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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1273568
審判番号 不服2008-22438  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-02 
確定日 2013-04-26 
事件の表示 平成10年特許願第540188号「道路交通情報装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月24日国際公開,WO98/41961,平成13年 9月25日国内公表,特表2001-516453〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,1998年3月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年3月14日,フランス)を国際出願日とする出願であって,平成20年5月28日付けで拒絶査定され,これに対し同年9月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,さらに,平成22年7月14日付けで当審の拒絶理由が通知され,これに対し,平成23年1月21日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成23年1月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「互いに連結し合っている幾つかの区間に分割される所定の道路網における行程の所要時間に関する情報を提供する道路交通情報装置において,該道路交通情報装置は無線メッセージの携帯可能な受信機を有し,該無線メッセージの携帯可能な受信機は,
・ 無線メッセージを受信するための受信手段と,
・ 受信した前記無線メッセージを記憶するための少なくとも1つの記憶装置と,
・ 前記無線メッセージを処理するためのエレクトロニクスの中央処理装置と,
・ 利用者に前記中央処理装置に対する指令を可能にするコマンドインターフェースと,
・ 受信された前記無線メッセージのうちの少なくとも幾つかから生じる情報を,前記コマンドインターフェースを介して利用者から入力された指示にしたがって表示するためのスクリーンと,を有し,
前記受信機の前記記憶装置には,
・ 当該道路網に固有な空間上の位置関係のデータであって,少なくとも前記道路網の各区間ごとの出発点及び到達点の識別を含むデータと,
・ いわゆる行程の基本所要時間である,前記道路網の各区間における行程の所要時間を表すデジタルデータとが含まれ,
そして,前記受信機の前記中央処理装置は,
・ 更新された前記行程の基本所要時間を表すデジタル情報を少なくとも含む,所定の幾つかの無線メッセージを認知し,
・ 受信された前記デジタルデータに応じて,前記行程の基本所要時間を表す,記憶された前記デジタルデータを更新し,
・ そして,前記コマンドインターフェースを用いて利用者により前記中央処理装置に設定された所望の出発点および到達点に応じて,
・所望の前記出発点と前記到達点との間において採用されるべき前記道路網の幾つかの区間を決定し,
・所望の前記出発点と前記到達点との間において採用されるべき前記幾つかの区間における前記行程の基本所要時間の総計に等しい全行程の所要時間を計算し,
・そして,前記スクリーン上に少なくとも該全行程の所要時間を表示させ,
前記記憶されたデジタルデータおよび前記受信されたデジタル情報には,当該道路網の各区間ごとの行程の基本所要時間が含まれている,道路交通情報装置。」

2.引用例
(2-1)引用例1
当審における拒絶理由に引用した特開平7-129893号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

・「【要約】
【目的】 車両の外部から受信された情報に基づき,最適な経路を搭乗者に報知する車両用経路誘導装置において,旅行時間情報に関し補正を行うことにより,より高精度な旅行時間および誘導経路を提供することのできる装置を提供する。」

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,車両外部から送られてくる情報を車両内部に備えられた装置により搭乗者に報知し,また予め設定された目的地に至る経路に沿って自車両を誘導する車両用経路誘導装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年,人工衛星からの電波を受信し自車両の位置を測定し,この位置を車両に搭載された地図情報と照合して,自車両周辺の地図と,この地図上の自車両位置を表示し運転者に報知する,いわゆるGPSナビゲーションシステムが一般の需要に供されている。
【0003】このシステムにおいては,予め自車両に搭載された装置に記憶された地図情報は,記憶された時点での情報であり,実際に表示が行われている時点での情報ではない。このシステムにおいて,現実の時刻における情報は,自車両の位置のみである。よって,事故による道路規制や渋滞情報などの刻一刻と変化する情報については,搭乗者は例えば首都高速道路の渋滞表示看板やラジオ放送の交通情報などの外部情報に頼らざるを得なかった。また,道路の改修工事などで車両に搭載された地図情報が実際とは合わなくなる場合があった。
【0004】また一方で,基地局や道路側方に設置されたビーコンから情報を送信し,車両の受信装置でその情報を受信し,搭乗者に報知するシステムが開発されている。たとえば,都心部の首都高速道路などにおいて,基地局より首都高速全体の渋滞情報,規制情報,事故情報などを送信し,これを車両に搭載された表示装置に表示するシステムが開発されており,現在首都高速道路の十数か所設置されている道路情報表示板のような表示を車両内の表示装置に表示することができる。これによれば,従来の道路上方や側方に設置された表示板を通り過ぎて,その内容を十分に確認できないといった場合はなくなり,搭乗者の所望の時に情報を確認することができる。
【0005】また,道路側方に設置されたビーコンからの電波または光により情報を送信する場合は,この電波等が届く範囲内で重要となる情報を特に送信することで,搭乗者はより詳細な情報を得ることができる。たとえば,接近中の交差点の情報を表示すれば,前述の渋滞情報と同様に,従来の道路表示板を通り過ぎてしまってもその内容を確認することができる。さらには,所定の地点までの所要時間を現時点での道路状況を基に情報作成し表示させるなどして,より有用な情報を搭乗者に提供することが可能となる。以上のように,現時点の情報が報知されることにより,搭乗者はこの状況に対応した経路選択などを行なうことできる。
【0006】さらに,目的地点を入力し,前述の外部から送られてきた情報に基づき前記目的地点まで最短時間で到達できる経路を探索し,この探索された経路に沿って自車両を誘導する経路誘導装置が開発されている。特開昭62-60100号公報には,外部から得た渋滞度と距離により所要時間の計算を行い,目的地までの所要時間が最短のものを最適経路として搭乗者に報知する経路誘導装置が記載されている。
【0007】また,近年,社会設備の整備が進み,道路の所定区間(リンク)を通過するのに要する時間(旅行時間)を外部情報として発信することが可能となっている。この旅行時間を利用すれば直接目的地までの旅行時間が算出でき,最短時間経路の探索が容易にできる。」

・「【0011】本発明は,以上のような問題点を解決するためになされたものであり,受信したリンク旅行時間を所定条件の下に補正して,より正確なリンク旅行時間を得ると共に,リンク旅行時間の付与されなかったリンクに関してはこれを推定することにより,より適切な最短旅行時間経路を探索することができる車両用経路誘導装置を提供することを目的とする。」

・「【0067】図1は本実施例の車両用外部情報報知装置の構成ブロック図である。GPSナビゲーションシステムを構成するGPS用アンテナ10,GPSレシーバ12と,車速センサ14,ステアリングセンサ16,地磁気センサ18および距離センサ20の各種センサと,制御部22が備えられている。GPSレシーバ12ではGPSアンテナ10で受けた衛星軌道上の測地衛星からの電波を受信する。この受信電波の方向に基づき,制御部22にて自車両の現在位置の緯度・経度が算出される。本装置においては,車速センサ14,ステアリングセンサ16,地磁気センサ18および距離センサ20などのセンサにより出発地点からの検出値を積算して現在位置を算出する,いわゆる自立航法システムが基本的には採用されている。しかし,より現在位置の検出精度を高めるために,前記測地衛星からの電波に基づき算出された自車両の現在位置により補正を行っている。」

・「【0069】さらに,本装置においては,予め目的地点を設定し,この目的地点に達する経路を記憶させておくことによって,曲がるべき交差点などの手前で選択すべき経路の案内を行い,前記記憶された経路に沿って誘導を行うことができる。入力部28より目的地点が入力されると,前述のGPSによって測定された現在地点から目的地点までの経路を制御部22が探索し,探索された経路が経路記憶部30に記憶される。そして,実際の走行中に記憶された経路と自車両の位置を比較して経路誘導が行われる。」

・「【0070】以上説明した機能は,地図情報記憶部24により記憶された情報に基づき作動しており,現在時点の情報は加味されていない。したがって,探索された経路が,実は道路工事などの交通規制によって通行できなくなっている場合もあり得る。また,探索された経路の一部に渋滞している区間があり,実際には他の経路を選択したほうが目的地点まで短時間で到達する場合なども有り得る。このような不都合は,現時点での情報が自車両の位置のみで,渋滞や規制などの現時点での道路の交通状況が加味されていないことによって生じる。
【0071】本装置においては,このような現時点での情報を後述する方法により外部より受信して,経路選択などの判断要因としている。外部から各車両に現時点の交通状況等を伝達する方法として,現在,FM多重放送によるもの,道路側方に設けられたビーコンより電波または光を送信するものなどが現在一部実用に供されている。
【0072】本装置は外部情報の受信手段として前述のFM多重放送を受信するFM多重レシーバ34およびビーコンからの電波などを受信するビーコンレシーバ36を備えている。
【0073】FM多重レシーバ34はFMアンテナ38により受けたFM波を受信する。このFM多重波の情報は,たとえば道路の渋滞状況や規制情報などである。また,ビーコンレシーバ36は道路側方に設けられたビーコン発信源からの電波などをビーコン用アンテナ40により受け受信する。ビーコンは比較的に狭い範囲,情報を送信するのに適している。これを利用して,特定の交差点の手前の所定の位置にビーコン発信源を設置して,この交差点に特有の情報を送信する。交差点特有の情報とは,たとえば従来から交差点手前に看板として表示されている交差点の分岐方向別の行先表示や,さらに該当する交差点から前記の表示された行先までの所要時間(旅行時間)などである。これに対し,前述のFM多重波は広域に情報を送信するのに適しており,基地局から情報送信を行なう。この情報内容は,たとえば首都高速道路全域の渋滞情報や事故・落下物などによる規制情報,その他道路管理者からのメッセージなどである。むろん,このFM多重波により送信される渋滞情報や規制情報などをビーコンにより送信することも可能である。
【0074】前述のようにFM多重レシーバ34やビーコンレシーバ36に受信された情報は,一旦記憶され,表示指示がなされたあと表示部26に表示される。この表示指示は,たとえば受信終了後またはビーコン発信源の直下を通過したことが検出された後になされる。また,受信から所定距離走行後または所定時間経過後などとしてもよい。さらには,搭乗者が入力部28より指示を行うことにより表示させるようにすることも好適である。このようにした場合は,搭乗者が要求する場合にのみ表示させることによって,搭乗者が他の画面を見ているときに外部情報が割り込むことを防止することができる。
【0075】本装置においては,以上のように外部から現在の道路状況,特に所定の交差点間の道路(リンク)ごとの通過所要時間(旅行時間)が送信されてくる場合には,目的地までのリンクの旅行時間の合計が最も短くなるような経路を探索し,この経路に沿って経路誘導を行う。このような経路探索および経路誘導の方法は,ダイナミックルートガイダンスと呼ばれ,前述の予め記憶された地図情報のみにより経路誘導を行う場合に比して,そのときの交通の状況に応じた経路誘導が行える。すなわち,目的地まで距離的には遠回りでも,より短い時間で到着することのできる経路で誘導が可能である。」

・「【0076】しかし,受信したリンク旅行時間と実際の所要時間とは種々の理由により食い違う可能性がある。たとえば,旅行時間を算出するために収集される各リンクにおける交通状況のデータに誤差が含まれたり,または検出ミスが生じたりする場合が考えられる。また,情報送信時にノイズの混入などにより正しい情報が受信されない場合もありうる。さらに,リンク旅行時間は,そのリンクの終端の交差点では直進することが基準となって算出されており,右折や左折などに要する時間は考慮されていない。さらに,リンク旅行時間が付与されているリンクが限られている場合,リンク旅行時間が付与されていないリンクは探索対象とはならない。したがって,実際にはさらに好ましい経路があったとしてもこれを探索することができなくなる。」

・「【0099】次に,旅行時間情報のないリンクに対して,周辺のリンク旅行時間から当該リンクの旅行時間を推定する場合を記す。装置の構成は図13に示される。旅行時間推定部80は旅行時間が付与されていないリンクの前後のリンクの旅行時間とリンク長より平均車速を求め,この車速で当該リンクも走行できるとして旅行時間を推定する。
【0100】または,並行する左右のリンクの旅行時間の平均を採ってもよい。並行する左右のリンクはそのリンク長が当該リンクとほぼ等しい場合が多いので,平均車速を求めずに直接旅行時間を推定しても精度をそれほど落とさずに推定ができる。
【0101】さらに,全国を10kmの区画に分けた,いわゆる2次メッシュ内での平均渋滞度の情報から,当該2次メッシュ内の旅行時間の付与されていないリンクの旅行時間を推定してもよい。すなわち,平均渋滞度から平均車速を求め,当該リンクのリンク長から旅行時間を推定する。また,2次メッシュの区画では大きい場合にこれをさらに細分化したメッシュを対象として,平均渋滞度を算出することも好ましい。」

・「【0102】次に,何らかの原因で今回に限りリンク旅行時間情報を受信できなかった場合の旅行時間の算出について説明する。この装置の構成が図14に示されている。前回の受信時に受信した旅行時間情報と,今回受信されるはずであった旅行時間情報とは,多くの場合大きな違いはないと推定される。したがって,本装置においては前回受信の情報を今回の旅行時間として扱って,経路探索を行う。特に,ビーコンレシーバ36とFM多重レシーバ34において,得られた情報のみ前回の情報を更新し,情報が得られない項目については前回の情報が残存するように構成されていることが好適である。
【0103】さらには,過去複数回の受信情報を記憶する記憶部をビーコンレシーバ36とFM多重レシーバ34に設け,過去の複数回の旅行時間の変化をもとに,今回の旅行時間を外挿することも好適である。この場合は,渋滞がひどくなりつつあるときには,この傾向より,前回の旅行時間より長めの旅行時間を推定する。」

・「【0105】図16には,この天候に関する補正の制御フローが示されている。交通情報が取得されて(S100),経路探索が行われ(S102),到着時刻を予想する(S104)。そして,降雨情報が外部情報またはワイパスイッチから検出されると(S106,S108),係数設定がなされる(S110)。この係数は旅行時間を長くする係数である。次に霧検知が行われる。この場合も外部情報またはフォグランプにより判断され(S112,S114),係数設定がなされる(S116)。
【0106】これらの係数により到着時刻の補正が行われ,搭乗者に通知される(S118)。そして,車両が走行を始める(S120)。そして,トラクションコントロールがスリップを検知したら(S122),この値が通常のものなのか,これよりも大きいものなのかが判定される(S124)。通常以上の場合は,スリップが定常的なものかが判断され(S126),定常的に大きい場合にはタイヤが磨耗したと判断し(S128),到着時刻を遅らせるような係数の設定がなされる(S130)。また,ステップS126でスリップが定常的に大きくないと判断された場合は,アクセルオンされた後のスリップが大きいかを判断する(S132)。この場合は路面状況によるものと判断し(S134),これに応じた係数設定がなされる(S136)。ステップS130,S136により設定された係数によって,到着時刻を再度修正し搭乗者に報知する(S138)。」

・【0074】段落の「FM多重レシーバ34やビーコンレシーバ36に受信された情報は,一旦記憶され,表示指示がなされたあと表示部26に表示される。」との記載によれば,車両用外部情報報知装置が,受信された情報を記憶する記憶装置を備えていることは明らかである。
また,【0075】段落に,「本装置においては,以上のように外部から現在の道路状況,特に所定の交差点間の道路(リンク)ごとの通過所要時間(旅行時間)が送信されてくる場合には,目的地までのリンクの旅行時間の合計が最も短くなるような経路を探索し,この経路に沿って経路誘導を行う。」と記載されているから,上記記憶装置には,リンクごとの位置情報,すなわち各リンクの始点及び終点の位置情報と,所定のリンクの通過所要時間(リンク旅行時間)とが対応づけて記憶されていることは明らかである。
さらに,【0099】?【0101】段落の記載から,旅行時間のないリンクに対して,周辺のリンク旅行時間から当該リンクの旅行時間を推定する場合は,このリンク旅行時間を使用して,探索した経路の所要時間を求めているから,推定した旅行時間を記憶装置に記憶していることは明らかである。

・制御部22は,渋滞度検出部46や所要時間算出部48(図2),旅行時間推定部80(図13),旅行時間算出部82(図14)等を含み,それぞれFM多重レシーバ34やビーコンレシーバ36から受信した情報を用いて所要時間等を算出したり推定する機能をもつものであるから,受信した情報を処理するものといえる。
また,制御部22は,外部からリンク旅行時間等を受信して,この受信した情報に応じて,記憶された当該リンクのリンク旅行時間を更新していることは,明らかといえる。

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,以下の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両の外部から受信された情報に基づき,最適な経路を搭乗者に報知する車両用経路誘導装置において,該車両用経路誘導装置は外部情報を受信して報知する車両用外部情報報知装置を有し,該車両用外部情報報知装置は,外部情報を受信するFM多重レシーバ34とビーコンレシーバ36と,ここで受信した情報を記憶する記憶装置と,受信した情報を処理するための制御部22と,搭乗者が該制御部22に指示を行う入力部28と,受信した情報をもとに処理して得られた情報を搭乗者の指示で表示する表示部26とを有し,前記車両用外部情報報知装置の前記記憶装置には,道路のリンクごとの始点及び終点の位置情報と,所定のリンクの通過所要時間(リンク旅行時間)を表すデータとが含まれ,そして,前記車両用外部情報報知装置の前記制御部22は,外部から現在の道路状況,所定の交差点間の道路(リンク)ごとの通過所要時間(リンク旅行時間)を受信して,外部から受信したリンク旅行時間の情報に応じて,記憶された当該リンクのリンク旅行時間を更新するとともに,リンク旅行時間情報のないリンクに対し,周辺のリンク旅行時間から当該リンクの旅行時間を推定して記憶し,そして,入力部28から搭乗者が目的地点を入力すると,現在地点から目的地点までの経路を探索し,該経路の各リンクのリンク旅行時間を合計して経路の所要時間を計算し,所要時間が最短のものを最適経路として経路記憶部30に記憶するとともに表示部26に表示して経路誘導を行う,前記記憶された外部からの情報および前記受信された外部からの情報には,道路の所定のリンクごとのリンク旅行時間が含まれている,車両用経路誘導装置。」

(2-2)引用例2
同じく当審の拒絶理由で引用した特開平8-292057号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【0025】またCPU9は,交通情報受信装置8が受信する広域交通情報から図6に示すような各道路毎の所要時間データテーブルを作成してRAM11に格納する。この所要時間データテーブルでは,例えば,T(A,B)があっても,T(B,A)が登録されていない場合にはこのA,B間の道路はA→Bの一方通行路と判断する(図3参照)。また交通情報から得られないリンクに対しては,図5に示した距離データテーブルを参照し,該当するリンクの距離値を平均旅行速度,例えば,市街地であれば20km/h,郊外であれば40km/hで除算して所要時間データとして使用する。」

・「【0052】なお,この表示態様は図15及び図16に示すようなものであってもよい。すなわち,フラグ=0である場合には,図15に示すように出発交差点Sから特定の属性を持つ地点P1?Pnそれぞれに到達するまでの所要時間t1?tnを小さい順に各地点名と共にグラフ表示させ,またフラグ=1である場合には,図16に示すように出発交差点Sから特定の属性を持つ地点P1?Pnそれぞれに到達するまでの所要時間t1?tnと各地点P1?PnそれぞれのロスタイムLT1?LTnを小さい順に各地点名と共にグラフ表示させる。さらには図13と図15との切替表示,また図14と図16との切替表示ができるようにすることも可能である。」

(2-3)引用例3
同じく当審の拒絶理由で引用した特開平8-82527号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【0003】従来の車両用経路誘導装置としては特開平1ー130299号公報が開示されている。上記特開平1ー130299号公報は,乗務員が起終点を指定するのみで,それぞれの条件による最適経路が表示され,また,これらが識別可能に同時にナビゲーション画面に表示される。これにより,極めて容易に所望の経路を選択することができる。
【0004】上記ナビゲーション画面に表示される最適経路の表示例を図9に示す。まず,ナビゲーション画面には乗務員が指定した起点(ノードN1)から終点(ノードN5)までの走行経路に対し,起点(ノードN1)からノードN2により図中下側の経路に下りノードN2→ノードN4→ノードN5へと図中下側の経路を通り終点(ノードN5)に着く第1の走行経路が選定されて表示される。また,ナビゲーション画面には,起点(ノードN1)から経路の途中(ノードN3)で図中下側の経路のノードN4→ノードN5を通り終点(ノードN5)に着く第2の走行経路と,図中上側の経路(ノードN1→ノードN3→ノードN5)を通り,かつ,最短の経路長により終点(ノードN5)に着く第3の走行経路等が選定されて表示される。更に,上記ナビゲーション画面に表示された第1から第3の走行経路の各経路の図中右側には各経路の起終点間の距離,起終点間までに要する時間および費用が表示される。ナビゲーション画面に表示された第1の走行経路等から乗務員は距離等の条件を考慮しながら目的地(ノードN5)までの経路を選択するものであった。」

・「【0026】図6に表示部17のナビゲーション画面に表示される表示例の一例を示す。現在,車両が走行している現在地は図中下側の略中央であり,現在地から図中上側の略中央の二重丸印しの目的地までの経路が表示される。図中右側に実線で示す経路Aにより走行すると予想所要時間は30分であり,経路Bにより走行すると予想所要時間は22分であり,経路Cにより走行すると予想所要時間は27分である。以上の経路A?経路Cまでは,従来の車両用経路誘導装置により表示されるが,本実施例では更に,表示部17の図中左側に破線で示す走行記録が平成6年3月29日に予想所要時間が25分に対して実際の走行に要した実所要時間が32分であったことを示す。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると,まず,引用発明のような車両用経路誘導装置の分野において,道路の所定区間(リンク)は,「互いに連結し合っている幾つかの区間に分割される所定の道路網」を形成していることは技術常識であるとともに,引用発明も,道路網のある区間における通過所要時間に関する情報を処理して得た情報(最適な経路情報)を提供するものであって,道路交通情報装置の一種といえるから,後者の「車両用経路誘導装置」は前者の「道路交通情報装置」に相当し,後者の「車両の外部から受信された情報に基づき,最適な経路を搭乗者に報知する車両用経路誘導装置」と前者の「互いに連結し合っている幾つかの区間に分割される所定の道路網における行程の所要時間に関する情報を提供する道路交通情報装置」とは,「互いに連結し合っている幾つかの区間に分割される所定の道路網における道路に関する情報を提供する道路交通情報装置」との概念で共通している。
次に,本願発明の「無線メッセージ」とは,行程の基本所要時間を表すデジタル情報等を含むものであり,引用発明の「外部から受信された情報」も,道路のリンクごとの通過所要時間(リンク旅行時間)を含みビーコン等から電波で送られるものであるから,後者の「情報」及び「外部情報」は前者の「無線メッセージ」に相当し,後者の「車両用外部情報報知装置」は前者の「受信機」に相当し,後者の「外部情報を受信して報知する車両用外部情報報知装置」と前者の「無線メッセージの携帯可能な受信機」とは,「無線メッセージを受信する受信機」との概念で共通する。
また,後者の「FM多重レシーバ34とビーコンレシーバ36」は前者の「受信手段」に相当し,以下同様に,「記憶装置」は「少なくとも1つの記憶装置」に,「ここで受信した情報を記憶する記憶装置」は「受信した無線メッセージを記憶するための少なくとも1つの記憶装置」に,それぞれ相当する。
加えて,車両用経路誘導装置を制御する制御部22が,デジタルで情報を処理するエレクトロニクスの中央処理装置で構成されることは,技術常識であるから,後者の「制御部22」は前者の「エレクトロニクスの中央処理装置」及び「中央処理装置」に相当し,後者の「受信した情報を処理するための制御部22」は前者の「無線メッセージを処理するためのエレクトロニクスの中央処理装置」に相当する。
さらに,後者の「搭乗者」が前者の「利用者」に相当し,後者の「搭乗者が制御部22に指示を行う入力部28」は前者の「利用者に中央処理装置に対する指令を可能にするコマンドインターフェース」に相当する。
また,後者の「表示部26」は前者の「スクリーン」に相当し,後者の「受信した情報をもとに処理して得られた情報を搭乗者の指示で表示する表示部26」は前者の「受信された無線メッセージのうちの少なくとも幾つかから生じる情報を,コマンドインターフェースを介して利用者から入力された指示にしたがって表示するためのスクリーン」に相当する。
そして,後者の「道路のリンクごとの始点及び終点」は前者の「道路網の各区間ごとの出発点及び到達点」に相当し,後者の「位置情報」は前者の「道路網に固有な空間上の位置関係のデータ」に相当するから,後者の「道路のリンクごとの始点及び終点の位置情報」は前者の「道路網に固有な空間上の位置関係のデータであって,少なくとも前記道路網の各区間ごとの出発点及び到達点の識別を含むデータ」に相当する。
また,上記のとおり,車両用経路誘導装置がデジタルで情報を処理することは技術常識であり,引用発明における外部からの情報に含まれるリンク旅行時間もデジタルデータであることは明らかであるから,後者の「所定のリンクの通過所要時間(リンク旅行時間)を表すデータ」と前者の「いわゆる行程の基本所要時間である,道路網の各区間における行程の所要時間を表すデジタルデータ」とは,「いわゆる行程の基本所要時間である,道路網の所定の区間における行程の所要時間を表すデジタルデータ」との概念で共通する。
さらに,後者の「外部から現在の道路状況,所定の交差点間の道路(リンク)ごとの通過所要時間(リンク旅行時間)を受信」する態様は,前者の「更新された行程の基本所要時間を表すデジタル情報を少なくとも含む,所定の幾つかの無線メッセージを認知」する態様に相当し,後者の「外部から受信したリンク旅行時間の情報に応じて,記憶された当該リンクのリンク旅行時間を更新するとともに,リンク旅行時間情報のないリンクに対し,周辺のリンク旅行時間から当該リンクの旅行時間を推定して記憶」する態様と,前者の「受信されたデジタルデータに応じて,行程の基本所要時間を表す,記憶されたデジタルデータを更新」する態様とは,「受信されたデジタルデータに応じて,所定の行程の基本所要時間を表す,記憶されたデジタルデータを更新」するとの概念で共通する。
さらに,後者の「入力部28」は前者の「コマンドインターフェース」に相当するから,後者の「入力部28から搭乗者が目的地点を入力すると,現在地点から目的地点までの経路を探索」する態様と,前者の「コマンドインターフェースを用いて利用者により中央処理装置に設定された所望の出発点および到達点に応じて,所望の前記出発点と前記到達点との間において採用されるべき道路網の幾つかの区間を決定」する態様とは,「コマンドインターフェースを用いて利用者により中央処理装置に設定された所望の到達点に応じて,所定の地点と前記到達点との間において採用されるべき道路網の幾つかの区間を決定」するとの概念で共通する。
また,後者の「経路の各リンクのリンク旅行時間を合計して経路の所要時間を計算」する態様と,前者の「所望の前記出発点と前記到達点との間において採用されるべき前記幾つかの区間における前記行程の基本所要時間の総計に等しい全行程の所要時間を計算」する態様とは,「所定の地点と到達点との間において採用されるべき幾つかの区間における行程の基本所要時間の総計に等しい全行程の所要時間を計算」するとの概念で共通する。
そして,後者の「所要時間が最短のものを最適経路として経路記憶部30に記憶するとともに表示部26に表示して経路誘導を行う」態様と,前者の「スクリーン上に少なくとも全行程の所要時間を表示させ」る態様とは,「スクリーン上に所定の情報を表示する」との概念で共通する。
また,後者の「記憶された外部からの情報および受信された外部からの情報には,道路の所定のリンクごとのリンク旅行時間が含まれている」態様と,前者の「記憶されたデジタルデータおよび受信されたデジタル情報には,道路網の各区間ごとの行程の基本所要時間が含まれている」態様とは,「記憶されたデジタルデータおよび受信されたデジタル情報には,道路網の所定の区間ごとの行程の基本所要時間が含まれている」との概念で共通する。

したがって,両者は,
「互いに連結し合っている幾つかの区間に分割される所定の道路網における道路に関する情報を提供する道路交通情報装置において,該道路交通情報装置は無線メッセージを受信する受信機を有し,該無線メッセージを受信する受信機は,
・無線の情報を受信するための受信手段と,
・受信した無線の情報を記憶するための少なくとも1つの記憶装置と,
・前記無線の情報を処理するためのエレクトロニクスの中央処理装置と,
・利用者に前記中央処理装置に対する指令を可能にするコマンドインターフェースと,
・受信された無線の情報のうちの少なくとも幾つかから生じる情報を,前記コマンドインターフェースを介して利用者から入力された指示にしたがって表示するためのスクリーンと,を有し,
前記受信機の前記記憶装置には,
・当該道路網に固有な空間上の位置関係のデータであって,少なくとも前記道路網の各区間ごとの出発点及び到達点の識別を含むデータと,
・いわゆる行程の基本所要時間である,前記道路網の所定の区間における行程の所要時間を表すデジタルデータとが含まれ,
そして,前記受信機の前記中央処理装置は,
・更新された行程の基本所要時間を表すデジタル情報を少なくとも含む,所定の幾つかの無線メッセージを認知し,
・受信された前記デジタルデータに応じて,所定の行程の基本所要時間を表す,記憶された前記デジタルデータを更新し,
・そして,前記コマンドインターフェースを用いて利用者により前記中央処理装置に設定された所望の到達点に応じて,
・所定の地点と前記到達点との間において採用されるべき前記道路網の幾つかの区間を決定し,
・所定の地点と前記到達点との間において採用されるべき幾つかの区間における前記行程の基本所要時間の総計に等しい全行程の所要時間を計算し,
・そして,前記スクリーン上に所定の情報を表示させ,
前記記憶されたデジタルデータおよび前記受信されたデジタル情報には,当該道路網の所定の区間ごとの行程の基本所要時間が含まれている,道路交通情報装置。」の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
道路に関する情報を提供する道路交通情報装置に関し,本願発明は,互いに連結し合っている幾つかの区間に分割される所定の道路網における「行程の所要時間に関する情報」を提供する道路交通情報装置であるのに対し,引用発明は,車両の外部から受信された情報に基づき,「最適な経路」を搭乗者に報知する道路交通情報装置(車両用経路誘導装置)である点。

[相違点2]
無線メッセージを受信する受信機に関し,本願発明は,無線メッセージの「携帯可能な」受信機であるのに対し,引用発明は,携帯可能であることは特定されていない点。

[相違点3]
いわゆる行程の基本所要時間である,道路網の所定の区間における行程の所要時間を表すデジタルデータに関し,本願発明は,道路網の「各区間」における行程の所要時間を表すデジタルデータであるのに対し,引用発明は,道路網の「所定の区間」における行程の所要時間を表すデジタルデータであって,道路網の全ての区間を含むことは特定されていない点。

[相違点4]
受信されたデジタルデータに応じて,所定の行程の基本所要時間を表す,記憶されたデジタルデータを更新する態様に関し,本願発明は,受信されたデジタルデータに応じて,行程の基本所要時間を表す,記憶されたデジタルデータを更新するのに対し,引用発明は,外部から受信したリンク旅行時間の情報に応じて,記憶された当該リンクのリンク旅行時間を更新するとともに,リンク旅行時間情報のないリンクに対し,周辺のリンク旅行時間から当該リンクの旅行時間を推定して記憶する点。

[相違点5]
コマンドインターフェースを用いて利用者により中央処理装置に設定された所望の到達点に応じて,所定の地点と前記到達点との間において採用されるべき道路網の幾つかの区間を決定する態様に関し,本願発明は,コマンドインターフェースを用いて利用者により中央処理装置に設定された「所望の出発点」および到達点に応じて,「所望の出発点と」到達点との間において採用されるべき道路網の幾つかの区間を決定するのに対し,引用発明は,利用者により所望の到達点(目的地点)は設定されるが,出発点が設定されることは特定されておらず,「現在地点」から到達点までの経路を探索している点。

[相違点6]
所定の地点と到達点との間において採用されるべき幾つかの区間における行程の基本所要時間の総計に等しい全行程の所要時間を計算する態様に関し,本願発明は,「所望の出発点」と到達点との間において採用されるべき幾つかの区間における行程の基本所要時間の総計に等しい全行程の所要時間を計算するのに対し,引用発明は,「現在地点」から到達点(目的地点)までの経路の行程の基本所要時間(リンク旅行時間)の総計に等しい全行程の所要時間を計算するが,「所望の出発点」と到達点までの経路の全行程の所要時間を計算することは特定されていない点。

[相違点7]
スクリーン上に所定の情報を表示する態様に関し,本願発明は,スクリーン上に「少なくとも全行程の所要時間」を表示させるのに対し,引用発明は,「全行程の所要時間が最短の最適経路」を表示する点。

[相違点8]
記憶されたデジタルデータおよび受信されたデジタル情報には,当該道路網の所定の区間ごとの行程の基本所要時間が含まれている態様に関し,本願発明は,当該道路網の「各区間ごとの」行程の基本所要時間が含まれているのに対し,引用発明は,「所定の区間の」行程の基本所要時間が含まれるが,全ての区間の行程の基本所要時間が含まれることまでは特定されていない点。

4.判断
そこで,上記各相違点につき,以下検討する。
・相違点1,7について
車両用経路誘導装置のような道路交通情報装置において,道路の各リンク(本願発明の「区間」)の所要時間に基づいて,探索した所定の経路の全所要時間を計算してこれを表示することは,引用例2(【0052】,図15,16等を参照)や引用例3(【0004】,【0026】,図6,9等を参照)に記載されるように,周知技術である。
また,引用例1には,経路探索の結果得られた所定の経路について,目的地への到着時刻を表示することが記載され(【0106】,図16等を参照),出発地から目的地までに要する所要時間を表示することが示唆されているといえる。
そうすると,引用発明において,上記周知技術を採用して,相違点1及び7に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点2について
車両用経路誘導装置のような道路交通情報装置を携帯可能に構成することは,例えば原査定で引用された特開平7-120270号公報,特開平7-159193号公報等に記載されるように周知の事項である。
そして,車両用経路誘導装置のような道路交通情報装置において,限られた空間内に設置されることを考慮して,あるいは取付け・取り外しの容易性等を考慮して,車両用外部情報報知装置の小型軽量化を図ったり,携帯可能なものとすることは,必要に応じて適宜採用し得る設計事項に過ぎない。
したがって,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が適宜容易になし得る程度の事項である。

・相違点3,4,8について
本願発明における「各区間」とは,所定の道路網を構成する区間の全てを含むものと解されることから,上記相違点3,4,8を要約していえば,本願発明は,道路網の全ての各区間について行程の所要時間を記憶し,外部からの無線メッセージの情報により更新するものであるのに対し,引用発明は,道路網の区間のうち所定のものについて行程の所要時間を外部からの情報により更新するとともに,外部から行程の所要時間を取得できない区間については,その周辺の区間の行程の所要時間から推定して記憶するものである点で相違するものであるといえる。
しかし,引用発明においては,外部の情報が取得できないリンクについて,補完的に周辺のリンクの情報から推定して求めているものであり,外部から全ての区間の情報の取得可能な環境にあれば,当然に,全ての区間の行程の所要時間の情報を取得して更新することができるものであることは明らかである。
すなわち,引用発明は,道路網の行程の所要時間の情報を提供する外部環境の制約により,全ての区間の情報が得られない場合をも想定した発明であり,外部から全ての区間の行程の所要時間の情報を得られる環境にあれば,全ての区間の行程の所要時間の情報を受信して更新することが可能なのであるから,この点に関しては,装置本体の備える機能から見れば,本願発明と引用発明との間に,実質的な相違はないものである。
換言すれば,引用発明も,道路網の区間のうち,できる限り多くの区間の行程の所要時間を外部から取得することを前提とした発明ということができ,したがって,本願発明のように道路網の全ての区間の行程の所要時間を外部から取得するよう構成することについて,少なからず示唆がなされているといえる。加えて,引用例1には,なんらかの理由でリンク旅行時間の得られないリンクに対して,いくつかの方法によりリンク旅行時間を推定して用いることが記載されており,道路網の全てのリンクについてのリンク旅行時間を取得して更新することが強く示唆されている。
そして,所定の道路網の全ての区間(リンク)について,所要時間データを記憶しておくことは,例えば,引用例2(【0025】の「交通情報受信装置8が受信する広域交通情報から図6に示すような各道路毎の所要時間データテーブルを作成しておいてRAM11に格納する。」等を参照。)に記載されるように,車両用経路誘導装置等の道路交通情報装置の分野において,周知の技術である。
そうすると,引用発明において,上記周知の技術を採用して,相違点3,4,8に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点5,6について
車両用経路誘導装置のような道路交通情報装置において,探索すべき経路を設定する際に,目的地(到達点)だけでなく出発地(出発点)をも利用者が設定可能とすることは,例えば,引用例3(【0003】?【0004】等を参照)にも記載されるように常套手段である。
したがって,引用発明において,上記常套手段を採用して,相違点5,6に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の奏する効果は,引用発明,上記周知技術,上記周知の事項,上記周知の技術及び上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。
よって,本願発明は,引用発明,上記周知技術,上記周知の事項,上記周知の技術及び上記常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,上記周知技術,上記周知の事項及び上記常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-14 
結審通知日 2011-12-21 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願平10-540188
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 晋司  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 仁木 浩
藤井 昇
発明の名称 道路交通情報装置  
代理人 木越 力  
代理人 倉持 誠  
代理人 吹田 礼子  
代理人 石井 たかし  

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