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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01R
管理番号 1273095
審判番号 無効2012-800131  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-08-27 
確定日 2013-04-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第4443793号発明「直流用検電器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4443793号(以下、「本件特許」という。)の請求項1から4までのそれぞれに係る発明は、平成13年6月14日に特許出願され、平成22年1月22日にその特許権の設定の登録がされた。
請求人は、平成24年8月27日付けで、本件特許の請求項1から4までのそれぞれに係る発明についての特許を無効にすることについて特許無効審判を請求した。
これに対し、被請求人は、同年11月7日付けで答弁書を提出した。
その後、請求人及び被請求人は、当審が同年12月11日付けで送付した審理事項通知書に対し、いずれも平成25年1月25日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、当審は、同年2月8日に第1回口頭審理を行った。

第2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1から4までのそれぞれに係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1から4までのそれぞれに記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。ただし、当審において、各請求項に記載された事項を構成要件に分節し、AからIまでの符号を付した。

「【請求項1】
A 絶縁筒の先端に取り付けられ、検電対象物に引掛け係止されることによりその検電対象物と電気的に接触する検電金具と、
B 前記絶縁筒の一部に設けられて検電金具と電気的に接続され、その検電金具を介して検電対象物の充電電圧を検出してその検電情報を報知する検出部と、
C その検出部を介して前記検電金具をアース接続するための接地線とを具備した直流用検電器において、
D 一端が前記検出部の制御電源に接続され、かつ、他端が前記接地線のアース導体への接続によりその接地線と電気的な短絡状態になる検出線を備え、
E その検出線により前記接地線の断線を検出可能とし、
F 前記接地線が接続された第一の端子金具と前記検出線が接続された第二の端子金具とを絶縁材を介して配設した接地端子により、前記第一の端子金具と前記第二の端子金具とをアース導体に電気的に接続可能としたことを特徴とする直流用検電器。
【請求項2】
G 前記検出線と制御電源との間に、接地線の断線を報知する表示手段を介挿したことを特徴とする請求項1に記載の直流用検電器。
【請求項3】
H 前記絶縁筒は、手動で長さ調整可能な複数本からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の直流用検電器。
【請求項4】
I 前記絶縁筒は、径の異なる複数本の絶縁筒を伸縮可能に連結した延竿式の絶縁筒群からなることを特徴とする請求項3に記載の直流用検電器。」

なお、以下では、本件特許の請求項1から4までのそれぞれに係る発明を、対応する請求項の番号を用いて「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという。また、本件特許発明1から4までをまとめて「本件特許発明」という。
また、本件特許発明を構成する「絶縁筒の先端に取り付けられ、検電対象物に引掛け係止されることによりその検電対象物と電気的に接触する検電金具」、「前記絶縁筒の一部に設けられて検電金具と電気的に接続され、その検電金具を介して検電対象物の充電電圧を検出してその検電情報を報知する検出部」などを、当審が付した符号を用いて、それぞれ「構成要件A」、「構成要件B」などということがある。

第3 請求人の主張
請求人は、本件特許発明は、いずれも、その特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって、同法第123条第1項第2号に該当すると主張する。そして、請求人は、証拠方法として、甲第1号証から甲第7号証までを審判請求書に添付して提出し、甲第8号証から甲第12号証までを口頭審理陳述要領書に添付して提出した。

1.請求人が提出した証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。いずれも、本件特許発明の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である。
ただし、甲第2号証の写しとして審判請求書に添付されたものは、「実開昭61-3476号公報」の写しではなく、「実願昭59-87253号(実開昭61-3476号)のマイクロフィルム」の写しである。同じく甲第3号証の写しとして添付されたものは、「実開平4-108315号公報」ではなく、「実願平3-15972号(実開平4-108315号)のマイクロフィルム」の写しである。

甲第1号証:特開2000-335286号公報
甲第2号証:実開昭61-3476号公報
甲第3号証:実開平4-108315号公報
甲第4号証:特開昭60-247174号公報
甲第5号証:特開2001-83203号公報
甲第6号証:特開2000-155148号公報
甲第7号証:「増補新版コネクタ最新技術」株式会社総合技術出版
(1987年4月10日発行)
第263、269及び281ページ
甲第8号証:特公昭56-54649号公報
甲第9号証:特開平7-153503号公報
甲第10号証:特開平10-309986号公報
甲第11号証:特開平9-331623号公報
甲第12号証:特開平5-94885号公報

2.本件特許発明を無効とすべき理由
審判請求書、口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書の内容を総合すると、本件特許発明を無効とすべき理由についての請求人の主張は、以下のとおりである。

(1)本件特許発明1について
本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明(以下、「甲第1発明」という。)又は甲第2号証に記載された発明(以下、「甲第2発明」という。)と、甲第3号証に記載された技術(以下、「甲第3技術」という。)又は甲第4号証に記載された技術(以下、「甲第4技術」という。)と、甲第5号証から甲第12号証までに記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ア.甲第1発明、甲第2発明、甲第3技術及び甲第4技術
甲第1発明は、構成要件AからCまでを備えている。
甲第3技術は、構成要件DからFまでを備えている。特に、構成要件Dに関し、甲第3技術の「主接触子2」が本件特許発明1の「アース導体」に相当する。また、構成要件Fに関し、甲第3技術の「固定接触部1」が本件特許発明1の「アース導体」に相当する。
甲第2発明は、甲第1発明と同様の発明であり、甲第4技術は、甲第3技術と同様の技術である。

イ.甲第1発明と甲第3技術との組み合わせの容易性
まず、甲第1発明と甲第3技術とは、いずれも接地装置に関するものであり、技術分野が同一である。
また、以下に述べるとおり、甲第1発明と甲第3技術とは、接地線の断線を検出するという課題についても共通する。

(ア)甲第1発明における断線検出の課題の示唆
甲第1号証には、断線を検出するという課題の明示的な記載はない。しかし、段落0010及び0017には、少なくとも「接地線5」を含めた形で接地確認をする必要があることが明示されている。そして、「接地線5」については、長いコードで構成されており、作業上さまざまな外的障害が発生し得ることが示唆されている(段落0010)。
また、接地装置において断線を検出するという課題自体は、甲第9号証に明示されており、一般的に断線を検出するという課題も、甲第5号証、甲第6号証及び甲第10号証から甲第12号証までに示されるとおり、本件特許発明の特許出願前に周知の事実であった。
以上を総合すれば、接地線について断線を検出するという課題は、甲第1号証においても示唆されているといえる。

(イ)甲第3技術における断線検出の課題の示唆
まず、前提として、本件特許発明における「接地線の断線を簡単かつ確実に検出し得る機能」(本件特許明細書、段落0008)は、「接地線を確実にアース接続する必要がある」(同、段落0006)ことを前提としており、断線検出と確実なアース接続の確認は表裏一体の関係を有している。
その上で甲第3号証の記載をみると、段落0001及び0005には、断線の有無も含めて確実なアース接続が確認できることが示唆されている。
また、甲第3号証で引用される甲第8号証(第1ページ右欄第26行から第35行まで)では、接地ブレード又はフインガーの損傷による接触状態の異常、すなわち電気的な断線が発生し得る事態が想定されている。
さらに、一般的に接地装置など電気機器において導線の断線の問題があり、これを検出する課題が恒常的に潜在していること自体は、甲第5号証、甲第6号証及び甲第9号証から甲第12号証までに示されるように、本件特許発明の特許出願前に周知の事実である。そのため、閉ループ回路による短絡の確認という課題が明示されている以上、断線検出は、甲第3技術でも当然に示唆されている課題である。

以上のとおり、甲第1発明と甲第3技術とは、技術分野が同一であり、課題についても共通しているから、甲第1発明と甲第3技術とを組み合わせることは、当業者にとって容易である。

ウ.周知事項
接地線の断線を閉ループ回路で検出する技術思想については、リード線の断線を含む劣化を検出する技術が甲第5号証に開示がある。また、リード線を複数の束としてワンタッチで接続可能な端子を備えた検知ソケットについては、甲第6号証に開示がある。
すなわち、リード線の断線を検出するため、閉ループ回路を形成することやワンタッチで検出可能な端子を備える構成は、本件特許発明の特許出願前に周知の事項であった。
さらに、第1及び第2の端子金具が絶縁材を介して配設されているコネクタ(構成要件F)については、甲第7号証に記載されているとおり、本件特許発明の特許出願前に種々の形態のものが存在しており、この点の技術は周知又は設計事項である。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、甲第1発明又は甲第2発明と、甲第3技術又は甲第4技術と、甲第5号証から甲第12号証までに記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち、甲第3技術は、さらに構成要件Gを備えている。
甲第1発明と甲第3技術とを組み合わせることが当業者にとって容易であることは、既に述べたとおりである。

(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、甲第1発明又は甲第2発明と、甲第3技術又は甲第4技術と、甲第5号証から甲第12号証までに記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち、甲第1号証の記載や、甲第1発明の従来技術が記載された甲第2号証の記載を参照すれば、甲第1発明は、さらに構成要件Hを備えている。
甲第1発明と甲第3技術とを組み合わせることが当業者にとって容易であることは、既に述べたとおりである。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、甲第1発明又は甲第2発明と、甲第3技術又は甲第4技術と、甲第5号証から甲第12号証までに記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち、甲第1号証の記載や、甲第1発明の従来技術が記載された甲第2号証の記載を参照すれば、甲第1発明は、さらに構成要件Iを備えている。
甲第1発明と甲第3技術とを組み合わせることが当業者にとって容易であることは、既に述べたとおりである。

第4 被請求人の反論
被請求人は、本件特許発明は、いずれも、その特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく、したがって、同法第123条第1項第2号に該当しないと主張する。
被請求人は、以下の証拠方法を答弁書に添付して提出した。

乙第1号証:被請求人長谷川電機工業株式会社製「直流1500V用検
電器 HVC-1.5N2型」カタログ
乙第2号証:甲第5号証に係る出願(特願平11-256198号)に
対する拒絶査定写し

第5 当審の判断
1.刊行物に記載された事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の記載がある。

ア.段落0001から0003まで
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電力作業における検電・接地作業に利用される検電器付き接地装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電力設備の保全・工事において、検電・接地作業は電力係員や電力作業に従事する作業員の命を守る重要な作業であり、また基本的な作業である。
【0003】電力作業では、き電線(トロリー線)を停電させ、そのき電線が停電していることを確認するための検電作業を行い、その検電後、前述のき電線に接地作業を行うことにより感電事故等の発生を未然に防止するようにしている。そして、その際、検電作業を行う場合、検電器を使用し、接地作業を行う場合、接地装置を使用するのが一般的であった。また、直流電車線路用の接地作業は、100mm^(2)の接地線を地上からき電線に引っかけて接地するようにしている。」

イ.段落0004から0007まで
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の電力作業においては、検電・接地作業を行う頻度が多いにも関わらず、検電作業に使用する検電器と接地作業に使用する接地装置が別々の装置であったため、誤って加圧線に対して接地する虞があり、非常に危険であった。
【0005】また、100mm^(2)もの太い接地線を地上から持ち上げ、き電線に引っかけ、接地していたため、接地線を地上から持ち上げてき電線に引っかけるのに相当の労力を要し、作業性が非常に悪かった。
【0006】更に、検電結果を知らせるLEDランプとブザーが検電器本体に取付けられていたため、…(略)…検電結果の確認が困難であった。
【0007】そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、作業の安全性を損なうことなく作業性を向上せしめ、しかも、明るい場所や騒音の多い場所での作業でも確実に検電結果および接地完了を確認できる検電器付き接地装置を提供することにある。」

ウ.段落0008から0010まで
「【0008】
【課題を解決するための手段】前述の目的を達成するための手段として、本発明は、フック状に成形してき電線に引っかけ易くした導体よりなる先端金具と、その先端金具の基端から延びる長尺の操作棒と、その操作棒の先端に上記先端金具と電気的に接続されて取付けられ、き電線の加圧の有無を検電する検電部と、上記先端金具に電気的に接続されて取付けられ、接地線の先端に取付けたジョイントを嵌合させて接地線を接続させるジョイント部と、上記操作棒の基端部分に取付けられ、電動ロープリールにて接地線吊り上げ用ロープを巻き取って上記接地線をジョイント部に吊り上げる接地線吊り上げ部とを具備したことを特徴とする。
【0009】また、本発明は、上記操作棒の基端部分に、上記検電部から無線で検電結果を知らせる報知部を設けたことを特徴とする。
【0010】また、本発明は、上記ジョイント部に、接地線の接続を検出して該接地線の接地完了を確認する接地確認部を取付け、その接地確認部から無線で上記報知部に接地完了を知らせるようにしたことを特徴とする。」

エ.段落0012から0020まで
「【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係る検電器付き接地装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】検電器付き接地装置は、図1に示すように、フック状に成形してき電線1に引っかけ易くした導体よりなる先端金具2と、その先端金具2の基端から延びる長尺の操作棒3と、その操作棒3の先端に先端金具2と電気的に接続されて取付けられ、き電線1の加圧の有無を検電する検電部4と、先端金具2に電気的に接続されて取付けられ、接地線5の先端に取付けたジョイント6を嵌合させて接地線5を接続させるジョイント部7と、そのジョイント部7に接続されて取付けられ、接地線5の接地を確認する接地確認部8と、操作棒3の基端部分に取付けられ、接地線5をジョイント部7に吊り上げる接地線吊り上げ部9と、操作棒3の基端部分に取付けられ、検電結果および接地完了を知らせる報知部10とから構成されている。
【0014】操作棒3は、1?1.5m程度の複数本、例えば3本の良質の絶縁材料、例えばFRP(繊維強化プラスチック)からなる絶縁パイプ3a,3b,3cを接続して所望長さに形成されている。
【0015】検電部4には、図2に示すように、先端金具2と電気的に接続された検電回路11と、その検電回路11に接続された無線送信回路12と、検電回路11に接続されたLED等からなる表示灯13とが設けられており、先端金具2の入力電圧にてき電線1の加圧の有無を検電回路11で検出し、その検電回路11の検知出力によりき電線1の充電状態を無線送信回路12で電波を送信するとともに表示灯13が点滅する。尚、図2において、14は検電回路11に接続されたテストスイッチで、これをONして検電テスト用の電池15の電圧を検電回路11に印加させることにより、検電回路11および無線送信回路12が正常に作動するか否かをテストする。16は検電部4の検電回路11から導出された検電用接地線で、先端に設けた接地金物17で地上側に接地する。
【0016】ジョイント部7には、嵌合孔を有するジョイントホルダ18が設けてあり、そのジョイントホルダ18の嵌合孔に接地線5の先端に取付けたジョイント6を嵌合させて接地線5を接続させる。
【0017】接地確認部8には、図3に示すように、ジョイント部7のジョイントホルダ18に接地線5の先端に取付けたジョイント6が嵌合された状態でONする近接スイッチ19とその近接スイッチ19に接続された無線送信回路20と、電源電池21とが設けられており、ジョイント部7のジョイントホルダ18に接地線5の先端に取付けたジョイント6が嵌合されると、近接スイッチ19がONして接地線5の接地状態を無線送信回路20で無線送信する。
【0018】接地線吊り上げ部9は接地線吊り上げ用ロープ22を引出し可能に巻取る電動ロープリール23を設け、その電動ロープリール23から引出した接地線吊り上げ用ロープ22の先端をジョイント部7の上端部に回転自在に設けられたプーリ24を通してから接地線5の先端に取付けたジョイント6に接続しており、電動ロープリール23で接地線吊り上げ用ロープ22を巻き取ることにより接地線5を吊り上げてその先端をジョイント部7に接続させる。この接地線吊り上げ部9の上部にはロープロック部25が設けられており、このロープロック部25にて接地線吊り上げ用ロープ21をロックさせる。
【0019】報知部10には、図4に示すように、検電部4の無線送信回路12からの電波を受信する無線受信回路26と、その無線受信回路26と接続された発振回路27と、その発振回路27と接続されたLED等からなる検電ランプ28および警報ブザー29と、無線受信回路26と接続されたリレーコイル30と、そのリレーコイル30および接地線吊り上げ部9の電動ロープリール23と接続され、無線受信回路26からリレーコイル30へ電圧が印加されるとOFFして電動ロープリール23への電源供給をストップする安全スイッチ31と、接地確認部8の無線送信回路20からの電波を受信する無線受信回路32と、その無線受信回路32と接続された発信回路33と、その発信回路33と接続されたLED等からなる接地ランプ34とが設けられている。
【0020】接地線5の基端には接地金具35が設けられており、この接地金具35を地上側に接地させる。」

オ.段落0021から0023まで
「【0021】上記構成からなる検電器付き接地装置の使用要領を次に述べる。
【0022】先ず、図5に示すように、検電部4にあるテストスイッチ14をONして検電回路11および無線送信回路12が正常に作動するか否かをテストした後、検電部4から導出された検電用接地線16の接地金具17および接地線5の接地金具35をレール36を介して地上側に接地するとともに、操作棒3の先端にある先端金具2をき電線1に引っかける。このとき、報知部10の検電ランプ27が点灯していないこと、および警報ブザー28が鳴っていないことを確認した上で、接地線吊り上げ部9の電動ロープリール23を作動して接地線吊り上げ用ロープ22を巻き取り、接地線5を吊り上げる。そして、図6に示すように、接地線5を吊り上げてその先端に取付けたジョイント6がジョイント部7のジョイントホルダ18に嵌合されると、接地確認部8の近接スイッチ19がONして無線送信回路20が電波を送信し、この電波を報知部10の無線受信回路32が受信して発振回路33を介して接地ランプ34を点灯する。この接地ランプ34の点灯で接地が完了したことを確認した後、接地線吊り上げ用ロープ22をロープロック部25にて固定して接地が外れることのないようにする。
【0023】また、操作棒3の先端にある先端金具2をき電線1に引っかけたときにそのき電線1が加圧されていれば、先端金具2、検電回路11、検電用接地線16、接地金具17、地上の経路で電流が流れ、その電流で表示灯13を点滅する。それと同時に、無線送信回路12が電波を送信し、この電波を報知部10の無線受信回路26が受信して発振回路27を介して検電ランプ28を点滅し、警報ブザー29を鳴動する。また、リレーコイル30が働いてスイッチ31をOFFし、接地線吊り上げ部9の電動ロープリール23への電源供給をストップして電動ロープリール23の作動を不可能にする。このとき、接地線吊り上げ部9のスイッチを押しても電動ロープリール23は作動しないので、加圧線を誤って接地する危険がなくなる。」

上記ア.の記載によれば、電力作業を行う場合は、まず、き電線が停電していることを確認するために検電器を使用して検電作業を行い、その後、感電事故等の発生を防止するために、接地装置を使用して前記き電線の接地作業を行う。そして、従来は、検電作業に使用する検電器と接地作業に使用する接地装置とが別々の装置だったので、誤って加圧線を接地するおそれがあった(上記イ.)。甲第1号証に記載された「検電器付き接地装置」は、その名のとおり、検電器と接地装置とを一体化することにより、このおそれを取り除いたものである。
この「検電器付き接地装置」で検電作業を行うには、「き電線1」に引っかけた「先端金具2」から「検電回路11」、「検電用接地線16」、「接地金具17」及び「レール36」を経て地上に至る電流経路を流れる電流の有無を検知する(上記オ.)。また、接地作業を行うには、「先端金具2」に電気的に接続して取り付けた「ジョイント部7」に設けた「ジョイントホルダ18の嵌合孔」に、「接地線5」の先端に取り付けた「ジョイント6」を嵌合させることにより、「き電線1」に引っかけた「先端金具2」から「ジョイント部7」、「ジョイント6」、「接地線5」、「接地金具25」及び「レール36」を経て地上に至る電流経路を形成する(上記エ.(特に段落0013、0016及び0020)及びオ.(特に段落0022))。
このように、甲第1号証に記載された「検電器付き接地装置」において、検電作業に使用する電流経路と、接地作業に使用する電流経路とは、「先端金具2」を共有するだけで、それ以外は互いに独立しているから、検電作業に使用する電流経路を含む部分を「検電器」として、また、接地作業に使用する電流経路を含む部分を「接地装置」として、それぞれ把握することができる。
以上のことを踏まえて、上記ア.からオ.までの記載と図1から6までに示された事項とを総合すると、甲第1発明(甲第1号証に記載された発明)は、以下のとおりのものである。

「フック状に成形してき電線1に引っかけ易くした導体よりなる先端金具2と、
前記先端金具2の基端から延びる長尺の操作棒3であって、3本の絶縁パイプ3a、3b、3cを接続して形成された操作棒3と、
前記操作棒3の先端に、前記先端金具2と電気的に接続されて取り付けられ、き電線1の加圧の有無を検電する検電部4であって、前記先端金具2と電気的に接続された検電回路11と前記検電回路11に接続された無線送信回路12及び表示灯13とが設けられた検電部4と、
前記操作棒3の基端部分に取り付けられた報知部10であって、前記無線送信回路12からの電波を受信する無線受信回路26と前記無線受信回路26に接続された発信回路27と前記発信回路27に接続された検電ランプ28及び警報ブザー29とを含む報知部10と、
前記検電回路11から導出された検電用接地線16と、
前記検電用接地線16の先端に設けた接地金具17とを備える直流電車線路用検電器であって、
前記先端金具2を前記き電線1に引っかけたときに当該き電線1が加圧されていると、前記先端金具2から前記検電回路11、前記検電用接地線16、前記接地金具17及びレール36を経て地上に電流が流れ、その電流で前記表示灯13が点滅すると同時に、前記無線送信回路12が電波を送信し、前記無線受信回路26が前記電波を受信して前記発信回路27を介して前記検電ランプ28を点滅させ、前記警報ブザー29を鳴動させる直流電車線路用検電器。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の記載がある。

ア.明細書第1ページ第18行から第2ページ第5行まで
「[産業上の利用分野]
本考案は電車の架線の電圧を検出するために用いる架線検電器の改良に関するものである。
[従来技術]
一般に、電車の架線を点検、修理、張り換え等を行うときには、先ず電源を停電させて架線に電圧がかかっていないことを検電器を用いて確認しなければならない。」

イ.明細書第5ページ第2行から第7ページ第10行まで
「[実施例]
次に、本考案の実施例を図面により詳細に説明する。第1図において、1は地上に居る作業者の手から架線の高さに届く程度の長さを有する中空棒状の絶縁材からなる操作棒で、この操作棒は上、中、下3段の単位操作棒1a、1b、1cに分割して構成され、各単位操作棒の隣接するもの同士は直径をやや異にして一方を他方に嵌入可能に結合して、伸縮可能に形成されている。1dは操作棒1を図示のように伸長したとき、各単位操作棒を相互に固定するロック部材である。2は操作棒1の先端部に固着されたフック金具、3は操作棒1の基端側に取付けられた電圧表示器である。この電圧表示器は、電圧分圧用抵抗及び該抵抗の分圧電圧をデジタル量に変換するアナログ-デジタル変換器を内蔵し、該変換器の出力により架線電圧を表示するデジタル表示器3aを備えている。4はキャップタイヤコード5を介して電圧表示器3の接地入力端に接続された第2図におけると同様の接地用具である。6は単位操作棒1aの中空部内でフック金具2に一端が接続された電圧降下用高抵抗(抵抗値20MΩ)、7は単位操作棒1a内で適宜の長さで一端が高抵抗5(当審注:「高抵抗6」の誤り。)の他端に接続されたリード線、8は操作棒1の中空部内に配設されて一端がリード線7の他端に接続され、他端が電圧表示器3の入力端、即ち前記分圧用抵抗の一端に接続された導電材からなる螺旋形のスプリングワイヤである。このスプリングワイヤは操作棒1の長さ方向に伸縮自在であり、第1図に示したように操作棒1を伸長させたときはその長さに応じて伸長し、ロック部材1を緩めて操作棒1を短縮したときは操作棒1の基端側に短縮された状態になる。
以上のように構成された架線検電器により架線電圧を測定するには、作業者は地上に居て接地用具4をレールに固着させてのち、操作棒1を第1図のように伸長状態にして、隣接する単位操作棒相互をロック部材1dにより固定し、操作棒1の基端側を把持して所要の検電すべき架線にフック金具2を引っ掛ける。これにより、架線電圧は高抵抗6、リード線7、及びスプリングワイヤ8を介して電圧表示器3の内部の分圧用抵抗にかかり、該抵抗の両端に分圧電圧を生ずる。この分圧電圧に応じてアナログ-デジタル変換器が動作してデジタル信号を出力し、このデジタル信号に応じて電圧表示器3の表示部3aに架線電圧がデジタル表示される。所要の架線電圧の測定が終れば、ロック部材1dを緩めて操作棒1を短縮して携帯する。」

上記ア.及びイ.の記載と第1図に示された事項とを総合すると、甲第2発明(甲第2号証に記載された発明)は、以下のとおりのものである。

「互いに直径が異なる上、中、下3段の単位操作棒1a、1b、1cを、隣接するもの同士の一方が他方に嵌入できるように結合することにより、伸縮可能に形成された操作棒1と、
前記操作棒1の先端部に固着されたフック金具2と、
前記操作棒1の基端側に取り付けられた電圧表示器3と、
キャップタイヤコード5を介して前記電圧表示器3の接地入力端に接続された接地用具4と、
前記フック金具2と前記電圧表示器3の入力端との間に直列に接続された電圧降下用高抵抗6、リード線7及びスプリングワイヤ8とを備えた架線検電器。」

(3)甲第3号証
甲第3号証には、以下の記載がある。

ア.段落0001から0005まで
「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、接地装置が投入されたときに、被接地物が電気的に確実に接地されたかどうかを確認する、接地装置の導通確認装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
送電線や変電機器の点検、部品交換などの保守作業を実施する場合は、作業者の感電事故を防止するために、その周辺の開閉器類を開放して課電を停止した後、さらにこれらの機器に付属した接地装置を投入して、電気的な安全性を確保してから、所定の作業を行うようにしている。
【0003】
このため、従来接地装置の投入確認は、目視確認やリミットスイッチにより接地ブレードの機械的動作位置の確認の他、次のように構成された導通確認装置によってなされている。
【0004】
接地装置の固定接触部側に、主接触子の他に主接触子が接地ブレードと完全に接触した後に接触するように構成した検出用補助接触子をもうける。またこれに対向して、接地ブレード側の先端に、接地ブレードと絶縁された検出接点をもうける。この検出接点と、接地ブレードの大地に接地される接地点との間に、検出用信号電流の注入と投入確認が表示できる表示部をもうけ、検出接点、表示部、接地点の各間をケーブルで電気的に接続する。
【0005】
このように構成された導通確認装置では、接地装置が完全に投入されると、表示部、ケーブル、検出接点、検出用補助接触子、主接触子、接地ブレード、接地点、ケーブル、表示部というように電気的な閉回路が形成される。このため、表示部から注入する検出用信号電流が環流することによって、電気的な導通により投入確認がなされる(例えば、特公昭56-54649号公報参照)。」

イ.段落0010から0016まで
「【0010】
【実施例】
図1は本考案装置の実施例を示す図である。図2の(a)は、図1において接地ブレード3が、固定接触部1の主接触子2内に投入された状態、すなわち、接地ブレード3が一点鎖線Aの位置に起立した状態で、図1のXーX方向からみた平面図である。図2の(a)は、接地ブレード3が投入完了位置に達した状態を図示しているのに対し、図2の(b)は、接地ブレード3が固定接触部1の主接触子2に接し始めた状態を図示している。
【0011】
以下図1について説明する。1は被接地物となる図示しない変電機器の導電部に取り付けられた、接地装置の固定接触部である。2は固定接触部1にもうけられた主接触子である。3は主接触子に対向してもうけられた接地ブレードである。接地ブレード3は、図示しない操作軸によって、図1内に示す矢印の範囲内で起伏動作することができる。また図1は、接地ブレード3が開放した状態を示した図であり、図1内に示した一点鎖線Aの位置が接地ブレードの投入完了位置である。4は接地ブレード3と、大地の接地点5との間を、電気的に接続する接地リード線である。
【0012】
6は接地ブレード3の先端部に、固定接触部1の主接触子2に対向する位置にもうけた検出用接触子で、6aはこの検出用接触子6の接点位置である。この検出用接触子6の接点位置6aは、図2の(a)ならびに(b)に示すように、主接触子2に対し接地ブレード3が投入完了位置に達したときに、初めて主接触子2に接するような長さLに設定してある。またこの検出用接触子6の主接触子2に対する接触圧力は、主接触子2と接地ブレード3との間の、主接点部の接触状態に悪影響を及ぼさないように充分小さな圧力にしてある。7は接地ブレード3と検出用接触子6との間を、電気的に絶縁する絶縁物である。8は検出用信号電流の注入と、検出用信号電流の還流により投入確認が表示できる表示部である。9は表示部8と検出接点7(当審注:「検出用接触子6」の誤り。)との間を、また10は、表示部8と接地点5との間をそれぞれ電気的に接続するケーブルである。
【0013】
このように構成された本考案装置の実施例の動作を以下に説明する。
図1は接地ブレード3が開放状態にある。この状態では、接地ブレード3と検出用接触子6との間は、絶縁物7で電気的に絶縁されたままであり、表示部8から注入された検出用信号電流は還流しないため、表示部8は投入表示作動しない。
【0014】
今この状態から、図示しない操作装置と操作軸によって、接地ブレード3を反時計方向に回動起立させていくと、図2の(b)に示すように最初に主接触子2と接地ブレード3とが接し始める。まだこの状態では、検出用接触子6は主接触子2に接しておらず、接地ブレード3と検出用接触子6との間は、依然として絶縁物7で絶縁されたままであるため表示部8は投入表示作動しない。ただし、主接触子2と接地ブレード3は接触し始めているため、被接地物に誘導電圧などがある場合は、これによる電荷を接地ブレード3、接地リード線4、を介して大地に接地放電し、誘導電圧などからの表示部8への悪影響をなくすることができる。
【0015】
次に接地ブレード3が、さらに回動して図1に示す一点鎖線Aの位置、すなわち投入完了位置に達すると、図2の(a)に示すように、検出用接触子6の接点位置6aは主接触子2に接触する。このとき同時に、表示部8、ケーブル9、検出用接触子6、主接触子2、接地ブレード3、接地リード線4、接地点5、ケーブル10、表示部8という電気的な閉回路が形成され、表示部8から注入された検出用信号電流が還流して電気的な導通確認がなされ、被接地物が接地装置によって確実に大地に接地されたことが表示部8で表示される。
【0016】
また、このように接地ブレード3が、投入完了位置まで動作し導通確認が得られた状態では、固定接触部1、主接触子2、接地ブレード3、接地リード線4、大地との接地点5、という接地経路が形成されて、被接地物は大地に確実に接地される。」

上記ア.及びイ.の記載と図1及び2に示された事項とを総合すると、甲第3技術(甲第3号証に記載された技術)は、以下のとおりのものである。

「被接地物に取り付けられた固定接触部1に設けられた主接触子2と、前記主接触子2に対向して設けられ、起伏動作可能な接地ブレード3と、前記接地ブレード3と大地の接地点5とを電気的に接続する接地リード線4とを備えた接地装置において、
前記接地ブレード3の先端部の前記主接触子2に対向する位置に、前記接地ブレード3との間を電気的に絶縁する絶縁物7を介して、検出用接触子6を設け、前記検出用接触子6と表示部8とをケーブル9で電気的に接続し、前記表示部8と前記接地点5とをケーブル10で電気的に接続して、導通確認装置を設け、
前記接地ブレード3が起立して投入完了位置に達したときに前記検出用接触子6が前記主接触子2に接触し、前記表示部8、前記ケーブル9、前記検出用接触子6、前記主接触子2、前記接地ブレード3、前記接地リード線4、前記接地点5、前記ケーブル10、前記表示部8という電気的な閉回路が形成され、前記表示部8から注入された検出用信号電流が環流して電気的な導通確認がなされ、前記固定接触部1、前記主接触子2、前記接地ブレード3、前記接地リード線4、前記接地点5という接地経路が形成されて、前記被接地物が前記接地装置によって確実に大地に接地されたことが前記表示部8で表示されるようにする。」

(4)甲第4号証
甲第4号証には、以下の記載がある。

ア.第1ページ右下欄第5行から第7行まで
「「産業上の利用分野」
本発明は、接地装置の動作状態を電気的に確認する装置に関する。」

イ.第1ページ右下欄第8行から第14行まで
「「従来の技術」
送電線路等において送電機器の点検や部品取替などの保守作業においては、開閉器類を開放したのち接地装置により接地を実施してから作業に入るのであるが、従来は手動にて接地装置を駆動し、接地状態を目視により確認してから作業を開始していた。」

ウ.第1ページ右下欄第15行から第20行まで
「「発明が解決しようとする問題点」
ところが最近は接地装置も遠方から動力操作されるものが多くなり、また接地装置そのものも耐環境などの観点から絶縁物やタンク内に密封保護されるようになり、目視にて接地状態を確認するのが困難となってきた。」

エ.第2ページ左上欄第1行から左下欄第13行まで
「「問題点を解決するための手段および実施例」
本発明はかかる問題点に鑑み提案されるもので、つぎに本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第1図は起伏形接地装置の例で、接地ブレード1が操作軸2を中心として回転起伏することにより、接地ブレード1先端の主接触子3が固定接触子4と接触することにより電路5は接地ブレード1を介して接地される。
主接触子3には絶縁板6を介して補助接触子7が取付けられている。
補助接触子7には絶縁リード線8の一端が接続されて居り、接地ブレード1の内部または接地ブレード1の表面に沿って引出されている。従って、接地ブレード1先端が接地装置の固定接触子4内に挿入されて、閉路状態になると、主接触子3-固定接触子4-補助接触子7の間で、電気回路をシリーズに構成するようになる。
「発明の構成」
つぎに第2図について検出部Dおよび表示部Pの構成を説明する。
検出部DにおいてOSCは信号用高周波電源で、その端子a、bを通じて共振用コンデンサC、共振用インダクタンスHMTおよび検出用抵抗R0がそれぞれ直列に接続されている。
ここで共振用インダクタンスHMTは結合用変圧器を兼ねており、その2次側には高周波信号電流注入用の貫通形変流器CTの一次側が接続されている。
該貫通形変流器CTの二次側の一端は接地ブレード1に接続され、同じく二次側の他端は絶縁リード線8の先端とともに接地してある。
前記検出用抵抗R0の両端には検出レベル調整用の電圧設定抵抗R1と増幅器Aの一次側が直列に接続してある。
該増幅器の二次側には補助リレーAuxRyを接続し、該補助リレーAuxRyの接点には表示用の電源eと表示ランプL1が直列に接続してある。
「作用」
今までに説明した構成において、接地装置の閉路状態で主接触子3と補助接触子7との間に固定接触子4を介して導通が得られれば、接地ブレード1の回路は1ターンの短絡回路を構成することになる。このため端子a、bから短絡インピーダンスに反比例する信号電流is0が得られる。
接地ブレード1が閉路状態にあっても、導通が得られない場合や、開放状態にある場合は、主接触子3と補助接触子7との間はオープン回路となる。このため端子a、bから流れ込む電流は、共振用インダクタンスHMTの励磁電流is1となり検出抵抗R0を流れる高周波電流の値が変化する。したがって電流の変化分is0-is1の値を検出用抵抗R0の両端で検出することによって接地装置の導通状態が確認できる。」

上記ア.からエ.までの記載と第1図及び第2図に示された事項とを総合すると、甲第4技術(甲第4号証に記載された技術)は、以下のとおりのものである。

「電路5に設けられた固定接触子4と、先端に主接触子3が設けられ、大地に接続された、回転起伏する接地ブレード1とを備えた起伏形接地装置において、
前記主接触子3に絶縁板6を介して補助接触子7を取り付け、前記補助接触子7と大地との間を絶縁リード線8で接続し、
前記起伏形接地装置の閉路状態で前記主接触子3と前記補助接触子7との間に前記固定接触子4を介して導通が得られるか否かを検出して、前記起伏形接地装置の導通状態を確認する。」

(5)甲第5号証
甲第5号証には、以下の記載がある。

ア.段落0001から0003まで
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電力ケーブルの活線劣化診断方法および診断用装置に関し、特にはCVケーブルと称される、架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの活線状態での絶縁劣化を診断する方法および診断用装置に関し、さらに詳しくは活線劣化診断における診断用リード線を含む診断用装置の断線の有無をチェックする方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電力ケーブルの絶縁材料、特に高分子化合物の絶縁材料は使用中に経年変化によりその絶縁特性が劣化する。CVケーブルでは、主に水トリーによる劣化が起こることが知られており、絶縁破壊による事故を未然に防止するため、活線状態で絶縁劣化の度合いを診断する方法が、例えば特開昭59-202074号および特開昭59-202075号等に開示されている。これらの方法は、劣化診断を行う電力ケーブルの遮蔽層とアースの間に、遮蔽層側とアース側の2本の診断用リード線を介して診断装置を接続し、水トリー等の絶縁体の劣化部分によりCVケーブルの遮蔽層を流れる電流の直流成分の大きさおよび極性を診断装置で測定して、水トリー等の大きさおよび位置を検知するものである。
【0003】しかしながら、上記の診断に用いる診断用リード線には、接続作業や柱上への装架作業の引きまわしの際に張力等の機械的負荷が加わるため、導体部分の断線が生じやすくなる。診断用リード線およびそれと協同する活線劣化診断装置に断線が起こると、診断装置に測定電流が流れず、測定対象である電力ケーブルが劣化していないとの誤った判断がなされ、診断全体が無効なものとなる。これを防止するため、診断用リード線の断線の有無をチェックする種々の方法が提案されてきた。特に、図3にその概要を示す、特開平7-260849号に開示されているような、活線劣化診断のために診断用リード線を柱上に装架し、CVケーブルの遮蔽層に接続して、絶縁劣化診断の直前に診断用リード線の断線をその場でチェックすることが行われている。この方法では、診断対象の電力ケーブルの遮蔽層18とアースの間に、診断用リード線17および17’を介して活線劣化診断装置11を接続し、CVケーブルの遮蔽層18から見て診断用リード線17および17’、診断装置11とは並列に断線チェック装置12を挿入して、診断用リード線17および17’、活線劣化診断装置11と共に閉回路を構成して、断線チェック装置12の直流電源13から直流電圧を印加し、抵抗器14に応じて閉回路に流れる直流電流を測定することにより、診断用リード線17および17’の断線チェックを行っていた。」

イ.段落0009から0011まで
「【0009】
【発明の実施の形態】以下本発明に係る、活線劣化診断装置の断線チェック方法および装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1および図2は、本発明に係る活線劣化診断装置の断線チェック装置による断線チェックの実施の一例を示す、一部をブロック化した活線劣化診断と断線チェックの説明図である。図1の例では、断線チェック装置は活線劣化診断用リード線とは直列に、在来品と同様の活線劣化診断装置とは並列に接続され、一つの筐体内に一体化して組み込まれている。図2の例では、断線チェック装置は活線劣化診断用リード線とは直列、在来品と同様の活線劣化診断装置とは直列に接続され、一つの筐体内に一体化して組み込まれている。
【0010】図1において、活線劣化診断装置1内に組み込まれた断線チェック装置2は、直流電源3、抵抗器4、スイッチ5および直流電流計6を直列に配置した、断線チェック回路を含んで構成されている。また活線劣化診断の遮蔽層側診断用リード線7およびアース側診断用リード線7’が、活線状態で劣化診断を行う診断対象ケーブルの遮蔽層8、既設接地線9、および活線劣化診断装置1内に組み込まれた断線チェック装置2と共に接続されて閉回路を構成し、断線チェック装置2が診断用リード線7および7’とは直列、活線劣化診断装置1とは並列に接続されている。上記の構成により、図1に示された断線チェック装置を用いて、診断対象のCVケーブルの絶縁劣化診断に先だち、それに用いる診断用リード線7の断線チェックが実施される。そのため活線下において既設接地線9はオフにしたまま、断線チェック装置2のスイッチ5をオフにすると、診断対象ケーブルの遮蔽層8に接続された、診断用リード線7および7’、断線チェック装置2が既設接地線9と共に閉回路を構成する。このとき、断線チェック装置2が含む直流電源3により、直流電圧を印加して上記閉回路に流れる電流を直流電流計6で測定することで、診断用リード線7および7’の断線の有無が判明する。即ち、断線がなければ断線チェック装置2の抵抗器4の値に応じた電流が上記の閉回路に流れ、断線があれば上記の閉回路に流れる電流は0となる。本発明の図1の断線チェック装置2は活線劣化診断装置1とは並列に接続され、かつスイッチ5を含んでいるので、活線劣化診断時にはそのスイッチ5を開放にすることにより、きわめて容易に断線チェック装置2を活線劣化診断装置1から切り離すことができる。このため、断線チェック用の抵抗器4の値は断線チェックの目的のためのみに随意に選択することができ、直流電源3は携帯と入手の便を考え1.5Vの乾電池としてもよく、適宜必要に応じ選択することができる。
【0011】図2において、活線劣化診断装置1の断線チェック装置2は、直流電源3、抵抗器4、スイッチ5および直流電流計6を直列に配置した、断線チェック回路を含んで構成されている。また活線劣化診断の診断用リード線7および7’が、活線状態で劣化診断を行う診断対象ケーブルの遮蔽層8、既設接地線9、および活線劣化診断装置1と共に接続されて閉回路を構成し、断線チェック装置2が診断用リード線7および7’、活線劣化診断装置1と直列に接続されている。上記の構成により、図2に示された断線チェック装置を用いて、診断対象のCVケーブルの絶縁劣化診断に先だち、それに用いる診断用リード線7および活線劣化診断装置1の断線チェックが実施される。そのため活線下において既設接地線9はオフにしたまま、断線チェック装置2のスイッチ5を断線チェック装置側に切り替えると、診断対象ケーブルの遮蔽層8に接続された診断用リード線7と、活線劣化診断装置1および断線チェック装置2が既設接地線9と共に閉回路を構成する。このとき、断線チェック装置2が含む直流電源3により、直流電圧を印加して上記閉回路に流れる電流を測定することで、診断用リード線7および活線劣化診断装置1の断線の有無が判明する。即ち、断線がなければ断線チェック装置2の抵抗器4の値に応じた電流が上記の閉回路に流れ、断線があれば上記の閉回路に流れる電流は0となる。本発明の図2の断線チェック装置2は活線劣化診断装置1とは直列に接続され、かつスイッチ5を含んでいるので、活線劣化診断時にはそのスイッチ5を診断装置側に切り替えることにより、きわめて容易に断線チェック装置2を活線劣化診断装置1から切り離すことができる。このため、断線チェック用の抵抗器4の値は断線チェックの目的のためのみに随意に選択することができ、直流電源3は携帯と入手の便を考え1.5Vの乾電池としてもよく、適宜選択することができる。」

(6)甲第6号証
甲第6号証には、以下の記載がある。

ア.段落0001から0003まで
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般には、例えば架空配電線の無停電バイパス工法などで使用されるバイパスケーブルなどのような、遮蔽層の断線を検知することのできる検知機能付きケーブルに関し、特に、斯かる検知機能付きケーブルに設けられた検知コネクタに接続して検知線の断線を検出するための断線測定用リード線及び断線検出器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えばバイパスケーブルなどには、保安上の観点とケーブル性能確保の観点から外部半導電層の上に遮蔽層が施されている。通常、この遮蔽層は直径0.12mm?0.20mm程度の細径銅線(金属素線)を織り込んだ編組構造とされ、使用中にケーブルに加わる繰り返しの曲げ、張力、捻回などの外力に耐え得るよう構成されている。例えば、図11に示すように、複数の細径銅線21を束ねて1単位とした集合体22と綿糸23とを用い、集合体22を一方向に配列し、これと交差する方向に綿糸23を織り込んだ交織編組を採用するケースが多い。
【0003】遮蔽層の金属素線21が全て断線すると、断線箇所から遠方は非接地となり、大変危険である。そのため、一部の金属素線21に断線が生じた段階でこれを検知することが望ましい。」

イ.段落0008
「【0008】ケーブルが外力を受けて遮蔽編組層3における金属素線9の断線が進展すると、それに伴ってエナメル線10も断線する。…(略)…」

ウ.段落0019
「【0019】検知線10の外径は、金属素線9と同時か、より早く断線するように最適な値を選択する。検知線10の外径をd、金属素線9の外径をDとしたとき、d/Dを0.5?2.0とすることが好ましい。ケーブル使用中の外力による遮蔽編組層3の断線は、延性破断によるものと、疲労破断によるものとが混在している。延性破断に対してはdの値が小さいほど、疲労破断に対してはdが大きいほど断線し易くなる。延性破断が支配的な使用条件では、d/Dを0.5以上とし、疲労破断が支配的な使用条件ではd/Dを2.0以下とするのがよい。」

(7)甲第7号証
甲第7号証には、「深海用/ハーメチックコネクタ」、「原子力用コネクタ」及び「MCコネクタ」に関する記載がある。

(8)甲第8号証
甲第8号証には、以下の記載がある。

ア.第1ページ左欄第27行から第29行まで
「本発明は断路器等の接地装置の投入確認装置に関し、従来よりさらにその信頼性を高めたものである。」

イ.第1ページ左欄第30行から第33行まで
「一般に発変電所等における電気機器の保修、点検、線路作業等には、作業対称電機器及び周辺の電気機器の荷電を停止した後、接地装置を投入し、作業者の安全を確保することが必要である。」

ウ.第1ページ右欄第26行から第36行まで
「そこで本発明は上記従来技術の欠点に鑑み、検出用接点を接地装置本体の接地ブレード、フインガー接触部のなかに設けることにより、接地ブレードの損傷には、接地ブレードのなかに設けた検出用接点も、接地ブレードと同様の損傷を受けることにより検出し、フインガー接触部の損傷には、前期の検出用接点によりこの接地装置の接地回路そのものの接触状態を検知することによって確認するようにしたもので、従来方式のすべての欠点を解消した信頼度100%とも言える確認装置の提供である。」

エ.第2ページ左欄第2行から右欄第4行まで
「第1図において、大地に据え付けられた架台1上にベース2が固着され、このベース2にこの場合図示しない断路器の一部を構成する支持碍子4が、その上端に端子台3を固着して立設されている。5は前記端子台3と図示しない負荷側の機器及び線路とを接続する外部電線である。また、6はベース2に固着された支持金具で、この金具6に操作軸8が回転可能に支持されて、この操作軸8に固着された接地ブレード7が当該操作軸8の回動によって起伏する。そこで、フインガー接触部Fは第2図ないし第6図を参照して説明すると、接地ブレード7にはその先端部分のブレードの内部に、絶縁物9により絶縁された検出用接点10が組込まれており、この接点から第5図に示すように接地ブレード7の中空部を通したケーブル11と第1図に示すように大地よりのケーブル11aにより接地装置の投入状態を表示する表示器12に接続されている。一方、フインガー14は、第3図に詳示するように、前記端子台3に固着されたフインガー支え13に、他のフインガーより短く作られた検出用フインガー15とともに支持され、かつ、電気的に接続されている。
このように構成された本実施例装置の動作を以下に説明する。
第1図に破線で示すように接地ブレード7が倒れている状態では検出用接点が開放状態にあるので、表示器の動作はない。今この状態から図示しない操作機構により操作軸8を第1図で反時計方向に回動すると操作軸8に固着された接地ブレード7も一体となつて回動し起立し始める。接地ブレード7は最初にフインガー14に接し、誘導電圧等がある場合はこれによる電荷を接地放電し、これによる影響をなくする。次いで検出用フインガー15に接触するがこの検出用フインガーの長さは、検出用ブレード接点が検出用フインガーに接触した時、これがこの接地装置の投入完了位置になるように短く作られているので、接触したことによつて投入位置が確認される。ここで、外部電線5、端子台3、フインガー支え13、フインガー14、接地ブレード7、操作軸8、支持金具6、ベース2及び架台1を順に経た大地へ至る回路が形成されて機器又は線路が接地される。この時同時に、ケーブル11より検出用ブレード接点10、検出用フインガー15、フインガー支え13、フインガー14、接地ブレード7を通して大地へ至る、この接地装置の設置回路の接触状態の検出回路が構成される(第5図参照)。」

(9)甲第9号証
甲第9号証には、以下の記載がある。

ア.段落0002及び0003
「【0002】
【従来の技術】各種の電気機器や設備を接地する場合、従来では大地に深い縦孔または長い溝状の横孔を掘削し、この孔に導電性金属からなる接地体を埋め込み、土質を埋め戻す方法がとられている。…(略)…
【0003】
【発明が解決しようとする課題】大地に埋設された接地体は、長期間の使用中に腐食が進行し、やがて断線を起こす可能性がある。接地体が断線すると、断線個所から先の部分は接地に寄与しなくなるため、接地性能が低下する。…(略)…」

イ.段落0011から0013まで
「【0011】接地体3は良導電性の材質からなり、大地1に対して電気的に導通する主たる接地部材であり、例えば銅その他の金属導体、またはセメントとカーボンを混合した導電コンクリート等により棒状に形成されている。…(略)…
【0012】…(略)…
【0013】接地体3…(略)…は、その各基端部が大地1の表面から適当な長さだけ露出している。そして、接地体3の基端部は各種の電気機器や設備などの接地対象8の接地端子に接続される。…(略)…」

(10)甲第10号証から甲第12号証まで
甲第10号証には、「灯火系断線検出装置」、特に「大型車等のストップランプ、ターンランプ等の増灯時のランプ断線検出に有効な機能を発揮する灯火系断線検出装置」(段落0001)に関する発明が記載されている。
甲第11号証には、「負荷機器の接地線の断線を検出して検出結果を報知する接地検出装置」(段落0001)に関する発明が記載されている。ここで、「負荷機器」とは、例えば「モータ等」(段落0002)である。
甲第12号証には、「例えば、ランプの断線を検出して表示したり、断線後に無用な電力が消費されないように回路への給電を遮断する等の用途に広く適用することができる」「断線検出回路」(段落0001)に関する発明が記載されている。

2.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲第1発明とを対比すると、以下のとおりである。

甲第1発明の「直流電車線路用検電器」は、本件特許発明1の「直流用検電器」に相当する。

甲第1発明の「き電線1」は、本件特許発明1の「検電対象物」に相当する。
甲第1発明の「フック状に成形してき電線1に引っかけ易くした導体よりなる先端金具2」は、本件特許発明1の「検電対象物に引掛け係止されることによりその検電対象物と電気的に接触する検電金具」に相当する。
甲第1発明の「長尺の操作棒3であって、3本の絶縁パイプ3a、3b、3cを接続して形成された操作棒3」は、本件特許発明1の「絶縁筒」に相当する。
甲第1発明の「前記先端金具2の基端から延びる長尺の操作棒3」は、「先端金具2」が「操作棒3」の先端に取り付けられていることを意味するから、本件特許発明1の「絶縁筒の先端に取り付けられ[た]…検電金具」に相当する。
したがって、甲第1発明の「フック状に成形してき電線1に引っかけ易くした導体よりなる先端金具2」及び「前記先端金具2の基端から延びる長尺の操作棒3であって、3本の絶縁パイプ3a、3b、3cを接続して形成された操作棒3」は、全体として、本件特許発明1の「絶縁筒の先端に取り付けられ、検電対象物に引掛け係止されることによりその検電対象物と電気的に接触する検電金具」に相当する。

甲第1発明において「き電線1の加圧の有無を検電」することは、本件特許発明1において「検電対象物の充電電圧を検出」することに相当する。
甲第1発明の「き電線1の加圧の有無を検電する検電部4であって、…検電回路11と前記検電回路11に接続された無線送信回路12及び表示灯13とが設けられた検電部4」と「報知部10であって、前記無線送信回路12からの電波を受信する無線受信回路26と前記無線受信回路26に接続された発信回路27と前記発信回路27に接続された検電ランプ28及び警報ブザー29とを含む報知部10」とは、「前記先端金具2を前記き電線1に引っかけたときに当該き電線1が加圧されていると、前記先端金具2から前記検電回路11…を経て…電流が流れ、その電流で前記表示灯13が点滅すると同時に、前記無線送信回路12が電波を送信し、前記無線受信回路26が前記電波を受信して前記発信回路27を介して前記検電ランプ28を点滅させ、前記警報ブザー29を鳴動させる」のであるから、互いに協働して「き電線1の加圧の有無を検電」し、その結果を報知するものである。したがって、全体として、本件特許発明1の「検電対象物の充電電圧を検出してその検電情報を報知する検出部」に相当する。
甲第1発明の「検電部4」が「前記先端金具2と電気的に接続され[た]…検電部4であって、前記先端金具2と電気的に接続された検電回路11…が設けられた検電部4」であることは、本件特許発明1の「検出部」が「検電金具と電気的に接続され、その検電金具を介して…充電電圧を検出…する検出部」であることに相当する。
甲第1発明の「検電部4」が「操作棒3の先端に…取り付けられ[た]…検電部4」であり、「報知部10」が「操作棒3の基端部分に取り付けられた報知部10」であることは、本件特許発明1の「検出部」が「前記絶縁筒の一部に設けられ[た]…検出部」であることに相当する。
したがって、甲第1発明の「前記操作棒3の先端に、前記先端金具2と電気的に接続されて取り付けられ、き電線1の加圧の有無を検電する検電部4であって、前記先端金具2と電気的に接続された検電回路11と前記検電回路11に接続された無線送信回路12及び表示灯13とが設けられた検電部4」及び「前記操作棒3の基端部分に取り付けられた報知部10であって、前記無線送信回路12からの電波を受信する無線受信回路26と前記無線受信回路26に接続された発信回路27と前記発信回路27に接続された検電ランプ28及び警報ブザー29とを含む報知部10」は、全体として、本件特許発明1の「前記絶縁筒の一部に設けられて検電金具と電気的に接続され、その検電金具を介して検電対象物の充電電圧を検出してその検電情報を報知する検出部」に相当する。

甲第1発明の「前記検電回路11から導出された検電用接地線16」は、「前記先端金具2を前記き電線1に引っかけたときに当該き電線1が加圧されていると、前記先端金具2から前記検電回路11、前記検電用接地線16…を経て地上に電流が流れ」るから、本件特許発明1の「その検出部を介して前記検電金具をアース接続するための接地線」に相当する。

甲第1発明の「前記検電用接地線16の先端に設けた接地金具17」は、本件特許発明1の「前記接地線が接続された第一の端子金具…を…配設した接地端子」に相当する。

甲第1発明の「レール36」は、本件特許発明1の「アース導体」に相当する。

以上のことをまとめると、本件特許発明1と甲第1発明とは、

「A 絶縁筒の先端に取り付けられ、検電対象物に引掛け係止されることによりその検電対象物と電気的に接触する検電金具と、
B 前記絶縁筒の一部に設けられて検電金具と電気的に接続され、その検電金具を介して検電対象物の充電電圧を検出してその検電情報を報知する検出部と、
C その検出部を介して前記検電金具をアース接続するための接地線とを具備した直流用検電器において、
F’前記接地線が接続された第一の端子金具を配設した接地端子により、前記第一の端子金具をアース導体に電気的に接続可能としたことを特徴とする直流用検電器。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1は、「一端が前記検出部の制御電源に接続され、かつ、他端が前記接地線のアース導体への接続によりその接地線と電気的な短絡状態になる検出線」を備え、「その検出線により前記接地線の断線を検出可能」であり、しかも、「他端が前記接地線のアース導体への接続によりその接地線と電気的な短絡状態になる」ようにするために、「接地端子」に「検出線が接続された第二の端子金具」を設け、「第一の端子金具」と「第二の端子金具」とを「絶縁材を介して配設」することにより、「第一の端子金具」と「第二の端子金具」とを「アース導体に電気的に接続可能」にしているのに対し、甲第1発明は、「検出線」も「第二の端子金具」も備えていない点。

構成要件で表現すれば、本件特許発明1と甲第1発明とは、構成要件AからCまでと構成要件F’とを備えている点で一致する。そして、両者は、本件特許発明1が構成要件Dと構成要件Eと構成要件Fのうち構成要件F’に含まれない部分とをさらに備えているのに対し、甲第1発明がこれらの構成要件を欠いている点で相違する。
なお、請求人が主張する一致点・相違点も、おおむね上記のとおりである(審判請求書7.(5)(5-1)イ、第6ページ)。被請求人も、この点は争っていない(答弁書7(3)、第13ページ第3行以下)。

(2)相違点1についての判断(その1)-請求人の主張の検討
ア.技術分野について
請求人は、甲第1発明と甲第3技術とは、いずれも接地装置に関するものであり、技術分野が同一であると主張するので、検討する。
上記1.(1)で述べたとおり、甲第1号証の記載(上記1.(1)ア.)によれば、電力作業を行う場合は、まず、き電線が停電していることを確認するために検電器を使用して検電作業を行い、その後、感電事故等の発生を防止するために、接地装置を使用して前記き電線の接地作業を行う。そして、従来は、検電作業に使用する検電器と接地作業に使用する接地装置とが別々の装置だったので、誤って加圧線を接地するおそれがあった(上記1.(1)イ.)。甲第1号証に記載された「検電器付き接地装置」は、その名のとおり、検電器と接地装置とを一体化することにより、このおそれを取り除いたものである。
したがって、甲第1号証において、検電作業に使用する検電器と接地作業に使用する接地装置とは、互いに異なる作業に使用する別個の装置として認識されている。そして、甲第1発明は、甲第1号証に記載された「検電器付き接地装置」のうち、検電作業に使用する電流経路を含む部分を「検電器」として把握したものであるから、「接地装置」の発明ではなく、「検電器」の発明である。
一方、甲第3号証の記載(上記1.(3)ア.)によれば、甲第3技術は、送電線や変電機器の保守作業を実施する際の感電事故を防止するために、課電を停止した後、電気的な安全性を確保するために投入される「接地装置」に関する技術である。したがって、甲第3技術は、「接地装置」に関する技術であり、「検電器」に関する技術ではない。
そして、「検電器」と「接地装置」とは、いずれも大地へと至る電流経路を備えているが、それぞれの電流経路は、両者の使用目的の違いを反映して技術的に異なる特徴を有している。
すなわち、「検電器」の発明である甲第1発明の「先端金具2」から「検電回路11」、「検電用接地線16」、「接地金具17」及び「レール36」を経て地上に至る電流経路は、高い電圧の測定に使用されるので、電流制限用の高抵抗を含み、比較的小さい電流が流れる。
一方、甲第3技術の前提となる「接地装置」の「主接触子2」から「接地ブレード3」及び「接地リード線4」を経て「大地の接地点5」に至る電流経路は、被接地物と大地とを直接接続するために使用されるので、低抵抗であり、大電流を速やかに流すことができる。同じことは、甲第1号証に記載された「検電器付き接地装置」のうち、「接地装置」として把握できる部分の電流経路についてもいえる。すなわち、「先端金具2」から「ジョイント部7」、「ジョイント6」、「接地線5」、「接地金具25」及び「レール36」を経て地上に至る電流経路は、接地作業に使用されるので、低抵抗であり、大電流を速やかに流すことができる。
このように、「検電器」の発明である甲第1発明と甲第3技術の前提となる「接地装置」とは、それぞれの電流経路に互いに正反対ともいえる技術的特徴を有する別個の装置である。したがって、甲第1発明と甲第3技術とは、いずれも接地装置に関するものであり、技術分野が同一であるという請求人の主張は、採用することができない。

なお、「検電器」の発明である甲第1発明と甲第3技術の前提となる「接地装置」とが、それぞれの電流経路に上述の特徴を有していることは、当審が指摘し(審理事項通知書1.(1)及び(2))、請求人も認めるところである(第1回口頭審理調書、請求人2)。

イ.課題について
請求人は、甲第1発明と甲第3技術とは、接地線の断線を検出するという課題についても共通すると主張するので、検討する。
まず、本件特許発明における「断線」の意味について検討し、次いで、上記の課題が、甲第1号証及び甲第3号証に記載されているかについて検討する。

(ア)「断線」の意味
本件特許明細書には、そもそも「断線」とはどのような状態又は現象かという点について、特段の記載がない。したがって、本件特許発明における「断線」は、その通常の意味に解釈することが妥当である。
そこで、本件特許発明の特許出願前における「断線」の通常の意味を検討するために、甲号各証の記載を参照すると、甲第5号証の段落0003には、診断用リード線に張力等の機械的負荷が加わって導体部分の断線が生じると測定電流が流れなくなる旨の記載がある(上記1.(5)ア.)。甲第6号証の段落0002、0003及び0008には、ケーブルに繰り返しの曲げ、張力、捻回などの外力が加わると遮蔽層の金属素線が断線する旨の記載がある(上記1.(6)ア.及びイ.)。甲第9号証には、腐食の進行により大地に埋設された接地体が断線する旨の記載がある(上記1.(9)ア.)。
これらの記載から、「断線」は、機械的負荷や腐食によって導体(リード線、金属素線、接地体)に電流が流れなくなる現象であることが分かる。
さらに、甲第6号証の段落0019には、断線が延性破断や疲労破断によるものである旨の記載がある(上記1.(6)ウ.)。また、一般的な用語としての「断線」は、「線、特に電線が切れること。」(広辞苑第六版)とされている。
そうすると、「断線」の通常の意味は、「機械的負荷や腐食によって導体が切れて電流が流れなくなる現象」であると認められる。
本件特許明細書には、「検電器の取り扱い等が起因して接地線が断線することがある。」という記載(段落0007)や、「接地線が断線していると、…閉ループ回路が形成されない」(つまり、電流が流れない)という記載(段落0010)がある。これらの記載から、本件特許発明における「断線」も、上記の通常の意味で用いられていると認められる。

(イ)甲第1号証における課題の記載
請求人は、甲第1号証に断線を検出する課題の明示的な記載がないことを認めている。その上で請求人は、甲第1号証の段落0005、0010及び0017の記載(上記1.(1)イ.からエ.まで)を引用して、甲第1号証には、少なくとも接地線を含めた形で接地確認をする必要性が明示されていると主張し、また、その接地線は、長いコードで構成されており、作業上さまざまな外的障害が発生しうることが示唆されていると主張する(口頭審理陳述要領書5.(4)、第4ページ)。
しかし、甲第1号証の上記引用箇所に記載された「接地線」は、甲第1発明の「検電用接地線16」ではない。請求人も認めるとおり(第1回口頭審理調書、請求人3)、この「接地線」は、「接地線5」であるから、甲第1号証に記載された「検電器付き接地装置」のうち、「検電器」ではなく、「接地装置」として把握される部分の電流経路を構成するものである。
また、甲第1号証の上記引用箇所には、太い接地線を地上から持ち上げてき電線に引っ掛ける際の作業性の悪さや、接地線の「接続」を検出して接地完了を確認することについての記載はあるが、断線に関する記載は見当たらない。そもそも「接地線5」は、大電流を速やかに流すという目的(上記ア.)のために「100mm^(2)もの太い接地線」(上記1.(1)イ.、段落0005)とされているのであり、そのような太い「接地線5」の断線を想定することは、技術的にみて不自然である。
したがって、請求人が主張するように、接地装置において断線を検出するという課題が甲第9号証に記載されているとしても、また、一般的に断線を検出するという課題が、甲第5号証、甲第6号証及び甲第10号証から甲第12号証までに記載されるように周知の事実であったとしても、甲第1号証の上記引用箇所の記載からは、甲第1発明の「検電用接地線16」が断線する可能性や、その断線を検出する必要性が、甲第1号証に記載されていると認めることはできない。

なお、請求人の主張とは別に、甲第5号証に記載された「活線劣化診断装置1」についてさらに検討すると、この装置は、「診断対象ケーブルの遮蔽層8」から「遮蔽層側診断用リード線7」、「活線劣化診断回路1’」及び「アース側診断用リード線7’」を経て「アース」に至る電流経路を備えている。この電流経路は、高い電圧がかかっている電線から測定回路を経て大地に至る点で、甲第1発明の電流経路と共通する。
そして、甲第5号証に記載された「活線劣化診断装置1」では、電力ケーブルの絶縁材料の劣化を診断するために、この電流経路を流れる電流の直流成分の大きさ及び極性を測定する(上記1.(5)ア.及びイ.)。この測定は、高い電圧がかかっている電線から大地に至る電流経路を対象にしている点で、甲第1発明における測定(検電、具体的には電圧測定)と共通する。
さらに、「遮蔽層側診断用リード線7」及び「アース側診断用リード線7’」には、「断線」が発生する旨の記載がある(上記1.(5)イ.)。ここで、「アース側診断用リード線7’」は、「アース」に接続されているから、「接地線」ということができる。
したがって、甲第5号証には、電流経路及び測定対象について甲第1発明(検電器)との共通点を有する装置(活線劣化診断装置)において、接地線に断線が発生する旨の記載がある。
しかし、甲第5号証に記載された「活線劣化診断装置1」は、「検電器」そのものではない。また、甲第5号証の記載から、活線劣化診断装置だけでなく、電流経路及び測定対象について検電器との共通点を有する装置一般において、接地線の断線を検知することが、本件特許発明の特許出願前に周知の課題であると認めることもできない。したがって、甲第5号証の記載を参酌しても、甲第1発明の「検電用接地線16」が断線する可能性や、その断線を検出する必要性が、甲第1号証に記載されていると認めることはできない。

(ウ)甲第3号証における課題の記載
甲第3号証に、断線を検出する課題の明示的な記載はない。
請求人は、本件特許明細書の段落0006及び0008の記載を引用して、断線検出と確実なアース接続の確認は表裏一体の関係を有すると主張する。そして、請求人は、第1に、甲第3号証の段落0001及び0005の記載(上記1.(3)ア.)を引用して、甲第3号証には、断線の有無も含めて確実なアース接続が確認できることが示唆されていると主張する。第2に、甲第3号証で引用される甲第8号証の第1ページ右欄第26行から第36行までの記載(上記1.(8)ウ.)を引用して、接地ブレード又はフインガーの損傷による接触状態の異常、すなわち電気的な断線が発生することが想定されていると主張する。第3に、一般的に接地装置など電気機器において導線に断線の問題があり、これを検出する課題が恒常的に潜在していること自体は、本件特許の特許出願の前に周知の事実であるから、閉ループ回路による短絡確認という課題が明示されている以上、断線の検出は、甲第3技術でも当然に示唆されている課題であると主張する(口頭審理陳述要領書5.(2)、第2ページから第3ページまで)。
しかし、請求人の主張は、以下に述べるとおり、採用することができない。
第1に、請求人が主張するように、甲第3号証の上記引用箇所には、接地装置が完全に投入されたことを、導通確認装置を用いて確認することが記載されている。しかし、甲第3号証の段落0004に「主接触子が接地ブレードと完全に接触した後に接触するように構成した検出用補助接触子を設ける。」(上記1.(3)ア.)と記載されているように、その確認とは、具体的には「主接触子」と「接地ブレード」との「接触」の確認である。
第2に、甲第8号証の記載も、「接地ブレード」と「フインガー」との「接触」に異常が発生するというものである。
第3に、請求人が主張するように、電気機器一般における導線の断線検出の課題が恒常的に潜在しているとしても、それは、甲第3号証に接した当業者がそのような課題を現実のものとして認識することを意味しない。当業者が課題を解決しようとするには、その前提として、その課題を現実のものとして認識する必要がある。請求人は、閉ループ回路による短絡確認という課題が甲第3号証に明示されている以上、断線を検出する課題が甲第3号証に記載されていると主張する。しかし、閉ループ回路が形成されない原因が「断線」に限らないことは、甲第3号証及び甲第8号証に記載されているとおりである。また、甲号各証の記載を参照しても、「接地ブレード」と「主接触子」又は「フインガー」との「接触」における異常を、「断線」と同一視することができる根拠を見いだすことができない。
したがって、請求人が主張するように、接地装置において断線を検出するという課題が甲第9号証に記載されているとしても、また、一般的に断線を検出するという課題が、甲第5号証、甲第6号証及び甲第10号証から甲第12号証までに記載されるように周知の事実であったとしても、甲第3号証及び甲第8号証の上記引用箇所の記載からは、接地装置における断線の可能性や、その断線を検出する必要性が、甲第3号証に記載されていると認めることはできない。

(エ)課題についてのまとめ
以上のとおりであるから、甲第1発明と甲第3技術とは、接地線の断線を検出するという課題についても共通するという請求人の主張は、採用することができない。

ウ.甲第3技術の構成要件について
請求人は、甲第3技術が構成要件DからFまでを備えていると主張する。特に、甲第3技術の「主接触子2」及び「固定接触部1」が本件特許発明1の「アース導体」に相当すると主張する(口頭審理陳述要領書5.(1)イ、第2ページ、及び5.(3)イ、第4ページ)。そこで、この相当関係を認めることができるかという点を中心に、請求人の主張の妥当性を検討する。
なお、甲第3技術では、「主接触子2」が「固定接触部1」に設けられているので、電気的な接続の観点からは、「主接触子2」と「固定接触部1」とを同一視することができる。したがって、以下では、「主接触子2」と「固定接触部1」とを区別せず、「主接触子2」で両者を代表させることにする。
まず、本件特許発明における「アース導体」の意味について検討し、次いで、甲第3技術が構成要件DからFまでを備えているかについて検討する。

(ア)「アース導体」の意味
本件特許明細書には、「接地端子36をアース導体である、例えば電鉄沿線のレール38上に置く」という記載(段落0026)がある。したがって、「レール38」が「アース導体」に該当することは明らかであるが、そもそも「アース導体」とは何かという点については、特段の記載がない。そうすると、本件特許発明における「アース導体」は、その通常の意味に解釈することが妥当である。
そこで、本件特許発明の特許出願前における「アース導体」の通常の意味を検討するために、甲号各証の記載を参照する。
まず、甲第1号証の段落0022には、「検電用接地線16の接地金具17および接地線5の接地金具35をレール36を介して地上側に接地する」という記載がある(上記1.(1)オ.)。また、甲第2号証の第6ページ第16行から第17行までには、「接地用具4をレールに固着させて」という記載がある(上記1.(2)イ.)。さらに、甲第9号証の段落0011から0013までには、大地に埋設した良導電性の「接地体3」を「接地対象8の接地端子」に接続する旨の記載がある(上記1.(9)イ.)。
これらの記載とは別に、例えば「マグローヒル科学技術用語大辞典改訂第3版」株式会社日刊工業新聞社(2000年3月15日発行)によれば、「接地」とは、「回路の一部あるいは機器の架台などを大地と同電位に保つために、地中に設けた埋設導体と導線で結ぶこと。」である。
甲第1号証、甲第2号証及び甲第9号証の上記記載と、大地と同電位に保つという「接地」の目的と、「接地」には一般に「地中に設けた埋設導体」が用いられるという事実とを踏まえれば、「アース導体」の通常の意味は、「大地と同電位の導体」であると認められる。
本件特許明細書において、「レール38」が「アース導体」に該当するとされていることは、「アース導体」が「大地と同電位の導体」であるという上記解釈と整合する。したがって、本件特許発明における「アース導体」も、上記の通常の意味で用いられていると認められる。

(イ)構成要件Dについて
甲第3技術では、「前記接地ブレード3が起立して投入完了位置に達したときに前記検出用接触子6が前記主接触子2に接触」する。甲第3号証の段落0012の記載(上記1.(3)イ.)から明らかなように、「接地ブレード3」は、このとき既に「主接触子2」に接触している。そして、その結果、「前記表示部8、前記ケーブル9、前記検出用接触子6、前記主接触子2、前記接地ブレード3、前記接地リード線4、前記接地点5、前記ケーブル10、前記表示部8という電気的な閉回路が形成され」る。すなわち、「ケーブル9」に接続された「検出用接触子6」は、「接地ブレード3」の「主接触子2」への接続により、当該「接地ブレード3」と電気的に接続される。
以上のことを、構成要件Dと対比するために言い換えると、甲第3技術の「ケーブル9」は、「一端が表示部8に接続され、かつ、他端(検出用接触子6)が接地ブレード3の主接触子2への接続によりその接地ブレード3と電気的な短絡状態になるケーブル9」である。
請求人は、この「ケーブル9」が構成要件Dに相当すると主張する(口頭審理陳述要領書5.(1)、第2ページ)。
しかし、請求人の主張は、以下に述べるとおり、採用することができない。
上記(ア)で検討したとおり、本件特許発明1における「アース導体」は、「大地と同電位の導体」である。甲第3技術の「ケーブル9」が構成要件Dに該当するためには、その前提として、「主接触子2」が「大地と同電位の導体」でなければならない。
ところが、甲第3技術では、「主接触子2」とは別に「接地点5」が存在する。この「接地点5」は、大地との接続点であるから、「アース導体」を備えていることが明らかである。そして、「主接触子2」は、「接地ブレード3が起立して投入完了位置に達」することで、その「接地ブレード3」及び「接地リード線」によって「接地点5」と接続されることになる部材である。したがって、「主接触子2」は、「アース導体」に接続される接地対象(被接地物)であって、「アース導体」ではない。
このことは、甲第3号証の段落0011に、「主接触子2」が「被接地物となる…変電機器の導電部」に取り付けられている旨の記載(上記1.(3)イ.)があることからも明らかである。さらに、甲第8号証の第2ページ左欄第2行から第24行までには、甲第3技術の「主接触子2」に相当する「フインガー」が「負荷側」に接続されている旨の記載がある(1.(8)エ.)。この記載からも、甲第3技術の「主接触子2」は、大地と同電位にある「アース導体」ではなく、反対に、大地とは異なる電位にある部材であることが明らかである。
以上のとおりであるから、甲第3技術は、構成要件Dを備えているとはいえない。

(ウ)構成要件Eについて
甲第3技術では、「前記表示部8、前記ケーブル9、前記検出用接触子6、前記主接触子2、前記接地ブレード3、前記接地リード線4、前記接地点5、前記ケーブル10、前記表示部8という電気的な閉回路が形成され、前記表示部8から注入された検出用信号電流が環流して電気的な導通確認がなされ」る。したがって、仮に「接地ブレード3」又は「接地リード線4」で断線が発生すれば、原理的には、それを検出することが可能である。
しかし、上記イ.(ウ)で述べたとおり、「接地ブレード3」や「接地リード線4」に断線が発生する可能性やその断線を検出する必要性は、甲第3号証に記載されていると認めることができない。そうすると、甲第3技術によって断線を検出することが原理的に可能であることを、事後的に理解することはできるとしても、甲第3号証の記載から、「その検出線により前記接地線の断線を検出可能に」する技術として、甲第3技術を把握することはできない。
したがって、甲第3技術は、構成要件Eを備えているとはいえない。

(エ)構成要件Fについて
甲第3技術では、「前記接地ブレード3の先端部の前記主接触子2に対向する位置に、前記接地ブレード3との間を電気的に絶縁する絶縁物7を介して、検出用接触子6を設け」ている。
これを、構成要件Fと対比するために言い換えると、甲第3技術では、「接地ブレード3の先端部とケーブル9が接続された検出用接触子6と絶縁物7を介して配設した端子により、前記先端部と前記検出用接触子6とを主接触子2に電気的に接続可能」である。
請求人は、「主接触子2」が「アース導体」に相当することを前提に、この構成が構成要件Fに相当すると主張する(口頭審理陳述要領書5.(3)、第3ページ)。
しかし、上記(イ)で述べたとおり、「主接触子2」が「アース導体」に相当するという請求人の主張は、採用することができない。
したがって、甲第3技術は、構成要件Fを備えているとはいえない。

(オ)「主接触子2」から「アース導体」への変更について
請求人は、甲第3技術の「主接触子2」が「アース導体」ではない点について、「なお固定接触部1が「アース」導体でないとしても、ケーブル4により接地されているといえるし、この程度の差異は当業者において設計事項といえる。」(審判請求書7.(5)(5-1)ウ(ア)f、第7ページ)と主張する。
しかし、「主接触子2」が「接地リード線4」により接地されているのは、接地装置が投入された結果である。接地装置を投入して「主接触子2」を「接地リード線4」で接地するのは、「主接触子2」を大地と同電位に保つ必要があるからである。これは、「主接触子2」が元々は大地と異なる電位にあることを意味するから、「主接触子2」が「接地リード線4」により接地されていることは、「主接触子2」が「アース導体」ではないことを意味する。
仮に、甲第3技術の「主接触子2」を「アース導体」に変更したとすると、「主接触子2」すなわち「アース導体」は、既に大地と同電位ということになるから、改めて接地装置を投入する必要はない。つまり、「主接触子2」を「アース導体」に変更すると、甲第3技術の前提となる「接地装置」が技術的に意味のないものになってしまう。したがって、そのような変更が可能であると認めることはできない。

エ.判断のまとめ
以上に検討したとおり、甲第1発明と甲第3技術とは、技術分野についても課題についても、共通するとはいえない。したがって、甲第1発明に甲第3技術を適用する動機を見いだすことができない。
また、甲第3技術の「主接触子2」は「アース導体」ではないし、「主接触子2」を「アース導体」に変更することができるとは認められないから、甲第3技術は、本件特許発明1の構成要件DからFまでを備えているとはいえない。したがって、甲第1号発明と甲第3技術とを組み合わせても、本件特許発明1の構成要件DからFまでが得られるとはいえない。
さらに、甲第1号証及び甲第3号証に接した当業者が甲第1発明に甲第3技術を適用するという請求人の主張は、以下に述べるとおり技術的にみて不自然である。
上記1.(1)で述べたとおり、甲第1号証に記載された「検電器付き接地装置」は、従来は別々の装置であった「検電器」と「接地装置」とを一体化したものである。そして、その「検電器付き接地装置」のうち、検電作業に使用する電流経路を含む部分は「検電器」として、また、接地作業に使用する電流経路を含む部分は「接地装置」として、それぞれ把握することができる。一方、甲第3技術は、「接地装置」に関する技術である。甲第1号証に記載された「検電器付き接地装置」から「検電器」と「接地装置」とを把握することができるのであれば、甲第1号証及び甲第3号証に接した当業者は、「検電器」ではなく、技術分野が一致する「接地装置」に甲第3技術を適用すると考える方が技術的にみて自然である。当業者が、技術分野が一致する「接地装置」ではなく、あえて「検電器」に適用するといえる理由が、甲号各証の記載からは見いだせない。
なお、当審は、第1回口頭審理において、この点についての陳述を請求人に求めたが(審理事項通知書2.(5))、請求人は陳述をしなかった。
以上のとおりであるから、本件特許発明1の相違点1に係る構成は、当業者が甲第3技術に基づいて容易に思い付くものと認めることができない。

(3)相違点1についての判断(その2)-別の観点からの検討
念のため、請求人の主張を離れて、甲第1発明に甲第3技術を適用することが当業者にとって容易であるかを別の観点から検討する。
上記(2)イ.(ウ)で述べたとおり、甲第3号証には、接地装置が完全に投入されたことを、導通確認装置を用いて確認することが記載されている。そして、その確認とは、具体的には「主接触子」と「接地ブレード」との「接触」の確認である。したがって、甲第3技術は、接地線の接触状態を検知する技術として把握することができる。
甲第3技術を、接地線の接触状態を検知する技術として把握した場合、甲第1発明の「検電用接地線16」について、何らかの接触異常が発生する可能性とそれを確認する必要性とが見いだせれば、甲第3技術を適用する余地があるといえる。
そこで、検討すると、甲第1号証の段落0022には、甲第1発明を用いて検電作業を行う際、「検電用接地線16」の「接地金具17」を「レール36」を介して地上側に接地する旨の記載がある(上記1.(1)オ.)。これが、「接地金具17」を「レール36」に接触させることを意味することは、当業者であれば当然に理解することである。
しかし、甲第1号証には、「接地金具17」を「レール36」に接触させるに際し、何らかの異常が発生する可能性や、それを確認する必要性を示唆する記載はない。甲第1発明と同様の検電器が記載されている甲第2号証や、甲第1発明と同様の電流経路を有する装置が記載されている甲第5号証も、同様である。
したがって、甲第3技術を、接地線の接触状態の検知技術として把握したとしても、それを甲第1発明に適用する動機を見いだすことができない。そうすると、本件特許発明1の相違点1に係る構成は、当業者が甲第3技術に基づいて容易に思い付くものと認めることができない。

(4)甲第2発明及び甲第4技術について
請求人は、甲第2発明及び甲第4技術に基づく無効理由ついて、具体的な主張をしていない。
甲第2発明は、上記1.(2)で述べたとおりのものであり、本件特許発明1との対比において、甲第1発明を超える一致点をもたらすものではない。
甲第4技術は、上記1.(4)で述べたとおりのものであり、相違点1についての検討に際し、甲第3技術を超える示唆をもたらすものではない。
したがって、甲第1発明に代えて甲第2発明との対比から検討を始めても、また、甲第3技術に代えて甲第4技術の適用を検討しても、判断は変わらない。

(5)本件特許発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1発明又は甲第2発明と、甲第3技術又は甲第4技術と、周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

3.本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含む。したがって、本件特許発明1と同様、本件特許発明2も、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。
念のために検討すると、以下のとおりである。

(1)対比
本件特許発明2と甲第1発明とを対比すると、両者は、本件特許発明1と甲第1発明との一致点(上記2.(1))で一致する。そして、相違点1に加えて、以下の点でも相違する。

(相違点2)
本件特許発明2は、「検出線と制御電源との間に、接地線の断線を報知する表示手段を介挿した」のに対し、甲第1発明は、「接地線の断線を報知する表示手段」を備えていない点。

構成要件で表現すれば、本件特許発明2と甲第1発明とは、構成要件AからCまでと構成要件F’とを備えている点で一致する。そして、両者は、本件特許発明2が相違点1に係る構成(構成要件D、構成要件E及び構成要件Fのうち構成要件F’に含まれない部分)と構成要件Gとをさらに備えているのに対し、甲第1発明がこれらの構成要件を欠いている点で相違する。

(2)相違点1についての判断
上記2.(2)及び(3)で述べたとおりである。すなわち、本件特許発明2の相違点1に係る構成は、当業者が甲第3技術に基づいて容易に思い付くものと認めることができない。

(3)相違点2についての判断
請求人は、甲第3技術が相違点2に係る構成(構成要件G)を備えていると主張する(審判請求書7.(5)(5-2)ア、第8ページ)。
この主張は、以下に述べるとおり、採用することができない。
上記2.(2)ウ.(ウ)で述べたとおり、甲第3技術では、仮に「接地ブレード3」又は「接地リード線4」で断線が発生すれば、原理的には、それを検出することが可能である。
しかし、上記2.(2)イ.(ウ)で述べたとおり、「接地ブレード3」や「接地リード線4」に断線が発生する可能性やその断線を検出する必要性が、甲第3号証に記載されていると認めることはできない。そうすると、甲第3技術によって断線を検出することが原理的に可能であることを、事後的に理解することはできるとしても、甲第3号証の記載から、「検出線と制御電源との間に、接地線の断線を報知する表示手段を介挿した」技術として、甲第3技術を把握することはできない。
したがって、甲第3技術は、相違点2に係る構成(構成要件G)を備えているとはいえない。
本件特許発明2の相違点2に係る構成は、当業者が甲第3技術に基づいて容易に思い付くものと認めることができない。

(4)本件特許発明2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、甲第1発明又は甲第2発明と、甲第3技術又は甲第4技術と、周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

4.本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含む。したがって、本件特許発明1と同様、本件特許発明3も、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。
念のために検討すると、以下のとおりである。

(1)対比
本件特許発明3と甲第1発明とを対比すると、甲第1発明の「長尺の操作棒3であって、3本の絶縁パイプ3a、3b、3cを接続して形成された操作棒3」は、本件特許発明3の「前記絶縁筒は、…複数本からなる」に相当する。
したがって、本件特許発明3と甲第1発明とは、本件特許発明1と甲第1発明との一致点(上記2.(1))に加えて、「前記絶縁筒は、複数本からなる」点でも一致する。そして、相違点1に加えて、以下の点でも相違する。

(相違点3)
本件特許発明3は、「絶縁筒」が「手動で長さ調整可能」であるのに対し、甲第1発明は、本件特許発明3の「絶縁筒」に相当する「長尺の操作棒3」が「手動で長さ調整可能」であるかどうか不明な点。

(2)相違点1についての判断
上記2.(2)及び(3)で述べたとおりである。すなわち、本件特許発明3の相違点1に係る構成は、当業者が甲第3技術に基づいて容易に思い付くものと認めることができない。

(3)相違点3についての判断
甲第1発明の「直流電車線路用検電器」は、甲第2発明の「架線検電器」に相当する。そして、甲第1発明の「前記先端金具2の基端から延びる長尺の操作棒3であって、3本の絶縁パイプ3a、3b、3cを接続して形成された操作棒3」と、甲第2発明の「互いに直径が異なる上、中、下3段の単位操作棒1a、1b、1cを、隣接するもの同士の一方が他方に嵌入できるように結合することにより、伸縮可能に形成された操作棒1」とは、「検電器」の「操作棒」である点で共通する。
したがって、甲第1発明の「前記先端金具2の基端から延びる長尺の操作棒3であって、3本の絶縁パイプ3a、3b、3cを接続して形成された操作棒3」を、甲第2発明の「互いに直径が異なる上、中、下3段の単位操作棒1a、1b、1cを、隣接するもの同士の一方が他方に嵌入できるように結合することにより、伸縮可能に形成された操作棒1」に置き換えることは、当業者が容易に思いつくことである。
その結果、甲第1発明の「操作棒3」は「伸縮可能」になるから、「手動で長さ調整可能」という本件特許発明3の相違点3に係る構成が得られることは、明らかである。

(4)本件特許発明3についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明3の相違点3に係る構成は、当業者が甲第2発明に基づいて容易に思い付くものであると認められる。しかし、本件特許発明3の相違点1に係る構成は、当業者が甲第3技術に基づいて容易に思い付くものと認めることができない。
したがって、本件特許発明3は、甲第1号発明と、甲第2号発明と、甲第3技術又は甲第4技術と、周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

5.本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明3の発明特定事項をすべて含む。したがって、本件特許発明3と同様、本件特許発明4も、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。
念のために検討すると、以下のとおりである。

(1)対比
本件特許発明4と甲第1発明とを対比すると、両者は、本件特許発明3と甲第1発明との一致点(上記3.(1))で一致し、相違点1及び3に加えて、以下の点でも相違する。

(相違点4)
本件特許発明4は、「絶縁筒」が「径の異なる複数本の絶縁筒を伸縮可能に連結した延竿式の絶縁筒群からなる」のに対し、甲第1発明は、本件特許発明4の「絶縁筒」に相当する「長尺の操作棒3」がそのようになっていない点。

(2)相違点1及び3についての判断
相違点1については、上記2.(2)及び(3)で述べたとおりである。すなわち、本件特許発明4の相違点1に係る構成は、当業者が甲第3技術に基づいて容易に思い付くものと認めることができない。
また、相違点3については、上記4.(3)で述べたとおりである。すなわち、本件特許発明4の相違点3に係る構成は、当業者が甲第2発明に基づいて容易に思い付くものである。

(3)相違点4についての判断
甲第2発明の「互いに直径が異なる上、中、下3段の単位操作棒1a、1b、1cを、隣接するもの同士の一方が他方に嵌入できるように結合することにより、伸縮可能に形成された操作棒1」が、相違点4に係る構成を備えていることは明らかである。
したがって、甲第1発明の「前記先端金具2の基端から延びる長尺の操作棒3であって、3本の絶縁パイプ3a、3b、3cを接続して形成された操作棒3」を、甲第2発明の「互いに直径が異なる上、中、下3段の単位操作棒1a、1b、1cを、隣接するもの同士の一方が他方に嵌入できるように結合することにより、伸縮可能に形成された操作棒1」に置き換えることにより、「径の異なる複数本の絶縁筒を伸縮可能に連結した延竿式の絶縁筒群からなる」という本件特許発明4の相違点4に係る構成が得られることは、明らかである。

(4)本件特許発明4についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明4の相違点3及び4のそれぞれに係る構成は、いずれも、当業者が甲第2発明に基づいて容易に思い付くものであると認められる。しかし、本件特許発明4の相違点1に係る構成は、当業者が甲第3技術に基づいて容易に思い付くものと認めることができない。
したがって、本件特許発明4は、甲第1号発明と、甲第2号発明と、甲第3技術又は甲第4技術と、周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

第6 むすび
以上に述べたとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1から4までのそれぞれに係る発明についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-18 
結審通知日 2013-02-20 
審決日 2013-03-05 
出願番号 特願2001-180124(P2001-180124)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 伸二  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 山川 雅也
小林 紀史
登録日 2010-01-22 
登録番号 特許第4443793号(P4443793)
発明の名称 直流用検電器  
代理人 城村 邦彦  
代理人 野口 祐輔  
代理人 城村 邦彦  
代理人 名古屋国際特許業務法人  
代理人 野口 祐輔  
代理人 水野 健司  

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