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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1273127
審判番号 不服2011-21980  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-12 
確定日 2013-04-17 
事件の表示 特願2000-110457「コリメータ装置およびそれを用いたイメージング・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月28日出願公開、特開2000-325332〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年4月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年4月12日、米国(US))を出願日とする出願であって、平成22年7月5日付けで拒絶理由が通知され、平成23年1月13日付けで意見書が提出されたが、同年6月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けにて手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに、平成24年3月28日付けで審尋がなされ、回答書が同年9月11日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】点放射線源と、
検出器素子のアレイを有する少なくとも一つの検出器パネルと、
前記点状放射線源と前記検出器パネルとの間の位置に配置された、放射線吸収材料を含むコリメータと、を備えるイメージング・システムであって、
前記コリメータは、さらに、
前面および背面を有する前記放射線吸収材料からなる一体のブロックと、
前記ブロック内に、このブロックを貫通するように形成された複数のチャネルであって該チャネルの各々が、一緒になって前記放射線吸収材料よりなる一つのウェブを構成する複数のチャネル壁により分離され且つ規定されており、前記ウェブが、前記スラブ内に前記複数のチャネルが形成された後に残されるスラブ材料の部分であるところの複数のチャネルとを有し、
前記複数のチャネルの各々が1本の長軸を有し、前記複数のチャネルのこれらの長軸は前記点放射線源の位置で交差しており、前記複数のチャネルの各々を形成する前記壁が前記点放射線源の位置に向かって収束している
前記放射線吸収材料からなる複数の第1のプレート・セットより作られた第1のコリメータ部分であって、前記複数の第1のプレート・セットの各々は前記セット内のプレート間に一つの通路を規定するように配置され、かつ前記通路の各々がそれぞれ、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた行により規定される平面内に位置する1本のプレート長軸を有するように構成された、第1のコリメータ部分と、
前記第1のコリメータ部分に隣接し、前記放射線吸収材料からなる複数の第2のプレート・セットを備える第2のコリメータ部分であって、前記複数の第2のプレート・セットは前記セット内のプレート間に一つの通路を規定し、該第2のコリメータ部分の前記通路は、前記第1のコリメータ部分の前記通路と直交する向きにあり、かつ該第2のコリメータ部分の前記通路の各々は、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた列により規定される平面内に位置する1本の通路長軸を有している第2のコリメータ部分と、
を備え、
前記第1と第2のコリメータ部分が、互いに固定の関係となるように、且つ、前記点放射線源と前記検出器素子アレイとの間の直接経路に沿って配置されたそれぞれの長軸を有する複数のチャネルをもたらすよう、互いに向かい合って配置され、さらに、前記複数のチャネル壁は前記点放射線源に収束するようにテーパが付けられていることを特徴とするイメージング・システム。」
から
「【請求項1】320keV以上のX線エネルギーを照射する点放射線源と、
検出器素子のアレイを有する少なくとも一つの検出器パネルと、
前記点状放射線源と前記検出器パネルとの間の位置に配置された、放射線吸収材料を含むコリメータと、を備えるイメージング・システムであって、
前記コリメータは、さらに、
前面および背面を有する前記放射線吸収材料からなる一体のブロックと、
前記ブロック内に、このブロックを貫通するように形成された複数のチャネルであって該チャネルの各々が、一緒になって前記放射線吸収材料よりなる一つのウェブを構成する複数のチャネル壁により分離され且つ規定されており、前記ウェブが、前記ブロック内に前記複数のチャネルが形成された後に残される前記放射線吸収材料の部分であるところの複数のチャネルとを有し、
前記複数のチャネルの各々が1本の長軸を有し、前記複数のチャネルのこれらの長軸は前記点放射線源の位置で交差しており、前記複数のチャネルの各々を形成する前記壁が前記点放射線源の位置に向かって収束している
前記放射線吸収材料からなる複数の第1のプレート・セットより作られた第1のコリメータ部分であって、前記複数の第1のプレート・セットの各々は前記セット内のプレート間に一つの通路を規定するように配置され、かつ前記通路の各々がそれぞれ、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた行により規定される平面内に位置する1本のプレート長軸を有するように構成された、第1のコリメータ部分と、
前記第1のコリメータ部分に隣接し、前記放射線吸収材料からなる複数の第2のプレート・セットを備える第2のコリメータ部分であって、前記複数の第2のプレート・セットは前記セット内のプレート間に一つの通路を規定し、該第2のコリメータ部分の前記通路は、前記第1のコリメータ部分の前記通路と直交する向きにあり、かつ該第2のコリメータ部分の前記通路の各々は、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた列により規定される平面内に位置する1本の通路長軸を有している第2のコリメータ部分と、
を備え、
前記第1と第2のコリメータ部分が、互いに固定の関係となるように、且つ、前記点放射線源と前記検出器素子アレイとの間の直接経路に沿って配置されたそれぞれの長軸を有する複数のチャネルをもたらすよう、互いに向かい合って配置され、さらに、前記複数のチャネル壁は前記点放射線源に収束するようにテーパが付けられていることを特徴とするイメージング・システム。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「点放射線源」を「320keV以上のX線エネルギーを照射する点放射線源」として、点放射線源の照射するX線エネルギーを限定し、さらに「前記スラブ内に前記複数のチャネルが形成され」を「前記ブロック内に前記複数のチャネルが形成され」として、明りょうでない記載を釈明し、さらに「残されるスラブ材料の部分」を「残される前記放射線吸収材料の部分」として、スラブ材料を実質的に限定した補正を含むものである。
したがって、本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特公平2-23175号公報(以下「刊行物1」という。)には、「走査型グリッド装置」について、図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア) 「8 放射X線が対象体及び走査型グリツド装置を通り、その後X線感応性像受信器に到達する際に、焦点を定義するX線源から発した放射X線の高い一次X線透過性及び低い二次X線透過性を示し得る走査型グリツド装置において、長手方向に延出し対向するグリツド小板保持具の第1の対と、長手方向に延出し対向するグリツド小板保持具の第2の対が平行な面に配列していて、該第1の対が対象体と該第2の対との間に位置するように適合された2対の小板保持具と、前記グリツド小板保持具の一方の対と、前記グリツド小板保持具の他方の対の平面内の所定の範囲内に所定の距離で前記グリツド小板を維持するスペーシング手段を具備する前記グリツド小板保持具との間に所定の間隔の回動点で回動可能に取付けられた複数の放射線不透過性グリツド小板であつて、一方の対に回動可能に取付けられた小板間の所定の間隔及び他方の対に沿つた小板間の分離された距離が各々の前記小板を前記焦点に焦点合せするように選択されたものである複数の放射線不透過性グリツド小板と、からなる第1の走査型グリツドと、それぞれ平行平面に配列した長手方向に延出する互いに対向するグリツド小板保持具の第3及び第4の対と、これら第3及び第4の対の保持具のうちの選択された一方の1対の間に所定の間隔に回動可能に取付けられた複数の放射線不透過性グリツド小板とを具備する第2の走査型グリツド、及び前記第2のグリツドの複数のグリツド小板を横切る方向に少なくとも前記第3の対の保持具を長手方向に動かして前記X線源の位置に関して第2のグリツドのグリツド小板を動かすための前記第3及び第4の対の保持具を結合する手段をさらに具備し、前記第2の走査型グリツドは前記対象体と前記像受信器との間に配列するように適合されており、前記第3及び第4の対は前記第1及び第2の対と直角に配列しており、前記第3の対は前記対象体と前記第4の対との間に位置するように適合されており、前記第3及び第4の対のうちの他方の対はその平面内の所定の制限内に前記第2の走査型グリツドのグリツド小板を分離維持するスペーシング手段を具備しており、前記第2の走査型グリツドのグリツド小板は前記スペーシング手段により前記焦点に対する焦点合せを維持しており、前記第2の走査グリツドの前記グリツド小板は前記第3及び第4の対の保持具の長手方向への運動中に前記焦点への焦点合せが維持されることを特徴とする走査型グリツド装置。」(第2頁第3欄31行?第4欄33行)

(1-イ) 「 本発明は、X線写真に使用されるブツキー(Bucky)型グリツドに関し、特に、高い一次放射透過および低い二次又は散乱放射透過を示す改良された走査型グリツド装置に関する。」(第3頁第5欄10行?13行)

(1-ウ) 「 二次散乱吸収を最大とするように設計された他の実施態様では、上述の型の走査型グリツド10に加えて、第8図に示すように、第2の走査型グリツド10aが走査型グリツド10に関し直角に配列されており、第2の走査型グリツド10aのグリツド小板28は一般に走査型グリツド装10のグリツド小板28に一般に直角に配列されている。この実施態様では、図のように、走査型グリツド10および10aのそれぞれはX線源の焦点26に結合されており、上述のように直角の走査運動を行なうように適合されている。」(第8頁第16欄26行?36行)

上記(1-ア)?(1-ウ)の記載と図1?8を参照すると、上記刊行物1には、 次の発明が記載されていると認められる。
「 放射X線が対象体及び走査型グリツド装置を通り、その後X線感応性像受信器に到達する際に、焦点を定義するX線源から発した放射X線の高い一次X線透過性及び低い二次X線透過性を示し得る走査型グリツド装置において、
所定の間隔の回動点で回動可能に取付けられた複数の放射線不透過性グリツド小板であつて、各々の前記小板を前記焦点に焦点合せするものである複数の放射線不透過性グリツド小板と、からなる第1の走査型グリツドと、
所定の間隔に回動可能に取付けられた複数の放射線不透過性グリツド小板とを具備する第2の走査型グリツド、を具備し、
前記第2の走査型グリツドは前記第1の走査型グリツドと直角に配列しており、
前記第2の走査型グリツドのグリツド小板は前記焦点に対する焦点合せを維持している
走査型グリツド装置。」(以下、「引用発明」という。)

3 対比・判断
補正発明は、「・・・コリメータと、を備えるイメージング・システムであって、前記コリメータは、さらに、」のあとで、
「 前面および背面を有する前記放射線吸収材料からなる一体のブロックと、
前記ブロック内に、このブロックを貫通するように形成された複数のチャネルであって該チャネルの各々が、一緒になって前記放射線吸収材料よりなる一つのウェブを構成する複数のチャネル壁により分離され且つ規定されており、前記ウェブが、前記ブロック内に前記複数のチャネルが形成された後に残される前記放射線吸収材料の部分であるところの複数のチャネルとを有し、
前記複数のチャネルの各々が1本の長軸を有し、前記複数のチャネルのこれらの長軸は前記点放射線源の位置で交差しており、前記複数のチャネルの各々を形成する前記壁が前記点放射線源の位置に向かって収束している 」「さらに、前記複数のチャネル壁は前記点放射線源に収束するようにテーパが付けられている」もの(以下「前者」という。)と、
「 前記放射線吸収材料からなる複数の第1のプレート・セットより作られた第1のコリメータ部分であって、前記複数の第1のプレート・セットの各々は前記セット内のプレート間に一つの通路を規定するように配置され、かつ前記通路の各々がそれぞれ、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた行により規定される平面内に位置する1本のプレート長軸を有するように構成された、第1のコリメータ部分と、
前記第1のコリメータ部分に隣接し、前記放射線吸収材料からなる複数の第2のプレート・セットを備える第2のコリメータ部分であって、前記複数の第2のプレート・セットは前記セット内のプレート間に一つの通路を規定し、該第2のコリメータ部分の前記通路は、前記第1のコリメータ部分の前記通路と直交する向きにあり、かつ該第2のコリメータ部分の前記通路の各々は、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた列により規定される平面内に位置する1本の通路長軸を有している第2のコリメータ部分と、
を備え、
前記第1と第2のコリメータ部分が、互いに固定の関係となるように、且つ、前記点放射線源と前記検出器素子アレイとの間の直接経路に沿って配置されたそれぞれの長軸を有する複数のチャネルをもたらすよう、互いに向かい合って配置され」ているもの(以下「後者」という。)が並列的に記載されていることは、前者と後者が別々の実施例に対応しており、前者と後者を共に備える実施例が存在しないこと、前者と後者を共に備えるものの技術的意味は記載されてなく、常識的には不明であることから明らかである。
そこで、補正発明のうちで後者を備えた
「X線エネルギーを照射する点放射線源と、
検出器素子のアレイを有する少なくとも一つの検出器パネルと、
前記点状放射線源と前記検出器パネルとの間の位置に配置された、放射線吸収材料を含むコリメータと、を備えるイメージング・システムであって、
前記コリメータは、さらに、
前記放射線吸収材料からなる複数の第1のプレート・セットより作られた第1のコリメータ部分であって、前記複数の第1のプレート・セットの各々は前記セット内のプレート間に一つの通路を規定するように配置され、かつ前記通路の各々がそれぞれ、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた行により規定される平面内に位置する1本のプレート長軸を有するように構成された、第1のコリメータ部分と、
前記第1のコリメータ部分に隣接し、前記放射線吸収材料からなる複数の第2のプレート・セットを備える第2のコリメータ部分であって、前記複数の第2のプレート・セットは前記セット内のプレート間に一つの通路を規定し、該第2のコリメータ部分の前記通路は、前記第1のコリメータ部分の前記通路と直交する向きにあり、かつ該第2のコリメータ部分の前記通路の各々は、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた列により規定される平面内に位置する1本の通路長軸を有している第2のコリメータ部分と、
を備え、
前記第1と第2のコリメータ部分が、互いに固定の関係となるように、且つ、前記点放射線源と前記検出器素子アレイとの間の直接経路に沿って配置されたそれぞれの長軸を有する複数のチャネルをもたらすよう、互いに向かい合って配置されているイメージング・システム。」について以後検討する。

補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「X線感応性像受信器」、「X線源」、「グリツド小板」、および「グリッド」が、補正発明の「検出器パネル」、「点放射線源」、「プレート」、および「コリメータ」に相当することは、その構造・機能からみて明らかである。

イ 引用発明の「第1の走査型グリツド」は、「所定の間隔の回動点で回動可能に取付けられた複数の放射線不透過性グリツド小板であつて、各々の前記小板を前記焦点に焦点合せするものである複数の放射線不透過性グリツド小板と、からなる」ものであり、「前記焦点」が「X線源」であり、隣り合う放射線不透過性グリツド小板の間をX線が通るのであり、「各々の前記小板を前記焦点に焦点合せする」と「各々の前記小板」を仮想の直線(長軸)が通るのであるから、引用発明の「第1の走査型グリツド」は、補正発明の「前記放射線吸収材料からなる複数の第1のプレート・セットより作られた第1のコリメータ部分であって、前記複数の第1のプレート・セットの各々は前記セット内のプレート間に一つの通路を規定するように配置され、かつ前記通路の各々がそれぞれ、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた行により規定される平面内に位置する1本のプレート長軸を有するように構成された、第1のコリメータ部分」に相当することは明らかである。
また、引用発明の「第2の走査型グリツド」は、「所定の間隔に回動可能に取付けられた複数の放射線不透過性グリツド小板とを具備」し、「グリツド小板は前記焦点に対する焦点合せを維持している」のであるから、「第1の走査型グリツド」と同様の構成である。
したがって、引用発明の「第2の走査型グリツド」は、補正発明の「前記放射線吸収材料からなる複数の第2のプレート・セットを備える第2のコリメータ部分であって、前記複数の第2のプレート・セットは前記セット内のプレート間に一つの通路を規定し、」「かつ該第2のコリメータ部分の前記通路の各々は、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた列により規定される平面内に位置する1本の通路長軸を有している第2のコリメータ部分」に相当することは明らかである。

ウ 引用発明の「第2の走査型グリツドは前記第1の走査型グリツドと直角に配列しており」と、補正発明の「前記第1のコリメータ部分に隣接」する、「第2のコリメータ部分であって」、「該第2のコリメータ部分の前記通路は、前記第1のコリメータ部分の前記通路と直交する向きにあり、」「前記第1と第2のコリメータ部分が、互いに固定の関係となるように、且つ、前記点放射線源と前記検出器素子アレイとの間の直接経路に沿って配置されたそれぞれの長軸を有する複数のチャネルをもたらすよう、互いに向かい合って配置され」とは、「前記第1のコリメータ部分に隣接」する、「第2のコリメータ部分であって」、「該第2のコリメータ部分の前記通路は、前記第1のコリメータ部分の前記通路と直交する向きにあり、」「前記第1と第2のコリメータ部分が、前記点放射線源と前記検出器素子アレイとの間の直接経路に沿って配置されたそれぞれの長軸を有する複数のチャネルをもたらすよう、互いに向かい合って配置され」の点で共通する。

エ 引用発明は「走査型グリッド装置」の発明であるが「放射X線が対象体及び走査型グリツド装置を通り、その後X線感応性像受信器に到達する際に、焦点を定義するX線源から発した放射X線の高い一次X線透過性及び低い二次X線透過性を示し得る」ものと特定しているのであるから、引用発明は、X線源とX線感応性像受信器とを共に備えているものといえるので、補正発明の「イメージング・システム」に対応している。
そして、引用発明の「放射X線が対象体及び走査型グリツド装置を通り、その後X線感応性像受信器に到達する際に、焦点を定義するX線源から発した放射X線の高い一次X線透過性及び低い二次X線透過性を示し得る走査型グリツド装置」と、
補正発明の「320keV以上のX線エネルギーを照射する点放射線源と、
検出器素子のアレイを有する少なくとも一つの検出器パネルと、
前記点状放射線源と前記検出器パネルとの間の位置に配置された、放射線吸収材料を含むコリメータと、を備えるイメージング・システム」とは、
「X線エネルギーを照射する点放射線源と、
X線像検出板と、
前記点状放射線源と前記X線像検出板との間の位置に配置された、放射線吸収材料を含むコリメータと、を備えるイメージング・システム」の点で共通する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「X線エネルギーを照射する点放射線源と、
少なくとも一つのX線像検出板と、
前記点状放射線源と前記X線像検出板との間の位置に配置された、放射線吸収材料を含むコリメータと、を備えるイメージング・システムであって、
前記コリメータは、さらに、
前記放射線吸収材料からなる複数の第1のプレート・セットより作られた第1のコリメータ部分であって、前記複数の第1のプレート・セットの各々は前記セット内のプレート間に一つの通路を規定するように配置され、かつ前記通路の各々がそれぞれ、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた行により規定される平面内に位置する1本のプレート長軸を有するように構成された、第1のコリメータ部分と、
前記放射線吸収材料からなる複数の第2のプレート・セットを備える第2のコリメータ部分であって、前記複数の第2のプレート・セットは前記セット内のプレート間に一つの通路を規定し、かつ該第2のコリメータ部分の前記通路の各々は、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた列により規定される平面内に位置する1本の通路長軸を有している第2のコリメータ部分と、
を備え、
前記第1と第2のコリメータ部分が、前記点放射線源と前記検出器素子アレイとの間の直接経路に沿って配置されたそれぞれの長軸を有する複数のチャネルをもたらすよう、互いに向かい合って配置されているイメージング・システム。」である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
点放射線源の照射するX線エネルギーについて、補正発明では、「320keV以上」であるのに対して、引用発明では、特に特定していない点。

(相違点2)
X線像検出板と、コリメータについて、補正発明では、「検出器素子のアレイを有する検出器パネル」と、「第1と第2のコリメータ部分が、互いに固定の関係とな」るものであるのに対して、引用発明では、「X線感応性像受信器」と、第1のグリッドも第2のグリッドも走査型のものである点。

(1)相違点1についての検討
例えば本願優先日前に頒布された特開平6-194451号公報に「【0103】本発明の実際の適用例
最後に、本発明のX線検査装置の実際の適用例について説明する。・・・【0114】
X線の最大エネルギー 検出素子の配列ピッチ
3MeV以上 2.6mm<P<16mm
1?3MeV 1mm<P<16mm
1MeV以下 0.4mm<P<10mm
・・・1MeV以下のエネルギーではX線のエネルギー300keVの値を使用した。」と記載されているように、X線のエネルギーは当業者が適宜設計して使い分けているものであるから、点放射線源の照射するX線エネルギーとして「320keV以上」とすること、すなわち相違点1に記載の補正発明の構成とすることは、当業者が適宜成し得る設計事項にすぎない。

(2)相違点2についての検討
X線像検出板と、コリメータについて、「検出器素子のアレイを有する検出器パネル」と、「第1と第2のコリメータ部分が、互いに固定の関係とな」るものは、例えば、本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5231654号明細書に記載されているように、周知の技術的事項である。
してみると、引用発明において、周知の技術的事項を適用して、相違点2に記載の補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものといえる。

(3)そして、補正発明の作用効果は、引用発明、および周知の技術的事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(4)したがって、補正発明は、引用発明、および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1?11に係る発明は、平成22年1月12日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「【請求項1】点放射線源と、
検出器素子のアレイを有する少なくとも一つの検出器パネルと、
前記点状放射線源と前記検出器パネルとの間の位置に配置された、放射線吸収材料を含むコリメータと、を備えるイメージング・システムであって、
前記コリメータは、さらに、
前面および背面を有する前記放射線吸収材料からなる一体のブロックと、
前記ブロック内に、このブロックを貫通するように形成された複数のチャネルであって該チャネルの各々が、一緒になって前記放射線吸収材料よりなる一つのウェブを構成する複数のチャネル壁により分離され且つ規定されており、前記ウェブが、前記スラブ内に前記複数のチャネルが形成された後に残されるスラブ材料の部分であるところの複数のチャネルとを有し、
前記複数のチャネルの各々が1本の長軸を有し、前記複数のチャネルのこれらの長軸は前記点放射線源の位置で交差しており、前記複数のチャネルの各々を形成する前記壁が前記点放射線源の位置に向かって収束している
前記放射線吸収材料からなる複数の第1のプレート・セットより作られた第1のコリメータ部分であって、前記複数の第1のプレート・セットの各々は前記セット内のプレート間に一つの通路を規定するように配置され、かつ前記通路の各々がそれぞれ、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた行により規定される平面内に位置する1本のプレート長軸を有するように構成された、第1のコリメータ部分と、
前記第1のコリメータ部分に隣接し、前記放射線吸収材料からなる複数の第2のプレート・セットを備える第2のコリメータ部分であって、前記複数の第2のプレート・セットは前記セット内のプレート間に一つの通路を規定し、該第2のコリメータ部分の前記通路は、前記第1のコリメータ部分の前記通路と直交する向きにあり、かつ該第2のコリメータ部分の前記通路の各々は、前記点放射線源および検出器素子の前記アレイのあらかじめ定めた列により規定される平面内に位置する1本の通路長軸を有している第2のコリメータ部分と、
を備え、
前記第1と第2のコリメータ部分が、互いに固定の関係となるように、且つ、前記点放射線源と前記検出器素子アレイとの間の直接経路に沿って配置されたそれぞれの長軸を有する複数のチャネルをもたらすよう、互いに向かい合って配置され、さらに、前記複数のチャネル壁は前記点放射線源に収束するようにテーパが付けられていることを特徴とするイメージング・システム。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1およびその記載事項は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明の「320keV以上のX線エネルギーを照射する点放射線源」を「点放射線源」として点放射線源の限定を省き、
補正発明の「前記ブロック内に前記複数のチャネルが形成され」を「前記スラブ内に前記複数のチャネルが形成され」として明りょうでない記載の釈明を元に戻し、
補正発明の「残される前記放射線吸収材料の部分」を「残されるスラブ材料の部分」としてスラブ材料を実質的に限定した補正を元に戻したものに相当する
そうすると、本願発明の構成要件を全て含む補正発明が、上記「第2 3」において検討したとおり、引用発明、および周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-12 
結審通知日 2012-11-13 
審決日 2012-12-03 
出願番号 特願2000-110457(P2000-110457)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 孝徳  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
信田 昌男
発明の名称 コリメータ装置およびそれを用いたイメージング・システム  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  

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