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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1273068
審判番号 不服2012-8822  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-14 
確定日 2013-04-18 
事件の表示 特願2010-209911「携帯電子機器、表示制御方法及び表示制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月 3日出願公開、特開2011- 44157〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年9月30日にした特許出願(特願2003-342650号)の一部を平成20年3月25日に新たな特許出願(特願2008-77474号)とし、更に、当該特許出願の一部を平成22年9月17日に新たな特許出願としたものであって、平成24年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年5月14日に拒絶査定に対する審判が請求されたものである。
そしてその請求項1に係る発明は平成24年1月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。
「操作手段と、
所定の画像を標準画面として表示する表示手段と、
前記標準画面が前記表示手段に表示される際に、当該標準画面上にアプリケーションに対応付けられた第1種アイコンを表示させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記標準画面上に前記第1種アイコンが表示されている状態で、前記操作手段が操作されたとき、当該操作が前記第1種アイコンを選択する第1の操作である場合には選択された前記第1種アイコンに対応するアプリケーションに関する表示を行い、
前記操作が前記第1の操作とは異なる第2の操作である場合には前記標準画面として前記所定の画像を表示させたまま前記第1種アイコンを表示しない状態に変更する
ことを特徴とする携帯電子機器。」

2.引用刊行物
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「八島伸之,”快適操作を手に入れよう ピタリとハマる ランチャーカタログ”,Palm Magazine vol.18,日本,株式会社アスキー,第18巻,第48,49頁,2003.7.23」(以下、「引用刊行物」という。)には図面とともに以下の記載がある。
ア「ピタリとハマる ランチャーカタログ
Palmはランチャーを起点にさまざまな操作を行い、そしてまたランチャーに戻る。頻繁に訪れる場所だけに、操作性のよしあしを決定する最重要部分といっていい。自分の手になじむランチャーを見つけて、Palmを思いのままに操ろう。」(第48頁上部の見出し)

イ「ランチャーを置き換えて操作性をアップ!
ランチャー(ローンチャともいう)とは、アプリケーションなどを起動するソフトの総称だ。代表的なのはPalm OS標準のホーム画面だが、正直なところ高機能とは言えない。
例えば不要なアプリケーションを削除する場合、標準のホーム画面だと、いったん削除画面に切り替えて、リストからアプリケーションの名前を探し出してようやく削除を実行……といった具合に、たった1本削除するのに5回も6回も画面をタップしなければならない。ところが、高機能なランチャーを使えば、アプリケーションをゴミ箱にドラッグ&ドロップするだけで済んだり、誤って削除した場合もゴミ箱の中から取り出すことができる。さらには、よく使うアプリケーションやDAを簡単に起動したり、アイコンを含めたデザインを変更できるランチャーもある。Palmデバイスの小さな画面でもパソコンのような使い心地を実現してくれる-それが置き換えランチャーの一番の魅力なのだ。」(第48頁、上記見出しの下部)

ウ「1 画面置き換え系
標準のホーム画面を完全に「乗っ取る」タイプのランチャー。機能が豊富で、一度起動すると自動的にホームボタンに割り当てられるのが一般的だ。」(第48頁中段の見出し)

エ「YiShow Explorer for CLIE」(第49頁左欄第1行)

オ「「YiShow Explorer for CLIE」は、Palmデバイスをウィンドウズのエクスプローラーのような感覚で操作できるソフトだ。単にアプリケーションを起動するだけでなく、文書(DOC/MeDoc/テキスト)や画像(BMP/PCX/JPEG/Picture Gear Pocket)ファイルも閲覧することが可能。また、便利なのがショートカット機能。メモリーカード上のアプリケーションや文書/画像のショートカットを作っておけば、本体に保存しているのと同じ感覚で起動したり開いたりできる。」(第49頁左欄第4?10行)

カ「ショートカットを作る」(第49頁左下図の上部の記載)

キ「アイコンを2秒間押してから離すと操作メニューがポップアップし、ショートカットの作成や壁紙の設定ができる。壁紙だけでこんなに印象が変わる」(第49頁左下図の下部の記載)

ク 第49頁の左上図には、「アドレス」、「アプリケーション」、「メモ帳」、「予定表」等の18個のアイコンが表示画面に表示されている。

これら引用刊行物の記載から、引用刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「PalmデバイスにおいてPalm OS標準のホーム画面を完全に「乗っ取る」タイプのランチャーであって、複数のアイコンが壁紙上に表示され、単にアプリケーションを起動するだけでなく、文書(DOC/テキスト)、画像ファイルも閲覧することが可能な、ソフト。」

原査定において周知技術として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「Internet Explorer4.0応用編,ASCII DOS/V ISSUE 第3巻 第7号,日本,株式会社アスキー,第183-199頁,1997年7月01日」( 以下、「周知刊行物1」という。)には図面とともに以下の記載がある。
(拒絶査定において、文献5として引用された文献である。なお、拒絶査定の備考欄において文献5の引用頁が「86、87頁」と記載されているが、誤記であり、正しくは「186,187頁」である。(文献5は、拒絶査定の引用文献等一覧に、「第183-199頁」と記載され、当該文献は出願人に送付されており、誤記であることは明らかである。))
「ActiveDesktopを知り尽くして差を付けろ!
壁紙として画像はもちろんWebページなどを配置できるようになり、新たなデスクトップへと変身したActive Desktop。タスクバーの機能もより強化されている。ここではIE4.0でパワーアップしたデスクトップ関連の機能をくまなく紹介しよう!」(第186頁見出し及び、当該見出しの右側の記載)

「ActiveDesktopが動作しているとき,画面構成は画面2のようになる。デスクトップは下から順にHTML文書や画像を表示する「HTMLレイヤ」,マイコンピュータなどデスクトップ上のアイコンを表示する「アイコンレイヤ」,各アプリをウィンドウ表示する「アプリケーションウィンドウ」で構成されている。ActiveDesktopと通常のデスクトップの切り替えは,デスクトップの右クリックメニューにある「アクティブデスクトップ」で行なう。また,このメニュー内の「アイコンの表示」をクリックすると,ActiveDesktop動作時に限りアイコンレイヤを非表示に設定できる。レジストリを書き換えることなくデスクトップからアイコンを一掃することが可能なわけだ。」(第186頁中央欄第2段落?右欄第4行)

第187頁左欄の中央部には、画面の3つのレイヤが一部重ねて記載され、それぞれ、「ActiveDesktopの要となる画像やHTMLオブジェクトを表示するHTMLレイヤ」、「デスクトップ上のアイコンを表示するアイコンレイヤ」、「アプリケーションウィンドウ」と記載されている。

「シェルとブラウザが一体化したActiveDesktopの画面」(第187頁左欄の下部に記載された画面の下の記載)

「画面2 ActiveDesktopの画面構造
画面表示の優先度はHTMLレイヤがもっとも低く、アイコンやアプリはこの上に覆い被さるように表示される。また、HTMLレイヤは従来のデスクトップで壁紙が表示されていた部分で、壁紙はHTMLのバックグラウンドとして表示される。通常のデスクトップとActiveDesktopの切り替えは、何もない部分を右クリックし「アクティブデスクトップ」を選択して行う。」(第187頁右欄下方の白抜き文字の記事)

第187頁中央欄下部には、
_(レ)アクティブデスクトップ(A)
_(レ)アイコンの表示(H)
アイコンの整列(E)
貼り付け(P)
等の項目からなるメニューが表示され、当該メニューの上部には、
「デスクトップの右クリックメニューにある「アクティブデスクトップ」をクリックすることにより、ActiveDesktopと通常のデスクトップを切り替えることができる。」との説明が記載され、上記「アイコンの表示(H)」の項目から引き出された線の先には、
「ActiveDesktop時にこのチェックを切ると、デスクトップ上のアイコンを表示させないことが可能。」との説明が記載されている。

本願の出願日前に頒布された刊行物「Windowsの操作環境改善に役立つオンラインソフトたち、日経パソコン 第365号、第154?155頁、日経BP社、2000年7月10日」(以下、「周知刊行物2」という。)には図面とともに以下の記載がある。

「Windowsの操作環境改善に役立つオンラインソフトたち
OSだけでは実現できない操作性や見栄えを可能にする
Windows98のさまざまな標準機能を使って、自分にフィットするWindowsを作ることはできるが、Windowsだけで可能なことは所詮限られている。そこでお勧めなのが、オンラインソフトの利用だ。インターネットで容易に入手でき、かつ無料または極めて安価なこれらソフトを利用することで、さらにWindowsの操作環境をより自分に合ったものにカスタマイズできる。」(第154頁第1?7行)

「通り抜けループ98 シェアウエア(500円)
ウインドウに隠れたデスクトップを透かして見えるようにする」(第155頁下段の囲み記事、第1?3行)

「デスクトップ上のアイコンを操作するために、邪魔なウインドウを移動させたり最小化することはよくあるもの。そんな時「通り抜けループ98」を使えば、「ループ」という機能でウインドウに丸い穴を開けて、そこからデスクトップや裏にあるウインドウなどを操作できるようになる。
ループは2種類ある。「赤ループ」は、アクティブウインドウに穴を開けて、その裏にあるウインドウを表示する。「青ループ」は、壁紙まで貫通する穴を開けられる。
ループとは別に、デスクトップの隅にドラッグ可能なフレームが表示される。これをドラッグするとカーテンを開けるようにしてデスクトップを垣間見ることができる。
「壁紙愛好家モード」では、デスクトップに壁紙だけが表示される。マウスカーソルがウインドウやタスクバーにあるときはデスクトップのアイコンは表示されず、マウスカーソルがデスクトップに重なった時だけ現れる。」(第155頁下段の囲み記事,本文)

同じく本願の出願日前に頒布された刊行物「特表2000-507728号公報」(以下、「周知刊行物3」という。)には図面とともに以下の記載がある。
「1.発明の分野
本発明は、全般的には読まれる電子的なマテリアルの刊行および配布に関し、読まれる電子的なマテリアルを表示する方法および装置に関する。」(第5頁第4?6行)

「次に、第1図を参照するとわかるように、本発明の刊行・配布システム10は、送信局12と受信局14とを含む。送信局12は、ホスト・コンピュータ16、内容データベース18、データ・コンプレッサ20、データ暗号化装置24、モデム26、メモリ40を含む。受信局14は、ポータブル表示ユニット32および任意選択でパーソナル計算装置44に接続されたモデム30を含む。」(第8頁第6?10行)

「第2A図は、第1図の刊行・配布システム10で使用される本発明のポータブル表示ユニット32の一実施形態である。」(第9頁下から第2?1行)

「第4D図は、第4C図に示したように書店番号を入力したときに第2A図および第2B図の表示画面60上に表示される例示的な表示ページ60fを示す。仮想書店の電話番号を選択し、通信が確立されると、ポータブル表示ユニット32は、特定の仮想書店から得られる機能の概要を示す表示ページ60fを表示する。表示ページ60fは、オンライン広告を表示するウィンドウ170と、ユーザが、フィクション、ノンフィクション、伝記、歴史、参考文献、ビジネス資料、電子マガジン、新聞などの主要セクション・リストから選択するのを可能にするアイコン172とを含む。追加の機能を実行する「任意選択の機能」アイコン174も設けられる。また、複数のウィンドウ176が、ユーザによってすでに購入された書籍のパーソナル・ブックシェルフ・タイトルを表示する。「書店終了」アイコン177は、選択されると、ユーザがこのページ60fを終了することを可能にし、それに対して、「アイコン隠し」アイコン178は、ユーザが表示されているアイコンを隠すことを可能にする。」(第16頁第7?19行)

「第4H図は、第3B図に示した「書籍パージ」アイコン136を選択したときに第2A図および第2B図の表示画面60上に表示される例示的な表示ページ60jを示す。図のように、表示ページ60jは、ユーザが読むか、あるいは削除する書籍を選択することを可能にする。何冊かの書籍、たとえば、書籍C、D、Eが表示ページ60j上に表示される。各書籍C、D、またはEに隣接して2つのアイコン190および192があり、これらのアイコンは、選択されるとそれぞれ、表示されている書籍C、D、またはEを維持またはパージする。アイコン194は、表示されているアイコンを隠すことを可能にする。」(第17頁第13?20行)

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「アイコン」は、本願発明の「第1種アイコン」に相当する。
引用発明のPalmが市販の携帯型のPDAを意味していることは当業者にとって明らかであるから、引用発明の「Palmデバイス」は、本願発明の「携帯電子機器」に相当する。そして、引用発明に明示の記載はないが、引用発明のPalmデバイスが「操作手段」、「表示手段」を有していることは当然のことであり、引用発明のホーム画面を完全に乗っ取り表示されるランチャーが表示手段に表示されていることは明らかであって、表示されたランチャーは、本願発明の「標準画面」に相当し、引用発明の「壁紙」は、本願発明の「所定の画像」に対応する。
また、引用発明には明示の記載はないが、引用発明のPalmデバイスが、標準画面、アイコン等を表示する制御手段を有していることは当然である。
また、一般に、アイコンを選択する操作を行った場合に、当該アイコンに対応するソフトウエアが動作して、当該ソフトウエアに関する表示を行うことは当然のことであるから、引用発明は、アプリケーションに対応付けられた第1種アイコンが表示されている状態で、前記操作手段が操作されたとき、当該操作が前記第1種アイコンを選択する第1の操作である場合にはアプリケーションに関する表示を行っているということができる。

したがって、両者は
「操作手段と、
所定の標準画面を表示する表示手段と、
前記標準画面が前記表示手段に表示される際に、当該標準画面上にアプリケーションに対応付けられた第1種アイコンを表示させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記標準画面上に前記第1種アイコンが表示されている状態で、前記操作手段が操作されたとき、当該操作が前記第1種アイコンを選択する第1の操作である場合には選択された前記第1種アイコンに対応するアプリケーションに関する表示を行う、
ことを特徴とする携帯電子機器。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明は画像が標準画面として表示されるのに対して、引用発明の標準画面は、ユーザが設定可能な壁紙であるが、壁紙が画像であるのかどうか必ずしも明らかではない点。

相違点2
本願発明は、操作手段による操作が前記第1の操作とは異なる第2の操作である場合には前記標準画面として前記所定の画像を表示させたまま前記第1種アイコンを表示しない状態に変更するのに対し、引用発明には、第2の操作について記載がない点。

4.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
相違点1について
一般に壁紙として画像を使用することは周知であって、引用発明において標準画面として表示される壁紙を画像とすることは当業者が適宜になし得ることである。

相違点2について
表示されているアイコンを必要に応じて非表示とすることは、周知刊行物1(右クリックメニューにより、画像が表示された壁紙上のアイコンを表示させないようにすることが記載されている。)、周知刊行物2(マウスカーソルの位置に応じてデスクトップのアイコンを隠して壁紙を表示すること(壁紙愛好家モード)が記載されている。)、周知刊行物3(アイコンを隠すためのアイコンを設け、アイコンを隠すことが記載されている。)に記載されているように周知であって、当該周知技術を引用発明の第1種アイコンに適用して、操作手段による操作が前記第1の操作とは異なる第2の操作である場合には前記標準画面として前記所定の画像を表示させたまま前記第1種アイコンを表示しない状態に変更する ように構成することは当業者が容易になし得ることである。

なお、審判請求人は、審判請求書において、「引用発明1はランチャーであるため、アイコンを非表示とすると、ユーザに対してあたかもアプリケーションがアンインストールされたかのような印象を与えてしまうため、引用発明1において、ランチャー上に表示されたアイコンを所定の操作によって単に非表示とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項ではありません。」と主張している。しかしながら、引用刊行物のPalmデバイスにおいて、PalmOSの標準のホーム画面がランチャーであって(記載事項ア、イ)、引用発明は、当該標準画面を置き換えるものであるから(記載事項イ、ウ)、引用発明の(標準画面を置き換えて表示される)アイコンは、一般のコンピュータ等のデスクトップ(標準画面)に表示されるアイコン(周知刊行物1?3に記載されたアイコン)と何ら異なるものではないから、引用発明に周知技術を適用することに何ら困難性はなく、周知技術の適用を阻害する要因もないことは明らかである。
そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予想できる程度のものであって、格別のものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-15 
結審通知日 2013-02-19 
審決日 2013-03-04 
出願番号 特願2010-209911(P2010-209911)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 衣川 裕史  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 稲葉 和生
山田 正文
発明の名称 携帯電子機器、表示制御方法及び表示制御プログラム  

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