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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B60B |
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管理番号 | 1273297 |
審判番号 | 不服2012-21840 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-11-05 |
確定日 | 2013-04-24 |
事件の表示 | 特願2007-157425「ホイールカバー」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月29日出願公開、特開2008-120371〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成19年 6月14日(優先権主張 平成18年10月19日)の出願であって、平成24年 7月30日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成24年11月 5日に拒絶査定に対する不服の審判が請求されたものである。 そして、本願の各請求項に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 自動車のホイールの中心部に中央部が位置する、該ホイールに固定的に取付けられた固定側取付け具と、この固定側取付け具の中央部に軸受を介して回転可能に取付けられた偏心状態の円板状の可動側取付け板を備える可動側取付け具と、この可動側取付け具の可動側取付け板に前記ホイールとの間に隙間を有し、かつ前記ホイールの中心部に中央部が位置するように取付けられた円盤状のホイールカバー本体とからなることを特徴とするホイールカバー。」 2.引用文献及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である実願昭60-95256号(実開昭62-4793号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の技術的事項が記載されている。 ア 「本考案は回転する自動車等のタイヤに静止した状態で取付けることができるタイヤ用広告板兼ホイール化粧板に関するものである。」(明細書第2ページ第3?5行。) イ 「第1図以下は本考案の一実施例を説明するもので、図において符号1で示すものはタイヤで、タイヤ1はその中心部に円板状のタイヤホイール2を有し、タイヤホイール2はナット3を介して車軸4の端部に固定されているフランジ5に突設されたボルト6に固定される。 一方、符号7で示すものはホルダで、短円筒状に形成されており、その外周には複数本の脚8が放射状に突設され、この脚8を介してボルト9により、タイヤホイール2にホルダ7が固定される。 このホルダ7にはベアリング10が嵌合固定される。ベアリング10は第4図に示すようにアウターレース11とインナーレース12とを有し、両者間にボール13が配置されている。そして、アウターレース11がホルダ7側に固定される。 また、符号14で示すものは支持板で、その裏面の偏心した位置には軸15が突設されており、この軸15がベアリング10のインナーレース12の中心に嵌合されると共に、支持板14とインナーレース12とはビス16によって固定される。 この支持板14の裏面には、その下側、即ち軸15から最も離れた位置においてウエイト17が固定されている。このウエイト17は支持板14と一体成形してもよい。 一方、符号18で示すものは広告板兼ホイール化粧板で、本実施例の場合には円板状に形成されているが、円板に限らず、各種の形状のものが採用される。ただし、その大きさはタイヤ1の直径の範囲内である。 この広告板兼ホイール化粧板18の外側面には各種の広告文字や図柄が表示され、ねじ19によって支持板14に固定される。」(明細書第3ページ第9行?第5ページ第1行。) ウ 「タイヤ1が回転すると、ホルダ7およびベアリング10のアウターレース11も回転するが、インナーレース12にはウエイト17を有する支持板14および広告板兼ホイール化粧板18が固定されているため、これら部材を合計した質量に対する重力が垂直下方に作用するため、広告板兼ホイール化粧板18は回転せず、わずかに振動するだけで静止状態を保つ。」(明細書第6ページ第2行?第9行。) エ 第1図?第4図を参照すると、タイヤホイール2の中心、ホルダ7の中心及び広告板兼ホイール化粧板の中心は互いに一致しており、支持板14は略円形であり、広告板兼ホイール化粧板はタイヤホイールとの間に隙間を有しているといえる。 上記の記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。 「ホルダ7の外周には複数本の脚8が放射状に突設され、この脚8を介してボルト9により、タイヤホイール2にホルダ7が固定され、このホルダ7にはベアリング10が嵌合固定され、ベアリングのアウターレース11がホルダ7側に固定され、 支持板14の裏面の偏心した位置には軸15が突設されており、この軸15がベアリング10のインナーレース12の中心に嵌合されると共に、支持板14とインナーレース12とはビス16によって固定され、この支持板14の裏面には、その下側、即ち軸15から最も離れた位置においてウエイト17が固定され、 広告板兼ホイール化粧板18は円板状に形成され、その大きさはタイヤ1の直径の範囲内であり、この広告板兼ホイール化粧板18は、ねじ19によって支持板14に固定され、 タイヤホイール2の中心、ホルダ7の中心及び広告板兼ホイール化粧板18の中心は互いに一致しており、支持板14は略円形であり、広告板兼ホイール化粧板はタイヤホイールとの間に隙間を有している、 自動車のタイヤに静止した状態で取付けることができるタイヤ用広告板兼ホイール化粧板。 」 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「ホルダ」は、本願発明の「固定側取付け具」に相当する。 以下、同様に「支持板」は「可動側取付け板」に、「広告板兼ホイール化粧板」は「ホイールカバー本体」に、「ベアリング」は「軸受」に、それぞれ相当する。 引用発明では、ホルダ7の外周には複数本の脚8が放射状に突設され、この脚8を介してボルト9により、タイヤホイール2にホルダ7が固定されており、タイヤホイールの中心とホルダ7の中心は互いに一致しているから、引用発明は本願発明における「自動車のホイールの中心部に中央部が位置する、該ホイールに固定的に取付けられた固定側取付け具」との要件を備えている。 引用発明では、ベアリングのアウターレースがホルダに固定され、略円形の支持板の偏心した位置の軸15がベアリングのインナーレースに嵌合されているから、引用発明の支持板は「偏心状態の円板状の可動側取付け板」ということができ、また、引用発明のベアリング及び支持板は、本願発明の「可動側取付け具」に相当するといえる。すると、引用発明は本願発明における「固定側取付け具の中央部に軸受を介して回転可能に取付けられた偏心状態の円板状の可動側取付け板を備える可動側取付け具」との要件を備えているといえる。 引用発明の広告板兼ホイール化粧板18は、円板状に形成され、その大きさはタイヤ1の直径の範囲内であり、また、ねじ19によって支持板14に固定され、タイヤホイール2の中心、ホルダ7の中心及び広告板兼ホイール化粧板18の中心は互いに一致しており、更に、広告板兼ホイール化粧板18はタイヤホイールとの間に隙間を有しているから、引用発明は本願発明における「可動側取付け具の可動側取付け板に前記ホイールとの間に隙間を有し、かつ前記ホイールの中心部に中央部が位置するように取付けられた円盤状のホイールカバー本体」との要件を備えているといえる。 以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。 「自動車のホイールの中心部に中央部が位置する、該ホイールに固定的に取付けられた固定側取付け具と、この固定側取付け具の中央部に軸受を介して回転可能に取付けられた偏心状態の円板状の可動側取付け板を備える可動側取付け具と、この可動側取付け具の可動側取付け板に前記ホイールとの間に隙間を有し、かつ前記ホイールの中心部に中央部が位置するように取付けられた円盤状のホイールカバー本体とからなるホイールカバー。」 一方、両者の間に実質的な相違点は認められない。 よって、本願発明は、引用例に記載された発明といえる。 なお、審判請求人は、審判請求書において、 「(4)したがって、本願発明の請求項1?3と前記引用文献1、2とを比較すると、前記引用文献1、2には本願発明の必須の構成要件である 「固定側取付け具の中央部に軸受を介して回転可能に取付けられた偏心状態の円板状の可動側取付け板を備える可動側取付け具」 という技術思想については何らの記載も示唆もなされていない。 このため、前記引用文献1、2では本願発明の請求項1?3で得られる効果 「{1}可動側取付け具の偏心状態の可動側取付け板にホイールカバー本体の回転を阻止するバランス重りとしての役目をさせることができる。 したがって、従来のバランス重りのように取付けるスペースを確保しなくてもよく、薄型のホイールカバーにすることができる。 {2}偏心状態の可動側取付け板にホイールカバー本体を取付けるので、取付け部も偏心状態となるので、バランス重りとしての役目を果たすので、効率よくバランス重りとして機能させることができる。 {3}ホイールが回転してもホイールカバー本体を静止状態に保つことができるとともに、構造が簡単であるので容易に製造することができるとともに、ホイールに比較的容易に取付けることができる。 ・・・(中略)・・・ 本願発明の、可動側取付け具の円板状の可動側取付け板を偏心状態で固定側取付け具の中央部に軸受を介して回転可能に取付けることにより、可動側取付け板にホイールカバー本体を取り付ける機能と、ホイールカバー本体の回転を阻止するバランス重りとしての機能の2つの機能をもたせるという考えや発想のないものであるからである。」と主張しているので、この主張について付記する。 ・ 審判請求人が主張する「固定側取付け具の中央部に軸受を介して回転可能に取付けられた偏心状態の円板状の可動側取付け板を備える可動側取付け具」との要件については、前述したとおり引用発明も備えているといえる。 ・ 引用発明では、支持板が偏心しているから、たとえウエイトを設けなくとも支持板には軸15から最も離れた位置が下側になるような力が働き、したがって、引用発明では、ウエイトの有無にかかわらず本願発明の「可動側取付け具の偏心状態の可動側取付け板にホイールカバー本体の回転を阻止するバランス重りとしての役目をさせることができる。」(本願明細書段落【0009】)と同様の効果、及び、審判請求人の前記{1}の主張と同様の効果を奏するものといえる。 ・ 引用例の前記記載事項ウには、「インナーレース12にはウエイト17を有する支持板14および広告板兼ホイール化粧板18が固定されているため、これら部材を合計した質量に対する重力が垂直下方に作用するため、広告板兼ホイール化粧板18は回転せず、わずかに振動するだけで静止状態を保つ。」と記載され、ウエイト以外にも、支持板14および広告板兼ホイール化粧板18の合計した質量が下方に作用することにより広告板兼ホイール化粧板18は回転しないことが記載されている。 すると引用発明は、本願発明の「可動側取付け具とホイールカバー本体の取付けでもバランス重りの役目をさせることができる」(本願明細書段落【0004】)及び「偏心状態の可動側取付け板にホイールカバー本体を取付けるので、取付け部も偏心状態となるので、バランス重りとしての役目を果たすので、効率よくバランス重りとして機能させることができる。」(本願明細書段落【0010】)と同様な効果、並びに、審判請求人の前記{2}及び{3}の主張と同様の効果を奏するものといえる。 更に、引用発明では、広告板兼ホイール化粧板18は、ねじ19によって支持板14に固定されているから、審判請求人の前記主張における「可動側取付け具の円板状の可動側取付け板を偏心状態で固定側取付け具の中央部に軸受を介して回転可能に取付けることにより、可動側取付け板にホイールカバー本体を取り付ける機能と、ホイールカバー本体の回転を阻止するバランス重りとしての機能の2つの機能」は、引用発明も備えている機能といえる。 ・ なお、引用発明が回転防止用のウエイトを設けていたとしても、本願特許請求の範囲の請求項1にウエイトを設けていない点を記載しているものではないから、本願発明が引用発明のようなウエイトを備えるものを除外しているものではない。また、引用発明においては、ウエイトがある場合には広告板兼ホイール化粧板の静止状態を保つ作用は大きく、ウエイトがない場合には広告板兼ホイール化粧板の静止状態を保つ作用は小さくなることは明らかであるから、たとえ本願発明がウエイトを設けない点を限定したとしても、その点は広告板兼ホイール化粧板の静止状態を保つ作用の要求される大きさに応じて定める設計事項である。 ・ したがって、審判請求人の前記主張は妥当なものとはいえない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用例に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-23 |
結審通知日 | 2013-01-29 |
審決日 | 2013-02-12 |
出願番号 | 特願2007-157425(P2007-157425) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(B60B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 水野 治彦 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
杉浦 貴之 小関 峰夫 |
発明の名称 | ホイールカバー |
代理人 | 三浦 光康 |
代理人 | 三浦 光康 |
法定代理人 | 藤原 美紀 |
法定代理人 | 藤原 美紀 |