のリンク部材の軸受部とをピンの圧入によって連結し、その際、その圧入の程度を、燃焼行程時においてリンク機構に燃焼荷重が作用してもピンと一のリンクの二股軸受部との間に隙間が生じない程度にすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、引用文献1記載の発明において、上記相違点1に係る本願発明のような構成とするとことは、当業者が格別困難なく容易に発明をすることができたものである。 なお、審判請求人は平成25年1月17日付けの意見書において、ピンを軸受部に圧入する目的は一般的にはピンの抜け止めであって、二股軸受部の付け根付近の圧力が小さくなって部品の耐久性を向上するという本願発明の効果は、一般的な圧入において圧入の程度を単に大きくした場合の効果とは、全く異質のものである旨を主張している。 しかし、ピンを軸受部に圧入するときに、その圧入の程度を、想定される最大荷重が作用した場合にもピンと一のリンクの二股軸受部との間に隙間が生じない程度とすることは、普通に考えることであるから、それを前提としてリンク機構の設計を行うことは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内である。 次に上記相違点2について検討する。 上記引用文献2記載の技術は、「複リンク式ピストンストローク機構において、ロアリンクアッパ部品とロアリンクロア部品とを締結する2本のボルトに関し、コントロールピン寄りに配置されるボルトをロアリンクアッパ部品側から締結することにより、ボルト孔周辺部に応力集中が生じにくくなり、この部分の強度を確保することが容易になること」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)であるところ、爆発燃焼時にアッパピン及びコントロールピンからロアリンクに入力される力に対して、ロアリンクにおける雌ねじ部付近の耐久性を確保することを課題とする(段落【0006】)引用文献1記載の発明において、上記引用文献2記載の技術を適用することによって、上記相違点2に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明は、全体構成でみても、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術並びに慣用技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものでもない。 したがって、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術並びに慣用技術から容易に発明することができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術並びに慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-31 |
結審通知日 | 2013-02-05 |
審決日 | 2013-02-18 |
出願番号 | 特願2007-46980(P2007-46980) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 泰輔、出口 昌哉 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 久島 弘太郎 |
発明の名称 | リンク機構の軸受構造 |
代理人 | 後藤 政喜 |
代理人 | 三田 康成 |
代理人 | 飯田 雅昭 |
代理人 | 藤井 正弘 |