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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1273651
審判番号 不服2011-25323  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-24 
確定日 2013-05-09 
事件の表示 特願2006-100563号「回胴式遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月18日出願公開、特開2007-268175号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成18年3月31日の特許出願であって、平成23年8月25日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月30日)、これに対し、平成23年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、平成24年10月16日付けで当審にて拒絶理由通知がなされ、同年12月6日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年12月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「複数種類の図柄をそれぞれ配した複数のリールを備え、各リールに対する引込み制御により前記図柄を複数の停止態様で表示可能な表示手段を有し、該表示手段に対する遊技者の始動開始操作から、前記表示手段の前記停止態様に応じて入賞及び非入賞を決定するまでを1回の遊技とする回胴式遊技機であって、
前記複数の各リールには、前記引込み制御が働く最大引き込みコマ数の各範囲内に、遊技者が保持する遊技媒体が減少する傾向にある第1の特別遊技の入賞を前記各リールの図柄の少なくとも1つが他のリールとは異なる図柄で入賞ライン上に揃うことにより成立させる特定の図柄が配され、
前記第1の特別遊技を制御する手段であって、前記特定の図柄が前記第1の特別遊技の入賞を示す特定の停止態様で前記表示手段に表示されることにより前記第1の特別遊技を作動させ、前記遊技を複数回続行することによって所定数の遊技媒体が遊技者に払い出されると当該第1の特別遊技を終了させる、第1の特別遊技制御手段と、
遊技者が保持する遊技媒体が増加する傾向にある第2の特別遊技を制御する第2の特別遊技制御手段と、
前記表示手段に所定の第1の入賞態様を表示させて前記第1の特別遊技に移行すること、及び前記表示手段に所定の第2の入賞態様を表示させて前記第2の特別遊技に移行させること、が可能な通常遊技を制御する通常遊技制御手段と、
前記第1の特別遊技中の前記遊技の回数を前記通常遊技の前記遊技の回数として計数し、前記第2の特別遊技中の前記遊技の回数を前記通常遊技の前記遊技の回数に含めないで計数する、計数手段と、
前記計数手段により計数された前記遊技の回数を前記第2の特別遊技に移行するまでに要したボーナス間ゲーム数の遊技履歴として表示する遊技履歴表示手段とを備えたことを特徴とする回胴式遊技機。」

3 刊行物について
当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-224450号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与。以下同様。)。
ア 「複数種類の図柄を表示した複数のリールと、
役の抽選を行う役抽選手段と、
複数の前記リールに対応して複数設けられ、対応する前記リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
前記ストップスイッチが操作されたときに、前記役抽選手段による役の抽選結果に基づいて、操作された前記ストップスイッチに対応する前記リールを停止制御するリール停止制御手段とを備え、
遊技状態として、第1遊技状態と第2遊技状態とを有し、
前記役抽選手段は、前記第1遊技状態のときは、遊技者にとって有利となる特別遊技に移行させるための第1特別役、及び遊技状態を前記第1遊技状態から前記第2遊技状態に移行させるための遊技状態変更役を含めて役の抽選を行うとともに、
前記第2遊技状態のときは、第1特別役を除いて役の抽選を行い、
前記リール停止制御手段は、前記第1遊技状態のときに前記役抽選手段で遊技状態変更役に当選したときは、その当選した遊技でのみ、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せが有効ラインに停止するように前記リールを停止制御するとともに、所定の操作順番で前記ストップスイッチが操作されたときは遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させないように前記リールを停止制御し、前記所定の操作順番以外の操作順番で前記ストップスイッチが操作されたときは遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止可能に前記リールを停止制御し、
前記第1遊技状態のときに前記役抽選手段で遊技状態変更役に当選し、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せが有効ラインに停止したときには、前記第2遊技状態の終了条件を満たすまで、遊技状態を前記第2遊技状態に設定するように制御する遊技状態制御手段を備え、
前記第2遊技状態では、払い出される遊技媒体数の期待値が投入される遊技媒体数を下回るように設定されており、
前記第1遊技状態のときに前記役抽選手段で第1特別役に当選し、第1特別役に対応する図柄の組合せが有効ラインに停止したときは、終了条件を満たすまで特別遊技を実行するように制御する特別遊技制御手段を備え、
特別遊技中は、払い出される遊技媒体数の期待値が投入される遊技媒体数を超えるように、特別遊技中に前記役抽選手段で抽選される役の当選確率及び役に対応する図柄の組合せが有効ラインに停止したときの遊技媒体の払出し数が設定されており、
前記第1遊技状態のときに、遊技者にとって有利な情報を報知する条件を満たしたときは、終了条件を満たすまで、遊技者にとって有利な情報を報知するように制御する報知制御手段を備え、
前記報知制御手段は、遊技者にとって有利な情報として、遊技状態変更役に当選したときに、その遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させない前記ストップスイッチの操作順番を報知するように制御することを特徴とするスロットマシン。」(【請求項1】)
イ 「【技術分野】
本発明は、遊技者にとって有利となる特別役の抽選が行われる遊技状態と、その抽選が行われない遊技状態とを設けるとともに、両遊技状態の移行及び滞在を制御することにより、出玉率の変化に富むようにしたスロットマシンに関するものである。」(段落【0001】)
ウ 「したがって、本発明が解決しようとする課題は、出玉率の設定値を変更することなく特別役の当選確率を変化させることができるようにするとともに、この技術と、上述のストップスイッチの操作順番を報知する技術とを関連づけた技術を提案することである。」(段落【0006】)
エ 「以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態におけるスロットマシン10の制御の概略を示すブロック図である。
(遊技制御手段)
スロットマシン10の遊技制御手段60は、スロットマシン10の遊技の進行や演出等を含むスロットマシン10全体を統括制御する手段であり、役の抽選、リール31の駆動制御、及び入賞時の払出し等の遊技の進行や、演出の出力等を制御するものである。遊技制御手段60は、制御基板上に設けられており、演算等を行うCPU、遊技の進行等に必要なプログラムや演出用のデータ等を記憶しておくROM、CPUが各種の制御を行うときに取り込んだデータ等を一時的に記憶しておくRAM等を備える。
(スタートスイッチ、ストップスイッチ、ベットスイッチ)
・・・
(モータ、リール)
遊技制御手段60の出力側(図1中、右側)には、以下に示すモータ32等の周辺機器が電気的に接続されている。
モータ32は、リール31を回転させるためのものであり、リール31の回転中心部に連結され、遊技制御手段60によって制御される。
リール31は、リング状のものであって、その外周面には複数種類の図柄(役に対応する図柄の組合せを構成している図柄等)を印刷したリールテープを貼付したものである。
リール31は、本実施形態では並列に3つ設けられている。また、各リール31は、スロットマシン10のフロントパネルに設けられた表示窓(図示せず)から、上下に連続する3図柄が見えるように配置されている。よって、スロットマシン10の表示窓から、合計9個の図柄が見えるように配置されている。
そして、スタートスイッチ41が操作されると、そのときに発生する信号が遊技制御手段60に入力される。遊技制御手段60は、この信号を受信すると、全てのモータ32を駆動制御して、全てのリール31を回転させるように制御する。このようにしてリール31がモータ32によって回転されることで、リール31上の図柄は、所定の速度で表示窓内で上下方向に移動表示される。」(段落【0028】?【0033】)
オ 「遊技の開始時には、遊技者は、ベットスイッチ45を操作して予め貯留されたメダルを投入するか、又はメダル投入口からメダルを投入して有効ラインを設定するとともに、スタートスイッチ41をオンする。スタートスイッチ41がオンされることで有効ライン数が確定するとともに、全リール31が始動(回転が開始)される。
そして、遊技者は各ストップスイッチ42を押すことで各リール31の回転を停止させる。全てのリール31の停止時に、有効ライン上のリール31の図柄の組合せが予め定められた何らかの役の図柄の組合せと一致し、その役の入賞となったときは、成立役に応じてメダルの払出し等が行われる。
(図柄組合せライン、有効ライン)
図示しないが、スロットマシン10の表示窓を含む部分には、図柄組合せライン(有効ライン)が設けられている。」(段落【0039】?【0041】)
カ 「(役、遊技状態及び遊技の種類)
図2は、本実施形態における役(後述する役抽選手段61で抽選される役)の種類、当選確率、及び払出し枚数等を示す図である。図2に示すように、例えば第1遊技状態の通常遊技の役としては、複数種類の特別役、遊技状態変更役、複数種類の小役、及びリプレイが設けられている。
特別役とは、通常遊技から特別遊技(通常遊技以上にメダルの獲得が期待できる、遊技者にとって有利となる遊技)に移行させる役である。本実施形態では、図2に示すように、特別役として、BB(ビックボーナス;本発明における第1特別役)、及びRB(レギュラーボーナス;本発明における第2特別役)が設けられている。なお、他の特別役として、SB(シングルボーナス)が挙げられるが、本実施形態では、BB及びRBのみが設けられており、SBは設けていない。
ここで、BBは、特別遊技の1つであるBB遊技に移行させる役であり、RBは、特別遊技の他の1つであるRB遊技に移行させる役である。
また、遊技状態変更役とは、遊技状態を第1遊技状態(後述)から第2遊技状態(後述)に移行させる役である。
さらにまた、小役とは、予め定められた枚数のメダルが払い出される役であり、本実施形態では小役1?小役3の3種類設けられている。そして、小役の種類に応じて、その役に対応する図柄の組合せ及びメダルの払出し枚数が異なるように設定されている。
さらに、リプレイとは、再遊技役であって、当該遊技で投入したメダル枚数(ベット枚数)を維持した再遊技が行えるようにした役である。」(段落【0045】?【0047】)
キ 「さらにまた、本実施形態では、遊技状態として、第1遊技状態と第2遊技状態とを有している。さらに、遊技の種類として、通常遊技(内部中又は非内部中)、特別遊技(BB遊技又はRB遊技)、特定遊技、及び停止制御変更遊技が設けられている。図3は、2つの遊技状態と、遊技の種類との関係を示す図である。
ここで、通常遊技には、非内部中及び内部中という概念が設けられている。非内部中とは、特別役(BB又はRB)に当選していない遊技中をいう。これに対し、内部中とは、当該遊技又はそれ以前の遊技において特別役(BB又はRB)に当選しているが、当選したBB又はRBに対応する図柄の組合せが有効ラインに停止していない(入賞していない)遊技中をいう。
そして、図3に示すように、第1遊技状態は、通常遊技(内部中/非内部中)及び特別遊技(BB遊技及びRB遊技)からなる。また、第1遊技状態の通常遊技中(非内部中)の役として、図2に示すように、特別役(BB及びRB)、遊技状態変更役、3種類の小役(小役1、小役2及び小役3)、及びリプレイが設けられている。さらにまた、第1遊技状態の通常遊技中(内部中)の役は、上記の非内部中の役から、特別役(BB及びRB)及び遊技状態変更役を除いた役である。
したがって、第1遊技状態の通常遊技では、上記のようにBB及びRBの抽選が行われ、BB又はRBに当選すると、非内部中の通常遊技から内部中の通常遊技となる。さらに当選したBB又はRBが入賞すると、それぞれBB遊技又はRB遊技に移行する(図3参照)。」(段落【0049】?【0051】)
ク 「また、第1遊技状態の通常遊技では、遊技状態変更役が抽選される。そして、遊技状態変更役に当選し、遊技状態変更役が入賞すると、次遊技以降、第2遊技状態の特定遊技に移行する。
第2遊技状態は、図3に示すように、特定遊技、及び停止制御変更遊技からなる。また、第2遊技状態の特定遊技中の役として、図2に示すように、特別役(RBのみ)、停止制御変更役、3種類の小役(小役1、小役2及び小役3)、及びリプレイが設けられている。
したがって、第2遊技状態の特定遊技中は、RB(BBは抽選されない)及び停止制御変更役の抽選が行われる。そして、RBに当選すると、当該遊技から第1遊技状態の通常遊技(内部中の遊技)に移行する。」(段落【0054】?【0056】)
ケ 「(操作順番選択手段)
操作順番選択手段63は、役抽選手段61による役の抽選において遊技状態変更役に当選したときに、当選した遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させないリール31の停止制御が行われるためのストップスイッチ42の操作順番を選択(決定)するものである。
ここで、左、中、右の各リール31にそれぞれ対応するストップスイッチ42を、左、中、右で表すと、ストップスイッチ42の操作順番としては、「左中右」、「左右中」、「中左右」、「中右左」、「右左中」、及び「右中左」の6通り挙げられる。
そして本実施形態では、遊技状態変更役に当選したときは、いずれか1つの操作順番を、ソフトウェア乱数を用いた抽選によって決定するとともに、決定した1つの操作順番を、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させない(入賞させない)操作順番に設定する。すなわち、それ以外の5通りの操作順番は、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させる(入賞させる)操作順番に設定する。
例えば、遊技状態変更役に当選し、当選した遊技状態変更役を入賞させない操作順番が「右左中」に決定された場合において、ストップスイッチ42が「右左中」の順番で操作されたときは、当選した遊技状態変更役に対応する図柄の組合せが有効ラインに停止しないように制御される。これに対し、それ以外の5通りの操作順番でストップスイッチ42が操作されたときは、当選した遊技状態変更役に対応する図柄の組合せが有効ラインに停止するように制御される。このように、遊技状態変更役に当選したときは、いずれか1つの入賞しないストップスイッチ42の操作順番が定められる。
(リール停止制御手段)
リール停止制御手段64は、ストップスイッチ42が操作されたときに、役抽選手段61による役の抽選結果と、ストップスイッチ42が操作されたときのタイミングと、遊技状態変更役の当選時にあってはストップスイッチ42の操作順番とに基づいて、後述の停止制御テーブル65を参照してそのストップスイッチ42に対応するリール31の停止位置を決定するとともに、モータ32を駆動制御して、その決定した位置にそのリール31を停止させるように制御するものである。
例えば、リール停止制御手段64は、いずれかの役に当選した遊技では、リール31の停止可能位置の範囲内において、当選役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させるようにリール31を停止制御するとともに、当選役以外の役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させないようにリール31を停止制御する。
(停止制御テーブル)
停止制御テーブル65は、役抽選手段61による役の抽選結果と、ストップスイッチ42が操作された瞬間のリール31の位置とから、リール31の図柄の停止位置を定めたものである。」(段落【0070】?【0075】)
コ 「さらに、停止制御変更役テーブルは、当該遊技で停止制御変更役に当選したことを条件として用いられ、リール31の停止可能位置の範囲内において停止制御変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させるとともに、停止制御変更役以外の役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させないようにリール31の停止時の図柄の組合せを定めたものである。」(段落【0085】)
サ 「ただし、ストップスイッチ42の操作順番に対応させて、停止制御テーブル65を設けること等も可能である。
本実施形態では、役抽選手段61で遊技状態変更役に当選した場合において、入賞するストップスイッチ42の操作順番と入賞しないストップスイッチ42の操作順番とを設定し、入賞する操作順番でストップスイッチ42が操作されたときは、リール31の停止可能位置の範囲内において当選した遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させ、入賞しない操作順番でストップスイッチ42が操作されたときは当選した遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止させないように、リール停止制御手段64が停止制御を行うものであれば良い。
本実施形態では、図示しないが、各リール31の外周面には21個の図柄が配列されている。一方、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せは、複数設けられている。
さらに、左、中及び右リール31には、それぞれ、遊技状態変更役を構成する図柄が、全て5図柄以内の間隔で配置されている。すなわち、第1停止制御でのリール31の停止可能位置の範囲内(ストップスイッチ42が操作された瞬間の図柄を含めて5図柄以内)の間隔で、遊技状態変更役を構成する図柄がリール31に配列されている。これにより、遊技状態変更役の当選時に、その遊技状態変更役を入賞させる操作順番でストップスイッチ42が操作されれば、常に、当選した遊技状態変更役の図柄の組合せを有効ラインに停止させるように制御することができる。
これに対し、例えば遊技状態変更役を構成する図柄を、第1停止制御でのリール31の停止可能位置の範囲内を超える間隔(例えば、6図柄間隔)で配列したときには、遊技状態変更役の当選時に、入賞可能な操作順番でストップスイッチ42が操作され、かつ遊技所状態変更役を構成する図柄を有効ラインに停止させることができる位置でストップスイッチ42が操作されなければ、当選した遊技状態変更役を構成する図柄を有効ラインに停止させることはできない。このことが、「リール31の停止可能位置の範囲内において、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せが有効ラインに停止する」という意味である。」(段落【0103】?【0105】)
シ 「(遊技状態制御手段)
遊技状態制御手段68は、第1遊技状態の通常遊技のときに、遊技状態を第1遊技状態から第2遊技状態に移行するための条件を満たすか否かを判別し、満たすと判別したときは、遊技状態を第1遊技状態(通常遊技)から第2遊技状態(特定遊技)に移行させるように制御するものである。また、遊技状態制御手段68は、第2遊技状態のとき(特定遊技及び停止制御変更遊技の双方を含む)は、遊技状態を第2遊技状態から第1遊技状態に移行するための条件を満たすか否かを判別し、満たすと判別したときは、遊技状態を第2遊技状態から第1遊技状態(通常遊技)に移行させるように制御する。さらにまた、遊技状態制御手段68は、第2遊技状態の特定遊技ときに、停止制御変更遊技を実行するための条件を満たすか否かを判別し、満たすと判別したときは、次遊技で停止制御変更遊技を実行するように制御する。
本実施形態では、遊技状態制御手段68は、第1遊技状態の通常遊技のときに遊技状態変更役に当選し、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せが有効ラインに停止したときに、遊技状態を第1遊技状態から第2遊技状態に移行するための条件を満たしたと判別する。そして、次遊技以降、遊技状態を第2遊技状態(特定遊技)に設定する。」(段落【0109】?【0110】)
ス 「本実施形態では、遊技状態制御手段68は、第2遊技状態のときに、払出し数カウント手段69によりカウントされた払出し数が所定の基準値に到達したか否かを判別し、到達したと判別したときは、遊技状態を第2遊技状態から第1遊技状態に移行させるように制御する。ここで、本実施形態における上記所定の基準値は、「253枚」である。
また本実施形態では第2に、遊技状態制御手段68は、RBに当選したときに、遊技状態を第2遊技状態から第1遊技状態に移行するための条件を満たすと判別する。そして、RBに当選したときは、当該遊技から、遊技状態を第1遊技状態(通常遊技の内部中の遊技)に設定する。
(特別遊技制御手段)
特別遊技制御手段70は、通常遊技(内部中の遊技)から特別遊技(BB遊技又はRB遊技)への移行、特別遊技中の遊技の進行、及び特別遊技の終了等を制御するものである。
先ず、特別遊技制御手段70は、有効ラインに停止した図柄の組合せが特別役(BB又はRB)に対応する図柄の組合せと一致し、特別役が入賞したことを条件として、通常遊技から特別遊技に移行するように制御する。例えば、BBの入賞時は通常遊技からBB遊技に移行し、RBの入賞時は通常遊技からRB遊技に移行するように制御する。・・・
そして、本実施形態の第2遊技は、所定役の入賞回数が規定回数(本実施形態では8回)に到達するまで、又は遊技回数が規定回数(本実施形態では12回)に到達するまで、継続される。
特別遊技制御手段70は、第2遊技での所定役の入賞回数又は遊技回数が規定回数に到達したときに、その第2遊技を終了させて、再度、第1遊技に戻るように制御する。」(段落【0116】?【0122】)
セ 「そして、第1遊技状態の通常遊技ではBBの抽選が行われる状態であり、第2遊技状態の特定遊技ではBBの抽選が行われない状態であるので、第1遊技状態の通常遊技に滞在している方が有利となる。よって、報知が行われれば、第1遊技状態に滞在し続けることができるので、BBの当選及び入賞機会を得ることができ、有利となる。
次に、第1遊技状態と第2遊技状態とでのメダルの払出し枚数の期待値を検討する。
・・・
よって、1遊技当たりのメダルの払出し枚数の期待値は、
15×1/150+15×1/700+13×1/12+8×1/100+4×1/120+3×1/7.3
≒1.729(枚)
となる。
よって、150遊技に1回の割合(1/150)でBB遊技に移行して41遊技(第1遊技と第2遊技との総遊技数)を行うとともに、700遊技に1回の割合(1/700)でRB遊技に移行して8遊技を行うものと仮定すると、BB遊技、RB遊技及び通常遊技の全てを含めた第1遊技状態におけるメダルの獲得枚数の期待値は、
1.729+478.8×1/(150+41)+120×1/(700+8)≒4.41(枚)となる。
よって、第1遊技状態では、1遊技当たりのメダルの払出し枚数の期待値(4.41枚)が、メダルの投入枚数(3枚)を超えるように設定されており、遊技者にとって有利となる。
なお、メダルの払出し枚数の期待値/メダルの投入枚数を出玉率として表すと、第1遊技状態での出玉率は、1.47(147%)となる。」(段落【0132】?【0141】)
ソ 「これに対し、第2遊技状態の特定遊技での各役ごとのメダルの払出し枚数の期待値は、
RB:15(枚)×1/700(当選確率)
停止制御変更役:0(枚)×1/100(当選確率)
小役1:13(枚)×1/12(当選確率)
小役2:8(枚)×1/100(当選確率)
小役3:4(枚)×1/120(当選確率)
リプレイ:3(枚)×1/7.3(当選確率)
となる。
なお、リプレイの入賞時は、3枚の払出しがあるものとする。また、RBの当選によって第1遊技状態に移行するが、第2遊技状態の特定遊技中にRBの抽選が行われるので、第2遊技状態の特定遊技でのメダルの払出し枚数の期待値には、RB遊技によるメダルの払出し枚数の期待値を含めるものとする。
よって、1遊技当たりのメダルの払出し枚数期待値は、
15×1/700+13×1/12+8×1/100+4×1/120+3×1/7.3
≒1.629(枚)
となる。」(段落【0142】?【0143】)
タ 「なお、第2遊技状態は、遊技者にとって不利な遊技状態であるので、遊技者に対して、第2遊技状態に滞在していることを知られないようにするのが得策である。そこで、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを、小役を構成する図柄の組合せ等によって複数種類設けておき、遊技状態変更役の入賞を気づきにくくするとともに、払出し枚数を0枚に設定すれば、第1遊技状態から第2遊技状態への移行をわかりにくくすることができる。また、第2遊技状態での、停止制御変更役の図柄の組合せや入賞時の払出し枚数も同様にすれば良い。」(段落【0150】)
チ 「以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、例えば、以下のような種々の変形が可能である。
(1)本実施形態では遊技媒体としてメダルを用いたが、例えば遊技球等、メダル以外の遊技媒体を用いるスロットマシンであっても本発明を適用することができる。」(段落【0191】)
ツ 「(3)また、本実施形態では、遊技状態変更役の入賞によって第1遊技状態から第2遊技状態に移行するように制御したが、これに限らず、例えばソフトウェア乱数を用いた抽選等により遊技状態の移行を行うように設定することも可能である。同様に、本実施形態では、RBの入賞、又はメダルの獲得枚数が所定の基準値(253枚)を超えたことを条件に第1遊技状態から第2遊技状態に移行するように制御したが、これに限らず、種々の条件を設定することができる。」(段落【0194】)
テ 「(5)本実施形態では、第2遊技状態を、停止制御変更遊技に移行可能な遊技状態に設定した。しかし、これに限らず、第2遊技状態の全ての遊技を、停止制御変更遊技に設定しても良い。ただし、この場合には、停止制御変更遊技時に入賞させることが可能な役の払出し枚数を例えば0枚又は1枚にする等して、第2遊技状態における出玉率が100%を下回るように設定する必要がある。
あるいは、第2遊技状態を、停止制御変更遊技に移行しない(停止制御変更役の抽選を行わない)遊技状態としても良い。」(段落【0196】)
ト 上記エ?オの記載事項によると、スタートスイッチ41が操作されると3つのリール31を回転させるように制御し、各ストップスイッチ42を押すことで各リール31の回転を停止させる間に行われる、当選役の入賞か否かを決定する遊技の最小単位を1遊技とすることが示されている。

上記記載事項ア?テ、上記認定事項ト及び図面の図示内容を総合勘案し、また、上記記載事項テに記載された、第2遊技状態を、停止制御変更遊技に移行しない遊技状態となるように変形した実施形態を前提にすると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「複数種類の図柄が印刷された3つのリール31が設けられ、
リール停止制御手段64により、リール31の停止可能位置の範囲内において複数種類の当選役に対応する図柄の組合せを停止させる、有効ラインが設けられた表示窓を有し、
スタートスイッチ41が操作されると3つのリール31を回転させるように制御し、各ストップスイッチ42を押すことで各リール31の回転を停止させる間に行われる、当選役の入賞か否かを決定する遊技の最小単位を1遊技とするスロットマシン10であって、
3つのリール31には、第1停止制御でのリール31の停止可能位置の範囲内である5図柄以内の間隔で、遊技状態変更役を構成する図柄が配列され、図柄の組合せを小役を構成する図柄の組合せ等によって複数種類設けておくことにより、遊技状態変更役の入賞を気づきにくくし、遊技状態変更役の当選時に、遊技状態変更役を入賞させる操作順番でストップスイッチ42が操作されれば、常に、当選した遊技状態変更役の図柄の組合せを有効ラインに停止させるように制御され、
第1遊技状態の通常遊技では、遊技状態変更役が入賞すると第2遊技状態の特定遊技に移行させ、第2遊技状態のときに、払出し数カウント手段69によりカウントされた払出し数が所定の基準値に到達したと判別したときは、遊技状態を第1遊技状態に移行させるように制御する遊技状態制御手段68と、
第2遊技状態の特定遊技は、1遊技当たりのメダルの払出し枚数期待値が1.629枚となり、メダルの投入枚数である3枚を超えないように設定され、
払い出される遊技媒体数の期待値が投入される遊技媒体数を超えるように設定されている特別遊技中の遊技の進行を制御する特別遊技制御手段70とを備え、
遊技状態制御手段68は、第1遊技状態の通常遊技では、遊技状態変更役に当選し、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止することにより入賞したときに、遊技状態を第2遊技状態の特定遊技に移行させるように制御し、
特別遊技制御手段70は、有効ラインに停止した図柄の組合せが特別役(BB又はRB)に対応する図柄の組合せと一致し、特別役が入賞したことを条件として、通常遊技から特別遊技に移行させるように制御する
スロットマシン10。」

4 対比
刊行物1に記載された発明(以下「前者」という。)と本願発明(以下「後者」という。)とを対比する。
前者の「複数種類の図柄が印刷された3つのリール31」は、その構成及び機能からみて、後者の「複数種類の図柄をそれぞれ配した複数のリール」に相当し、以下同様に、
前者の「リール停止制御手段64により、リール31の停止可能位置の範囲内において複数種類の当選役に対応する図柄の組合せを停止させる、有効ラインが設けられた表示窓」は、「停止可能位置の範囲内において」「図柄の組合せを停止させる」制御を行うことは、スロットマシンの技術分野において、一般に、「引込み制御」という用語が用いられていることから、後者の「各リールに対する引込み制御により図柄を複数の停止態様で表示可能な表示手段」に、
前者の「スタートスイッチ41が操作されると3つのリール31を回転させるように制御し、各ストップスイッチ42を押すことで各リール31の回転を停止させる間に行われる、当選役の入賞か否かを決定する遊技の最小単位を1遊技とする」ことは、後者の「表示手段に対する遊技者の始動開始操作から、表示手段の停止態様に応じて入賞及び非入賞を決定するまでを1回の遊技とする」ことに、
前者の「スロットマシン10」は、後者の「回胴式遊技機」に、
それぞれ相当する。
そして、前者の「3つのリール31には、第1停止制御でのリール31の停止可能位置の範囲内である5図柄以内の間隔で、遊技状態変更役を構成する図柄が配列され、図柄の組合せを小役を構成する図柄の組合せ等によって複数種類設けておくことにより、遊技状態変更役の入賞を気づきにくくし、遊技状態変更役の当選時に、遊技状態変更役を入賞させる操作順番でストップスイッチ42が操作されれば、常に、当選した遊技状態変更役の図柄の組合せを有効ラインに停止させるように制御され」ることと、後者の「複数の各リールには、引込み制御が働く最大引き込みコマ数の各範囲内に、遊技者が保持する遊技媒体が減少する傾向にある第1の特別遊技の入賞を各リールの図柄の少なくとも1つが他のリールとは異なる図柄で入賞ライン上に揃うことにより成立させる特定の図柄が配され」ることとを対比する。前者では、「5図柄」を「停止可能位置の範囲」とするものであるから、最大引込みコマ数は「4」に設定されているといえる。また、前者では、遊技状態変更役が入賞すると、1遊技当たりのメダルの払出し枚数期待値が1.629枚となり、メダルの投入枚数である3枚を超えないように設定される、保持するメダルを減少させる第2遊技状態の特定遊技に移行されるものである。一方、後者において、遊技者に注意を喚起させない観点から、ゾロ目でない図柄の組み合わせを採用したのである(段落【0084】)。そうすると、両者は、「複数の各リールには、引込み制御が働く最大引き込みコマ数の各範囲内に、遊技者が保持する遊技媒体が減少する傾向にある第1の特別遊技の入賞を成立させる特定の図柄が配され、特定の図柄を遊技者が気づきにくい図柄の組合せにより構成」することで共通する。
また、前者の「第1遊技状態の通常遊技では、遊技状態変更役が入賞すると第2遊技状態の特定遊技に移行させ、第2遊技状態のときに、払出し数カウント手段69によりカウントされた払出し数が所定の基準値に到達したと判別したときは、遊技状態を第1遊技状態に移行させるように制御する遊技状態制御手段68」は、その構成及び機能からみて、後者の「第1の特別遊技を制御する手段であって、特定の図柄が第1の特別遊技の入賞を示す特定の停止態様で表示手段に表示されることにより第1の特別遊技を作動させ、遊技を複数回続行することによって所定数の遊技媒体が遊技者に払い出されると第1の特別遊技を終了させる、第1の特別遊技制御手段」に相当し、以下同様に、
前者の「払い出される遊技媒体数の期待値が投入される遊技媒体数を超えるように設定されている特別遊技中の遊技の進行を制御する特別遊技制御手段70」は、後者の「遊技者が保持する遊技媒体が増加する傾向にある第2の特別遊技を制御する第2の特別遊技制御手段」に、
前者の「第1遊技状態の通常遊技では、遊技状態変更役に当選し、遊技状態変更役に対応する図柄の組合せを有効ラインに停止することにより入賞したときに、遊技状態を第2遊技状態の特定遊技に移行させるように制御する」遊技状態制御手段68と「有効ラインに停止した図柄の組合せが特別役(BB又はRB)に対応する図柄の組合せと一致し、特別役が入賞したことを条件として、通常遊技から特別遊技に移行させるように制御する」特別遊技制御手段70とを併せたものは、「遊技状態制御手段68」と「特別遊技制御手段70」とが、それぞれ「通常遊技」からの以降を制御する制御手段といえることから、後者の「表示手段に所定の第1の入賞態様を表示させて第1の特別遊技に移行すること、及び表示手段に所定の第2の入賞態様を表示させて第2の特別遊技に移行させること、が可能な通常遊技を制御する通常遊技制御手段」に、
それぞれ相当する。

したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「複数種類の図柄をそれぞれ配した複数のリールを備え、各リールに対する引込み制御により前記図柄を複数の停止態様で表示可能な表示手段を有し、該表示手段に対する遊技者の始動開始操作から、前記表示手段の前記停止態様に応じて入賞及び非入賞を決定するまでを1回の遊技とする回胴式遊技機であって、
前記複数の各リールには、前記引込み制御が働く最大引き込みコマ数の各範囲内に、遊技者が保持する遊技媒体が減少する傾向にある第1の特別遊技の入賞を成立させる特定の図柄が配され、特定の図柄を遊技者が気づきにくい図柄の組合せにより構成し、
前記第1の特別遊技を制御する手段であって、前記特定の図柄が前記第1の特別遊技の入賞を示す特定の停止態様で前記表示手段に表示されることにより前記第1の特別遊技を作動させ、前記遊技を複数回続行することによって所定数の遊技媒体が遊技者に払い出されると当該第1の特別遊技を終了させる、第1の特別遊技制御手段と、
遊技者が保持する遊技媒体が増加する傾向にある第2の特別遊技を制御する第2の特別遊技制御手段と、
前記表示手段に所定の第1の入賞態様を表示させて前記第1の特別遊技に移行すること、及び前記表示手段に所定の第2の入賞態様を表示させて前記第2の特別遊技に移行させること、が可能な通常遊技を制御する通常遊技制御手段と
を備えた回胴式遊技機。」

[相違点1]
第1の特別遊技の入賞を成立させる特定の図柄が、本願発明では、引込み制御が働く最大引き込みコマ数の各範囲内に配されるのに対して、刊行物1に記載された発明では、第1停止制御でのリール31の停止可能位置の範囲内である5図柄以内の間隔で、遊技状態変更役を構成する図柄が配列され、遊技状態変更役の当選時に、遊技状態変更役を入賞させる操作順番でストップスイッチ42が操作されれば、常に、当選した遊技状態変更役の図柄の組合せを有効ラインに停止させるように制御される点で一応相違する。

[相違点2]
第1の特別遊技の入賞を成立させる特定の図柄を遊技者が気づきにくい図柄の組合せにより構成することが、本願発明では、各リールの図柄の少なくとも1つが他のリールとは異なる図柄の組合せとすることにより達成されるのに対して、刊行物1に記載された発明では、図柄の組合せを小役を構成する図柄の組合せ等によって複数種類設けておくことにより達成する点。

[相違点3]
本願発明では、第1の特別遊技中の遊技の回数を通常遊技の遊技の回数として計数し、第2の特別遊技中の遊技の回数を通常遊技の遊技の回数に含めないで計数する計数手段と、計数手段により計数された遊技の回数を第2の特別遊技に移行するまでに要したボーナス間ゲーム数の遊技履歴として表示する遊技履歴表示手段を備えるのに対して、刊行物1に記載された発明では、当該発明特定事項を備えていない点。

5 当審の判断
(1)上記相違点1について
回胴式遊技機の技術分野において、ストップスイッチの操作順番にかかわらずに、不利な遊技状態を行うことが当選すると、遊技状態を無条件に当該不利な遊技状態に移行させることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、刊行物1の上記記載事項ツには、「ソフトウェア乱数を用いた抽選等により遊技状態の移行を行うように設定する」ことが示され、当審による拒絶の理由に提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物2:特開2004-298491号公報には、「転落移行抽選に当選した場合は、再び低確率RTモードに移行される。」(段落【0075】)ことが記載され、同じく、当審による拒絶の理由に提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物3:特開2004-188098号公報には、「転落抽選に当選すると、高確率モードから低確率モードに転落する。」(段落【0062】)ことが記載され、同じく、当審による拒絶の理由に提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物4:特開2004-105547号公報には、「RT移行抽選の抽選状態を高確率状態から低確率状態に移行させるか否かが抽選により決定される。」(段落【0049】)ことが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)。
してみると、刊行物1に記載された発明において、遊技状態変更役の当選時における、第1遊技状態の通常遊技から第2遊技状態の特定遊技への移行に際し、ストップスイッチ42の操作順番に係わらずに、上記周知の技術事項1に倣って、遊技状態変更役の当選時に遊技状態変更役が揃うようにすることにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項に到達することは当業者が容易になし得たものである。

(2)上記相違点2について
同じく、回胴式遊技機の技術分野において、所定の状態へ移行させる契機となる役の図柄組合せとして、各リールの図柄の少なくとも1つが他のリールとは異なる図柄の組合せを用いることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物5:特開2005-230527号公報には、SCG状態の発生の契機となる図柄組合せとして(Replay-Replay-ベル)(段落【0032】、【0049】、【0205】)や「ベル-Replay-ベル」(【図27】)を用いること、SRB状態の発生の契機となる図柄組合せとして「ベル-ベル-Replay」(段落【0240】、【図27】)を用いることが記載され、同じく、当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物6:センチュリー21、パチスロ必勝ガイド1、日本、株式会社白夜書房、1991年1月1日、第2巻1号の第41ページの一段目に示された表が示され、同じく、当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物7:クラッシュバンディクー、パチスロ攻略マガジンドラゴン 2006年4月号、日本、株式会社 双葉社、2006年3月21日、第5巻4号通巻72号の第24ページの「役の構成」に関する表が示され、同じく、当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物8:キングキャメル、パチスロ攻略マガジン2003年11月号、日本、株式会社双葉社、2003年11月1日、第12巻20号通巻196号、5ページの「上部リール上の役の構成」に関する表が示されている。以下「周知の技術事項2」という。)。
そして、役の入賞を成立させる図柄組合せとして、同一の図柄が揃う、いわゆる、「ゾロ目」図柄を採用すると、遊技者にとって図柄が揃ったことを認識しやすくなることは、回胴式遊技機の技術分野において、当業者に広く知られている技術事項であり、逆に、役の入賞を成立させる図柄組合せとして、各リールの図柄の少なくとも1つが他のリールとは異なる図柄の組合せを採用すれば、役の入賞を気づきにくくできることも、また、当業者に広く知られている技術事項である。
してみると、刊行物1に記載された発明において、遊技状態変更役の入賞を遊技者に気づきにくくするために、遊技状態変更役の図柄組合せとして上記周知の技術事項2を採用して、各リールの図柄の少なくとも1つが他のリールとは異なる図柄の組合せを用いることにより上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項に到達することは当業者が容易になし得たものである。

(3)上記相違点3について
遊技者に対して、ボーナス間ゲーム数の遊技履歴を表示することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物9:特開2002-808号公報の段落【0176】?【0180】、【図32】や、同じく、刊行物10:特開2004-105348号公報の段落【0021】?【0022】、【0030】、【図7】?【図9】を参照。以下「周知の技術事項3」という。)。
ここで、刊行物1に記載された発明において、ボーナスゲームである特別遊技の間に行われるゲームには、通常遊技と特定遊技とがある。
そうすると、刊行物1に記載された発明において、ボーナス間ゲーム数として計数できる対象には、通常遊技回数と特定遊技回数とがある。
そして、通常遊技と特定遊技とは、ボーナスゲームとは異なり、遊技価値を減少させるゲームである点で共通する。
また、ボーナス間ゲーム数の履歴を表示するに際して、ボーナス間に行われる複数のゲームを種類別に計数して個別に履歴表示するか、複数のゲームを併せて計数して履歴表示するかは当業者が必要に応じて決定し得たものである。
さらに、「ボーナス間ゲーム数」という語句の意味するところからみて、ボーナスゲームとボーナスゲームとの間に実行されるゲーム数を連続して全てカウントする意味も含まれる。
してみると、刊行物1に記載された発明に、上記周知の技術事項3を適用するに際して、ボーナス間ゲーム数として、性質を同じくする特定遊技回数を通常遊技回数に含めて、ボーナス間ゲーム数として連続して計数し、上記相違点3に係る本願発明が具備する発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。

(4)小括
本願発明の奏する効果についてみても、刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-07 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2006-100563(P2006-100563)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 瀬津 太朗
木村 史郎
発明の名称 回胴式遊技機  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  

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