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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1273134
審判番号 不服2012-2299  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-06 
確定日 2013-04-17 
事件の表示 特願2009-523272「パーティクル振動ダンパ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月 7日国際公開、WO2008/015291、平成21年12月24日国内公表、特表2009-545703〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本件出願は、2007年8月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年8月4日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成21年2月4日付けで国内書面が提出され、平成21年3月23日付けで明細書、請求の範囲、図面及び要約の日本語による翻訳文が提出され、平成21年4月27日付け手続補正書により特許請求の範囲について手続補正がなされ、平成23年1月21日付けで拒絶理由が通知され、平成23年7月22日付けで意見書が提出され、平成23年9月27日付けで拒絶査定がなされ、平成24年2月6日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本件発明

本件出願の請求項1ないし12に係る発明は、平成21年4月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
排ガス・ターボ・チャージャであって、少なくとも一つのキャビティを備えたケーシングを有する排ガス・ターボ・チャージャにおいて、
前記排ガス・ターボ・チャージャの少なくとも一つのキャビティが、パーティクルによる振動ダンパとして、パーティクルで少なくとも部分的に充填され、前記キャビティは、環の形状で形成されていること;及び、
前記キャビティの内側のケーシングの壁面が、硬化処理されまたはゴムでコーティングされていること;
を特徴とする排ガス・ターボ・チャージャ。」

3.刊行物に記載された発明

(1)刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された国際公開第2005/119031号(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

a)「In Systemen・・・中略・・・Gesamtschallpegel bei.」(明細書第1ページ第7及び8行)(なお、上記の摘記箇所の記載において、ドイツ語特有の表記(アー・ウムラウト、ウー・ウムラウト、オー・ウムラウト、エスツェット)は、アルファベットで表記している(アー・ウムラウトは「ae」、ウー・ウムラウトは「ue」、オー・ウムラウトは「oe」、エスツェットは「ss」)。以下、摘記箇所は全て同様である。)

(当審仮訳:「内燃機関と排ガスタービン式過給機とから成るシステムでは、排ガスタービン式過給機とその接続された成分が全音響レベルにかなり大きく寄与する。」)

b)「Der Erfindung・・・中略・・・einsetzbar ist.」(明細書第2ページ第9ないし12行)

(当審仮訳:「この発明の課題は、騒音源の出来るだけ近くに吸収消音器を備えている圧縮機を創作することである。さらに、この発明の課題は、圧縮機には騒音源に出来るだけ近く使用できる吸収消音器を創作することである。」)

c)「Fig.1 zeigt・・・中略・・・zu 200-300℃.」(明細書第3ページ第20行ないし第4ページ第20行)

(当審仮訳:「 図1は圧縮機の出口を概略的に示す。ガス流入側ハウジング部材21とガス流出側ハウジング部材22を包含する部分的に図示された圧縮機ハウジングには、圧縮機羽根車が配置されていて、同様に一部のみを図示している。この圧縮機羽根車は軸を介して駆動部と、例えば排ガス作動するタービンと連結されている。圧縮すべき媒体、例えば内燃機関用の空気は流路3を通して案内されて、この場合に回転する圧縮機羽根車によって処理される。この流路は圧縮機内で空気流入側吸込み接続部から圧縮機羽根車を介して通常には螺旋状圧力容器にまで案内され、この圧力容器から圧縮された媒体が圧縮機から、例えば内燃機関のシリンダ内へ案内される。
この圧縮機羽根車はボスとこのボスに配置された回転羽根とから構成されている。圧縮機羽根車の後に媒体は図1に同様に図示されていない案内羽根をもつ案内装置(ディフューザ)に案内される。圧縮機羽根車の回転検査部から案内装置(ディフューザ)の案内検査部までの移行部においては、圧縮機の騒音のかなりの部分が発生される、というのは、加速された媒体が流路で横切って配置された案内羽根に衝突し、著しく遅延されるからである。
この領域に配置されているこの発明による吸収消音器は、図1に図示された実施態様では吸音材料44を充填した室を包含する。この実施態様の吸音材料では、例えば極めて敏感な錆びない鋼繊維製のヘエルト(例えば製品名称Bekinox の下で知られている) が重要である。吸音材料が引裂き流れにより流路内で引き裂かれなく、室から洗い流されるので、室は流路3に対してカバー薄板42によって覆われている。このカバー薄板は例えば目の細かい流れ抵抗織物を包含し、圧縮機の全作動温度範囲、例えば200-300℃までの間に理想的に音響透過である。」)

d)「Der Schalldaempfer・・・中略・・・gedaempft werden.」(明細書第5ページ第1ないし18行)

(当審仮訳:「この消音器は流路の片側或いは両側に環状に全部分に沿って、或いはしかし環状セグメント状に流路の周辺の一部或いは複数の部分に沿って配置されている。この場合に、場合によって大きな圧力容器によって受けた望まれない循環流れを消音器の内部で阻止するために、消音器は流路の周辺方向に或いは流れ方向で複数の室に分割され得る。
図2に図示された実施態様におけるこの発明による吸収消音器はさらに室41を包含する。けれども、この実施態様では、カバーは吸音薄板45或いは板或いは吸音材料製の板、およそ焼結されたアルミニウム製板によって行われる。正確な厚さは流れ負荷や吸収抑制の要件に依存している。吸音板の後部の室の深さは減衰すべき周波数に調整されている。この場合に室41は空であり、即ち空気で充填され、別の吸音材料を包含し得る。さらに、消音器はリブ(隔壁)によって個別室に分割され得る。この場合に個別室は異なる周波数に調整され、この形式で大きな周波数範囲が減衰される。」)

e)「1 Verdichterrad
・・・中略・・・
53 Leitschaufeln」(明細書第7ページ第2ないし14行)

(当審仮訳:「1 圧縮機羽根車
21,22 圧縮機ハウジング
3 流路
4 吸収消音器
41 室
42 カバー薄板
43 支持板
44 吸音材料
45 吸音カバー薄板
46 後壁
5 案内装置、ディフューザ
51,52 ディフューザ壁
53 案内羽根」)

(2)上記(1)a)ないしe)及び図面の記載から分かること

イ)上記(1)d)の記載によれば、室41は、環状に形成されていることが分かる。

(3)刊行物に記載された発明

したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。

<刊行物に記載された発明>

「排ガスタービン式過給器であって、少なくとも一つの室41を備えた圧縮機ハウジング21,22を有する排ガスタービン式過給器において、
排ガスタービン式過給器の少なくとも一つの室41が、吸音材料44による吸収消音器として、吸音材料44で充填され、室41は、環状で形成されている排ガスタービン式過給器。」

4.対比・判断

本件発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、刊行物に記載された発明における「排ガスタービン式過給器」、「室41」及び「圧縮機ハウジング21,22」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明における「排ガス・ターボ・チャージャ」、「キャビティ」及び「ケーシング」に相当する。
また、刊行物に記載された発明における「吸音材料44」は、「吸音材料」という限りにおいて、本件発明における「パーティクル」に相当する。
また、上記3.(1)d)の記載によれば、刊行物において、「吸収消音器」は、騒音における、ある周波数範囲を減衰するものとして説明されており、ここで、周波数は振動の状態を表すパラメータの1つであることが明らかであるから、刊行物に記載された発明における「吸収消音器」は、その機能(振動を減衰する機能)からみて、本件発明における「振動ダンパ」に相当するといえる。

してみると、本件発明と刊行物に記載された発明とは、
「排ガス・ターボ・チャージャであって、少なくとも一つのキャビティを備えたケーシングを有する排ガス・ターボ・チャージャにおいて、
排ガス・ターボ・チャージャの少なくとも一つのキャビティが、吸音材料による振動ダンパとして、吸音材料で少なくとも部分的に充填され、キャビティは、環の形状で形成されている排ガス・ターボ・チャージャ。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>

「吸音材料」及び「キャビティ」に関し、
本件発明においては、「吸音材料」が「パーティクル」であり、「キャビティの内側のケーシングの壁面が、硬化処理されまたはゴムでコーティングされている」のに対し、
刊行物に記載された発明においては、「吸音材料」が「吸音材料44」であり、本件発明における「キャビティ」に相当する「室41」の内側の壁面が、そのようにされているか否か不明である点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。

振動ダンパにおいて、吸音材料としてパーティクルを採用し、当該パーティクルを充填する室(キャビティ)の内側の壁面をゴムでコーティングすることは、本件出願の優先日前周知の技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された特開2006-125195号公報[2006年5月18日出願公開。特に、【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項4】、段落【0009】、【0010】、【0012】、【0020】、【0027】、【0028】及び【0034】並びに図2及び3]、特開2002-67945号公報[特に、【特許請求の範囲】の【請求項7】、段落【0046】及び図1]及び特開昭62-94329号公報[特に、第1ページ右下欄第第9ないし13行、第2ページ左下欄第8行ないし右下欄第3行、第3ページ左上欄第2ないし13行及び第3ページ右上欄第16行ないし左下欄第4行並びに第1ないし4図]等参照。以下、「周知技術」という。)。である。
してみると、刊行物に記載された発明における「吸音材料44」及び「吸音材料44」が充填される「室41」の内側の壁面について、周知技術を適用して、上記相違点に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。

そして、本件発明は、全体としてみても、刊行物に記載された発明及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

5.むすび

以上のとおり、本件発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-05 
結審通知日 2012-11-06 
審決日 2012-12-04 
出願番号 特願2009-523272(P2009-523272)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 柳田 利夫
金澤 俊郎
発明の名称 パーティクル振動ダンパ  
代理人 野河 信久  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 哲  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 峰 隆司  
代理人 中村 誠  
代理人 福原 淑弘  
代理人 白根 俊郎  
代理人 村松 貞男  

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