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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01T
管理番号 1273675
審判番号 不服2012-15407  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-08 
確定日 2013-05-09 
事件の表示 特願2007-165253号「イオン生成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月 8日出願公開、特開2009- 4260号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年6月22日の出願であって、平成24年4月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年8月8日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、同時に手続補正(前置補正)がなされたものである。

2.平成24年8月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年8月8日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
放電電極に高電圧を印加することによって該放電電極からコロナ放電を発生させ、そのコロナ放電により空気イオンを生成するイオン生成装置において、
前記放電電極に印加する高電圧を出力する高圧電源回路と、
該高圧電源回路から前記放電電極に高電圧を印加したときに前記コロナ放電とは別に発生する微放電に応じた検出信号を発生する微放電検出手段と、
該微放電検出手段からの検出信号に基づいて微放電と判定したときに警報信号を出力する微放電判定手段とを備え、
前記高圧電源回路は、一次巻線及び二次巻線を有する巻線トランスと、その一次巻線に印加する複数のパルス列電圧を出力するパルス列出力回路とを備え、該パルス列出力回路は、第1、第2のスイッチ素子を直列に接続してなる第1の直列回路と第3、第4のスイッチ素子を直列に接続してなる第2の直列回路とを並列に接続してなる並列回路で構成されることを特徴とするイオン生成装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について上記下線部記載のように限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)原査定の拒絶の理由に引用した文献等の記載
本願の出願前に頒布され、原審において刊行物1として引用された特開2006-107778号公報(以下「引用例1」という。)には、放電電極に電圧を印加してコロナ放電させることで正負の空気イオンを生成する除電装置に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、イオン生成室内には、例えば水分、油分や金属片などの不純物が混在し、これらがイオン生成室内の内壁面に付着することがあり、これに伴って、イオン生成室の内壁の絶縁性が徐々に低下し、リーク放電が生じるおそれがある。そうすると、上記電流測定用の抵抗に基づき測定される電圧レベルは、リーク放電により発生するリーク電流の影響を受けるため、この電流測定用の抵抗に基づく電圧レベルから正規のイオン生成量を検出することができなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、リーク放電異常を検出することが可能な除電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る除電装置は、放電針と、前記放電針を収容するとともに、当該放電針を覆う内壁面が絶縁性の材質で構成されたイオン生成室と、前記放電針に電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、前記放電針への電圧印加によってコロナ放電を生じさせることでイオンを発生して除電対象物の除電を行う除電装置において、前記イオン生成室の内壁面における絶縁抵抗値を測定する抵抗値測定手段と、前記抵抗値測定手段で測定される絶縁抵抗値に基づき前記イオン生成室におけるリーク放電異常を検出する異常検出手段と、を備えることを特徴とする。」

「【0029】
3.本実施形態の動作
本実施形態の構成は以上であり、続いてその動作について説明する。
交流電源10から供給される交流電圧は昇圧トランス72により昇圧されて、放電針2と接地電極5との間に印加される。すると、放電針2からコロナ放電が発生して正負のイオンが交互に生成される。これと同時に、空気供給手段6から空気流が導風路11を介して空気供給孔34を介して開放空間32に流入し、生成された正負イオンは空気流とともに開口部43から外部に放出される。
【0030】
コロナ放電が生じているときには、制御部78は、放電電流検出手段73Aでの放電電流Ioを適宜取り込んで除電異常検出用の基準値と比較し、除電異常の検出を試みる。このとき、二次巻線72B、放電針2、接地電極5及び放電電流検出手段73Aで形成される閉ループに電流が流れる。そして、開放空間32の内壁面32Aに不純物が付着すると、二次巻線72B、開放空間32の内壁の絶縁抵抗R、接地電極5及び放電電流検出手段73Aで形成される閉ループにもリーク電流が流れる、或いは、リーク電流が変動する。そこで、制御部78は、比較回路84からリーク放電異常信号を受けたかどうかを適宜確認する。
【0031】
そして、制御部78は、この比較回路84からリーク放電異常を示す信号を受けたことを条件に、リーク放電異常信号を出力して、リーク放電が発生又は変動しイオン生成量検出に異常を来たすことを報知する。また、制御部78は、上記除電異常出力信号またはリーク放電異常信号を出力することに同期して交流電源10と昇圧トランス72との間のスイッチ回路85をオフさせて除電装置20の動作を停止させる構成になっている。
【0032】
4.本実施形態の効果
(1)本実施形態によれば、抵抗値測定手段73Bによって開放空間32の内壁面32Aにおける絶縁抵抗値を測定し、この絶縁抵抗値に基づいてリーク放電異常を検出する構成とした。このような構成であれば、リーク放電異常を検出することで、不正確なイオン発生量の検出が継続されることを防止できる。
【0033】
(2)また、開放空間32の内壁面32Aにおける絶縁抵抗値を測定する方法として、空気流供給手段6の固定金具8と接地電極5の間の抵抗値を測定するようにした。このような構成であれば、既存の構成(接地電極5、ホルダ4及び固定金具8)を利用して絶縁抵抗値の測定を行うことができる。また、固定金具8が放電針2の針先2A後方に設けられ、対向電極5に電気的に接続するホルダ4が放電針2の針先2A前方に設けられているから、放電針2の前後方向における絶縁抵抗を測定できリーク放電異常を精度良く検出することができる。」

上記の記載事項及び図面からみて、以下のことが明らかである。
・除電装置は放電針2への電圧印加によってコロナ放電を生じさせることでイオンを発生して除電対象物の除電を行うものである。

・空気供給手段6から空気流が導風路11を介して空気供給孔34を介して開放空間32に流入し、生成された正負イオンは空気流とともに開口部43から外部に放出されることから、コロナ放電により空気イオンを生成するものである。

・図2には「84・・・比較回路(異常検出手段)」と記載され、制御部78は、該比較回路84(異常検出手段)からリーク放電異常信号を受けたかどうかを適宜確認し、該比較回路84(異常検出手段)からリーク放電異常を示す信号を受けたことを条件に、リーク放電異常信号を出力して、リーク放電が発生又は変動しイオン生成量検出に異常を来たすことを報知する。

上記の記載事項及び図面に示された内容を総合すると、引用例1には以下の発明が記載されていると認められる。

「放電針2への電圧印加によってコロナ放電を生じさせることで空気流とともに外部に放出されるイオンを発生して除電対象物の除電を行う除電装置において、
前記放電針2に電圧を印加する電圧印加手段と、
該電圧印加手段から前記放電針2に電圧を印加したときに前記コロナ放電とは別に発生するリーク電流に応じたリーク放電異常信号を発生する比較回路84(異常検出手段)と、
該比較回路84(異常検出手段)からのリーク放電異常信号に基づいてリーク電流を検出すると異常を来たすことを報知する制御部78とを備え、
前記電圧印加手段は、一次巻線72A及び二次巻線72Bを有する昇圧トランス72と、その一次巻線72Aに印加する電圧を出力するスイッチ回路85とを備えることを特徴とする除電装置。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「除電装置」は、「放電針2への電圧印加によってコロナ放電を生じさせることでイオンを発生して除電対象物の除電を行う」もので、本願補正発明の「イオン生成装置」に相当している。
以下同様に、「放電針2」は「放電電極」に、「電圧印加」は「高電圧を出力」に、「電圧印加手段」は「高圧電源回路」に、「リーク電流」は「微放電」に、「比較回路84(異常検出手段)」は「微放電検出手段」に、「リーク放電異常信号」は「検出信号」に、「検出すると」は「判定したときに」に、「異常を来たすことを報知する制御部78」は「警報信号を出力する微放電判定手段」に、「一次巻線72Aに印加する電圧を出力するスイッチ回路85」は「一次巻線に印加する電圧を出力する出力回路」にそれぞれ相当する、
そして、引用発明における「放電針2への電圧印加によってコロナ放電を生じさせることで空気流とともに外部に放出されるイオンを発生して除電対象物の除電を行う除電装置」は本願補正発明における「放電電極に高電圧を印加することによって該放電電極からコロナ放電を発生させ、そのコロナ放電により空気イオンを生成するイオン生成装置」に対応している。
また、引用発明の「電圧印加手段」と本願補正発明の「高圧電源回路」はともに「高圧電源供給手段」という点で共通している。

上記の事項を考慮すると、両者は本願補正発明における表現で表すと次の点で一致し、
「放電電極に高電圧を印加することによって該放電電極からコロナ放電を発生させ、そのコロナ放電により空気イオンを生成するイオン生成装置において、
前記放電電極に印加する高電圧を出力する高圧電源供給手段と、
該高圧電源供給手段から前記放電電極に高電圧を印加したときに前記コロナ放電とは別に発生する微放電に応じた検出信号を発生する微放電検出手段と、
該微放電検出手段からの検出信号に基づいて微放電と判定したときに警報信号を出力する微放電判定手段とを備え、
前記高圧電源供給手段は、一次巻線及び二次巻線を有する巻線トランスと、その一次巻線に印加する電圧を出力する出力回路とを備えることを特徴とするイオン生成装置。」

以下の点で相違する。
(相違点)高圧電源供給手段が、本願補正発明では「一次巻線及び二次巻線を有する巻線トランスと、その一次巻線に印加する複数のパルス列電圧を出力するパルス列出力回路とを備え、該パルス列出力回路は、第1、第2のスイッチ素子を直列に接続してなる第1の直列回路と第3、第4のスイッチ素子を直列に接続してなる第2の直列回路とを並列に接続してなる並列回路で構成される」ものであるのに対し、引用発明では「一次巻線72A及び二次巻線72Bを有する巻線トランスと、その一次巻線72Aに印加する電圧を出力するスイッチ回路85」である点。


(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
除電装置やイオン生成装置の分野において、高圧電源供給手段として「一次巻線及び二次巻線を有する巻線トランスと、その一次巻線に印加する複数のパルス列電圧を出力するパルス列出力回路とを備え、該パルス列出力回路は、第1、第2のスイッチ素子を直列に接続してなる第1の直列回路と第3、第4のスイッチ素子を直列に接続してなる第2の直列回路とを並列に接続してなる並列回路」で構成することは特開2001-203093号公報(特に図6参照)や特開2003-189638号公報(特に図3参照)で示されるように従来周知の事項である。
さらに、引用発明の「電圧印加手段」として上記従来周知の事項を施すことに何ら困難性を有するものとは認められない。
そうすると、引用発明における「電圧印加手段」に「高圧電源供給手段」として従来周知である上記の構成を適用することにより、上記相違点に係る本願補正発明の「一次巻線及び二次巻線を有する巻線トランスと、その一次巻線に印加する複数のパルス列電圧を出力するパルス列出力回路とを備え、該パルス列出力回路は、第1、第2のスイッチ素子を直列に接続してなる第1の直列回路と第3、第4のスイッチ素子を直列に接続してなる第2の直列回路とを並列に接続してなる並列回路で構成」とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び従来周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成24年8月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成24年2月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
放電電極に高電圧を印加することによって該放電電極からコロナ放電を発生させ、そのコロナ放電により空気イオンを生成するイオン生成装置において、
前記放電電極に印加する高電圧を出力する高圧電源回路と、
該高圧電源回路から前記放電電極に高電圧を印加したときに前記コロナ放電とは別に発生する微放電に応じた検出信号を発生する微放電検出手段と、
該微放電検出手段からの検出信号に基づいて微放電と判定したときに警報信号を出力する微放電判定手段とを備え、
前記高圧電源回路は、一次巻線及び二次巻線を有する巻線トランスと、その一次巻線に印加する複数のパルス列電圧を出力するパルス列出力回路とを備えて構成されることを特徴とするイオン生成装置。」

(2)刊行物等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物等、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当するものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-07 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2007-165253(P2007-165253)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01T)
P 1 8・ 575- Z (H01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 杉浦 貴之
小関 峰夫
発明の名称 イオン生成装置  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  

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