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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1273061
審判番号 不服2012-6058  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-05 
確定日 2013-04-18 
事件の表示 特願2007-201917「参照画像作成表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月19日出願公開、特開2009- 37466〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本件出願は、平成19年8月2日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成23年10月 6日(起案日)
手続補正 :平成23年12月 7日
拒絶査定 :平成23年12月22日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成24年 4月 5日
手続補正 :平成24年 4月 5日
前置審査報告 :平成24年 5月 7日
審尋 :平成24年 8月 7日(起案日)
回答書 :平成24年10月17日

2.査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の請求項1ないし請求項10に係る発明は、いずれも、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開2002-133413号公報
刊行物2:特開2007-128265号公報

第2 補正の却下の決定
平成24年4月5日付けの手続補正について次のとおり決定する。

《結論》
平成24年4月5日付けの手続補正を却下する。

《理由》
1.補正の内容
平成24年4月5日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)による請求項1についての補正は、補正前の請求項1(平成23年12月7日付手続補正書で補正されたもの)である、

「【請求項1】
物体の形状データを格納する記憶部と、処理部と、画像表示部とを有する参照画像作成表示装置であって、
前記処理部は、
入力された画像から認識対象の物体を含む部分画像を抽出し、
前記画像の撮影条件情報を抽出し、
抽出した前記部分画像に基づき、前記記憶部から前記物体の形状データを選択して読み出し、
選択して読み出した前記物体の形状データと抽出した前記撮影条件情報とに基づき、前記物体のレンダリング画像を作成し、
作成した前記レンダリング画像を参照画像として、前記部分画像と対応付けて前記画像表示部に出力する
参照画像作成表示装置。」

を、

「【請求項1】
物体の形状データを格納する記憶部と、処理部と、画像表示部とを有する参照画像作成表示装置であって、
前記処理部は、
入力された画像から認識対象の物体を含む部分画像を抽出し、
前記画像の撮影条件情報を抽出し、
抽出した前記部分画像に基づき、前記記憶部から前記物体の形状データを選択して読み出し、
選択して読み出した前記物体の形状データと抽出した前記撮影条件情報から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報とに基づき、前記物体のレンダリング画像を作成し、
作成した前記レンダリング画像を参照画像として、前記部分画像と対応付けて前記画像表示部に出力する
参照画像作成表示装置。」

と補正するものであって、補正前の「前記撮影条件情報」を「前記撮影条件情報から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報」(以下「補正事項」という。)と補正するものである。

2.本件補正の適合性
(1)補正の範囲
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書の記載(段落【0016】【0020】【0021】に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2)補正の目的
上記補正事項は、「前記撮影条件情報」を「前記撮影条件情報から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)独立特許要件
上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、以下、独立特許要件について検討する。

ア.補正後の請求項1に係る発明
本件出願の明細書および図面の記載からみて、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明1」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
物体の形状データを格納する記憶部と、処理部と、画像表示部とを有する参照画像作成表示装置であって、
前記処理部は、
入力された画像から認識対象の物体を含む部分画像を抽出し、
前記画像の撮影条件情報を抽出し、
抽出した前記部分画像に基づき、前記記憶部から前記物体の形状データを選択して読み出し、
選択して読み出した前記物体の形状データと抽出した前記撮影条件情報から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報とに基づき、前記物体のレンダリング画像を作成し、
作成した前記レンダリング画像を参照画像として、前記部分画像と対応付けて前記画像表示部に出力する
参照画像作成表示装置。」

イ.刊行物の記載等
(a)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である特開2002-133413号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

《特許請求の範囲》
「【請求項8】 3次元物体を、可視画像および赤外線画像のうち少なくともいずれか一方によって撮像する撮像手段と、
撮像手段によって撮像して得られた撮像画像から識別対象領域を抽出する抽出手段と、
識別対象領域から特徴量を計算して求める特徴量算出手段と、
可視用および赤外線用の各複数の3次元モデルを記憶する第1記憶手段と、
第1記憶手段に記憶される複数の3次元モデルから、前記特徴量に対応する3次元モデルを選択する選択手段と、
選択手段によって選択された3次元モデルから2次元の候補モデル画像を生成する投影手段と、
投影手段によって生成された複数の候補モデル画像を記憶する第2記憶手段と、
第2記憶手段に記憶される複数の候補モデル画像と、前記撮像画像とを照合して、識別する識別手段とを含むことを特徴とする画像処理を用いる3次元物体の識別装置。」(特許請求の範囲の請求項8)

《発明の属する技術分野》
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、航空機による船舶の識別、港湾における不審船の発見、走行車両の監視、宇宙空間における部品の組み立ておよびドッキング、ならびに工場の生産ラインでの多種類の部品の識別および組み立てなどに好適に実施することができる画像処理を用いた3次元物体の識別方法および装置に関する。」

《発明が解決しようとする課題》
「【0012】本発明の目的は、3次元物体を、低コストで、短時間に高精度で識別することができる画像処理を用いる3次元物体の識別方法および装置を提供することである。」

《発明の実施の形態》
「【0030】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態の画像処理を用いる3次元物体の識別方法が実施される識別装置31を示すブロック図であり、識別方法の画像処理アルゴリズムをも示している。本実施の形態では、3次元物体として海上を航行する艦船を航空機から撮像して得られた2次元のデジタル画像を用いて、前記艦船を識別する場合を想定して説明する。画像処理を用いる3次元物体の識別装置(以下、単に識別装置と記す場合がある)31は、撮像手段32、抽出手段33、特徴量算出手段34、第1記憶手段35、第2記憶手段36、3次元モデル選択手段37、投影手段38、および識別手段39を含む。
【0031】図2は、識別装置31による画像処理の手順を説明するためのフローチャートであり、図3は撮像画像41から識別対象領域42を抽出する手順を示す図であり、図3(1)は撮像画像41を示し、図3(2)は撮像画像41から識別対象領域42’が粗抽出された状態を示し、図3(3)は図3(2)よりも小さいブロックで走査して得られた識別対象領域42を示す。
【0032】まず、ステップs1で、たとえば可視光CCDカメラによって実現される撮像手段41によって、上空の航空機から海上の艦船を撮像して、図3(1)に示されるように、デジタル撮像画像41を得ることができる。
【0033】ステップs2では、前記撮像画像41は、抽出手段33に伝送され、抽出処理が開始される。この抽出手段33は、前記撮像手段32によって撮像された撮像画像41から、前記3次元物体が撮像されている領域である識別対象領域42’を、小領域であるたとえば32×32ドットの比較的大きい面積のブロックB1を走査して分散σ2を求め、しきい値処理によって抽出し、背景画像と粗分離する。
【0034】このようにして抽出手段33において、走査ブロックB1をその面積がほぼ半分になるように、すなわち23×23ドット、16×16ドット、11×11ドット、8×8ドットのように、走査ブロックBの大きさを次第に小さくしながら抽出動作を複数回、繰り返し、図3(3)に示されるように、海面などの背景画像が除去され、艦船が写し出された領域は精細な輪郭の識別対象領域42として黒表示で抽出され、識別に供する識別対象領域のみの艦船画像が作成される。
【0035】したがって識別の対象とされない海面などの背景画像を、後述するモデル画像との比較またはマッチング処理に先だって除去し、正確な識別対象画像42を簡単な画像処理によって生成することができるとともに、不要な画像情報を可及的に少なくして、抽出に要する時間、したがって識別に要する時間を短縮することができる。
【0036】ステップs3に移り、特徴量算出手段34は、抽出画像43から識別対象領域42の方向性である長さベクトルL、および大きさである高さベクトルHを求める。この長さベクトルLおよび高さベクトルHは、3次元モデル選択手段37において3次元物体の特徴量として用いられる。これによって第1記憶手段35に記憶される複数の3次元モデル中における3次元モデルの選択および3次元物体の向き(すなわち画像上の船の姿勢)を推定するための計算が行われ、識別に要する時間を短縮することができる。またこの特徴量算出手段34では、長さLおよび高さだけを特性として計算して求めればよいので、計算量は少なく、特徴量抽出のためにむやみに多くの幾何学的特徴量の計算を行う必要はなく、これによってもまた、識別に要する時間を短縮することができる。
【0037】第1および第2記憶手段35,36は、記憶手段45を構成する。この記憶手段45は、コンピュータのハードディスク記憶装置によって実現されてもよい。第1記憶手段35には、複数の3次元モデル46が予めデータベース化されて格納される。この3次元モデルは、たとえばポリゴンとテクスチャからなる3次元コンピュータグラフィックスモデルをいい、CADデータを利用してもよい。また第2記憶手段36には、後述の3次元モデル選択手段37によって、候補として選択された複数の3次元モデル46から生成された2次元の候補モデル画像47がデータベース化されて格納される。
【0038】ステップs4において、3次元モデル選択手段37は、第1記憶手段35に格納されているすべての3次元モデル46の中から、前記特徴量算出手段34によって算出された特徴である長さベクトルLおよび高さベクトルHを用いて、該当する船種の1または複数の3次元候補モデルを抽出し、その抽出された3次元候補モデルを、投影手段38に導出する。
【0039】上記3次元候補モデルの選択は、国籍、船番号あるいは漁船、タンカー船、艦船、および客船などの船種を選択条件として設定してもよく、トン数を選択条件として設定してもよい。このようなモデル画像選択手段37によって、第1記憶手段35に予め記憶される、たとえば500?1000種類の3次元モデルをすべてマッチングする必要がなくなり、無駄な照合時間を削減することができる。
【0040】このようにして3次元モデル選択手段37によって候補として選択された3次元モデルは、ステップs4において、投影手段38によって投影変換して、2次元の投影モデル画像に変換されるとともに、撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置あるいは人工光源情報から光源を模擬し、前記投影画像に陰影情報が付加された後、第2記憶手段36に候補モデル画像47として記憶される。
【0041】次のステップs6に移り、第2記憶手段36に記憶される複数の候補モデル画像47および、撮像画像41あるいは識別対象領域42は、前記識別手段39のコンピュータのディスプレイ装置によって実現される表示部39aの画面に表示され、これをオペレータが確認し、または画像処理によるマッチングを行うことによって識別し、ステップs7で、撮像した3次元物体に関して予め準備された各種情報を入手することが可能となり、識別作業が終了する。
【0042】以上のように本実施の形態によれば、撮像手段32によって撮像した撮像画像41と第2記憶手段36に記憶される複数の候補モデル画像47とを直接マッチングして照合するので、撮像画像41の特徴量の計算が格段に少なくて済むにも拘わらず、より高精度で高速の識別を、容易にハードウェア化して低コストで実現することが可能となる。
【0043】また、上記のように撮像画像41と2次元候補モデル画像47とを直接マッチングするので、撮像画像41の特徴量と2次元候補モデル画像47の特徴量とをマッチングする場合に比べて、特徴量計算に要する時間を格段に少なくして、画像処理時間を短縮することができる。しかも、投影手段38によって、2次元候補モデル画像47には、光源の模擬によって陰影をつけるので、撮像画像41の3次元物体により近い画像情報を与えることができ、これによって識別精度を向上することができる。」

(b)上記記載によれば、刊行物1記載の発明は、「画像処理を用いる3次元物体の識別装置」(【請求項8】,段落【0001】【0012】【0030】)であって、「3次元モデルを記憶する第1記憶手段35」(【請求項8】,段落【0037】)と「表示部39a」(段落【0041】)とを有するものである。

(c)刊行物1には、撮像画像41から3次元物体が撮像されている領域である識別対象領域(識別対象画像)42を抽出することが記載されており(段落【0031】?【0035】)、刊行物1記載の発明は、「撮像画像41から3次元物体が撮像されている領域である識別対象領域(識別対象画像)42を抽出し」ている。

(d)刊行物1には、撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置から光源を模擬し、投影画像に陰影情報を付加し、撮像画像41の3次元物体により近い画像情報を与えることが記載されており(段落【0040】【0043】)、上記「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」を、どのように取得するかは具体的に記載されていないが、何らかの手段で取得していることは明らかである。
すなわち、刊行物1記載の発明は、「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置を取得し」ているといえる。

(e)刊行物1には、撮像画像41から3次元物体が撮像されている領域である識別対象領域(識別対象画像)42を抽出し、その識別対象領域(識別対象画像)42の特徴量を算出し、特徴量を用いて第1記憶手段35から3次元モデルを選択することが記載されており(段落【0031】?【0038】)、刊行物1記載の発明は、「抽出した前記識別対象領域(識別対象画像)42から特徴量を算出し、その特徴量を用いて前記第1記憶手段35から3次元モデルを選択し」ている。

(f)刊行物1には、「このようにして3次元モデル選択手段37によって候補として選択された3次元モデルは、ステップs4において、投影手段38によって投影変換して、2次元の投影モデル画像に変換されるとともに、撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置あるいは人工光源情報から光源を模擬し、前記投影画像に陰影情報が付加された後、第2記憶手段36に候補モデル画像47として記憶される。」と記載されている(段落【0040】)。
この記載によると、刊行物1記載の発明は、「選択された前記3次元モデルを投影手段38によって投影変換して、2次元の投影モデル画像に変換するとともに、前記撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置から光源を模擬し、前記投影画像に陰影情報が付加された候補モデル画像47を作成し」ているといえる。

(g)刊行物1には、「次のステップs6に移り、第2記憶手段36に記憶される複数の候補モデル画像47および、撮像画像41あるいは識別対象領域42は、前記識別手段39のコンピュータのディスプレイ装置によって実現される表示部39aの画面に表示され、これをオペレータが確認し、または画像処理によるマッチングを行うことによって識別し、ステップs7で、撮像した3次元物体に関して予め準備された各種情報を入手することが可能となり、識別作業が終了する。」と記載されており(段落【0041】)、刊行物1記載の発明は、「作成した候補モデル画像47と前記識別対象領域(識別対象画像)42とを表示部39aに表示して、これをオペレータが確認」するものといえる。

(h)以上によれば、刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「3次元モデルを記憶する第1記憶手段35と、表示部39aとを有する画像処理を用いる3次元物体の識別装置31であって、
撮像画像41から3次元物体が撮像されている領域である識別対象領域(識別対象画像)42を抽出し、
撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置を取得し、
抽出した前記識別対象領域(識別対象画像)42から特徴量を算出し、その特徴量を用いて前記第1記憶手段35から3次元モデルを選択し、
選択された前記3次元モデルを投影手段38によって投影変換して、2次元の投影モデル画像に変換するとともに、前記撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置から光源を模擬し、前記投影画像に陰影情報が付加された候補モデル画像47を作成し、
作成した前記候補モデル画像47と前記識別対象領域(識別対象画像)42とを表示部39aに表示して、これをオペレータが確認する
識別装置31。」

ウ.対比
補正発明1と引用発明とを対比する。

(ア)「物体の形状データを格納する記憶部」について
引用発明の「3次元モデルを記憶する第1記憶手段35」は、補正発明1の「記憶部」に相当する。

(イ)「処理部」について
引用発明の「識別装置31」は、画像処理などを施して3次元物体の識別を行うものであり、そのための「処理部」が存在することも明らかである。

(ウ)「画像表示部」について
引用発明の「表示部39a」は、補正後発明の「画像表示部」に相当する。

(エ)「参照画像作成表示装置」について
引用発明の「識別装置31」も、候補モデル画像47を作成し、表示部39aに表示するものであり、補正発明1の「参照画像作成表示装置」に相当するといえる。

(オ)「前記処理部」の処理について
(a)「入力された画像から認識対象の物体を含む部分画像を抽出し」について
引用発明も、「撮像画像41から3次元物体が撮像されている領域である識別対象領域(識別対象画像)42を抽出し」ており、引用発明の「撮像画像41」と補正発明1の「入力された画像」が一致し、また、引用発明の「識別対象領域(識別対象画像)42」は補正発明1の「認識対象の物体を含む部分画像」といえるから、結局、引用発明は、補正発明1と同様「入力された画像から認識対象の物体を含む部分画像を抽出し」ているといえる。

(b)「前記画像の撮影条件情報を抽出し」について
本願の明細書には、

「【0013】
画像蓄積部101は、物体を撮影した画像を蓄積する。画像として、例えば航空写真や衛星写真のような空中写真がある。ここで、空中写真は正射投影になるように補正したオルソ画像で、単バンド画像である。ただし、補正していない平射画像であってもよいし、複数画像からなる多バンド画像であってもよい。通常、画像には、撮影条件情報などのメタ情報が付加されている(例えば、ASTER GDS Web Site, ASTER LEVEL 1 DATA PRODUCTS SPECIFICATION (GDS Version), Version 1.3, [2007年05月07日検索]、インターネット<URL:(http://www.gds.aster.ersdac.or.jp/gds_www2002/libraly_e/l1pdoc/AG-E-E-2209-R03-7-26.rtf>の2.Level 1A Data Product,2.2 Data Structure 参照。)
なお、各画像の撮影条件情報は、画像にメタ情報として付加されることなく、各画像に関連付けされて記憶されているものであっても良く、この場合、撮影条件情報は、この画像との関連付けを利用して抽出される。」
「【0014】
実施例1においては、メタ情報抽出部102は、画像選択部103によって選択された画像のメタ情報を抽出する。メタ情報は、図10にその一例を示すメタデータ構造1001からなり、太陽高度1002、太陽方向1003、空間分解能1004、緯度経度1005、撮影時刻1006、カメラ姿勢1007、プラットフォーム姿勢1008、画像処理レベル1009などが格納されている。本実施例においては、画像に付属するこれらのメタ情報を自動で読み出し、後の処理であるレンダリング画像作成に利用する。このうち、太陽高度1002、太陽方向1003、空間分解能1004、カメラ姿勢1007、プラットフォーム姿勢1008を撮影条件情報と呼び、太陽高度1002と太陽方向1003を撮影時の光源に関する撮影条件情報と称する。」

と記載されているから、補正発明1の「前記画像の撮影条件情報を抽出し」とは、具体的には「前記画像から前記画像にメタ情報として付加されている前記画像の撮影条件情報を抽出」する、または、「画像に関連付けされて記憶されている撮影条件情報を、画像との関連付けを利用して抽出」という意味であると認めることができる。

これに対し、引用発明は「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置を取得し」、「前記撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置から光源を模擬し、前記投影画像に陰影情報が付加された候補モデル画像47を作成」するものであるから、引用発明で「取得」された「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」が表す情報は、補正発明1でいう「抽出」された「画像の撮影条件情報」が表す情報と一致するということがいえる。

つぎに、上記「イ.刊行物の記載等」(d)で述べたように、引用発明が「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」を、どのように取得するか、刊行物1には具体的に記載されていないが、引用発明は「3次元物体として海上を航行する艦船を航空機から撮像して得られた2次元のデジタル画像を用いて、前記艦船を識別する場合を想定し」(刊行物1段落【0030】)たものであるから、引用発明における「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」は時々刻々変化するもの、すなわち、個々の「撮像画像41」毎に異なるものとなることは明らかである。それを前提とすると、個々の「撮像画像41」と、取得されるべき「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」の間に、なんらかの関連が存在した状態で、個々の「撮像画像41」と「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」が記憶されていないと、正しい「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」を取得することができないから、少なくとも、引用発明においても、個々の「撮像画像41」と「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」の間になんらかの関連付けをして記憶しておき、「撮像画像41」と「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」の関連付けを利用して「撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」を取得しているものと認めることができる。
結局、補正発明1の「前記画像の撮影条件情報を抽出し」を「画像に関連付けされて記憶されている撮影条件情報を、画像との関連付けを利用して抽出」することと解釈した場合には、引用発明と補正発明1はいずれも「前記画像の撮影条件情報を抽出し」ている点で一致している。

(c)「抽出した前記部分画像に基づき、前記記憶部から前記物体の形状データを選択して読み出し」について
引用発明は、「抽出した前記識別対象領域(識別対象画像)42から特徴量を算出し、その特徴量を用いて前記第1記憶手段35から3次元モデルを選択し」ており、引用発明も、補正発明1と同様「抽出した前記部分画像に基づき、前記記憶部から前記物体の形状データを選択して読み出し」ているといえる。

(d)「選択して読み出した前記物体の形状データと抽出した前記撮影条件情報から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報とに基づき、前記物体のレンダリング画像を作成し」について
引用発明は「選択された前記3次元モデルを投影手段38によって投影変換して、2次元の投影モデル画像に変換するとともに、前記撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置から光源を模擬し、前記投影画像に陰影情報が付加され、候補モデル画像47を作成」することによって「2次元候補モデル画像47には、光源の模擬によって陰影をつけるので、撮像画像41の3次元物体により近い画像情報を与えることができ」(刊行物1段落【0047】)るものである。しかしながら、刊行物1には、引用発明の「前記撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置から光源を模擬し、前記投影画像に陰影情報が付加」することの「光源の模擬」について、具体的にどのような演算を行っているかの記載はない。
ここで、引用発明の「選択された前記3次元モデル」と補正発明1の「選択して読み出した前記物体の形状データ」、引用発明の「前記撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置」と補正発明1の「前記撮影条件情報」、引用発明の「候補モデル画像47」と補正発明1の「前記物体のレンダリング画像」が対応するから、結局、引用発明と補正発明1は「選択して読み出した前記物体の形状データと抽出した前記撮影条件情報とに基づき、前記物体のレンダリング画像を作成し」ている点で一致し、補正発明1は前記撮影条件情報「から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報」に基づき前記物体のレンダリング画像を作成しているのに対し、引用発明は前記撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置から「光源を模擬し」前記投影画像に陰影情報が付加され、候補モデル画像47を作成しているものの、この「光源の模擬」について具体的にどのような演算を行っているか明らかではない点で相違する。

(e)「作成した前記レンダリング画像を参照画像として、前記部分画像と対応付けて前記画像表示部に出力する」について
引用発明も、「作成した前記候補モデル画像47と前記識別対象領域(識別対象画像)42とを表示部39aに表示して、これをオペレータが確認する」ものであって、「作成した前記候補モデル画像47」は「前記識別対象領域(識別対象画像)42」と共に「前記画像表示部に出力」され「オペレータが確認する」対象であるから、「前記画像表示部に出力」された「作成した前記候補モデル画像47」は参照画像であるということができる。すなわち、引用発明も、補正発明1でいう「作成したレンダリング画像を参照画像として、前記部分画像とを前記画像表示部に出力する」といえ、その点では、補正発明1と相違しない。
もっとも、補正発明1は、前記レンダリング画像を参照画像として、前記部分画像と「対応付けて」前記画像表示部に出力するのに対し、引用発明は作成した前記候補モデル画像47と前記識別対象領域(識別対象画像)42とを表示部39aに表示するのに留まる点については相違する。

エ.一致点・相違点
以上の対比から、補正発明1と引用発明との[一致点]及び[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
物体の形状データを格納する記憶部と、処理部と、画像表示部とを有する参照画像作成表示装置であって、
前記処理部は、
入力された画像から認識対象の物体を含む部分画像を抽出し、
前記画像の撮影条件情報を抽出し、
抽出した前記部分画像に基づき、前記記憶部から前記物体の形状データを選択して読み出し、
選択して読み出した前記物体の形状データと抽出した前記撮影条件情報とに基づき、前記物体のレンダリング画像を作成し、
作成したレンダリング画像を参照画像として、前記部分画像とを前記画像表示部に出力する
参照画像作成表示装置。

[相違点]
[相違点1]
補正発明1は前記撮影条件情報「から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報」に基づき前記物体のレンダリング画像を作成しているのに対し、引用発明は前記撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置から「光源を模擬し」前記投影画像に陰影情報が付加され、候補モデル画像47を作成しているものの、この「光源の模擬」について具体的にどのような演算を行っているか明らかではない点。

[相違点2]
補正発明1は、前記レンダリング画像を参照画像として、前記部分画像と「対応付けて」前記画像表示部に出力するのに対し、引用発明は作成した前記候補モデル画像47と前記識別対象領域(識別対象画像)42とを表示部39aに表示するのに留まる点。

オ.相違点の判断
ここで、上記相違点について検討する。

[相違点1]
上記したように引用発明は「選択された前記3次元モデルを投影手段38によって投影変換して、2次元の投影モデル画像に変換するとともに、前記撮像手段32の位置などのカメラパラメータおよび太陽の位置から光源を模擬し、前記投影画像に陰影情報が付加され、候補モデル画像47を作成」することによって「2次元候補モデル画像47には、光源の模擬によって陰影をつけるので、撮像画像41の3次元物体により近い画像情報を与えることができ」(刊行物1段落【0047】)るものである。そして、この「前記投影画像に陰影情報が付加」され「撮像画像41の3次元物体により近い画像情報を与える」ためには、この「陰影情報」を生成するために必要となる「太陽の位置から光源を模擬」された結果の「光源」の位置が「撮像画像41の3次元物体」が実際に存在する位置からみた「太陽の位置」にある必要があることは、物理現象としての影においての「光源」「物体」「物体の影」の互いの位置関係についての法則を踏まえれば、当業者が極めて自然に導き出せることであるから、この「太陽の位置から光源を模擬」する演算の過程に、「撮影手段32の位置」からみた「太陽の位置」を「撮像画像41の3次元物体」からみた「太陽の位置」に変換する過程を含ませること、すなわち、補正発明1のように「抽出した前記撮影条件情報から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報」を求めるようにすることは、当業者が容易になしえたことにすぎない。

[相違点2]
上記したように引用発明は「作成した前記候補モデル画像47と前記識別対象領域(識別対象画像)42とを表示部39aに表示して、これをオペレータが確認する」ものであって、刊行物1の段落【0012】【0041】の記載によれば、引用発明も、複数の候補モデル画像47と識別対象領域(識別対象画像)42は、ディスプレイ装置によって実現される表示部39aの画面に表示され、これをオペレータが確認し、識別精度の向上を図ることを目的とするものである。それを前提とすると、オペレータが確認するときに、これら複数の候補モデル画像47と識別対象領域(識別対象画像)42を比較しやすいように表示することは、当業者が自然に考えつくことである。そして、そのような「比較しやすいように表示」する具体的な方法として、引用発明において、2次元候補モデル画像47と識別対象領域(識別対象画像)42とを表示部39aに表示(出力)させる際に、2次元候補モデル画像47と識別対象領域(識別対象画像)42とを「対応付けて」表示部に出力することは当業者が適宜になし得ることである。
すなわち、補正発明1のように、作成した前記レンダリング画像を参照画像として、前記部分画像とを「対応付けて」前記画像表示部に出力することは当業者が容易になしえたことにすぎない。

以上のように、補正発明1の相違点1,2にかかる構成は、それぞれ当業者が容易に想到できることといえ、補正発明1の効果は当業者が容易に予測し得るものであるから、補正発明1は、刊行物1に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ.まとめ(独立特許要件)
以上のように、本件補正後の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび(補正却下)
以上のとおり、平成24年4月5日付けの手続補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正の却下の決定の結論のとおり、決定する。

第3 本願発明
平成24年4月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたから、本件出願の請求項1ないし請求項10に係る発明は、明細書及び図面(平成23年12月7日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項10に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
物体の形状データを格納する記憶部と、処理部と、画像表示部とを有する参照画像作成表示装置であって、
前記処理部は、
入力された画像から認識対象の物体を含む部分画像を抽出し、
前記画像の撮影条件情報を抽出し、
抽出した前記部分画像に基づき、前記記憶部から前記物体の形状データを選択して読み出し、
選択して読み出した前記物体の形状データと抽出した前記撮影条件情報とに基づき、前記物体のレンダリング画像を作成し、
作成した前記レンダリング画像を参照画像として、前記部分画像と対応付けて前記画像表示部に出力する
参照画像作成表示装置。」

第4 検討
1.刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である特開2002-133413号公報には、上記「第2 補正の却下の決定」「2.本件補正の適合性 」「(3)独立特許要件」「イ.刊行物の記載等」で述べたとおりの記載、および引用発明が記載されている。

2.対比・一致点・相違点
上記「第2 補正の却下の決定」「1.補正の内容」で述べたように、却下された平成24年4月5日付けの手続補正は、本願発明1の「前記撮影条件情報」を「前記撮影条件情報から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報」と補正するものであるが、この補正された点は「第2 補正の却下の決定」「2.本件補正の適合性 」「(3)独立特許要件」「ウ.対比」『(d)「選択して読み出した前記物体の形状データと抽出した前記撮影条件情報から算出される前記認識対象の物体の位置における撮影条件情報とに基づき、前記物体のレンダリング画像を作成し」』および「エ.一致点・相違点 」で述べたように、補正発明1と引用発明を比較した場合に[相違点1]となるものである。そうすると、この補正された点を欠く本願発明1と引用発明は、「第2 補正の却下の決定」「2.本件補正の適合性 」「(3)独立特許要件」「エ.一致点・相違点」で示した以下の[一致点」で一致し、[相違点2] として示されていた以下の[相違点]で相違するものである。

[一致点]
物体の形状データを格納する記憶部と、処理部と、画像表示部とを有する参照画像作成表示装置であって、
前記処理部は、
入力された画像から認識対象の物体を含む部分画像を抽出し、
前記画像の撮影条件情報を抽出し、
抽出した前記部分画像に基づき、前記記憶部から前記物体の形状データを選択して読み出し、
選択して読み出した前記物体の形状データと抽出した前記撮影条件情報とに基づき、前記物体のレンダリング画像を作成し、
作成したレンダリング画像を参照画像として、前記部分画像とを前記画像表示部に出力する
参照画像作成表示装置。

[相違点]
本願発明1は、前記レンダリング画像を参照画像として、前記部分画像と「対応付けて」前記画像表示部に出力するのに対し、引用発明は作成した前記候補モデル画像47と前記識別対象領域(識別対象画像)42とを表示部39aに表示するのに留まる点。

4.判断
上記したように、この[相違点]は、上記「第2 補正の却下の決定」「2.本件補正の適合性 」「(3)独立特許要件」「エ.一致点・相違点」で[相違点2] として示されていたものであるから、上記「第2 補正の却下の決定」「2.本件補正の適合性 」「(3)独立特許要件」「オ.相違点の判断等」で述べたように、上記[相違点]は、当業者が容易に想到できることといえ、本願発明1の効果は、そのような構成から当業者が容易に予測し得るものであるから、本願発明1は、刊行物1に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のように、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明にもとづいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2ないし請求項10に係る発明について特に検討をするまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-14 
結審通知日 2013-02-19 
審決日 2013-03-04 
出願番号 特願2007-201917(P2007-201917)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 真木 健彦  
特許庁審判長 松尾 淳一
特許庁審判官 奥村 元宏
千葉 輝久
発明の名称 参照画像作成表示装置  
代理人 ポレール特許業務法人  

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