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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1273389
審判番号 不服2011-9141  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-28 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2005-231623「即席ブイヨンの抽出用調味料の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年2月22日出願公開、特開2007-43952〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年8月10日の出願であって、平成23年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成23年4月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年4月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「天然原料のみを用いた、即席で料理人が作る本物のブイヨンと同等の、自然の香りとまろやかな味を有し、濁りがないブイヨンを抽出できる、即席ブイヨンの抽出用調味料の製造方法であって、主原料の生肉に食肉エキスとカット野菜を加えたものをフードカッターでペースト状にし、得られたペーストをケーシングに充填し、加熱し、ケーシングを除去後、熱風乾燥し、冷却し、得られたものを粉砕し分級して12メッシュ通過32メッシュ不通過のものを、通水性のフィルターバッグに入れることを特徴とする製造方法。」(下線は、補正箇所を示す。)
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ペースト状に」することについて、その手段を「フードカッターで」との限定を付加し、同じく「分級」して得られるものについて「12メッシュ通過32メッシュ不通過のもの」であることを限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物1(原査定の引用文献1)には以下の事項が記載されている。以下、下線は当審で付した。

(1)刊行物1:国際公開第2004/004491号の記載事項の当審抄訳
(1a)「高品質の乾燥ブイヨン及びその製造方法
発明の分野
本発明は、改良された天然動物原料,特にチキンタイプブイヨン及びその製造方法の分野に関する。」(1頁2行?7行)

(1b)「発明の要約及び目的
本発明は、素早く抽出可能な高品質のブイヨン又はコンソメのベースとして、生鶏肉及びチキンのエキスを直接混合し、そして脱水したことからなる乾燥製品を提供する。
本発明は、また、肉、肉及び/又は骨のエキスを混合し、可溶性物質を、迅速に抽出し保持される不溶性物質を容易に分離できるフィルター媒体中に入れた、乾燥製品を提供する。製品は、浸漬又はドリップ式濾過により調理される。
本発明によると、チキン製品は、沸騰水に1?3分いれることで、従来から調製されているチキンブイヨンと同様の風味を有する。
本発明製品は不溶成分を含むので、発明の望ましい態様としては、出来上がった製品の透明性を保ち、使用を促進するために、ティーバッグと同様のインテグラルフィルターか濾過器を用いるものである。
発明の望ましい態様は、例えば、細かく挽いた鶏肉にチキンエキスを加えた混合物を加熱し、脱水し、粉砕し,粉末化したチキンブイヨンを製造することである。望ましくは、調理に先だって野菜及びスパイスが加えられ、チキンエキスは肉及び/又は骨から得られるものである。鶏肉とチキンエキスの混合物は、望ましくは脱水前に薄いシートに形成される。」(3頁1行?30行)

(1c)「本発明は、肉を含有することによる改良した風味特性及びエキスの速い抽出特性を提供するために、他の肉及び動物エキスの乾燥粉末混合物も提供する。好ましくは、フィルターは、粒状物及び不溶物を保持する一方で沸騰水中での迅速な抽出を許容する。フィルターは、例えば、透水性密封紙または多孔性バッグ、織布または不織布である。
本発明は、主原料(肉及び動物エキス)と任意原料(野菜、スパイス、シーズニング)の比率を変えることにより、その味、香り及び色を望みのように変えることができる天然食品原料を提供するものである。
動物エキス、例えば、チキン肉エキス及び/又は骨エキスは、液体、粉末又はその他の形態であり得る。野菜は野菜、野菜汁、野菜エキス、野菜エキス粉末等の形態であり得る、そして、スパイスはスパイス、スパイスエキス等の形態であり得る。」(4頁10?28行)

(1d)「生の鶏肉を小片に裁断し、チキンエキス粉末と野菜(セロリ、タマネギ、ニンジン)を加える。通常は、鶏肉に対してチキンエキス粉末1-20重量%及び野菜1-20重量%加えるのが適当である。しかし、量は必ずしもこの範囲に限られない。使用する材料又は目標とする食品ベースにより、より高い或いは低い濃度であってよい。
材料を加えた後、混合物を十分に混ぜ合わせ、成形と加熱のための容器にいれる。混合した材料を,薄いシートに成形すると、脱水を含むその後の工程が効率よく実施できる。特に、混合物を,防水のケーシングを用いて5-20mmの厚さのシートに成形してもよい。しかし、厚さは、この範囲に限定されない。使用した材料により、混合物は、より薄い或いはより厚いシートから脱水することができる。容器に収容された混合物は、殺菌と,鶏肉のような材料の凝固のために加熱される。例えば、防水ケーシングを、この目的のために熱水に漬けてもよい。もし、微生物汚染や増殖が心配ないのであれば、加熱工程は省略してもよい。また、微生物汚染や増殖が問題とならないならば、熟成工程を実施してもよい。
脱水工程に関し、通風乾燥法が通常使用されるが、凍結乾燥又は真空乾燥のような他の方法も使用される。通風乾燥法において、混合した材料は,高温での乾燥と低温での保持の繰返し工程にさらされ、その結果、脱水工程が効率よくなる。この理由で、混合物の乾燥を高温で一気に実施したときは、表面は固くなり,内部からの液体の蒸発の能力を妨げることになる。脱水工程は、混合物が特定の水分含量になったら、細断、粉砕し、そして再び乾燥すると、より効率よくなる。」(7頁2行?8頁9行)

(1e)「上述の方法で製造される乾燥チキンブイヨンを1?3分間沸騰水で簡単に抽出することにより、例えば、粉末を含有する密封透水性バッグを沸騰水に浸し、そして、抽出時間が終われば取出すということにより、誰でもが、調理技術の豊富な経験を有する専門のシェフにより数時間から10時間を超える時間をかけて作られるのと同じ品質のチキンブイヨンを作ることができる。換言すれば、本発明は、経済的効率、簡便性、均一な品質及び安全性を有する乾燥チキンブイヨンを提供する。加えて、アンセリンやカルノシンのようなチキンブイヨンからのペプチドは、ストレスを低減し、有害なフリーラジカルに対して抗酸化物質として作用し、抗ガン効果及び老化防止効果を奏する。
今日まで、ホテルやレストランのシェフにより作られたような高品質のチキンブイヨンと、骨の折れる努力なしに短時間(1-3分)で抽出されるという乾燥チキンブイヨンはなかった。また、鶏肉とエキスの乾燥混合物から作られる食品原料もなかった。」(9頁11行?10頁20行)

(1f)「実施例1
最初に、丸鶏10kgに対し水20kgを加え、鶏を約95℃で2時間熱水中でボイルし、液体から油を蒸発及び分離させつつ抽出した。液体を32ブリックスに濃縮してチキンエキスとした。
32ブリックスに濃縮されたチキンエキスを、噴霧乾燥で粉末にする。具体的には、32ブリックスのチキンエキスを,95℃で30分殺菌のために加熱し、流入部温度が180℃、流出空気温度が80℃で噴霧乾燥してチキンエキス粉末を得る。
チキンムネ肉500gに対しチキンエキス粉末50gを加え、セロリ、タマネギ、及びニンジンをミキサーにかけて調製した野菜ペースト150gを加えた。これらの材料をフードミキサーで十分に混合した。
混合と混和の後,混合物250gを防水性ケーシング(幅100mm×長さ230mm)に充填器を使用して充填する。その後、約20mmの平らな厚さにし、混合物を均一に乾燥する。そして、混合物を95℃30分熱水中で加熱する。
次に、混合物を通風乾燥機を使用して脱水する。具体的には、混合物を、70℃の高温加熱で12時間乾燥し、その後15℃で12時間放置する。そして、混合物をさらに60℃で12時間乾燥し、再び15℃で12時間放置する。その時の水分含量は約30%である。5%の最終的な水分含量は、混合物を1mmの厚さにスライスし、再度60℃で4時間乾燥することにより得られる。
挽いた黒コショウを乾燥品に添加し、この20gを不織布に充填し、乾燥チキンブイヨン製品とする。乾燥チキンブイヨンを多孔性の布袋中で、熱水300g中で3分間抽出すると、高品質のチキンブイヨン(チキンコンソメ)が二人分得られる。」(10頁21行?11頁25行)

(1g)「今日まで、鶏肉、エキス、野菜及びスパイスの脱水混合物から作られる、ホテルやレストランのシェフにより作られたような高品質のチキンブイヨンを供することのできる食品原料はなく、また、高品質の製品を作るため短時間で抽出されうる乾燥チキンブイヨンもなかった。
この発明をとおして、乾燥チキンブイヨンは、鶏肉、チキンエキス,任意的に野菜やスパイスの混合物から作られる。混合物は、加熱され、脱水され、粉砕される。出来上がった自然な食品原料製品は、沸騰水中にいれて,数分(1-3分)沸騰水で抽出することで、均一で高品質な調理が簡単なチキンブイヨンが供される。」(12頁32行?13頁10行)

(1h)「特許請求の範囲
1.水和状態で混合し乾燥した、生動物肉と1又はそれ以上の動物抽出物と骨抽出物の混合物からなる食用動物製品。
2.肉は鶏肉である請求項1に記載の製品。
3.脱水に先立ち、1又はそれ以上の野菜やスパイスの混合物を前記肉に加える請求項1に記載の製品。
4.脱水に先だって、前記混合物を脱水のために薄いシートに形成する請求項1に記載の製品。
5.熱水に可溶性物質は抽出されるが不溶性物質は残るように調整された透水性の前記容器に収納された請求項1に記載の製品。
6.前記容器が多孔質のバックである請求項5に記載の製品。
7.前記容器が紙製である請求項5に記載の製品。
・・・
12.次の工程からなる乾燥チキンブイヨンの製造方法。
(a)鶏肉とチキンエキスを直接混合;
(b)混合物を加熱及び脱水;及び
(c)脱水混合物から粉末を形成。
13.前記混合物は主として鶏肉からなる請求項12に記載の方法。
14.前記混合物が少なくとも重量で50%の鶏肉からなる請求項12に記載の方法。
15.前記混合物が1又はそれ以上の野菜又はスパイスの混合物をさらに含む請求項12に記載の方法。
16.脱水に先だって混合物を薄いシートにする工程をさらに含む請求項12に記載の方法。
17.1又はそれ以上の肉及び骨エキス、野菜又は野菜エキス並びにスパイスの混合物の添加割合を調節することにより、チキンブイヨンの1又はそれ以上の味、香り及び色を調整する工程をさらに含む請求項12に記載の方法。
18.出来上がったエキスが従来のチキンブイヨンの風味を有する請求項12に記載の方法。
19.熱水に可溶性物質は抽出されるが不溶性物質は残るように調整された透水性の容器に乾燥製品を収容する工程をさらに含む請求項12に記載の方法。」(14頁1行?15頁21行)

3 対比・判断
上記刊行物1の記載事項(特に上記(1b)(1c)(1d))から、刊行物1には、
「乾燥チキンブイヨンの製造方法であって、生の鶏肉を小片に裁断し、チキンエキス粉末と野菜を加えた後、混合物を十分に混ぜ合わせ、成形と加熱のための容器にいれ、5-20mmの厚さの薄いシートに成形し、殺菌と鶏肉の凝固のために加熱し、高温での乾燥と低温での保持の繰返しにより通風乾燥して特定の水分含量になったら、細断・粉砕し、再び乾燥し、粒状物及び不溶物を保持し沸騰水中での迅速な抽出を許容するフィルターバッグに入れる方法」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「生の鶏肉」について、刊行物1発明は乾燥チキンブイヨンの製造方法であることから、鶏肉が主原料であることは明らかであり、本願補正発明の「主原料の生肉」に相当し、刊行物1発明の「チキンエキス粉末」は、本願補正発明の「食肉エキス」に相当する。
(イ)刊行物1発明の「混合物を十分に混ぜ合わせ」ることと、本願補正発明の「フードカッターでペースト状に」することとは、十分に混合する点で共通する。
(ウ)刊行物1発明の「容器」は、本願補正発明の「ケーシング」に相当する。
(エ)刊行物1発明の「高温での乾燥と低温での保持の繰返しにより通風乾燥」することは、本願補正発明の「熱風乾燥し、冷却」することに相当する。
(オ)刊行物1発明の「細断・粉砕」することは、本願補正発明の「粉砕」することに相当する。
(カ)刊行物1発明の 「粒状物及び不溶物を保持し沸騰水中での迅速な抽出を許容するフィルターバッグ」は、沸騰水が中に入ることができるものであるから、通水性といえ、本願補正発明の「通水性のフィルターバッグ」に相当する。
(キ)刊行物1発明の「乾燥チキンブイヨン」について、原料は、生の鶏肉、チキンエキス粉末及び野菜であり、チキンエキス粉末は、チキン肉エキス及び/又は骨エキスを粉末にしたものであるから(上記(1c))、天然原料のみを用いたものといえる。
また、刊行物1には、「乾燥チキンブイヨン」が、素早く抽出可能な高品質のブイヨン又はコンソメのベースであり、沸騰水に1?3分いれることにより、従来調製されたチキンブイヨンと同じ風味を有すること、出来上がった製品の透明性を保ち、使用を促進するために、ティーバッグと同様のフィルターにいれること(上記(1b))、専門のシェフにより時間をかけて作られるのと同じ品質のチキンブイヨンを作ることができること(上記(1e))が記載されており、本願補正発明のように「即席で料理人が作る本物のブイヨンと同等の、自然の香りとまろやかな味を有し、濁りがないブイヨンを抽出できるもの」であるといえる。
(ク)刊行物1発明の「乾燥チキンブイヨン」は、1?3分間の短時間でブイヨンを抽出するためのものであるから(上記(1e))、本願補正発明の「即席ブイヨンの抽出用調味料」に相当する。

したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
天然原料のみを用いた、即席で料理人が作る本物のブイヨンと同等の、自然の香りとまろやかな味を有し、濁りがないブイヨンを抽出できる、即席ブイヨンの抽出用調味料の製造方法であって、主原料の生肉に食肉エキスと野菜を加えたものを十分に混合し、得られた混合物をケーシングに充填し、加熱し、熱風乾燥し、冷却し、得られたものを粉砕し、通水性のフィルターバッグに入れる製造方法である点。

(相違点1)
野菜が、本願補正発明では、「カット野菜」であるのに対して、刊行物1発明では、カットしたものか不明である点。

(相違点2)
十分に混合することが、本願補正発明では、フードカッターでペースト状にするのに対して、刊行物1発明では、混合に用いる装置及び混合の程度が不明である点。

(相違点3)
本願補正発明では、熱風乾燥の前にケーシングを除去するのに対して、刊行物1発明では、ケーシングを除去するタイミングが不明である点。

(相違点4)
本願補正発明では、粉砕したものを分級して12メッシュ通過32メッシュ不通過のものをフィルターバッグに入れるのに対して、刊行物1発明では、粉砕したものを分級せずにフィルターバッグに入れる点。

そこで、上記各相違点について検討する。
(相違点1及び2について)
刊行物1発明は、小片に裁断した生の鶏肉、チキンエキス粉末及び野菜を十分に混ぜ合わせたものを容器にいれて、5-20mmという薄さのシートに成形し、加熱、乾燥後、最終的に粉砕するものであるから、混合物は、薄く成形が可能で、乾燥後もその形状をある程度保っているものといえ、容器に入れる際に混合物は、結着性を有する程度に十分に細かく切断及び混合されているといえる。
そして、刊行物1(上記(1f))には、実施例1として、「チキンムネ肉500gに対しチキンエキス粉末50gを加え、セロリ、タマネギ、及びニンジンをミキサーにかけて調製した野菜ペースト150gを加えた。これらの材料をフードミキサーで十分に混合した。」と記載されており、野菜を予めペースト状にしているが、鶏肉と共にフードミキサーを用いて十分に混合したことが記載されている。
さらに、野菜を切断混合してペースト状にするためにフードカッターを用い、その際にカットした野菜を用いることは、例えば、以下の周知例に記載されるように、本願出願前から広く行われていることである。
周知例1:特開2004-313087号公報(【0029】、【0030】)に、生ジャガイモをカット野菜にし、フードカッターで攪拌、解砕してマッシュポテトを調製したことが記載されている。

そうすると、刊行物1発明において、5-20mmという薄さのシートに成形が可能な程度に十分に細かく切断及び混合する手段として、上記のとおり周知のフードカッターを用い十分に混合してペースト状とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。

(相違点3について)
刊行物1発明は、成形と加熱のために容器に入れることから、高温通風乾燥効率を考慮して、成形と加熱終了後、高温通風乾燥の前に、容器を除去することは当業者が適宜になし得ることといえる。

(相違点4について)
刊行物1には、粉砕したものの粒度については記載がないが、刊行物1発明は、粉砕したものを入れるフィルターバッグについて、粒状物及び不溶物を保持し、沸騰水中での迅速な抽出を許容するものであるとしている(上記(1c))。そして、刊行物1発明は、素早く抽出可能な高品質のブイヨンであり、沸騰水に1?3分いれることにより、従来調製されたチキンブイヨンと同じ風味を有し、フィルターバッグに入れることにより出来上がった製品の透明性を保つものであるから(上記(1b))、粉砕したものは、沸騰水中での抽出効率がよい程度に粉砕され、かつフィルターバッグを通過しないことが求められるといえる。
ところで、いわゆる、だしパックと呼ばれる調味料では、抽出効果が高まるように、適度な大きさに鰹節等を粉砕し、さらにパックの細孔を通過するほど細かいものをパックに入れないようにすることは、例えば、以下の周知例2、3に記載されるように周知技術であり、また、所望の粒度範囲とするために分級することは、以下の周知例4、5に記載されるように常套手段である。
周知例2:特開2001-275609号公報(【0025】)には、「夫々のだし素材を厳密な径に加工することは困難であるため、夫々のだし素材の径は上記の細孔の径を超すものであって、しかもだし抽出の効率を考慮して必要以上に大径とせず、だし素材のなかでも細孔を通過するような微細な粉末物はパック中に入れないようにするのが好ましい」ことが記載されている。
周知例3:特開2004-283039号公報(【0015】)には、「これらの節類は、抽出効果が高まるように、適当な大きさの粉砕品に加工されていることが好ましい。節類粉砕品の大きさは・・・一般に約5mm径以下が好ましい」ことが記載されている。
周知例4:特開2003-116484号公報(【0011】、【0027】)には、「魚節の粒度は、酵素分解の分解反応性を向上させる観点、およびその後の固液分離(濾過)工程での濾布への目詰まりなどを加味すると、1mm以下、好ましくは100?1000μmの粒径に大半が含まれる分布のものがより望ましい」こと、「実験例1にて得た鰹節粉をロータップ式篩分機にて篩い分けし、粒径の分布状況を確認した」ことが記載されている。
周知例5:特開2004-359249号公報(【0013】)には、茶についてであるが、「茶を粒状に粉砕することにより抽出を速めることができるが・・・茶を過度に細かくすると、フィルターバッグの目詰まりや粉洩れ(茶粒子のフィルターバッグからの離脱)が著しく生じ易くなる」こと、所定の「粒度分布に粉砕・分級された茶がティーバッグに用いるのに適正である」ことが記載されている。
そうすると、刊行物1発明において、粉砕したものが、沸騰水中での抽出効率がよく素早く抽出でき、かつ透明なブイヨンが得られるようにフィルターバッグを通過しないように、分級して、その粒径の上限及び下限を最適化し、12メッシュ通過32メッシュ不通過のもの、つまり0.5mm?1.4mm程度とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。
そして、本願明細書には、12メッシュ通過32メッシュ不通過とすることについて、特にその臨界的意義について記載されているわけでもない。

(本願補正発明の効果について)
本願明細書段落【0007】等に記載された、天然原料のみを用い、シェフが作る手製のブイヨンと同品質のブイヨンを短時間の抽出で得られるブイヨン調味料を提供できるという本願補正発明の効果は、刊行物1の記載事項及び周知技術から予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。

(請求人の主張について)
請求人は、審判請求の理由で、本願補正発明の効果について、本願明細書の表3に基づいて、「野菜ペーストとエキスパウダー」であるか、「カット野菜とエキス」であるかで、味等に大きな差がある旨主張するが、表3において、比較例といえる「エキスパウダー混合品」は、段落【0019】に乾燥肉にエキスパウダーを混合しただけの調味料であると記載され、また、表3の「本発明品」は、段落【0023】に図1の(A)の製法により得られたものであることが記載されており、この製法は、本願補正発明に該当しないものである。
また、請求人は、前置審尋に対する回答書で、表3に記載の本発明品は、図1の製法(A)または(B)の分級を行っていない製法によって得られたものであり、粉砕し分級して12メッシュ通過32メッシュ不通過のものとすることにより、表3の評価項目の「外観」がよりよくなること、すなわち濁りがないブイヨンが得られることは実施例3ないし7によって裏付けされていると主張している。しかしながら、実施例1、2は分級しない製法(A)であり、いずれも「高品質のチキンブイヨンを約2人分とることができた。」と記載され、実施例3?7は、分級する製法であり、いずれも「高品質のチキンブイヨンを約2人分とることが可能であった。」と記載され、本願明細書の記載から、分級をするかしないかで、格別の効果の差異があるとすることもできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年4月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年11月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
天然原料のみを用いた、即席で料理人が作る本物のブイヨンと同等の、自然の香りとまろやかな味を有し、濁りがないブイヨンを抽出できる、即席ブイヨンの抽出用調味料の製造方法であって、主原料の生肉に食肉エキスとカット野菜を加えたものをペースト状にし、得られたペーストをケーシングに充填し、加熱し、ケーシングを除去後、熱風乾燥し、冷却し、得られたものを粉砕し分級して、通水性のフィルターバッグに入れることを特徴とする製造方法。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、「ペースト状に」することについての手段を限定する「フードカッターで」との構成を省き、同じく「分級」して得られるものについての限定事項である「12メッシュ通過32メッシュ不通過のもの」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-05 
結審通知日 2013-03-07 
審決日 2013-03-19 
出願番号 特願2005-231623(P2005-231623)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 滝口 尚良  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 関 美祝
▲高▼岡 裕美
発明の名称 即席ブイヨンの抽出用調味料の製造方法  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 晃伸  
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