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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1273292
審判番号 不服2011-26520  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-07 
確定日 2013-04-24 
事件の表示 特願2000-196596「紫外線ランプユニット及び紫外線照射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年1月15日出願公開、特開2002-11078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成12年6月29日の出願であって、平成22年2月5日付けで拒絶理由が通知され、同年4月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年8月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成23年1月26日付けで拒絶理由が通知され、同年4月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年8月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月25日付けで拒絶査定されたので、同年12月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書により明細書及び特許請求の範囲が補正され、平成24年4月20日付けで特許法第164条3項に基づく報告書を引用した審尋がなされ、同年7月9日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年12月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年12月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、「共通コネクタに適合するソケットを具備する液体処理用紫外線照射装置であれば如何なるタイプの装置に対しても適用可能であること」という事項を新たに加入することを含むものである。

2 新規事項追加禁止要件の検討
しかし、上記補正は、以下の理由から、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内とすることはできない。
請求人は、上記補正事項が当初明細書等に記載された範囲内であることの根拠として、当初明細書の段落【0013】における「このランプユニットを取り付けるべき紫外線照射装置の所定箇所にソケット22が設置されている。該ソケット22には前記共通コネクタ6の各端子6a?6fに着脱式に嵌合する端子がそれぞれ設けられており、該ソケット22にランプユニットを着脱式に装着することができるようになっている。」「勿論、図1に示すようにランプユニットの両端にそれぞれ共通コネクタ4,5が設けられるタイプにおいては、ソケット22に対応する一対のソケットが各共通コネクタ4,5に対応して設けられる。」との記載を指摘し、共通コネクタを脱着可能に装着するソケットの存在が、当初明細書等に明記されている旨を主張する(回答書第3頁下から8行?第4頁下から8行)。
しかし、請求人も認めるように、上記記載からは本願発明に係る紫外線ランプユニットが、共通コネクタに適合するソケットを具備する液体処理用紫外線照射装置に適用可能であることは明らかであるが、そのような紫外線照射装置であれば「如何なるタイプの装置に対しても適用可能であること」は明らかではない。
このことは、液体処理用紫外線照射処置には、様々な用途、形態等がありうるが、本願発明に係る紫外線照射ユニットは、当初明細書等に記載された事項を勘案するに、その外形は透明保護管からなる管状体であり、紫外線を該透明保護管の外周全方向に放射するタイプのものに特定されるというべきで、そのような外形と紫外線照射態様が許容される用途に用いられる装置にのみ適用することができると解すべきである。よって、共通コネクタとそれに適合するソケットがありさえすれば、如何なるタイプの装置に対しても適用可能であるとすることができないことは明らかである。このため、当初明細書の段落【0002】?【0006】に記載された本願発明の課題や解決手段、および当初明細書等の他の記載を考慮したとしても、「如何なるタイプの装置に対しても適用可能であること」については、当初明細書等に実質的に記載されていると認めることはできない。
したがって、上記補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 目的要件の検討
本件補正が、仮に新規事項追加禁止要件に違反しないものであるとしても、特許請求の範囲の補正は、特許法第17条の2第4項各号に規定したいずれかの事項を目的としたものでなければならないところ、本件補正は、次の理由から、補正前の請求項1における発明を特定する事項を限定すること(発明特定事項の限定的減縮)を目的としたもの(同条第4項第2号)に該当しない。
すなわち、発明特定事項の限定的減縮に該当するというためには、当該発明特定事項の1つ以上を、概念的に下位の発明特定事項とする補正でなければならないところ、上記補正は、請求項1に係る紫外線ランプユニットの他の装置への適用可能性を特定するものであり、そのような特定は、紫外線ランプユニットの物としての発明特定事項を概念的に下位の特定事項とする補正とはいえない。
また、上記補正が、特許法第17条の2第4項の第1、3、4号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4 独立特許要件の検討
4-1 本願補正発明
本件補正が、仮に新規事項追加禁止要件に違反せず、さらに発明特定事項の限定的減縮を目的とする補正であるとした場合には、特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、本件補正前の「管状の一ユニット」および「液体処理用の紫外線ランプユニット」について、本件補正により、それぞれ、「独立した管状の一ユニット」および「共通コネクタに適合するソケットを具備する液体処理用紫外線照射装置であれば如何なるタイプの装置に対しても適用可能であること」と特定して、発明特定事項を限定するものである。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1?8に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかに関し、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について検討する。
本願補正発明は、次のとおりのものである。
「複数の紫外線ランプと、
前記各ランプの各端子にそれぞれ個別に接続される複数の端子を一体的に具備してなる共通コネクタと、
前記複数の紫外線ランプを一まとめに収容してなる共通の透明保護管と
を一ユニットとして備え、独立した管状の一ユニットとして着脱可能に被処理液体中に浸して配置され、前記透明保護管の外周全方向に内部の紫外線ランプからの紫外線が放射されるように構成されており、前記共通コネクタに適合するソケットを具備する液体処理用紫外線照射装置であれば如何なるタイプの装置に対しても適用可能であることを特徴とする液体処理用の紫外線ランプユニット。」

4-2 刊行物に記載された発明
4-2-1 引用例1について
(1)引用例1の記載事項
本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された実願平2-73927号(実開平4-32743号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「また、従来の紫外線ランプは円筒状であるために、発生した殺菌線は円周方向に均一に照射されることになり、従って面に対する照射を行うについては、その中心部分については殺菌線の照射量は多いが、その周辺部分については殺菌線の照射量が減少する点が問題となり、・・・。」(第5頁15?20行)
(イ)「紫外線ランプ1のランプ管2を箱型にする第一の理由は、・・・、さらに第二の理由は、発生した殺菌線を直線的にランプ管2の壁面に到達させて、一定方向に集中的にランプ管2の外部に放射させるためである。」(第7頁13?20行)
(ウ)「また第7図も、着脱可能な可般式の紫外線照射装置であって、多数本の箱型の紫外線ランプ1を相互に間隔を置いて、石英ガラス製の透過箱12に収納したものであり、この透過箱12をユニットとして、流体の通過する処理槽(図示せず)に着脱可能に装填するものである。」(第10頁10?16行)
(エ)「ランプ管2の形状が箱型であるために、殺菌線は直線的にランプ管2の壁面に達し、従来のように放射線状に放射されずに、一定方向に集中的に放射されるために、殺菌線は一層効率良くランプ管2の外部に放射される。」(第11頁8?13行)
(オ)第7図には、紫外線照射装置の斜視図が示されており、これによれば、透過箱12の中に箱型の紫外線ランプ1の3本が収納され、一つのユニットとなっている紫外線照射装置を確認することができる。

(2)引用例1に記載された発明
記載事項(ウ)(オ)によれば、引用例1には、「複数の箱型紫外線ランプを石英ガラス製の透過箱に収容した、着脱可能な可搬式の紫外線照射装置であって、ユニットとして流体の通過する処理槽に装填して使用する紫外線照射装置」に関する発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されている。

4-2-2 引用例2について
同じく、特開平11-263322号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
「第1ケーシング14の長手方向の一方の端部には、3個の紫外線殺菌ランプ13a?13cに通電するための3個のソケットコネクタ29が設けられている。これらのソケットコネクタ29は、ケーシング本体11内において長手方向両端部に設置されたランプソケットに接続されており、これらランプソケットを介して3個の紫外線殺菌ランプ13a?13cと3個のソケットコネクタ29とがそれぞれ電気的に接続されている。尚、3個のソケットコネクタ29を1個にして、3個の紫外線殺菌ランプ13a?13cの配線を1箇所にまとめる構成としてもよい。」(段落【0036】)
これによれば、引用例2には、3個の紫外線殺菌ランプはランプソケットに接続され、このランプソケットを介してソケットコネクタに接続されるが、3個の紫外線殺菌ランプのソケットコネクタを1つにし、これにより3個の紫外線殺菌ランプの配線を1箇所にまとめることが記載されている。
ここで、引用例2に記載された「1つにしたソケットコネクタ」は、複数の紫外線殺菌ランプの配線を1箇所にまとめていることから、複数の紫外線殺菌ランプを一体化してユニット化しているものである。
したがって、引用例2には、「複数の紫外線殺菌ランプのソケットコネクタを1つにすることで該複数の紫外線殺菌ランプの配線を1箇所にまとめ、これにより、該複数の紫外線殺菌ランプを一体化してユニット化すること」が記載されている。

4-3 対比と判断
(1)対比
本願補正発明と引用例1発明とを比較する。
引用例1発明における「箱型紫外線ランプ」は、紫外線ランプである点で、本願補正発明における「紫外線ランプ」に相当する。
また、引用例1発明における「石英ガラス製の透過箱」は、複数の紫外線ランプを収容しており、石英ガラス製で透明であるので、複数の紫外線ランプを一まとめに収容してなる共通の透明保護「部材」であるという点で、本願補正発明における「複数の紫外線ランプを一まとめに収容してなる共通の透明保護管」と共通する。
また、引用例1発明における紫外線照射装置は、着脱可能で可搬式であり、ユニットとして流体の通過する処理槽に装填して使用するものであるので、本願補正発明の紫外線ランプユニットが「独立した一ユニットとして着脱可能に被処理液体中に浸して配置され」るように構成された「液体処理用の紫外線ランプユニット」であることと共通する。
したがって、本願補正発明と引用例1発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。

ア 一致点
「複数の紫外線ランプと、
前記複数の紫外線ランプを一まとめに収容してなる共通の透明保護部材と
を一ユニットとして備え、独立した一ユニットとして着脱可能に被処理液体中に浸して配置された液体処理用の紫外線ランプユニット。」
イ 相違点
(i) 本願補正発明では、「各ランプの各端子にそれぞれ個別に接続される複数の端子を一体的に具備してなる共通コネクタ」を有するが、引用例1発明では、この点が明らかでない点。
(ii) 複数の紫外線ランプを一まとめに収容してなる共通の透明保護部材は、本願補正発明では「透明保護管」であるが、引用例1発明では「透過箱」であるので、その形状が異なる点。
(iii) 本願補正発明の「紫外線ランプユニット」は、「透明保護管の外周全方向に内部の紫外線ランプからの紫外線が放射されるように構成され」たものであるのに対し、引用例1発明の紫外線照射装置は、紫外線を一定方向に集中的に放射するものである点。
(iv) 本願補正発明は「共通コネクタに適合するソケットを具備する液体処理用紫外線照射装置であれば如何なるタイプの装置に対しても適用可能である」が、引用例1発明は、この点について明らかでない点。

(2)判断
ア 相違点(i)について
引用例2には、複数の紫外線殺菌ランプのソケットコネクタを1つにすることで該複数の紫外線殺菌ランプの配線を1箇所にまとめ、これにより、複数の紫外線ランプを一体化してユニット化することが記載されている。
一方で、複数の紫外線ランプを共通の一つのコネクタで接続することは、本願出願前に周知の技術である。
例えば、特開平6-206068号公報(以下「周知例1」という。)には、廃水に光照射するためのモジュールが記載されており(特許請求の範囲の請求項1)、段落【0012】には、「モジュール12には側壁26のうちの1つ上において電気コネクタ32が取付けられ、このため、多心ケーブル34によってランプ14とさまざまな電力供給装置および制御装置とが接続されるようになる。」と記載され、図3はこの発明のモジュールの側面図であるが、多数のランプが組み込まれたモジュールの側壁には1つの電気コネクタ32があることを確認することができる。
これによれば、1つの電気コネクタ32により多数のランプが電力供給装置と接続されるので、該電気コネクタは共通コネクタであるといえる。
また、特開平10-154488号公報(以下「周知例2」という。)には、光触媒用蛍光ランプが記載されており(特許請求の範囲の請求項1)、段落【0070】の記載によれば、図11は、光触媒用蛍光ランプを応用し組み立てた紫外線用光源の構成を側面的に示したもので、18は光触媒用蛍光ランプであり、19はキャップ、20はリード配線、21はコネクタを示す。そして、図11を参照すると、2つの蛍光ランプ18が、キャップ19およびリード配線20を介して1つのコネクタ21と接続されていることを確認することができる。
このため、図11は、2つの蛍光ランプに共通するコネクタを示すものであるとすることができる。
これら周知例1および周知例2の記載から明らかなように、複数の紫外線ランプを共通の一つのコネクタで接続することは、本願出願前に周知の技術である。
このような周知技術を前提にすると、引用例2における「一つにしたソケットコネクタ」は、紫外線ランプの「各端子にそれぞれ個別に接続される複数の端子を一体的に具備」するもので、「複数の紫外線ランプを一体的にしてランプユニットとして構成」するもの(本願の明細書の段落【0006】)であるので、本願発明における「共通コネクタ」に相当するものと理解することができる。
そして、上記したように、引用例1発明の紫外線照射装置は、複数の紫外線ランプを一体化した紫外線ランプユニットである。このため、ユニットとして一体的に構成するために、各紫外線ランプの配線を1箇所にまとめることは必要なことであるので、引用例2に記載された共通化したソケットコネクタを採用すること、すなわち、共通コネクタを採用することは、引用例2の記載および周知技術に基づいて当業者が容易になしうるところである。
その効果も、複数の紫外線ランプをユニット化する以上の格別のものとすることはできない。

イ 相違点(ii)及び(iii)について
引用例1発明の紫外線照射装置においては、透明保護部材として箱状の透過箱を使用し、また、紫外線ランプとして箱状のものを使用することと相俟って、放射される紫外線は一定方向に集中的に放射される点で、通常の円筒状の紫外線ランプと透明保護管を使用し、透明保護管の外周全方向に内部の紫外線ランプからの紫外線が放射される本願補正発明の紫外線ランプユニットとは相違する。
しかし、引用例1の記載事項(ア)(イ)(エ)によれば、引用例1発明は、円筒状の紫外線ランプでは円周方向に均一に紫外線が照射されるので、面に対する照射には適さないことを改善することを目的とし、一定方向に集中的に放射させる用途に用いるために、特に箱型紫外線ランプと透過箱を採用したものである。このため、紫外線を放射状に照射する従来の態様の紫外線照射装置を排除するものではないといえる。
また、管状の透明保護部材中に複数の紫外線殺菌ランプを収容し、紫外線を放射状に照射して被処理物を殺菌することは、周知の技術である。
例えば、特開昭60-116358号公報(以下「周知例3」という。)には、U字状ランプや直管状ランプを容器内に配置し、これを発光させて紫外線の照射により異形容器内表面を殺菌する方法が記載されており(特許請求の範囲)、第2頁右上欄11?14行の記載によれば、食品用の容器内に挿入された閃光放電灯が閃光殺光して殺菌処理が行われるとしているので、該閃光放電灯から放射される紫外線は、該容器内に放射状に照射されており、また、同頁左下欄8?10行の記載によれば、容器の寸法が大きくなると閃光放電灯が増設されることが記載されており、図4を参照すると、保護管4内に2本のU字型閃光放電灯が記載されていることを確認することができる。
したがって、周知例3には、保護管内に複数の紫外線ランプを収容し、紫外線を放射状に照射する紫外線照射装置が記載されている。
また、特開平10-314280号公報(以下「周知例4」という。)には、紫外線照射ランプが設けられている衛生設備室が記載されており(特許請求の範囲の請求項1、2)、段落【0083】の記載によれば、図5は電球型蛍光ランプの断面図であり、該電球型蛍光ランプは、天井板の下に固定され、紫外線ランプ107を有しているとされ、図5を参照すると円筒状のカバー111の内側に紫外線ランプ107として、U字状のランプが2つ並べて描かれている。なお、この紫外線ランプが紫外線を放射状に照射するものであることは明らかである。
このため、周知例4には、保護管内に複数の紫外線ランプを収容し、紫外線を放射状に照射する紫外線照射装置が記載されている。
これらの周知例3、4の記載から明らかなように、保護管内に複数の紫外線ランプを収容し、紫外線を放射状に照射する紫外線照射装置は、本願出願前に当業者には周知のものであったといえる。
したがって、紫外線を放射状に照射して殺菌を行う通常の用途に引用例1発明を適用しようとする際には、管状の透明保護部材中に複数の紫外線殺菌ランプを収容し、透明保護管の外周全方向に内部の紫外線ランプからの紫外線が放射されるようにすることは、当業者であれば容易になしうるところであり、その効果も格別のものとすることはできない。

ウ 相違点(iv)について
上記したように、複数の紫外線ランプを共通の一つのコネクタで接続することは、本願出願前に周知の技術である(周知例1、2)。
また、コネクタを有する装置を他の装置にソケットで接続することは、通常行われることであるので、共通コネクタを備える引用例1発明に係る紫外線ランプユニットは、該共通コネクタと適合するソケットを具備していれば、様々な紫外線照射装置に適用可能であることは明らかである。
このことは、例えば周知例2に記載された光触媒用蛍光ランプは、光触媒作用を有する物質が、建築材、化学処理用光源、照明器具等の様々な用途への応用が試みられていること(段落【0004】)に伴い、その光触媒機能を得るために用いられるものであるため(段落【0005】?【0007】)、様々な紫外線照射装置に適用可能であることからも、確認することができる。
したがって、引用例1発明の紫外線照射装置は様々なタイプの装置に対して適用可能であるところ、これを特に「如何なるタイプの装置に対しても適用可能」であるとすることは、当業者が適宜なしうるところであり、技術的に格別のものとすることができない。

4-4 小括
したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易になしえたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 本件補正についての結び
以上のとおりであるので、本件補正は、新規事項禁止要件違反、あるいは目的要件違反で却下されるべきものであるが、仮にそうでないとしても、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年12月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成22年8月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2?7、9、10、及び平成23年8月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、8に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「複数の紫外線ランプと、
前記各ランプの各端子にそれぞれ個別に接続される複数の端子を一体的に具備してなる共通コネクタと、
前記複数の紫外線ランプを一まとめに収容してなる共通の透明保護管と
を一ユニットとして備え、管状の一ユニットとして着脱可能に被処理液体中に浸して配置され、前記透明保護管の外周全方向に内部の紫外線ランプからの紫外線が放射されることを特徴とする液体処理用の紫外線ランプユニット。」

2 進歩性の判断
本願発明は、上記第2[理由]で検討した本願補正発明の「独立した管状の一ユニット」を「管状の一ユニット」とするとともに、本件補正発明の「液体処理用の紫外線ランプユニット」について、「共通コネクタに適合するソケットを具備する液体処理用紫外線照射装置であれば如何なるタイプの装置に対しても適用可能であること」との特定事項を削除することとしたものに相当する。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の[理由]4-3」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-07 
結審通知日 2013-02-19 
審決日 2013-03-04 
出願番号 特願2000-196596(P2000-196596)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61L)
P 1 8・ 561- Z (A61L)
P 1 8・ 572- Z (A61L)
P 1 8・ 121- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 和輝岡谷 祐哉  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官
中澤 登
松本 貢
発明の名称 紫外線ランプユニット及び紫外線照射装置  
代理人 飯塚 義仁  

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