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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1273195
審判番号 不服2012-1399  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-25 
確定日 2013-04-25 
事件の表示 特願2008-125455「ポケット形状検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月26日出願公開、特開2009-276102〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年5月13日の出願であって、平成23年10月31日付け(送達:同年11月8日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月25日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
そして、本願の請求項1ないし10に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「ポケット部の形成された帯状の包装用フィルムに内容物を充填し、
前記ポケット部を塞ぐようにして前記包装用フィルムに対しカバーフィルムを取着することでPTPフィルムとし、
当該PTPフィルムをシート単位で打ち抜くことに基づいてPTPシートを製造するPTPシートの製造過程において用いられ、
前記PTPフィルム又はPTPシートのポケット部の形状を三次元計測する三次元計測手段と、
前記三次元計測手段の計測結果に基づき、前記ポケット部の形状について良・不良を判定する判定手段と
を備えてなるポケット形状検査装置。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用例記載の事項・引用発明

(1)記載事項
これに対して、原審で主たる引用例として引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2004-28604号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1-1)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、錠剤の外観を検査する外観検査装置及び該検査装置を備えたPTP包装機を含む技術分野に属するものである。」

(1-2)
「【0048】
さて、図1に示すように、PTP包装機30では、各ポケット部44に錠剤1が充填された後の容器フィルム41の上に、アルミ製の密封用フィルム42をテンションロール34,35を介して送り込むことができるよう構成されている。そして、密封用フィルム42は、一対のシールロール36,36により容器フィルム41に固着させられる。これによって、錠剤1が各ポケット部44に充填されたフィルム状のPTPシート43が製造される。かかるフィルム状のPTPシート43は、その後、打ち抜き機構等により所定形状に裁断され、さらに図示しない不良シート排出機構やPTPシート集積機構などへ順に送られる。
【0049】
次に、錠剤の外観検査装置について、図4のブロック図を中心に説明する。外観検査装置は、撮像手段であるCCDカメラ11a,11b、表示装置であるモニタ25、照射手段である照明12a,12b(図1参照)、画像処理装置10などから構成される。なお、CCDカメラ11a,11bと照明12a,12bは、図1ではPTP包装機30内に記載されているが、外観検査装置を構成するものの一つである。
【0050】
照明12a,12bは、例えばシート状のレーザ光(図1のようにPTP包装機30の側面から見た場合にはライン光)を照射可能に構成されている。また、CCDカメラ11a,11bは、レーザ光の照射された反射光を結像させ撮像可能に構成されている。画像処理装置10は、A/D変換器3、画像メモリ16、三次元計測結果メモリ18、CPU20、高さ計測用データ判定用メモリ22、入出力インターフェース23、外観検査結果及び統計データメモリ24、カメラタイミング制御手段26などから構成される。
【0051】
A/D変換器3は、CCDカメラ11a,11bで撮像した一次元イメージデータを、アナログ信号からデジタル信号に変換するものである。ここで、CCDカメラ11a,11bについて説明すると、図2に示すように、CCDカメラ11aは、照明12aの光13aで回転ドラム61に吸着された錠剤1を照らし、各錠剤1を回転ドラム61の幅方向に一次元撮像するものである。また、図1に示すように、CCDカメラ11bは、照明12bの光13bで容器フィルム41に充填された各錠剤1を照らし、容器フィルム41の幅方向に撮像するものである。
【0052】
より詳しくは、外観検査装置を構成するCCDカメラ11a及び照明12aは、前述した錠剤投入装置52に対応して設けられている。すなわち、照明12aは、回転ドラム61の収容ポケット62に吸着されている錠剤1に対し、斜め上方から光13aを照射可能に設けられている。また、CCDカメラ11aは、前記錠剤1からほぼ水平方向に反射する光を撮像可能に設けられている。
【0053】
また、同じく外観検査装置を構成するCCDカメラ11b及び照明12bは、錠剤投入装置52の下流側において、錠剤1が充填された容器フィルム41を斜め上方から照らすことができるように設けられている。また、CCDカメラ11bは、容器フィルム41に充填された錠剤1からほぼ鉛直方向に反射する光を撮像可能に設けられている。
【0054】
従って、一つのCCDカメラ11aが錠剤1の一方の表面側を撮像するのに対し、別のCCDカメラ11bは錠剤1の他方の表面側を撮像するものであり、これによって錠剤1の表裏両面の検査を行うことができるようになっている。
【0055】
なお、これら両CCDカメラ11a,11bによって撮像された結果を利用して錠剤1の検査を行うための手段及び処理過程は全く同一であるので、以下においては、特に両者を区別する場合を除いて、CCDカメラ11a,11bを符号11として説明する。また、照明12a,12b及び光13a,13bについても同様とする。
【0056】
図4において、画像メモリ16は、A/D変換されたイメージデータを順次記憶して、座標上どこが光ったかをデータとして順次記憶するものである。
【0057】
また、三次元計測結果メモリ18は、自身に記憶されている位置(座標)に同期して、前記画像メモリ16に記憶されたデータ、つまり、経時的にどこの座標が光ったかといった内容のデータに基づいて得られた高さデータを各座標毎に記憶するものである。1つの錠剤1に関していえば、該錠剤1が通過しきったときに、当該三次元計測結果メモリ18に1つの錠剤1分のデータが埋まりきるようになっている。
【0058】
さらに、CPU20は、各種の画像処理プログラム、その他のプログラムを、高さ計測用データ判定用データメモリ22の記憶内容等を使用しつつ実行するものである。入出力インターフェース23は、PTP包装機30に制御信号を送信し又はPTP包装機30から動作信号等の各種信号を受信するためのものである。これによって、例えば、PTP包装機30の不良シート排出機構などを制御することができる。また、入出力インターフェース23は、モニタ25に表示データを送信するためのものでもあり、イメージデータや外観検査結果などを、モニタ25に表示させることができる。
【0059】
外観検査結果及び統計データメモリ24は、外観検査結果データ、該外観検査結果データを確率統計的に処理した統計データ等を記憶するものである。これらの外観検査結果データや統計データは、CPU20の制御に基づき、モニタ25に表示させることができる。また、これらの外観検査結果データや統計データに基づいて、CPU20がPTP包装機30に制御信号を送信することもできる。
【0060】
カメラタイミング制御手段26は、CCDカメラ11が撮像するイメージデータを、A/D変換器3に取り込むタイミングを制御するものである。かかるタイミングは、PTP包装機30に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて行われる。
【0061】
次に、錠剤の外観検査の処理の手順のうち、この実施の形態における主要な処理である外観検出処理について、以下に説明する。なお、以下の処理は主としてCPU20によって実行される。
【0062】
図5に示すように、照明12からのレーザ光が移動中の錠剤1に照射されると、例えば、図6(a)に示すように、表面が丸みを帯びた錠剤1には湾曲線状の光のラインが当たることとなり、それがCCDカメラ11により撮像される。一方、錠剤1に欠け等が存在する場合には、例えば図6(b)に示すように、錠剤1に当たる光のラインは湾曲状とはならない。そして、錠剤1の移動に伴って、レーザ光の当たる位置が移動してゆくこととなる。
【0063】
ここで、図6(a)のような正常な錠剤1が検査される場合について説明すると、ある時点において、画像メモリ16には、図7(b)に示すように、各座標毎に光の位置に関するデータが記憶される。この場合、錠剤1の中心部付近の高さが最も高い点で光が検出されたとすると、当該座標に対応する高さデータとして例えば「10」が記憶される。一方、錠剤1の縁部の高さが低い点で光が検出されると、当該座標に対する高さデータとして例えば「7」が記憶される。つまり、一方の縁部側から他方の縁部側にかけて、「7」「8」「9」「10」「10」「10」「9」「8」「7」という高さデータが記憶される。
【0064】
そして、三次元計測結果メモリ18には、図7(c)に示すように、前記画像メモリ16に記憶されたデータに基づいて得られた高さデータが各座標毎に記憶される。そして、上述したように、1つの錠剤1が通過しきったときに、当該三次元計測結果メモリ18には1つの錠剤1分の高さデータ(三次元データ)が全て記憶されることとなる。
【0065】
そして、CPU20では、三次元計測結果メモリ18に記憶された当該錠剤1に関する高さデータと、高さ計測用データ判定用データメモリ22に記憶された判定用の基準値との比較判定が行われる。例えば、各座標毎に判定用の基準値(基準範囲)が設定されており、該比較判定の結果、少なくとも1つの座標に関し(1つでもよいし複数の座標でもよい)、当該錠剤1に関する高さデータが判定用の基準範囲を逸脱する場合には、錠剤1に異常が存在するものと判定される。これに対し、当該錠剤1に関する高さデータが基準範囲を逸脱しない場合には(許容範囲内にある場合には)、錠剤1が正常であるものと判定される。」

(1-3)
「【0070】
(b)また、図9に示すように、密封用フィルム42が容器フィルム41に固着させられた後段階において、PTPシート43のポケット部44側にCCDカメラ11d及び照明12dを設けることとし、これにより錠剤1の一方の面の高さデータを求め、異常の有無を検出することとしてもよい。」

(2)引用発明
上記記載、及び、図1、4,7,9の記載を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認める。

【引用発明】
「ポケット部44(ポケット部に相当。)の形成された帯状の容器フィルム41(包装用フィルムに相当。)に錠剤1(内容物に相当。)を充填(充填に相当。)し、
前記ポケット部44(ポケット部に相当。)を塞ぐようにして前記容器フィルム41(包装用フィルムに相当。)に対し密封用フィルム42(カバーフィルムに相当。)を固着(取着に相当。)することでフィルム状のPTPシート43(PTPフィルムに相当。)とし、
当該フィルム状のPTPシート43(PTPフィルムに相当。)を打ち抜き機構等により所定形状に裁断する(シート単位で打ち抜くに相当。)ことに基づいてPTPシート(PTPシートに相当。)を製造(製造に相当。)するPTPシートの製造過程(PTPシートの製造過程に相当。)において用いられ、
前記フィルム状のPTPシート43(PTPフィルムに相当。)のポケット部44内に充填された錠剤1の高さデータ(三次元データ)を求める(形状を三次元計測するに相当。)、CCDカメラ11d、照明12d及び画像処理装置10(三次元計測手段に相当。)と、
前記CCDカメラ11d、照明12d及び画像処理装置10(三次元計測手段に相当。)の求めた高さデータ(三次元データ)(計測結果に相当。)に基づき、前記ポケット部44内に充填された錠剤1の高さについて正常・異常(形状について良・不良に相当。)を判定(判定に相当。)する、CPU20及び高さ計測用データ判定用データメモリ22(判定手段に相当。)と
を備えてなる錠剤の高さ検査装置(形状検査装置に相当。)。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比

(1)まず、本願発明と引用発明とを、主たる構成要素毎に対比する。

引用発明における、「ポケット部44」、「容器フィルム41」、「錠剤1」、「充填」、「密封用フィルム42」、「固着」、「フィルム状のPTPシート43」、「打ち抜き機構等により所定形状に裁断する」、「PTPシート」、「製造」、「PTPシートの製造過程」は、それぞれ、
本願発明における、「ポケット部」、「包装用フィルム」、「内容物」、「充填」、「カバーフィルム」、「取着」、「PTPフィルム」、「シート単位で打ち抜く」、「PTPシート」、「製造」、「PTPシートの製造過程」に相当する。

そして、引用発明における、「高さデータ(三次元データ)を求める」、「CCDカメラ11d、照明12d及び画像処理装置10」、「求めた高さデータ(三次元データ)」、「高さについて正常・異常」、「判定」、「CPU20及び高さ計測用データ判定用データメモリ22」、「高さ検査装置」は、それぞれ、
本願発明における、「形状を三次元計測する」、「三次元計測手段」、「計測結果」、「形状について良・不良」、「判定」、「判定手段」、「形状検査装置」に相当する。

また、引用発明における「ポケット部44内に充填された錠剤1」と、本願発明における「ポケット部」は、共に、「PTPフィルムの特定箇所」で共通する。

(2)してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

【一致点】
「ポケット部の形成された帯状の包装用フィルムに内容物を充填し、
前記ポケット部を塞ぐようにして前記包装用フィルムに対しカバーフィルムを取着することでPTPフィルムとし、
当該PTPフィルムをシート単位で打ち抜くことに基づいてPTPシートを製造するPTPシートの製造過程において用いられ、
前記PTPフィルムの特定箇所の形状を三次元計測する三次元計測手段と、
前記三次元計測手段の計測結果に基づき、前記PTPフィルムの特定箇所の形状について良・不良を判定する判定手段と
を備えてなる特定箇所形状検査装置。」

【相違点】
本願発明では、形状を三次元計測する箇所が、「ポケット部」であるのに対し、
引用発明では、高さデータ(三次元データ)を求める(形状を三次元計測するに相当。)箇所が、「ポケット部44内に充填された錠剤1」である点。

5.判断
上記相違点について検討する。

この種のPTPシートの検査装置において、錠剤に加え、錠剤が充填されるポケットも検査対象とすることは周知の事項であるし
(例えば、原審で引用された
特開2001- 41894号公報の【要約】や、
特開2007-279064号公報の【要約】 参照。)、
PTPシートの製造工程において、ポケット部が変形する不具合を解消する必要があることも周知の課題であるから
(例えば、原審で引用された、
特開2007-261591号公報の【0007】、
特開2002- 87413号公報の【0030】、
特開平 1-279008号公報の2頁左下欄 参照。)、
引用発明において、高さデータ(三次元データ)を求める(形状を三次元計測するに相当。)箇所を、ポケット部44内に充填された錠剤1からポケット部44に変更することは、当業者が必要に応じてなしうる単なる測定・検査箇所の変更にすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知の技術的事項から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-20 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-11 
出願番号 特願2008-125455(P2008-125455)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清藤 弘晃  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 中塚 直樹
山川 雅也
発明の名称 ポケット形状検査装置  
代理人 川口 光男  

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