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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1273211
審判番号 不服2012-12581  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-03 
確定日 2013-04-25 
事件の表示 特願2006-343034「フランジ付パイプの曲げ加工方法およびフランジ付曲がりパイプ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月 3日出願公開、特開2008-149370〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
出願 平成18年12月20日
拒絶理由の通知 平成23年12月 7日 (起案日)
意見書 平成24年 2月 6日 (提出日)
手続補正書 平成24年 2月 6日 (提出日)
拒絶査定 平成24年 5月30日 (起案日)
審判請求書 平成24年 7月 3日 (提出日)
手続補正書 平成24年 7月 3日 (提出日)
審尋 平成24年10月26日 (起案日)
回答書 平成24年12月18日 (提出日)

2.平成24年7月3日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年7月3日付の手続補正を却下する。

[理由]
2.1 補正の内容の概要
平成24年7月3日付の手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について補正をするとともにそれに関連して明細書の一部について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前
「パイプを把持するチャックと、締型によって前記パイプに付与された曲げ力の反力を前記パイプの曲げ箇所の背後から支持するロール型と、このロール型との間に前記パイプを挟み込み、前記ロール型を中心に周囲を回転させながら前記パイプに曲げ力を付与する締型と、前記ロール型を支点として前記締型の曲げ力によって前記パイプに生じる反力を抑制するための圧力型とを備えたパイプベンダーを用いてフランジ付パイプを曲げ加工する加工方法において、前記チャックにフランジ付パイプのフランジを姿彫りしたフランジチャック部を形成し、このフランジチャック部によって前記フランジ付パイプのフランジを把持するとともに、前記圧力型によって前記フランジ付パイプのパイプと前記チャックの両者に作用する反力を支持し、前記チャックと圧力型とを前記チャックの軸心方向に直進させることで前記フランジを後ろ側にして前記フランジ付パイプを軸方向に前進させながら、前記締型によって前記フランジ付パイプのパイプに曲げ力を付与して曲げ加工することを特徴とするフランジ付パイプの曲げ加工方法。」
(2)補正後
「パイプを把持するチャックと、締型によって前記パイプに付与された曲げ力の反力を前記パイプの曲げ箇所の背後から支持するロール型と、このロール型との間に前記パイプを挟み込み、前記ロール型を中心に周囲を回転させながら前記パイプに曲げ力を付与する締型と、前記ロール型を支点として前記締型の曲げ力によって前記パイプに生じる反力を抑制するための圧力型とを備えたパイプベンダーを用いてフランジ付パイプを曲げ加工する加工方法において、前記チャックにフランジ付パイプのフランジを姿彫りしたフランジチャック部を形成し、このフランジチャック部によって前記フランジ付パイプのフランジを把持するとともに、前記圧力型によって前記フランジ付パイプのパイプと前記チャックの両者に作用する反力を支持し、前記チャックと圧力型とを前記チャックの軸心方向に直進させることで前記フランジを後ろ側にして前記フランジ付パイプを軸方向に前進させながら、前記締型によって前記フランジ付パイプのパイプに曲げ力を付与して、前記パイプにおける前記フランジよりも進行方向の前側の部分であって、前記フランジの近傍部分を曲げ加工することを特徴とするフランジ付パイプの曲げ加工方法。」

2.2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、フランジ付パイプの曲げ加工部分について「前記パイプにおける前記フランジよりも進行方向の前側の部分であって、前記フランジの近傍部分を」という事項を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

2.3 補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、上記2.1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「フランジ付パイプの曲げ加工方法」であると認める。

2.4 刊行物に記載された発明
これに対して、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物であって原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-223530号公報(以下、単に「刊行物」という。)の記載内容は以下のとおりである。
(1)刊行物の【発明の詳細な説明】には以下の記載がされている。
a.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属製の直管を曲げ加工して金属曲管を製造する方法並びにその方法の実施に用いる金属管の曲げ加工装置に関する。」
b.「【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す本発明の好適な実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る金属管の曲げ加工装置の概略平面図、図2はその概略断面図である。図1,図2において、13は曲げ加工すべき金属製の管、例えば鋼管であり、曲げ加工装置の所定位置にセットされている。この実施形態では、曲げ加工に供する管13として、図3(a)に示すように、その両端にあらかじめフランジ14を溶接固定したものが用いられる。図1、図2において、15は機械本体、16は機械本体15に、垂直な軸線O-Oを中心として回転自在に保持された主軸、17はその主軸16に一体に回転するように取り付けられた曲げアーム、18は曲げアーム17に取り付けられ、管1の先端を把持するクランプ(以下前クランプという)である。この構成により、管13が矢印Eで示すように管軸方向に移動し且つ曲げアーム17が軸線O-Oを支点として旋回した時に、管13に曲げモーメントを作用させ、曲げ変形させることができる。ここで、管13を前進させながら曲げアーム17で曲げモーメントを作用させて管を連続的に曲げ変形させてゆく場合、管の曲げ変形進行部を曲げアームの支点Oを通り、管13の軸線に直角な直線OA上に位置させた場合に、安定して効率良く曲げ加工を行うことができるので、本明細書では、直線OA上を「曲げ加工位置」と称する。また、本明細書において管13に関する「先端」、「後端」、「前」、「後」等の表現は、矢印Eで示す管の移動方向に基づくものとする。管13先端を把持する前クランプ18は、管13を直接及び/又はフランジ14を介して必要な強度で把持しうるものであれば構造は任意であり、具体的には、管先端のフランジ14に隣接した領域の外面並びにフランジを把持しうる構造とすることが管13を大きい強度で把持できるので好ましい。
【0035】
20は管の曲げ加工のために曲げアーム17を旋回させる駆動手段であり、主軸16に取り付けられたピニオン21と、そのピニオン21にかみ合うように配置されたラック22と、そのラック22を往復動させる主曲げシリンダ23等を備えている。25は管13の後端を把持する後クランプ、26はその後クランプ25を保持した後クランプ支持台であり、適当な支持ガイド(図示せず)により管13の管軸方向に移動可能に保持されている。28は、管13の後端を管軸方向に且つ管先端を把持している前クランプ18に対して接近するように押圧して管を管軸方向に圧縮する押圧装置であり、適当な支持ガイド(図示せず)に管軸方向に移動可能に保持された移動台29と、その移動台29がラック22と一緒に移動するよう連結する連結板30と、後クランプ支持台26を移動台29に対して接近及び離間するように駆動する圧縮用シリンダ31等を備えている。」
c.「【0037】
40は、曲げ加工操作中、管13の、少なくとも曲げ加工位置OAに位置する領域の曲げ内側部外周面と曲げ中立部両側の外周面とを規制する常設型具である。この実施形態における常設型具40は、曲げアーム17と一体に旋回するように、ナット44によって取り付けられた形状保整ガイド41を備えており、その形状保整ガイド41は、断面が略U字状の規制面42を、旋回中心Oを中心として円弧状に形成した一体構造のものである。この規制面42は、図6(b)に拡大して示すように、曲げ変形した管13の曲げ内側部外周面13aaに適合する形状に作られ、その曲げ内側部外周面13aaを規制してじゃばら発生を防止するじゃばら規制面42aと、その管13の曲げ中立部N-N上の両側の外周面13ab,13abを規制して扁平を防止する扁平規制面42b,42bを有しており、管13の曲げ加工時には、図6(a)に示すように、曲げ変形した管13を規制面42で拘束し、じゃばらの発生及び扁平化を防止できる。図1において、規制面42の形成位置及び円周方向の長さは、少なくとも、曲げアーム17を図1に示す位置(曲げ加工すべき管をセットするための位置)から曲げ終わりまで旋回させる間、常に規制面42が曲げ加工位置OA上に位置するように定めている。従って、曲げ加工中、規制面42は常に、管13の曲げ加工位置OAにある領域並びに曲げ加工により形成された曲管部を規制することができる。
【0038】
46は、管13を曲げ加工する際に、該管13の曲げ加工位置よりも後方の直管部分を所定の走行経路に保持する管規制手段であり、ここでは押えローラ47を備えたものが用いられている。」
d.「【0040】
次に、上記構成の曲げ加工装置を用いて、図7に示す金属曲管13Aを製造する方法を説明する。この金属曲管13Aは、曲げ角度θの曲管部13aとその両端の長さb,cの直管状の管端部13b,13cを備えたものであり、各管端にはフランジ14を取り付けている。また、各管端部13b,13cには曲管部13aに隣接した長さd,eの領域に曲管部に向かって肉厚が漸増する移行部13bd,13ceを備えている。
【0041】
金属曲管13Aの製造に当たっては、先ず、図3(a)に示すように、金属製の直管13を用意し、その直管を、後述する熱間曲げ加工及び熱間据込み加工を行うことで所望長さの金属曲管13Aが得られる長さに調整し、その両端にフランジ14を溶接固定する。このフランジ14の溶接固定作業は、直管に対して行うため、従来のように曲げ加工した後の曲管に溶接固定する場合に比べてきわめて容易に且つ作業性良く行うことができる。次に、両端にフランジ14を固定した直管13を、図1,図2,図3(b)に示すように、曲げ加工装置の所定位置にセットし、先端を曲げアーム17の前クランプ18で把持し、後端を後クランプ25で把持し、その管13内に誘導コイル35を挿入する。ここで、前クランプ18の位置は、直管13の先端から曲げ加工位置OAまでの距離bが図7に示す金属曲管13Aの前側の管端部13bの長さbに等しくなるように設定している。なお、通常、金属曲管13Aの管端部13bに要求される長さbは比較的短いので、前クランプ18で把持した管13の管端を曲げ加工位置OAから距離bだけ離れた位置とするには、前クランプ18を曲げ加工位置OAに近づけた位置に配置する必要があるが、図示したように誘導コイル35が管内に位置しているので、前クランプ18に誘導コイル35が干渉することはなく、従って、所望位置に支障なく前クランプ18を配置できる。
【0042】
次に、図3(b)において、誘導コイル35を曲げ加工位置OAよりも管先端側に距離dだけ離れた位置に位置させる。ここで距離dは図7に示す金属曲管13Aに形成する移行部13bdの長さdに等しく設定している。この状態から、まず管13に対する熱間据込み加工を開始する。すなわち、図3(b)、(c)に示すように、曲げアーム17を旋回させず、前クランプ18を一定位置に保持した状態で、誘導コイル35による加熱を開始し、管13の誘導コイル35に対向した小区間を塑性変形容易な温度、例えば、赤熱温度に加熱、昇温させ、且つその加熱領域よりも管先端側の位置に冷却媒体36を吹き付けながら誘導コイル35を曲げ加工位置OAに向かって移動させ、同時に後クランプ25を圧縮用シリンダ31(図1参照)で前進させることで管13の後端を先端に向かって押し込んで行く。これにより、管13の加熱された領域即ち加熱部が増厚し且つ増厚直後に冷却、硬化しながら管13の管軸方向に移動してゆき、連続的に熱間据込み加工が行われる。この時の管壁の増厚率は、後クランプ25の押し込み速度と誘導コイル35の移動速度の比率によって定まる。この実施形態では、誘導コイル35の移動速度を一定とし、後クランプ25の押し込み速度を徐々に増加させて行く。これにより、誘導コイル35の移動につれて増厚率が増大してゆき、移行部13bdが形成される。
【0043】
そして、誘導コイル18(当審注:誘導コイル35の誤記である。)が曲げ加工位置OAに達した時点で、誘導コイル35を停止させ、曲げ加工動作に移行する。すなわち、誘導コイル35による加熱及び冷却媒体吹き付けは継続した状態で、主曲げシリンダ23(図2参照)の作動を開始し、ラック22及びピニオン21を介して曲げアーム17を旋回させ、同時に圧縮シリンダ31を作動させる。これにより、図3(d)、図4(a)に示すように、管13が連続的に曲げ加工され、曲管部13aが形成されてゆく。この際、圧縮シリンダ31の作動速度を、管13の後端が曲げ加工速度(管13が曲げ加工位置OAを通過する速度)に比べて、所望の圧縮率を確保しうる速さで押し込まれるように定めておく。これにより、曲げ加工中、曲げ加工位置の管13に所望の圧縮率の圧縮を付加することができ、曲げ外周側管壁の減肉を抑制できる。ここで、圧縮シリンダ31の作動速度の設定に当たっては、圧縮シリンダ31自体が、曲げアーム17を旋回させるラック22と一緒に移動しており、その移動速度vは、曲げ加工速度Vに対して、
v=V×Rs/R
(ただし、Rsはピニオン21のピッチ円半径、Rは管の曲げ半径)
の関係にあるので、これを考慮して定めれば良い。」
e.「【0046】
図4(a)に示すように、曲げ加工が進行し、所定の曲げ角度θに達する位置まで曲げアーム17が旋回した時点で、曲げアーム17の旋回を止める。次いで、図4(b)に示すように、誘導コイル35による加熱並びに冷却媒体36の吹き付けを継続した状態で、誘導コイル35を管軸方向に且つ管後端に向かって移動させ、同時に圧縮用シリンダ31により管13の後端を管軸方向に押し込んでゆく。これにより、曲管部13aに続く直管部に熱間据込み加工が施されることとなる。この際にも、誘導コイル35の移動速度及び管端の押し込み速度を、管壁の増厚率が曲管部13aから離れるに従って漸減するように設定しておく。これにより、図4(c)に示すように、肉厚が漸減した移行部13beが形成される。更に、この管端押し込みの際、後クランプ25で把持している管13の後端が曲げ加工位置OAから所定の距離c(図7に示す金属曲管13Aの直管状の管端部13cに要求される長さcに等しい長さ)に達するまで押し込んで行く。これにより、直管13の製作時の寸法誤差や曲げ加工中に生じる寸法誤差があったとしても、それを吸収して、きわめて正確な寸法の製品とすることができる。以上により、図7に示す形状のフランジ付き金属曲管13Aを製造できる。」
f.図3及び図4には、後クランプ25に管13のフランジ14が把持された状態が示されていることから、「前クランプ18及び後クランプ25には、管13に設けられたフランジ14を把持する部分が形成されていること。」が理解される。
(2)刊行物記載の発明
上記記載事項を、技術常識を考慮に入れながら補正発明に照らして整理すると、刊行物には次の発明が記載されていると認めることができる。
「管13を把持する前クランプ18及び後クランプ25と、曲げアーム17によって前記管13に付与された曲げ力の反力を前記管13の曲げ箇所の背後から支持する円弧状の形状補正ガイド41を備えた常設型具40と、この常設型具40を中心に周囲を回転させながら前記管13に曲げ力を付与する曲げアーム17と、管13を曲げ加工する際に、該管13の曲げ加工位置よりも後方の直管部分を所定の走行経路に保持する押えローラ47を備えた管規制手段46とを備えた金属管の曲げ加工装置を用いてフランジ14付きの管13を曲げ加工する加工方法において、前記後クランプ25にフランジ14を把持する部分を形成し、この部分によって前記フランジ14付きの管13のフランジ14を把持するとともに、前記後クランプ25を前記後クランプ25の軸心方向に直進させることで前記後クランプ25で把持されたフランジ14を後ろ側にして前記フランジ14付きの管13を軸方向に前進させながら、前記曲げアーム17によって前記フランジ14付きの管13に曲げ力を付与して、前記管13における後クランプ25で把持されたフランジ14よりも進行方向の前側の部分を曲げ加工するフランジ14付きの管13の曲げ加工方法。」

2.5 対比
補正発明と刊行物記載の発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物記載の発明の「管13」と「フランジ14付きの管13」が、補正発明の「パイプ」と「フランジ付パイプ」にそれぞれ相当することは明らかである。
また、刊行物記載の発明の「管13に付与された曲げ力の反力を前記管13の曲げ箇所の背後から支持する円弧状の形状補正ガイド41を備えた『常設型具40』」は、補正発明における「パイプに付与された曲げ力の反力を前記パイプの曲げ箇所の背後から支持する『ロール型』」に相当する。
刊行物記載の発明の「後クランプ25」は、フランジ14を把持する部分、すなわち、フランジチャック部を形成されたチャックであって、その軸心方向に直進してフランジ付パイプを軸方向に前進させるものであるという限りで、補正発明の「チャック」と共通する。
また、補正発明の「曲げアーム17」は、ロール型を中心に周囲を回転させながらパイプに曲げ力を付与する手段であるという限りで、補正発明の「締型」と共通する。
さらに、刊行物記載の発明の「管13を曲げ加工する際に、該管13の曲げ加工位置よりも後方の直管部分を所定の走行経路に保持する押えローラ47を備えた『管規制手段46』」は、ロール型との間にパイプを挟み込み、ロール型を支点としてパイプに曲げ力を付与する手段の曲げ力によって前記パイプに生じる反力を抑制し、前記パイプとチャックの両者に作用する反力を支持する機能を奏する支持手段である限りにおいて、補正発明の『圧力型』と共通する。
そして、刊行物記載の発明の「金属管の曲げ加工装置」は、「パイプベンダー」と呼ぶことができるものである。
そうしてみると、補正発明と刊行物記載の発明とは、次の点で一致しているということができる。
<一致点>
「パイプを把持するチャックと、パイプに曲げ力を付与する手段によって前記パイプに付与された曲げ力の反力を前記パイプの曲げ箇所の背後から支持するロール型と、このロール型を中心に周囲を回転させながら前記パイプに曲げ力を付与する手段と、前記ロール型を支点として前記パイプに曲げ力を付与する手段の曲げ力によって前記パイプに生じる反力を抑制するための支持手段とを備えたパイプベンダーを用いてフランジ付パイプを曲げ加工する加工方法において、前記チャックにフランジチャック部を形成し、このフランジチャック部によって前記フランジ付パイプのフランジを把持するとともに、前記支持手段によって前記フランジ付パイプのパイプと前記チャックの両者に作用する反力を支持し、前記チャックを前記チャックの軸心方向に直進させることで前記フランジを後ろ側にして前記フランジ付パイプを軸方向に前進させながら、前記パイプに曲げ力を付与する手段によって前記フランジ付パイプのパイプに曲げ力を付与して、前記パイプにおける前記フランジよりも進行方向の前側の部分を曲げ加工するフランジ付パイプの曲げ加工方法。」である点。
そして、補正発明と刊行物記載の発明とは、以下の4点で相違している。
<相違点1>
補正発明では、パイプに曲げ力を付与する手段が締型であって、圧力型とロール型との間に前記パイプを挟み込むのに対して、刊行物記載の発明では、パイプに曲げ力を付与する手段がロール型と一体的に回動する曲げアームであるが、パイプは管規制手段とロール型との間に挟み込まれる点。
<相違点2>
チャックのフランジチャック部が、補正発明では、フランジ付パイプのフランジを姿彫りしたものであるのに対して、刊行物記載の発明では、そのようなものであるのかどうか明らかでない点。
<相違点3>
補正発明では、パイプの曲げ加工時に、支持手段がチャックとともにチャックの軸心方向に直進するのに対して、刊行物記載の発明では、そのようになっていない点。
<相違点4>
補正発明では、パイプにおけるフランジよりも進行方向の前側の部分であって、前記フランジの近傍部分を曲げ加工しているのに対して、刊行物記載の発明では、パイプにおけるフランジよりも進行方向の前側の部分を曲げ加工しているものの、当該部分がフランジの近傍部分であるのかどうか明らかでない点。

2.6 相違点の検討
2.6.1 <相違点1>について
パイプベンダーにおいて、パイプに曲げ力を付与する手段を締型とし、圧力型とロール型との間に前記パイプを挟み込むようにすることは、例えば、実願昭55-73395号(実開昭56-175119号)のマイクロフィルムの圧力型(25)と回転曲型(1)に見られるように従来周知であり、この従来周知の事項を刊行物記載の発明に適用して補正発明のように構成することに格別の困難性は見当たらない。
2.6.2 <相違点2>について
チャックにより工作物を把持するに当たって、把持を確実にするために、チャック部に工作物被把持部の姿彫りを施すことは、必要に応じて適宜なし得る単なる設計的事項にすぎない。
2.6.3 <相違点3>について
パイプベンダーにおいて、パイプの曲げ加工時に、ロール型との間にパイプを挟み込み、ロール型を支点としてパイプに曲げ力を付与する手段の曲げ力によってパイプに生じる反力を抑制し、パイプとチャックの両者に作用する反力を支持する機能を奏する支持手段がパイプの直管部に沿って移動するように構成することは、上記2.6.1で挙げた実願昭55-73395号(実開昭56-175119号)のマイクロフィルムの第2図に示されている圧力型25のほか、例えば、社団法人日本塑性加工学会編「プレス加工便覧」(昭和50年10月25日丸善株式会社発行)第267ページ、図3.158にも示されているように従来周知であり、この従来周知の事項を刊行物記載の発明に適用して支持手段をチャックとともにチャックの軸心方向に直進するように構成することに格別の困難性は見当たらない。
2.6.4 <相違点4>について
広辞苑によると「近傍」とは、「近所。近辺。」を意味しており、ある特定の位置を確定的に指示することばではない。
また、本件出願の請求項3には「前記フランジ付パイプのフランジ背面の直管部長さが、このパイプの直径未満となるように曲げ加工することを特徴とする請求項1または2に記載のフランジ付パイプの曲げ加工方法。」と記載されていることからみて、補正発明における「フランジの近傍部分」は、フランジ背面の直管部長さが、請求項3で限定するより広い範囲、すなわちパイプの直径以上の場合をも含んでいると理解すべきである。
そうすると、パイプの曲げ加工位置については、補正発明と刊行物記載の発明との間に格別の差異が見当たらない。
2.6.5 また、補正発明によってもたらされる効果も刊行物記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
したがって、補正発明は、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2.7 まとめ
上記のとおり、補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきである。

3.本件出願の発明について
3.1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし請求項5に係る発明は、平成24年2月6日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記2.1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「フランジ付パイプの曲げ加工方法」である。

3.2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記2.4に示したとおりである。

3.3 対比と判断
本件発明は、上記2.で検討した補正発明から、フランジ付パイプの曲げ加工部分について「前記パイプにおける前記フランジよりも進行方向の前側の部分であって、前記フランジの近傍部分を」という事項を削除したものである。
そうすると、本件発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が上記2.6で示したとおり、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.4 むすび
したがって、本件出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
.
 
審理終結日 2013-02-20 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-11 
出願番号 特願2006-343034(P2006-343034)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21D)
P 1 8・ 575- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 刈間 宏信
菅澤 洋二
発明の名称 フランジ付パイプの曲げ加工方法およびフランジ付曲がりパイプ  
代理人 梶 良之  
代理人 梶 良之  

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