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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B |
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管理番号 | 1273673 |
審判番号 | 不服2012-13996 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-23 |
確定日 | 2013-05-09 |
事件の表示 | 特願2006-345831「流動体の充填方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年7月10日出願公開、特開2008-155942〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成18年12月22日の出願であって、平成24年4月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年7月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に明細書の段落0064を対象とする手続補正がなされたものである。 2.本願発明 平成24年7月23日付けの手続補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、本願の請求項1ないし11に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項によって特定される発明と認める。その請求項1の記載は、次のとおりである。(以下、請求項1に記載された事項によって特定される発明を「本願発明」という。) 《本願発明》 口部に雄ネジを有するボトルを連続走行させつつ流動体を充填し、次に、キャップの雌ネジを上記口部の雄ネジと螺合させてボトルのヘッドスペースを閉じる流動体の充填方法において、上記流動体の充填後にボトルのヘッドスペース内に液化不活性ガスを滴下し、しかる後、上記キャップを上記ボトルの口部に被せて所定角度だけねじって上記雌雄ネジを不完全に螺合させたままボトルと共に所定時間だけ走行させ、しかる後にキャップを閉じ切ることを特徴とする流動体の充填方法。 3.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2001-505513号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。 ア「本発明は容器の充填閉鎖方法に関する。……また、本発明の目的とすることは、当該缶内の酸素含有量が大いに低減するように該缶を充填閉鎖することにある。」(3頁3?7行) イ「上記目的に関して、本発明は、次の工程から構成される、容器の充填閉鎖方法を提供するものである: (a)開放容器を準備し、該容器の開口が頂部に位置するように配置し; (b)上記開放容器に、例えば、食物とか飲料材等の包装物を、該容器の開口と充填物の表面間に隙間が残るように装填し; (c)上記隙間に選定した滅菌液体窒素を装入し; (d)上記容器の開口縁部に緩く蓋体を配置するとともに上記開口縁部に上記蓋体を緩く配置した状態を所定時間保持し;及び (e)上記容器の開口縁部に上記蓋体の周縁部を密封状に結合する。」(3頁8?16行) ウ「従来知られている方法とは違って、缶に装填された液体窒素は、その煮沸蒸発時に、当該缶の開口縁部とそこに緩く配置された蓋体間に当該ガス流によって部分的に生じた隙間を通して外部に、確実に、流出するようにされる。これにより周辺部の細菌による細菌性汚染を有効に防止することができる。缶へアクセスするこれらの細菌は、上記ガス流により吹き飛ばされる。十分な量の液体窒素を利用することにより、容器に初めから存在する空気は、当該窒素の蒸発により有効に排出される。これにより、缶内の酸素含有量が有効に低減する。これは、特に、酸素による食材の酸化を防止する観点から、非常に好ましいものである。」(3頁17?24行) エ「本発明の非常に実用的な実施例、特に、自動操作式装置とされるものでは、上記選定された所定の時間間隔は、容器が工程(d)の実行ステーションから工程(e)の実行ステーションまで移送される時間に対応するという特徴を有する。」(4頁1?3行) オ「図1は、容器を充填閉鎖するための、従来方式の代表的な1例を示す、概略説明図であり、図2は、上記図1に対応する、本発明方法の概略説明図である。 図1は、(図示しない)底部及び起立本体部から構成される、金属容器1を示す。この容器は、その頂部に、開口縁部3とともに開口2を有する。矢印4にしたがって移送された後、上記缶1に、矢印5をもって示されるように、食品6の充填が行われる。明示されるように、上記食品の表面と上記開口3間に、隙間7が設けられる。更に、移送された後、分配器具7を介して所定量(例えば、数滴)の液体窒素8が上記表面6に滴下される。この窒素の温度は概略-200℃とされるとともに、常態において当該液体が沸騰する状態とされ、これにより迅速に蒸発しながらガス状窒素の放出を行う。 積み重ねられた蓋体10から成るスタック9から、1つの蓋体が、概略的に図示する継ぎ目折り畳み器具12の回転操作11により、開口縁部3に接合して封止される。このようにして充填された容器内に発生された圧力は、例えば、当該充填容器全体の剛性に寄与するが、外部からの細菌の侵入をいささかも防止しないばかりか、酸素を排出することに寄与しないことが明らかである。分配器具7と継ぎ目折り畳み器具12間の移送にはある程度の時間が掛かり、この期間中に問題の危険が発生することとなることに注意しなければならない。」(4頁17行?5頁5行) カ「図1と違って、図2は、蓋体10が開口縁部3に緩く仮止めされ、このようにして蓋体10が緩く取付けられた後に、隙間7内の窒素ガス圧により部分的に形成された間隙14を介して矢印14で示されるように、窒素ガスを逃すようにした方式を示す。ここでは、細菌性汚染が有効に防止され、上記隙間7に存在する空気、それに含まれる酸素が排出される。選定された所定時間だけが経過した後、図2の最後の段階に示される、継ぎ目折り畳み作業が行なわれる。」(5頁6?11行) キ「本発明は、勿論、実施例としての金属容器及び/又は缶に限定されないことに注意されなければならない。例えば、ねじ付蓋体を備えたガラス容器とか、それと同類のものも、本発明の範囲内のものである。」(5頁11?14行) ク「本発明によれば、窒素の一部分は、とにかく蒸発するが、細菌性汚染を防止するとともに酸素を排出するのに有効なガス流を発生する。 最後に、図2の方法が実施される装置において、蓋体が緩く取付けられるステーションと上記蓋体が所定位置に継ぎ目を折り畳まれるステーションとの間隔は、矢印4のように移送される速度と見合わせて所望に選定された時間に対応するものとし、これにより液体窒素が所定の作用を行うようにされる。」(5頁17?22行) これら記載事項及び図1、図2からみて引用例に開示されている発明を、本願発明に即して整理すれば、引用例には、次の発明が記載されているといえる。(以下、「引用発明」という。) 《引用発明》 ねじ付蓋体を備えた容器を移送しつつ飲料材を充填し、次に、蓋体を密封状に結合する充填方法において、上記食品の充填後に容器の開口と充填物の表面間の隙間に液体窒素を滴下し、しかる後、蓋体が開口縁部に緩く仮止めされたまま容器と共に所定時間だけ移送させ、しかる後に蓋体を密封状に結合する飲料材の充填方法。 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ねじ付蓋体」は本願発明の「キャップ」に相当し、同様に、 「ねじ付蓋体を備えた容器」は「口部に雄ネジを有するボトル」に、 「移送」は「走行」に、 「飲料材」は「流動体」に、 「蓋体を密封状に結合する」は「キャップを閉じ切る」に、 「開口と充填物の表面間の隙間」は「ヘッドスペース」に、 「液体窒素」は「液化不活性ガス」に、 それぞれ相当する。 ねじ付蓋体を備えた容器では、例えば、本願明細書段落0005に特許文献1として示された特開2001-31010号公報に図示されているように、通常、容器の口部側のネジを雄ネジとし、蓋側のネジを雌ネジとするものであることを考慮すれば、引用発明の「蓋体を密封状に結合する」は、本願発明の「キャップの雌ネジを上記口部の雄ネジと螺合させてボトルのヘッドスペースを閉じる」にも相当する。 引用発明の「蓋体が開口縁部に緩く仮止めされ」と、本願発明の「上記キャップを上記ボトルの口部に被せて所定角度だけねじって上記雌雄ネジを不完全に螺合させ」とは、いずれも、隙間(ヘッドスペース)から、容器外部へガスを逃がすこと(排出)ができるように、蓋(キャップ)と容器(ボトル)との間に、間隙が生じるように仮止めした状態を意味するので、両者は、蓋体が開口縁部に緩く仮止めされる限りにおいて相当する。 そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 《一致点》 口部に雄ネジを有するボトルを走行させつつ流動体を充填し、次に、蓋体を密封状に結合する流動体の充填方法において、上記流動体の充填後にボトルのヘッドスペース内に液化不活性ガスを滴下し、しかる後、蓋体が開口縁部に緩く仮止めされたままボトルと共に所定時間だけ走行させ、しかる後に蓋体を密封状に結合する流動体の充填方法。 《相違点1》 本願発明は、ボトルを連続走行させつつ流動体を充填するのに対し、引用発明は、容器の移送が連続走行であると特定されていない点。 《相違点2》 本願発明は、キャップをボトルの口部に被せて所定角度だけねじって雌雄ネジを不完全に螺合させるのに対し、引用発明は、蓋体が開口縁部に緩く仮止めされるが、所定角度だけねじって雌雄ネジを不完全に螺合させるとは特定されていない点。 5.相違点の検討 《相違点1について》 ボトルを連続走行させつつ流動体を充填し、さらにキャップの装着及びキャップ締めを行うことは、周知の技術的事項である。引用発明にこの周知の技術的事項を適用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に推考し得たことである。 《相違点2について》 合成樹脂製のボトル及びキャップは、例えば前記特開2001-31010号公報の段落0011に記載されており、周知の技術的事項であるから、引用発明のねじ付蓋体及び容器として、合成樹脂製のボトル及びキャップを採用することは、当業者が直ちになし得たことである。このような周知の合成樹脂製のキャップは軽量であるので、引用発明の「開口縁部に緩く仮止め」した状態が、「容器に単に乗せるだけ」(審判請求書(3)c)(同書5頁下から8?4行)であれば、「所定時間だけ移送」させる際の振動や、滴下された液体窒素が沸騰し、迅速に蒸発しながらガス状窒素の放出することによる窒素ガス圧(上記3.オ、カを参照)により、移送中に容器から脱落する虞があることが、当業者に自明である。 そうすると、引用例には、「開口縁部に緩く仮止め」した状態において、「所定時間だけ移送」させる際の振動や、滴下された液体窒素が沸騰し、迅速に蒸発しながらガス状窒素の放出することによる窒素ガス圧により、移送中に容器から脱落する問題を解決する必要性が示唆されているといえる。 一方、合成樹脂製のボトル及びキャップを有する容器に、流動物を充填し、さらにキャップの装着及びキャップ締めを行う際に、キャップをボトルの口部に被せて所定角度だけねじって雌雄ネジを不完全に螺合させたままボトルと共に走行させることが、例えば、平成24年11月21日付け審尋に引用した特開2005-41496号公報や特開平10-45197号公報に記載されており、周知の技術的事項である。 そうすると、引用発明のねじ付蓋体及び容器として、合成樹脂製のボトル及びキャップを採用した際に、「開口縁部に緩く仮止め」したキャップが移送中に容器から脱落する問題を解決するため、「開口縁部に緩く仮止め」した状態を「キャップをボトルの口部に被せて所定角度だけねじって雌雄ネジを不完全に螺合させた」状態とすることは、周知の合成樹脂製のボトル及びキャップを採用することに伴って当業者が適宜行うべき単なる設計変更であり、当業者が容易に推考し得たことである。 そして、本願発明が奏する効果も、引用発明及び周知の技術的事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 原査定は妥当である。よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-03-11 |
結審通知日 | 2013-03-12 |
審決日 | 2013-03-25 |
出願番号 | 特願2006-345831(P2006-345831) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 裕一 |
特許庁審判長 |
栗林 敏彦 |
特許庁審判官 |
千葉 成就 鳥居 稔 |
発明の名称 | 流動体の充填方法及び装置 |
代理人 | 石川 泰男 |