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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1272311
審判番号 不服2012-18813  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-26 
確定日 2013-04-04 
事件の表示 特願2007-80669号「閉鎖空間の除湿システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月9日出願公開、特開2008-241094号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年3月27日の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「一端部が吸込部となり且つ他端部が吐出部となった空気流路の途中に除湿手段と送風手段とを備えた除湿装置の上記吸込部と吐出部を閉鎖空間に連通させ、閉鎖空間内の空気を吸込部から除湿装置の空気流路に吸込んで除湿手段で除湿することで乾燥空気とすると共に、該乾燥空気を送風手段により吐出部から閉鎖空間に返送するようにした閉鎖空間の除湿システムにおいて、
除湿装置に除湿手段で除湿することで生成した水を溜める水溜め部を設け、
除湿手段で除湿した後の乾燥空気に帯電微粒子水を放出するための静電霧化装置を除湿装置に設け、該静電霧化装置が、放電電極と、上記水溜め部から放電電極に水を供給するための水搬送部と、放電電極に供給された水を静電霧化するために放電電極に高電圧を印加するための高電圧印加部とを備え、
水溜め部に溜めた水を閉鎖空間外及び除湿装置外に蒸発させるための蒸発手段を設け、
除湿手段の動作により、閉鎖空間の空気が乾燥すると共に除湿された水分は水溜め部に溜められ、溜められた水から帯電微粒子水を生成して閉鎖空間の乾燥空気に放出し、帯電微粒子水生成に使用されなかった水は蒸発手段で蒸発させる
ことを特徴とする閉鎖空間の除湿システム。」

2.引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2006-63480号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図1?6とともに以下の事項が記載されている。
ア.「【請求項2】
水粒子放出部と、該水粒子放出部と対向する対向電極と、水粒子放出部に水を供給するための水供給手段と、水粒子放出部と対向電極との間に高電圧を印加する電圧印加部とを備え、水粒子放出部と対向電極との間に高電圧を印加することで水粒子放出部の水がナノメータサイズの帯電微粒子水を生成する静電霧化装置を構成すると共に、天井から吊下げた吊下げ部材の下端部に設けた物干し部材に洗濯物を干す室内物干し装置を設け、前記室内物干し装置に干した洗濯物と略同じ高さ位置の室内壁に静電霧化装置が位置するように設けて成ることを特徴とする静電霧化装置を備えた室内物干し装置。
・・・(中略)・・・
【請求項4】
静電霧化装置の水粒子放出部に供給する水を生成するための結露手段を設けて成ることを特徴とする請求項2又は3記載の静電霧化装置を備えた室内物干し装置。
【請求項5】
ケーシング内の空気流路にフィルター、ファン、静電霧化装置を設けて静電霧化ユニットを構成するものにおいて、フィルターの下流側に静電霧化装置を設けて成ることを特徴とする請求項2乃至4記載の静電霧化装置を備えた室内物干し装置。」(特許請求の範囲)
イ.「また、請求項4の発明は、請求項2又は3の発明において、静電霧化装置1の水粒子放出部11に供給する水を生成するための結露手段を設けて成ることを特徴とするものである。このような構成とすることで、自動的に給水することが可能となって使用者の給水作業が不要となる。
また、請求項5の発明は、請求項2乃至4の発明において、ケーシング内の空気流路にフィルター71、72、ファン73、静電霧化装置1を設けて静電霧化ユニット7を構成するものにおいて、フィルター71、72の下流側に静電霧化装置1を設けて成ることを特徴とするものである。このような構成とすることで、清浄な空気が結露手段に供給されて、結露した結露水Wに不快臭成分が含まれることがなく、不快臭成分を含んだ帯電微粒子水が生成されるのを防止することができる。」(段落【0007】及び【0008】)
ウ.「静電霧化装置1は、図4に示すように一対の電極として機能する水粒子放出部11および対向電極12と、前記水粒子放出部11に水を供給するための水供給手段(液溜め部14及び搬送部15)と、水粒子放出部11と対向電極12との間に高電圧を印加する電圧印加部13とを備えたもので、水粒子放出部11と対向電極12との間に高電圧を印加することで水粒子放出部11の水からナノメータサイズの帯電微粒子水のミストMを生成するものである。
図4に示す静電霧化装置1の例では、水供給手段としての液溜め部14及び下端が液溜め部14内に入れられた水に浸される多孔質材からなる棒状の搬送部15と、これら搬送部15の保持及び水に対する電圧の印加のための液印加電極16と、前記搬送部15の先端部の水粒子放出部11と対向する対向電極12と、上記液印加電極16と対向電極12との間に高電圧を印加する電圧印加部13とからなる。
・・・(中略)・・・
搬送部15は多孔質材で棒状に形成するもので、本実施形態では粒径が2?500μmのセラミック粒子からなり、その隙間の細孔が1?250μmで連続気泡状に配置されるように形成してある。搬送部15の上端は針状に尖った水粒子放出部11となっており、搬送部15の上部が液印加電極16よりも上方に突出し、下部が液印加電極16から下方に突出して上記液溜め部14内に入れられた水と接触するようになっている。
対向電極12は接地してあり、液印加電極16に電圧印加部13を接続して高電圧を印加すると共に、多孔質材で形成されている搬送部15が毛細管現象により液溜め部14に入れてある水を吸い上げている時、搬送部15の上端の水粒子放出部11が液印加電極16側の実質的な電極として機能する。」(段落【0012】?【0016】)
エ.「図5に示す静電霧化装置1の他例では、放熱部Hと冷却部Rを有するペルチェユニット2からなる結露手段を水供給手段として備えたものが設けてある。・・・(中略)・・・
冷却部Rは、内部に結露水Wを溜めることができる液溜め部14が形成されるように上方に開口する略皿状に形成してあり、この冷却部Rの内部上面に液印加電極16が設けてある。
液印加電極16は、上端部が水粒子放出部11となるもので、多孔質材で形成されるか微細孔や微細溝(図5の例では微細孔15a)を有しており、その下端部の冷却部Rに貯水されている結露水Wを毛細管現象にて放電部となる上端部の水粒子放出部11まで搬送可能な搬送部15となるようにしてある。・・・(中略)・・・またあるいは、上端部が水粒子放出部11となる多孔質セラミック等からなる搬送部15に液印加電極16を設けてもよい。
また、冷却部Rにはオーバーフロー孔26が設けてあり、液溜め部14内に溜められた結露水が一定水位以上となった時に前記オーバーフロー孔26を介して余剰水を下部の余剰水貯水タンク27へ排出することができる。
このように、ペルチェユニット2からなる水供給手段を設けた静電霧化装置1にあっては、使用者の給水作業を不要とすることができる。」(段落【0020】?【0024】)
オ.「上記のような静電霧化装置1は、生成した活性種を清浄な空気に混入させて吐出させるため、フィルター、ファンとともに組み込まれて静電霧化ユニット7が構成される(図1乃至図3、図6参照)。本例の静電霧化ユニット7は、図6に示すように、略箱状をしたケーシング内の空気流路に上流側からフィルター71、フィルター72、ファン73、静電霧化装置1を順に設けて構成してあり、前記ケーシングの空気流路の上流側端部に吸気口70a、下流側端部に吐出口70bがそれぞれ形成してある。・・・(中略)・・・このようなフィルター71、72の下流側に結露手段及び静電霧化装置1を配設することで、清浄な空気が結露手段に供給されて、結露した結露水Wに不快臭成分が含まれることがなく、不快臭成分を含んだ帯電微粒子水が生成されるのを防止することができる。
以上のような静電霧化ユニット7(静電霧化装置1)を用いて、室内干しされた洗濯物に向けて活性種を含んだナノメータサイズの帯電微粒子水を吹き付けることで、室内干しされた洗濯物の繊維間の隙間に帯電微粒子水が入り込んで、洗濯物に付着した雑菌を殺菌して繁殖を抑えることで消臭(防臭)を行うことが可能となる。」(段落【0025】及び【0026】)
カ.「また、静電霧化装置1を備えた室内物干し装置3の他例として、図3に示すように、室内物干し装置3に直接取り付けるのではなく、室内の壁面に設けたものでもよい。図3に示す例では洗面・脱衣室の天井Cに室内物干し装置3を設けるとともに、内側壁の窓枠の下部に静電霧化装置1を備えた静電霧化ユニット7が設けてある。・・・(中略)・・・
また、上述したような結露手段を有する静電霧化装置1においては、帯電微粒子水を生成するのに要する水量よりも多くの結露水を生成させて、この室内の除湿を行ってもよい。これは、結露手段(ペルチェユニット2)による結露水を生成する単位時間当たりの生成量を、静電霧化装置1にて帯電微粒子水を生成するのに要する単位時間当たりの水量よりも多く設定することで、室内の空気の湿度が下がって除湿されるものである。これにより、帯電微粒子水を生成するのに要する水を生成する手段とは別に除湿手段を設けることなく、除湿が可能となるものである。」(段落【0033】及び【0034】)
キ.図6には、上流側からフィルター71、フィルター72、ファン73、74、静電霧化装置1の順に設けて構成することが図示されており、オ.で摘示した「フィルター71、72の下流側に結露手段及び静電霧化装置1を配設することで、清浄な空気が結露手段に供給されて、結露した結露水Wに不快臭成分が含まれることがなく、不快臭成分を含んだ帯電微粒子水が生成されるのを防止することができる。」との記載を参酌すると、結露手段74がファン73と静電霧化装置1の間に設けられ、結露手段74で結露した結露水Wが静電霧化装置1に供給されて帯電微粒子水が生成されるといえる。
ク.また、図6には結露手段74から斜めに下がる線により静電霧化装置1が繋がれ、水粒子放出部11を先端に有する搬送部15及び液印加電極16の下端が、液面を示す細線につかる様子が図示されており、上記キ.で述べた「結露手段74で結露した結露水Wが静電霧化装置1に供給されて帯電微粒子水が生成され」ることからみて、結露手段74による水が静電霧化装置1に供給されて液溜め部に溜まり帯電微粒子水を生成するために用いられていると解される。なお、このような構成は、例えば特開2006-61409号公報(図7、8及びその説明参照。)、特開2006-61072号公報(図6及びその説明参照。)及び特開2006-63643号公報(図5、6及びその説明参照。)等にも示されるように従来より周知でもある。
ケ.図6の静電霧化装置1は、下端が液面を示す細線につかる、先がとがった水粒子放出部11を先端に有する搬送部15及び液印加電極16を有し、その先端側に対向電極12を有するものであり、同じく静電霧化装置1である図4の水粒子放出部11を先端に有する搬送部15と同様の形状及び配置である。そして、図4の実施例の説明であるウ.で摘示した事項を参酌すると、図6の搬送部15及び液印加電極16は液溜め部の水を吸い上げ、上端の水粒子放出部11が実質的な電極として機能するものと解される。そして、静電霧化装置1とした機能させるべく、上端の水粒子放出部11から帯電微粒子水のミストMを生成するように電圧印加部13が高電圧を印加しているといえる。なお、上記特開2006-61409号公報等にも同様の構成が記載されている。
上記ア.?カ.の記載事項並びにキ.?ケ.の図示事項及び検討した事項を、特に図6の実施例及びカ.で摘示した「上述したような結露手段を有する静電霧化装置1においては、帯電微粒子水を生成するのに要する水量よりも多くの結露水を生成させて、この室内の除湿を行ってもよい」との記載に着目して、総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「上流側端部が吸気口70aとなり且つ下流側端部が吐出口70bとなった空気流路に除湿を行う結露手段74とファン73とを備えた、室内の除湿を行う静電霧化装置1を備えた静電霧化ユニット7を、洗面・脱衣室の内側壁に設けて、洗面・脱衣室の洗濯物に付着した雑菌を殺菌し消臭を行うと共に室内の除湿を行う、洗面・脱衣室及び室内の除湿を行う静電霧化装置1を備えた静電霧化ユニット7において、
静電霧化ユニット7に、除湿を行う結露手段74による水が静電霧化装置1に供給されて溜まる液溜め部を設け、
除湿を行う結露手段74の下流側に帯電微粒子水のミストMを生成する静電霧化装置1を設け、
静電霧化装置1が、液溜め部の水を吸い上げ、上端の水粒子放出部11が実質的な電極として機能する搬送部15及び液印加電極16と、上端の水粒子放出部11から帯電微粒子水のミストMを生成するように高電圧を印加する電圧印加部13とを備え、
帯電微粒子水を生成するのに要する単位時間当たりの水量よりも結露水を生成する単位時間当たりの生成量を多く設定することで除湿を行う結露手段74により室内の除湿が行われると共に結露手段74による水が静電霧化装置1に供給されて液溜め部に溜まり、帯電微粒子水を生成するために用いられ、帯電微粒子水は洗面・脱衣室の洗濯物に吹き付けられる
洗面・脱衣室及び室内の除湿を行う静電霧化装置1を備えた静電霧化ユニット7。」

(2)引用刊行物2
同じく引用され、本願の出願前に頒布された実願平3-87345号(実開平5-28416号)のCD-ROM(以下「引用刊行物2」という。)には、図1?4とともに以下の事項が記載されている。
ア.「ふとんや衣類等高湿度を避けるべき家庭用品を収納する押し入れ、納戸、クローゼット等の限られた空間を適切な湿度に維持する除湿器としては、静粛、コンパクト、手入れ不要等の特徴が必要である。・・・(中略)・・・今までに提供されたものは除湿した水分を定期的に捨てなければならないという煩わしさがあり、凝縮水の廃棄を怠ると、水が満杯の状態となり、自動的に停止して除湿を行わなくなる等の問題があった。
本考案の目的は、除湿によって生じた水を人手を要さずに処理できる、熱電モジュールを応用した電子除湿器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本考案の電子除湿器の構成は、除湿器内が仕切壁で除湿室と蒸発室とに仕切られ、前記除湿室には吸気口と、排気口と、熱電モジュールと、熱電モジュールの両面に固定された冷却体および放熱体と、前記冷却体に接触した空気中の水分が凝縮して生じた結露水を吸収する吸水体とが設けられており、ファンによって、前記吸気口から流入した空気が前記冷却体に接触して除湿されたのち排気口から排出されるように構成され、前記蒸発室はファンによって蒸発室内の空気が蒸発室の排気口から外部へ排出されるように構成され、前記除湿室内の吸水体が前記仕切壁に設けられた開口を挿通して蒸発室内へ延在しており、この吸水体に電極が配設され、電極間の電気抵抗値により前記蒸発室のファンの駆動を制御する手段を備えてなることを特徴とする。
・・・(中略)・・・電子除湿器が押し入れ等の壁面に、蒸発室の排気口(吸気口もある場合は吸気口と排気口)が壁面に設けられた開口に臨むようにして取り付けられる。・・・(中略)・・・
熱電モジュールとファンに通電されると、ファンによって押し入れ等の被除湿空間内の空気が吸気口から除湿室内に流入し、冷却体へ空気が流れる。
一方、冷却体は熱電モジュールによって冷却され、冷却体の表面温度は低温となり、露点温度まで下がるので、冷却体に接触した空気は冷却体によって冷却されて、冷却体の表面に空気中の水分が結露する。
冷却体により除湿された空気は、排気口から押し入れ等の被除湿空間内に戻される。
一方、結露水は吸水体に吸収され、吸水体内を通って蒸発室側に配置する吸水体へ移動する。吸水体内の水分は蒸発室で蒸発し、その水分はファンによって排気口から外部に排出される。
このようにして、押し入れ等の被除湿空間内の空気中の水分は一旦凝縮水となるが、蒸発室で蒸発して外部に移動する。」(段落【0004】?【0013】)
イ.「前記冷却体6に付着した結露水の排出について説明する。冷却体6の表面に付着した結露は水滴となって吸水体8に滴下する。この結露水は吸水体8内を通って蒸発室4側に配置する吸水体8へ移動する。蒸発室4側の吸水体8は、熱伝導率のよい材料からなる仕切壁2と接触しているので、放熱体7から仕切壁2に伝達された熱によって温められ、吸水体8内の水分の蒸発が促進されると同時に仕切壁2を冷却する。
蒸発室4の排気ファン15は、吸水体8内に水分が吸収されている場合は電気抵抗が低くなるので、作動して、蒸発した水分を排気口14から別室18へ排出する・・・(中略)・・・。
なお、蒸発室4の排気ファン15が蒸発室4内の空気を排気口14から別室18側に排出する際、吸気口21から外部空気が流入し蒸発室4内の空気を掻き乱し吸水体8内の水分の蒸発を促進する。
このようにして、押し入れ17内の空気中の水分は一旦凝縮水となるが、蒸発室4で蒸発して別室18側に移動する。そして別室18側は大空間であるので、僅かに湿度が上昇するのみであり、居住空間の環境として何ら支障はない。」(段落【0028】?【0031】)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「吸気口70a」は、その機能・構成からみて、前者の「吸込部」に相当し、以下同様に、後者の「吐出口70b」は前者の「吐出部」に、後者の「上流側端部が吸気口70aとなり且つ下流側端部が吐出口70bとなった空気流路」は前者の「一端部が吸込部となり且つ他端部が吐出部となった空気流路」に、後者の「除湿を行う結露手段74」は前者の「除湿手段」に、後者の「ファン73」は前者の「送風手段」に、後者の「室内の除湿を行う静電霧化装置1を備えた静電霧化ユニット7」は前者の「除湿装置」に、後者の「洗面・脱衣室」は前者の「閉鎖空間」に、後者の「洗面・脱衣室及び室内の除湿を行う静電霧化装置1を備えた静電霧化ユニット7」は前者の「閉鎖空間の除湿システム」に、後者の「除湿を行う結露手段74による水が静電霧化装置1に供給されて溜まる液溜め部」は前者の「除湿手段で除湿することで生成した水を溜める水溜め部」に、後者の「帯電微粒子水のミストMを生成する静電霧化装置1」は前者の「帯電微粒子水を放出するための静電霧化装置」に、後者の「帯電微粒子水のミストMを生成するように高電圧を印加する電圧印加部13」は前者の「水を静電霧化するために放電電極に高電圧を印加するための高電圧印加部」にそれぞれ相当する。
また、後者の「室内の除湿を行う静電霧化装置1を備えた静電霧化ユニット7」は「洗面・脱衣室の内側壁に設けて、洗面・脱衣室の洗濯物に付着した雑菌を殺菌し消臭を行うと共に室内の除湿を行う」ものであって、「上流側端部が吸気口70aとなり且つ下流側端部が吐出口70bとなった空気流路に除湿を行う結露手段74とファン73とを備えた」ものであるから、ファン73により、洗面・脱衣室内の空気を吸気口70aから空気流路に吸い込んで「除湿を行う結露手段74」で除湿し、吐出口70bより洗面・脱衣室に吹き出すものといえ、したがって後者の「洗面・脱衣室及び室内の除湿を行う静電霧化装置1を備えた静電霧化ユニット7」は前者の「閉鎖空間の除湿システム」が「除湿装置の吸込部と吐出部を閉鎖空間に連通させ、閉鎖空間内の空気を吸込部から除湿装置の空気流路に吸込んで除湿手段で除湿することで乾燥空気とすると共に、該乾燥空気を送風手段により吐出部から閉鎖空間に返送するよう」なすことと同様の作用をなすものといえる。
後者の「帯電微粒子水のミストMを生成する静電霧化装置1」は「除湿を行う結露手段74の下流側にを設け」られるから、前者の「帯電微粒子水を放出するための静電霧化装置」と同様に「除湿手段で除湿した後の乾燥空気に帯電微粒子水を放出する」ものといえる。
後者の静電霧化装置1は、「液溜め部の水を吸い上げ、上端の水粒子放出部11が実質的な電極として機能する搬送部15及び液印加電極16と、上端の水粒子放出部11から帯電微粒子水のミストMを生成するように高電圧を印加する電圧印加部13とを備え」、上端の水粒子放出部11が実質的な電極として機能することからみて、実質的に、前者の静電霧化装置が、「放電電極と、上記水溜め部から放電電極に水を供給するための水搬送部と、放電電極に供給された水を静電霧化するために放電電極に高電圧を印加するための高電圧印加部とを備え」ることと対応する。
さらに、後者の「除湿を行う結露手段74により室内の除湿を行われると共に結露手段74による水が静電霧化装置1に供給されて液溜め部に溜まり、帯電微粒子水を生成するために用いられ、帯電微粒子水は洗面・脱衣室の洗濯物に吹き付けられる」との作用は、前者の「除湿手段の動作により、閉鎖空間の空気が乾燥すると共に除湿された水分は水溜め部に溜められ、溜められた水から帯電微粒子水を生成して閉鎖空間の乾燥空気に放出」との作用に相当する。
そうすると、両者は、「一端部が吸込部となり且つ他端部が吐出部となった空気流路の途中に除湿手段と送風手段とを備えた除湿装置の上記吸込部と吐出部を閉鎖空間に連通させ、閉鎖空間内の空気を吸込部から除湿装置の空気流路に吸込んで除湿手段で除湿することで乾燥空気とすると共に、該乾燥空気を送風手段により吐出部から閉鎖空間に返送するようにした閉鎖空間の除湿システムにおいて、
除湿装置に除湿手段で除湿することで生成した水を溜める水溜め部を設け、
除湿手段で除湿した後の乾燥空気に帯電微粒子水を放出するための静電霧化装置を除湿装置に設け、該静電霧化装置が、放電電極と、上記水溜め部から放電電極に水を供給するための水搬送部と、放電電極に供給された水を静電霧化するために放電電極に高電圧を印加するための高電圧印加部とを備え、
除湿手段の動作により、閉鎖空間の空気が乾燥すると共に除湿された水分は水溜め部に溜められ、溜められた水から帯電微粒子水を生成して閉鎖空間の乾燥空気に放出する
閉鎖空間の除湿システム。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:本願発明が「水溜め部に溜めた水を閉鎖空間外及び除湿装置外に蒸発させるための蒸発手段を設け、」「除湿手段の動作により、閉鎖空間の空気が乾燥すると共に除湿された水分は水溜め部に溜められ、溜められた水から帯電微粒子水を生成して閉鎖空間の乾燥空気に放出し、帯電微粒子水生成に使用されなかった水は蒸発手段で蒸発させる」のに対して、引用発明は「帯電微粒子水を生成するのに要する単位時間当たりの水量よりも結露水を生成する単位時間当たりの生成量を多く設定することで除湿を行う結露手段74により室内の除湿が行われると共に結露手段74による水が静電霧化装置1に供給されて液溜め部に溜まり、帯電微粒子水を生成するために用いられ、帯電微粒子水は洗面・脱衣室の洗濯物に吹き付けられる」ものの、上記のような蒸発手段を有していない点。

そこで、上記相違点について検討する。
引用発明は「帯電微粒子水を生成するのに要する単位時間当たりの水量よりも結露水を生成する単位時間当たりの生成量を多く設定することで除湿を行う結露手段74により室内の除湿を行」うものであるから、除湿により静電霧化装置1で要される水以外の余剰の水が生成されることは、当業者にとって明らかである。
ところで、引用刊行物2には、押し入れ、納戸、クローゼット等の限られた空間を適切な湿度に維持する除湿器の除湿によって生じた水を人手を要さずに処理できるために、蒸発室を設け、水分を蒸発室で蒸発させ、蒸発室4内の空気を排気口14から別室18側に排出することが記載されている。つまり、除湿器の除湿によって生じた水を、人手を要さずに処理できるように、除湿する限られた空間及び除湿器以外に蒸発させるための蒸発手段が示されている。なお、除湿器の排水を蒸発させて処理作業を不要とすることは従来より周知のことである。
そうすると、除湿を行う引用発明において、余剰の水を人手を要さずに処理するために、上記余剰の水、すなわち帯電微粒子水生成に使用されなかった水を蒸発させるように、引用刊行物2に記載の事項を適用することは当業者が容易になし得たことといえる。
ここで、引用刊行物2に記載された除湿器は除湿器の除湿によって生じた水をすべて蒸発させるものではあるが、引用発明の静電霧化装置1は帯電微粒子水を生成するのに水が必要なことは明らかであり、引用刊行物2に記載の事項を適用するに際し、単に上記除湿により静電霧化装置1で要される水以外の余剰の水のみを蒸発させようとすることは当業者が格別の困難性を要することなくなし得た事項といわざるを得ない。
また、引用刊行物1には、図5や2.(1)エ.で摘示したように、静電霧化装置1に必要な水は液溜め部14に残して、余剰水を分離することも記載されていて、当業者にとって余剰の水を分離して処理することに格別の困難性はない。
したがって、引用発明に引用刊行物2に記載の事項を適用して、上記相違点に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことといえ、そのことによる本願発明の効果も格別であるとはいえない。

4.むすび
以上のように、本願発明は、引用発明及び引用刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-23 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-18 
出願番号 特願2007-80669(P2007-80669)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 吾一  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 長浜 義憲
平上 悦司
発明の名称 閉鎖空間の除湿システム  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 水尻 勝久  
代理人 木村 豊  

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