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審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1272817 |
審判番号 | 不服2011-8270 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-04-19 |
確定日 | 2013-04-08 |
事件の表示 | 特願2006-167462「新規な機能を持つ食品およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月27日出願公開、特開2007-330193〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年6月16日の出願であって、平成22年10月25日付け拒絶理由通知に対して、同年12月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年1月18日付けで拒絶査定され、これに対し、同年4月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。その後、平成24年10月10日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋がなされ、同年12月10日付けで回答書が提出されている。 第2 平成23年4月19付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年4月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.平成23年4月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容 本件補正により、本願の請求項1は、補正前の平成22年12月27日付け手続補正書により補正された、 「抗ウェルシュ菌抗体を1μg/g以上含有する乳清タンパクを含有する食品の、腸内細菌叢改善効果を持つ食品としての使用。」 から、 「抗ウェルシュ菌抗体を1μg/g以上含有する乳清タンパクと、 乳酸菌及び/又はビフィズス菌と、を含有する食品を、腸内細菌叢の改善に使用する方法。」 と補正された。 (下線部は対応する補正箇所を明示するため当審で付加した。) 2.補正の適否 本件補正は、「乳清タンパクを含有する食品」を「乳清タンパクと、乳酸菌及び/又はビフィズス菌と、を含有する食品」と補正し(補正事項1)、「食品の、腸内細菌叢改善効果を持つ食品としての使用」を「食品を、腸内細菌叢の改善に使用する方法」と補正する(補正事項2)ものである。 補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「乳清タンパクを含有する食品」について更に「乳酸菌及び/又はビフィズス菌と」を含有することを限定したものであり、当該補正事項は、本願明細書【0012】【0043】【0047】に記載されている。 補正事項2は、「食品としての使用」と発明のカテゴリーが明りょうでなかったものを「使用する方法」と補正して、方法の発明であることを明りょうにしたものである。 したがって、補正事項1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮、補正事項2は同法同条同項第4号の明りょうでない記載の釈明をそれぞれ目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか検討する。 3.独立特許要件について 3-1 特許法第29条第1項柱書の「産業上利用することができる発明」であるか否かについて (1)本願明細書の【0003】の「腸内細菌叢の改善、すなわち、前記善玉菌の生育が活発で、菌数が増加することにより、宿主にもたらされる有益な効果として、下痢、便秘を中心とする消化器症状の改善、免疫賦活を介してのガン予防、感染抵抗力等の向上、有害微生物代謝産物及び有害酵素の抑制等、宿主が健康な生活を維持するために必要な、良好な腸内環境をもたらすことにつながる各種の効果が挙げられる。」なる記載によれば、「腸内細菌叢の改善」は、「宿主が健康な生活を維持するために必要な、良好な腸内環境をもたらすことにつながる」ものである。 そうすると、本願補正発明における「食品を、腸内細菌叢の改善に使用する方法」は、食品を使用して健康な生活を維持するために必要な良好な腸内環境をもたらす方法であるから、本願補正発明は、健康を維持する方法であるといえる。 ここで、健康状態を維持するために処置する方法は、病気の予防方法とされ、病気の予防方法は、人間を治療する方法に含まれるから、「産業上利用することができる発明」に該当しない(特許・実用新案審査基準 第II部第1章2.1(特に、2.1.1.1(2)(c))参照。)。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第1項柱書の「産業上利用することができる発明」であることの要件を満たさない。 (2)請求人は回答書(3頁9?11行)で「(本願補正発明は)食品の新たな用途に基づいた非治療的な腸内細菌叢を改善するための方法を提供するもの」である旨主張しているが、仮に、本願補正発明が、健康状態を維持するために(第三者が)処置する方法ではなく、本願補正発明にかかる食品を本人が(自らの意思で)食して自らの腸内細菌叢の改善を図るものだとしても、本人が自らの意思で特定の食品を食することは個人的な行為であって、業として利用できるものではない。 したがって、本願補正発明が請求人のいうように「非治療的」であるとしても、本願補正発明は業として利用できない発明であって、特許法第29条第1項柱書の「産業上利用することができる発明」であることの要件を満たさない。 (3)特許法第29条第1項柱書の要件についてのまとめ 上記(1)(2)の検討のとおり、本願補正発明は、特許法29条第1項柱書の要件を満たさないので特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3-2 特許法第29条第2項(進歩性)について (1)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-124342号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1a)「【請求項2】 乳清タンパク中の抗体を有効成分とする請求項1に記載の便臭改善剤。 ・・・ 【請求項4】 難消化性糖類をさらに含有する請求項1?3のいずれか1項に記載の便臭改善剤。」(特許請求の範囲) (1b)「【0005】 このような糞便の悪臭成分は、メチルメルカプタン、アンモニア、硫化水素、インドール、スカトール、トリメチルアミンなどであり、クロストリジウム菌や大腸菌等のいわゆる悪玉菌と呼ばれる腸内細菌により産生される。」 (1c)「【0013】 一般に、乳清タンパクはハム、ソーセージ等の物性改良や、製パン、ヨーグルト等の品質改良に利用されてきており、最近ではそのアミノ酸の配列が人乳に近く栄養価に富み、必須アミノ酸をすべて含み、吸収率が非常によく、また、分岐鎖アミノ酸の含有率も高いことから、タンパク質を補給するための栄養補助食品として、主にスポーツ選手や運動負荷の高い人向けの商品に利用されているものである。」 (1d)「【0014】 乳清タンパクには、原料の生乳に由来する抗体が残存しているものもある。本発明の便臭改善効果は、このような乳清タンパクに含まれる抗体により奏される作用である。したがって、本発明の便臭改善剤には乳清タンパクの抗体が0.5質量%以上含まれていることが便臭改善のためには望ましい。また、成人においては、乳清タンパクの抗体を一日あたり50mg以上摂取すると便臭改善のために効果的である。」 (1e)「【0015】 また、本発明の便臭改善には、難消化性糖類を配合するとさらにその効果が顕著となる。難消化性糖類としては、食品として使用できる難消化性糖類であれば、いずれの糖類も用いることができる。例えば、フラクトオリゴ糖、・・・等を挙げることができる。これらの糖質は通常の市販されているものを用いることができる。本発明において難消化性糖類とは、体内の消化酵素で消化されにくい糖類をいう・・・。難消化性糖類は乳清タンパク100質量部に対し、5?1000質量部添加することが好ましい。 【0016】 難消化性糖類は腸内ビフィズス菌の増殖因子となり、また、整腸作用もある。乳清タンパクと難消化性糖類を同時に摂取すると、両者の相乗的作用でさらに便臭改善効果が顕著となる。」 (1f)「【0018】 本発明において、便臭改善剤の形態は限定されない。例えば、錠剤、粉末、顆粒、カプセル剤でもよいし、ペースト状、液状でもよい。乳清タンパク添加後に抗体が失活するような加熱加工工程がなければ、加工食品の形態をとることもできる。」 (1g)「【0025】 [実施例2] 乳清タンパクであるミラクテール80(森永乳業(株)製)8質量部とフラクトオリゴ糖であるメイオリゴCR(明治製菓(株)製)2質量部を混合し、流動層造粒機で品温が65℃達温になるように調製しながら顆粒状とし、便臭改善剤として、以下の効果の試験に用いた。この顆粒の抗体含有量は4.0%であった。」 (1h)「【0026】 (効果の試験) 被験者として、特に便臭の臭いが強くて気になるという男性4名(61?67歳)を選び、試験群4として、実施例2で得られた顆粒(便臭改善剤)を5g(抗体として200mg)を100mlの水に懸濁させ、毎朝食後に飲用してもらった。そして、飲用前、飲用開始3日後、7日後の便臭について、実施例1の効果の試験と同様に5段階で官能評価した。その平均値を表2に、個人の評価点をグラフにしたものを図1に示す。 【0027】 (表2) 飲用前 3日後 7日後 試験群4(抗体として200mg) 4.0 2.25 1.25 【0028】 表2および図1を表1と対比するとわかるように、便臭の臭いが強くて気になるという人のほうが、便臭改善の効果が高い。特に、このうちの1名は抗体200mgを7日間服用することによって、便臭がひどく臭いレベル(4)からほとんど気にならないレベル(0)にまで改善された。」 (2)引用発明 引用刊行物1には、記載事項(1a)に「乳清タンパク中の抗体を有効成分とし、難消化性糖類をさらに含有する便臭改善剤」が記載され、記載事項(1g)には、その実施例2として「乳清タンパクであるミラクテール80(森永乳業(株)製)8質量部とフラクトオリゴ糖であるメイオリゴCR(明治製菓(株)製)2質量部を混合し、流動層造粒機で品温が65℃達温になるように調製しながら顆粒状とし、便臭改善剤」としたこと、「顆粒の抗体含有量は4.0%であった」ことが記載され、記載事項(1h)には、効果の試験方法として被験者に「実施例2で得られた顆粒(便臭改善剤)を5g(抗体として200mg)を毎朝食後に飲用してもらった」結果、「便臭の臭いが強くて気になるという人のほうが、便臭改善の効果が高い。特に、このうちの1名は抗体200mgを7日間服用することによって、便臭がひどく臭いレベル(4)からほとんど気にならないレベル(0)にまで改善された」ことが記載されている。 これらの記載事項を整理すると、引用刊行物1には、「抗体を含む乳清タンパクであるミラクテール80(森永乳業(株)製)8質量部とフラクトオリゴ糖であるメイオリゴCR(明治製菓(株)製)2質量部を混合し造粒して調製された顆粒状の便臭改善剤を飲用することにより便臭を改善する方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 本願明細書の【0016】に「本発明において、前記食品に添加される乳清タンパクは通常の市販されているもの、すなわち、ホエータンパク濃縮物(WPC)、ホエータンパク単離物(WPI)、脱塩ホエー粉等が使用できる」、同【0042】に「市販の乳清タンパク」として「ミラクテール80(森永乳業(株)製)」が例示され、同【0043】【0044】には乳清タンパクとしてミラクテール80を用いた実施例が記載されている。 そうすると、本願補正発明の「抗ウェルシュ菌抗体を1μg/g以上含有する乳清タンパク」には、「ミラクテール80(森永乳業(株)製)」が含まれる。 してみると、引用発明の便臭改善剤の成分である「抗体を含む乳清タンパクであるミラクテール80(森永乳業(株)製)」と、本願補正発明の食品に含有される「抗ウェルシュ菌抗体を1μg/g以上含有する乳清タンパク」とは、どちらも「ミラクテール80(森永乳業(株)製)」である点で一致するから、引用発明の「抗体を含む乳清タンパクであるミラクテール80(森永乳業(株)製)」は、本願補正発明の「抗ウェルシュ菌抗体を1μg/g以上含有する乳清タンパク」に相当するといえる。 イ 引用発明の乳清タンパクとフラクトオリゴ糖からなる「顆粒状の便臭改善剤」は、飲用するものであるから、一種の食品ということができ、「便臭改善剤を飲用する」ことは、その食品を使用することといえる。 そうすると、引用発明の「顆粒状の便臭改善剤を飲用する」ことは、食品を使用する点で、本願補正発明の「食品を」「使用する方法」と共通する。 上記ア、イの検討から、両者は、「抗ウェルシュ菌抗体を1μg/g以上含有する乳清タンパクを含有する食品を、使用する方法」の発明である点で一致し、 次の点で相違する。 <相違点1> 食品が、本願補正発明は乳清タンパクに加えて「乳酸菌及び/又はビフィズス菌」を含有するのに対して、引用発明は乳清タンパクに加えて「フラクトオリゴ糖」を含有するが、乳酸菌及び/又はビフィズス菌は含有しない点。 <相違点2> 食品を使用して、本願補正発明は「腸内細菌叢の改善」を行うのに対して、引用発明では「便臭を改善する」点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 ア <相違点1>について 引用刊行物1の「本発明において、便臭改善剤の形態は限定されない。例えば、錠剤、粉末、顆粒、カプセル剤でもよいし、ペースト状、液状でもよい。乳清タンパク添加後に抗体が失活するような加熱加工工程がなければ、加工食品の形態をとることもできる」(記載事項(1f))、及び、「一般に、乳清タンパクは・・・ヨーグルト等の品質改良に利用されてき」た(記載事項(1c))との記載によれば、引用刊行物1には、引用発明の便臭改善剤の形態として加工食品とすることが示唆されており、また、引用発明の便臭改善剤の成分の1つである乳清タンパクを添加する食品として、ヨーグルトが従来からよく知られていたことが開示されている。しかも、引用刊行物1には「難消化性糖類は腸内ビフィズス菌の増殖因子とな」る(記載事項(1f)との、フラクトオリゴ糖等の難消化性糖類がビフィズス菌と共存することによるメリットも開示されている。 してみると、上記引用刊行物1の示唆ないし開示に基づき、引用発明の便臭改善剤をヨーグルトの形態の食品とすべく、引用発明の便臭改善剤を、乳酸菌及び/又はビフィズス菌を含む周知慣用のヨーグルトに添加することにより、抗体を含む乳清タンパクであるミラクテール80(森永乳業(株)製)及びフラクトオリゴ糖に加えて、乳酸菌及び/又はビフィズス菌を含む食品の形態とすることは当業者の容易になし得ることである。 イ <相違点2>について (ア)引用刊行物1には「糞便の悪臭成分は、・・・クロストリジウム菌や大腸菌等のいわゆる悪玉菌と呼ばれる腸内細菌により産生される」(記載事項(1b))、「本発明の便臭改善効果は、このような乳清タンパクに含まれる抗体により奏される作用である」(記載事項(1d))と記載されており、引用発明の便臭改善剤を飲用したことより便臭が改善されたという試験結果(記載事項(1h))は、抗体を含む乳清タンパクを有効成分とする便臭改善剤を飲用することにより、悪臭成分を産生する腸内の悪玉菌の活動が何らかの形で抑えられたことを示しているのは明らかである。 (イ)そして、下記周知文献a?cに記載されるとおり、「従来、腸内腐敗産物の抑制には、(1)抗生物質の投与によって、腸内で腐敗産物を生成している有害菌を死滅させる方法、(2)植物性の食品を中心に摂取したり、補助食品としてオリゴ糖類のようなビフィズスファクターを併用することにより、ビフィズス菌、乳酸桿菌といった有用菌を腸内で最優勢にし、大腸菌やウェルシュ菌といった有害菌の増殖を抑えこみ結果的に腐敗産物の産成を抑制する方法がある。」(下記aの【0003】)ことは周知の事項であり、腸内環境(腸内細菌叢)を改善することにより便臭を改善する作用を有する組成物は、本出願前、周知であって、牛乳由来の活性免疫グロブリンを含有する牛乳のタンパク質濃縮物を便の悪臭減少剤とすることも知られている(下記b)。このような組成物は、腸内環境改善剤(下記a)、便の悪臭減少剤(下記b)、便臭改善栄養組成物(下記c)等、種々称されているが、いづれも、腸内環境(腸内細菌叢)を改善することにより便臭を改善する作用を異なった名称で表現したものである。 a:特開平5-238945号公報(【0003】【0027】?【0029】) b:特開2002-121140号公報(【請求項1】【0015】【0017】【0019】【0035】) c:特開2004-285007号公報(【0011】【0029】【0031】) d:Korhonen H. et al. Bovine milk antibodies for health, British J. Nutrition(2000)84,suppl.1,135-146頁(特に、135頁上欄、141頁左欄43行?142頁左欄40行) e:特開2000-159687号公報(【0001】【0015】【0016】【0021】【0026】) (ウ)また、上記周知文献b(【0035】)に、牛乳中の活性免疫グロブリンに含まれるIgGが腸内菌叢の改善に寄与すると推測されると記載され、上記周知文献dに、牛乳中の抗体を人、動物が摂取することにより、消化管内の微生物バランスを健常に保ち、健康増進に役立つことが記載され、更に、上記周知文献eに、ウシ乳中の免疫グロブリン類がヒトの健康にとって有益でない腸内微生物であるクロストリジウム属菌等の腸管への付着を阻止して腸内菌叢を改善する効果を有するので、免疫グロブリン類をヨーグルト等の飲食品に配合して効果を発揮させることが記載されているように、牛乳中の免疫グロブリンすなわち抗体の腸内菌叢改善効果についてもこの出願前周知の事項である。 (エ)そうすると、上記(ア)のとおり引用発明の便臭改善剤は腸内の悪玉菌の活動を抑制する作用を有していることが推測されることと、上記(イ)及び(ウ)の周知事項とを合わせ考えれば、抗体を含む乳清タンパクを有効成分として含む引用発明の便臭改善剤による便臭改善作用は、腸内細菌叢の改善に基づくものであることは当業者が容易に思い至ることである。 (オ)したがって、引用発明の便臭改善剤を、腸内細菌叢の改善の目的で使用することは当業者の容易になし得ることである。 ウ そして、本願明細書記載の本願補正発明の効果は、引用発明および上記周知技術から当業者が予測しうる範囲内のものである。 (5)特許法第29条第2項(進歩性)についてのまとめ 上記(4)の検討のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.本件補正についてのむすび 上記3.のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成23年4月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「抗ウェルシュ菌抗体を1μg/g以上含有する乳清タンパクを含有する食品の、腸内細菌叢改善効果を持つ食品としての使用。」 なお、上記請求項1の記載の末尾は「食品としての使用」となっており、本願発明のカテゴリーが必ずしも明りょうではないが、前記「第2」で検討した平成23年4月19付け手続補正について、請求人は審判請求書の「2.(2)補正の根拠の明示 ハ」(4頁13?15行)の欄で、「補正事項は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである」旨主張していることからみて、本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本願補正発明と同様に、「食品としての使用方法」の発明であるものと解釈して以下検討する。 2.引用刊行物の記載事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物1の記載事項、及び引用発明は、前記「第2 3.3-2 (1)」及び「第2 3.3-2 (2)」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本願補正発明における「乳清タンパクと、乳酸菌及び/又はビフィズス菌と、を含有する食品」との発明特定事項を「乳清タンパクを含有する食品」と拡張したものであり、上記1.で述べたとおり、食品としての使用方法の発明であることは本願補正発明と差異はない。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3.3-2」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1にかかる発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-02-14 |
結審通知日 | 2013-02-15 |
審決日 | 2013-02-26 |
出願番号 | 特願2006-167462(P2006-167462) |
審決分類 |
P
1
8・
14-
Z
(A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L) P 1 8・ 575- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 光本 美奈子 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
小川 慶子 齊藤 真由美 |
発明の名称 | 新規な機能を持つ食品およびその製造方法 |
代理人 | 吉永 貴大 |