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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1272303
審判番号 不服2012-9490  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-23 
確定日 2013-04-04 
事件の表示 特願2006-321490号「誘導加熱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月12日出願公開、特開2008-135321号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年11月29日の出願であって、平成24年3月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

2.平成24年5月23日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年5月23日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「商用交流電源から機器への電源供給をオン/オフする電源スイッチと、
磁界により負荷を加熱する加熱コイルと、
整流手段と平滑手段により商用交流電源を整流し加熱コイルに高周波電力を供給するインバータと、
前記電源スイッチと前記インバータ間に直列に接続されたリレーと、
前記リレーに並列接続されたサーミスタと、
前記電源スイッチに流れる電流を検知する入力電流検知手段と、前記サーミスタの温度検知回路と、
前記入力電流検知手段及び前記温度検知回路からの信号により前記リレーを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記電源スイッチを入れた後、前記検知電流がピークを過ぎて低下しかつ前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをオンし、前記リレーをオンした後、前記検知電流が所定の電流以下でさらに前記サーミスタが温度上昇する場合に前記リレーの接点異常と検知するようにした誘導加熱装置。」と補正された。

(2)新規事項の追加について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に、「前記検知電流がピークを過ぎて低下しかつ前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをオンし、前記リレーをオンした後、前記検知電流が所定の電流以下でさらに前記サーミスタが温度上昇する場合に前記リレーの接点異常と検知する」ことを発明特定事項とすることを含むものである。
そして、請求人はこの補正の根拠として、入力電流検知手段が図6に記載されていること、そして、「出願当初明細書の[0029]段落に記載されていた事項の『図2にこのタイミングを示している。サーミスタ28を介して抑制された電流によりコンデンサ25に充電され、突入電流のピークが過ぎ、電源スイッチ22がオンされてから所定電流値I以下になったところで、リレー30をオンするようにしている。』と、[0043]段落に記載されていた事項の『・・。他は実施の形態1と同じである。』と、[図2]、[図7]」を挙げている。

しかしながら、サーミスタの温度を検知するものは出願当初の明細書の段落【0042】?【0046】及び図6,図7で実施の形態4として説明されている。そして、段落【0043】に「図6に示すように、本実施の形態では、サーミスタ28の温度が所定温度T以上となった場合にリレー30をオンし、さらにサーミスタ28が温度上昇する場合にリレー30の接点異常と制御手段32が検知するようにしたものである。」と記載されると共に、段落【0044】に「・・・サーミスタ28の温度が突入電流による自己発熱で所定温度T以上となったころには突入電流が低下したと判断し、リレー30をオンしているものである。」と記載されて、サーミスタが自己発熱で所定温度以上となった場合に突入電流が低下したと判断してリレーをオンするものであることが記載されていると理解できるのであって、上記記載には、検知電流の信号を所定温度と関連させて制御することは何ら記載されていない。
また、「実施の形態4」に対応する図6には、サーミスタの温度を検知する温度検知回路37のほかに、入力電流検知手段29が図示され段落【0043】に「他は実施の形態1と同じである。」と記載されているが、入力電力検知手段29の動作の説明については、実施の形態1の段落【0023】?【0030】や図1,図2には上記実施の形態4におけるサーミスタ温度との関係が記載されていないから、「前記検知電流がピークを過ぎて低下しかつ前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをオンし、前記リレーをオンした後、前記検知電流が所定の電流以下でさらに前記サーミスタが温度上昇する場合に前記リレーの接点異常と検知する」と、「入力電流の検知電流」と「サーミスタの温度」の両方の条件が「かつ」及び「さらに」とすることまで記載されていたとはいえない。すなわち、実施の形態1での「入力の検知電流」にかかる制御と、実施の形態4の「サーミスタの温度」にかかる制御とが並列に存在するにとどまり、「かつ」、「さらに」との論理積となるとはいえない。
そうすると、「前記検知電流がピークを過ぎて低下しかつ前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをオンし、前記リレーをオンした後、前記検知電流が所定の電流以下でさらに前記サーミスタが温度上昇する場合に前記リレーの接点異常と検知する」の事項は、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載されておらず、また、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載から自明な事項でもない。
よって、本件補正は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

したがって、この本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

(3)目的制限違反
本件補正は、補正事項として、特許請求の範囲の請求項1に、「電源スイッチに流れる電流を検知する入力電流検知手段」との発明特定事項を付加することを含むものである。
そして、補正前の請求項1は、上記入力電流検知手段の上位概念にあたる発明特定事項を含んでいないので、上記入力電流検知手段に係る発明特定事項を付加することは、補正前の請求項1記載の発明特定事項を限定するものとはいえない。

また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明の、いずれを目的としたものとも認められない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、本件補正により、付加された事項については、突入電流を検知するために電流検知手段を備えることが本願出願日前周知〔例えば、特開平8-308242号公報(3頁3欄3?13行)、特開平11-98683号公報(特許請求の範囲、段落【0005】)、特開2002-325354号公報(段落【0004】、【0006】の「負荷電流検出器」)、登録実用新案第3039181号公報(図7、5頁の請求項5、段落【0017】?【0019】)を参照〕の事項であって、補正後の請求項1に記載された発明も当業者が容易に発明をすることができたものである。そして、より確実に制御するように複数の手段で検知することも格別なこととはいえない。

3.本願発明
(1)本願発明について
平成24年5月23日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年9月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「商用交流電源から機器への電源供給をオン/オフする電源スイッチと、
磁界により負荷を加熱する加熱コイルと、
整流手段と平滑手段により商用交流電源を整流し加熱コイルに高周波電力を供給するインバータと、
前記電源スイッチと前記インバータ間に直列に接続されたリレーと、
前記リレーに並列接続されたサーミスタと、
前記サーミスタの温度検知回路と、
前記温度検知回路からの信号により前記リレーを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電源スイッチを入れた後、前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをオンし、前記リレーをオンした後もさらに前記サーミスタが温度上昇する場合に前記リレーの接点異常と検知するようにした誘導加熱装置。」

(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2005-322560号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「【請求項4】
商用交流電源から機器への電源供給をON/OFFする電源スイッチと、磁界により負荷を加熱する加熱コイルと、整流手段と平滑手段により前記商用交流電源を整流し誘導加熱手段により前記加熱コイルに高周波電力を供給するインバータと、前記電源スイッチから前記インバータ間に直列に接続されたリレーと、前記リレーに並列接続されたサーミスタと、前記サーミスタの温度検知回路と、前記リレーを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記温度検知回路により、前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをONするようにした誘導加熱調理器。」(特許請求の範囲請求項4)

イ.「(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態によれば、図1に示すように、温度検知回路10により、突入電流防止のサーミスタ6の温度を測定している。
電源スイッチ2をONして、サーミスタ6を介して抑制された電流によりコンデンサ5に充電され、サーミスタ6の温度が突入電流による自己発熱で上昇したころには突入電流が低下したと判断し、リレー7をONしているものである。そのときのタイミングを図4に示している。サーミスタ6を介して抑制された電流によりコンデンサ5に充電され、その充電電流によりサーミスタ6の温度が上昇したころには、突入電流のピークが過ぎたと判断し、リレー7をONするようにしている。」(段落【0028】、【0029】)

ウ.電源スイッチのONを起点とするタイミングで制御することは通常行われる制御手段であり、上記記載事項イ及び図4とを考え合わせれば、記載事項アの「前記温度検知回路により、前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合」は、「前記温度検知回路により、電源スイッチのONした後、前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合」といえる。

上記ア?イの記載事項及び認定事項ウ並びに図面の図示内容を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「商用交流電源から機器への電源供給をON/OFFする電源スイッチと、
磁界により負荷を加熱する加熱コイルと、
整流手段と平滑手段により前記商用交流電源を整流し加熱コイルに高周波電力を供給するインバータと、
前記電源スイッチから前記インバータ間に直列に接続されたリレーと、
前記リレーに並列接続されたサーミスタと、
前記サーミスタの温度検知回路と、
前記リレーを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記温度検知回路により、前記電源スイッチをONした後、前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをONするようにした誘導加熱調理器。」

(2-2)引用例2
同じく引用され、本願出願前に頒布された特開2005-267948号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】
負荷に高周波電力を供給するインバータと、前記インバータ出力を制御する出力制御手段と、前記インバータに供給する電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサへの突入電流を抑制する突入電流抑制手段と、前記突入電流抑制手段の発熱を抑制するために前記突入電流抑制手段を短絡する短絡手段と、前記突入電流抑制手段の近傍に温度検知手段とを備え、前記インバータ出力制御手段は、前記温度検知手段で温度が高いことを検知した場合に前記短絡手段が開放故障したものとして前記インバータの出力を低下させる加熱調理器。
【請求項2】
突入電流抑制手段は、NTCサーミスタとした請求項1に記載の加熱調理器。」(特許請求の範囲請求項1、2)

イ.「本発明は、特に非磁性かつ低抵抗率の金属からなる負荷をも誘導加熱する誘導加熱調理器やインバータ電子レンジなど加熱調理器に関する。」(段落【0001】)

ウ.「一例として従来の誘導加熱調理器について、図6に基づいて説明する。
電源14は200V商用電源であり、インバータ7により高周波に変換され、高周波電力を負荷4に供給し高周波磁界を加熱コイル1に発生させ、加熱コイル1と対向して設置する鍋を誘導加熱する。3は共振コンデンサであり、インバータ7の出力に対して加熱コイル1とともに直列の共振回路を構成している。ダイオードブリッジからなる整流手段13と平滑コンデンサ9によって商用電源を直流に変換し、インバータ7は負荷4を出力としたシングルエンドプッシュプル構成となるよう第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6を接続している。第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6はIGBTに逆並列にダイオードを接続したものとしている。出力制御手段8により第1のスイッチング素子5と第2のスイッチング素子6を交互に駆動し、出力を増加させる場合にはスイッチング素子の駆動周波数が共振周波数に近づくように出力制御手段8によりスイッチング素子を駆動し、図示しないカレントトランスからなる出力検知手段により出力を検知して所定の加熱出力が得られるようにする周波数制御のインバータとしている。本実施の形態では共振回路の共振周波数は約60kHzとなるよう加熱コイル1および共振コンデンサ3を設定し、スイッチング素子の駆動周波数は共振回路の共振周波数の1/3である約20kHzとなるようにして、スイッチング素子の損失を低減することでアルミニウムのような非磁性かつ低抵抗率である金属も加熱できるようにしているものである。平滑コンデンサ9は鍋2から発生する振動音を低減するため容量を大として電圧リプルを小としているため、商用電源14の電源投入時にいわゆる突入電流が平滑コンデンサ9に流れようとする。この突入電流を抑制するため商用電源14と直列に抵抗20を設けている。また平滑コンデンサ9への充電が終了した後、抵抗20に並列に接続したリレー21により短絡し、抵抗の発熱を防止する。リレー21の開放故障時にはインバータへの入力電流が抵抗20に流れるため抵抗20は異常発熱する。その結果抵抗20の温度は上昇し抵抗20に近接したサーミスタ22の出力も上昇し所定値を超えたところでリレー21の開放故障と判定し、出力制御手段8によりインバータ7を停止する。」(段落【0003】?【0004】)

エ.「図1において、…(中略)… 平滑コンデンサ9は鍋から発生する振動音を低減するため容量を大として電圧リプルを小としているため、商用電源14の電源投入時にいわゆる突入電流が平滑コンデンサ9に流れようとする。この突入電流を抑制するため商用電源と直列に突入電流抑制手段10を設け、本実施の形態では突入電流抑制手段はNTCサーミスタでいわゆるパワーサーミスタとしている。また平滑コンデンサ9への充電が終了した後、突入電流抑制手段10に並列に接続した短絡手段11により短絡し、突入電流抑制手段の発熱を防止する。本実施の形態では短絡手段はリレーとしている。短絡手段11の開放故障時にはインバータへの入力電流が突入電流抑制手段10に流れるため突入電流抑制手段10は異常発熱する。
図2で示すように本実施の形態では突入電流抑制手段10をプリント基板上に実装し近接させている。また突入電流抑制手段10の近傍かつプリント基板の突入電流抑制手段10を実装している面に温度検知手段12を設け突入電流抑制手段10の温度を検知している。インバータ動作時に温度検知手段12の出力が大きくなれば突入電流抑制手段10の部品上限温度を超えないように温度検知出力に応じてインバータの出力を小さくするよう出力制御手段8を駆動する。突入電流抑制手段10の部品上限温度に達したあるいは超えている間は出力制御手段8によりインバータ出力を停止する。」(段落【0020】?【0021】)

オ.「以上述べたように、本実施の形態では突入電流抑制手段の近傍に温度検知手段を備え、前記温度検知手段で温度が高いことを検知した場合に前記短絡手段が開放故障したものとして前記インバータ出力制御手段はインバータ出力を低下させてなる構成としているので、短絡手段の開放故障と判断しても突入電流抑制手段を異常発熱させることなく調理を継続することができる誘導加熱調理器とすることができる。」(段落【0023】)

カ.「なお、突入電流抑制手段はパワーサーミスタとしたが抵抗でも本実施の形態と同様の効果が得られる。」(段落【0024】)

キ.図1の実施の形態は図6を従来例とするものであるから、図6にかかる記載事項ウの「リレー21の開放故障時にはインバータへの入力電流が抵抗20に流れるため抵抗20は異常発熱する。その結果抵抗20の温度は上昇し抵抗20に近接したサーミスタ22の出力も上昇し所定値を超えたところでリレー21の開放故障と判定し・・」のように、図1にかかる記載事項エにおける「サーミスタ」も、突入電流抑制手段(NTCサーミスタ)をリレーにより短絡した後もリレーの開放故障時には、さらに「温度」が「上昇する」ものと認められる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容を総合勘案すると、引用例2には、次の事項が記載されている。
「商用電源14とインバータ7間に直列に接続されたリレー11と、リレーに並列接続されたNTCサーミスタ10と、NTCサーミスタの温度検知手段12とを有する誘導加熱調理器において、
商用電源の電源投入して平滑コンデンサ9への充電が終了した後、NTCサーミスタをリレーにより短絡し、リレーにより短絡した後もさらにNTCサーミスタの温度が上昇する場合に前記リレーの開放故障と判断すること。」

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ON/OFF」は、本願発明の「オン/オフ」に相当し、以下同様に、「電源スイッチからインバータ間」は「電源スイッチとインバータ間」に、「前記電源スイッチをONした後」は「電源スイッチを入れた後」に、「ON」は「オン」に、「誘導加熱調理器」は「誘導加熱装置」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「前記リレーを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記温度検知回路により、前記電源スイッチをONした後、前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをON」することは、本願発明の「前記温度検知回路からの信号により前記リレーを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記電源スイッチを入れた後、前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをオン」することに相当する。
よって、両発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「商用交流電源から機器への電源供給をオン/オフする電源スイッチと、
磁界により負荷を加熱する加熱コイルと、
整流手段と平滑手段により商用交流電源を整流し加熱コイルに高周波電力を供給するインバータと、
前記電源スイッチと前記インバータ間に直列に接続されたリレーと、
前記リレーに並列接続されたサーミスタと、
前記サーミスタの温度検知回路と、
前記温度検知回路からの信号により前記リレーを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電源スイッチを入れた後、前記サーミスタの温度が所定温度以上となった場合に前記リレーをオンするようにした誘導加熱装置。」

[相違点]
本願発明では、リレーをオンした後もさらにサーミスタが温度上昇する場合にリレーの接点異常と検知するのに対し、引用発明では、この点は不明である点。

(4)判断
本願発明と引用例2に記載された事項を対比すると、引用例2に記載された事項の「商用電源14」は本願発明の「商用交流電源」に相当し、以下同様に、「NTCサーミスタ」は「サーミスタ」に、「温度検知手段12」は「温度検知回路」に、「誘導加熱調理器」は「誘導加熱装置」に、「リレーにより短絡」は「リレーをオン」に、「温度が上昇する」は「温度上昇」に、「リレーの開放故障と判断する」は「リレーの接点異常と検知する」に、それぞれ相当する。

してみれば、引用例2に記載された事項は
「商用交流電源とインバータ間に直列に接続されたリレーと、
前記リレーに並列接続されたサーミスタと、
前記サーミスタの温度検知回路とを備えた誘導加熱装置において、
電源投入した後、平滑コンデンサへの充電が終了した後、前記リレーをオンし、前記リレーをオンした後もさらに前記サーミスタが温度上昇する場合に前記リレーの接点異常と検知するようにしたこと。」と言い換えることができる。

そして、引用発明と引用例2に記載された事項のものとは、ともに誘電加熱装置の電源投入時の突入電流防止する目的で、商用電源とインバータ間に直列に接続されたリレーと、該リレーに並列に接続された突入電流抑制手段のサーミスタと、サーミスタの温度検知回路とを有するという基本構成を同じくするものであって、リレーの接点異常に対処することは当業者が必要に応じて適宜行うことであるから、引用発明に、引用例2に記載された事項を適用して、サーミスタの温度検知回路によりリレー接点異常を検知するように相違点にかかる構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用例2に記載の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-30 
結審通知日 2013-02-05 
審決日 2013-02-18 
出願番号 特願2006-321490(P2006-321490)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 561- Z (H05B)
P 1 8・ 572- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 結城 健太郎  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 山崎 勝司
長浜 義憲
発明の名称 誘導加熱装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 寺内 伊久郎  

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