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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1273735
審判番号 不服2012-85  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-04 
確定日 2013-05-08 
事件の表示 特願2009-525078「シャフト用シール」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月28日国際公開、WO2008/023061、平成22年 1月21日国内公表、特表2010-501772〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2007年8月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年8月24日 ヨーロッパ特許庁、パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年11月10日 ヨーロッパ特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成21年2月24日付けで特許法第184条の5第1項に規定する国内書面、並びに特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出された後、平成23年1月18日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年5月12日付けで意見書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたが、平成23年8月24日付けで拒絶査定がなされ、平成24年1月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成24年2月16日付けで審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成23年5月12日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに平成21年2月24日付けで提出された明細書及び図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】
軸受ハウジング内のオイルが吹き付けられる軸受空間に対して、コンプレッサ・ホイール(1)の後部に形成された空間を密封するシールであって、
前記軸受ハウジングには、シャフト(2)が回転自在に取り付けられており、前記シールは、前記シャフト(2)に結合されたシール・ディスク(4)を有するシールにおいて、
オイルが吹き付けられる前記軸受空間と前記シール・ディスク(4)との間で、径方向内側に開かれている環状の溝が、前記軸受ハウジング(5)に形成されており、この溝は、前記シャフト(2)と共に、収集チャンバ(51)を形成し、
前記収集チャンバ(51)の下方領域には、オイル・ドレイン(54)が設けられており、前記収集チャンバによって、油流の大部分が排出され、かくして、前記シール・ディスク及び前記シールの残り部分に当たる油量が減じられること、
を特徴とするシール。」

2.引用文献
(1)引用文献の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2001-289052号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の記載がある。

(ア)「【請求項1】 タービン翼を備えたタービン軸をケース内の軸受に支持すると共に、前記タービン軸の前記軸受より外側位置にオイルシールを設けたターボ過給機において、
該オイルシールと軸受との間に、タービン軸周囲を空間とするオイル切り室を設け、該オイル切り室内のタービン軸に略円板状のスリンガーを設けると共に前記オイル切り室の内壁面の一部を延出して堰部を設け、
該堰部は、スリンガーの上部外周面に倣う円弧面を有すると共に、前記円弧面のタービン翼側にタービン軸側端部を設け、該タービン軸側端部を前記スリンガーの外周面に対向させたことを特徴とするターボ過給機。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】自動車のエンジンに装着されるターボ過給機は、タービン軸両端にタービン翼を備え、エンジンの排気系と吸気系との間にタービン軸を設置し、排気により回転させる構造のものがある。本発明は、上記構造においてタービン軸の潤滑を図るオイルの経路を確立したターボ過給機に関するものである。」(段落【0001】)

(ウ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】一方、オイル切り室9の天井壁面またはタービン軸2より略上方位置の壁面に飛ばされたオイルは、ケース1下部の排出口12から排出されるものもあるが、オイル切り室9内壁に沿ってタービン翼3側に向かって流れるため、リング7に達する虞がある。リング7に達したオイルは、リング7の切欠部からタービン翼3を収容した室に流出することが可能となる。このようにして、オイルがタービン翼3を収容した室に流出することはエンジンオイルの減少となり、また、オイルの燃焼による白煙を排気ノズルから排出するという不具合を生じることになる。
【0007】本発明は、タービン軸の回転を潤滑させるオイルが、タービン軸の回転によりタービン翼側に向かって浸透しても、タービン翼を収容した室まで到達しないようにしたターボ過給機を提供することを目的とする。」(段落【0006】及び【0007】)

(エ)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1(a)に示すように、ターボ過給機のタービン軸2はエンジンの吸気経路及び排気経路に臨む室にタービン翼3を収容して、ケース1内に設けた軸受6により回転自在に設けられている。オイルは供給口4からオイル通路5を通り軸受6に到達し、軸受部を潤滑させた後、排出口12から排出される。
【0012】図1(b)及び図2に示すように、ケース1のオイル切り室9内に設けたタービン軸2のスリンガー8は円柱部10とこれに連接した弧状外周溝11とから形成されており、スリンガー8の上方及び側方向のケース内壁面を、スリンガー8の周面に対向して近接させている。すなわち、スリンガー8の円柱部10の上部外周面に向かってオイル切り室9のタービン軸中央側の内壁からタービン室に向かって延出する堰部13が設けられている(図2参照)。この堰部13は円柱部10の上部外周面に倣う円弧面を有し、この円弧面はスリンガー8の外周面の上部を近接して覆うようになっている。また、堰部13のタービン翼側への延出端部を、スリンガー8の外周面のタービン翼側端部に略整合するように設けている。この堰部13の円弧面とスリンガー8の外周面との隙間を狭くすることでオイル切り室9へのオイルの流れを絞り、多量のオイルがオイル切り室9に流出するのを防止している。ここで、図2を参照した詳細は後述する。
【0013】また、図1(b)に示すように、堰部13の円弧面のタービン翼側端部aは、スリンガー8の円柱部10の外周面の軸方向長さ内、すなわち、スリンガー8の円柱部10の外周面の外側端部bより内側で、スリンガー8の円柱部10の外周面の内側端部cより外側の位置にさせる。例えば、堰部13の円弧面のタービン翼側端部aがスリンガー8の円柱部10の外周面の端部bより外側方向(タービン翼側)に長く延びていると、堰部13下部に付着したオイルがエンジン停止時にスリンガー8の弧状外周溝11を越え、リング7付近に達してしまう虞があり、また、堰部13の円弧面のタービン翼側端部aがスリンガー8の円柱部10の外周面の内側端部cよりも内側に位置すると、堰部13の円弧面とスリンガー8の円柱部10の外周面との隙間を狭くすることができず、オイル切り室9へのオイルの流れを絞ることができないので、この堰部13を越えてオイルがオイル切り室9側に流出し易くなり、オイルは遠心力によりオイル切り室9の天井面に飛散され、スリンガー8の弧状外周溝11を越えてリング7付近に達してしまう虞があるので、堰部13のタービン翼側端部aは、スリンガー8の円柱部10の外周面の外側端部b上より内側であって、かつ、内側端部c上より外側に位置させる。」(段落【0011】ないし【0013】)

(オ)「【0014】図2に示すように、スリンガー8に臨む堰部13は、オイル切り室9の内壁天井面よりタービン軸2中心高さ(水平位置)まで延出され、タービン軸心側に臨む円弧面が形成され、円弧面の始端はタービン軸上昇回転側(図2中左側)ではタービン軸中心高さ(水平位置)であり、円弧面の終端はタービン軸下降回転側(図2中右側)ではタービン軸中心高さより上方側に位置させている。また、タービン軸上昇回転側とタービン軸下降回転側とではオイルの跳ね方が異なる。詳述すると、タービン軸上昇回転側の始端面ではオイルが上方側に飛散されるため、この飛散されたオイルが堰部13の円弧面とスリンガー8の円柱部10の外周面との隙間を介してオイル切り室9側へオイルが流出するのを防止すべく円弧面の上昇回転側の始端をタービン軸心高さ(水平位置)に設けるのに対し、タービン軸下降回転側では堰部13の円弧面とスリンガー8の外周面との隙間に溜まったオイルを積極的に下方に排出すべく円弧面の下降回転側の終端をタービン軸心高さ(水平位置)より斜め上方角度の径方向線上に設けている。但し、この終端の位置が高すぎるとオイルは堰部13を越えてオイル切り室9側に流出し、スリンガー8の弧状外周溝11を越えてリング付近に達し、オイル流出の原因になるため、終端の最上位置は水平位置から45度になる。また、この位置があまりに低すぎるとオイルの流出が妨げられるため、終端の最下位置は水平位置になる。したがって、終端は水平位置と水平位置から45度の範囲に設けられ、本実施の形態では終端を水平位置から45度に設けている。
【0015】このように、タービン軸上昇回転側で堰部13下端をタービン軸2の中心高さより下げないことで、堰部13とスリンガー8との隙間からのオイル流出を改善し、また、タービン軸下降回転側で堰部13をタービン軸心位置より斜め上方、すなわち、タービン軸心位置より約45度の角度でスリンガー8を覆うように拡幅部14を形成して、飛散するオイルの落下を拡幅部14で容易にさせ、しかも、飛散するオイルがスリンガー8の弧状外周溝11を越えてリング7付近に到達するのを防ぐことができる。
【0016】また、オイル切り室9のタービン軸2から側方壁面までの距離は、タービン軸上昇回転側(図2中左側)の距離Aとタービン軸下降回転側(図2中右側)の距離Bとでは、距離Bの方が大きく、タービン軸下降回転側の方が幅広く形成されている。すなわち、タービン軸上昇回転側ではスリンガー8へのオイルの巻き込みを減少させ、下降回転側ではオイルの落下を促進させ、オイルの排出を容易にさせるものである。また、運転中のエンジンが停止(タービン軸2の回転が停止)すると、堰部13とスリンガー8の隙間に溜まっていたオイルは、隙間に沿って流れ、下方に流れケース1の排出口12から排出される。
【0017】
【発明の効果】本発明は以上述べた通りであり、請求項1に記載の発明では、スリンガーの外周面の上部側とオイル切り室内の堰部の円弧面が近接状態であるので、遠心力で飛散したオイルは堰部の円弧面に沿って流れ、タービン軸側方のオイル切り室の内壁面から下方向へ排出される。このため、オイル切り室からタービン翼を収容した室へのオイルの流出が防止でき、オイル減少の防止、白煙の発生防止が図れる。請求項2に記載の発明では、堰部の円弧面において、タービン軸下降回転側の円弧面端部が斜め上方位置であるので、回転により連行されたオイルが停留することなく、オイルが下方に容易に排出され易くなるため、多量のオイルが流下するようになっても排出されにくくなることはない。請求項3に記載の発明では、オイル切り室のタービン軸下降回転側の壁面がタービン軸上昇回転側の壁面に比べてタービン軸より離れているのでタービン軸下降回転側のオイル切り室の空間が広くなり、スリンガーの回転による飛散したオイルやスリンガーと軸受との間に溜まったオイルの量が多くなってもタービン軸下降回転側に容易に排出することができる。」(段落【0014】ないし【0017】)

(カ)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施の形態の、ターボ過給機の(a)全体と(b)要部の断面図である。
【図2】図1に示すターボ過給機の要部の径方向断面図である。
【図3】従来のターボ過給機の断面図である。
【符号の説明】
1 ケース
2 タービン軸
3 タービン翼
6 軸受
7 オイルシール
8 スリンガー
9オイル切り室
13 堰部」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)(ア)ないし(カ)並びに図1及び図2から、以下の事項が分かる。

(キ)上記(1)(ア)ないし(ウ)及び図1から、引用文献には、ターボ過給機において、タービン軸の軸受に供給されたオイルがタービン翼を収容した室へ流出するのを防止するシールが記載されていることが分かる。

(ク)上記(1)(ウ)における、オイルがタービン翼3を収容した室に流入した場合に、オイルの燃焼による白煙を排気ノズルから排出する旨の記載から、引用文献に記載されたシールは、コンプレッサの翼3を収容した室へのオイルの流出を防止するシールであることが分かる。

(ケ)内燃機関において、潤滑用のオイルは、通常、ポンプによって付勢された状態で供給されることを参酌すると、上記(1)(ア)ないし(ウ)、(2)(キ)及び(ク)並びに図1から、引用文献に記載されたシールは、軸受6を収容するケース1内のオイルが吹き付けられる軸受空間に対して、コンプレッサのタービン翼より軸受側に形成された空間を密封するシールであることが分かる。

(コ)上記(1)(ア)ないし(カ)並びに図1及び図2から、引用文献に記載されたシールにおいて、ケース1には、タービン軸2が回転自在に取付けられており、該タービン軸2にオイルシール7が設けられていることが分かる。

(サ)上記(1)(ア)ないし(カ)並びに図1及び図2から、引用文献に記載されたシールにおいて、ケース1内のオイルが吹き付けられる軸受空間とオイルシール7との間で、径方向内側に開かれている環状の溝が、ケース1に形成されており、この溝は、タービン軸2と共に、オイル切り室9を形成することが分かる。

(シ)上記(1)(ア)ないし(カ)並びに図1及び図2から、引用文献に記載されたシールにおいて、オイル切り室9の下方領域には、排出口12が設けられていることが分かる。

(ス)上記(1)(オ)及び図2から、引用文献に記載されたシールにおいて、堰部13の円弧面とスリンガー8の外周面との隙間に溜まったオイルは、図2に示されたオイル切り室9の拡幅部14から流出し、オイル切り室9からオイルシール7に至る部分のオイルの量が減じられることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1及び図2を参酌すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「軸受6を収容するケース1内のオイルが吹き付けられる軸受空間に対して、コンプレッサのタービン翼3より軸受側に形成された空間を密封するシールであって、
前記ケース1には、タービン軸2が回転自在に取付けられており、前記タービン軸2にオイルシール7が設けられているシールにおいて、
オイルが吹き付けられる軸受空間と前記オイルシール7との間で、径方向内側に開かれている環状の溝が、前記ケース1に形成されており、この溝は、前記タービン軸2と共に、オイル切り室9を形成し、
前記オイル切り室9の下方領域には、排出口12が設けられており、
堰部13の円弧面とスリンガー8の外周面との隙間に溜まったオイルは、オイル切り室9の拡幅部14から流出し、オイル切り室9からオイルシール7に至る部分のオイルの量が減じられるシール。」

3.対比
本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明における「軸受6を収容するケース1」及び「ケース1」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「軸受ハウジング」に相当し、同様に「コンプレッサのタービン翼3」は「コンプレッサ・ホイール」に相当する。
そして、引用発明におけるコンプレッサ・ホイールと軸受ハウジングとの位置関係からみて、引用発明において「コンプレッサのタービン翼より軸受側に形成された空間を密封する」ことは、本願発明において「コンプレッサ・ホイールの後部に形成された空間を密封する」ことに相当する。
また、引用発明における「タービン軸2」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「シャフト」に相当し、以下同様に「オイルシール7」は「シール・ディスク」に、「オイル切り室9」は「収集チャンバ」に、「排出口12」は「オイルドレン」にそれぞれ相当する。
さらに、「収集チャンバによって、油流が排出され、かくして、シール・ディスク及びシールの残り部分に当たる油量が減じられる」という限りにおいて、引用発明において、「堰部13の円弧面とスリンガー8の外周面との隙間に溜まったオイルは、オイル切り室9の拡幅部14から流出し、オイル切り室9からオイルシール7に至る部分のオイルの量が減じられる」ことは、本願発明において、「収集チャンバによって、油流の大部分が排出され、かくして、シール・ディスク及びシールの残り部分に当たる油量が減じられる」ことに相当する。

したがって両者は、
「軸受ハウジング内のオイルが吹き付けられる軸受空間に対して、コンプレッサ・ホイールの後部に形成された空間を密封するシールであって、
前記軸受ハウジングには、シャフトが回転自在に取り付けられており、前記シールは、前記シャフトに結合されたシール・ディスクを有するシールにおいて、
オイルが吹き付けられる前記軸受空間と前記シール・ディスクとの間で、径方向内側に開かれている環状の溝が、前記軸受ハウジングに形成されており、この溝は、前記シャフトと共に、収集チャンバを形成し、
前記収集チャンバの下方領域には、オイル・ドレインが設けられており、前記収集チャンバによって、油流が排出され、かくして、前記シール・ディスク及び前記シールの残り部分に当たる油量が減じられるシール。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
(1)「収集チャンバによって、油流が排出され、かくして、シール・ディスク及びシールの残り部分に当たる油量が減じられる」にあたり、本願発明においては、「収集チャンバによって、油流の大部分が排出され、かくして、シール・ディスク及びシールの残り部分に当たる油量が減じられる」のに対し、引用発明においては、「堰部13の円弧面とスリンガー8の外周面との隙間に溜まったオイルは、オイル切り室9の拡幅部14から流出し、オイル切り室9からオイルシール7に至る部分のオイルの量が減じられる」ものであり、オイル切り室9によって排出されるオイルが、油流の大部分であるか否か不明である点(以下、「相違点」という。)。

4.判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、オイルをオイル切り室9の内壁面から下方向に排出することにより、オイル切り室からタービン翼を収容した室へのオイルの流出を防止する(上記2.(1)(オ)参照)ものであるから、引用発明においても、タービン翼を収容した室へのオイルの流出を防止するのに必要な程度の量のオイルは、オイル切り室9によって排出されるものであるといえる。してみると、本願発明において収集チャンバによって排出されるオイルの量と、引用発明においてオイル切り室9によって排出されるオイルの量に格別の差があるとはいえない。
したがって、引用発明において、オイル切り室9によってオイルの流れの大部分が排出されるようにすることによって、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到することができたことである。

そして、本願発明を全体としてみても、本願発明の奏する効果は、引用発明から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

なお、審判請求人は審判請求書において、引用発明におけるスリンガー8が本願発明におけるシール・ディスクに相当する旨、及び引用発明において、該スリンガー8はオイル切り室9内のタービン軸2に設けられている旨を主張している。
しかし、コンプレッサ・ホイールの後部空間に対する、ターボチャージャの軸受空間の密封という目的からみれば、上記3.に記載したとおり、引用発明におけるオイルシール7が本願発明におけるシール・ディスクに相当するものであり、引用発明におけるオイル切り室9が本願発明における収集チャンバに相当するものであるから、審判請求人の上記主張は失当である。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-26 
結審通知日 2012-11-27 
審決日 2012-12-11 
出願番号 特願2009-525078(P2009-525078)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
久島 弘太郎
発明の名称 シャフト用シール  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 峰 隆司  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 野河 信久  
代理人 白根 俊郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 福原 淑弘  

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