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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q |
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管理番号 | 1273254 |
審判番号 | 不服2011-21075 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-09-29 |
確定日 | 2013-04-22 |
事件の表示 | 特願2008-181545「アンテナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月28日出願公開、特開2010- 21856〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は平成20年7月11日の出願であって、平成23年8月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年9月29日に審判請求がなされるとともに、同日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年9月29日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成23年8月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「アンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部とを備え、取り付けられた際に約70mm以下の高さで突出するアンテナ装置であって、 前記アンテナ部は、 前記アンテナケースの下端に、前記アンテナケースの下面を閉塞するよう嵌着される導電性のアンテナベースと、 該アンテナベース上に立設されて配置され、アンテナパターンが上部に形成されているアンテナ基板と、 頂部と、該頂部の両側から急傾斜の斜面とされて前記アンテナベースとの対向面積が減少されている断面形状が山形に形成された側部とを有し、前記アンテナ基板を跨ぐように、前記側部が前記アンテナ基板の両側に配置されていると共に、前記頂部近傍が前記アンテナパターンに接続されて、前記アンテナパターンと共にアンテナエレメントを構成している導電性のトップ部と、 前記アンテナエレメントにより受信されたAM放送とFM放送の信号を増幅するアンプが設けられ、前記アンテナベース上に配置されているアンプ基板とを備え、 前記トップ部における前記側部の下縁と前記アンテナベースとの間隔が約10mm以上とされており、前記アンテナ基板における前記アンテナパターンが、前記アンプ基板における前記アンプの入力に、前記アンテナエレメントのインダクタンス分を補うコイルを介して接続されていることを特徴とするアンテナ装置。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「アンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部とを備え、取り付けられた際に約70mm以下の高さで突出するアンテナ装置であって、 前記アンテナ部は、 前記アンテナケースの下端に、前記アンテナケースの下面を閉塞するよう嵌着される導電性のアンテナベースと、 該アンテナベース上に立設されて配置され、アンテナパターンが上部に形成されているアンテナ基板と、 頂部と、該頂部の両側から急傾斜の斜面とされて前記アンテナベースとの対向面積が約1/2以下に減少されている断面形状が山形に形成された側部とを有し、前記アンテナ基板を跨ぐように、前記側部が前記アンテナ基板の両側に配置されていると共に、前記頂部近傍が前記アンテナパターンに接続されて、前記アンテナパターンと共にアンテナエレメントを構成している導電性のトップ部と、 前記アンテナエレメントにより受信されたAM放送とFM放送の信号を増幅するアンプが設けられ、前記アンテナベース上に配置されているアンプ基板とを備え、 前記トップ部における前記側部の下縁と前記アンテナベースとの間隔が約10mm以上とされており、前記アンテナ基板における前記アンテナパターンが、前記アンプ基板における前記アンプの入力に、前記アンテナエレメントのインダクタンス分を補うコイルを介して接続されていることを特徴とするアンテナ装置。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。 2.新規事項の有無について 上記補正のうち、補正前の「アンテナベースとの対向面積が減少されている断面形状が山形に形成された側部とを有し」という構成を「アンテナベースとの対向面積が約1/2以下に減少されている断面形状が山形に形成された側部とを有し」という構成に補正する点について検討するに、当該補正中の「アンテナベースとの対向面積」を「約1/2以下に減少させる」点は、願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されていない。 即ち、例えば当初明細書等の明細書段落7には「トップ部の断面形状が山形に形成されていることから、トップ部の斜面とされた側部とアンテナベースとの対向面積を極力小さくすることができるようになって、アンテナ容量における無効容量分を極力小さくすることができる。」ことは記載されているものの、この構成は、単に対向面積の減少に伴い無効容量分も減少することを説明しているのであって、前記「約1/2以下」という数値限定自体および当該数値限定にかかる臨界的な作用効果は記載されていない。また当初明細書等の他の記載を参照しても前記数値限定自体もしくは当該数値限定にかかる臨界的な作用効果等の記載は見あたらない。 また、補正後の発明にかかる前記数値限定を含む構成が当初明細書等の記載から自明であるともいえない。 そして、審判請求人は上記補正の適合性の根拠として、本願図6、図10、図18等のトップ部31の記載に基づき、当該補正が明瞭でない記載の釈明を目的とするものである旨主張しているが、上述したように、上記補正は「アンテナベースとの対向面積が約1/2以下に減少されている断面形状が山形に形成された側部とを有し」という数値限定を伴う新規の実施例を追加する補正であって、請求人が主張するような明瞭でない記載の釈明には該当しない。 したがって、上記補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合していない。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、前記特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合していないから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 なお、仮に本件補正が新規事項を含まず、審判請求人主張のように不明瞭な記載の釈明であるとしても、以下に述べるように、 「約1/2以下」という数値限定を除く本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、 前述のように本願明細書には「約1/2以下」という数値限定自体および当該数値限定にかかる臨界的な作用効果は記載されておらず、下記引用例のイ.[0010]の「アンテナ装置1の形状は・・・車両の美観・デザインを損ねないようある程度の範囲内において自由に形状を決定することができる」などの記載も参照すれば、「約1/2以下」とした点も格別のことではなく、補正後の発明それ自体も特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 (1)原審の拒絶理由に引用された、WO2008/062746号公報(以下、「引用例」という。)には、「アンテナ装置」の発明に関し図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「発明を実施するための最良の形態 [0010]本発明の実施例にかかる車載用の第1実施例のアンテナ装置を取り付けた車両の構成を図1に示す。図1に示すように、本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置1は車両2のルーフに取り付けられており、車両2から突出している高さhは70mm以下とされている。第1実施例のアンテナ装置1は後述するアンテナケースを備え極めて低姿勢(周波数100MHzの波長をλとすると、高さhは約0.0023λ)とされているが、AM放送とFM放送を受信することが可能とされている。このアンテナ装置1の形状は先端に行くほど細くなる流線型とされており、車両の美観・デザインを損ねないようある程度の範囲内において自由に形状を決定することができる。そして、アンテナ装置1の下面は、車両2の取付面の形状に合わせた形状とされて、車両2に水密に取り付けられている。 [0011]次に、本発明の車載用にかかる第1実施例のアンテナ装置1の構成を図2ないし図5に示す。ただし、図2は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す側面図であり、図3は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す平面図であり、図4は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す平面図であり、図5は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す側面図である。 これらの図に示すように、本発明の第1実施例にかかるアンテナ装置1は、アンテナケース10と、このアンテナケース10内に収納されているアンテナベース20と、アンテナベース20に取り付けられているアンテナ基板30およびアンプ基板34とから構成されている。アンテナケース10の長手方向の長さは約200mmとされ、横幅は約75mmとされる。 [0012]アンテナケース10は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなる流線型の外形形状とされている。アンテナケース10の下面は取り付けられる車両2の取付面の形状に合わせた形状とされている。アンテナケース10内には、アンテナ基板30を立設して収納できる空間と、アンプ基板34を横方向に収納する空間が形成されている。アンテナケース10の下面には金属製のアンテナベース20が取り付けられている。そして、アンテナベース20にアンテナ基板30が立設して固着されていると共に、アンテナ基板30の横にアンプ基板34が固着されていることから、アンテナケース10の下面に金属製のアンテナベース20を取り付けることにより、アンテナケース10の空間にアンテナ基板30とアンプ基板34とを収納することができる。なお、立設して固着されるアンテナ基板30の上縁をアンテナケース10の内部空間の形状に合わせた形状として、アンテナ基板30の高さをなるベく高くすることが好適とされる。」(8?9頁、段落10?12) ロ.「[0015]次に、アンテナ基板30の構成を示す斜視図を図11に示す。図11に示すアンテナ基板30は、高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされており、アンテナを構成するアンテナパターン31と給電点33のパターンとが形成されている。アンテナ基板30の高さはH、長さはL、アンテナパターン31の下縁までの間隔はSとされている。アンテナパターン31はアンテナ基板30のほぼ上半分に1枚の板状に形成されて板状アンテナとされている。なお、アンテナパターン31の長さはL、高さは(H-S)とされている。このように、アンテナ基板30に板状アンテナを形成するのは次の理由による。アンテナケース10の大きさの制約からアンテナパターン31の高さHは約60mm程度の高さ、長さLは約90mm程度の大きさ以上とすることが困難となる。ここで、FM波帯の周波数100MHzの波長をλとすると、約60mmの寸法は0.02λ、約90mmの寸法は0.03λとなり、アンテナパターン31により形成されるアンテナは波長λに対して超小型のアンテナとなる。 [0016]このような超小型のアンテナの場合、アンテナパターン31によるインダクタ成分が小さくなることからFM波帯にアンテナパターン31を共振させることは困難となる。そこで、線状のパターンを折り畳んだり折り曲げたりしたアンテナパターンとして導体線路長を増加させることによりインダクタ成分を増加させることが考えられるが、導体線路長を増加させるに従って導体損失が増加することから、アンテナの電気的特性が劣化することになる。そこで、導体損失を極力減らすために、パターンを簡略化し図11に示すような板状のアンテナパターン31としているのである。 [0017]しかし、図11に示すアンテナパターン31により形成される板状アンテナは波長λに対して超小型とされているため、インダクタ成分はほぼゼロに近くなる。また、この板状アンテナのアンテナ容量は約1pF?3pF程度となる。そこで、1μH?3μH程度のアンテナコイル32を給電点33付近に直列に挿入することにより、アンテナパターン31とアンテナコイル32とからなるアンテナ部をFM波帯付近で共振させられるようになる。これにより、アンテナパターン31とアンテナコイル32とからなるアンテナ部がFM波帯において良好に動作することができるようになる。このFM波帯で共振するアンテナをAM波帯では電圧受信素子として利用することにより、AM波帯を受信できるようにしている。 [0018](・・・中略・・・) [0019]ここで、アンテナ基板の等価回路図を図12に示す。図12に示すように、アンテナパターン31の等価回路は、アンテナ容量Cantとインダクタ成分Lantとアンテナ抵抗Rantとの直列接続回路で表され、この直列回路にアンテナコイル(Lcoil)32が直列接続されることになる。すなわち、アンテナ容量Cantとインダクタ成分Lantおよびアンテナコイル(Lcoil)32とによりFM波帯付近で共振するようになる。また、アンテナ抵抗Rantは放射抵抗Rradとアンテナパターン31の導体抵抗Rlossとの和となり、導体抵抗Rlossが小さいほどアンテナパターン31により形成される板状アンテナの放射効率は向上することになる。この場合、アンテナパターン31は板状とされることから導体抵抗Rlossが小さくなって放射効率を向上することができる。」(10?11頁、段落15?19) ハ.「[0020]次に、本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置1の等価回路図を図14に示す。図14において、アンテナ基板30に形成されているアンテナパターン31と給電点33との間に挿入されているアンテナコイル32とからアンテナ部が構成され、このアンテナ部の受信信号がアンプ基板34に入力される。アンプ基板34には、受信信号をFM波帯の受信信号とAM波帯の受信信号に分離するためのFM帯通過フィルタ35aとAM帯通過フィルタ36a、および、FM波帯の受信信号とAM波帯の受信信号をそれぞれ増幅するアンプ35bとアンプ36bが設けられている。そして、FM帯通過フィルタ35aにより抽出されたFM波帯の受信信号はアンプ35bにより増幅され、AM帯通過フィルタ36aにより抽出されたAM波帯の受信信号はアンプ36bにより増幅される。アンプ35bの出力とアンプ36bの出力は合波されて出力端子OUTから出力される。なお、給電点33はアンプ基板34の入力インピーダンスと共役整合を取れば整合できるため、アンテナコイル32により必ずしもFM波帯域内で共振を得る必要はない。この場合、給電点33のインピーダンスを容量性に、アンプ基板34の入力を誘導性にすることで共役整合できる場合は、アンテナコイル32の巻き数を少なくすることができる。」(11?12頁、段落20) ニ.「[0023]次に、アンテナ基板の他の構成例を図18に示す。図18には他の構成とされたアンテナ基板60の構成を示す斜視図が示されており、このアンテナ基板60は高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされている。アンテナ基板60上には、アンテナを構成する板状のアンテナパターン61と給電点63のパターンとが形成されている。アンテナパターン61と給電点63との間にはアンテナパターン61をFM波帯に共振させるためのアンテナコイル62が接続されている。このアンテナ基板60の特徴的な構成はアンテナパターン61の上端において両側に延伸する傘状のトップ64が設けられている構成とされている。トップ64は導電性とされており、このように傘状のトップ64を設けることにより、アンテナ基板60により構成されるアンテナの電気的特性を向上することができる。 [0024]そこで、図19にアンテナ基板60に形成されトップ64が設けられたアンテナパターン61とアンテナコイル62からなるアンテナ部を備えるアンテナ装置1のFM波帯のゲイン特性を示す。 図19において縦軸は半波長のダイポールアンテナのゲインを0dBとしたゲイン[dBd]とされており、一点鎖線で示すゲイン特性はトップ64の突出幅Wを約30mmとした際のゲイン特性であり、破線で示すゲイン特性はトップ64の突出幅Wを約10mmとした際のゲイン特性であり、実線で示すゲイン特性はトップ64の突出幅Wを0mm、すなわちトップ64を設けない際のゲイン特性である。図19を参照すると、トップ64の突出幅Wを約10mmとした際には、トップ64を設けない場合のゲインよりFM波帯において約2dB以上ゲインが向上されており、突出幅Wを約30mmとするとFM波帯の全帯域においてさらにゲインが向上されていることがわかる。」(13?14頁、段落23?24) ホ.「請求の範囲 [1]車両に取り付けられた際に、車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部からなるアンテナ装置であって、前記アンテナ部は、アンテナと、該アンテナにより受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプを有するアンプ基板とからなり、前記アンテナの給電点が前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続されていることを特徴とする少なくともFM放送を受信可能なアンテナ装置。 [2]前記アンテナ力前記アンテナケース内に立設して配設されている平板状のアンテナとされ、該アンテナの上端に両側に延伸する導電性のトップ部が接続されていることを特徴とする少なくともFM放送を受信可能な請求項1記載のアンテナ装置。 [3](・・・中略・・・) [4]車両に取り付けられた際に、車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部からなるアンテナ装置であって、 前記アンテナ部は、立設されて配置されアンテナパターンが形成されているアンテナ基板と、前記アンテナパターンにより受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプが設けられているアンプ基板とからなり、前記アンテナ基板における前記アンテナパターンの給電点が、前記アンプ基板における前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続されていることを特徴とする少なくともFM放送を受信可能なアンテナ装置。」(39頁、請求項1?4) 上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 まず、引用例記載の「アンテナ装置」は、上記イ.図1?5、ホ.請求項[1]、[4]にあるように、「車両に取り付けられた際に、車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部からなるアンテナ装置」である。 また、上記イ.[0012]、図4?10にあるように、該「アンテナケース10」の下面には「金属製のアンテナベース20」が取り付けられており、 該「アンテナベース」上には、上記ロ.[0015]、図11、ニ.図18にあるような「アンテナパターン31(61)」が上部に形成されている「アンテナ基板30(60)」が立設されて配置されており、 これらは電波を受信するアンテナとして機能する「アンテナ部」を構成すると言うことができ、前記「アンテナ部」は、『前記アンテナケースの下面に取り付けられた金属性のアンテナベースと、該アンテナベース上に立設されて配置され、アンテナパターンが上部に形成されているアンテナ基板』を備えるものである。 また、上記ニ.図18、ホ.請求項[2]にあるように、該「アンテナ基板」の上端には、「両側に延伸する傘状の導電性のトップ部64」が設けられており、 更に、上記イ.[0011][0012]、図4、5、上記ハ.図14にあるように、前記「アンテナベース」上には、前記「アンテナパターン31」に「アンテナコイル32」を介して接続され、受信された「FM波帯とAM波帯の受信信号」を増幅する「アンプ35b(36b)」が設けられた「アンプ基板34」が配置されている。 そして、「コイル」が「インダクタ」であるという技術常識、および上記ロ.[0017]、[0019]、図11,12の記載も参酌すれば、前記「アンテナコイル」はアンテナの「インダクタ成分」を補うものであって、『前記アンテナ基板における前記アンテナパターンが、前記アンプ基板における前記アンプの入力に、アンテナのインダクタ成分を補うアンテナコイルを介して接続』されているということができる。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「車両に取り付けられた際に、車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部からなるアンテナ装置であって、 前記アンテナ部は、 前記アンテナケースの下面に取り付けられた金属性のアンテナベースと、 該アンテナベース上に立設されて配置され、アンテナパターンが上部に形成されているアンテナ基板と、 該アンテナ基板の上端に両側に延伸する傘状の導電性のトップ部と、 受信されたFM波帯とAM波帯の受信信号を増幅するアンプが設けられ、前記アンテナベース上に配置されているアンプ基板とを備え、 前記アンテナ基板における前記アンテナパターンが、前記アンプ基板における前記アンプの入力に、アンテナのインダクタ成分を補うアンテナコイルを介して接続されているアンテナ装置。」 3.対比 本願発明と引用発明を対比すると、 まず、引用発明の「アンテナ装置」の高さは、実質的に「アンテナケース」で決まっていることは引用例図2などからも明らかであるから、本願発明と引用発明は、『アンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部とを備え、取り付けられた際に約70mm以下の高さで突出するアンテナ装置』の点で一致する。 また、「アンテナベース」に関し、引用発明の「アンテナケース」の「下面」とは「下端」であり、 引用発明の「取り付けられた」構成と、本願発明の「前記アンテナケースの下面を閉塞するよう嵌着される」構成は、ともに「取り付けられた」構成の点で一致し、 「金属性のアンテナベース」は「導電性のアンテナベース」であることは技術常識である。 また、引用発明の「該アンテナ基板の上端に両側に延伸する傘状の導電性のトップ部」において、 「傘状」の形状の上端は「頂部」であり、 「アンテナ基板の上端に両側に延伸する」部分は、「該頂部の両側から急傾斜の斜面」をなし、「断面形状が山形に形成された側部」ということができ、 「アンテナ基板を跨ぐように、前記側部が前記アンテナ基板の両側に配置されている」ことも自明であり、 傘が開いた状態と比較すれば、設置されている「アンテナベースとの対向面積が減少されている」ことも同様であるから、 本願発明と引用発明は、『頂部と、該頂部の両側から急傾斜の斜面とされて前記アンテナベースとの対向面積が減少されている断面形状が山形に形成された側部とを有し、前記アンテナ基板を跨ぐように、前記側部が前記アンテナ基板の両側に配置されている導電性のトップ部』の点で一致する。 また、引用発明の「導電性のトップ部」は、引用例の上記ニ.[0023]の記載によれば、「アンテナパターン61の上端において両側に延伸する」ものであり、「このように傘状のトップ64を設けることにより、アンテナ基板60により構成されるアンテナの電気的特性を向上することができる。」のであるから、前記「頂部」近傍において前記「アンテナパターン」に電気的に接続されており、前記「アンテナパターン」と共にアンテナの放射素子(アンテナエレメント)として機能するものであるのは明らかであり、 本願発明と引用発明は、『前記頂部近傍が前記アンテナパターンに接続されて、前記アンテナパターンと共にアンテナエレメントを構成している導電性のトップ部』の点でも一致する。 また、上記「アンテナエレメント」の一致点の認定によれば、引用発明の「受信されたFM波帯とAM波帯の受信信号」は、本願発明の『前記アンテナエレメントにより受信されたAM放送とFM放送の信号』であり、 「アンテナのインダクタ成分を補うアンテナコイル」は、『前記アンテナエレメントのインダクタンス分を補うコイル』の点で一致する。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。 <一致点> 「アンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部とを備え、取り付けられた際に約70mm以下の高さで突出するアンテナ装置であって、 前記アンテナ部は、 前記アンテナケースの下端に取り付けられた導電性のアンテナベースと、 該アンテナベース上に立設されて配置され、アンテナパターンが上部に形成されているアンテナ基板と、 頂部と、該頂部の両側から急傾斜の斜面とされて前記アンテナベースとの対向面積が減少されている断面形状が山形に形成された側部とを有し、前記アンテナ基板を跨ぐように、前記側部が前記アンテナ基板の両側に配置されていると共に、前記頂部近傍が前記アンテナパターンに接続されて、前記アンテナパターンと共にアンテナエレメントを構成している導電性のトップ部と、 前記アンテナエレメントにより受信されたAM放送とFM放送の信号を増幅するアンプが設けられ、前記アンテナベース上に配置されているアンプ基板とを備え、 前記アンテナ基板における前記アンテナパターンが、前記アンプ基板における前記アンプの入力に、前記アンテナエレメントのインダクタンス分を補うコイルを介して接続されているアンテナ装置。」 <相違点1> 「アンテナベース」の「取り付け」に関し、本願発明は「前記アンテナケースの下面を閉塞するよう嵌着される」のに対し、引用発明は単に「取り付けられた」構成である点。 <相違点2> 本願発明は「前記トップ部における前記側部の下縁と前記アンテナベースとの間隔が約10mm以上とされて」いるのに対し、引用発明はそのような構成はない点。 4.判断 まず、上記相違点1の「アンテナベース」の「取り付け」について検討するに、 部材の取付方法としての「嵌着」は、特に例示するまでもなく周知の慣用手段であって、当業者であれば必要に応じ種々の取付手段の中から適宜に選択可能なものであり、「アンテナケースの下面を閉塞する」点に関しても、本願図4と引用例図4を見れば実質的な差異は認めがたいものであるが、当業者が適宜なし得ることに過ぎない。 したがって、「アンテナベース」の「取り付け」に関し、「前記アンテナケースの下面を閉塞するよう嵌着される」とした相違点1は格別のことではない。 ついで、相違点2の「トップ部における前記側部の下縁と前記アンテナベースとの間隔」について検討するに、 引用発明の「トップ部」の「側部」は、引用例の上記ニ.[0024]、図18によれば、その「突出幅W」が最大で「30mm」である例示があり、一方、引用例ロ.[0015]、図11によれば、図18と同様な「アンテナ基板30」の「高さH」は「約60mm」程度とされている。 したがって、引用例の「トップ部における側部の下縁」の高さ、すなわち立設された「アンテナベース」との間隔は、トップ部の傘の開く角度にもよるが、完全に傘が閉じた状態であっても最低60mm-30mm=30mmあり、本願発明の構成要件である「約10mm以上」であることは明らかである。 したがって、「前記トップ部における前記側部の下縁と前記アンテナベースとの間隔が約10mm以上とされて」おりとする相違点2も、引用例の記載から当業者であれば適宜なし得ることであり、格別のことではない。 5.結語 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例に記載された技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 また、「第2.補正却下の決定」の末尾で付言したように、仮に本件補正が却下されないものであるとしても、補正後の発明それ自体も特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-02-22 |
結審通知日 | 2013-02-25 |
審決日 | 2013-03-08 |
出願番号 | 特願2008-181545(P2008-181545) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q) P 1 8・ 561- Z (H01Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岸田 伸太郎 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
山中 実 矢島 伸一 |
発明の名称 | アンテナ装置 |
代理人 | 鈴木 隆盛 |
代理人 | 浅見 保男 |
代理人 | 生井 和平 |