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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1273539
審判番号 不服2012-2134  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-03 
確定日 2013-05-01 
事件の表示 特願2011- 51543「ハイブリッド車両」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-187961〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成23年3月9日の出願であって、同年9月1日付けで拒絶理由が通知され、同年11月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月15日付けで拒絶査定がなされ、平成24年2月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、さらに、同年8月7日付けで当審において書面による審尋がなされ、それに対して、同年9月25日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成24年2月3日付けの明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年2月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成24年2月3日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年11月1日付けの手続補正書により補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。

A 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
エンジン及びモータを駆動源として走行可能なハイブリッド車両であって、
前記エンジンの排気によって回転駆動される排気タービンと、
熱伝導率の低い材質でできたカップリングを介して前記排気タービンに接続され、前記排気タービンによって回転駆動されることで発電する発電機と、
を備え、
前記モータは、前記発電機によって発電された電力によって駆動される、
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両であって、
前記カップリングは、アダプタ内に収容されており、
前記アダプタは、前記カップリングを冷却する空気を導入するための通風穴を有している、
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両であって、
前記カップリングと前記発電機との間に減速機が設けられる、
ことを特徴とするハイブリッド車両。」

B 本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
エンジン及びモータを駆動源として走行可能なハイブリッド車両であって、
前記エンジンの排気によって回転駆動される排気タービンと、
前記排気タービンからの伝熱を防止する熱伝導率の低い材質でできたカップリングを介して前記排気タービンに接続され、前記排気タービンによって回転駆動されることで発電する発電機と、
を備え、
前記モータは、前記発電機によって発電された電力によって駆動され、
前記カップリングは、前記排気タービンからの伝熱を防止するアダプタ内に収容されており、
前記アダプタは、前記カップリングを冷却する空気を導入するための通風穴を有している、
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両であって、
前記カップリングと前記発電機との間に減速機が設けられる、
ことを特徴とするハイブリッド車両。」(アンダーラインは補正箇所を示すもので請求人が付したものである。)

2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲に関して、本件補正前の請求項1を削除し、本件補正前の請求項1を引用する請求項2を繰り上げて本件補正後の請求項1とした上で、「熱伝導率の低い材質でできたカップリング」に関して「排気タービンからの伝熱を防止する」という限定、及び、「アダプタ」に関して「排気タービンからの伝熱を防止する」という限定を付加するものを含むものであるから、請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.本件補正の適否
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3-1.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である特開2009-126303号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
本発明は、主としてハイブリッド車両における走行制御を担う制御装置に関する。」(段落【0001】)

イ.「【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態におけるハイブリッド車両の概要を示す。この車両は、車輪の駆動源として、内燃機関であるエンジン1と、発電可能な電動機であるモータジェネレータ2とを両備している。」(段落【0017】)

ウ.「【0019】
モータジェネレータ2は、バッテリ0及び/または後述する排ガス発電機7から電力供給を受けてトルクを出力しエンジン1をアシストする。のみならず、エンジン1または駆動車輪により駆動されて発電機としても作動する。回生作動するモータジェネレータ2が発電した電力は、バッテリ0に蓄電される。」(段落【0019】)

エ.「【0022】
モータ制御部93は、車両制御部91から制御指令を受けて、インバータ回路を介してモータジェネレータ2に通流する電流の大きさや周波数を制御し、モータジェネレータ2の出力、回転速度を調節する。モータ制御部93は、モータジェネレータ2または排ガス発電機7で発電した電力をバッテリ0に充電する量の調節をも行う。」(段落【0022】)
オ.「【0024】
加えて、エンジン1の排気通路11にタービン6を配設し、このタービン6によって排ガス発電機7を駆動し発電できるようにしている。タービン6と排ガス発電機7とは、減速ギア及びクラッチ8を介して連結しておく。」(段落【0024】)

(2)ここで、上記(1)ア.ないしオ.及び図面から、次のことが分かる。
カ.上記(1)ア.ないしオ.及び図1から、ハイブリッド車両は、エンジン1及びモータジェネレータ2を駆動源として走行可能であることが分かり、タービン6は、エンジン1の排ガスによって回転駆動され、排ガス発電機7は、タービン6に接続され、タービン6によって回転駆動されることで発電することが分かる。

キ.上記(1)ウ.及び図1から、モータジェネレータ2は、排ガス発電機7によって発電された電力によって駆動されることが分かる。

(3)引用文献記載の発明
上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明が記載されている。
「エンジン1及びモータジェネレータ2を駆動源として走行可能なハイブリッド車両であって、
前記エンジン1の排ガスによって回転駆動されるタービン6と、
前記タービン6に接続され、前記タービン6によって回転駆動されることで発電する排ガス発電機7と、
を備え、
前記モータジェネレータ2は、前記排ガス発電機7によって発電された電力によって駆動される、
ハイブリッド車両。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3-2.本件補正発明と引用文献記載の発明との対比
本件補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「モータジェネレータ2」、「排ガス」、「タービン6」及び「排ガス発電機7」は、それぞれの技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「モータ」、「排気」、「排気タービン」及び「発電機」に、それぞれ相当する。
したがって、本件補正発明と引用文献記載の発明は、
「エンジン及びモータを駆動源として走行可能なハイブリッド車両であって、
前記エンジンの排気によって回転駆動される排気タービンと、
前記排気タービンに接続され、前記排気タービンによって回転駆動されることで発電する発電機と、
を備え、
前記モータは、前記発電機によって発電された電力によって駆動される、
、ハイブリッド車両。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本件補正発明は、「発電機」が、「排気タービンからの伝熱を防止する熱伝導率の低い材質でできたカップリングを介して排気タービンに接続され」、また、「カップリングは、排気タービンからの伝熱を防止するアダプタ内に収容され」、及び、「前記アダプタは、前記カップリングを冷却する空気を導入するための通風穴を有していているのに対して、引用文献記載の発明においては、「発電機」と「排気タービン」とが「カップリング」を介して接続されているかどうかが明らかでなく、また、「カップリング」が、通風穴を有する「アダプタ」内に収容されているかどうかが明らかでない点。(以下、「相違点」という。)。

3-3.当審の判断
排気タービンは、排気により加熱されるものであるが、この加熱による熱の発電機への伝熱を防止することは周知の課題(以下、「周知課題」という。例えば、特開昭63-302135号公報の第2ページ右下欄第4ないし17行並びに国際公開2010/081123号の段落【008】ないし【0010】等参照。)である。
したがって、引用文献記載の発明においてもこのような課題が内在することは明らかである。
また、引用文献には、上記3-1(1)オ.で摘記した事項からみて、「発電機」と「タービン」とを他の部材を介して接続することが示唆されているといえ、さらに、「発電機」と「タービン」とを「カップリング」を介して接続することは周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2009-257097号公報の段落【0017】及び特開2009-108961号公報の段落【0016】等参照。)でもある。
そして、伝熱を防止するためにカップリングを熱伝導率の低い材質とし、これを本件補正発明のアダプタに相当する内部に空間を有する部材に収容することは周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開2009-2252号公報の段落【0014】及び図2並びに実願昭59-192942号(実開昭61-108524号)のマイクロフィルムの明細書第5ページ第4ないし19行及び第2図等参照。)である。
さらに、カップリングが収納される本件補正発明のアダプタに相当する内部に空間を有する部材に、冷却のための通風穴を設けることも周知の技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開2007-192359号公報の段落【0013】ないし【0015】及び図2並びに実願昭54-91809号(実開昭56-8927号)のマイクロフィルムの明細書第2ページ第19行ないし第3ページ第9行及び第4図等参照。)である。
してみれば、引用文献記載の発明において、上記周知課題のもとに、上記周知技術2及び周知技術3を参酌しつつ、上記周知技術1を適用することにより、相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本件補正発明は、全体でみても、引用文献記載の発明及び上記周知課題並びに上記周知技術1ないし3から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

以上から、本件補正発明は、引用文献記載の発明及び上記周知課題並びに上記周知技術1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明の内容
平成24年2月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成23年11月1日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.[理由]1.Aに記載したとおりである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開2009-126303号公報)の記載事項及び引用文献記載の発明は、前記第2.[理由]3-1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本件補正発明は、前記第2.[理由]2.で検討したように、本件補正前の請求項1を引用する請求項2に係る発明をさらに限定したものであるから、本件補正発明は、本件補正前の請求項1に係る発明であるところの本願発明の発明特定事項を減縮したものに相当することは明らかである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記第2.[理由]3-3.に記載したとおり、引用文献記載の発明及び上記周知課題並びに上記周知技術1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明及び上記周知課題並びに上記周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知課題並びに上記周知技術1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-08 
結審通知日 2013-02-19 
審決日 2013-03-08 
出願番号 特願2011-51543(P2011-51543)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60K)
P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
金澤 俊郎
発明の名称 ハイブリッド車両  
代理人 平山 洲光  

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