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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16L
管理番号 1273201
審判番号 不服2012-7896  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-27 
確定日 2013-04-25 
事件の表示 特願2007- 30644「配管支持構造」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月28日出願公開、特開2008-196542〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成19年2月9日の出願であって,平成24年1月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲等を対象とする手続補正がなされた。
その後,当審において,平成24年11月26日付けで拒絶理由を通知したところ,平成25年1月24日に特許請求の範囲等を対象とする手続補正がなされるとともに意見書が提出された。

第2.当審で通知した拒絶理由
平成24年11月26日付けで通知した拒絶理由の一つは,以下のとおりである。
「本願の請求項に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開平1-307583号公報
2.登録実用新案第3001776号公報
3.登録実用新案第3012777号公報
4.特開2004-198541号公報
5.特開2003-314525号公報」

第3.本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成25年1月24日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した事項により特定される,以下のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。
「配管と,配管を支持する配管支持部材と,配管を配管支持部材に固定する配管固定部材とからなる配管支持構造において,
前記配管固定部材が,前記配管に巻き付けられるベルト状の固定金具と,当該固定金具の両端部と前記配管支持部材とを締結するボルト及びナットとからなり,
前記ボルト及び前記ナットは,前記固定金具の両端部における前記配管の軸方向に所要の間隔を隔てて複数個ずつ配置され,
前記配管と前記配管支持部材との間,前記配管と前記固定金具との間,前記固定金具と前記ボルト又は前記ナットとの間,及び前記配管支持部材と前記ボルト又は前記ナットとの間に,前記各部材どうしを直接接触させた場合よりも前記各部材間に作用する摩擦力を高める摩擦力体を挟み込むと共に,前記ボルト及び前記ナットを,前記配管と前記配管支持部材との間及び前記配管と前記固定金具との間に挟み込まれた前記摩擦力体の圧縮限界まで締結することを特徴とする配管支持構造。」

第4.当審の判断
1.刊行物記載事項
(1)当審で通知した拒絶理由に引用された,本願の出願日よりも前に頒布された刊行物である特開平1-307583号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「さらに,配管の振動や位置のずれをも防止するためには,Uバンド等で固定する方法が汎用されている。」(第2頁左上欄第7?9行)
・「第5図は,第4図に示す例を配管支持に使用した状態を示す部分斜視図である。支持材11に上方固定部6で固定し,他の固定部2で配管を挟持している。」(第3頁右下欄第14?17行)
・「第7図は,本体の固定部同士は連結されない例である。この例は,使用の方法は通常のUバンドと同様である。よって,支持ラックの上面又は下面に接して固定することとなる。」(第4頁左上欄第5?8行)
・第7図を参照すると,Uバンド両端の固定部2がそれぞれボルト・ナットによって支持材に固定されていることが看取できる。同図において各固定部2と支持材との間に設けられるボルト・ナットは,他の実施例の図面を参照すると,軸方向(紙面に垂直方向)に間隔を空けて2組存在すると解するのが相当である。

同じく当審で通知した拒絶理由に引用された,本願の出願日よりも前に頒布された刊行物である登録実用新案第3001776号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「台盤上に小径管Pを固定する場合の締付けには,すべてねじが使われている。図3,図4にUバンドa,Uバンドbを用いる場合を例示した。しかし発電所や化学プラントに於いては長さの長い小径管の多数本を平行配置することが多く,その場合は要固定箇所がおびただしい数となる。これをいちいちボルト締めするのは繁に耐えない。振動による緩みの点検と補修にも思いがけない時間と労力を必要とする。」(第3頁第9?14行)

引用例1及び引用例2における上記記載事項及び図面の記載によれば,本願の出願前において,以下の技術が周知であったことが認められる(以下「周知配管支持構造」という。)。
「U字状のバンドを用いて配管を板状の支持部材に固定する配管支持構造であって,バンドの両端部をそれぞれ一組又は軸方向に間隔を空けた複数組のボルト・ナットにより支持部材に固定することで,バンドの湾曲した内面と支持部材との間で配管を挟持する配管支持構造。」

(2)当審で通知した拒絶理由に引用された,本願の出願日よりも前に頒布された刊行物である登録実用新案第3012777号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は,例えば各種パイプ類を固定するために使用するUボルトに関する。」
・「【0010】
図示のように,Uボルト11は,断面円形の金属線材をU字状に屈曲してボルト本体12を形成し,このボルト本体12の両脚部13,13にナット14,14を螺合する雄ねじ15,15を設けると共に,半円状の屈曲部分の内周面にのみ平坦面16を形成し,この平坦面16をパイプの回り止加工によって粗面16aにした構造になっている。」
・「【0012】
この考案のUボルトは上記のような構成であり,アングル等の固定部材17に対してパイプ類1を固定するには,パイプ類1に対してボルト本体12を外嵌し,両側脚部13,13を固定部材17の取付孔18に挿入し,雄ねじ15,15にナット14,14を螺合して締付ける。
【0013】
ボルト本体12はパイプ類1に対して内周面の平坦面16が当接するので,線又は面接触となり,接触量が増大すると共に,平坦面16は粗面16aになっているので,パイプ類の回り止と滑り止効果に優れ,パイプ類1との間で滑りがなく,かつ,パイプ類の回り止が行なえ,これによってパイプ類1を強固に固定化することができる。」
・「【0015】
図3は,パイプ類1が塩化ビニルの如き合成樹脂パイプの場合の固定例であり,ボルト本体12の内周面とパイプ類1の間にゴム又は同効の弾性体シート19を挾み込み,パイプ類1の外面にボルト本体12で損傷を与えないようにすると共に,平坦面16の粗面16aが弾性体シート19に喰込み,滑りやすい合成樹脂パイプでも強固に固定できるようになっている。」

(3)当審で通知した拒絶理由に引用された,本願の出願日よりも前に頒布された刊行物である特開2004-198541号公報(以下「引用例4」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0013】
【発明の実施の形態】
以下,図面に表された本発明の実施形態について具体的に説明する。図1は,この取付構造の1例を表すもので,表示板である機器銘板1を,棒状固定部材である円形パイプの手摺2に取り付ける構造を表している。
【0014】
銘板1には,表裏に貫通するボルト孔3,3が穿孔されており,このボルト孔にUボルト5の両端部5a,5aが裏面側から挿通されている。なお,Uボルト5の両端部には雄ねじが切られている。」
・「【0016】
丸パイプの手摺2と銘板1の間には,ゴム製のずれ防止材10が介装されている。ずれ防止材10は,銘板1の裏面1bに密着する平面部10aと,手摺2の外周面に密着する円弧状凹部10bとを有するブロックであり,これを両者の間に介装することにより,丸パイプの手摺2と銘板との位置ずれや相対的回転を防止するものである。
【0017】
この構造を用いて銘板を既設の手摺に固定する場合は,手摺2に係合したUボルト5の両端部を銘板1のボルト孔5a,5aに挿通し,銘板1と手摺2との間にゴム製ずれ防止材10を挟んで,前記Uボルトの端部に螺着したナット6,6をワッシャ7,7を介して締め付ける。これにより,ゴム製ずれ防止材10若干が押しつぶされた状態で手摺2と銘板1とが強固に固定される。」
・「【0019】
次に,図2は上記と若干異なる実施形態を表すもので,この実施形態では,Uボルト5の手摺2と接触する部分にゴムチューブ20が被着されている。このゴムチューブは,ゴム製ずれ防止材であって,上記ブロック状のゴム製ずれ防止材10に代えて,又はこのゴム製ずれ防止材10とともに使用される。この場合も,ゴムチューブをUボルトに被せるだけであるから,構造的に簡単である。」

(4)当審で通知した拒絶理由に引用された,本願の出願日よりも前に頒布された刊行物である特開2003-314525号公報(以下「引用例5」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0008】即ち,本発明は,対象物体1に螺入して締め付ける締付部材2であって,前記対象物体1の締付面11に当接する締付部材2の接触座面21との間には軟質弾性樹脂層3が形成されており,対象物体1の螺入締付状態において,当該軟質弾性樹脂層3の弾性復元力によって当該接触座面21と対象物体1との間が拡張付勢し,かつ,摩擦抵抗力が増大して緩みを防止できるという技術的手段を採用することによって,本発明の緩み防止機構を完成させた。
【0009】また,本発明は,上記課題を解決するために,必要に応じて上記手段に加え,締付部材2は互いに螺合可能な一対のボルト22とナット23とにより構成され,対象物体1とこの対象物体1に当接するボルト頭部22aにおける接触座面21および/またはナット23の接触座面21との間には軟質弾性樹脂層3を形成するという技術的手段を採用した。」
・「【0013】更にまた,本発明は,上記課題を解決するために,必要に応じて上記手段に加え,軟質弾性樹脂層3を,シリコーン系樹脂またはウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂またはエラストマー性ゴムによって形成するという技術的手段を採用した。」
・図1を参照すると,ボルト22とナット23によって2枚の板材を相互に固定したものであって,一方の板材とボルト22との間,他方の板材とナット23との間にそれぞれ軟質弾性樹脂層3を挟んだものが看取できる。

2.対比・判断
本願発明と周知配管支持構造とを対比する。
周知配管支持構造の「支持部材」,「U字状のバンド」は,それぞれ本願発明の「配管支持部材」,「ベルト状の固定金具」に相当するから,本願発明と周知配管支持構造とは,本願発明の表記にしたがえば,
「配管と,配管を支持する配管支持部材と,配管を配管支持部材に固定する配管固定部材とからなる配管支持構造において,前記配管固定部材が,前記配管に巻き付けられるベルト状の固定金具と,当該固定金具の両端部と前記配管支持部材とを締結するボルト及びナットとからなり,前記ボルト及び前記ナットは,前記固定金具の両端部における前記配管の軸方向に所要の間隔を隔てて複数個ずつ配置された配管支持構造。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明は,配管と配管支持部材との間,配管と固定金具との間,固定金具とボルト又はナットとの間,及び配管支持部材とボルト又はナットとの間に,各部材どうしを直接接触させた場合よりも各部材間に作用する摩擦力を高める摩擦力体を挟み込むと共に,ボルト及びナットを,配管と配管支持部材との間及び配管と固定金具との間に挟み込まれた摩擦力体の圧縮限界まで締結するものであるのに対して,周知配管支持構造は,そのようなものでない点。

上記相違点について検討する。
引用例3には,配管を含むといえる各種パイプの外周面に圧接するUボルトを用いてパイプを板状の固定部材に固定する構造において,パイプの回り止め効果を高めるため,Uボルトの内周面とパイプの外周面との間に弾性体シート,すなわち,摩擦力体を挟む技術が記載されている。このUボルトは,周知配管支持構造におけるU字状のバンドと同様に,その内周面において,パイプ(配管)の外周面に円周方向のほぼ半分の範囲で圧接し,パイプを板状の固定部材(支持部材)に押し付けながら固定する金具であり,パイプの回り止め効果を高めるために弾性体シートを設ける引用例3の技術は,周知配管支持構造における配管の回り止めにも有用であることは明らかである。周知配管支持構造の配管は,その外周面がU字状のバンドと支持部材とに圧接するから,配管の回転等を抑えるには,配管とU字状のバンドとの間だけでなく,配管と支持部材との間にも摩擦力体を挟むのが一層効果的であることは容易に理解されるところであるし,加えて,引用例4には,Uボルトを用いて相互に固定するパイプと板材(銘板)との間に位置ずれや相対回転が生じるのを防止するため,パイプと板材の間にゴム製ずれ防止材を挟むとともに,パイプとUボルトとの間にゴムチューブを挟む技術が記載されている。引用例4のパイプは,内部を流体が通過する,いわゆる配管ではないが,パイプと板材の相対回転等を抑える技術が開示されているといえるから,支持部材との相対回転等を抑えることが要求される配管に対して,引用例4の技術を適用することに格別の困難があったとは認められない。したがって,周知配管支持構造において,配管と支持部材との間,配管とU字状のバンドとの間に,摩擦力を高める摩擦力体を挟み込むことは,引用例3及び引用例4を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
また,引用例5には,ボルトとナットにより2枚の板材を相互に固定する構造において,一方の板材とボルト22との間,他方の板材とナット23との間にそれぞれ摩擦抵抗力を増大させる軟質弾性樹脂層,すなわち,摩擦力体を挟むことにより,緩みを防止する技術が記載されている。周知配管支持構造において,U字状のバンドとボルト又はナットとの間,支持部材とボルト又はナットとの間に,摩擦力を高める摩擦力体を挟み込むことは,引用例5を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
さらに,摩擦力体が発揮する摩擦力の大きさは,摩擦力体に加わる圧縮力に依存し,圧縮力が大きいほど摩擦力が増大することは技術常識であるところ,周知配管支持構造において,配管と支持部材との間,配管とU字状のバンドとの間に摩擦力体を挟んで,これをボルト・ナットで締め付ける場合,該摩擦力体の圧縮限界を超えるまで圧縮力を加えたのでは,摩擦力体が破断したり,配管が変形するほどに無理な力がかかったりするから,許容される限界,すなわち,圧縮限界まで圧縮することは,当業者が必要に応じてなし得た事項というべきであって,格別の創作力を要したものということはできない。
以上のことから,上記相違点は,引用例3ないし引用例5を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。したがって,本願発明は,周知技術(周知配管支持構造)及び引用例3ないし引用例5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり,本願発明は,周知技術(周知配管支持構造)及び引用例3ないし引用例5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-20 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-12 
出願番号 特願2007-30644(P2007-30644)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 小関 峰夫
杉浦 貴之
発明の名称 配管支持構造  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  

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