• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1273264
審判番号 不服2012-20027  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-11 
確定日 2013-04-22 
事件の表示 特願2010-129979「感熱紙印刷システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年9月30日出願公開、特開2010-215413〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年6月13日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理2004年6月14日、米国)を国際出願日とする特願2007-527801の一部を、平成22年6月7日に新たな特許出願としたものであって、平成24年6月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年10月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
平成24年5月21日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、本願の請求項1ないし請求項13に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13に記載された事項によって特定される発明と認める。請求項1の記載は、次のとおりである。
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「印刷媒体のための認証システムであって、
特定の印刷媒体に物理的に関連するデジタルメモリと、
該メモリに保存されており、該特定の印刷媒体に対して一意に定まる識別子であって、該特定の印刷媒体がある特定の装置における使用に際して真正なものであるか否かを表す識別子を含むコード化されたデータと、
前記デジタルメモリに接続されており、前記特定の印刷媒体が前記特定の装置における使用に際して真正なものであるか否かを決定するプリンター制御システムと
を備えており、
前記プリンター制御システムがルックアップテーブルを有しており、
前記識別子は識別番号を含むものであり、該識別番号は、前記特定の印刷媒体が前記特定の装置における使用に際して真正なものであるか否かを決定するために、前記ルックアップテーブルを用いて認証され得るものである、システム。」

3.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-297342号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の記載がある。
a「【0002】【従来の技術】従来から、発券装置として飲食店において食券を発行する自動食券販売機や、駅において切符を発売する自動切符販売機などが広く知られている。このような発券装置内には、一般に紙ロールを備えており、その紙ロール上に所定の印字を行い、所定の大きさにカットして、食券や切符などの券を発行している。その紙ロールは券を発行するたびに徐々に消費され、完全に消費されると新たな紙ロールと交換される。また、紙ロールは発行する券の大きさ、形状、発券装置の設計などに応じてその形状、大きさ、長さ、厚さ、印字特性などが規定されている。
【0003】【発明が解決しようとする課題】ところが、このような紙ロールの代替品をその発券装置の製造元とは無関係の第三者が製造し、販売する場合がある。かかる行為は純正品の紙ロールの製造販売者の利益を損ねるものであると同時に、代替品が純正品に比べてその形状、大きさ、長さ、厚さ、印字特性などが異なる場合には発券装置が正常に動作しなかったり、場合によっては発券装置が故障してしまうおそれがある。
【0004】本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、代替品の紙ロールの使用を防止することが出来る発券装置を提供することにある。」

b「【0005】【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、媒体シートをロール状にした媒体ロールと、その媒体ロールを着脱可能に保持しその媒体シートから券を発行する本体装置とを備える発券装置において、当該媒体ロールは少なくともそれが純正品であることを示す情報が格納される情報格納部を備えるとともに、当該情報格納部に格納される情報を読み取る読取手段と、読み取られた情報に基づいて当該媒体ロールの適否を判断する判断手段と、当該判断手段の判断に基づいて発券を規制する規制手段とを備えるものである(請求項1)。
【0006】本体装置に装着される媒体ロールが代替品の場合、読取手段は純正品であることを示す情報を読み取ることができないため、判断手段はその媒体ロールが不適であると判断し、規制手段は発券を規制し、発券装置が発券できなくする。一方、本体装置に装着される媒体ロールが純正品の場合、読取手段は純正品であることを示す情報を読み取り、判断手段はその媒体ロールが適切であると判断し、規制手段は発券を規制することなく、発券装置を正常に動作させる。」

c「【0008】さらに、代替品の媒体ロールの使用をより確実に防止するためには、上記情報格納部が再利用される状況を考慮する必要がある。例えば、媒体ロールの芯体に情報格納部が埋没される場合(請求項2参照)、純正品の媒体ロールを使い切った後、その純正品の芯体に代替品の媒体シートが取り付けられると、媒体シート自体は代替品であるにもかかわらず、芯体が純正品であるため発券装置は正常に動作してしまう。
【0009】かかる状況に対応するための一の構成としては、上記情報格納部には、その媒体ロールを特定する情報が格納され、上記判断手段は、装着された媒体ロールの累積使用量に基づいて当該媒体ロールの適否を判断するものが挙げられる(請求項3)。判断手段は、ある特定の媒体ロールの累積使用量が予め設定される所定初期量を超えると、判断手段はその媒体ロールを不適であると判断し、規制手段は発券を規制し、発券装置が発券できなくする。」

d「【0019】図2は、図1(b)に示す紙ロール1及びホルダー21の構成をより詳細に説明するものである。同図に示すように、紙ロール1は厚紙ロール状のコア部材(芯体)10とそのコア部材10に巻き付けられる紙テープ(媒体シート)11とにより構成され、自動券売装置2のホルダー21に着脱可能に取り付けられる。そして、コア部材10の内部には、外部からは目視できないようにデータキャリア(情報格納部)DCが埋没されている。一方、ホルダー21内部にはそのホルダー21に紙ロール1が装着されて状態で、コア部材10内のデータキャリアDCの情報を読み取ることができるリーダユニット(読取手段)3のアンテナ部30が配設されている。以下、各実施例1?4に分けて、データキャリアDC内の情報の種類とその処理の方法について具体的に説明する。
【0020】○実施例1
図3は、本実施例に係る自動券売装置2の制御系をブロック図を用いて説明するものである。この制御系は大きく分けて、計測対象である紙ロール1、計測部であるリーダユニット3、制御部4、制御対象である発券部20及び液晶ディスプレイ装置5とから構成されている。
【0021】リーダユニット3はこのデータキャリアDC内の情報をデータキャリアDCに直接接触することなく読み取ることができるものであり……
【0022】制御部(判断手段、規制手段)4は、CPU、記憶部、入出力部などからなり、予め記憶されている情報及びリーダユニット3から入力される情報に基づいて、発券部20や液晶ディスプレイ装置5へ制御信号を出力するものである。
【0023】発券部20は、紙テープ送り出し部、印字部、紙テープ切り取り部などからなり、制御部4からの制御信号に基づいて紙ロール1から紙テープ11を送り出し、所定の印字を行い、紙テープ11を切り取り、食券Tとして発券口から発行するものである。」

e「【0026】図5は、本実施例に係る自動券売装置2の動作手順を示すフローチャートである。……
【0027】自動券売装置2のホルダー21に紙ロール1が装着されると、リーダユニット3によりデータキャリアDC内の情報が読み取られ(図5S1参照)、制御部4へと入力される。制御部4では、リーダユニット3から入力される情報と予め記憶されている設定純正品情報GC’とに基づいて、その装着された紙ロール1が純正品1(g)か否かを判断する(図5S2参照)。
【0028】ここで、リーダユニット3から入力された情報が予め記憶されている設定純正品情報GC’と一致する場合には、制御部4はその装着された紙ロール1が純正品1(g)であると判断する。一方、リーダユニット3から情報が入力されない場合、又はリーダユニット3から情報が入力されるが、その情報が予め記憶されている設定純正品情報GC’と一致しない場合には、制御部4はその装着された紙ロール1が代替品1(f)であると判断する。
【0029】紙ロール1が純正品1(g)であると判断されると、その紙ロール1が交換されるまで通常の処理が行われる(図5S3、S4参照)。……
【0030】一方、紙ロール1が代替品1(f)であると判断されると、その紙ロール1が交換されるまで代替品処理が行われる(図5S5、S6参照)。ここで、代替品処理とは、制御部4が発券部20に制御信号を出力し、発券部20による発券を禁止し、制御部4が液晶ディスプレイ装置5に制御信号を出力し、液晶ディスプレイ装置5にその旨の表示、例えば『この紙ロールは純正品ではありません。正しい紙ロールを装着してください。』とメッセージを表示させる。……
【0031】このようにして本実施例に係る自動券売装置2では、純正品の紙ロール1(g)と代替品の紙ロール1(f)とを識別し、それぞれに応じた処理を行っている。」

f「【0032】○実施例2……
【0034】以下、本実施例に係る自動券売装置2の構成及びその動作を実施例1のものとの相違部分を中心に説明する。……
【0035】図7は、本実施例における制御部4の判断の基礎となる情報を説明するものである。制御部4内の記憶部には、予め設定初期枚数IVと判定アルゴリズムJAが記憶されている。……判定アルゴリズムJAは、後述の特定情報IDが真正なものか否かをチェックするアルゴリズムである。…
【0036】一方、データキャリアDCにはそのデータキャリアDCが埋没されている紙ロール1を一義に特定する特定情報IDが記憶されている。…
【0038】自動券売装置2のホルダー21に紙ロール1が装着されると、リーダユニット3によりデータキャリアDC内の情報が読み取られ(図5S1参照)、制御部4へと入力される。制御部4では、リーダユニット3から入力される特定情報IDと予め記憶されている判断アルゴリズムAGとに基づいて、その装着された紙ロール1が純正品1(g)か否かを判断する(図5S2参照)。」

g 図2?図5、及び図7は、次のとおりである







以上の記載並びに図2?図5、及び図7によれば、引用例1には、次の発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。)

《引用発明》
紙ロールから紙テープを送り出し、所定の印字を行う発券装置であって、
コア部材の内部にデータキャリアDCが埋没されている紙ロールと、
該データキャリアDCに記憶されており、該紙ロールを一義に特定する特定情報IDであって、該紙ロールが純正品であるか否かを表すデータと、
前記データキャリアDC内の情報が読み取られ、特定情報IDと予め記憶されている判断アルゴリズムによって紙ロールが純正品か否かを判断する制御部と、を備えている発券装置。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「紙ロール」及び「紙テープ」は、本願発明の「印刷媒体」に相当し、引用発明の「発券装置」は、紙テープに所定の印字を行うものであって、かつ、判断アルゴリズムによって紙ロールが純正品か否かを判断するものであるから、本願発明の「印刷媒体のための認証システム」との要件を満たす。
引用発明の「データキャリアDC」は、本願発明の「デジタルメモリ」に相当し、かつ、紙ロールのコア部材の内部に埋没されているから、本願発明の「特定の印刷媒体に物理的に関連する」との要件を満たす。
引用発明の「記憶」及び「純正品」は、それぞれ本願発明の「保存」及び「ある特定の装置における使用に際して真正なもの」に相当する。
引用発明の「紙ロールを一義に特定する特定情報ID」は、本願発明の「特定の印刷媒体に対して一意に定まる識別子」に相当する。
引用発明の「紙ロールを一義に特定する特定情報IDであって、該紙ロールが純正品であるか否かを表すデータ」は、デジタルデータであってコード化されていることが明らかであるから、本願発明の「特定の印刷媒体に対して一意に定まる識別子であって、該特定の印刷媒体がある特定の装置における使用に際して真正なものであるか否かを表す識別子を含むコード化されたデータ」との要件を満たす。
引用発明の「制御部」は、本願発明の「プリンター制御システム」に相当し、引用発明の「データキャリアDC内の情報が読み取られ、特定情報IDと予め記憶されている判断アルゴリズムによって紙ロールが純正品か否かを判断する」は、本願発明の「特定の印刷媒体が前記特定の装置における使用に際して真正なものであるか否かを決定する」に相当する。
本願発明の「デジタルメモリに接続されており、前記特定の印刷媒体が前記特定の装置における使用に際して真正なものであるか否かを決定するプリンター制御システム」は、「デジタルメモリ」内に保存されている「コード化されたデータ」が「プリンター制御システム」に伝達されて、「プリンター制御システム」において「(印刷媒体が)真正なものであるか否かを決定する」という意味であることは、明らかである。すると、本願発明の「デジタルメモリに接続されており」は、「デジタルメモリ」と「プリンター制御システム」とが、「デジタルメモリ」内に保存されている「コード化されたデータ」を「プリンター制御システム」に伝達できるように接続されていることを意味している。
一方、引用発明において、「データキャリアDC」内に記憶(保存)されたコード化されたデータである「特定情報ID」が、「制御部」に伝達できるように接続されていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「制御部」は、本願発明の「デジタルメモリに接続されており」との要件を満たしている

すると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。
《一致点》
印刷媒体のための認証システムであって、
特定の印刷媒体に物理的に関連するデジタルメモリと、
該メモリに保存されており、該特定の印刷媒体に対して一意に定まる識別子であって、該特定の印刷媒体がある特定の装置における使用に際して真正なものであるか否かを表す識別子を含むコード化されたデータと、
前記デジタルメモリに接続されており、前記特定の印刷媒体が前記特定の装置における使用に際して真正なものであるか否かを決定するプリンター制御システムと、を備えている、システム。

《相違点1》
本願発明では、識別子は識別番号を含むものであるのに対して、引用発明では、特定情報IDが識別番号を含むか否か特定されていない点。

《相違点2》
本願発明では、プリンター制御システムがルックアップテーブルを有しており、特定の印刷媒体が特定の装置における使用に際して真正なものであるか否かを決定するために、識別子の識別番号が前記ルックアップテーブルを用いて認証され得るものであるのに対して、引用発明では、特定情報IDと予め記憶されている判断アルゴリズムによって紙ロールが純正品か否かを判断するものである点。

5.相違点の検討
《相違点1》について
識別子(引用発明の特定情報ID)を、識別番号を含むものとするか否かは、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。

《相違点2》について
ルックアップテーブルを用いて、認証コード等のデータを認証することは、例えば特開平7-219937号公報の請求項14や段落0022、特開平9-282506号公報の段落0013?0014に記載されており、情報処理技術分野における周知・慣用技術である。引用発明に、この周知・慣用技術を適用して、相違点2に係る本願発明の構成にすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

そして、本願発明が奏する効果も、引用発明及び周知・慣用技術から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知・慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
原査定は妥当である。よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-29 
結審通知日 2012-11-30 
審決日 2012-12-11 
出願番号 特願2010-129979(P2010-129979)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 立人  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
紀本 孝
発明の名称 感熱紙印刷システムおよび方法  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  
代理人 松島 鉄男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ