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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
管理番号 1273060
審判番号 不服2012-4677  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-12 
確定日 2013-04-18 
事件の表示 特願2007-107545「ゴルフボール」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月 6日出願公開、特開2008-264038〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成19年4月16日の出願であって、平成23年4月21日に手続補正がなされ、同年12月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年3月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、その請求と同時に手続補正がなされ、これに対して、当審において、同年11月28日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の通知がなされ、平成25年2月1日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成25年2月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4にそれぞれ記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
コアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、
前記カバーが、(A)樹脂成分として、脱石油系材料を構成成分として有する共重合ポリエステル樹脂と、(B)カルボジイミド、ポリイソシアネート、オキサゾリン化合物、および、エポキシ化合物よりなる群から選択される少なくとも1種とを含有し、
前記共重合ポリエステル樹脂は、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸を構成成分として有するものであって、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸の少なくとも一つが、脱石油系材料であり、
前記(a)ジカルボン酸が、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸、および、ピルビン酸よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記(b)ジオールが1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオールおよびエチレングリコールよりなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ヒドロキシカルボン酸が、乳酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロアクリル酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシトルイル酸よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記カバーの厚みが、0.3mm以上3.0mm以下であることを特徴とするゴルフボール。」

3 記載不備について
(1)記載不備についての当審拒絶理由の概要
請求項1に記載の「脱石油系材料」とは、石油を精製、接触改質、接触分解することなどによって得られる材料ではなく、コーン、イモ類、ビート、サトウキビなどの植物に由来する材料であることは理解できる。しかしながら、「脱石油系材料」と「石油系材料」とで材料の由来は異なるものの、両者は材料として区別することができない。すなわち、本願明細書中において、「脱石油系材料」とされていると認められるコハク酸、ブタンジオールなどは、段落【0015】に記載される方法以外でも製造されるものであって、そのような他の方法で製造された化合物を原料とするポリエステルと、本願発明のポリエステルとの違いが明確でないから、請求項1において、「脱石油系材料を構成成分として有するポリエステル樹脂」という特定によってポリエステルがどのように限定されるのか明確でない。

(2)当審の判断
ア 特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。
「コアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、
前記カバーが、(A)樹脂成分として、脱石油系材料を構成成分として有する共重合ポリエステル樹脂と、(B)カルボジイミド、ポリイソシアネート、オキサゾリン化合物、および、エポキシ化合物よりなる群から選択される少なくとも1種とを含有し、
前記共重合ポリエステル樹脂は、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸を構成成分として有するものであって、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸の少なくとも一つが、脱石油系材料であり、
前記(a)ジカルボン酸が、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸、および、ピルビン酸よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記(b)ジオールが1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオールおよびエチレングリコールよりなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ヒドロキシカルボン酸が、乳酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロアクリル酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸およびヒドロキシトルイル酸よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記カバーの厚みが、0.3mm以上3.0mm以下であることを特徴とするゴルフボール。」(下線は、審決において付した。以下同じ。)
イ 上記アによれば、請求項1には、「脱石油系材料」との記載があるが、当該「脱石油系材料」について具体的な規定はされていない。そして、この「脱石油系材料」という用語が特定の材料を示す技術用語であるとも認められない。
ウ しかるところ、前記「脱石油系材料」に関し、明細書には以下の記載がある。
「【0014】
前記脱石油系ポリエステル樹脂は、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸を構成成分として有するものであって、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸の少なくとも一つが、脱石油系材料であれば良く、例えば、ジカルボン酸とジオールとを構成成分とする共重合系ポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸、および、ジオールのうち少なくとも一つを脱石油系材料とするポリエステル樹脂、ジカルボン酸と、ジオールと、ヒドロキシカルボン酸とを構成成分とする共重合系ポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸、ジオール、および、ヒドロキシカルボン酸のうち少なくとも一つを脱石油系材料とするポリエステル樹脂、ポリヒドロキシカルボン酸ブロックと、ジカルボン酸と、ジオールとを構成成分とする共重合系ポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸、ジオール、ヒドロキシカルボン酸のうち少なくとも一つを脱石油系材料とするポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0015】
ここで、脱石油系材料とは、石油を精製、接触改質、接触分解することなどによって得られる材料ではなく、コーン、イモ類、ビート、サトウキビなどの植物に由来する材料である。例えば、コーン、イモ類、ビート、サトウキビなどをでんぷんや糖類(セルロースなど)に加工し、得られたでんぷんを微生物で醗酵させることによって得られる。また、植物性油脂や動物性油脂を用いて、公知の醗酵法および/または化学変換法により作ることもできる。」
エ 上記ウによれば、請求項1の「脱石油系材料」とは、石油を精製、接触改質、接触分解することなどによって得られる材料ではなく、コーン、イモ類、ビート、サトウキビなどの植物に由来する材料であると理解することができる。
しかしながら、「脱石油系材料」を構成成分として有する共重合ポリエステル樹脂と、「石油系材料」を構成成分として有する共重合ポリエステル樹脂とにつき、それらの構成成分が異なるからとの理由で、両者を材料として区別することはできない。すなわち、本願明細書中において、「脱石油系材料」とされていると認められるコハク酸、ブタンジオールなどは、段落【0015】に記載される方法以外の他の方法でも製造され得るものであって、そのような他の方法で製造された化合物を原料とする共重合ポリエステル樹脂と、本願発明の共重合ポリエステル樹脂との違いが明確でないから、請求項1において、「脱石油系材料を構成成分として有する共重合ポリエステル樹脂」及び「前記共重合ポリエステル樹脂は、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸を構成成分として有するものであって、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸の少なくとも一つが、脱石油系材料であり」との特定事項によって当該共重合ポリエステル樹脂がどのように特定されるのか明確でない。
なお、平成25年2月1日に提出された意見書(2頁下から15行?2頁末行)における「…(略)…補正後の請求項1では、『脱石油系材料を構成成分として有する共重合ポリエステル樹脂』とは、『(a)ジカルボン酸、(b)ジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸の少なくとも一つに脱石油系材料を用いて重合することにより得られた共重合ポリエステル樹脂である』というプロセス的に限定されたものであることが明確になったと考えます。つまり、カバー用組成物に使用する共重合ポリエステル樹脂が、大気中の二酸化炭素量の増加を抑制することができ、地球温暖化の防止に寄与するものに限定されることが明確になったと考えます。…(略)…」との主張ついては、「脱石油系材料」を構成成分として有する共重合ポリエステル樹脂と、「石油系材料」を構成成分として有する共重合ポリエステル樹脂とについて、それらの構成成分が異なるからとの理由で、両者を材料として区別することができないのは上述したとおりである。
オ まとめ
以上のとおり、特許請求の範囲の記載は明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない

4 進歩性について
(1)引用刊行物及び引用発明
当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-247224号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0009】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、ワンピースゴルフボール、又はコアとコアを被覆する1層又は複数層のカバーとを具備してなるゴルフボールにおいて、ワンピースゴルフボールの構成部材、或いは、コアとコアを被覆する1層又は複数層のカバーとを具備してなるゴルフボールの構成部材のうち、少なくとも一つの部材が生分解性材料にて形成されたゴルフボールである。このように本発明のゴルフボールを構成することにより、自然界に放置された場合であっても、自然環境への負荷を低減し得るゴルフボールが実現される。
なお、本発明において「生分解性材料」とは、生分解性化合物の1種又は2種以上を含む材料を意味する。また、「生分解性化合物」とは、土中・堆肥またはコンポスト中、微生物によりその少なくとも一部が分解される化合物を意味する。
【0010】
上記生分解性化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばポリ乳酸、酢酸セルロース、カプロラクトン-ブチレンサクシレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート変性物、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートカーボネート変性物、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンオキサレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリグリコール酸、ポリブチレンオキサレート、ポリネオペンチルグリコールオキサレート、ポリヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシ酪酸・β-ヒドロキシ吉草酸コポリマー、乳酸変性体(乳酸-多価アルコール-多塩基酸共重合体など)、澱粉系樹脂(澱粉脂肪酸エステル、澱粉ポリエステルなど)、酸変性ポリビニルアルコール等といった、エステル基を含有する生分解性化合物;
ポリグルタミン酸、ポリカプロラクタム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、多糖類(澱粉、キチン、キトサン、セルロースなど)、ポリビニルアルコール等といった、エステル基を含有しない生分解性化合物;
を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。」
イ 「【0014】
本発明における上記生分解性材料には、生分解性に加え、成形加工性、並びに表面光沢性、反発弾性といったゴルフボール特性を両立させる観点から、熱可塑性樹脂、熱可塑性弾性体及び/又は熱硬化性樹脂を配合すること(即ち、熱可塑性樹脂、熱可塑性弾性体、及び熱硬化性樹脂よりなる群から選択された1種又は2種以上を、上記生分解性材料中に配合すること)ができる。
【0015】…(略)…
【0016】
また、上記熱硬化性樹脂としては、ポリ尿素、熱硬化性ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリフェノール、ポリシリコン、ユレア・メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレ-ト樹脂等といった熱硬化性樹脂を挙げることができる。」
ウ 「【0029】
〔実施例3〕
生分解性材料をカバー材のみに使用したツーピースゴルフボールの作製
表1に示す素材を用い、まず、コアをプレス成形にて作成し、実施例1の射出成形条件で、カバー材を上記コアにオーバーモールドし、ツーピースゴルフボールを作製した。
得られたゴルフボールの生分解性、反発弾性を評価した。結果を表1に併記した。」

エ 上記アないしウから、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「コアとコアを被覆する1層のカバーとを具備してなる生分解性材料をカバー材のみに使用したツーピースゴルフボールであって、カバー材がポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート変性物、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレンサクシネートといった生分解性化合物の1種又は2種以上を含む生分解性材料にて形成され、前記生分解性材料に、生分解性に加え、成形加工性、並びに表面光沢性、反発弾性といったゴルフボール特性を両立させる観点から、熱硬化性ポリウレタン、エポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂を配合する、ツーピースゴルフボール。」

(2)対比
ア 引用発明の「コア」、「カバー」及び「ツーピースゴルフボール」は、それぞれ、本願発明の「コア」、「カバー」及び「ゴルフボール」に相当する。
イ 引用発明の「『生分解性材料』に含まれる『ポリブチレンアジペートテレフタレート』、『ポリブチレンサクシネート』、『ポリブチレンサクシネートアジペート変性物』、『ポリエチレンテレフタレートサクシネート』、『ポリエチレンサクシネート』といった『生分解性化合物』」は、本願発明の「『(a)ジカルボン酸、(b)ジオール』を『構成成分として有』し、『樹脂成分として』の『共重合ポリエステル樹脂』であって、『前記(a)ジカルボン酸が、コハク酸、および、アジピン酸よりなる群から選択される少なくとも1種』であり、『前記(b)ジオールが1,4-ブタンジオールおよびエチレングリコールよりなる群から選択される少なくとも1種』である『共重合ポリエステル樹脂』」に相当する(この点、必要なら、特開2007-77367号公報【0013】、特開2007-70488号公報【0013】、特開2007-1940号公報【0018】、特開2007-31633号公報【0008】及び【0010】参照。)。
ウ 引用発明の「『熱硬化性樹脂』に係る『熱硬化性ポリウレタン』及び『エポキシ樹脂』」は、それぞれ、本願発明の「『(B)』に係る『ポリイソシアネート』及び『エポキシ化合物』」に相当する(この点、必要なら、特開2006-276122号公報【0016】と特開2007-69360号公報【0015】及び特開平5-247179号公報【0003】と特開2005-194456号公報【0023】参照。)。
エ 引用発明の「ゴルフボール(ツーピースゴルフボール)」はコアとコアを被覆する1層のカバーとを具備してなる生分解性材料をカバー材のみに使用したものであって、カバー材がポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート変性物、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレンサクシネートといった生分解性化合物の1種又は2種以上を含む生分解性材料にて形成され、前記生分解性材料に、生分解性に加え、成形加工性、並びに表面光沢性、反発弾性といったゴルフボール特性を両立させる観点から、熱硬化性ポリウレタン、エポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂を配合するものであるから、本願発明の「ゴルフボール」とは、「『コアと前記コアを被覆するカバーとを有する』ものであって、『前記カバーが、(A)樹脂成分としての共重合ポリエステル樹脂と、(B)ポリイソシアネート、および、エポキシ化合物よりなる群から選択される少なくとも1種とを含有し、前記共重合ポリエステル樹脂は、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールを構成成分として有するものであって、前記(a)ジカルボン酸が、コハク酸、および、アジピン酸よりなる群から選択される少なくとも1種であり、前記(b)ジオールが1,4-ブタンジオールおよびエチレングリコールよりなる群から選択される少なくとも1種である』もの」である点で一致する。

オ 上記アないしエから、本願発明と引用発明とは、
「コアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、
前記カバーが、(A)樹脂成分としての共重合ポリエステル樹脂と、(B)ポリイソシアネートおよびエポキシ化合物よりなる群から選択される少なくとも1種とを含有し、前記共重合ポリエステル樹脂は、(a)ジカルボン酸、(b)ジオールを構成成分として有するものであって、
前記(a)ジカルボン酸が、コハク酸、および、アジピン酸よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記(b)ジオールが1,4-ブタンジオールおよびエチレングリコールよりなる群から選択される少なくとも1種である、ゴルフボール」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:
本願発明は、共重合ポリエステル樹脂が、「『脱石油系材料を構成成分として有する』ものであって、当該構成成分である『(a)ジカルボン酸、(b)ジオール』の少なくとも一つが、脱石油系材料である」のに対して、引用発明は、共重合ポリエステル樹脂が、そのようなものであるか否か明らかでない。

相違点2:
カバーの厚みが、本願発明では、「0.3mm以上3.0mm以下」であるのに対して、引用発明では、そのような値であるか否か明らかでない。

(3)判断
相違点1及び2について検討する。
ア 相違点1について
(ア)石油資源枯渇の問題や炭酸ガス排出量増加に伴う地球温暖化といった環境問題の観点から、「『脱石油系材料を構成成分として有する共重合ポリエステル樹脂であって、当該構成成分である(a)ジカルボン酸、(b)ジオールの少なくとも一つが、脱石油系材料である共重合ポリエステル樹脂』に属する『石油を原料としない非石油系樹脂である植物由来原料モノマーを用いるポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート変性物、ポリエチレンテレフタレートサクシネート及びポリエチレンサクシネート』」は、本願の出願時点で周知である(以下「周知技術1」という。例.特開2006-96836号公報特に【0002】、【0003】及び【0019】、特開2005-323637号公報特に【0021】、国際公開第2006/057306号特に【0062】参照。)。
(イ)上記(ア)からみて、引用発明において、石油資源枯渇の問題や炭酸ガス排出量増加に伴う地球温暖化といった環境問題の観点から、生分解性化合物に係る「ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート変性物、ポリエチレンテレフタレートサクシネート及びポリエチレンサクシネート」として、石油を原料としない非石油系樹脂である植物由来原料モノマーを用いるものを採用し、すなわち、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて容易になし得たことである。

イ 相違点2について
(ア)引用発明はカバーを具備してなるものであり、該カバーは所定の厚みを有するものであることは明らかであるから、引用発明において、該カバーの厚みを所望の厚みに設定することは、当業者が容易になし得たことである。そして、その際、良好な耐久性、反発性、飛距離及び打感等を有するゴルフボールを得るべく、ゴルフボールのカバーの厚みを0.3mm?3.0mmとなすことは、本願の出願時点で周知である(以下「周知技術2」という。例.特開2003-52854号公報特に【0025】、特開2006-87948号公報特に【0073】、特開2006-87949号公報特に【0073】参照。)ことに照らせば、良好な耐久性、反発性、飛距離及び打感等を有するゴルフボールを得るべく、その具体的厚みを0.3mm?3.0mmとなすことは、当業者が適宜になし得たことである。
(イ)上記(ア)から、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術2に基づいて容易になし得たことである。

ウ 効果について
本願発明の奏する効果は、当業者が、引用発明の奏する効果、周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から予測できた程度のものである。

エ まとめ
したがって、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
上記3のとおり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
上記4のとおり、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-18 
結審通知日 2013-02-19 
審決日 2013-03-04 
出願番号 特願2007-107545(P2007-107545)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63B)
P 1 8・ 537- WZ (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薄井 義明高木 亨  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 菅野 芳男
鈴木 秀幹
発明の名称 ゴルフボール  
代理人 菅河 忠志  
代理人 植木 久一  
代理人 伊藤 浩彰  
代理人 植木 久彦  
代理人 二口 治  

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