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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1273279
審判番号 不服2009-25854  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2013-04-24 
事件の表示 特願2003- 36132「エレベータ設備におけるマルチメディアコンテンツ提示の手順、システムおよびコンピュータプログラム製品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月21日出願公開、特開2003-330963〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年2月14日(パリ条約による優先権主張2002年3月1日、欧州特許庁)を出願日とする出願であって、その後の手続の経緯は次のとおりである。
拒絶理由通知 (起案日)平成20年12月5日
意見、手続補正 (提出日)平成21年6月16日
拒絶査定 (起案日)平成21年8月14日
拒絶査定謄本送達 (送達日)平成21年9月1日
審判請求 (提出日)平成21年12月28日
手続補正 (提出日)平成21年12月28日
前置報告 (作成日)平成22年4月23日
審尋 (起案日)平成23年8月11日
回答 (提出日)平成23年11月11日
拒絶理由通知 (起案日)平成24年4月20日
補正却下の決定 (起案日)平成24年4月20日
意見、手続補正 (提出日)平成24年10月18日

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成24年10月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(以下「本願発明」という。)
「エレベータ設備において、マルチメディアコンテンツを同定されたユーザに提示するための方法であって、
a.ユーザによって選択されるマルチメディアコンテンツの好みを含むユーザプロファイルをエレベータ設備のユーザに提供するステップと、
b.防御壁によってエレベータ設備から分離されるコンテンツデータベースにマルチメディアコンテンツを記憶するステップとを含み、記憶されたマルチメディアコンテンツは、ユーザのマルチメディアコンテンツの好みに関連した選択マルチメディアコンテンツを含み、
c.ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、認識手段によって認識される識別コードによってユーザを同定するステップとを含み、認識された識別コードは識別データベース内のユーザプロファイルに識別アドレスを割り当てており、
d.同定されたユーザの、マルチメディアを有するユーザプロファイルに基づいて、エレベータ設備から防御壁を通してコンテンツデータベースに選択マルチメディアコンテンツの要求を送信するステップと、
e.選択されたマルチメディアコンテンツの要求にしたがって、コンテンツデータベース内の選択されたマルチメディアコンテンツを検索するステップと、
f.同定されたユーザの近傍にある少なくとも1つの出力装置を決定するステップと、
g.コンテンツデータベースから防御壁を通して決定された出力装置に選択マルチメディアコンテンツを送信し、選択マルチメディアコンテンツを出力装置のユーザに提示するステップと、
h.同定されたユーザに送信された選択マルチメディアコンテンツを、出力装置を使用して提示するステップとを含む、方法。」

3.引用文献

3.1 本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2000-289947号公報( 以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は、当審において付与したものである。以下、同様。)

A.「【請求項1】少なくとも1つのマン/マシンインタフェース(1)が、行き先の入力とユーザ情報とのために備えられている輸送システムとのコミュニケーションのための方法であって、それぞれのユーザに合った個別のコミュニケーション面が、ユーザ固有のデータに基づいて生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】制御ユニット(1)が、情報キャリア(1.0)の存在を検査し、少なくともユーザの識別データを転送するように情報キャリア(1.0)に要求し、個別のコミュニケーション面が、ユーザ固有のデータに基づいて生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。」

B.「【0002】
【従来の技術】エレベータ設備で行き先要求の暗示的入力・・・認識装置・・・エレベータユーザの識別・・・行き先の階への最も良い可能な走行状態を有するエレベータケージの割当ては、ディスプレイ上でユーザに知らされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】知られている装置の欠点は、情報送信機とディスプレイの情報内容が、比較的制限され、即時の適応の可能性を提供しないことにある。
…(中略)…
【0005】・・・ユーザに合わせられたコミュニケーション・・・」

C.「【0007】
【発明の実施の形態】マン/マシンインタフェースによって、ユーザが、自分に個別のデータで識別され、ユーザが、自分の行き先を輸送システムの制御装置2に知らせる。マン/マシンインタフェースは、図1から図4では、1で示される。
…(中略)…
【0008】図2は、コンピュータとワーキングメモリとを有する制御ユニット1.1、タッチ画面1.2、音声ユニット1.3、メモリ1.4、および任意にカードリーダ1.5を有する、マン/マシンインタフェース1を示す。制御ユニット1.1と連絡することができるそれぞれの情報キャリア1.0は、ユーザごとに供給される。情報キャリア1.0は、接触することなしに制御ユニット1.1とコミュニケーションすることができ、・・・
【0009】制御ユニット1.1は、接触する必要なしにコミュニケーションする情報キャリア1.0の存在について絶えず検査する。情報キャリア1.0を有するユーザが、受信範囲内に位置している場合、制御ユニット1.1は、情報キャリア1.0に、少なくともユーザの識別データを制御ユニット1.1へ転送することを要求する。
…(中略)…
【0010】情報キャリア1.0は・・・追加の情報に基づいて、ユーザへのサービスが、実行される。
【0011】生体測定の方法も、ユーザの識別のために用いられ、・・・明瞭に識別される。
【0012】・・・アクセスについて認可…(中略)…
【0013】・・・正当なユーザ・・・」

D.「【0014】ホテルでのマン/マシンインタフェース使用の場合、たとえば、VIPの客のためのアクティビティ、メニュー、あるいは当該客がバーで期待する情報などさらなる情報を、ホテルの客に提供するコミュニケーション面が利用可能にされる。たとえば、広告、他のユーザへのコミュニケーション、ユーザを支援するための情報、他の輸送機関への照会などのような情報が、タッチ画面1によってユーザにコミュニケーションできる。
…(中略)…
【0016】コミュニケーション面は、それぞれのユーザによって異なる方法で構成できる。図3により示されたバーの代わりに、たとえば、行き先が選択可能であり、および/または、乗り物の瞬間的な位置が示される、輸送システムの一覧を表すことができる。ユーザの識別データは、たとえば、ユーザのハンディキャップの詳細も含む。コミュニケーション面は、音声ユニット1.3のスイッチを入れることによって、視覚的にハンディキャップのあるユーザのために拡張され、ここで、制御ユニット1.1が、ユーザまたは制御ユニット1.1を有するユーザと、言語でコミュニケーションする。音声ユニット1.3は、それぞれのユーザの好みに従ったバックグラウンドミュージックのために用いられることもできる。」

E.「【0018】個別のコミュニケーション面の生成に必要なデータは、制御ユニット1.1がアクセスを有するメモリ1.4で保管できる。このデータが情報キャリア1.0上に存在している場合、ユーザの明確な識別は必要ではない。他の変形形態では、これらのデータは、部分的には情報キャリア1.0上に、また部分的にメモリ1.4内に存在する。制御ユニット1.1は、情報キャリア1.0に情報を転送することもできる。既存のデータ、たとえば銀行預金口座の残高は、したがって変更することも、または修正することもできる。適切な入力ユニットが利用可能である場合、ユーザは、自分自身で少なくとも部分的に情報キャリア1.0の情報を設定することができる。
【0019】輸送システムの使用によって得られた情報は、他の目的のためにも用いられることができる。・・・または、輸送システムの使用によって確立されるユーザの習慣が、広告の目的のために用いられることができる。」

上記A.?E.の記載から、次のことがいえる。

(A)B.の「エレベータ設備」、D.の「客に提供するコミュニケーション面」、「たとえば、広告、他のユーザへのコミュニケーション、ユーザを支援するための情報、他の輸送機関への照会などのような情報が、タッチ画面1によってユーザにコミュニケーションできる」、「コミュニケーション面は、それぞれのユーザによって異なる方法で構成」、「それぞれのユーザの好みに従ったバックグラウンドミュージックのために用いられる」との記載から「音声・表示情報(ユーザの好みに従ったバックグラウンドミュージックや広告を含む個別のコミュニケーション面(の情報))」と、「エレベータ設備において、音声・表示情報を・・・ユーザに提示するための方法」をよみとることができるとともに、A.の「情報キャリア(1.0)の存在を検査し、少なくともユーザの識別データを転送するように情報キャリア(1.0)に要求し、個別のコミュニケーション面が、ユーザ固有のデータに基づいて生成される」、C.の「追加の情報に基づいて、ユーザへのサービスが、実行され」、「ユーザの識別」、「明瞭に識別」、「アクセスについて認可」、「正当なユーザ」との記載から、「ユーザ」の「同定」をよみとることができる。
よって、これらから、「エレベータ設備において、音声・表示情報を同定されたユーザに提示するための方法」をよみとることができる。

(B)A.の「それぞれのユーザに合った個別のコミュニケーション面が、ユーザ固有のデータに基づいて生成される」、C.の「追加の情報」、例として示された、D.の「ホテルでのマン/マシンインタフェース使用の場合、たとえば、VIPの客のためのアクティビティ、メニュー、あるいは当該客がバーで期待する情報などさらなる情報を、ホテルの客に提供するコミュニケーション面が利用可能にされる」、「広告、他のユーザへのコミュニケーション、ユーザを支援するための情報、他の輸送機関への照会などのような情報が、タッチ画面1によってユーザにコミュニケーションできる」、「コミュニケーション面は、それぞれのユーザによって異なる方法で構成」、「それぞれのユーザの好みに従ったバックグラウンドミュージックのために用いられる」、E.の「輸送システムの使用によって確立されるユーザの習慣が、広告の目的のために用いられる」との記載から、「好み」、「ユーザの習慣」に関連した「ユーザの履歴情報」をよみとることができる点をふまえると、「a.ユーザによって選択される音声・表示情報の好みを含むユーザの履歴情報をエレベータ設備のユーザに提供するステップ」がよみとれる。

(C)E.の「個別のコミュニケーション面の生成に必要なデータは、制御ユニット1.1がアクセスを有するメモリ1.4で保管」との記載、及び(A)で言及した「音声・表示情報」から、「データ記憶部」に「音声・表示情報」が「記憶」されていると解すことができ、当該「個別の」と(B)で言及の「タッチ画面1によってユーザにコミュニケーション」、「好み」(好みにより選択)から、「選択」をよみとることができる。
よって、これらから、「b.データ記憶部に音声・表示情報を記憶するステップとを含み、記憶された音声・表示情報は、ユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報を含み、」をよみとることができる。

(D)B.の「エレベータ設備」、A.の「情報キャリア」が含む「ユーザの識別データ」、C.の「制御ユニット1.1は、・・・情報キャリア1.0の存在について絶えず検査する」、「情報キャリア1.0を有するユーザが、受信範囲内に位置している場合、・・・情報キャリア1.0に、少なくともユーザの識別データを制御ユニット1.1へ転送することを要求する」、「明瞭に識別」、「アクセスについて認可」との記載から、「ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、制御ユニットによって識別されるユーザの識別データによってユーザを同定するステップとを含み、」をよみとることができる。
また、(B)で言及の「ユーザの履歴情報」は、A.の「個別のコミュニケーション面が、ユーザ固有のデータに基づいて生成」、C.の「追加の情報に基づいて、ユーザへのサービスが、実行される」、D.の「ユーザの好み」、E.の「変更」、「修正」、「ユーザは、・・・部分的に情報キャリア1.0の情報を設定」、「輸送システムの使用によって得られた情報」、「輸送システムの使用によって確立されるユーザの習慣」、「他の目的」、「広告の目的のために用いられる」との記載から、当該「ユーザの習慣」、「好み」を反映した「情報」が他の目的などのために用いられ(例えば、広告やユーザの好みに従ったバックグランドミュージックがユーザにもたらされる)、「ユーザの習慣」、「好み」を反映した使用によって得られた「情報」や、C.の情報キャリアに含まれる「情報」は、「ユーザの識別データ」と「対応づけられて」いる「履歴情報」であることをよみとることができる。
よって、「c.ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、制御ユニットによって識別されるユーザの識別データによってユーザを同定するステップとを含み、識別された識別データはユーザの履歴情報と対応づけられており、」をよみとることができる。

(E)(D)で言及した「明瞭に識別(同定)」、(B)で言及した「音声・表示情報」の「好み」を含む「ユーザの履歴情報」、「ユーザの習慣」、「好み」を反映した「ユーザの識別データ」、E.の「このデータが情報キャリア1.0上に存在している場合、ユーザの明確な識別は必要ではない」との記載から、該存在しない場合の「ユーザの習慣」、「好み」を反映した「ユーザの識別データ」に基づいてメモリがアクセスされることをよみとることができ、E.の「個別のコミュニケーション面の生成に必要なデータ」は「メモリ」に「保管」、「アクセス」との記載から、メモリへの読み出しなどに付随する読み出し「要求」、「送信」をよみとることができる点をふまえると、「d.同定されたユーザの、音声・表示情報を有するユーザの履歴情報に基づいて、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部にユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報の要求を送信するステップ」をよみとることができる。

(F)D.の「コミュニケーション面は、それぞれのユーザによって異なる方法で構成」、(D)、(E)で言及した「選択」、「要求」、「識別(ユーザの識別データ)に基づいてメモリがアクセスされる」、及び、識別データによるメモリアクセスにおいて「検索」は慣用技術で記載されているに等しい事項である点を加味すると、「e.選択されたユーザの音声・表示情報の要求にしたがって、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部内の選択された音声・表示情報を検索するステップ」をよみとることができる。

(G)B.の従来技術である「ユーザの識別」、「行き先の階への最も良い可能な走行状態を有するエレベータケージの割当ては、ディスプレイ上でユーザに知らされる」との記載は、ディスプレイの情報内容が、比較的制限される従来の問題点を解決した引用文献1の発明においても備えている前提の事項と解される。
この「エレベータケージの割当ては、ディスプレイ上でユーザに知らされる」との記載と、C.の「マン/マシンインタフェースによって、ユーザが、自分に個別のデータで識別され、ユーザが、自分の行き先を輸送システムの制御装置2に知らせる」との記載、図2の「タッチ画面1.2、音声ユニット1.3等を有するマンマシンインターフェース」から、「f.同定されたユーザの近傍にある少なくとも1つの出力装置を決定するステップ」をよみとることができる。

(H)(D)?(G)の言及によれば、また、「g.音声・表示情報を記憶するデータ記憶部から決定された出力装置に選択音声・表示情報を送信し、選択音声・表示情報を出力装置のユーザに提示するステップ」をよみとることができる。

(I)(D)?(G)の言及によれば、また、「h.同定されたユーザに送信された選択音声・表示情報を、出力装置を使用して提示するステップ 」をよみとることができる。

上記(A)?(I)によれば、引用文献1には、ディスプレイの情報内容が、比較的制限され、即時の適応の可能性を提供しない問題点(B.参照)を解決した次の発明(以下「引用文献1発明」という。)が示されている。
「エレベータ設備において、音声・表示情報を同定されたユーザに提示するための方法であって、
a.ユーザによって選択される音声・表示情報の好みを含むユーザの履歴情報をエレベータ設備のユーザに提供するステップと、
b.データ記憶部に音声・表示情報を記憶するステップとを含み、記憶された音声・表示情報は、ユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報を含み、
c.ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、制御ユニットによって識別されるユーザの識別データによってユーザを同定するステップとを含み、識別された識別データはユーザの履歴情報と対応づけられており、
d.同定されたユーザの、音声・表示情報を有するユーザの履歴情報に基づいて、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部にユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報の要求を送信するステップと、
e.選択されたユーザの音声・表示情報の要求にしたがって、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部内の選択された音声・表示情報を検索するステップと、
f.同定されたユーザの近傍にある少なくとも1つの出力装置を決定するステップと、
g.音声・表示情報を記憶するデータ記憶部から決定された出力装置に選択音声・表示情報を送信し、選択音声・表示情報を出力装置のユーザに提示するステップと、
h.同定されたユーザに送信された選択音声・表示情報を、出力装置を使用して提示するステップ とを含む、方法。」

3.2 本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第00/70585号(パテントファミリー;特表2002-544637号公報。 以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある 。

F.“In one such implementation, the computer system senses an identifer encoded in the advertisement, forwards the identifier to a remote database, receives from the database (17) a corresponding internet address (18a, 18b, 18c), and directs a browser to that address (18a, 18b, 18c).”(フロント頁Abstractの欄から抽出)
(日本語訳:「そのような一実施形態のコンピュータシステムは、広告内に符号化された識別子を検出し、識別子を遠隔のデータベースへ転送し、データベース(17)から対応するインターネットアドレス(18a,18b,18c)を受け取り、ブラウザをそのアドレス(18a,18b,18c)に割り当てる。」(ファミリー【要約】から抽出))

G.“The access control system then checks whether the badge ID discerned from the proximity sensor properly corresponds to the Bedoop data extracted from the photograph on the badge. If so, access is granted;”(18頁34?36行)
(日本語訳:「アクセス管理システムは、近接センサで識別されたバッジIDが、バッジの写真から抽出したベドゥープデータに正しく対応しているかを確認する。もし正しく対応していれば、アクセスが許可され、」(ファミリー【0122】段落))

H.“In one particular example, the UID field in the Bedoop data can be written with a value that serves as an index to a database of user profiles, permitting later systems to which the printed item is presented to personalize their response in accordance with the profile data.”(20頁10?12行)
(日本語訳:「ある特別な例では、ベドゥープデータ内のUIDフィールドに、ユーザプロファイルのデータベースへのインデックスの役目をする値を書き込むことができ、その結果、印刷物が提供される、それ以降のシステムは、プロファイルデータに基づいて応答を独自のものにすることができる。」(ファミリー【0131】段落))

I.“Smart Elevators
In accordance with another embodiment, a building elevator is provided with one or more optical capture devices. Each device examines monitors the contents of the elevator chamber, looking for Bedoop encoded objects, such as ID badges.
On sensing a Bedoop-encoded object, the elevator can determine - among other data - the floor on which the wearer's office is located. The system can then automatically direct the elevator to that floor, without the need for the person to operate any buttons.”(23頁19?25行)
(日本語訳:「【スマートエレベータ】
別の実施形態によれば、一つ以上の光捕捉装置が建物用エレベータに備えられる。例えば、各装置は、エレベータ室内の中身を調べて、IDバッジのようなベドゥープ符号化オブジェクトを探す。
ベドゥープ符号化オブジェクトを感知すると、エレベータは、他のデータの中から、そのバッジをつけた人のオフィスがある階を決定することができる。そこで、システムは、その人がボタン操作する必要なしに、エレベータをその階へ自動的に向かわせる。」(ファミリー【0154】?【0155】段落))

上記F.?I.によれば、引用文献2には、次の事項が示されている。
・スマートエレベータ設備へのIDバッジのようなベドゥープ符号化オブジェクト技術を適用した実施形態。
・識別子を検出し、識別子を遠隔のデータベースへ転送し、データベースから対応するインターネットアドレスを受け取り、ブラウザをそのアドレスに割り当てる。その後データベースにアクセスできることは自明。
・ベドゥープデータ内のUIDフィールドに、ユーザプロファイルのデータベースへのインデックスの役目をする値を書き込むことができ、当該プロファイルデータに基づいて応答を独自のものにする技術。

3.3 本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2002-37550号公報( 以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次の記載がある 。

J.「【従来の技術】近時、情報化時代を反映してエレベータホールやかご内等に情報を表示するようになってきており、
…(中略)…
【0008】図1は、本発明の一実施の形態による情報表示システムを示すブロック構成図である。
【0009】情報配信センタ1は、表示情報データ13を管理すると共に通信手段2を介して複数の顧客に情報配信する表示情報管理装置12と、進入防止機能を備えた通信手段であるファイヤ・ウオール14を介して表示情報管理装置12に接続される・・・
【0010】一方、顧客ビル3には、文字放送情報を受信する文字放送チューナ33と、表示情報を記憶し出力する・・・」

K.「【0024】次に、上述した情報表示システムにおいてメッセージユニット31が定期的に表示情報を更新してディスプレイへ配信し表示する動作を図4のフローチャートによって説明する。
【0025】・・・メッセージユニット31から通信手段2を介して表示情報管理装置12へ接続する。すると表示情報管理装置12は、ステップS43でファイヤ・ウオール14を介して顧客データ管理装置15へメッセージユニット31の認証データを要求する。これを受けた顧客データ管理装置15は、要求されたメッセージユニット31の認証データを顧客情報データ16から読み出し、ファイヤ・ウオール14を介して表示情報管理装置12へ転送する。」

上記J.の「エレベータホールやかご内等に情報を表示」、「情報配信センタ1は、表示情報データ13を管理すると共に通信手段2を介して複数の顧客に情報配信する」、「顧客ビル3には、文字放送情報を受信する文字放送チューナ」との記載、及び、図1の情報配信センタ1の表示情報データ13、顧客情報データ16はデータベースとみられる点、「情報配信」、「通信」との記載から、情報配信のための要求、応答の通信があるとみられる点をふまえると、引用文献3には、エレベータホールやかご内等に情報を表示するための要求、応答の通信をともなうマルチメディアコンテンツのデータベースからの配信技術がよみとれる。
また、「表示情報データ13(表示情報データベースに相当)を管理すると共に通信手段2を介して複数の顧客に情報配信する表示情報管理装置12」と「顧客情報データ16(顧客情報データベースに相当)」を備えた「顧客データ管理装置15」との間に配置された「進入防止機能を備えた通信手段であるファイヤ・ウオール14」(図1参照)、及び、上記K.の「表示情報管理装置12は、・・・ファイヤ・ウオール14を介して顧客データ管理装置15へメッセージユニット31の認証データを要求」、「顧客データ管理装置15は、要求されたメッセージユニット31の認証データを顧客情報データ16から読み出し、ファイヤ・ウオール14を介して表示情報管理装置12へ転送」との記載から、表示情報データ13(表示情報データベースに相当)を管理する情報管理装置12と、顧客情報データ16(顧客情報データベースに相当)を備えた顧客データ管理装置15との間に配置された進入防止のためのファイヤ・ウオール技術をよみとることができる。

3.4 本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第01/97156号(パテントファミリー;特表2004-503884号公報。以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに次の記載がある 。

L.“It is a further object of the present invention to provide a hotel' business information system that makes information on guests at an affiliated hotel into a database, manages the database, and establishes the environment of the user terminal to be suitable to the individual guest's tastes using the information on the guest to produce a comfortable atmosphere in the guest rooms.”(2頁10?15行)
(日本語訳:「また、本発明は提携ホテルに滞在した顧客の情報をデータベース化して累積管理し、この顧客の情報に基づいて、顧客の好みに合う客室の環境を合わせてセッティングすることによって安楽で快適な客室雰囲気を提供するホテルビジネス情報システムを提供することにその目的がある。」(ファミリー【0005】段落))

M.“The main contents database 52 stores various contents provided by the main server MS to the user terminals UT11 ~ UT1 m and Utn1 ~ Utnm of the respective local servers LS1 ~ LSn and members of the Internet web site installed on the web server 40. The contents database 52 comprises a tour information database that stores contents about tourist attractions, restaurants, culture and arts, etc.; a business information database that stores contents about exchange rates; an entertainment database that stores contents about movies, games, music videos, and virtual casinos; a cyber shopping database that provides cyber duty-free shops for sales of tax-free articles and cyber shopping malls for souvenirs and special products; a reservation service database that provides hotel, rent-a-car, railroad or airplane reservations; and an advertisement database that stores various advertisements provided to the user terminals UT11?UT1m and Utn1?Utnm of the respective local servers LS1?LSn. ”(7頁4?17行)
(日本語訳:「メインコンテンツデータベース52はメインサーバ(MS)によって各ローカルサーバ(LS1?LSn)のユーザ端末(UT11?UT1m、…、UTn1?UTnm)及びウェブサーバ40に設置されたインターネットウェブサイトの会員に提供される各種コンテンツに対するデータベースであって、このデータベースは観光名所、食べ物、文化芸術などの旅行情報データベースと、為替レート情報などのビジネス情報データベースと、映画、ゲーム、ミュージックビデオ、仮想カジノなどのようなエンターテイメイントデータベースと、免税品を販売するサイバー免税店と記念品及び特産品などを販売するサイバーショッピングモールなどのサイバーショッピングデータベースと、ホテル客室、レンタカー、列車及び航空券などの予約のための予約サービスデータベースと、各ローカルサーバ(LS1?LSn)のユーザ端末(UT11?UT1m、…、UTn1?UTnm)に提供される各種広告に関する広告データベースなどで構成できる。」(ファミリー【0014】段落))

N.“The local server LS is connected to the main server MS via the data network N such as the Internet by way of a firewall/proxy server 30.”(9頁1?2行)
(日本語訳:「ローカルサーバ(LS)はファイアウォール/プロキシサーバ30を経由してインタネット網のようなデータ網(N)を通じてメインサーバ(MS)に接続されている。」(ファミリー【0018】段落))

O.図2には、防護壁(firewall/proxy server 30)によってローカルサーバのデータベースが保護される様子が示されている。

引用文献4の図1、図2と上記M.、N.から、メインサーバのデータベースのコンテンツがローカルサーバのデータベースにインタネット網を介してロード(配信)されることがよみとれるとともに、上記「顧客」、「映画、ゲーム、ミュージックビデオ・・・などのようなエンターテイメイントデータベース」、「インタネット網」との記載から、上記コンテンツには、マルチメディアコンテンツが含まれると解される。
また、「各ローカルサーバ(LS1?LSn)」には、「ユーザ端末(UT11?UT1m、…、UTn1?UTnm)」が接続されており、引用文献4には、ユーザ端末(UT)が接続されるローカルサーバ(LS)のシステムを保護するファイアウォール技術が示されている(図2参照)といえる。

4. 引用文献1発明と本願発明との対比
ア.引用文献1発明の「音声・表示情報」は、「マルチメディアコンテンツ」とまではいえないとしても、その上位概念の「音声・表示情報」であり、一方、本願発明の「マルチメディアコンテンツ」も上位概念では「音声・表示情報」とみることができ、この点で共通する。
よって、引用文献1発明の「エレベータ設備において、音声・表示情報を同定されたユーザに提示するための方法」と本願発明の「エレベータ設備において、マルチメディアコンテンツを同定されたユーザに提示するための方法」とは「エレベータ設備において、音声・表示情報を同定されたユーザに提示するための方法」で共通する。(ここでの「音声・表示情報」と「マルチメディアコンテンツ」との対比については、以下、同様であり、ここでの対比の言及をそれぞれ引用する。)

イ.引用文献1発明のa.の「ユーザの履歴情報」は、「ユーザプロファイル」とまではいえないとしても、その上位概念の「ユーザの履歴情報」であり、一方、本願発明の「ユーザプロファイル」も上位概念では「ユーザの履歴情報」とみることができでき、この点で共通する。
よって、引用文献1発明の「a.ユーザによって選択される音声・表示情報の好みを含むユーザの履歴情報をエレベータ設備のユーザに提供するステップ」と本願発明の「a.ユーザによって選択されるマルチメディアコンテンツの好みを含むユーザプロファイルをエレベータ設備のユーザに提供するステップ」とは、上位概念において「a.ユーザによって選択される音声・表示情報の好みを含むユーザの履歴情報をエレベータ設備のユーザに提供するステップ」で共通する。

ウ.引用文献1発明のb.の「データ記憶部に音声・表示情報を記憶する」は、「防御壁によってエレベータ設備から分離されるコンテンツデータベースにマルチメディアコンテンツを記憶する」とまではいえないとしても、その上位概念の「データ記憶部に音声・表示情報を記憶する」であり、一方、本願発明の「防御壁によってエレベータ設備から分離されるコンテンツデータベースにマルチメディアコンテンツを記憶する」も上位概念では「データ記憶部に音声・表示情報を記憶する」とみることができ(マルチメディアコンテンツについては前述と同様)、この点で共通する。
よって、引用文献1発明の「b.データ記憶部に音声・表示情報を記憶するステップとを含み、記憶された音声・表示情報は、ユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報を含み、」と本願発明の「b.防御壁によってエレベータ設備から分離されるコンテンツデータベースにマルチメディアコンテンツを記憶するステップとを含み、記憶されたマルチメディアコンテンツは、ユーザのマルチメディアコンテンツの好みに関連した選択マルチメディアコンテンツを含み、」とは、上位概念において「b.データ記憶部に音声・表示情報を記憶するステップとを含み、記憶された音声・表示情報は、ユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報を含み、」で共通する。

エ.引用文献1発明の「制御ユニット」、「識別」、「ユーザの識別データ」は、それぞれ、本願発明の「認識手段」、「認識」、「識別コード」に相当し、引用文献1発明の「c.ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、制御ユニットによって識別されるユーザの識別データによってユーザを同定するステップとを含み」と、本願発明の「c.ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、認識手段によって認識される識別コードによってユーザを同定するステップとを含み」とに実質的な差異はなく、つづく、引用文献1発明の「識別された識別データはユーザの履歴情報と対応づけられて」は、当該ユーザの識別データ(認識された識別コード)が「識別データベース内のユーザプロファイルに識別アドレスを割り当てて」いるとまではいえないまでも、「認識された識別コードはユーザの履歴情報と対応づけられて」いるものであり、一方、本願発明の「認識された識別コードは識別データベース内のユーザプロファイルに識別アドレスを割り当てて」も、上位概念では「認識された識別コードはユーザの履歴情報と対応づけられて」とみることができて、両者は「認識された識別コードはユーザの履歴情報と対応づけられて」で共通する。
よって、引用文献1発明の「c.ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、制御ユニットによって識別されるユーザの識別データによってユーザを同定するステップとを含み、識別された識別データはユーザの履歴情報と対応づけられており、」と本願発明の「c.ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、認識手段によって認識される識別コードによってユーザを同定するステップとを含み、認識された識別コードは識別データベース内のユーザプロファイルに識別アドレスを割り当てており、」とは、上位概念において「c.ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、認識手段によって認識される識別コードによってユーザを同定するステップとを含み、認識された識別コードはユーザの履歴情報と対応づけられており、」で共通する。

オ.引用文献1発明の「d.同定されたユーザの、音声・表示情報を有するユーザの履歴情報に基づいて、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部にユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報の要求を送信するステップ」は、「ユーザプロファイル」に基づいて「エレベータ設備から防御壁を通してコンテンツデータベース」に「選択マルチメディアコンテンツ」の要求を送信するとまではいえないまでも、上位概念では「d.同定されたユーザの、音声・表示情報を有するユーザの履歴情報に基づいて、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部にユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報の要求を送信するステップ」とみることができ、一方、本願発明の「d.同定されたユーザの、マルチメディアを有するユーザプロファイルに基づいて、エレベータ設備から防御壁を通してコンテンツデータベースに選択マルチメディアコンテンツの要求を送信するステップ」も、上位概念においては「d.同定されたユーザの、音声・表示情報を有するユーザの履歴情報に基づいて、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部にユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報の要求を送信するステップ」とみることができ、この点で両発明は共通する。

カ.引用文献1発明の「e.選択されたユーザの音声・表示情報の要求にしたがって、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部内の選択された音声・表示情報を検索するステップ」は、選択されたユーザの「マルチメディアコンテンツ」、「コンテンツデータベース内」の選択された「マルチメディアコンテンツ」とまではいえないまでも、本願発明の「e.選択されたマルチメディアコンテンツの要求にしたがって、コンテンツデータベース内の選択されたマルチメディアコンテンツを検索するステップ」と、上位概念では「e.選択されたユーザの音声・表示情報の要求にしたがって、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部内の選択された音声・表示情報を検索するステップ」と共通する。

キ.引用文献1発明の「f.同定されたユーザの近傍にある少なくとも1つの出力装置を決定するステップ」と本願発明の「f.同定されたユーザの近傍にある少なくとも1つの出力装置を決定するステップ」とは同一である。

ク.引用文献1発明の「g.音声・表示情報を記憶するデータ記憶部から決定された出力装置に選択音声・表示情報を送信し、選択音声・表示情報を出力装置のユーザに提示するステップ」は、「コンテンツデータベースから防御壁を通して」とまではいえないまでも、上位概念では「g.音声・表示情報を記憶するデータ記憶部から決定された出力装置に選択音声・表示情報を送信し、選択音声・表示情報を出力装置のユーザに提示するステップ」とみることができ、一方、本願発明の「g.コンテンツデータベースから防御壁を通して決定された出力装置に選択マルチメディアコンテンツを送信し、選択マルチメディアコンテンツを出力装置のユーザに提示するステップ」も、上位概念においては「g.音声・表示情報を記憶するデータ記憶部から決定された出力装置に選択音声・表示情報を送信し、選択音声・表示情報を出力装置のユーザに提示するステップ」とみることができ、この点で両発明は共通する。

ケ.引用文献1発明の「h.同定されたユーザに送信された選択音声・表示情報を、出力装置を使用して提示するステップ」において、当該「選択音声・表示情報」は「選択マルチメディアコンテンツ」とまではいえないまでも、上位概念では「h.同定されたユーザに送信された選択音声・表示情報を、出力装置を使用して提示するステップ」とみることができ、一方、本願発明の「h.同定されたユーザに送信された選択マルチメディアコンテンツを、出力装置を使用して提示するステップ」も、上位概念においては「h.同定されたユーザに送信された選択音声・表示情報を、出力装置を使用して提示するステップ」とみることができ、この点で両発明は共通する。

以上の対比によれば、本願発明と引用文献1発明とは、次の点で一致し、そして、相違する。

〈一致点〉
エレベータ設備において、音声・表示情報を同定されたユーザに提示するための方法であって、
a.ユーザによって選択される音声・表示情報の好みを含むユーザの履歴情報をエレベータ設備のユーザに提供するステップと、
b.データ記憶部に音声・表示情報を記憶するステップを含み、記憶された音声・表示情報は、ユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報を含み、 c.ユーザがエレベータ設備の所定の近傍にいるとき、認識手段によって認識される識別コードによってユーザを同定するステップとを含み、認識された識別コードはユーザの履歴情報と対応ずけられており 、
d.同定されたユーザの、音声・表示情報を有するユーザの履歴情報に基づいて、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部にユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報の要求を送信するステップと、
e.選択されたユーザの音声・表示情報の要求にしたがって、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部内の選択された音声・表示情報を検索するステップと、
f.同定されたユーザの近傍にある少なくとも1つの出力装置を決定するステップと、
g.音声・表示情報を記憶するデータ記憶部から決定された出力装置に選択音声・表示情報を送信し、選択音声・表示情報を出力装置のユーザに提示するステップと、
h.同定されたユーザに送信された選択音声・表示情報を、出力装置を使用して提示するステップ とを含む、方法。

〈相違点1〉
同定されたユーザに提示するための方法に係る「音声・表示情報」が、本願発明においては、「マルチメディアコンテンツ」であるのに対し、引用文献1発明においては、マルチメディアコンテンツであるか不明な点。

〈相違点2〉
a.のステップに係る「ユーザ履歴情報」が、本願発明においては、「ユーザユーザプロファイル」であるのに対し、引用文献1発明においては、ユーザの履歴情報である点。

〈相違点3〉
b.の「データ記憶部」に音声・表示情報を記憶するステップが、本願発明においては、「防御壁によってエレベータ設備から分離されるコンテンツデータベースに」記憶するステップを含むのに対し、引用文献1発明は、そのような記憶するステップを含むものではない点。

〈相違点4〉
c.の「認識された識別コード」と「ユーザの履歴情報」との対応づけに関し、本願発明においては、認識された識別コードは「識別データベース内のユーザプロファイルに識別アドレスを割り当てて」いるのに対し、引用文献1発明はそのように対応づけられているものであるか不明である点。

〈相違点5〉
「d.同定されたユーザの、音声・表示情報を有するユーザの履歴情報に基づいて、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部にユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報の要求を送信するステップ」が、本願発明においては、「ユーザプロファイル」に基づいて、「エレベータ設備から防御壁を通してコンテンツデータベース」に選択マルチメディアコンテンツの要求を送信するのに対し、引用文献1の発明は、そのような要求を送信するものではない点。

〈相違点6〉
「e.選択されたユーザの音声・表示情報の要求にしたがって、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部内の選択された音声・表示情報を検索するステップ」が、本願発明においては、選択された「マルチメディアコンテンツ」を要求し、「コンテンツデータベース内」の選択された「マルチメディアコンテンツ」を検索するステップであるのに対し、引用文献1の発明は、そのような検索をするものではない点。

〈相違点7〉
g.の出力装置のユーザに提示するステップが、本願発明においては、「コンテンツデータベース」から「防御壁を通して」決定された出力装置に「選択マルチメディアコンテンツ」を送信し、「選択マルチメディアコンテンツ」を出力装置のユーザに提示するのに対し、引用文献1発明は、そのような送信、及び出力装置のユーザに提示するものではない点。

〈相違点8〉
h.同定されたユーザに送信された「選択音声・表示情報」が、本願発明は「選択マルチメディアコンテンツ」であるのに対し、引用文献1発明は選択「マルチメディアコンテンツ」であるか明示的でない点。

5.当審の判断
〈相違点1〉、〈相違点6〉、〈相違点8〉について
引用文献3には、エレベータホールやかご内等に情報を表示するための要求、応答の通信をともなうマルチメディアコンテンツのデータベースからの配信技術が示されている。また、引用文献4にも、マルチメディアコンテンツの配信が示されている。
してみれば、引用文献1発明において、同定されたユーザに提示するための方法に係る「音声・表示情報」を、「マルチメディアコンテンツ」とすること、e.の要求、検索するステップを、選択された「マルチメディアコンテンツ」を要求し、「コンテンツデータベース内」の選択された「マルチメディアコンテンツ」を検索するステップとすること、及び、h.の同定されたユーザに送信された「選択音声・表示情報」を「選択マルチメディアコンテンツ」とすることは、上記引用文献3、4の技術を参酌することにより、当業者が容易になし得ることである。
なお、本願発明の各ステップの他の部分の「マルチメディア」、「マルチメディアコンテンツ」、「選択マルチメディアコンテンツ」の点についても同様のことがいえる。
よって、以下の検討においては、ここでの言及をふまえるものとし、「マルチメディア」、「マルチメディアコンテンツ」、「選択マルチメディアコンテンツ」の点については言及したものとする。

〈相違点2〉、〈相違点4〉について
引用文献2には、ベドゥープデータ内のUIDフィールドに、「ユーザプロファイル」の「データベース」へのインデックスの役目をする値を書き込むことができ、プロファイルデータに基づいて応答を独自のものにする技術、及び、識別子を検出し、識別子を遠隔のデータベースへ転送し、データベースから対応するインターネットアドレスを受け取り、ブラウザをそのアドレスに割り当て、その後データベースにアクセスすることができる技術が示されている。
してみれば、引用文献1発明において、a.のステップに係るユーザ履歴情報を「ユーザプロファイル」とし、引用文献1発明のc.の「識別された識別データ」と「ユーザの履歴情報」との対応づけに関し、識別された識別データ(認識された識別コード)を「識別データベース(「ユーザプロファイル」の「データベース」)内のユーザプロファイルに識別アドレスを割り当てて」いるものとすることは、引用文献2の上記技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。

〈相違点3〉について
引用文献3には、表示情報データ13(表示情報データベースに相当)を管理する側から、顧客データ管理装置15(特に認証データが読み出される顧客情報データ16(顧客情報データベースに相当))への進入防止のためのファイヤ・ウオール技術が示されている。また、引用文献4には、ユーザ端末(UT)が接続されるローカルサーバ(LS)のシステムを保護するファイアウォール技術が示されている。すなわち、引用文献3,4には、保護すべき対象と外部との間にファイアウォールを設ける技術が示されている。
してみれば、上記引用文献3,4に記載の技術を参酌することにより、引用文献1発明のb.の「データ記憶部」に音声・表示情報を記憶するステップを、「防御壁によってエレベータ設備から分離されるコンテンツデータベースに」記憶するステップとすることは、当業者が容易になし得ることである。

〈相違点5〉について
引用文献2には「ユーザプロファイル」に基づいてデータベースにアクセスする技術が示されており、また、上述したように、引用文献3,4には、保護すべき対象と外部との間にファイアウォールを設ける技術が示されている。
してみれば、引用文献1発明のd.の「同定されたユーザの、音声・表示情報を有するユーザの履歴情報に基づいて、音声・表示情報を記憶するデータ記憶部にユーザの音声・表示情報の好みに関連した選択(個別)音声・表示情報の要求を送信するステップ」を、「ユーザプロファイル」に基づいて、「エレベータ設備から防御壁を通してコンテンツデータベース」に選択マルチメディアコンテンツの要求を送信するものとすることは、前記引用文献2ないし4の技術を参酌することにより、当業者が容易になし得ることである。

〈相違点7〉について
上述したように、引用文献3,4には、保護すべき対象と外部との間にファイアウォールを設ける技術が示されている。
してみれば、上記引用文献3,4に記載の技術を参酌することにより、引用文献1発明のg.の出力装置のユーザに提示するステップを、「コンテンツデータベース」から「防御壁を通して」決定された出力装置に「選択マルチメディアコンテンツ」を送信し、「選択マルチメディアコンテンツ」を出力装置のユーザに提示するものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明により奏する効果も、引用文献1発明、及び、引用文献2ないし4に記載された事項から当然予想される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものとは認められない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1発明、及び、引用文献2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-26 
結審通知日 2012-11-27 
審決日 2012-12-11 
出願番号 特願2003-36132(P2003-36132)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩間 直純  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 山崎 達也
原 秀人
発明の名称 エレベータ設備におけるマルチメディアコンテンツ提示の手順、システムおよびコンピュータプログラム製品  
代理人 川口 義雄  
代理人 大崎 勝真  
代理人 坪倉 道明  

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