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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1272431
審判番号 不服2011-17992  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-19 
確定日 2013-04-03 
事件の表示 特願2006-546170「遠隔電子基板に対する有線接続装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日国際公開、WO2005/062483、平成19年 6月14日国内公表、特表2007-515907〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年12月20日(パリ条約による優先権主張2003年12月23日、フランス国)を国際出願日とする出願であって、平成22年6月18日付けの拒絶理由通知に対して、平成22年12月28日付けで手続補正がなされたが、平成23年4月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年8月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本件発明は、平成23年8月19日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
リモートコントローラ(30)の集合ラインを、少なくとも1つの電子パネル(31;92)に接続する装置であって、
前記電子パネル(31;92)は、少なくとも1つの容量センサを備え、
前記リモートコントローラ(30)は、給電ラインとユーザの手の接近を知らせる信号ラインとの少なくとも一方を有する集合ライン(32;91)によって、電子パネル(31;92)に接続され、また、電流を供給する給電手段(36;108)を備え、
前記電子パネル(31;92)は、給電ラインと、ユーザの手の接近を知らせる少なくとも一つの信号ラインとの少なくとも一方を集合ラインから排除できるように、リモートコントローラに伝送される伝送信号を給電より分離する手段(46;98)を備え、
前記リモートコントローラは、給電と、前記電子パネル(31;92)から送られユーザの手の接近を知らせる伝送信号とを、分離する、信号分離手段(38;120)を備え、
少なくとも1つの容量センサより発せられてユーザの手の接近を知らせる少なくとも1つの伝送信号を分離する信号分離手段(38;120)は、伝送信号に対して、基準電圧(56、57、...;113、l14、...)と、集合ライン(32;91)の少なくとも1つのラインで送られる伝送信号とを比較する、比較器(54、55、...;111、112、...)を備えていることを特徴とする装置。」
以下、請求項1に記載された発明を「本願発明」という。

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-86590号(実開昭58-189645号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。

(1)「本考案は主機と端末機器との接続を1本の高周波ケーブルのみで行うことにより、制御信号および電源の供給と信号の電送を行う主機・端末接続回路に関するものである。
各種電気装置においては、主機と端末とが互いに離れて設置されている場合があり、これらのシステムにおいては、主機から端末に対する制御信号ライン、電源ライン、および端末から主機への信号ラインからなる3本の接続ラインが設けられているのが一般的である。
第1図は従来一般に用いられている主機端末接続構成を示すものである。同図において1,2は端末と主機であって、端末1には回路ブロック3が設けられている。4,5,6は端末1と主機2間を接続する制御ライン、電源ライン、信号ラインである。また7は主機2に設けられたら制御信号発生部であって、その出力信号は制御信号ラインを介して端末1内の回路ブロック3に供給される。8は主機2に設けられた電源であって、その出力は電源ライン5を介して端末1の回路ブロック3に供給される。9は主機2の内部に設けられた回路ブロックであって、端末1内の回路ブロック3から発せられる出力信号を同軸等の信号ケーブル6を介して受けることにより各種の信号処理を行っている。」(第1頁第11行?第2頁第15行)

(2)「しかしながら,上記構成においては3本のケーブルが必要になり、これに伴ってコスト、接続工数が上昇するとともに、ケーブルの設置スペースも大きくなってしまう問題を有している。
この考案による目的は、1本の高周波ケーブルを用いて端末と主機との全接続を行うものである。」(第3頁第4行?第10行)

(3)「第2図はこの考案による主機・端末接続回路の一実施例を示す回路図であって、第1図と同一部分は同一符号を用いて示してある。同図において、端末1側においては信号ライン6に対して直列に高周波阻止用のチョークコイルL_(1)が接続されており、その出力はツェナーダイオードD_(1)を介して回路ユニット3に制御信号として供給される。R_(1)、D_(1)はチョークコイルL_(1)の出力側とアース間直列に接続された抵抗とツェナーダイオードの直列体、Q_(1)はチョークコイルL_(1)の出力側と回路ユニット3の電源端子との間に接続された電源トランジスタであって、そのベース入力は前記ツェナーダイオードD_(2)の両端電位としている。C_(1)は回路ユニット3から出力される高周波の出力信号を信号ケーブル6に供給するとともに、直流をカットするコンデンサである。
一方主機2側においては、信号ケーブル6に対して高周波阻止用のチョークコイルL_(2)が直列に接続されている。8'は電源であって、電源トランジスタQ_(2)を介してチョークコイルL_(2)に接続されている。D_(3)は電源トランジスタQ_(2)のベースと制御信号発生部7との間に接続されたツェナーダイオード、R_(2)はベースバイアス抵抗、C_(2)は直流をカットして信号ケーブル6を介して供給される高周波の伝送信号のみを取込んで回路ブロック9に供給するコンデンサである。」(第3頁第13行?第4頁第18行)

(4)「また、回路ブロック3において発生された高周波の出力信号は、直流阻止用のコンデンサC_(1)を介し、かつ、伝送信号ライン6を介して主機2側に供給される。そしてこの高周波の出力信号は、コンデンサC_(2)を介して主機側の回路ブロック9に取込まれることにより信号処理が行われる。なお、この出力信号は高周波であるが、チョークコイルL_(1)、L_(2)によって阻止されるために他の部分に影響を与えることは全くない。」(第6頁第11行?第20行)

(5)上記(1)によれば、引用文献に記載された従来技術において、回路ブロック9は、信号ケーブル6を介して、端末1内の回路ブロック3から発せられる出力信号を受けることにより、各種の信号処理を行っているものであり、引用文献に記載された発明も、この点は踏襲しているととらえるのが自然である。

(6)上記(5)を踏まえ、上記(1)?(4)の記載を総合すれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「主機2と端末1との接続を1本の信号ケーブル6で行うことにより、制御信号及び電源の供給と信号の伝送を行うものであって、
端末1側には、信号ケーブル6に対して直列に接続された高周波阻止用のチョークコイルL_(1)と、回路ユニット3から出力される高周波の出力信号を信号ケーブル6に供給するとともに直流をカットするコンデンサC_(1)とを有し、
主機2側には、信号ケーブル6に対して高周波阻止用のチョークコイルL_(2)と、直流をカットして信号ケーブル6を介して供給される高周波の出力信号のみを取り込んで各種の信号処理を行う回路ブロック9に供給するコンデンサC_(2)とを有し、さらに、前記高周波阻止用のチョークコイルL_(2)を介して端末1側に給電する電源8‘を有し、
前記回路ユニット3において発生された高周波の出力信号は、直流阻止用のコンデンサC_(1)を介し、かつ、信号ケーブル6を介して主機2側に供給され、供給された高周波の出力信号は、コンデンサC_(2)を介して主機2側の回路ブロック9に取り込まれることにより信号処理が行われる主機・端末接続回路。」

4. 対比・判断
本願発明の「リモートコントローラ」は、「電流を供給する手段」と「信号分離手段」とを備えたものであるが、前記「信号分離手段」の出力が何に供給されるのかは規定されていないし、本願の明細書を参酌しても、「中央入出力ユニット(図示せず)への入力5、6を有するコントローラで利用する」(段落【0017】)程度の記載がなされているだけである。
すなわち、本願発明の「リモートコントローラ」は、一般的な意味でのリモートコントローラというよりも、集合ラインを介して受け取ったセンサの出力を単に外部に出力する装置といった程度のものである。
そして、引用発明の「主機2」と本願発明の「リモートコントローラ」とは、その信号伝送動作において軌を一つにしているから、引用発明の「主機2」は、本願発明の「リモートコントローラ」に相当する。

本願発明の「電子パネル」は、その用語が本願の明細書中で用いられているものではなく、また、本願の明細書中の特定の構成要素を言い換えたり、上位概念あるいは下位概念で記述したものとも必ずしも認められないが、本願の明細書に記載された本願発明の実施例と対比すれば、本願発明の「電子パネル」は、実施例の「電子基板」に対応するから、本願発明の「電子パネル」は、その一形態として、少なくとも、明細書に記載された「電子基板」を含むものととらえることができる。
一方、引用発明の端末1の回路ユニット3等は、通常の技術常識を踏まえれば、電子基板に設けられていることが明らかである。
それゆえ、引用発明の「端末1」は、本願発明の「電子パネル」に相当する。

引用発明の「電源8‘」は、本願発明の「給電手段」に相当する。

引用発明は、1本の信号ケーブル6によって制御信号及び電源の供給と信号の伝送を行うものであるから、これを言い換えれば、信号ケーブル6は、少なくとも給電ラインと信号ラインとを1本の信号ケーブル6によって共用するものである。
それゆえ、引用発明の「信号ケーブル6」は、本願発明の「給電ラインと信号ラインとの少なくとも一方を有する集合ライン」に対応する。

引用発明の「主機2」(本願発明の「リモートコントローラ」に相当)は、「信号ケーブル6」(本願発明の「集合ライン」に相当)によって、「端末1」(本願発明の「電子パネル」に相当)に接続され、また、電流を供給する「電源8‘」(本願発明の「給電手段」に相当)を備えるものである。

以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは、「リモートコントローラの集合ラインを、少なくとも1つの電子パネルに接続する装置」である点で一致し、「前記リモートコントローラは、給電ラインと信号ラインとの少なくとも一方を有する集合ラインによって、電子パネルに接続され、また、電流を供給する給電手段を備え」る点で共通する。

引用発明は、「端末1側には、信号ケーブル6に対して直列に接続された高周波阻止用のチョークコイルL_(1)と、回路ユニット3から出力される高周波の出力信号を信号ケーブル6に供給するとともに直流をカットするコンデンサC_(1)とを有」するものである。
すなわち、引用発明は、高周波阻止用のチョークコイルL_(1)によって、回路ユニット3から出力される高周波の出力信号が前記回路ユニット3の電源ラインに漏洩することを防止し、前記回路ユニット3の電源ラインには、主機2側からの電源供給がなされるとともに、前記回路ユニット3から出力される高周波の出力信号を信号ケーブル6を介して主機2側に伝送するものである。
それゆえ、本願発明と引用発明とは、「電子パネルは、給電ラインと、信号ラインとの少なくとも一方を集合ラインから排除できるように、リモートコントローラに伝送される伝送信号を給電より分離する手段を備え」る点で共通する。

引用発明の主機2側の回路ブロック9は、給電を兼用する信号ケーブル6を介して供給された高周波の出力信号をコンデンサC_(2)を介して取り込み、信号処理を行うものであって、明記はされていないものの、端末1の回路ユニット3が出力した高周波の出力信号を給電から分離して検出するものと解される。
また、引用発明の主機2の高周波阻止用のチョークコイルL_(2)は、前記高周波の出力信号が主機2の電源側に漏洩することを防止するものである。
それゆえ、引用発明のチョークコイルL_(2)、コンデンサC_(2)、回路ブロック9からなる回路は、本願発明の信号分離手段に対応するものであって、本願発明と引用発明とは、「前記リモートコントローラは、給電と、前記電子パネルから送られる伝送信号とを分離する信号分離手段を備え」ている点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。

[一致点]
「リモートコントローラの集合ラインを、少なくとも1つの電子パネルに接続する装置であって、
前記リモートコントローラは、給電ラインと信号ラインとの少なくとも一方を有する集合ラインによって、電子パネルに接続され、また、電流を供給する給電手段を備え、
前記電子パネルは、給電ラインと、信号ラインとの少なくとも一方を集合ラインから排除できるように、リモートコントローラに伝送される伝送信号を給電より分離する手段を備え、
前記リモートコントローラは、給電と、前記電子パネルから送られる伝送信号とを、分離する、信号分離手段を備えている装置。」

[相違点1]
本願発明の電子パネルは、容量センサを備え、該容量センサは、ユーザの手の接近を知らせる信号を発生するのに対して、
引用発明の電子パネルは、容量センサを備えていない点。

[相違点2]
本願発明の信号分離手段は、伝送信号に対して、基準電圧と、集合ラインの少なくとも1つのラインで送られる伝送信号とを比較する、比較器を備えているのに対して、
引用発明の信号分離手段は、そのような基準電圧と比較器とを備えていない点。

(2)相違点に対する判断
[相違点1について]
引用発明の回路ユニット3が発生し、回路ブロック9に取り込まれた高周波の出力信号が何に用いられるのかは、必ずしも明確ではないものの、回路ユニット3において検知した信号が回路ブロック9に伝送されて信号処理を行うものであるから、引用発明には、回路ユニット3が何らかのセンサからの信号を取り扱うことが含まれると解される。
一方、ユーザ(人体や手)の接近を知らせる信号を発生する容量センサが、本件出願前既に当業者の間で周知慣用されていたことは、技術常識である。
引用発明において、引用発明が取り扱うセンサとして周知慣用された容量センサを用いることを妨げる事情はないから、引用発明の端末1に周知の容量センサを備えユーザの手の接近を知らせる信号を発生するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

[相違点2について]
引用文献には、引用発明の回路ブロック9が、端末1の回路ユニット3が出力した高周波の出力信号をどのように検出するのかは明記されていない。
しかし、信号の検出に際して、ある閾値と比較して当該信号の有無を検出すること、すなわち、信号を基準電圧と比較器により比較することにより、当該信号を検出することは、ごく普通に行われる当業者には周知自明な技術事項である。
それゆえ、このような周知技術事項を引用発明に適用して本願発明のように、主機2の信号分離手段に基準電圧と伝送信号とを比較する比較器を備えるように構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

[周知技術文献の提示]
上述の周知技術を示す文献として、次のア、イを提示する。
ア.特開2001-100907号公報
段落【0043】?【0044】には、指の接近を検知する容量センサである点が、段落【0080】?【0082】には、信号と基準電圧とを比較器によって比較する点が記載されている。

イ.特開2000-179230号公報
段落【0038】には、容量センサにおいて、信号と基準となるしきい値とをコンパレータ(比較器)によって比較する点が記載されている。

そして、接点の酸化による接続の切断は、接点に流れる電流が小さいと生じやすいこと、接点に流れる電流が大きければそのような切断を防止できることは、よく知られたことであり、本願発明における、接点の酸化による接続の切断を防ぐ効果は、電源ラインと信号ラインとを1本に集合したことによって、接点に流れる電流が大きくなる引用発明においても当然に奏する効果であって、本願発明に特有の格別な効果であるとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-31 
結審通知日 2012-11-06 
審決日 2012-11-19 
出願番号 特願2006-546170(P2006-546170)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣川 浩  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 佐藤 聡史
江口 能弘
発明の名称 遠隔電子基板に対する有線接続装置  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 中馬 典嗣  

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