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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C23G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C23G
管理番号 1273296
審判番号 不服2012-15615  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-10 
確定日 2013-04-24 
事件の表示 特願2007- 21207「ブラシロール及び洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月14日出願公開、特開2008-184676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成19年1月31日の出願であって、平成24年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成24年8月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年8月10日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成24年8月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
略棒状又は円筒状のシャフトと、前記シャフトの外周に螺旋状に巻き付けられた複数本のブラシ部からなり、該複数本のブラシ部を、前記シャフトの長手方向の一部に設定した対称軸を中心に、巻き付け時の傾斜角が対称になるようにすると共に、左右それぞれに複数本のブラシ部を並列に設け、左右いずれか一方の複数本のブラシ部の前記対称軸側の端部を前記対称軸を越えて突出させることによって、該端部と、他方の複数本のブラシ部の前記対称軸側の端部とを、シャフトの長手方向でオーバーラップさせたブラシロール。」と補正された(下線部は、補正された部分)。

上記特許請求の範囲についての補正は、補正前の請求項1に記載されたオーバーラップに関する発明特定事項について、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用例1として示された特開2004-137573号公報(以下「刊行物」という。)には、ブラシロールに関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプレス成形ラインに配置して、プレス加工前に予めブランク材を洗浄する鋼板の洗浄方法および鋼板用洗浄機のブラシロールに関する。」
・「【0024】
上ブラシロール51は、ロール本体66を形成し、このロール本体66にブラシ67,67を螺旋状に取り付けたものである。Luはロール本体66の全長、68はロール本体66の中央に設定した対称軸を示す。」
・「【0026】
図4は図3の4部詳細図であり、上ブラシロール51のブラシ67および下ブラシロール52のブラシ72を示す。
上ブラシロール51は、より具体的に説明すると、ロール本体66の外周面75に所定幅Wbのブラシ67,67を中央の対称軸68に対して対称に所定ピッチP,Pで且つ、対称軸68からロール本体66の端76(図2参照),77(図2参照)へ向かって(矢印▲1▼,▲2▼の方向)塵埃や切りくずなどの対象物78・・・(・・・は複数を示す。以下同様。)を送ることができる螺旋方向(矢印▲3▼,▲4▼)に巻き付けたロールである。S,Sはブラシ67の開始端を示す。」
・「【0034】
尚、本発明の実施の形態に示した図8および図5の上ブラシロール51と下ブラシロール52の回転方向(矢印▲7▼,▲8▼)は、一例である。
図4に示すロール本体66の中央の対称軸68に対して対称にブラシ67,67の開始端S,Sを同じ位置(周方向の角度)に一致させて取り付けたが、それぞれの開始端S,Sの位置(周方向の角度)は任意であり、円周方向に離すことも可能である。
図7のブラシロールの製造方法は一例であり、ブラシロールの製造方法は任意である。
ブラシロール26では、一本のブラシ67を螺旋状に巻き付けた1条としたが、条数は任意であり、2条以上でもよい。
ブラシ67の幅Wbおよび螺旋のピッチPは任意である。」

ここで、刊行物において図4等から次のことが明らかである。
・ロール本体66の形状は円筒状である。
・ブラシ67,67は、ロール本体66の中央に設定した対称軸68を中心に、巻き付け時の傾斜角が対称となっている。

以上をふまえると、刊行物には次の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明」という。)。
「円筒状のロール本体66と、前記ロール本体66の外周に螺旋状に巻き付けられたブラシ67,67からなり、該ブラシ67,67を、前記ロール本体66の中央に設定した対称軸68を中心に、巻き付け時の傾斜角が対称になるようにした、ブラシロール。」

(3)本願補正発明と引用発明との対比
両発明を対比すると、引用発明の「円筒状のロール本体66」が、本願補正発明の「略棒状又は円筒状のシャフト」に相当する。同様に「ブラシ67,67」が「ブラシ部」に、「ロール本体66の中央」が「シャフトの長手方向の一部」にそれぞれ相当する。
そうすると、両発明の一致点、相違点は次のとおりである。
《一致点》
「略棒状又は円筒状のシャフトと、前記シャフトの外周に螺旋状に巻き付けられたブラシ部からなり、該ブラシ部を、前記シャフトの長手方向の一部に設定した対称軸を中心に、巻き付け時の傾斜角が対称になるようにした、ブラシロール。」
《相違点》
(ア)本願補正発明が「複数本のブラシ部からなり」「左右それぞれに複数本のブラシ部を並列に設け」たのに対して、引用発明はそのような構成を有しない点。
(イ)本願補正発明が「左右いずれか一方の複数本のブラシ部の前記対称軸側の端部を前記対称軸を越えて突出させることによって、該端部と、他方の複数本のブラシ部の前記対称軸側の端部とを、シャフトの長手方向でオーバーラップさせた」のに対して、引用発明はそのような構成を有しない点。

(4)相違点についての判断
相違点(ア)について
刊行物の段落【0034】には、「ブラシロール26では、一本のブラシ67を螺旋状に巻き付けた1条としたが、条数は任意であり、2条以上でもよい。」との記載がある。
引用発明において、この記載の示唆に従い、本願補正発明の相違点(ア)に係る構成とすることには、当業者にとっての格別の創意工夫は見いだせない。
なお、2条のブラシ部を用いてブラシロールを構成することは、例えば特開2006-80187号公報に記載があるように、周知でもある。

相違点(イ)について
刊行物には、その段落【0034】に「図4に示すロール本体66の中央の対称軸68に対して対称にブラシ67,67の開始端S,Sを同じ位置(周方向の角度)に一致させて取り付けたが、それぞれの開始端S,Sの位置(周方向の角度)は任意であり、円周方向に離すことも可能である。」との記載がある。
ここで、上記記載の「ブラシ67,67の開始端S,S」とは、本願補正発明の「ブラシの対称軸側の端部」に対応し、また、上記記載の「開始端S,Sの位置」を「円周方向に離す」とは、周方向での位置をずらすということであるから、上記記載の示唆に単に従って引用発明を構成変更し、開始端S,Sを周方向に角度を、例えば完全にずらして配置させた場合などには、開始端S,Sを突き合わせたときと異なり、対称軸68上に位置する塵埃等の異物を左右に確実に振り分けることが困難になるであろうことは当業者にとって自明な事項である。
ところで、板材表面の塵埃等をブラシで除去する場合、板材表面の全てにわたって塵埃等を除去するのが普通であり、本願補正発明も、引用発明もそのような処理を念頭に置いたものと理解できる。そして、そうした処理を実現するためには、ブラシを板材表面の中で当該ブラシが接触しない部分が生じないように設ける必要があるのであって、複数のブラシを用いるのであれば、板材の送り方向から見て、それらの間が空かないように、すなわち、ブラシ同士がオーバーラップするように配置することは、当業者が通常採用することと言える。
こうしたことをふまえると、引用発明において、それを開示する刊行物の上記記載に沿って開始端S,Sの位置を周方向に位置をずらして配置した場合に、対称軸68近辺においても確実に洗浄が行えるようにすることは、当業者が自然に着想し得たことであり、そのために、左右のブラシ67,67の少なくともいずれか一方の開始端67を、対称軸68を越えて配置することでブラシ67,67の開始端S,S同士をオーバーラップさせれば良いことも、当業者が容易に想到し得たことである(ちなみに、引用発明を開示する刊行物を見ると、ブラシ67,67の開始端S,S同士をオーバーラップさせずに互いに当接させるがために図7のブラシ67の端部を切り落として用いたものと把握されるのだが、開始端S,S同士を周方向に離した場合には、わざわざそのように開始端を製作する必要がなく、ブラシ67,67の開始端S,Sをシャフトの左右方向でオーバーラップする位置にすれば良いことも、当業者にとって容易に想到し得た範囲内の事項である。)。ブラシを2条とした場合にあっても同様である。
そうしてみると、引用発明において、本願補正発明の相違点(イ)に係る発明特定事項を採用することは、当業者にとって格別の創作能力を要することとは言えない。

そして、本願補正発明の発明特定事項によって、引用発明及び周知の技術的事項からみて格別な効果が奏されるとも言えない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の各請求項に係る発明は、平成24年4月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、請求項1には次のとおり記載されている。
「【請求項1】
略棒状又は円筒状のシャフトと、前記シャフトの外周に螺旋状に巻き付けられた複数本のブラシ部からなり、該複数本のブラシ部を、前記シャフトの長手方向の一部に設定した対称軸を中心に、巻き付け時の傾斜角が対称になるようにすると共に、左右それぞれに複数本のブラシ部を並列に設け、左右いずれか一方の複数本のブラシ部の前記対称軸側の端部と、他方の複数本のブラシ部の前記対称軸側の端部とを、シャフトの長手方向でオーバーラップさせたブラシロール。」(以下、この請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(2)刊行物及び引用発明
原査定の拒絶の理由に示された刊行物及びその記載事項並びに刊行物に記載された引用発明は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.に記載したとおり、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-22 
結審通知日 2013-02-27 
審決日 2013-03-12 
出願番号 特願2007-21207(P2007-21207)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C23G)
P 1 8・ 575- Z (C23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 松岡 美和
加藤 友也
発明の名称 ブラシロール及び洗浄装置  
代理人 中村 繁元  

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