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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1273705
審判番号 不服2010-29049  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-24 
確定日 2013-05-08 
事件の表示 特願2004-207262「玄米健康食」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 2日出願公開、特開2006- 25663〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年7月14日の出願であって、平成21年4月16日付けの拒絶理由通知に対して、平成21年6月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成22年4月28日付けの最後の拒絶理由通知に対して、平成22年6月29日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成22年9月27日付けで、平成22年6月29日付けの手続補正が補正却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年12月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成24年4月19日付けで審尋がなされ、平成24年6月22日に回答書が提出されたものである。

第2 平成22年12月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年12月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正は、平成21年6月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の
「土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.02?50mg、硝酸態窒素(N-N)を0.02?70mg、可給態燐酸を2?400mg、交換性カリウムを1?300mg、交換性石灰を50?1000mg、交換性苦土を5?400mg、可給態マンガンを0.5?70ppm、可給態鉄を1.5?300ppm、可給態銅を0.1?30ppm、可給態亜鉛を1.5?80ppm、ホウ素を0.5?30ppm、モリブデンを0.002?2ppm、腐植を1.0?9.0%含み、燐酸吸収係数が40?3000mg、塩基置換容量が5?40mg、土壌酸度(pH)が3.2?7.5、電気伝導度が0.02?5の土壌によって生産され、残留窒素が300mg以下の籾殻付き若しくは籾殻無し生玄米、または発芽玄米、或いはそれらの粉末をそのまま又は水につけて、加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食するか、前記籾殻付き若しくは前記籾殻無し生玄米、または前記発芽玄米、或いはそれらの粉末と、前記籾殻付き若しくは前記籾殻無し生玄米、または前記発芽玄米以外の穀類、果実類、または野菜類であって葉部、茎及び根を丸ごと含んだ穀類、果実類、または野菜類を添加混合してなることを特徴とする玄米健康食。」

「腐葉土を主成分とする土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.3mg、硝酸態窒素(N-N)を0.7mg、可給態燐酸を15mg、交換性カリウムを15mg、交換性石灰を200mg、交換性苦土を35mg、可給態マンガンを5ppm、可給態鉄を15ppm、可給態銅を1ppm、可給態亜鉛を10ppm、ホウ素を2ppm、モリブデンを0.05ppm、腐植を1.0?9.0%含み、燐酸吸収係数が500mg、塩基置換容量が5?40meq、土壌酸度(pH)が5.5、電気伝導度が0.05の土壌によって生産され、
残留窒素が300mg以下の発芽玄米或いはその粉末、をそのまま又は水につけて、加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食用に供することを特徴とする玄米健康食。」(下線は補正箇所を示す。)
とする補正を含むものである。

上記補正は、補正前の「土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.02?50mg、硝酸態窒素(N-N)を0.02?70mg、可給態燐酸を2?400mg、交換性カリウムを1?300mg、交換性石灰を50?1000mg、交換性苦土を5?400mg、可給態マンガンを0.5?70ppm、可給態鉄を1.5?300ppm、可給態銅を0.1?30ppm、可給態亜鉛を1.5?80ppm、ホウ素を0.5?30ppm、モリブデンを0.002?2ppm、腐植を1.0?9.0%含み、燐酸吸収係数が40?3000mg、塩基置換容量が5?40mg、土壌酸度(pH)が3.2?7.5、電気伝導度が0.02?5の土壌」について、「腐葉土を主成分とする」ものとし、また、アミノ酸態窒素(A-N)を「0.3mg」、硝酸態窒素(N-N)を「0.7mg」、可給態燐酸を「15mg」、交換性カリウムを「15mg」、交換性石灰を「200mg」、交換性苦土を「35mg」、可給態マンガンを「5ppm」、可給態鉄を「15ppm」、可給態銅を「1ppm」、可給態亜鉛を「10ppm」、ホウ素を「2ppm」、モリブデンを「0.05ppm」に、そして、燐酸吸収係数が「500mg」、土壌酸度(pH)が「5.5」、電気伝導度が「0.05」であることに限定するとともに、塩基置換容量の単位について「mg」との誤記を「meq」と修正し、
さらに、補正前の「籾殻付き若しくは籾殻無し生玄米、または発芽玄米、或いはそれらの粉末をそのまま又は水につけて、加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食するか、前記籾殻付き若しくは前記籾殻無し生玄米、または前記発芽玄米、或いはそれらの粉末と、前記籾殻付き若しくは前記籾殻無し生玄米、または前記発芽玄米以外の穀類、果実類、または野菜類であって葉部、茎及び根を丸ごと含んだ穀類、果実類、または野菜類を添加混合してなること」を「発芽玄米或いはその粉末、をそのまま又は水につけて、加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食用に供する」ことに限定したものである。

そうすると、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものであるので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物1(原査定の引用文献3)、刊行物2(原査定の引用文献7)、刊行物3(原査定の引用文献8)、刊行物4(原査定の引用文献10)、刊行物5(原査定の引用文献12)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。以下、同じ。

(1)刊行物1:特開2004-109号公報の記載事項

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】精米される前の玄米を使用し、該玄米を製粉機により米糠を損なうことのない微粉末状にし、当該玄米微粉末に対して少なくとも1種類以上の飲料食品物を、適宜の割合で混合生成させることを特徴とした玄米飲料食品。
【請求項2】前記玄米微粉末に適宜素材の水分を含有させて、練り状にしたことを特徴とする玄米飲料食品。
【請求項3】前記における玄米の使用を発芽玄米としたことを特徴とする、請求項1及び請求項2記載の玄米飲料食品。」

(1b)「【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は、玄米の栄養素を損なうことなく摂取することができる飲料食品物に関するものである。」

(1c)「【0006】特に注目されている機能性成分として、γ-オリザノール、γ-アミノ酪酸(ギャバ)、イノシトール、セラミド等がある。γ-オリザノールは米の糠から発見された物質で、抗コレステロール剤として高脂血症の医薬品で多く使われており、海外では心疾患に有用ということで注目されている。抗ストレス作用として更年期障害・自律神経失調症改善、抗コレステロール作用抗酸化作用として皮膚の老化防止が報告されている。
γ-アミノ酪酸(ギャバ)は通称GABA(ギャバ)といわれ、血圧降下作用があり高血圧・脳血流改善効果が期待できるとされ、更に、肝臓・腎臓機能活性の効果、精神安定作用、不眠・イライラなどの改善効果が報告されており、国内では食品、医薬品として幅広く使われており、最近注目を浴びている成分の一つである。特には血圧降下作用、肝機能改善作用としてガンマトランスアミナーゼ(GPT)の低下、肥満防止作用として中性脂肪(TG)の低下、また、イライラ・不眠・アルコール代謝促進などの精神安定作用が報告されている。
イノシトールは人間の初乳に非常に多く含まれ、乳児の発育に重要な物質と考えられており、米国ミネソタ大学や国立がんセンターなどでガン抑制効果や、HIV抑制作用など免疫向上効果が認められており、抗脂肪肝、動脈硬化予防、カルシュウム吸収促進、コレステロール血症改善等が報告されている。
またセラミドは皮膚の角質層の細胞と細胞のすきまに存在し、肌を健康に保つのに最も重要な成分である。しかしその量は年齢とともに減少する傾向にあることから、セラミド成分を摂取することが重要であるとされ、特に肌荒れ、乾燥肌、しわ、しみ、皮膚炎などに対し効果が報告されている。また現在は上記効果、作用がある玄米の機能性成分を増やした発芽玄米が注目されている。」

(1d)「【0012】【課題を解決するための手段】
前記の問題点に鑑みて解決すべく種々研究の結果、上記目的は本発明によって有効に達成することができる。
すなわち本発明にかかる玄米飲料食品は、精米される前の玄米を使用し、該玄米を製粉機により米糠を損なうことのない微粉末状にし、当該玄米微粉末に対して少なくとも1種類以上の飲料食品物を、適宜の割合で混合生成させることを特徴とし、かかる構成にあって請求項2記載の発明は、前記玄米微粉末に適宜素材の水分を含有させて、練り状にしたことを特徴とする玄米飲料食品を提供する。また、請求項3記載の発明は前記における玄米の使用を発芽玄米としたことを特徴とする、玄米飲料食品を提供し上述にある種々の問題点を解決している。」

(1e)「【0013】【発明の実施の形態】
以下に本発明の玄米飲料食品について説明する。
脱穀され、精米される前の玄米を使用し製粉機にかけてパウダー状となる微粉末にする。いわゆる製粉工程を得た玄米パウダーを使用する。この場合、石臼式製粉機の技術進歩により現在は、粒度が細かい超微粉末の製粉とすることができるもので、水分吸収しやすい粉末に製粉されればよい。この玄米微粉末に対して例えば天然果汁を混合撹拌させ、流動できる割合であれば果汁飲料物を生成できる。生成手順は、容器に玄米微粉末に入れてから順次混合する果汁エキスあるいは水または湯水を加えることで玄米微粉末は水分に溶け込む。この加える水分調整量で練り状の固さにしたり、飲料とすることができる。
【0014】例としては、飲料物の生成に対して玄米微粉末を多めに混入することで濃厚な飲料が得られる。また、混合する天然果汁は100%果汁の利用が好ましく、添加物を一切使用しないことでより栄養化の高いものが生成される。更に、混合する果汁は数種をブレンドすることも可能であり、また果汁にこだわらず数種の野菜を添加した玄米ベースの野菜ジュースもできる。
【0015】玄米微粉末に添加する水分を調整することによって、練り状に生成でき、当該練り状のものは柔らかくそのまま食することもでき、また菓子類の素材としても利用できる。また練り状とすることで、野菜などを漬ける床として利用できることから、練り状にするための水分に果汁を使用することによっては、これまでにない栄養素を含んだ漬物もできる。また、練り状の度合によってスープなどの濃いものまで生成できる。
【0016】また、使用する玄米は0.5mmから1mm程度に発芽させた発芽玄米を使用し、乾燥させた後に製粉機にかけて製粉とした微粉末を使用することによって、より多くの玄米成分の栄養化を摂取することが可能となる。」

(1f)「【0017】【発明の効果】
以上説明したように本発明の玄米飲料食品によれば、玄米を主原料とし工法が簡便であることから低コストで提供できるものであり、食しやすくかつ風味がすぐれているので、青少年の軽食に、病人の食事に、幼児のおやつ等に供するものとして、スープ(飲料)や練り状とした柔らかい食材として、極めて適している。また本発明に係る玄米飲料食品は、多量に食することができる上、例え多量に食しても弊害は生じないので安心であり、玄米の有するタンパク質、ビタミン類、食物繊維、ミネラル等を多量に摂取することができる他、天然果汁や混合材料に含まれる多くのビタミンと有効成分を摂取できることから、国民の健康生活の向上に大いに寄与するものである。更に、リンゴ・ミカン等の固形状態の製品出荷に耐えることができない、例えば風雨被害による散在した果実などを余す事が無く利用でき、果樹園経営者にとっても利用度が高まる。更に玄米使用により米穀物の消費拡大にもつながる。
【0018】なお、玄米を微粉末状に製粉したことにより、これまで玄米独特の臭いがあったものが無くなり、臭いが気になる人にも食しやすい飲料食品として提供できる。
以上の如く、本発明によって生ぜしめる効果は絶大なものであり、極めて実用的有益なる優れた経済効果を奏するものである。」

(2)刊行物2:「植物栄養・肥料の事典」(株式会社朝倉書店2002年5月10日発行433頁?436頁)の記載事項

(2a)「9.3 環境条件と施肥
作物の生育は環境の影響を受けている。したがって、施肥法は作物をとりまく環境を前提として定められている。環境条件は土壌環境と気象環境に大別され、土壌環境としては、土壌母材と土地利用が要因として大きい。
9.3.1 土壌と施肥-土壌型別の対応技術
土壌の養分に関する基本的な改善目標は,土地利用区分ごとに,かつ,土壌類型ごとに定められている(表9.1?9.3)。また,主要な作物に対する施肥法は,施肥基準として地域ごとに定められている。現在では,土壌診断が広く行われ,施肥基準と蓄積した土壌養分含量に基づいた施肥の調節が始められている。
a. 土壌診断と施肥
土壌診断は,かつてのような養分不足の発見ではなく,以下のような目的でなされている。(1)(※当審注 原文では○中に数字。以下同じ。)過剰な肥料の施用や極端な土壌管理による養分の過剰集積・アンバランスを未然に防止する,(2)養・水分管理のしやすい土をつくる,(3)土壌と作物が担っている物質循環機能を維持し向上させる,(4)環境にやさしい作物生産技術の定着を支援する,(5)消費者の“品質本位,本物指向”にこたえた生産効率の向上に,同時併行的に寄与する。その手順は,今日では以下のように整理されている。(1)既存情報の整理(既存のデータ,土壌特性の把握),(2)現地調査(聞き取り,作物生育状況,土壌断面調査,土壌・作物試料の採取),(3)生育阻害・障害発生の原因の仮説設定(情報の再整理,現地調査結果の整理,分析項目の決定),(4)採取試料の理化学分析,(5)処方箋の作成(最終診断),(6)診断結果の確認(対策効果の確認,処方銭の正確度判定,記録の保存)。特に(1)と(2)は不可欠であり,これらの段階で診断・処方が可能な場合には(4)の理化学分析は不用であり,省略すべきである。
b. 土壌養分の蓄積と施肥量の節減
近年では,土壌に過剰な養分の蓄積している圃場が多くなってきているため,土壌診断による施肥量削減の処方銭を作成するシステムが開発されている。例として,千葉県の土壌診断システムを紹介する。土壌診断による養分管理の基本は,交換性陽イオンならびに可給態リン酸の含量が適正範囲以下であれば,適正範囲の下限値に達するよう資材の施用量を算出し,次に,電気伝導率,可給態リン酸・カリウムの含量が適正範囲を超えているときは,次作では施肥基準に定められている基肥量を削減するようになっている。」(第433頁18行「9.3の欄」?434頁最終行)

(2b)「


」(434頁)

(2c)「


」(435頁)

(3)刊行物3:「植物栄養・肥料の事典」(株式会社朝倉書店2002年5月10日発行509頁?527頁)の記載事項

(3a)「土壌中の有効態リン酸含量(トルオーグ法による)は,ほとんどの畑作物,野菜で乾土100g中10?30mgが適量とされており・・・」(517頁12?13行)
(3b)「土壌中の交換性カリ(K_(2)O)は乾土100g中10mg(K_(2)O)以下になると多くの作物に欠乏症が発生する。」(518頁26?27行)
(3c)「土壌中のカルシウム量は,交換性カルシウム(CaO)として野菜類の場合,火山灰土壌では乾土100gあたり300?500mg,砂質土壌で100?250mg,壤粘質土壌では200?350mgが適量とされている。」(519頁27?29行)
(3d)「土壌中では交換性マグネシウム(MgO)が10mg/乾土100g以下のときに作物に欠乏症が発生する。適量としては,野菜類の場合,火山灰土で30?60mg/100g,砂質土で15?30mg/100g,壤粘質土で30?45mg/100g(乾土中)とされている。」(520頁26?28行)
(3e)「有効態鉄は,健全土壌で8?10ppm,欠乏症の出やすい土壌で4?8ppm以下である。」(522頁下から3?2行)
(3f)「健全土壌では,置換性マンガン4?8ppm,易還元性マンガン100?250ppmである。」(523頁30?31行)
(3g)「一般に,健全土壌の有効態ホウ素は0.8?2.0ppm,0.4ppm以下では欠乏症がでる。また,7ppm以上では過剰が現れる。」(524頁21?22行)
(3h)「土壌中の全亜鉛は,通常10?300ppmの範囲である。」(525頁3?4行)
(3i)「健全土壌における有効態銅は0.8?1.5ppmである。」(526頁18?19行)
(3j)「土壌中のモリブデン含量は母岩の種類による差は小さく平均2ppm程度である。」(526頁下から3?2行)」

(4)刊行物4:特開2002-58334号公報の記載事項

(4a)「【請求項1】リン酸吸収係数が500mg/100g以上であるアニオン吸着剤を含む培土。」

(4b)「【0002】【従来の技術】培土のもつ重要な性質の一つとして保肥力があり、カルシウム、カリウム、アンモニア、水素などの陽イオンを吸着することができる陽イオン交換容量(CEC:Cation Exchange Capacity)の大きい土壌は、陽イオン系の肥料について大きな保肥力を有することが知られている。CECの大きい土壌或いは配合資材として、一般にゼオライト、ベントナイト、粘質土壌、腐植質土壌などが知られている。
【0003】一方、陰イオン系肥料であるリン酸系肥料については、黒ボク土のようにリン酸吸収係数の大きい土壌は保肥力が高いと考えられるが、このような土壌ではリン酸イオンが土壌中のアルミニウムや鉄と反応して水に不溶性のリン酸塩を形成してしまい、植物体に有効利用されないため、リン酸系肥料を多量の施行が必要となる。従って植物体が有効利用できる形態のリン酸(可給態リン酸という)を多くするためにはリン酸吸収係数が比較的小さい土壌が好適とされる。しかしリン酸吸収係数が小さいということは、陰イオン系肥料の保肥力が小さいことを意味し、多雨の時期、地域ではリン酸が流亡し、この場合にも多量のリン酸系肥料を施すことが必要となる。」

(5)刊行物5:「郡司篤孝,続・怖い食品-1,000種,株式会社ナショナル出版,1984年,156-157頁」の記載事項

(5a)「窒素系の化学肥料を使うと,野菜はよく育つが,この窒素は野菜の中に硝酸のかたちで蓄えられ,やがて私たちの台所に届く頃,亜硝酸にかわる。亜硝酸は私たちの胃の中に入って,魚や肉のタンパク質に含まれている二級アミンと化学反応して,ニトロソアミンになる。ニトロソアミンが大変発ガン性の高いものであることは,動物実験でも明らかになっている。」(157頁上欄末行?中欄8行)

3 対比・判断
上記刊行物1には、精米される前の玄米を使用し、該玄米を製粉機により米糠を損なうことのない微粉末状にし、当該玄米微粉末に対して少なくとも1種類以上の飲料食品物を、適宜の割合で混合生成させることを特徴とした玄米飲料食品であって(1a)、玄米微粉末に適宜素材の水分を含有させて、練り状にしたこと(1a)、玄米の使用を発芽玄米としたこと(1a)が記載されている。
そうすると、刊行物1の上記記載事項(1a)から、刊行物1には、
「発芽玄米を製粉機により米糠を損なうことのない微粉末状にし、当該玄米微粉末に対して少なくとも1種類以上の飲料食品物を、適宜の割合で混合生成させて、玄米微粉末に適宜素材の水分を含有させて練り状にした玄米飲料食品。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

(ア)刊行物1発明の「発芽玄米を製粉機により米糠を損なうことのない微粉末状にし」た「当該玄米微粉末」は、発芽玄米を粉末にしたものであるので、本願補正発明の「残留窒素が300mg以下の発芽玄米或いはその粉末」とは、「発芽玄米或いはその粉末」である点で共通する。

(イ)刊行物1発明の「当該玄米微粉末に対して少なくとも1種類以上の飲料食品物を、適宜の割合で混合生成させて、玄米微粉末に適宜素材の水分を含有させて練り状にした」ことについて、刊行物1の記載を参照すると、その生成手順について、容器に玄米微粉末に入れてから順次混合する果汁エキスあるいは水または湯水を加えることで玄米微粉末は水分に溶け込み、この加える水分調整量で練り状の固さとする旨、記載されており(1e)、玄米微粉末に対して混合させる、少なくとも1種以上の飲料食品物として水を加えることが記載されている。
そうすると、刊行物1発明の「当該玄米微粉末に対して少なくとも1種類以上の飲料食品物を、適宜の割合で混合生成させて、玄米微粉末に適宜素材の水分を含有させて練り状にした」ことは、本願発明の「発芽玄米或いはその粉末、をそのまま又は水につけ」たことに相当する。

(ウ)刊行物1発明の「練り状にした玄米飲料食品」について、刊行物1発明を参照すると、練り状のものは柔らかくそのまま食することもできると記載されている(1e)ことから、加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなくそのまま食するものであり、よって、刊行物1発明の「練り状にした玄米飲料食品」は、本願補正発明の「加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食用に供することを特徴とする玄米健康食」と、「加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食用に供する玄米食」である点で共通する。

したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。

(一致点)
「発芽玄米或いはその粉末、をそのまま又は水につけて、加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食用に供する玄米食。」

(相違点1)
発芽玄米が、本願補正発明では、「腐葉土を主成分とする土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.3mg、硝酸態窒素(N-N)を0.7mg、可給態燐酸を15mg、交換性カリウムを15mg、交換性石灰を200mg、交換性苦土を35mg、可給態マンガンを5ppm、可給態鉄を15ppm、可給態銅を1ppm、可給態亜鉛を10ppm、ホウ素を2ppm、モリブデンを0.05ppm、腐植を1.0?9.0%含み、燐酸吸収係数が500mg、塩基置換容量が5?40meq、土壌酸度(pH)が5.5、電気伝導度が0.05の土壌によって生産され」たものであって、「残留窒素が300mg以下の」ものであるのに対し、刊行物1発明では、それが明らかでない点。

(相違点2)
玄米食が、本願補正発明では「玄米健康食」であるのに対し、刊行物1発明では「玄米飲料食品」であって、健康食であることについては特に規定していない点。

そこで、上記各相違点について検討する。

(相違点1について)
(ア)本願補正発明に係る土壌で生産されたものであることについて、以下のとおりに分けて検討する。

(a)「腐葉土を主成分とする土壌」によって、生産されたものである点。

(b)「腐葉土を主成分とする土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.3mg、硝酸態窒素(N-N)を0.7mg」とした土壌によって生産されたものである点。

(c)「腐葉土を主成分とする土壌100gあたり」、「可給態燐酸を15mg、交換性カリウムを15mg、交換性石灰を200mg、交換性苦土を35mg、可給態マンガンを5ppm、可給態鉄を15ppm、可給態銅を1ppm、可給態亜鉛を10ppm、ホウ素を2ppm、モリブデンを0.05ppm、腐植を1.0?9.0%含」んだ土壌によって生産されたものである点。

(d)「燐酸吸収係数が500mg、塩基置換容量が5?40meq、土壌酸度(pH)が5.5、電気伝導度が0.05の土壌によって生産され」たものである点。

(イ)(a)について
農業用培土として腐葉土などを主成分とする土壌を用いることは、例えば下記刊行物Aに記載されているように、本願出願前に良く行われていたことである。

・刊行物A:特開平7-246025号公報
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、畑地(果樹栽培用を含む。)、水田、ハウス土壌、育苗用培土、鉢土又はベッド栽培用培土等に好適に用いられる植物栽培用培養土に関するものである。
【0002】【従来の技術】従来、農作物等の植物を栽培するための培養土としては、腐葉土或いはこの腐葉土に天然の土壌を混合したものが主として用いられているが、保水性が悪く、植物の育成に際し、頻繁に水を与えなければならず、大変煩わしいものであった。」

(ウ)(b)について
刊行物5や下記刊行物Bに記載されているように、「硝酸態窒素(N-N)」は野菜中に蓄積し、これを摂取すると人体に悪影響があることは本願出願前の周知の事項である。
そして、土壌に含まれる窒素として硝酸態窒素の他に、有機成分として「アミノ酸態様窒素(A-N)」があること(刊行物C?E)、植物、特にイネ科の植物は窒素源としてアミノ酸態様窒素も吸収すること(刊行物C,D,F,G)、土壌中の窒素は土壌微生物によって有機化と無機化の形態変化が行われること(刊行物E)、土壌に含まれる窒素の量として「硝酸態窒素(N-N)」や「アミノ酸態様窒素(A-N)」の値を測定して土壌評価を行うこと(刊行物D)は、下記刊行物C?Gに記載されるように本願出願前の周知の事項である。
そうすると、植物の生長に必要な窒素を含有させつつ、人体に悪影響がないように作物中の残留窒素を低減させるべく、土壌中に過剰の窒素が含まれることがないよう、「硝酸態窒素(N-N)」や「アミノ酸態様窒素(A-N)」の含有量を適正な値に設定することも本願出願前に適宜に行われていたことである。

・刊行物B:特開2004-175847号公報
「【0002】【従来の技術】
近年、有機・無機肥料の使用、生活排水や工場排水の浸透、産業廃棄物などの投棄によって、硝酸塩や亜硝酸塩などの硝酸性窒素が土壌中に多く存在するようになっており、土壌の汚染が進行している。
かかる硝酸性窒素は、人体内で還元されて窒息症状のメトヘモグロビン血症を引き起こす原因物質となったり、発癌性の疑いがあるN-ニトロソ化合物を生成する物質となることが知られている。
これに対し、従来は、特開2001-300509号公報や特開平11-128902号公報に記載されているように、イオン交換法、逆浸透膜処理法、電気透析法、及び生物学的脱窒法などによって硝酸性窒素を除去していた。」
・刊行物C:特開2000-327465号公報
「【0016】当該醗酵水産廃棄物を土壌中に施用した場合、水産廃棄物の蛋白質のpHは低下しておりさらに乳酸菌と酵母が付着しているため、土壌中の耐酸性の微生物により分解されることとなるが、一般的に耐酸性のある微生物は有益なものが多く、有益な代謝物の生成が行われる事と、ゆっくり蛋白質をアミノ酸に分解し、植物がアミノ酸態窒素を吸収できるため食味の向上と硝酸態窒素の低減を行える。また、家畜に供する場合、乳牛には昔からサイレージを与えており乳酸醗酵させた飼料は、栄養価も高く飼料としても利用可能である。」
・刊行物D:特開2003-106999号公報
「【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来植物は炭素,酸素,水素を大気と水から得、残りの窒素やミネラルを土壌から吸収しているとの考え方に基づき、土壌の評価は、窒素(N),リン(P),カリウム(K)等の無機成分、特に窒素に関しては無機態窒素(NH4-N,NO3-N)成分の含有量が対象となっていた。しかし近年植物が有機物を直接吸収することが知られてきており、このため土壌の評価には有機成分を対象にする必要が生じてきている。
【0003】例えば稲の場合リグニンや炭水化物を多く含む稲わらに、タンパク質に富む米ぬかを混ぜC/N比を20とした米ぬか入り稲わらを混入した畑で栽培すると、該米ぬか入り稲わらを混入しない畑で栽培する場合に比較して窒素吸収量が増加する。これは無機態窒素のみを吸収すると仮定すると考えられないことであり、タンパク質が無機化される中間で生ずるアミノ酸(有機態窒素であるアミノ酸態窒素)を直接吸収している可能性がある。
【0004】しかし従来土壌成分解析は、土壌のサンプルに対して比較的煩雑な化学分析を行う必要があり、分析に比較的長い時間や所定以上の熟練技術等が必要となる欠点の他、一度に多量のサンプルの分析が不可能であるという問題点もあった。このため本発明は近赤外分析を利用して土壌の中の有機成分を簡便に且つ短時間で解析して、土壌の評価を行う方法を提供することを目的としている。」
・刊行物E:特開平5-58767号公報
「【0008】周知のごとく、有機物を土壌に施用すると、土壌微生物が有機物中の炭素をエネルギー源として増殖する。この際、微生物は菌体を構成する含窒素化合物、例えばアミノ酸、核酸、蛋白質等の合成のために菌体外からアンモニア性窒素または硝酸性窒素を菌体内に取り込んで有機化する。取り込まれる窒素の供給源は、土壌中の窒素、窒素含有有機物の分解により生成したアンモニア性窒素及び肥料として施用された窒素である。
【0009】増殖した微生物は、その世代が終了すると自己分解を起こして菌体中の含窒素化合物は土壌中に放出され、分解して再度アンモニア性窒素に変化する。この再無機化した窒素は生存する微生物によって再利用される。以後この過程を繰り返し、有機物の消耗とともに微生物の菌数も次第に減少し、菌体分解によって生成したアンモニア性窒素の再利用量も少なくなって、土壌中にアンモニア性窒素が蓄積するようになる。
【0010】この窒素の土壌中における形態変化は、窒素の有機化-無機化過程といわれ、有機化量が無機化量より多い場合には土壌中の無機態窒素が減少し、逆の場合には土壌中の無機態窒素が増加する。従って、無機態窒素を含有する肥料の施用において、この窒素の有機化-無機化過程を制御することができれば、土壌中の無機態窒素の濃度管理が可能であり、ひいては作物の窒素要求に適合した肥培管理を行うことが可能になるものと考えられる。」
・刊行物F:実用新案登録第3082474号公報
「【0002】【従来の技術】
従来、植物の成長を促す窒素源が施肥されてきた。例えば、硝酸イオン、アンモニウムイオン等は植物に吸収後、植物の成育を調整するアミノ酸に合成されることが知られており、このような無機イオン源として、硫安、塩安、リン安、硝酸石灰、硝酸カリウム等が使用されてきた。
また、窒素源としてアミノ酸を施肥すれば、植物内でのアミノ酸合成エネルギーを不要とし、また上記無機塩の吸収されるイオン以外の成分は土壌に放置・蓄積されるに対し、アミノ酸は土壌に放置されないという利点がある。
このようなアミノ酸源として、従来、合成アミノ酸が知られており、またアミノ酸構成単位を含む魚粕、植物性加工食品の粕類、鶏糞家畜等の排泄物等天然物アミノ酸源が用いられている。」
・刊行物G:特開2001-131009号公報
「【0009】芝などのイネ科植物においては、アミノ酸を窒素源として施肥することは知られているが、一般的に動植物の加水分解物や発酵廃液などの多成分肥料であり、内容物が不明瞭である。無機物の土壌への蓄積等の問題から減肥が求められているため、必要量の窒素を効率良く供給できる速効性肥料(速効的栄養補給剤)が求められている。この用途では、尿素の葉面散布剤もよく使われているが、土壌に蓄積しやすいこと、濃度によって葉焼け等の現象が見られる場合がある。よって、その代替えとなる枯死防止及び速効的栄養補給剤が必要となっている。」

(エ)(c)について
刊行物2には、作物の生育のための施肥法に関して、土壌の養分に関する基本的な改善目標が記載されている(2a)。そして、具体的には「表9.1 基本的な改善目標(水田)」(2b)に、養分の含量については「有効態リン酸含有量」「腐食含有量」などが挙げられている。
また、刊行物3には、土壌中の各要素の含有量の適量について記載され((3a)?(3i))、要素としては、「有効態リン酸」「交換性カリ(K_(2)O)」「交換性カルシウム(CaO)」「交換性マグネシウム(MgO)」「置換性マンガンや易還元性マンガン」「有効態鉄」「有効態ホウ素」「全亜鉛」「有効態銅」「モリブデン」が記載されている。

刊行物2,3に記載されたように、作物の生育に適正な土壌とするために、「有効態リン酸」、「交換性カリ(K_(2)O)」、「交換性カルシウム(CaO)」、「交換性マグネシウム(MgO)」、「置換性マンガンや易還元性マンガン」、「有効態鉄」、「有効態銅」、「全亜鉛」、「有効態ホウ素」、「モリブデン」、「腐食」の含有量を指標としてこれらを適正な値とすることは、本願出願前に適宜に行われていたことである。

(オ)(d)について
刊行物2には、作物の生育のための施肥法に関して、土壌の養分に関する基本的な改善目標が記載されている(2a)。そして、具体的には「表9.1 基本的な改善目標(水田)」(2b)に、「pH」「陽イオン交換容量(CEC)」の値が、また、「表9.2 基本的な改善目標(普通畑)」(2c)に、「電気伝導度」の値が挙げられている。
また、刊行物4には、土壌の性質を評価する値として、「陽イオン交換容量(CEC:Cation Exchange Capacity)」や「リン酸吸収係数」を挙げている(4a,4b)。
なお、「陽イオン交換容量(CEC)」は「塩基交換容量」と同義である(必要であれば、特表平9-500169号公報7頁24行参照のこと。「陽イオン交換容量(時々「塩基交換容量」と呼ばれる)」と記載されている。)。
刊行物2や刊行物4の記載、さらには例えば下記刊行物H,Iに記載のように、土壌の性質を評価する値として、「燐酸吸収係数」、「塩基置換容量」「土壌酸度(pH)」「電気伝導度」の値を指標とすることは本願出願前の周知の技術である。

・刊行物H:特開平4-126014号公報「また従来の水稲苗の栽培では、培地のpHを4.5?5.5程度に調整して育苗していた。水稲の育苗では、培地のpHが5?6程度とした場合に苗の生長が良好となるが、苗を本田に機械植えする場合には、草丈が余り大きくない苗が望ましく、培地のpHを4.5?5.5に調整することにより苗の徒長を抑制するとともに、病害並びにムレ苗の発生を抑制する。」(第2頁右上欄1行?8行)
・刊行物I:特開2003-189715号公報「【0013】図2に示した土壌分析ユニット16は、投入された土壌サンプルの養分や性質を分析し、その結果を土壌情報として、制御部15を介して、情報処理装置2に送信する。分析データには、土壌の酸性度(PH)、電気伝導度(EC)、アンモニア態窒素(NH_(4)-N)、硝酸態窒素(NO_(3)-N)、燐酸有効態(P_(2)O_(5))、交換性陽イオン(カリ、石灰、苦土)、交換性マンガン、鉄、陽イオン交換容量(CEC)、燐酸吸収係数、微量ミネラル分、塩分、土壌空隙率(柔らかさ)等が含まれる。」

(カ)そして、刊行物1発明の玄米飲料食品に用いる発芽玄米についても、人が食する食品であることから、人体に悪影響がでないものが好ましいこと、また適正土壌から栽培された健康な玄米を用いる方が望ましいことは、当然である。

(キ)ところで、本願補正発明の「腐葉土を主成分とする土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.3mg、硝酸態窒素(N-N)を0.7mg、可給態燐酸を15mg、交換性カリウムを15mg、交換性石灰を200mg、交換性苦土を35mg、可給態マンガンを5ppm、可給態鉄を15ppm、可給態銅を1ppm、可給態亜鉛を10ppm、ホウ素を2ppm、モリブデンを0.05ppm、腐植を1.0?9.0%含み、燐酸吸収係数が500mg、 塩基置換容量が5?40meq、土壌酸度(pH)が5.5、電気伝導度が0.05の土壌によって生産され」たものであることについて、本願の明細書を参照すると、段落【0038】に「本発明の玄米健康食の玄米を栽培する土壌は、従来の土壌には期待できない作用を奏するのである。この土壌の養分の適正域成分の範囲(土壌100g)は次のようになっている。」と記載され、段落【0039】に「分析項目」とその「適正範囲」を示した「表3」が示されている。

さらに、以下が記載されている。

・「【0018】本発明の玄米健康食は、従来の土壌による生産では栽培することは出来ない。すなわち、通常の土壌では、図2に示すような残留窒素のサイクルが行われ不適切である。
これに対して、本発明の健康食を栽培する土壌は、表3に示すような成分であるから残留窒素の含有量が半減した。
【0019】
残留窒素 残留窒素
小松菜 スーパー購入 150mg 本発明の土壌栽培 75mg
ほうれん草 同上 750mg 同上 300mg
しろ菜 同上 750mg 同上 300mg
この残留窒素量計測方法について、
葉っぱ5gをすり潰し、蒸留水145ccを加えてよくかき混ぜる。これをろ紙でろ過して得られたろ液中に試験紙を浸して、1秒間経過した後、測定器で測定した。計測値を3倍にして100g中の残留窒素量とする。
【0020】今まで肥料として使用されてきたものは、玄米などの植物には的確ではなく、美味しさを追求するあまり、身体に悪い玄米を製造している。特に、加熱や水炊きなどの加工処理によって、アルファ澱粉が摂取されていた。
また、使用する肥料も、農薬、抗生物質、病虫害の駆除する目的の化合物は、人体に悪い影響をあたえ、病気に対して抵抗力のない体を作っている。
【0021】本発明の玄米健康食を栽培する土壌は、表3に示すような条件を整えたものである。特に、中心値に近いほど好ましい。
すなわち、殺虫剤、殺菌剤、抗生物質の農薬類や合成食品、合成添加物、化学肥料などの無機物の合成物質の残留が少ない土壌で基本的には残留しない土壌とし、菌類、微生物類、昆虫類が食物連鎖と共存できる土壌とし、前記農薬類などは使用しない有機肥料を添加した土壌である。
化学肥料、農薬による発芽しない雑穀類はDNAがこわれ、死んだ物質である酸性の高い自己免疫の高い植物はアミノ酸濃度が高くなり、害虫に強い植物ができる。」
・「【0027】本発明の玄米健康食を栽培する土壌は、前記のような従来の肥料を使用せずに表3に示すような条件を整えた土壌を使用するものである。特に、各成分の含有量は中心値に近いほど好ましい。
すなわち、殺虫剤、殺菌剤、抗生物質の農薬類や合成食品、合成添加物、化学肥料など無機物の合成物質の残留が少ない土壌で基本的には残留しない土壌とし、菌類、微生物類、昆虫類が食物連鎖と共存できる土壌とし、前記農薬類などは使用しない有機肥料を添加した土壌である。
化学肥料、農薬による発芽しない雑穀類はDNAがこわれ、死んだ物質である抗酸性の高い自己免疫の高い植物はアミノ酸濃度が高くなり、害虫に強い植物ができる。
【0028】有機肥料として光合成細菌体を土壌中に混入するとより効果的である。この光合成細菌体の添加により、稲作などの病原菌である糸状菌の繁殖を抑制して放射菌を増殖し、この放射菌が糸状菌を殺菌する働きがある。
【0029】本発明の玄米健康食に用いる玄米などはアミノ酸を高濃度含む土壌によって栽培されるのであるが、これにこれら植物の生育中にキトサンを散布すると害虫に対する抵抗力が高まり、更に、再生効率もよい。
また、土壌に散布する水として強電解水が好ましい。この強電解水は殺菌効果に優れている。この強電解水は、水に食塩またはカリウムを添加し、この食塩水を電気分解して陽極電極側から強酸性電解水が採集され、一方、陰極側からは強アルカリ性水が生成する。」
・「【0040】この表3によれば、土壌中に含有する成分を制御して、本発明の玄米などを栽培することにより、玄米健康食を摂取することが出来る。
しかし、従来の方法による無機化学肥料、農薬を使用した土壌で栽培したとき、ほうれん草の場合残留窒素は800?1600mgであった。
残留窒素は人体に悪影響を及ぼすといわれており、少ないほどよいのである。植物の葉の残留窒素は硝酸塩に変化し、人の口の中で亜硝酸(発ガン性物質)になり、胃の中でニトロソアミン(発ガン性物質)になり、このニトロソアミンは血液中に吸収されるとメトへログロビンになり赤血球に結合し、酸素の運搬が出来なくなる。インシュリンの生成が抑制され、糖尿病になりやすくなる。赤血球による酸素の運搬が減少すると酸欠状態となり、子供は唇が紫色になる。」

上記記載によると、従来の方法で栽培した作物は残留窒素を多く含むものであり、人体に悪い影響を及ぼすが、本願補正発明の健康食を栽培する土壌は、表3に示すような成分であるから残留窒素の含有量が半減した旨、記載されている。

(ク)本願の明細書の上記記載などからすると、本願補正発明の土壌は、殺虫剤、殺菌剤、抗生物質の農薬類や合成食品、合成添加物、化学肥料など無機物の合成物質の残留が少ない土壌で、基本的には残留しない土壌であって、菌類、微生物類、昆虫類が食物連鎖と共存できる土壌であり、特に、栽培した作物の残留窒素を減少させるものといえる。

(ケ)そして、本願補正発明の「腐葉土を主成分とする土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.3mg、硝酸態窒素(N-N)を0.7mg、可給態燐酸を15mg、交換性カリウムを15mg、交換性石灰を200mg、交換性苦土を35mg、可給態マンガンを5ppm、可給態鉄を15ppm、可給態銅を1ppm、可給態亜鉛を10ppm、ホウ素を2ppm、モリブデンを0.05ppm」、「燐酸吸収係数が500mg」、「土壌酸度(pH)が5.5」、「電気伝導度が0.05」の各値は、表3の適正範囲の中央に記載された数値であって、段落【0021】や段落【0027】で、「特に、中心値に近いほど好ましい。」と記載されたものであり、また、「塩基置換容量が5?40meq」、「腐植を1.0?9.0%」との数値範囲は、表3に適正範囲として示されたものである。
そして、本願の明細書の記載を参照しても、本願補正発明の「腐葉土を主成分とする土壌100gあたり」の「アミノ酸態窒素(A-N)」「硝酸態窒素(N-N)」「可給態燐酸」「交換性カリウム」「交換性石灰」「交換性苦土」「可給態マンガン」「可給態鉄」「可給態銅」「可給態亜鉛」「ホウ素」「モリブデン」「燐酸吸収係数」「土壌酸度(pH)」「電気伝導度」の各数値の値そのもの、および、「塩基置換容量」「腐植」との数値範囲の上限と下限について、特別な臨界的な意義を有することについては記載されていない。

(コ)そうすると、上記(ア)?(カ)で検討したとおり、刊行物1発明の玄米飲料食品に用いる発芽玄米について、農業用培土として良く用いられる腐葉土を主成分とする土壌によって生産したものを採用すること、さらにその土壌について、植物の生長に必要な窒素を含有させつつも人体に悪影響がないよう、作物中の残留窒素を低減させるべく「硝酸態窒素(N-N)」や「アミノ酸態様窒素(A-N)」の含有量を設定し、さらに、作物の生育に適正な土壌とするために「有効態リン酸」、「交換性カリ(K_(2)O)」、「交換性カルシウム(CaO)」、「交換性マグネシウム(MgO)」、「置換性マンガンや易還元性マンガン」、「有効態鉄」、「有効態銅」、「全亜鉛」、「有効態ホウ素」、「モリブデン」、「腐食」の含有量を指標としてこれらを適正な値とし、これらを含有させた土壌の「燐酸吸収係数」、「塩基置換容量」「土壌酸度(pH)」「電気伝導度」の測定値を適正なものとすることは、本願出願前の周知の技術に基づいて当業者が通常なし得たものであり、また、これにより生産された発芽玄米であって残留窒素が300mg以下のものを、玄米飲料食品の発芽玄米として用いることも、作物中の残留窒素を低減させることを考えて、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願補正発明の「腐葉土を主成分とする土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.3mg、硝酸態窒素(N-N)を0.7mg、可給態燐酸を15mg、交換性カリウムを15mg、交換性石灰を200mg、交換性苦土を35mg、可給態マンガンを5ppm、可給態鉄を15ppm、可給態銅を1ppm、可給態亜鉛を10ppm、ホウ素を2ppm、モリブデンを0.05ppm、腐植を1.0?9.0%含み、燐酸吸収係数が500mg、塩基置換容量が5?40meq、土壌酸度(pH)が5.5、電気伝導度が0.05の土壌」であるとの、各値自体及び数値範囲は、適正土壌として求められる程度の値であるし、また、「残留窒素が300mg以下の発芽玄米」との数値も作物に含まれる残留窒素は少ない方が望ましいことから適宜に設定し得たものといえ、そして、上記(ケ)のとおり、本願補正発明の各数値自体及びその数値範囲の上限、下限については特別な臨界的意義は認められない。

(相違点2について)
刊行物1記載の玄米飲料食品は、発芽玄米が有する栄養素を損なうことなく摂取することができるものであり(1b)、さらにこれを上記(相違点1について)で検討したとおり、人体に悪影響がでないよう、残留窒素を低減させた発芽玄米を用いた玄米飲料食品とすることで、これを人の健康のための「玄米健康食」とする程度のことも、当業者が適宜になし得たことである。

(本願補正発明の効果について)
本願発明の効果は、刊行物1?5に記載された事項及び周知の技術から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1?5に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年12月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成21年9月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。
「【請求項1】土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.02?50mg、硝酸態窒素(N-N)を0.02?70mg、可給態燐酸を2?400mg、交換性カリウムを1?300mg、交換性石灰を50?1000mg、交換性苦土を5?400mg、可給態マンガンを0.5?70ppm、可給態鉄を1.5?300ppm、可給態銅を0.1?30ppm、可給態亜鉛を1.5?80ppm、ホウ素を0.5?30ppm、モリブデンを0.002?2ppm、腐植を1.0?9.0%含み、燐酸吸収係数が40?3000mg、塩基置換容量が5?40mg、土壌酸度(pH)が3.2?7.5、電気伝導度が0.02?5の土壌によって生産され、残留窒素が300mg以下の籾殻付き若しくは籾殻無し生玄米、または発芽玄米、或いはそれらの粉末をそのまま又は水につけて、加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食するか、前記籾殻付き若しくは前記籾殻無し生玄米、または前記発芽玄米、或いはそれらの粉末と、前記籾殻付き若しくは前記籾殻無し生玄米、または前記発芽玄米以外の穀類、果実類、または野菜類であって葉部、茎及び根を丸ごと含んだ穀類、果実類、または野菜類を添加混合してなることを特徴とする玄米健康食。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1?5及びその記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の「腐葉土を主成分とする土壌100gあたり、アミノ酸態窒素(A-N)を0.3mg、硝酸態窒素(N-N)を0.7mg、可給態燐酸を15mg、交換性カリウムを15mg、交換性石灰を200mg、交換性苦土を35mg、可給態マンガンを5ppm、可給態鉄を15ppm、可給態銅を1ppm、可給態亜鉛を10ppm、ホウ素を2ppm、モリブデンを0.05ppm、腐植を1.0?9.0%含み、燐酸吸収係数が500mg、塩基置換容量が5?40meq、土壌酸度(pH)が5.5、電気伝導度が0.05の土壌」を、「腐葉土を主成分とする」ものであることを省き、また、アミノ酸態窒素(A-N)を「0.02?50mg」、硝酸態窒素(N-N)を「0.02?70mg」、可給態燐酸を「2?400mg」、交換性カリウムを「1?300mg」、交換性石灰を「50?1000mg」、交換性苦土を「5?400mg」、可給態マンガンを「0.5?70ppm」、可給態鉄を「1.5?300ppm」、可給態銅を「0.1?30ppm」、可給態亜鉛を「1.5?80ppm」、ホウ素を「0.5?30ppm」、モリブデンを「0.002?2ppm」に、そして、燐酸吸収係数が「40?3000mg」、土壌酸度(pH)が「3.2?7.5」、電気伝導度が「0.02?5」として、本願補正発明における各数値を含む数値範囲に拡張したものであって、さらに、塩基置換容量の単位について「meg」との正しい記載と修正する前の「mg」との誤記を含んだものであり、
さらに、本願補正発明の「発芽玄米或いはその粉末、をそのまま又は水につけて、加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食用に供する」ことを「籾殻付き若しくは籾殻無し生玄米、または発芽玄米、或いはそれらの粉末をそのまま又は水につけて、加熱、水炊き、蒸すの加工処理を施すことなく食するか、前記籾殻付き若しくは前記籾殻無し生玄米、または前記発芽玄米、或いはそれらの粉末と、前記籾殻付き若しくは前記籾殻無し生玄米、または前記発芽玄米以外の穀類、果実類、または野菜類であって葉部、茎及び根を丸ごと含んだ穀類、果実類、または野菜類を添加混合してなること」に拡張したものである。

そうすると、本願発明の構成要素を全て含んだ本願補正発明が、前記「第2 4」に記載したとおり、刊行物1?5に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1?5に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1?5に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-28 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-19 
出願番号 特願2004-207262(P2004-207262)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
P 1 8・ 575- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 知美冨永 みどり鶴 剛史  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 齊藤 真由美
菅野 智子
発明の名称 玄米健康食  
代理人 小田 治親  

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