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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1273116
審判番号 不服2011-16206  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-27 
確定日 2013-04-16 
事件の表示 特願2008-508319「通信ネットワークシステム内において送信される信号、このような信号を発生させるように構成されたユーザ装置、このようなユーザ装置を備えた通信ネットワークシステム、及び、このような信号を処理する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日国際公開、WO2006/114688、平成20年11月13日国内公表、特表2008-539632〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年4月25日(パリ条約による優先権主張 2005年4月28日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成23年4月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月16日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「通信ネットワークシステム、特に移動通信ネットワークシステムにおい
て、信号を基地局に送信するための端末装置であって、
前記信号は、前記基地局に送信されるように意図されたRACHメッセージがどのような種類のメッセージを含もうとしているのかを示す情報を含むものであり、
該情報は、前記RACHメッセージを当該端末装置が前記基地局に送信するための条件として前記基地局により確認されるべく設けられたものであ
る、
ことを特徴とする端末装置。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特表2003-529250号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【請求項9】二次局から一次局への伝送のためのランダムアクセスチャネルを持つ無線通信システムを動作させる方法であり、複数の利用可能な時間オフセットのうちの1つにおけるアクセスプリアンブルの伝送によってランダムアクセスチャネル資源の割振りを要求する前記二次局、及び前記アクセスプリアンブルを受信し、前記アクセスプリアンブルの時間オフセットを決定し、要求されている前記資源が利用可能であるか否かを示すアクセス肯定応答を伝送する一次局を有する方法であって、前記アクセスプリアンブルの伝送の時間オフセットが、前記資源の割振り要求に関する更なる情報を供給する方法。
……
【請求項12】前記伝送の時間オフセットが前記二次局の資源要求の優先順位を示すことを特徴とする請求項9に記載の方法。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次局から一次局への伝送のためのランダムアクセスチャネルを持つ無線通信システムに関し、更に、斯様なシステムにおいて用いる一次局及び二次局、並びに斯様なシステムを動作させる方法に関する。本明細書は、とりわけ先端のユニバーサル移動電話システム(UMTS)に関するシステムについて記載しているが、記載されている技術は、他の移動式無線システムにおける使用に等しく適用可能であることを理解されたい。」

(3)「【0013】
図1を参照すると、無線通信システムは、一次局(BS)100及び複数の二次局(MS)110を有する。BS100は、マイクロコントローラ
(μC)102と、アンテナ手段106に接続される送受信機手段(Tx/Rx)104と、伝送出力レベル(transmitted power level)を変える出力
制御手段(PC)107と、PSTN又は他の適切なネットワークに対する接続のための接続手段108とを有する。各MS110は、マイクロコントローラ(μC)112と、アンテナ手段116に接続される送受信機手段
(Tx/Rx)114と、伝送出力レベルを変える出力制御手段(PC)
118とを有する。BS100からMS110への通信はダウンリンクチャネル122において行われる一方で、MS110からBS100への通信はアップリンクチャネル124において行われる。
【0014】
周波数分割二重通信システム(frequency division duplex system)において動作するランダムアクセスパケットチャネルの基本的な方式は、アップリンクチャネル124がダウンリンクチャネル122の上に描かれている図2に示されている。アクセスフェーズにおいては、まず、MS110が、特定のアクセススロット中に低出力レベルにおいて16個の署名の候補(possible signature)のうちの1つで符号化されたプリアンブル(P)を伝送する。署名は、特定ビットシーケンス(specific bit sequence)により変調される該署名のスクランブルコード(scrambling code)及びチャネルコード(channelisation code)によって特徴づけられる信号である。相互に直交する署名の
セットは、相互に直交する変調のためのビットシーケンスのセットを規定することにより得られる。それ故、別の署名のセットは、スクランブルコード若しくはチャネルコード(即ち、物理チャネル)を変えることにより、又は別の相互に直交するビットシーケンスのセットを用いることにより得られ
る。他の例においては、厳密な直交性の代わりに低い相互相関を持つよう
に、より大きな署名のセットが規定され得る。本明細書は16個の署名の
セットを引用するが、別の実施は異なる数の署名を持つセットを使用し得
る。
【0015】
利用可能な署名の各々は、パケットチャネルのための単一のビットレートに対して写像(map)される。署名とビットレートとの間の写像、及び利用可
能な署名のセットは、予め決定されていても良く、又はBS100により定期的にブロードキャストされても良い。MS110は、該MS110の要求ビットレートに対応するプリアンブル202を符号化する署名を選択する。要求ビットレートに対応する利用可能な署名が2つ以上ある場合には、MS110が無作為に1つを選択する。BS100がプリアンブルを正しく受信し、復号する場合に、BS100はプリアンブル肯定応答(A)206を伝送する。図2に示されている例において、最初のプリアンブル202が伝送された後の肯定応答は、該肯定応答のために割り振られている(例えば長さが1msである)スロット204においては返されない。それ故、MS110は、より高い出力レベルで別のプリアンブル202を伝送する。この別のプリアンブル202はBS100により受信され、復号され、BS100は肯定応答206を伝送し、それによりアクセスフェーズを終了する。
【0016】
肯定応答206は、MS110のプリアンブル202が受信されていることをMS110に知らせるばかりでなく、要求資源が利用可能である信号に対しては肯定的であっても良く、又は要求資源が使用中であり、MS110に対してアクセスが拒否される信号に対しては否定的であっても良い。否定応答(NACK)は、BS100により(幾つかの基準信号又はパイロット信号に対して)署名の位相(phase)を逆にして示され得る。他の例において
は、BS100により肯定応答のために用いられる署名の幾つかがNACKとしても用いられ得る。
……
【0019】
この競合解決フェーズの後に、BS100は、MS110に必要に応じて該MS110の伝送出力を調整するよう命令する出力制御情報を含む物理的制御チャネル(Physical Control CHannel)(PCCH)212の伝送を開始し、MS110は、通常、プリアンブル伝送のために用いられる物理チャネルと異なる物理チャネル上にある割り振られたパケットチャネルにおいて1つ以上のデータパケット(PKT)214を伝送する。PCCH212は、データ214の伝送と同時に開始しても良く、又は前記データの伝送の前に閉ループ出力制御が確立されるように該データの伝送に十分に先行しても良い。上記の基本方式に伴う特定の問題は、資源割振りの効率が、アクセスプリアンブル202のために利用可能な選択肢の数により制限されることにある。例えば、UMTSのための方式の実施例においては、合計196自由度(degree of freedom)を与える利用可能な12個のランダムアクセスサブ
チャネル及び16個の署名がある。」

(4)「【0020】
図3は、本発明に従って作られたシステムにおいてこの問題がどのように解決されるのかを図示している。アクセスプリアンブル202の伝送の時間は、アクセススロットの境界302に対してToffだけオフセットされても良い(前記境界自体は、BS100によって伝送されるタイミング信号に相関して規定される)。アクセスプリアンブル202及び競合解決プリアンブル208の両方が4096チップ(chips)を有する一方で、アクセススロットの
長さは5120チップである。256チップの倍数のタイミングオフセットToffを
与えることにより、どのスロットがプリアンブル202又は208を収容したのかについてを不明確にすることなくToffの19個までの異なる非零値が可能である。Toff = 0である場合に、このシステムの動作は、タイミングオフセットの可能性のないシステムの動作と同一であり、それにより、古いMS110との下位互換を可能にする。
……
【0025】
本発明に従って作られるシステムは、多くの方法においてよりずっと多くの自由度を利用することが出来る。署名、チャネル及び(非零)タイミングオフセットの各組合せのためのあり得る割当ては、(単独又は組合せのいずれかにおいて)
・ 特定ビットレートの要求としての割当て、
・ (関連優先順位(associated priority)を持つ)特定アクセスクラスの
要求としての割当て、
・ 付加的資源(例えばダウンリンク共用チャネル)の要求としての割当
て、
・ メッセージの優先順位を示すための割当て、
・ 送られるべきパケットの長さ(又は最小の若しくは最大の長さ)を示すための割当て、
・ 特定のMS110による使用のための割当て、及び
・ 共通の上位レイヤ(higher layer)のメッセージのセットのうちの1つを用いるMS110による使用のための割当てを含む。」

(5)「【0029】
他の実施例においては、図3に示されている全ての特徴が必要とされるとは限らない。例えば、内側ループのアップリンク出力制御は必須でなくても良く、故にPCCH212はなくても良い。衝突解決部は必須でなくても良く、この場合に、競合解決プリアンブル208及び肯定応答210のメッ
セージはなくても良い。これらの変更の結果として、実施はより簡単になるであろうが、Eb/Noのパフォーマンスの悪化及びメッセージ部の衝突確率の
増大という犠牲を払うであろう。場合によっては、必要とされる信号情報
(signalling information)の全てが、アクセスサブチャネル、署名及び時間オフセットの選択によって伝達されても良く、この場合に、メッセージ部は必要とされず、省かれ得る。プリアンブルの署名を参照することによりビットレートを選択する代わりとして、該ビットレートは、MS110により決定され、メッセージ部214中の信号により示されても良い。」

したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「二次局(MS)から一次局(BS)への伝送のためのランダムアクセス
チャネルを持つ移動式無線通信システムを動作させる方法であり、複数の利用可能な時間オフセットのうちの1つにおけるアクセスプリアンブルの伝送によってランダムアクセスチャネル資源の割振りを要求する前記二次局(MS)、及び前記アクセスプリアンブルを受信し、前記アクセスプリアンブルの時間オフセットを決定し、要求されている前記資源が利用可能であるか否かを示すアクセス肯定応答を伝送する一次局(BS)を有する方法であっ
て、
二次局(MS)は、割り振られたチャネルにおいて1つ以上のデータパ
ケット(PKT)をメッセージ部214として伝送し、
前記アクセスプリアンブルの伝送の時間オフセットが、メッセージの優先順位を示すための前記資源の割振り要求に関する更なる情報を供給する方
法。」

4.対比
引用発明の「二次局(MS)から一次局(BS)への伝送のためのランダムアクセスチャネルを持つ移動式無線通信システムを動作させる方法であ
り、複数の利用可能な時間オフセットのうちの1つにおけるアクセスプリアンブルの伝送によってランダムアクセスチャネル資源の割振りを要求する前記二次局(MS)」とある「二次局(MS)」は、後記のように、「更なる情報」が本願発明の「前記基地局に送信されるように意図されたRACH
メッセージがどのような種類のメッセージを含もうとしているのかを示す情報」に対応するので、本願発明の「通信ネットワークシステム、特に移動通信ネットワークシステムにおいて、信号を基地局に送信するための端末装
置」に対応する。
引用発明の「割り振られたチャネルにおいて1つ以上のデータパケット
(PKT)をメッセージ部214」として伝送するメッセージは、「ランダムアクセスチャネル資源の割振りを要求する」とあることから、ランダムアクセスチャネル資源の割振りの要求に応じて、割り振られたランダムアクセスチャネルで伝送されるものであり、本願発明の「基地局に送信されるように意図されたRACHメッセージ」に対応する。
引用発明の「メッセージの優先順位を示すための前記資源の割振り要求に関する更なる情報」は、「アクセスプリアンブルの伝送の時間オフセット」として基地局である「一次局(BS)」へ伝送され、「メッセージ部21
4」として伝送するメッセージの優先順位を示すための情報である。
本願発明の「前記基地局に送信されるように意図されたRACHメッセージがどのような種類のメッセージを含もうとしているのかを示す情報」に、メッセージの優先順位が高いか低いかといった優先順位の種類が含まれることは、請求項1を引用する請求項5に「前記情報は、前記メッセージを送信するための所定のプライオリティレベルを与え、プライオリティレベルがより高い場合には、……」と記載されていること等から明らかであるので、上記引用発明の「アクセスプリアンブルの伝送の時間オフセット」が供給する「更なる情報」は、本願発明の「前記基地局に送信されるように意図されたRACHメッセージがどのような種類のメッセージを含もうとしているのかを示す情報」に対応し、同様の機能を有するものである。
引用発明は、「二次局(MS)から一次局(BS)への伝送のためのランダムアクセスチャネルを持つ移動式無線通信システムを動作させる方法」に関するものであるから、そのための端末装置である「二次局(MS)」の発明も示されているといえる。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致する。

「通信ネットワークシステム、特に移動通信ネットワークシステムにおい
て、信号を基地局に送信するための端末装置であって、
前記信号は、前記基地局に送信されるように意図されたRACHメッセージがどのような種類のメッセージを含もうとしているのかを示す情報を含むものである、
ことを特徴とする端末装置。」

また次の点で相違する。

相違点
本願発明は「該情報は、前記RACHメッセージを当該端末装置が前記基地局に送信するための条件として前記基地局により確認されるべく設けられたものである」とするのに対して、引用発明は、基地局である「一次局(BS)」が「前記アクセスプリアンブルを受信し、前記アクセスプリアンブルの時間オフセットを決定し、要求されている前記資源が利用可能であるか否かを示すアクセス肯定応答を伝送する」が、本願発明の「情報」に対応する「更なる情報」が本願発明のように条件として確認されるものであるかどうか明らかでない点。

5.相違点に対する判断
引用発明の基地局である「一次局(BS)」は、「前記アクセスプリアンブルを受信し、前記アクセスプリアンブルの時間オフセットを決定し、要求されている前記資源が利用可能であるか否かを示すアクセス肯定応答を伝送する」ものであるから、「前記アクセスプリアンブルの伝送の時間オフセット」が供給する「メッセージの優先順位を示すための前記資源の割振り要求に関する更なる情報」について何らの処理も行わないとするのは不自然である。
そして、メッセージの優先順位を示すための情報であるから、その情報に応じて「アクセス肯定応答」を伝送することに格別の点はないので、引用発明においても、本願発明の「情報」と同様に、「更なる情報」をメッセージを基地局である「一次局(BS)」に送信するための条件として確認される処理が行われるようにすることに困難な点はない。
したがって、引用発明において相違点を本願発明のようにすることは、当業者が容易になしえることである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-13 
結審通知日 2012-11-19 
審決日 2012-12-04 
出願番号 特願2008-508319(P2008-508319)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 実  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 佐藤 聡史
吉村 博之
発明の名称 通信ネットワークシステム内において送信される信号、このような信号を発生させるように構成されたユーザ装置、このようなユーザ装置を備えた通信ネットワークシステム、及び、このような信号を処理する方法  
代理人 須田 洋之  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 市川 英彦  

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