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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1273653
審判番号 不服2011-26962  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-13 
確定日 2013-05-09 
事件の表示 特願2006-140765「インターホンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月29日出願公開、特開2007-312241〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成18年5月19日の出願であって、平成23年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月13日に審判請求がなされたものであり、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年3月28日付け手続補正書で補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
住戸の屋外に設置されるドアホン子器と、携帯電話事業者の携帯電話網を介して通話する携帯電話機能並びに前記携帯電話網を介さずに無線通信する無線通信機能を有する携帯電話端末に対して、ドアホン子器と携帯電話端末の無線通信機能とをインタフェースする無線インタフェース装置とを備え、無線インタフェース装置を介して携帯電話端末とドアホン子器との間で音声信号を授受するインターホンシステムであって、無線インタフェース装置は、ドアホン子器及び携帯電話端末と別体に構成されるとともに無線LANに関する規格に準拠してドアホン子器と携帯電話端末の無線通信機能とをインタフェースするものであり、無線インタフェース装置と無線通信してドアホン子器との間でドアホン通話を可能とする通話装置を備えることを特徴とするインターホンシステム。」

2.引用発明
これに対して、原審の平成23年2月4日付け拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2005-51468号公報(以下、「引用例」という。)には、「ドアホンシステム及び信号送受信方法、並びにドアホン親装置及びドアホン子装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、来訪者と面会者との対話を可能とするとともに当該来訪者の映像を当該面会者が視認可能とするドアホンシステム及びこのドアホンシステムに適用される信号送受信方法、並びにドアホンシステムにおける親機としてのドアホン親装置及びドアホンシステムにおける子機としてのドアホン子装置に関する。」(3頁43行-48行,段落1)

ロ.「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1及び特許文献2をはじめとする従来のドアホンシステムのように、有線ケーブルを介して信号の伝送を行うドアホンシステムにおいては、配線の際に物理的な工事を行う必要がある、という回避不可能な問題があり、この問題は、既設装置の代替を行う際の大きなネックとなっている。
【0008】
また、有線ケーブルを介して信号の伝送を行うドアホンシステムにおいては、配線を行うために、建物等の隔壁に孔を穿設し、当該孔を介してケーブルを連通する必要があることから、例えば、クリーンルーム、放射線遮蔽壁、気密室等に対して設置することは困難であるという問題もあった。
【0009】
さらに、有線ケーブルを介して信号の伝送を行うドアホンシステムにおいては、上述した物理的な工事に関連する問題の他、有線ケーブルを介して電気的に親機と子機とを接続することから、伝送路の両端において絶縁対策や雑音対策を施す必要がある、という問題がある。すなわち、有線ケーブルを介して信号の伝送を行うドアホンシステムにおいては、これら絶縁対策や雑音対策を施さない場合には、屋内に設置された親機と屋外に設置された子機とで映像信号や音声信号の伝送を行う際に、屋内の機器に落雷等による感電や雑音といった電気的影響を及ぼす可能性があった。
【0010】(略)
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、親機と子機とを無線を介して接続した場合であっても、映像信号及び音声信号の実時間伝送を行う・・・(中略)・・・ことができるドアホンシステム及びこのドアホンシステムに適用される信号送受信方法、並びにドアホンシステムにおける親機としてのドアホン親装置及びドアホンシステムにおける子機としてのドアホン子装置を提供することを目的とする。」(4頁24行-5頁7行,段落7-11)

ハ.「【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
この実施の形態は、来訪者と面会者との対話を可能とするとともに当該来訪者の映像を当該面会者が視認可能とするドアホンシステムである。このドアホンシステムは、居室等の屋内に設置された親機と玄関先等の屋外に設置された子機との間で映像信号及び音声信号を伝送する際に、所定の近距離無線通信方式を用いて情報の授受を行うものである。
【0028】
なお、この近距離無線通信方式としては、いわゆるブルートゥース(Bluetooth(登録商標))を適用することが好適である。したがって、以下では、親機と子機との間でブルートゥースに準拠した無線通信を行うものとして説明する。
【0029】
ドアホンシステムは、図1に示すように、玄関先等の屋外に設置された子機10と、居室等の屋内に設置された親機20とを備える。
【0030】
子機10は、来訪者VSに対するユーザインターフェースとして設置されるものであり、少なくとも、当該来訪者VSを撮像する撮像手段であるカメラ11と、当該来訪者VSが発話する音声を取り込む子機用音声取り込み手段であるマイク12と、親機20から伝送された音声を出力する子機用音声出力手段であるスピーカ13と、映像信号及び音声信号に対して所定の信号処理を施す子機用信号処理手段である信号処理回路14と、ブルートゥースに準拠したプロトコルにしたがって映像信号及び音声信号の送受信を行う子機用通信手段であるブルートゥース・モジュール15とを有する。
【0031】(略)?【0034】
【0035】
ブルートゥース・モジュール15は、電波を授受するためのアンテナ16に接続されており、信号処理回路14から供給されたベースバンドの映像信号及び音声信号をRF(Radio Frequency)信号に変換した上でアンテナ16を介して送信するとともに、アンテナ16を介して親機20から受信したRF信号をベースバンドの音声信号に変換した上で信号処理回路14に供給する。このとき、ブルートゥース・モジュール15は、詳細は後述するが、少なくとも音声信号については、ブルートゥースで規定されているいわゆるSCO(Synchronous Connection Oriented link;同期コネクション指向リンク)チャネルを用いて送受信する一方で、映像信号については、SCOチャネル又はブルートゥースで規定されているいわゆるACL(Asynchronous Connection Less link;非同期コネクションレスリンク)チャネルを用いて送受信する。
【0036】
一方、親機20は、居住者RSに対するユーザインターフェースとして設置されるものであり、少なくとも、ブルートゥースに準拠したプロトコルにしたがって映像信号及び音声信号の送受信を行う親機用通信手段であるブルートゥース・モジュール22と、映像信号及び音声信号に対して所定の信号処理を施す親機用信号処理手段である信号処理回路23と、子機10から伝送された来訪者VSの映像を表示する表示手段であるモニタ24と、当該居住者RSが発話する音声を取り込む親機用音声取り込み手段であるマイク25と、子機10から伝送された音声を出力する親機用音声出力手段であるスピーカ26とを有する。」(7頁19行-8頁40行,段落26-36)

ニ.「【0042】
このような子機10と親機20とを備えるドアホンシステムにおいては、子機10に対面した来訪者VSが図示しない所定の呼出ボタンを押下すると、この呼出があった旨を示す制御信号が、当該子機10から親機20に対して送信される。このとき、子機10は、上述したSCOチャネルを用いて制御信号を送信する。また、ドアホンシステムにおいては、呼出ボタンの押下に応じて、子機10におけるカメラ11、マイク12、及びスピーカ13が起動され、来訪者VSの映像及び音声を取り込み可能な動作状態に移行し、得られた来訪者VSの映像信号及び音声信号が親機20に対して送信される。
【0043】
一方、ドアホンシステムにおいて、親機20は、子機10から送信された制御信号を受信すると、所定のチャイムを鳴らすことによって居住者RSに来訪者VSの存在を知らしめるとともに、モニタ24、マイク25、及びスピーカ26が起動され、子機10から送信された映像信号に基づく映像をモニタ24に表示し、且つ同じく子機10から送信された音声信号に基づく音声をスピーカ26から出力する。そして、ドアホンシステムにおいては、親機20におけるマイク25を介して入力された居住者RSの音声信号が子機10に対して送信され、子機10におけるスピーカ13から出力される。」(9頁25行-40行,段落42、43)

ホ.「【0055】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、ブルートゥースを用いた無線通信を行うものとして説明したが、本発明は、少なくとも音声信号を帯域保証された同期転送通信路を用いて送受信することができる無線通信方式であれば、ブルートゥース以外の任意の技術を適用することができる。」(11頁17行-21行,段落55)

ヘ.「【0056】
また、上述した実施の形態では、1台の子機10と1台の親機20とを接続するものとして説明したが、本発明は、親機を増設した場合にも容易に拡張することができる。」(11頁22行-24行,段落56)

ト.「【0058】
さらに、近年のブルートゥースによる通信機能を備えた携帯電話機や携帯情報端末機(Personal Digital Assistants;PDA)等の開発を鑑みて、本発明は、親機を屋内に据え置きするのではなく、これら携帯型の機器に適用することにより、より利便を向上させたシステムの構築を図ることが可能となると思われる。」(11頁34行-38行,段落58)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記ハ.段落【0028】-【0030】には、玄関先等の屋外に設置された子機10と、ブルートゥースによる通信機能を有する親機20からなるドアホンシステムが記載され、また、上記ト.段落【0058】には、親機20を屋内に据え置きするのではなく携帯電話機に適用した実施形態が記載されている。
上記実施形態によれば、引用例には、玄関先等の屋外に設置された子機10と、ブルートゥースによる通信機能を有する携帯電話機とからなるドアホンシステムが記載されているものといえる。
上記ハ.段落【0030】には、子機10に、映像信号及び音声信号の送受信を行う子機用通信手段であるブルートゥース・モジュール15を備えることが記載されている。

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「玄関先等の屋外に設置された子機10と、ブルートゥースによる通信機能を有する携帯電話機とからなるドアホンシステムであって、
前記子機10は、前記ブルートゥースによる通信機能を有する携帯電話機との間で映像信号及び音声信号の送受信を行う子機用通信手段であるブルートゥース・モジュール15を備えたドアホンシステム。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「子機10」は、玄関先等の屋外に設置されるものであるから、本願発明の住戸の屋外に設置される「ドアホン子器」に相当する。
引用発明の「携帯電話機」が有する「ブルートゥースによる通信機能」は、「携帯電話網を介さずに無線通信する無線通信機能」といえ、また、携帯電話機が携帯電話事業者の携帯電話網を介して通話する携帯電話機能を有することは技術常識であるから、引用発明の「携帯電話機」は、本願発明の携帯電話事業者の携帯電話網を介して通話する携帯電話機能並びに前記携帯電話網を介さずに無線通信する「携帯電話端末」に相当する。
引用発明の「ブルートゥース・モジュール15」は、ブルートゥースによる通信機能を有する携帯電話機との間で映像信号及び音声信号の送受信を行うものであり、ドアホン子器と携帯電話端末の無線通信機能とをインタフェースするものといえるから、本願発明の無線インタフェース装置が、「無線LANに関する規格に準拠してドアホン子器と携帯電話端末の無線通信機能とをインタフェースするもの」であり、また同装置が、「ドアホン子器及び携帯電話端末と別体に構成される」点は別にして、「ドアホン子器と携帯電話端末の無線通信機能とをインタフェースする」点で本願発明の「無線インタフェース装置」と一致する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「住戸の屋外に設置されるドアホン子器と、携帯電話事業者の携帯電話網を介して通話する携帯電話機能並びに前記携帯電話網を介さずに無線通信する無線通信機能を有する携帯電話端末に対して、ドアホン子器と携帯電話端末の無線通信機能とをインタフェースする無線インタフェース装置とを備え、無線インタフェース装置を介して携帯電話端末とドアホン子器との間で音声信号を授受するインターホンシステム。」

(相違点)
(1)無線インタフェース装置が、本願発明では、「無線LANに関する規格に準拠してドアホン子器と携帯電話端末の無線通信機能とをインタフェースするもの」であるのに対して、引用発明では、ブルートゥース・モジュールである点。
(2)無線インタフェース装置に関し、本願発明では、「ドアホン子器及び携帯電話端末と別体に構成される」のに対して、引用発明では、別体であるかどうか不明である点。
(3)本願発明では、「無線インタフェース装置と無線通信してドアホン子器との間でドアホン通話を可能とする通話装置を備える」のに対して、引用発明は、そのような通話装置について明示しない点。

そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。
携帯電話機にブルートゥースや無線LANに関する規格に準拠した無線インタフェース装置を搭載して周辺機器との間で近距離無線通信を行うこと、そして、これらのブルートゥースと無線LANが代替可能なものであることは、例えば、特開2003-345452号公報(例えば、段落【0025】、【0033】の記載参照。以下、「周知例1」という。)、特開2006-74538号公報(例えば、段落【0016】-【0018】の記載参照。以下、「周知例2」という。)、及び、特開2004-336267号公報(例えば、段落【0044】-【0045】、【0125】の記載参照。以下、「周知例3」という。)に記載されているように周知である。
上記周知のブルートゥースや無線LANは、複数の無線装置間の近距離無線通信を行う技術として広く使用されていること、上記周知例3にはインターホシステムへの適用についても記載されていること、また、引用例の上記摘記事項ホ.の段落【0055】には、「上述した実施の形態では、ブルートゥースを用いた無線通信を行うものとして説明したが、本発明は、少なくとも音声信号を帯域保証された同期転送通信路を用いて送受信することができる無線通信方式であれば、ブルートゥース以外の任意の技術を適用することができる。」と記載されていること、等に照らすと、当業者であれば、上記周知例1ないし周知例3に記載された周知技術を引用発明に適用して、携帯電話機に備える無線通信機能をブルートゥースに代えて無線LANとし、それに合わせて、携帯電話端末の通信機能をインタフェースする無線インタフェース装置を「無線LANに関する規格に準拠してドアホン子器と携帯電話端末の無線通信機能とをインタフェースするもの」とすること、即ち、相違点1に係る構成とすることを容易に想到するものである。

次に、相違点2について検討する。
インターホンシステムにおいて、ワイヤレス中継器、中継アダプタ装置、無線LANカード等の無線インターフェース装置を、ドアホン子機及び親機と別体に構成することは、例えば、特開2002-199110号公報(例えば、段落【0024】-【0025】、【図5】の記載参照。以下、「周知例4」という。)、特開2002-199113号公報(例えば、段落【0038】-【0040】、【図1】の記載参照。以下、「周知例5」という。)、特開2004-304551号公報(例えば、段落【0051】、【0059】、【図6】、【図7】の記載参照。以下、「周知例6」という。)に記載されているように周知である。
ここで、引用発明はドアホンシステムであり、周知例4ないし周知例6と同じ技術分野に属するから、周知例4ないし周知例6に記載の上記周知技術を引用発明に適用して、無線インターフェース装置をドアホン子機及び親機と別体に構成することは、当業者であれば容易に想到するものである。

最後に、相違点3について検討する。
引用例の上記摘記事項ヘ.の段落【0056】には、「また、上述した実施の形態では、1台の子機10と1台の親機20とを接続するものとして説明したが、本発明は、親機を増設した場合にも容易に拡張することができる。」と記載されている。ここで、増設される親機20は、無線インタフェース装置であるブルートゥース・モジュールを介して子機10と音声信号を授受するものであって本願発明の「通話装置」に相当するから、同段落では、「通話装置」の増設を示唆しているものといえる。
したがって、引用発明において、子機10と無線インタフェース装置を介して音声信号を授受する通話手段として、携帯電話機に加えて通話装置を増設すること、即ち相違点3に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到するものである。

このように、各相違点は格別なものでなく、そして、本願発明の効果も引用発明及び上記各周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び上記各周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-08 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2006-140765(P2006-140765)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山岸 登  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 山中 実
矢島 伸一
発明の名称 インターホンシステム  
代理人 北出 英敏  
代理人 西川 惠清  
代理人 水尻 勝久  
代理人 坂口 武  

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