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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65C
管理番号 1273196
審判番号 不服2012-1581  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-27 
確定日 2013-04-25 
事件の表示 特願2007- 78163「ラベル剥離ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月 9日出願公開、特開2008-239161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年3月26日の出願であって、平成23年10月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成24年1月27日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成24年11月19日付けで当審の拒絶理由が通知され、平成25年1月18日付けで請求人より意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.当審の拒絶理由
当審において平成24年11月19日付けで通知した拒絶理由の概要は、
「1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


特許請求の範囲の請求項2の「ラベル供給用帯状体を挟み込むような状態」の構成が不明確で本願発明を特定できない。

よって、請求項2に係る発明は明確でない。

2.平成24年1月27日付けでなされた特許請求の範囲についての補正は下記の点で願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないため特許法第17条の2第3項の規定に反する。


請求項2の複数のフリーローラが「ラベル供給用帯状体を挟み込むような状態で相互に近接した」点。
(本願願書に最初に添附した明細書及び図面には、「ラベル供給用帯状体を挟み込むような状態で相互に近接した」の記載及びフリーローラ間の距離を規定する点、当該距離を規定することによる効果について明確に説明がされているとは認められず、この距離を特定のものに規定する発明が記載されているとは認められない。)

3.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献については引用文献等一覧参照)
・請求項1?4
・引用文献1?9
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2004-224353号公報
2.特開2001-315730号公報
3.特開平10-119942号公報
4.実願平2-68071号公報(実開平4-28996号)のマイクロフィルム
5.実願平1-96104号(実開平3-35010号)のマイクロフィルム
6.実願昭56-5729号(実開昭57-120411号)のマイクロフィルム
7.実願昭56-106248号(実開昭58-12124号)のマイクロフィルム
8.実願平2-4404号(実開平3-97009号)のマイクロフィルム
9.特表2002-528351号公報」
というものである。

第3.請求項2の記載
本願の請求項2の記載は、平成25年1月18日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりである。
「長尺帯状の離型紙に厚さが5?50μmの複数のタックラベルが貼着されたラベル供給用帯状体を剥離プレートに引っかけて逆方向に急角度で方向転換させながら引っ張ることにより、離型紙からタックラベルを剥離するラベル剥離ユニットであって、
前記剥離プレートの先端部からラベル供給用帯状体が離れないように、ラベル供給用帯状体を押える押え部材と、
前記押え部材のラベル供給用帯状体の送出方向の上流側でラベル供給用帯状体をS字状に掛け渡して挟み込む複数のフリーローラとを備え、
隣接する前記フリーローラは、両者がラベル供給用帯状体を挟み込む位置からそれぞれ逆方向の半円弧の全領域にラベル供給用帯状体が接触しており、
前記押え部材は、ラベル供給用帯状体に対して、その幅方向に延びる線状に接触していることを特徴とするラベル剥離ユニット。」

第4.理由2(特許法第17条の2第3項違反)について
請求人は、平成25年1月18日付け手続補正で請求項2の「ラベル供給用帯状体を交互に掛け渡す、ラベル供給用帯状体を挟み込むような状態で相互に近接した」の記載を「ラベル供給用帯状体をS字状に掛け渡して挟み込む」と補正し、さらに「隣接する前記フリーローラは、両者がラベル供給用帯状体を挟み込む位置からそれぞれ逆方向の半円弧の全領域にラベル供給用帯状体が接触しており」との記載を追加した。
したがって、前記平成25年1月18日付け手続補正によっても、平成24年1月27日付け手続補正により追加された「挟み込む」の記載は残っているが、本願願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に「挟み込む」ことについては記載されておらず、「ラベル供給用帯状体をS字状に掛け渡して挟み込む」ことが、これらに記載された事項であるとは認められない。
さらに、フリーローラが「ラベル供給用帯状体を挟み込む位置」を有することや、それによる効果について、本願願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に明確に説明がなされているとも認められないので、「隣接する前記フリーローラは、両者がラベル供給用帯状体を挟み込む位置からそれぞれ逆方向の半円弧の全領域にラベル供給用帯状体が接触して」いることが、これらに記載された事項であるとは認められない。
なお、請求人は同日付けの意見書で『請求項1?3の補正事項「ラベル供給用帯状体をS字状に掛け渡して挟み込む複数のフリーローラ」は、補正前の明細書における段落【0023】の記載「…ラベル供給用帯状体LBをS字状に掛け渡す2個のフリーローラ15a、15bのうち、ラベル供給用帯状体LBの送出方向の下流側のフリーローラ15bを剥離プレート13の先端部近傍に配置することによって、フリーローラ15bが押え部材の役割を果たしている…」及び図9、段落【0017】の記載「…この押え部材14のラベル供給用帯状体LBの送出方向の上流側でラベル供給用帯状体LBをS字状に掛け渡す2個のフリーローラ15a、15bと、…」及び図5、段落【0028】の記載「…S字状に掛け渡されたラベル供給用帯状体LBが2個のフリーローラ15a、15bを通過する際に、…」及び図12にそれぞれ基づくものであり、新規事項の追加に該当するものではありません。』と主張しているが、本願願書に最初に添付した明細書の前記各段落に「ラベル供給用帯状体をS字状に掛け渡」すことが記載されているとしても、「挟み込む」ことについては記載されておらず、「挟み込む」状態が「S字状に掛け渡す」ことから直接特定できる事項とも認められない。
上記理由2の点は、当業者によって当初明細書の記載から導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものではないと認めるに足りる証拠もなく、また、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものとは認められず、したがって、平成24年1月27日付けの手続補正は、依然として、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第5.理由1(特許法第36条第6項第2号違反)について
仮に、平成24年1月27日付けの手続補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであるとしても、本願明細書の【発明の詳細な説明】及び図面には、「挟み込む」という用語の定義が記載されておらず、フリーローラ間の距離の規定やそれによる効果について記載も示唆もされていないので、これらを参照しても、フリーローラが「ラベル供給用帯状体をS字状に掛け渡して挟み込む」との記載が、フリーローラとラベル供給用帯状体のどのような関係を表すのかを特定することができない。
また、フリーローラがラベル供給用帯状体を「挟み込む位置」に関する説明が本願明細書の【発明の詳細な説明】及び図面に記載されているとは認められず、これらを参照しても「隣接する前記フリーローラは、両者がラベル供給用帯状体を挟み込む位置からそれぞれ逆方向の半円弧の全領域にラベル供給用帯状体が接触して」の記載が、隣接する各フリーローラとラベル供給用帯状体がどのように接触するものを表すのかを特定することができない。
したがって、請求項2に係る発明は明確でなく、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第6.理由3(特許法第29条第2項関係)について
仮に、平成24年1月27日付けの手続補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであり、また、請求項2において、「ラベル供給用帯状体をS字状に掛け渡して挟み込む」とは、単に「ラベル供給用帯状体をS字状に掛け渡し」という程度の意味であり、「隣接する前記フリーローラは、両者がラベル供給用帯状体を挟み込む位置からそれぞれ逆方向の半円弧の全領域にラベル供給用帯状体が接触しており」とは、単に「隣接する前記フリーローラは、それぞれ逆方向の半円弧の全領域にラベル供給用帯状体が接触しており」という程度の意味であるとして予備的に検討すると、以下に述べるように、請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
6-1.引用文献及び引用発明
(1)前記当審の拒絶理由に引用された特開2004-224353号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「ラベルLが剥離部42を通過した直後において、リード端L1の剥離シートSからの剥離が生じ易く、図示しない搬送装置を介して搬送される被着体Wの面に貼付するときに、リード端L1の非粘着面側が被着体Wの外面に接してしまう場合があり、これにより、所定位置にラベルLを正確に貼付できなくなるという不都合を招来する。このような不都合は、ラベルLに設けられた粘着剤の粘着力が強い場合、或いは、ラベルL自体が形状追従性を強く有している場合には一層顕在化し、ラベル基材LBの送り速度が早くなるほど顕著に現れ、ラベルLが剥離できなくなる場合がある。従って、用いる粘着剤やラベル基材の材質についての制約も伴うものとなる。なお、前記不都合は、ラベル基材LBの送り速度と被着体Wの搬送速度を低下させることで対応することができるが、これでは、ラベル貼付効率の大幅な低下が余儀なくされて生産性が悪くなるという別異の不都合を招来する。

本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、ラベルを剥離する前に、剥離シートに対するラベルの密着力を低下させることができるようにし、剥離部での瞬時のラベル剥離を実現することのできるラベル剥離装置を提供することにある。」(段落【0005】?【0006】参照)
(b)「本発明は、帯状の剥離シートにラベルが貼付されたラベル基材を送り出して順次ラベルを剥離するためのラベル剥離装置において、前記ラベル基材の送り出しを案内する本体部と、前記ラベル基材を鋭角な方向に反転可能とする剥離部とを備え、
前記本体部の領域内に、前記剥離シートに対するラベルの密着力を低下させる送り方向変換手段が設けられる、という構成を採っている。このような構成を採用すれば、ラベル基材が剥離部を通過する前の段階で、ラベルが剥離シートから剥離され易い状態となる。従って、剥離部近傍を通過する被着体に対して、ラベルを確実に剥離して所定位置に正確に貼付することができ、従来のような剥離ミスを未然に防止することが可能となる。しかも、ラベル基材の送り速度を高めることが可能となり、被着体の搬送速度をこれに同期させてラベル貼付効率も飛躍的に向上させることができる。

本発明において、前記送り方向変換手段は、ラベル基材の送り方向に沿って複数箇所に設けられ、最下流側に位置する送り方向変換手段は、前記剥離部の直前に設けられて当該剥離部に向かってラベル基材の送り方向をラベル側に変換するように設けられる、という構成を採っている。このような構成とすれば、剥離部領域におけるラベルのリード端は、その直前位置に対して相対的に角度変位した姿勢となる。従って、この角度変位した姿勢を利用することで、リード端側の粘着剤面を被着体の面に対応させることが可能となり、ラベルの貼付ミスを効果的に防止することができる。」(段落【0008】?【0009】参照)
(c)「図1ないし図3には、本実施形態に係るラベル剥離装置が示されている。これらの図において、ラベル剥離装置10はラベル基材LBの送り出しを案内する板状の本体部11と、この本体部11の先端側(図1中左端側)に設けられた剥離部12と、前記本体部11の領域内に設けられた第1及び第2の送り方向変換手段13,14とを備えて構成されている。

前記剥離部12は本体部11と一体に設けられており、前記平面11Aに対して鋭角となるように下部後方に向けられた傾斜面12Aを設けることによって形成されている。

前記第1及び第2の送り方向変換手段13,14は相互に略同一構造に設けられている、第1の送り方向変換手段は、本体部11におけるラベル基材LBの送り方向上流側に設けられる一方、第2の送り方向変換手段14は、前記剥離部12の直前位置に設けられている。これら第1及び第2の送り方向変換手段13,14は、ラベル基材LBの送り方向を略同一平面内で横切る方向(図1中上下方向)において、前記本体部11の平面11Aに形成された溝20と、当該溝20に沿って配置された軸状部材21とにより構成されている。軸状部材21の溝側外周面は、図2に示されるように、本体部11の平面11A位置よりも低い位置となるように図示しない支持手段を介して回転不能に設けられ、これにより、軸状部材21の溝側外周面と、溝20の内面との隙間を通じてラベル基材LBを送り出しできるようになっている。ここで、溝20の内面形状は湾曲面とされる一方、軸状部材21の溝側外周面は湾曲面に沿うような形状に設けられているため、これにより、ラベル基材LBが隙間を通過するときに、当該ラベル基材LBがしごかれるようになり、しごかれたラベルLは丸まろうとするため、剥離シートSに対するラベルLの密着力を低下させる作用を与えるようになっている。」(段落【0014】?【0017】参照)
(d)「まず、図示しないロール状に巻回されたラベル基材LBからリード端を所定量引き出しておき、当該リード端を、所定の巻取装置の回転ドラムに固定しておくものとする。この一方、剥離部12の近傍位置を通過するように、本体部11の平面11Aに対して略30?35度程度の角度位置に沿って被着体Wが順次搬送されているものとする。

前記回転ドラムの回転により、ラベル基材LBは本体部11の平面11Aを案内面としながら送り出され、本体部11を通過するラベル基材LBは前記平面11Aと平行な姿勢となる。第1の送り方向変換手段13領域を通過するラベル基材LBは、溝20と軸状部材21との円弧状の隙間を通り抜ける際に、当該ラベル基材LBがしごかれるように通過し、このとき、剥離シートSに対するラベルLの密着力を低下させるような作用を受ける。そして、第2の送り方向変換手段14においても、ラベル基材LBが同様の作用を繰り返し受け…リード端L1側の粘着力は低下し剥離シートSから剥がれ易くなる。

従って、剥離部12での急激な反転をすることによりラベルLは剥離シートSから簡単に剥がれるため、剥離遅れが生じて貼付不良が発生することがなくなり、剥離部12の先端近傍を通過する被着体Wに対して粘着面側を被着体Wの面に接着させることとなる。」(段落【0019】?【0021】参照)
(e)「本体部11の平面11Aを凹ませて湾曲面となる溝20に代え、平面11Aの一部を凸レンズ状に形成し、この凸状領域を上方から被せる部材を配置してラベル基材LBが通過する隙間を形成することもできる。更に、第2の送り方向変換手段14に関し、剥離部12の位置が本体部11の平面11A位置よりも高くなるように湾曲させ、当該湾曲した領域に軸状部材21を対応配置させるようにしてもよい。また、前記軸状部材21は回転不能なものに限らず、回転可能なローラ等に代替することができる。」(段落【0024】参照)
上記(b)及び図4より、ラベル基材には、順次剥離される複数のラベルが貼付されると認められ、上記(d)及び図4より、ラベル基材LBは巻取装置の回転ドラムにより引っ張られて剥離部で引っかけられて急激な反転をすると認められるので、以上の記載及び図面によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「帯状の剥離シートに複数のラベルが貼付されたラベル基材のラベルを、ラベル基材を鋭角な方向に反転可能とする板状の本体部に引っかけて急激な反転をしながら引っ張ることにより、前記本体部の先端に設けた剥離部で、順次剥離するラベル剥離装置であって、
前記本体部の先端に設けた剥離部の前にラベル基材の送り方向に沿って複数箇所に設けられ、本体部の平面に形成された溝と、当該溝に沿って配置された回転可能なローラからなる、ラベル基材の送り方向変換手段を備えたラベル剥離装置。」

(2)前記当審の拒絶理由に引用された特開2001-315730号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「従来のラベル剥離装置71は、図8の矢印Vとして示すように搬送途中に台紙74が浮き上がってしまい、十分な鋭角が得られず、ラベル76が台紙74から剥離せずに装置内部に引き込まれてしまうという問題が生じている。また、特定のラベルによっては十分に剥離するが、他の種類のラベルについては不十分となるというように、不安定な剥離作用をなし、自動化工程には組み込みにくいものとなっている。

本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、ラベルの剥離が確実になされるラベル剥離装置を提供することにある。

かかる目的を達成するために、本発明のラベル剥離装置は、表面にラベルが貼付けされた台紙を搬送する台紙搬送手段と、搬送されるラベル付きの台紙の搬送路となる台部と、この台部との間に形成した隙間に台紙を通し、そのたわみを防止すると共に案内ガイドとなるガイドと、台紙とラベルとが剥離される剥離位置とガイドの間に配置され、隙間を通ってきた台紙を台部から離れる方向に押しやる押し上げ手段と、台紙をラベル貼付側とは反対方向に曲げるラベル剥離部を設けている。

このため、案内ガイドを通過したラベル付き台紙が、押し上げ手段に押し上げられることで、その後、ラベル剥離位置において、台紙からラベルが確実に剥離されることとなる。」(段落【0003】?【0006】参照)
(b)「さらに、他の発明は、上述の各発明に加え、押し上げ手段を丸棒材とし、その設置位置を変更可能にしている。このように、押し上げ手段が丸棒材とされているので、ラベル付きの台紙は、滑らかにこの押し上げ手段を通過していく。また、この丸棒材の位置が変更可能となっているため、ラベルの大きさ、台紙の腰の強さ等が異なる様々のラベル付きの台紙に対してもこのラベル剥離装置を適用することができる。」(段落【0011】参照)
(c)「ラベル剥離装置1の上部後方には、たわみを防止し、テンションを一定に保つための案内ガイドとなる板状のガイド15が、また操作部3の近傍には、導入ガイド15aがそれぞれ配置されている。また、ラベル剥離装置1の上部後方には、ガイド15を固定するためのネジ31,31と、ラベル33の弾性力を利用してラベル33を容易に剥離させるための押し上げ手段となる丸棒材16と、丸棒材16を支持する一対の丸棒材支持部17,17と、それらを固定するためのネジ34,34とが備えられている。

このラベル剥離装置1の後方上部には、ラベル剥離後の台紙32を装置内部に引き込むための開口18が備えられている。この開口18とラベル剥離装置1の後方角部とでラベル剥離部が構成される。」(段落【0024】?【0025】参照)
(d)「導入ガイド15aの台紙32の進入角度wをここでは75度としているが、この値は、30?130度の範囲とすることでラベル付きの台紙32が進入し易くなると共にその後のラベル剥離部でのラベル33の剥離が確実となる。」(段落【0028】参照)
(e)図1?3より、台紙32からラベル33を剥離する箇所の上流側に複数の軸状案内部材(導入ガイド15a、丸棒材16)を設け、前記軸状案内部材の両者のそれぞれ逆方向の円弧領域に台紙32が接触するように掛け渡して、台紙32の送り方向を変換していることが見てとれる。

6-2.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「帯状の剥離シート」、「ラベル」、「ラベルが貼付されたラベル基材」、「板状の本体部」、「ラベル剥離装置」は、本願発明の「長尺帯状の離型紙」、「タックラベル」、「タックラベルが貼着されたラベル供給用帯状体」、「剥離プレート」、「ラベル剥離ユニット」に相当し、引用発明の「ラベル基材のラベルを、ラベル基材を鋭角な方向に反転可能とする板状の本体部に引っかけて急激な反転をしながら引っ張ることにより、前記本体部の先端に設けた剥離部で、順次剥離する」は、本願発明の「ラベル供給用帯状体を剥離プレートに引っかけて逆方向に急角度で方向転換させながら引っ張ることにより、離型紙からタックラベルを剥離する」に相当する。
また、引用発明の「本体部の先端に設けた剥離部の前にラベル基材の送り方向に沿って複数箇所に設けられ、本体部の平面に形成された溝と、当該溝に沿って配置された回転可能なローラからなる、ラベル基材の送り方向変換手段を備えた」と、本願発明の「剥離プレートの先端部からラベル供給用帯状体が離れないように、ラベル供給用帯状体を押える押え部材と、前記押え部材のラベル供給用帯状体の送出方向の上流側でラベル供給用帯状体をS字状に掛け渡して挟み込む複数のフリーローラとを備え、隣接する前記フリーローラは、両者がラベル供給用帯状体を挟み込む位置からそれぞれ逆方向の半円弧の全領域にラベル供給用帯状体が接触しており」とは、本願発明のラベルの剥離を容易にする目的で設ける「複数のフリーローラ」が、ラベルの剥離を行う剥離プレートの先端部よりラベル供給用帯状体の送出方向の上流側に位置するものと認められ、引用発明の「本体部の先端に設けた剥離部の前」はラベル基材の送り方向に沿って「本体部の先端の上流」に相当するので、「剥離プレートの先端部よりラベル供給用帯状体の送出方向の上流側でラベル供給用帯状体の送り方向を変換する複数の送り方向変換手段とを備え」た限りにおいて一致する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「長尺帯状の離型紙に複数のタックラベルが貼着されたラベル供給用帯状体を剥離プレートに引っかけて逆方向に急角度で方向転換させながら引っ張ることにより、離型紙からタックラベルを剥離するラベル剥離ユニットであって、前記剥離プレートの先端部よりラベル供給用帯状体の送出方向の上流側でラベル供給用帯状体の送り方向を変換する複数の送り方向変換手段とを備えたラベル剥離ユニット。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、隣接するフリーローラに、両者がそれぞれ逆方向の半円弧の全領域にラベル供給用帯状体が接触するようにS字状に掛け渡して送り方向を変換するのに対して、引用発明では、本体部の平面に形成された溝と、当該溝に沿って配置された回転可能なローラによりラベル基材の送り方向を変換する点。
[相違点2]
本願発明では、フリーローラの下流側に、剥離プレートの先端部からラベル供給用帯状体が離れないように、ラベル供給用帯状体を押える押え部材を備え、前記押え部材は、ラベル供給用帯状体に対して、その幅方向に延びる線状に接触しているのに対して、引用発明では、当該構成を有していない点。
[相違点3]
本願発明では、タックラベルの厚さが5?50μmであるのに対して、引用発明では、このように規定されていない点。

6-3.判断
上記相違点1について検討すると、ラベルを剥離する剥離部の上流に複数の軸状案内部材(丸棒)を設け、前記軸状案内部材の両者のそれぞれ逆方向の円弧領域に台紙(本願発明の「ラベル供給用帯状体」に相当)が接触するように掛け渡して送り方向を変換し、ラベルの剥離部での剥離を確実にすることは引用文献2に記載された事項であり(上記、6-1.(2)参照)、引用発明において、上記引用文献2に記載された事項と機能が共通する、当該本体部の平面に形成された溝と、当該溝に沿って配置された回転可能なローラに代えて、ラベル供給用帯状体の方向を変換するフリーローラの両者のそれぞれ逆方向の円弧領域にラベル基材が接触するように掛け渡して送り方向を変換することは、当業者が容易になし得たことである。
また、基材が各案内部材にどのような角度で進入し、退出するか(即ち、各案内部材の円弧領域にどのくらいの長さで接触するか)は当業者が適宜設定し得る設計的事項であって(上記6-1.(1)(e)及び(2)(b)、(d)参照)、ラベル剥離部の上流で、隣接するローラに、両者がそれぞれ逆方向の略半円弧の全領域にラベル供給用帯状体が接触するようにS字状に掛け渡して送り方向を変換することも周知技術にすぎないので(例えば、実願平2-68071号(実開平4-28996号)のマイクロフィルムの第2図、ローラ13参照)、引用発明において、隣接する回転可能なローラに、両者がそれぞれ逆方向の半円弧の全領域にラベル基材が接触するようにS字状に掛け渡して送り方向を変換することは当業者が適宜なし得た程度の事項にすぎない。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の構成は引用発明及び引用文献2に記載された事項、並びに周知技術から当業者が容易に想到し得たことにすぎない
次に、上記相違点2について検討すると、ラベルを剥離するためにラベル担持体の搬送を逆方向に急角度で方向転換させるプレート状部材の先端付近に、ラベル担持体に対して、その幅方向に延びる線状に接触する押え部材を設けることは周知技術にすぎず(例えば、実願平1-96104号(実開平3-35010号)のマイクロフィルム、実願昭56-5729号(実開昭57-120411号公報)のマイクロフィルム参照)、引用発明においても、フリーローラの下流である剥離プレートの先端付近にラベル基材に対して、その幅方向に延びる線状に接触する押え部材を設けて、急角度で方向転換するラベル基材を押さえることは当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点2に係る本願発明の構成は引用発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たことにすぎない
次に、上記相違点3について検討すると、厚みが5?50μmのタックラベルの場合、剥離プレートにラベル供給用帯状体を引っかけて急角度で単に方向転換させるだけでは、剥離しにくいことは当業者に周知の課題であり(例えば、特開2006-143290号公報の段落【0003】参照)、厚みが5?50μmのタックラベルを剥離するために、引用発明及び引用文献2に記載された事項並びに周知技術から容易に想到される、複数のフリーローラーや押さえ部材を備えたラベル剥離装置を用いて剥離を確実にすることは当業者が普通に想起し得たことである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2、並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第7.むすび
以上のとおり、平成24年1月27日付け手続補正は特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしておらず、また、本願は特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしておらず、予備的に検討しても本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-19 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-11 
出願番号 特願2007-78163(P2007-78163)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (B65C)
P 1 8・ 121- WZ (B65C)
P 1 8・ 537- WZ (B65C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳本 幸雄  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 熊倉 強
▲高▼辻 将人
発明の名称 ラベル剥離ユニット  
代理人 西村 陽一  

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