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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C21C
管理番号 1273392
審判番号 不服2011-20410  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-21 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2005-232464「転炉の炉体」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月22日出願公開、特開2007- 46116〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成17年8月10日の出願であって、平成22年3月15日付けで拒絶理由が通知され、同年5月20日付けで手続補正がされたが、平成23年6月30日付けで拒絶査定がされたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として平成23年9月21日に請求されたもので、その後、当審において、平成24年8月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年10月29日付けで手続補正がなされている。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明は、平成22年5月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
上底吹きの操業を行う転炉の炉体が、式(1)?式(3)を満たす形状であることを特徴とする転炉の炉体。
【数1】
2.828ln(R)+5.252≦H≦2.828ln(R)+7.3948 ・・・(1)
H/D≧1.4 ・・・(2)
Vi/Vo≧0.06 ・・・(3)
ただし、
H:炉口から炉体の底部に貼り付けた耐火物の内面(上面)までの距離(m)
R:炉口内径(m)
D:炉体の直胴部内径(m)
Vi:炉体を出鋼側へ90°傾けた際の炉体が溶鋼を保持できる炉内保持容積(m^(3))
Vo:炉内全容積(m^(3))」(以下、「本願発明1」という。)

第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の一つは、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないというものであって、具体的には、以下のとおりである。

「発明の詳細な説明の段落【0013】には、「そこで、発明者は図3に炉内容積が一定の炉内容積一定ラインV1を描き、当該炉内容積一定ラインV1と前記未付着ラインk1との接点P1を求めた。」と記載されているが、炉内容積は、炉内高さHiと炉口内径Rとから一義に定まるものではないから、図3に炉内容積一定ラインV1を描ける理由が不明である。
よって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が発明特定事項である式(1)の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしたものでない。」

第4 当審の判断

1 本願明細書の発明の詳細な説明及び図面には、本願発明1の式(1)の導出方法に関し、以下のとおりに記載されている。
「【0010】
・・・
以下、具体的な導出方法について説明する。
発明者は、過去の操業において炉口へ付着した付着地金を採取し、その断面積や組成分析などを行った結果、スピッティング粒鉄の粒径が1mm程度のものが付着地金となることが分かった。
【0011】
そこで、発明者は前記粒径が1mm程度のスピッティング粒鉄が炉口に付着しない炉内高さHiと炉体の炉口内径Rとについて検討した。具体的には、図3に示すように、炉口内径Rを横軸にとり、炉内高さHiを縦軸にとり、粒径が1mmのスピッティング粒鉄が炉口に付着しない各炉内高さHiと炉口内径Rとを複数の実験や物理的な計算により算出し、図3にプロットした。
前記物理的な計算は、図8に示すように、酸素を炉体内に吹き込んだ状態でのスピッティング粒鉄の速度vと、酸素を吹き込んだ際に発生する上昇気流(COガス)の速度V(空塔速度)と、抗力と、重力とに着目し、これらを用いて、スピッティング粒鉄が炉口に付着しない運動方程式をたてて、これを解くこととしている。なお、スピッティング粒鉄を球状とした。
【0012】
図3に示すように、例えば、ランスの送酸速度が700Nm^(3)/分であるとき、粒径1mmのスピッティング粒鉄が炉口に付着しない炉内高さHiと炉口内径Rとは、ラインK1(以降、未付着ラインK1とする)になった。この場合は、炉内高さHiと炉口内径Rとを未付着ラインK1上になるように決定することで、スピッティング粒鉄が付着し難い炉体を構成できることが分かった。
ここで、前記炉口内径Rは炉体直胴部内径Dで示すことも可能であって、炉内高さHiを炉体高さHで示すことも可能であるため、図3で炉口内径Rを炉体直胴部内径Dに置き換えると共に、炉内高さHiを炉体高さHに置き換えたとして、炉体高さHと炉体直胴部内径Dとの関係について考える。
【0013】
ラインK1によって、炉体高さHと炉体直胴部内径Dとを決定すると様々な内容積の炉体を構成することができるが、炉体の内容積は、1チャージ当たりに精錬する量に合わせて決定するのが妥当である。
そこで、発明者は図3に炉内容積が一定の炉内容積一定ラインV1を描き、当該炉内容積一定ラインV1と前記未付着ラインk1との接点P1を求めた。
炉口内径R(炉体直胴部内径D)と炉内高さHi(炉体高さH)との関係が点P1になるとき、炉内容積が一定の炉体では最もスピッティング粒鉄が付着し難い炉体となることが分かる。
【0014】
ここで、前記点P1付近を見てみるとその付近で前記未付着ラインK1と炉内容積一定ラインV1とは近接又は重なっており、未付着ラインK1と炉内容積一定ラインVとの近接点P2,P3においても前記点P1と同等の効果を得ることができる。
したがって、未付着ラインK1において点P2?P3の範囲で、炉口内径Rと炉内高さHiとを決定することが好ましい。
上記と同じように、操業条件などを考慮して複数の未付着ラインと、複数の炉内容積一定ラインとの近接点を複数求め、これらの近接点に対する近似曲線を求めると、図3に示すように、曲線L1,L2になった。
【0015】
図4に示すように、図3の炉内高さHiを炉体高さHに置き換えて、前記曲線L1,L2をフィッティングすると曲線L3,L4になった。
この曲線の近似式を求めると、曲線L3は2.828ln(R)+7.3948となり、曲線L4は2.828ln(R)+5.252となった。
したがって、炉体高さHが曲線L3及び曲線L4で囲まれる領域(最適な領域)にあるとき、即ち、前記式(1)を満たすようにすれば付着地金の堆積速度(成長速度)を低下させることができる。

また、図1、図3、図4は以下のとおりである。
図1

図3

図4

2 上記1の記載からすると、式(1)の導出方法は概略以下のとおりである。
ア スピッティング粒鉄が炉口に付着しない各炉内高さHiと炉口内径Rとを算出し、プロットする(図3、未付着ラインK1)。
イ 図3に炉内容積が一定の炉内容積一定ラインV1を描く。
ウ 炉内容積一定ラインV1と未付着ラインK1との接点P1を求める。
エ 未付着ラインK1と炉内容積一定ラインVとの近接点P2,P3を決める。
オ 複数の未付着ラインと、複数の炉内容積一定ラインとの近接点を複数求め、これらの近接点に対する近似曲線L1,L2を求める。
カ 図3の炉内高さHiを炉体高さHに置き換えて、曲線L1,L2をフィッティングし、曲線L3,L4を求める。
キ L3,L4で囲まれる領域が式(1)を満たす範囲となる(図4)。
なお、「炉体高さH」は、特許請求の範囲の記載に合わせて、「炉口から炉体の底部に貼り付けた耐火物の内面(上面)までの距離H」と記載すべきであるが、段落【0015】が補正されていないため、「炉体高さH」と記載した。以下同じ。

3 そこで、図3に炉内容積が一定の炉内容積一定ラインV1を描くことができるかについて検討すると、図1から明らかなように、炉内高さHiと炉口内径Rとを一定にしても、炉体高さHと炉体直胴部内径Dとを変更すれば、炉内容積は変化するから、炉内容積は、炉内高さHiと炉口内径Rとから一義に定まるものとはいえず、炉内容積一定ラインV1を、R-Hi図上に描くことはできないと解される。
しかるところ、発明の詳細な説明には、図3に炉内容積一定ラインV1を描ける理由が何ら説明されておらず、V1を炉内容積一定ラインを描くことが当業者の技術常識ともいえないから、その理由が不明である。
そして、式(1)は、炉内容積一定ラインV1を前提にするものであり、上記のとおり、炉内容積一定ラインV1を描ける理由は不明であるから、式(1)の技術上の意義を理解することができない。

4 審判請求人は、意見書において、「この点に関しては、上記(1)にて開示いたしました一覧表から明らかなように、本願出願時において、転炉の炉体は、ほぼ相似形状であって、極端に形状の異なる転炉は実操業では存在してはおりません。
転炉の形状がほぼ相似形状である状況下では、転炉の炉内容積は、炉内高さHiと炉口内径Rとから一義に定まると考えて差し支えないものと思料されます。実際の現場に携わる技術者間の周知事項としては、炉内高さHiと炉口内径Rから、転炉の炉内容積が一意的に決まると考えることは、実質的且つ産業的には問題ないとされています。」と主張し、(1)に以下の文献を開示した。
ア 特開平2-133508号公報
イ 特開昭61-34112号公報
ウ 特開平1-222010号公報
エ 実開昭58-131943号公報
オ 特開平7-310114号公報
カ 特開平7-3320号公報
キ 特開2005-89839号公報

しかしながら、これらの文献に記載される図面は、転炉の炉体を模式的に図示したに過ぎず、全ての文献に具体的な数値が記載されているわけでもないから、これらの文献の記載から、「本願出願時において、転炉の炉体は、ほぼ相似形状であって、極端に形状の異なる転炉は実操業では存在して(いない)」とはいえない。むしろ、転炉の炉体がほぼ相似形状でないことは、上記アの特開平2-133508号公報の特許請求の範囲に「炉体における煉瓦積み後の炉底から炉口までの高さHと炉腹の直径Dとの比H/Dが0.8?1.8の範囲にある」との記載や、同文献の第2頁右上欄に従来の技術として「スピッチングを防止するために炉体における煉瓦積み後の炉底から炉口までの高さHと炉腹の直径Dとの比であるH/Dの値が1.9?2.4と大きく背の高い形状のものが多かった。」と記載されることからも明らかである。
さらに、転炉の炉体がほぼ相似形状であれば、特定の体積に対応する炉体の炉内高さHiと炉口内径Rとはおよそ一つに決まってしまうから、そもそも、炉内容積一定ラインV1を描くことはできないと認められる。また、転炉の炉体がほぼ相似形状であれば、H/Dは、ほぼ一定となると認められ、式(2)と矛盾する。
したがって、審判請求人の上記主張は採用することができない。

5 以上のとおりであるから、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび

以上のとおり、この出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないから、本願は当審拒絶理由により拒絶すべきでものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-27 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2005-232464(P2005-232464)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (C21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 真明平塚 義三  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 大橋 賢一
佐藤 陽一
発明の名称 転炉の炉体  
代理人 安田 敏雄  
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