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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1273124
審判番号 不服2011-20021  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-15 
確定日 2013-04-15 
事件の表示 特願2002-523843「無線装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月 7日国際公開、WO02/19676、平成16年 3月11日国内公表、特表2004-507982〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本件出願は、2001年8月30日(パリ条約による優先権主張2000年9月2日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成22年9月8日付け拒絶理由通知に対して平成23年2月8日付けで意見書と手続補正書が提出されたが、同年5月12日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として同年9月15日付けで審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年2月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】 少なくともメッセージを受信するためのインターフェースおよび表示装置(16)を有する無線装置(1)であって、
表示装置は少なくとも1つのスイッチオン動作状態および少なくとも1つのスイッチオフ動作状態をとるように構成されている形式のものにおいて、
無線装置(1)はメッセージインジケータ(15)を有しており、
メッセージの到着はメッセージインジケータ(15)によって、表示装置(16)の動作状態とは無関係に信号指示することによって指示され、
メッセージには少なくとも1つのメッセージパラメータが割り当てられており、
当該無線装置(1)は、前記メッセージパラメータを評価するための手段を有し、
前記メッセージパラメータに依存して前記メッセージが分類されて格納されることを特徴とする無線装置。」

2.引用発明と周知技術
A.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-126827号公報(以下、「引用例」という。)には、「無線呼出受信装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯者を無線により呼び出す無線呼出受信装置に係り、特に、たとえば、呼び出しの際に文字メッセージを受信可能なページャ等の無線呼出受信装置に関するものである。」(2頁2欄)

イ.「【0015】
【発明の実施の形態】次に、添付図面を参照して本発明による無線呼出受信装置の実施例を詳細に説明する。図1ないし図3には、本発明による無線呼出受信装置の一実施例が示されている。本実施例による無線呼出受信装置は、たとえば、公衆網に接続された電話機からのプッシュボタン操作にて発信された呼出信号および呼出メッセージを無線基地局を介して受信し、これにより、呼出信号または振動および発光にて着呼を携帯者に報知して、その際に受信した呼出メッセージを表示画面に表示する無線呼出装置である。特に、本実施例では、図1に示すように、ポケットサイズに形成された本体100 の表面上部に、複数の発光ダイオード120 ?128 が配置されており、受信した呼出メッセージから発呼者との間とあらかじめ取り決めておいた識別コードを検出し、その識別コードに基づいて複数の発光ダイオード120 ?128 のいずれかまたは複数個を発光させて、発呼者およびメッセージの種別を識別する点が主な特徴点である。
【0016】詳細には本実施例による無線呼出受信装置は、図1に示すように、本体100 の表面に、液晶画面110 と、5個の発光ダイオード120 ?128 と、3つの操作キー140 ?144 とが配置されている。液晶画面110 は、本体100 の略中央部に矩形状に形成された呼出メッセージを表示する表示画面であり、上下二段に十数文字づつのメッセージを表示可能となっている。本実施例では、呼出メッセージ表示の他に、最上部に小さい記号または数字にて、たとえば、時間と、メッセージ記憶の有無と、メッセージ数と、ベルまたはトーンリンガなどの呼出信号またはバイブレータのスイッチの有無などが表示可能となっている。」(3頁4欄?4頁5欄)

ウ.「【0019】次に、図2および図3を参照して本実施例による無線呼出受信装置の内部構成を説明する。本実施例による無線呼出受信装置は、図2に示すように、アンテナ10と、受信回路12と、デコーダ14と、制御回路16と、液晶(LCD)表示回路18と、キー入力部20と、メッセージ保存メモリ(RAM)22 と、表示編集メモリ(EEPROM)24と、スピーカ26と、バイブレータ28とを含む。アンテナ10は、基地局からの所定の波長の電波に感応する空中線であって、たとえば、本体100 内部に設置可能なフェライトバーアンテナなどが有利に適用される。
【0020】受信回路12は、アンテナ10に到来した電波のうち自局に割り当てられた所望の周波数の信号を検出して、受信した高周波信号をベースバンド信号に復調する回路であり、たとえば、同調回路と、増幅回路と、復調回路などを含む。デコーダ14は、受信回路12にて復調されたベースバンド信号からディジタルのデータを復号する復号回路であり、有利には誤り訂正符号化されたディジタル符号を誤り訂正して、復号した元のディジタル信号を制御回路16に供給する。
【0021】制御回路16は、デコーダ14からのディジタル信号に基づいて呼び出しを検知して、呼出しの際の報知、識別コードの検出および表示、さらにメッセージの表示などを制御する CPU(中央処理装置)を含む主制御部であり、本実施例では、たとえば図3に示すように、呼検出部610 と、呼出信号駆動部612 と、バイブレータ駆動部614 と、メッセージ検出部616 と、識別コード検出部618 と、LED 駆動部620 と、表示コード編集部622 と、メモリ制御部624 と、コード登録部626 とを含む。呼検出部610 は、デコーダ14からのディジタル信号の中から呼出信号を検出して、呼検出信号を呼出信号駆動部612 およびバイブレータ駆動部614 に供給する信号発生回路である。呼出信号駆動部612 は、セットされたビープ音またはメロディ音を発生してスピーカ26に供給する呼出信号鳴動回路であり、呼検出部610 から呼検出信号を受けると、所定の時間または報知解除があるまで呼出信号を発生する。バイブレータ駆動部614 は、バイブレータ28を駆動する駆動信号を発生する信号発生回路であり、呼出信号駆動部612 と同様に呼検出信号を受けてから所定の時間または報知解除があるまでバイブレータ28を駆動する。
【0022】メッセージ検出部616 は、デコーダ14からのディジタル信号の中から呼出メッセージを検出して後段に供給する検出回路であり、呼出メッセージの前には所定の識別符号が付されて送信され、その識別符号を検出した後のディジタル信号を順次検出する。識別コード検出部618 は、メッセージ検出部616 からのディジタル信号に識別コードがあるか否かを判別して、識別コードが含まれる場合にそのコードを検出して、LED 駆動部620 にて発光ダイオード120 ?130 を駆動するためのコード信号に変換して供給するコード変換回路である。識別コードは、たとえば、10進数にて2?4桁の数字にて表わされて、たとえば始めの1桁または2桁が発呼者を表わし、後の1桁または2桁がメッセージの種別を表わすようにするとよい。本実施例では識別コードに対応するコード信号は、表示編集メモリ24にあらかじめ登録されて、メッセージから検出した識別コードと比較して、その比較結果に応じて変換したコード信号をLED 駆動部620 に供給する。」(4頁6欄?5頁7欄)

エ.「【0027】図2に戻ってLCD 表示回路18は、液晶画面110 を駆動して受信メッセージを表示する表示駆動回路であり、たとえば、制御回路16およびキー入力部20からのキー操作に基づいて表示コードに変換された受信メッセージおよびキー入力を液晶画面110 に表示する表示回路である。キー入力部20は、メインキー146 と、セットキー140 と、左セレクトキー142 と、右セレクトキー144 からのキー操作に基づいて、その入力事項を制御回路16に供給する信号発生回路であり、それぞれのキー140 ?146 の判別および操作回数などを判定して、その操作に応動した信号を制御回路16に供給する。たとえば、メインキー46の操作に基づいて電源のオン/オフおよび報知解除などのメイン操作の信号を出力する。
【0028】メッセージ保存メモリ22は、制御回路16にて表示コードに編集された呼出メッセージを順次蓄積する記憶回路であり、たとえば、本実施例ではRAM(random access memory) などの半導体メモリが有効に適用される。本実施例の場合、所定の容量を有し、複数のメッセージを蓄積可能として、そのメッセージ数は順次表示画面182 に表示されて、キー入力部20からの操作信号により任意に蓄積したメッセージを読み出し可能となっている。」(5頁8欄)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
a.上記引用例記載の「無線呼出受信装置」は、「呼び出しの際に文字メッセージを受信可能なページャ等の無線呼出受信装置」(摘記事項アの【0001】)であって、「図2に示すように、アンテナ10と、受信回路12と」(摘記事項ウの【0019】)を有しているが、上記「文字メッセージ」は、以下の検討における「呼出メッセージ」を意味することは明らかであり、また、上記「アンテナ10と受信回路12」は「呼出メッセージを受信するための」ものであることも明らかである。
さらに、上記「無線呼出受信装置」は、「液晶画面110」(摘記事項イの【0016】)も有している。
b.上記「無線呼出受信装置」の本体には、「複数の発光ダイオード120 ?128 が配置されており、受信した呼出メッセージから発呼者との間とあらかじめ取り決めておいた識別コードを検出し、その識別コードに基づいて複数の発光ダイオード120 ?128 のいずれかまたは複数個を発光させ」(摘記事項イの【0015】)るから、
上記「無線呼出受信装置」は、「複数の発光ダイオード120?128を有しており、呼出メッセージの到着は複数の発光ダイオード120?128によって、信号指示することによって指示され」ると言える。
c.上記「呼出メッセージ」に関し、「呼出メッセージの前には所定の識別符号が付されて送信され、・・・(中略)・・・識別コードは、たとえば、10進数にて2?4桁の数字にて表わされて、たとえば始めの1桁または2桁が発呼者を表わし、後の1桁または2桁がメッセージの種別を表わすようにするとよい。」(摘記事項ウの【0022】)とあるから、
上記「呼出メッセージ」には「発呼者やメッセージの種別を表す識別コードが付され」ている。
d.上記「無線呼出受信装置」の「識別コード検出部618」は、「メッセージ検出部616 からのディジタル信号に識別コードがあるか否かを判別して、識別コードが含まれる場合にそのコードを検出して、LED 駆動部620 にて発光ダイオード120 ?130 を駆動するためのコード信号に変換して供給するコード変換回路である。」(摘記事項ウの【0022】)から、
上記「無線呼出受信装置」は、「前記識別コードを検出し、LED 駆動部620 にて発光ダイオード120 ?128 を駆動するためのコード信号に変換する識別コード検出部618」を有している(なお、上記摘記事項中の「発光ダイオード120 ?130」は「発光ダイオード120 ?128」の誤記と認定した。)。
e.上記「無線呼出受信装置」の「メッセージ保存メモリ22」は、「制御回路16にて表示コードに編集された呼出メッセージを順次蓄積する記憶回路であり、たとえば、本実施例ではRAM(random access memory) などの半導体メモリが有効に適用される。本実施例の場合、所定の容量を有し、複数のメッセージを蓄積可能として、そのメッセージ数は順次表示画面182 に表示されて、キー入力部20からの操作信号により任意に蓄積したメッセージを読み出し可能となっている。」(摘記事項エの【0028】)から、
上記「呼出メッセージ」が「蓄積される」と言える。

以上を総合すると、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「少なくとも呼出メッセージを受信するためのアンテナ10と受信回路12および液晶画面110を有する無線呼出受信装置であって、
無線呼出受信装置は複数の発光ダイオード120?128を有しており、
呼出メッセージの到着は複数の発光ダイオード120?128によって、信号指示することによって指示され、
呼出メッセージには発呼者やメッセージの種別を表す識別コードが付されており、
当該無線呼出受信装置は、前記識別コードを検出し、LED 駆動部620 にて発光ダイオード120?128を駆動するためのコード信号に変換する識別コード検出部618を有し、
前記呼出メッセージが蓄積される無線呼出受信装置。」

B.周知技術
(1)周知技術1
例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-36985号公報(以下、「周知例1」という。)には「無線携帯端末装置」に関し、図面とともに以下の事項オ.が記載され、また、特開平11-112622号公報(以下、「周知例2」という。)には「携帯電話機」に関し、図面とともに以下の事項カ.が記載されている。

オ.「【0005】ところが、近年さらに小形化が進み、待ち受け中にLCDディスプレイ4を見ることが必ずしも容易でなくなった。例えば、ポケットの中に入れているときLCDディスプレイ4を見ることが容易でなく、また、折りたたみ形でLCDディスプレイ4が常時は見えないタイプも出現している。更に、LCDも小形であり、少し離れていると見えなかったり、LCDディスプレイ4のバックライトを省電力化するため、常時はオフとして、何らかのキー操作をしたときだけオンとして見えるようにしているため、確認が容易でなかった。」(周知例1、2頁2欄)

カ.「【0002】
【従来の技術】まず、移動体通信システムについて説明する。現在、日本や世界では無線による移動体通信システムが、電気通信事業用・自営通信用としてさまざまな分野で利用されている。
【0003】日本国内では、電気通信事業用として携帯・自動車電話システム、パーソナル・ハンディーホンシステム(PHS)、無線呼び出しシステム(ページャ)等があり、自営通信用として構内無線局(構内ページングや構内PHS等)、パーソナル無線、アマチュア無線、公共業務用無線等がある。
【0004】国外では、米国におけるAMPS方式及びIS-95等の自動車電話システムやGolay方式やPOCSAG方式無線呼び出しシステム、英国におけるTACS方式等の自動車電話システムやPOCSAG方式無線呼び出しシステム、北欧4カ国(フィンランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)におけるNMT方式自動車電話システム、欧州におけるGSM方式の携帯電話システムといったものがある。
【0005】これらの移動体通信システムの携帯端末では、電池性能(体積・重量あたりの蓄積電力)の改善や回路の省電力化が進められており、連続使用時間(連続待ち受け時間・連続通話時間等)が年々長時間化されてきている。
【0006】携帯端末の省電力化の一つの方法として、着信及び通話状態以外で一定時間キー入力等の操作を行わないと液晶表示器のバックライトを消灯する機能がある。
・・・(中略)・・・
【0011】本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、無意味な部分に電力が消費されているという問題点を解決し、必要時以外は表示器部分への電源供給を停止することにより、さらに消費電力を節約し、連続使用時間を長くできる携帯電話機を提供することを目的とする。」(周知例2、2頁1-2欄)

上記摘記事項オ、カに開示されているように、
「無線携帯端末装置の省電力を目的として、液晶表示装置のバックライトあるいは表示装置自体がオン状態およびオフ状態をとるよう構成すること」(以下、「周知技術1」という。)
は周知技術である。

(2)周知技術2
例えば、特開平11-243570号公報(以下、「周知例3」という。)には「情報配信網および情報受信端末」に関し、図面とともに以下の事項キ.が記載され、また、特開2000-92537号公報(以下、「周知例4」という。)には「選択呼出受信機」に関し、図面とともに以下の事項ク.が記載されている。

キ.「【0031】以上の構成において、CPU200は、受信部260から転送される受信情報中のアドレス情報を常時監視して、このアドレス情報が当該無線呼出端末TA1に割り当てられた着信番号と一致するか否かを検出する。そして、着信番号と一致する受信情報をRAM260に格納する。この際、CPU200は、受信情報中のフォルダ指定情報あるいは識別情報を検知し、これらで指定されるフォルダに受信情報を格納する。ここで、フォルダ指定情報は、緊急情報や経済情報といった情報の種類を示すように予め割り当てられており、また、識別情報は発信者の種別を示すように予め割り当てられているので、情報の内容に応じてメッセージ情報を分類して各フォルダに格納することが可能となる。」(周知例3、5頁8欄)

ク.「【0010】ここに、本発明は、個別呼出と群呼出との種類を問わずに適用することができ、受信した個人宛メッセージを例えば送信者毎の指定フォルダに自動的に分類して記憶管理する、受信した情報メッセージを情報のタイトル毎の指定フォルダに自動的に分類して記憶管理することを実現することができる。」(周知例4、3頁4欄)

上記摘記事項キの「フォルダ指定情報」及び「識別情報」や、上記摘記事項クの(フォルダ分類に利用される)「送信者」及び「タイトル」は、いずれも引用発明の「発呼者やメッセージの種別を表す識別コード」と同様に、メッセージの特性を表す情報と言いうるものであるから、

上記摘記事項キ、クに開示されているように、
「無線呼出受信装置において、メッセージの特性を表す情報に依存して前記メッセージが分類されて格納されること」(以下、「周知技術2」という。)
は周知技術である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、
a.引用発明の「呼出メッセージ」は本願発明の「メッセージ」に含まれる。
b.引用発明の「アンテナ10と受信回路12」は無線通信媒体とのインターフェースを構成するものと言えるから、本願発明の「インターフェース」に含まれる。
c.引用発明の「液晶画面110」は本願発明の「表示装置(16)」に含まれる。
d.引用発明の「無線呼出受信装置」は本願発明の「無線装置」に含まれる。
e.引用発明の「複数の発光ダイオード120?128」は「呼出メッセージの到着」を「指示」するものであるから、本願発明の「メッセージインジケータ(15)」に含まれる。
f.引用発明の「発呼者やメッセージの種別を表す識別コード」は、「呼出メッセージ」に「付与され」るものであって、該呼出メッセージの特性を表す情報であるから、本願発明の「メッセージパラメータ」に相当する。
g.引用発明の「付されており」と本願発明の「割り当てられており」は実質的に同義である。
h.引用発明の「前記識別コードを検出し、LED 駆動部620 にて発光ダイオード120?128を駆動するためのコード信号に変換する識別コード検出部618」に関し、該「識別コード検出部618」は、発光ダイオードを駆動するために識別コードの検出及び信号変換を行うものであるから、識別コードの解釈ないしは評価を行うものと言え、本願発明の「前記メッセージパラメータを評価するための手段」に相当する。
i.引用発明の「蓄積」と本願発明の「格納」は実質的に同義である。

以上を総合すると、両者は以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「少なくともメッセージを受信するためのインターフェースおよび表示装置を有する無線装置であって、
無線装置はメッセージインジケータを有しており、
メッセージの到着はメッセージインジケータによって、信号指示することによって指示され、
メッセージには少なくとも1つのメッセージパラメータが割り当てられており、
当該無線装置は、前記メッセージパラメータを評価するための手段を有し、
前記メッセージが格納される無線装置。」

(相違点1)
本願発明が「表示装置は少なくとも1つのスイッチオン動作状態および少なくとも1つのスイッチオフ動作状態をとるように構成されている形式のものにおいて」と限定されているのに対し、引用発明にはそのような限定がされていない点。

(相違点2)
「信号指示」による「指示」に関し、
本願発明が「表示装置(16)の動作状態とは無関係に」と限定されているのに対し、引用発明にはそのような限定がされていない点。

(相違点3)
「メッセージが格納される」構成に関し、
本願発明が「前記メッセージパラメータに依存して前記メッセージが分類されて」「格納される」のに対し、引用発明では単に「呼出メッセージが蓄積される」点。

4.検討
上記相違点につき検討する。

(相違点1)について
まず、上記「2.引用発明と周知技術」の項中の「A.周知技術1」の項に記したように、「無線携帯端末装置の省電力を目的として、液晶表示装置のバックライトあるいは表示装置自体がオン状態およびオフ状態をとるよう構成すること」(周知技術1)は周知の技術である。
省電力は携帯型端末装置に共通の課題であるから、引用発明の無線呼出受信装置においても省電力を目的として上記周知技術1を単に採用し、「表示装置は少なくとも1つのスイッチオン動作状態および少なくとも1つのスイッチオフ動作状態をとるように構成されている形式のものにおいて」と限定することは当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点2)について
引用発明の「信号指示」は、「呼出メッセージの到着」の「指示」であるが、そもそも、「呼出メッセージの到着」が受信側装置の状態(待機中であるか、動作中であるか)に拘わらず発生する事象であることは言うまでもないことである。
そして、引用発明においては、該「呼出メッセージの到着」は常に「複数の発光ダイオード120?128によって信号指示することによって指示」されるものであって、液晶画面110の状態に依存すべき必然性はないから、上記「(相違点1)について」で検討したように、引用発明の無線呼出受信装置を「表示装置は少なくとも1つのスイッチオン動作状態および少なくとも1つのスイッチオフ動作状態をとるように構成されている形式のもの」とした場合においても、「信号指示」による「指示」を「表示装置(16)の動作状態とは無関係に」行うよう構成することは当業者が普通になし得ることである。

(相違点3)
上記「2.引用発明と周知技術」の項中の「B.周知技術2」の項に記したように、「無線呼出受信装置において、メッセージの特性を表す情報に依存して前記メッセージが分類されて格納されること」は周知技術であるが、ここにおいて、「メッセージの特性を表す情報」は、上記「3.対比」の項中の「f.」で検討したように、引用発明の「発呼者やメッセージの種別を表す識別コード」と同じく、本願発明の「メッセージパラメータ」に相当するものである。
したがって、上記周知技術2は、「無線呼出受信装置において、メッセージパラメータに依存して前記メッセージが分類されて格納されること」と言える。
とすると、上記相違点3に係る「前記メッセージパラメータに依存して前記メッセージが分類されて」「格納される」構成は、上記周知技術2を単に採用することにより達成しうる構成に過ぎない。

そして、本願発明が奏する効果も引用発明および周知技術1、2から容易に予測出来る範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-13 
結審通知日 2012-11-16 
審決日 2012-11-28 
出願番号 特願2002-523843(P2002-523843)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梶尾 誠哉  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 矢島 伸一
新川 圭二
発明の名称 無線装置  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
代理人 来間 清志  
代理人 篠 良一  
代理人 星 公弘  
代理人 高橋 佳大  
代理人 矢野 敏雄  

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