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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1273394
審判番号 不服2011-20616  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-26 
確定日 2013-05-02 
事件の表示 特願2004-361811号「自発光型表示装置用カラーフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日出願公開、特開2006-171228号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成16年12月14日の出願であって、平成22年12月3日付け及び平成23年4月25日付けで手続補正がなされ、同年6月20日付けで、同年4月25日付けの手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、その後、平成24年4月27日付けで審尋がなされ、同年6月28日付けで回答書が提出され、さらに、同年11月30日付けで審尋がなされ、平成25年2月1日付けで回答書が提出されたものである。

本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成22年12月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「透明基板と、前記透明基板上に順不同に積層された着色層および光散乱層とを有する自発光型表示装置用カラーフィルタであって、
前記光散乱層は、透明樹脂中に微粒子を分散させたものであり、
前記微粒子の平均粒径が、1.4μm?1.8μmの範囲内であり、
前記微粒子が、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、およびその混合系樹脂や共重合体により形成されたものであることを特徴とする自発光型表示装置用カラーフィルタ。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2003/026357号(以下「引用例1」という。)、及び特開2003-302506号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(後述する引用発明の認定に関連する箇所に下線を付した。)

a.引用例1
記載事項ア.(請求の範囲)
「1.有機エレクトロルミネッセンス素子用の透明性基板において、透明性基板の少なくとも一方の表面上に、発光素子からの発光に対して反射、屈折角に乱れを生じさせる領域を設けたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
2.反射、屈折角に乱れを生じさせる領域が、微粒子とバインダーを含む散乱層からなり、かつ微粒子の屈折率とバインダーの屈折率が異なるものよりなる請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。」

記載事項イ.(第6頁15行?24行)
「一方、図3に示すように、本発明による反射・屈折角に乱れを生じさせる領域8a、8bを一方の面もしくは両面に備えた透明性基板9を用いると、入射光はこの領域8a、8bで多方向性となる。このため透明性基板との界面に臨界角θ_(1)およびθ_(2)以上の角度で入射した光10,11であっても、透明性基板正面より取り出すことが出来るようになる。さらに素子内に閉じ込められた光であっても、散乱領域8a、8bのために導波が継続されなくなり、最終的にはほとんどの光を透明性基板正面から取り出すことができる。したがって本発明による透明性基板9を用いるだけで通常の有機エレクトロルミネッセンス素子の外部発光効率を大幅に向上させることができ、ひいては先述のように有機エレクトロルミネッセンス素子の発光輝度と寿命の両立を達成することが可能となる。」

記載事項ウ.(第6頁25行?27行)
「本発明に用いる透明性基板とはシリカガラス、ソーダガラス、有機フィルムなどの透明な基体である。表面にカラーフィルタやブラックマトリクスが形成されているものでもよい。」

記載事項エ.(第7頁12行?14行)
「ここで用いられる微粒子とは、直径0.01?10μmの球形や板状などの粒子である。その材質は有機物、無機物を問わないがバインダー中での分散性や透明性基板への塗布性、屈折率や透明性などを考慮して決定される。」

記載事項オ.(第7頁18行?第8頁1行)
「微粒子としては……(略)……ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、シリコーン樹脂及びメラミン樹脂等の有機系の微粒子が用いられうるが、好ましくはシリカ微粒子、ポリアクリレート微粒子、又はポリスチレン微粒子が適用される。」

記載事項カ.(第8頁2行?9行)
「またバインダーとは、前記微粒子をよく分散させ、かつ透明性基板への塗布性に優れるものである。その材質は有機物、無機物を問わないが微粒子の分散性や透明性基板への塗布性、屈折率や透明性などを考慮して決定される。また、熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性のバインダーを使用することもできる。
バインダーとしては、ウレタン系物質、アクリル系物質、アクリル-ウレタン共重合物質、エポキシ樹脂系物質、メラミン樹脂系樹脂、ポリビニルアセタール系物質、ポリビニルアルコール系物質、ポリカーボネート樹脂系及び金属アルコキシドの加水分解物であるゾルゲル材料等が用いられる。」

記載事項キ.(図3)



記載事項ア及びウ?カの記載内容からして、引用例1には、
「表面にカラーフィルタが形成された有機エレクトロルミネッセンス素子用の透明性基板において、透明性基板の少なくとも一方の表面上に、発光素子からの発光に対して反射、屈折角に乱れを生じさせる領域を設け、反射、屈折角に乱れを生じさせる領域が、微粒子とバインダーを含む散乱層からなり、微粒子は直径0.01?10μmの球形の粒子で、ベンゾグアナミン、メラミン樹脂等の有機系の微粒子が用いられ、また、バインダーとしては、アクリル系物質、エポキシ樹脂系物質、メラミン樹脂系樹脂、ポリビニルアセタール系物質、ポリビニルアルコール系物質、ポリカーボネート樹脂系等が用いられる、有機エレクトロルミネッセンス素子用の透明性基板。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

b.引用例2
記載事項ク.
「【請求項1】透明基材フィルム上に、少なくとも防眩層が積層された防眩性フィルムであって、該防眩性フィルムの内部ヘイズが35?75、トータルヘイズが45?85であり、トータルヘイズが内部ヘイズより大きいことを特徴とする防眩性フィルム。
【請求項2】前記トータルヘイズと前記内部ヘイズとの差が3?15であることを特徴とする請求項1記載の防眩性フィルム。
【請求項3】透明基材フィルム上に、光拡散層、および防眩層とが順に積層された積層構造を有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防眩性フィルム。」

記載事項ケ.
「【0020】(光拡散層)光拡散層3は、本発明の防眩性フィルム1において、ディスプレイからの光を層内において拡散させることにより、防眩層4内における、防眩層4の法線方向の光線の割合に対する、法線方向以外の光線の割合を増加させる機能をする。上記の機能を発揮するため、光拡散層は、透光性樹脂(=透明樹脂)中に透光性微粒子を分散させたものとし、ただし、光拡散層の透明性を維持する意味で、透光性樹脂と透光性微粒子との光の屈折率の差を0.01?0.5とすることが好ましく、また、散乱性を確保する意味で透光性微粒子の粒子径を0.1μm?7.5μmとすることが好ましい。」

記載事項コ.
「【0055】(画像表示装置)本発明の防眩性フィルム1は、図4を引用して説明したように、液晶ディスプレイのようなディスプレイの前面に適用して、防眩性が付与された画像表示装置を構成することができる。ここで言うディスプレイは、液晶ディスプレイに限ること無く、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、もしくはLEDディスプレイ等のいずれでもよく、自身が発光するタイプでも、照明を必要とするものでもよい。」

記載事項サ.
「【0056】
【実施例】(実施例1)膜厚80μmのTACフィルムを透明基材フィルムとして用い、下記の組成の光拡散層形成用塗料組成物を、フィルム上にグラビアリバースコーティング法により、膜厚が8g/m^(2)となるように塗工し、塗工後の塗膜を温度70℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射線量が100mJになるよう照射して硬化させ、光拡散層を形成した。続いて、光拡散層上に、下記の組成の防眩層形成用塗料組成物を、グラビアリバースコーティング法により、膜厚が3g/m^(2)となるように塗工し、塗工後の塗膜を温度70℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射線量が100mJになるよう照射して硬化させ、防眩層を形成して、防眩性フィルムを得た。なお、以降も含めて、塗料組成物の組成における部数は質量基準である。
……(略)……
【0062】(実施例2)下記の組成の光拡散層形成用塗料組成物、および防眩層形成用塗料組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムを得た。
(光拡散層形成用塗料組成物)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 100部
(屈折率;1.5、日本化薬(株)製)
・メラミンベンゾグアナミンホルムアルデヒド縮合物ビーズ 4部
(屈折率;1.57、平均粒径;1.8μm)
・紫外線重合開始剤 6部
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名;イルガ キュア184)
・プロピオン酸セルロース 1.25部
・反応性シリコーン系レベリング剤 0.04部
(信越化学工業(株)製、品番;KF6001)
・トルエン 130部
(防眩層形成用塗料組成物)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 100部
(屈折率;1.5、日本化薬(株)製)
・シリカ微粒子 9部
(屈折率;1.48、平均粒径;1.0μm)
・シリカ微粒子 6部
(屈折率;1.48、平均粒径;1.5μm)
・紫外線重合開始剤 6部
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名;イルガ キュア184)
・セルロースアセテートプロピオネート 1.25部
・レベリング剤 0.04部
(日本ユニカー(株)製、品番;FZ2191)
・トルエン 105部
・シクロヘキサノン 46部」

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(a)引用発明の「透明性基板」は、本願発明の「透明基板」に相当し、引用発明の「微粒子とバインダーを含む散乱層からな」る「発光素子からの発光に対して反射、屈折角に乱れを生じさせる領域」は、本願発明の「光散乱層」に相当する。また、引用発明の「カラーフィルタ」は、本願発明の「着色層」に相当する構成を有していることは明らかである。そうすると、引用発明の「表面にカラーフィルタが形成された有機エレクトロルミネッセンス素子用の透明性基板において、透明性基板の少なくとも一方の表面上に、発光素子からの発光に対して反射、屈折角に乱れを生じさせる領域を設け、反射、屈折角に乱れを生じさせる領域が、微粒子とバインダーを含む散乱層からな」ることは、本願発明の「透明基板と、前記透明基板上に順不同に積層された着色層および光散乱層とを有する」ことに相当する。
また、引用発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子」は、本願発明の「自発光型表示装置」の概念に包含されるから、引用発明の「表面にカラーフィルタが形成された有機エレクトロルミネッセンス素子用の透明性基板」は、本願発明の「自発光型表示装置用カラーフィルタ」に相当するといえる。

(b)引用発明の「バインダー」としての「アクリル系物質、エポキシ樹脂系物質、メラミン樹脂系樹脂、ポリビニルアセタール系物質、ポリビニルアルコール系物質、ポリカーボネート樹脂系」は、透明な樹脂であるから、本願発明の「透明樹脂」に相当する。そうすると、引用発明の「反射、屈折角に乱れを生じさせる領域が、微粒子とバインダーを含む散乱層からなり、」「バインダーとしては、アクリル系物質、エポキシ樹脂系物質、メラミン樹脂系樹脂、ポリビニルアセタール系物質、ポリビニルアルコール系物質、ポリカーボネート樹脂系等が用いられる」ことは、本願発明の「前記光散乱層は、透明樹脂中に微粒子を分散させたものであ」ることに相当する。

(c)引用発明の「ベンゾグアナミン、メラミン樹脂」は、本願発明の「メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂」に相当するから、引用発明の「微粒子は」「ベンゾグアナミン、メラミン樹脂等の有機系の微粒子が用いられ」ることは、本願発明の「微粒子が、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、およびその混合系樹脂や共重合体により形成されたものである」ことに相当する。

上記(a)?(c)で述べたことからして、本願発明と引用発明は、
「透明基板と、前記透明基板上に順不同に積層された着色層および光散乱層とを有する自発光型表示装置用カラーフィルタであって、前記光散乱層は、透明樹脂中に微粒子を分散させたものであり、前記微粒子が、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、およびその混合系樹脂や共重合体により形成されたものである自発光型表示装置用カラーフィルタ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
透明樹脂中に分散させた微粒子の大きさについて、本願発明は、微粒子の平均粒径が1.4μm?1.8μmの範囲内であるのに対して、引用発明は、微粒子の直径が0.01?10μmである点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用発明の微粒子の直径0.01?10μmには、微粒子の平均粒径が1.4μm?1.8μmとなる場合が包含されていることは明らかである。そして、数値範囲の中からより好ましい範囲を実験等により求めることは当業者が通常行う創作能力の発揮というべきであるところ、引用例2には、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等の自発光型表示装置に適用する防眩性フィルムの光拡散層に用いる透光性微粒子の径として、散乱性を確保する意味で透光性微粒子の粒子径を0.1μm?7.5μmとすることが好ましく、具体的実施例として平均粒径が1.8μmのベンゾグアナミン系樹脂の一種であるメラミンベンゾグアナミンホルムアルデヒド縮合物ビーズを用いて光拡散層を形成することが記載(記載事項ケ、コ、サ参照)されているから、引用発明の微粒子として平均粒径が1.8μmとなるような粒径の微粒子を採用して上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者であれば容易になし得ることである。

また、本願発明の効果も、引用発明及び引用例2の記載事項から予測し得る範囲内のものであり、格別のものとは認め難い。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-27 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2004-361811(P2004-361811)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 博之  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 神 悦彦
土屋 知久
発明の名称 自発光型表示装置用カラーフィルタ  
代理人 山下 昭彦  

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