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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1273738
審判番号 不服2012-4005  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-01 
確定日 2013-05-08 
事件の表示 特願2006-539487「RFIDセキュリティ用アルゴリズム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日国際公開、WO2005/048170、平成19年 4月26日国内公表、特表2007-511006〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年10月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年11月10日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成18年5月9日付けで特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成18年7月10日付けで特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、さらに平成19年8月30日付けで特許請求の範囲及び図面を補正する手続補正書が提出された後、平成21年5月26日付けの拒絶理由通知に対し、平成21年12月2日付けで意見書が提出され、平成22年6月30日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年1月6日付けで意見書が提出されたが、平成23年10月21日付けで拒絶査定がなされ、平成24年3月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成24年3月16日付けで審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成19年8月30日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び図面並びに平成18年7月10日付けで提出された明細書の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1及び4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明4」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】
検問通路内において無線周波数識別タグに対し、指定メモリ位置に選択された値を有するタグだけが尋問に応答するように選択的に尋問するステップと、
前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する無線周波数識別タグの全てから同時に応答を受信するステップと、
少なくとも部分的な応答を受信したとき、前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する少なくとも1個の無線周波数識別タグを前記検問通路内において検知するステップと、を含む方法。」

「 【請求項4】
検問通路内において、選択された値と共にプログラムされた無線周波数識別タグから部分的な応答を受信するステップと、
前記部分的な応答を受信すると、前記検問通路内に無許可の物品が存在することを示す警報を生成するステップと、を含む方法。」

2.先願
(1)先願明細書等の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願2002-313992号(特開2004-151821号)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば図書館での蔵書管理、物品販売店で販売するDVD、CD、ソフトウェアパッケージ、衣料品、又は食料品等の物品管理、レンタル店でレンタルするDVD、ビデオテープ又はCD等のレンタル物品の物品管理等、施設内の物品に非接触電子タグを取り付けて管理するような物品管理システム、非接触電子タグ、物品管理プログラム、及び記録媒体に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0037】
【発明の効果】
この発明により、管理領域から搬出される(持ち出される)物品、又は/及び管理領域内に搬入される(持ち込まれる)物品の非接触電子タグを読取ることができ、管理領域内の物品とパソコン等で管理するデータとの同期を確実にとって、物品を正確に管理することができる。このため、例えば図書館の書籍を管理する場合であれば図書館内に存在する書籍を常時把握することができ、不正持ち出しによって再点検が必要となるような運用面での煩わしさを削減することができる。
(中略)
【0040】
また、処理時間を短縮して非接触電子タグのそれぞれの応答データを高速に読取ることができる。これにより、物品を持って通路を走り抜けた場合でも、非接触電子タグのそれぞれの応答データを読取ることができる。
【0041】
また、不許可の非接触電子タグに対してのみ応答データを送信させることができ、不要な応答データの取得を回避する、あるいは、より高速に必要な応答データを取得することが可能となる。」(段落【0037】ないし【0041】)

(ウ)「【0043】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
この実施形態は、図書館の書籍管理に利用する場合であり、まず、図1に示す書籍管理システム1のシステム構成図、図2に示す返却口5近傍の右側面一部断面図、及び図3に示すRFタグ30の平面図と共に、書籍管理システム1のシステム構成について説明する。
【0044】
該書籍管理システム1では、予め書籍の裏表紙の内側、若しくはカバーと裏表紙の間に、図3に示すRFタグ30を接着剤で貼り付けており、該RFタグ30を貼り付けた書籍を本棚に収納している。該RFタグ30は、銅線をコイル状に形成したアンテナコイル31と、データを記憶するメモリや必要な回路構成を集積したICチップ32とを備えており、これらの表裏を長方形の透明シート33で挟んで保護して形成している。
(中略)
【0046】
書籍管理システム1は、図1に示すようにRFタグ30と通信を行う出口質問器10,10、該出口質問器10に対して信号の送受信を行う通信制御装置40、該通信制御装置40からRFタグ30に記録のデータを受信して書籍7がどの本棚に収納されているか等の管理を実行するホスト(例えばパーソナルコンピュータで構成)60を備えている。
(中略)
【0048】
前記出口質問器10,10は、出口2の少し図書館内側にあって書籍7の管理領域に通じる通路4の両横に、通信面10a,10a(右側図示省略)を向かい合わせて対設しており、該通信面10a,10aの間の空間全てを通信可能範囲として、RFタグ30が通路4のどの位置で通過しても通信が可能となっている。」(段落【0043】ないし【0048】)

(エ)「【0076】
次に、図6に示すメモリ内容説明図と共に、ICチップ32内のメモリにおける記憶領域の定義について説明する。
図中の(A)は、メモリに格納するデータの内容を示しており、4バイト(1バイトは8ビット)毎にページ番号を割り付けている。このメモリの頭から12バイトをシステムエリア(領域)として利用する。
【0077】
該システムエリアには、ページ番号「00h」の最初から「01h」の最後までの8バイトにUID(固有識別子:unique identifier)を格納し、次の1バイト(ページ番号=02h、バイト=0)にAFI(応用分野識別子:application family identifier)、その次の1バイト(ページ番号=02h、バイト=1)の1ビット目を盗難防止用のEASとして利用し、残りのシステムエリアを予約エリアとして利用する。
【0078】
ページ番号「03h」以降はユーザエリアであり、図書館側のエンジニア等が自由に利用できる領域である。具体的には、書籍のタイトル、分類、著者等の書籍データ(物品データ)をユーザデータとして格納している。
【0079】
前述のEASの値は、ページ番号02hのByte1の最下位ビット、すなわち図6の(B)に示すようにLSB(最下位ビット:least significant bit)に格納しており、残りの7ビットは前述したように予約エリアとして利用している。」(段落【0076】ないし【0079】)

(オ)「【0103】
(M)は、盗難防止用のEASで持ち出し可否をチェックするEASチェックコマンドを示す。このコマンドは、SOF、コマンド(EASチェックコマンドであることを示すデータ:EASが「0」なら応答させるコマンド)、UID、CRC、及びEOFで構成する。
このEASチェックコマンドに対しては、EASが「0」の場合のみレスポンスがあり、該レスポンスはSOF、固定値(例えば持ち出しOKを示すデータ等)、CRC、及びEOFで構成する。
【0104】
このようなEASチェックコマンドにより、質問器(特に出口質問器10)で持ち出し不可のRFタグ10の通過を検出し、報知することが可能となる。
以上の各コマンドにより、RFタグ10に対してデータの読取り、データの更新(追加、変更、削除)、動作の変更を行うことができる。特にイベントリーコマンドでは、AFIが貸出処理完了の「82」以外のRFタグ30のUIDを読み取るといったことが可能である。また、EASチェックコマンドでは、貸出処理が完了していないことを検出することが可能である。」(段落【0103】及び【0104】)

(カ)「【0134】
次に、通路4に備えた出口質問器10がファームウェアに基づいて実行するゲート処理について、図14に示す処理フロー図と共に説明する。
制御部42は、EASチッェクコマンドを送信し、貸し出し処理がされていない書籍7(e=0)が出口質問器10の通信領域内に存在しないか、すなわちRFタグ30の応答(レスポンス)がないか確認する(ステップr1)。
【0135】
なお、EASチッェクコマンドでは、どのRFタグ30からも同じレスポンスが応答されるため、例え複数のRFタグ30が出口質問器10の通信領域に存在していても、特別な手順を踏むことなくレスポンスを受信できる。すなわち、同じデータが同じタイミングで返却されるため、データが重なってもデータがつぶれることがなく、出口質問器10で取り出すことができる。
【0136】
応答が無い場合は、ステップr1にリターンしてEASチェックコマンドを繰り返す(ステップr2)。
応答があった場合には、通信制御装置40のブザー/表示部47でブザー音を鳴らして報知し(ステップr3)、複数タグアクセス処理を実行する(ステップr4)。
【0137】
ここで、複数アクセス処理内でイベントリーコマンドを実行するときは、「AFI=81」として実行する。すなわち、貸出処理が行われておらず返却処理完了状態のままであるRFタグ30に対してアクセスを行う。
【0138】
また、ステップn6での必要な処理として、リードコマンドを実行し、RFタグ30に記憶のデータを読み込む。このとき読み込むデータは、UIDは前述した複数タグアクセス処理にて取得済みであるため、書籍タイトルや著者等のデータとする。
【0139】
この複数タグアクセス処理が終了すると、ステップr1にリターンし、不正持ち出しのチェックを繰り返す。
【0140】
以上の動作により、書籍7の不正持ち出しが発生した場合に、持ち出される書籍7のRFタグ30にアクセスしてそのUID、及び書籍タイトル等を把握することができる。これにより、ブザー/表示部47の故障や携帯型ヘッドホンの着用等で気づかずに書籍7が不正持ち出しされた場合であっても、持ち出された書籍7を的確に把握し、場合によっては補充することが可能となる。
【0141】
なお、このゲート処理では、複数タグアクセス処理を「AFI=81」で実行しているため、応答してくるRFタグ30も限定され、処理時間を大幅に短縮でき、人がゲートを通常に歩いて通り抜ける間にRFタグ30のUID、および書籍タイトル等のデータを取得できる。
【0142】
また、RFタグ30のUIDと該RFタグ30に関するデータ(書籍タイトル等)をホスト60で紐付けして管理している場合は、UIDだけの取得でも書籍7を特定可能であり、ステップn6のリードコマンドを省略してさらに処理速度を向上できる。
【0143】
なお、万一、走り抜けるなどした場合で、UIDおよびタグ情報が取得できなかった場合であっても、EASチェックによる検知は完了しているため、通常EASゲートと同様な不正持ち出しの警告を行うことは可能である。」(【0134】ないし【0143】)

(2)先願明細書等に記載された事項
上記(1)(ア)ないし(カ)並びに図1、図3、図6及び図14から、以下の事項が分かる。

(キ)上記(1)(ア)ないし(オ)並びに図1、図3、図6及び図14から、先願明細書等には、通路4においてRFタグ30を検出する方法において、通路4においてRFタグ30に対し、ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」の場合のみレスポンスを応答するように選択的にEASチェックコマンドを送信するステップを含むものであることが分かる。

(ク)上記(1)(エ)及び(カ)並びに図3及び図14から、先願明細書等に記載された通路4においてRFタグ30を検出する方法は、ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」のRFタグ30の全てから同時にレスポンスを受信するステップを含むものであることが分かる。

(ケ)上記(1)(エ)及び(カ)並びに図3及び図14から、先願明細書等に記載された通路4においてRFタグ30を検出する方法は、EASが「0」であるRFタグ30からレスポンスを受信したとき、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出し、ブザー音を鳴らして報知するステップと、EASが「0」であるRFタグ30から、UIDと書籍タイトル等のデータを含むレスポンスを受信するステップとを含むものであることが分かる。

(3)先願明細書等に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図1、図3、図6及び図14を参酌すると、引用文献には次の発明(以下、「先願明細書等に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

「通路4においてRFタグ30を検出する方法において、通路4においてRFタグ30に対し、ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」の場合のみレスポンスを応答するように選択的にEASチェックコマンドを送信するステップと、
ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」のRFタグ30の全てから同時にレスポンスを受信するステップと、
EASが「0」であるRFタグ30からレスポンスを受信したとき、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出し、ブザー音を鳴らして報知するステップと、EASが「0」であるRFタグ30から、UIDと書籍タイトル等のデータを含むレスポンスを受信するステップとを含む方法。」

3.本願発明1と先願明細書等に記載された発明との対比
本願発明1と先願明細書等に記載された発明とを対比すると、先願明細書等に記載された発明における「通路4」は、その機能及び構成からみて、本願発明1における「検問通路」に相当し、以下同様に「RFタグ30」は「無線周波数識別タグ」に、「ICチップ32内のメモリにおけるEAS」は「指定メモリ位置」に、「EASチェックコマンド」は「尋問」に、それぞれ相当する。
そして、先願明細書等に記載された発明において「ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」の場合のみレスポンスを応答するように選択的にEASチェックコマンドを送信する」ことは、本願発明1において「指定メモリ位置に選択された値を有するタグだけが尋問に応答するように選択的に尋問する」ことに相当する。
また、先願明細書等に記載された発明において「持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出し、ブザー音を鳴らして報知する」ことは、ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」である少なくとも1個のRFタグ30を通路4において検知することを意味するから、本願発明1において「前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する少なくとも1個の無線周波数識別タグを前記検問通路内において検知する」ことに相当する。
そしてまた、「応答を受信したとき、前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する少なくとも1個の無線周波数識別タグを前記検問通路内において検知するステップ」という限りにおいて、先願明細書等に記載された発明における「EASが「0」であるRFタグ30からレスポンスを受信したとき、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出し、ブザー音を鳴らして報知するステップ」は、本願発明1における「少なくとも部分的な応答を受信したとき、前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する少なくとも1個の無線周波数識別タグを前記検問通路内において検知するステップ」に相当する。

したがって両者は、
「検問通路内において無線周波数識別タグに対し、指定メモリ位置に選択された値を有するタグだけが尋問に応答するように選択的に尋問するステップと、
前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する無線周波数識別タグの全てから同時に応答を受信するステップと、
応答を受信したとき、前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する少なくとも1個の無線周波数識別タグを前記検問通路内において検知するステップと、を含む方法。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点)
「応答を受信したとき、前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する少なくとも1個の無線周波数識別タグを前記検問通路内において検知するステップ」に関し、本願発明1においては「少なくとも部分的な応答を受信したとき、前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する少なくとも1個の無線周波数識別タグを前記検問通路内において検知するステップ」であるのに対し、先願明細書等に記載された発明においては「EASが「0」であるRFタグ30からレスポンスを受信したとき、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出し、ブザー音を鳴らして報知するステップ」である点(以下、「相違点1」という。)。

4.判断(1)
上記相違点1について検討する。
本願発明1において、「少なくとも部分的な応答を受信したとき、前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する少なくとも1個の無線周波数識別タグを前記検問通路内において検知する」のは、RFリーダーは「チェックイン状態」値に設定されている全てのタグに応答させ(本願の明細書の段落【0046】)、「チェックアウト状態」に設定されたタグは応答しないためであり(同段落【0048】)、チェックイン・ステータスを有するタグの存在を迅速に判定するためには、各々のタグを個別に識別する必要がない(同段落【0041】)からである。
これに対し、先願明細書等に記載された発明は、ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」の場合のみレスポンスを応答するものであって、該レスポンスを受信したときにUIDと書籍タイトル等のデータを含むレスポンスを受信する前に、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出するものであり、「UIDおよびタグ情報が取得できなかった場合であっても、不正持ち出しの警告を行う」(上記2.(1)(カ)参照)ことによって、「より高速に必要な応答データを取得することが可能となる」(上記2.(1)(イ)参照)ものである。
してみると、上記相違点1で、本願発明1において「少なくとも部分的な応答を受信したとき、前記指定メモリ位置に前記選択された値を有する少なくとも1個の無線周波数識別タグを前記検問通路内において検知する」ことと、先願明細書等に記載された発明において「EASが「0」であるRFタグ30からレスポンスを受信したとき、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出」することの差異は、「チェックイン状態」値に設定されているタグの検知と各々のタグの個別の識別とを1つのステップで行うか、別のステップで行うかという、設計上の微差によるものであって、それによって新たな効果を奏するものではない。
したがって、上記相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差であるから、実質的なものではなく、本願発明1と先願明細書等に記載された発明は実質的に同一である。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、先願明細書等に記載された発明において、応答があった場合とは、図9(M)に示されるように、EASチェックコマンドのレスポンスを全て受信した場合であるから、本願発明1は先願明細書等に記載された発明よりも素早く警報を生成することができる旨を主張している。
しかし、本願発明1は、「少なくとも部分的な応答を受信したとき」に警報を生成するものであって、「部分」が何であるかは特定されていないから、少なくともUIDを含まないEASチェックコマンドのレスポンスを受信した場合に警報を生成する先願明細書等に記載された発明と比較して、素早く警報を生成することができるということはできない。

5.本願発明4と先願明細書等に記載された発明との対比
次に本願発明4と先願明細書等に記載された発明とを対比すると、先願明細書等に記載された発明における「通路4」は、その機能及び構成からみて、本願発明4における「検問通路」に相当する。
また、先願明細書等に記載された発明における「RFタグ30」は、「ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」の場合のみレスポンスを応答する」ものであるところ、当然、RFタグのレスポンスはプログラムによって行われるから、「プログラムされた無線周波数識別タグ」に相当する。
そして、本願発明4において「無許可の物品」とは「未だチェックイン状態であるタグ」(本願の明細書の段落【0023】参照)を意味するから、先願明細書等に記載された発明における「ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」のRFタグ30」及び「持ち出し不可のRFタグ30」は、本願発明4における「無許可の物品」に相当する。
また、先願明細書等に記載された発明において「持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出し、ブザー音を鳴らして報知する」ことは、本願発明4において「前記検問通路内に無許可の物品が存在することを示す警報を生成する」ことに相当する。
さらに、先願明細書等に記載された発明は「通路4においてRFタグ30を検出する方法」であって「ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」の場合のみレスポンスを応答する」ものであるから、「検問通路内において、選択された値と共にプログラムされた無線周波数識別タグから応答を受信するステップ」という限りにおいて、先願明細書等に記載された発明における「ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」のRFタグ30の全てから同時にレスポンスを受信するステップ」は、本願発明4における「検問通路内において、選択された値と共にプログラムされた無線周波数識別タグから部分的な応答を受信するステップ」に相当する。
そしてまた、「応答を受信すると、前記検問通路内に無許可の物品が存在することを示す警報を生成するステップ」という限りにおいて、先願明細書等に記載された発明における「EASが「0」であるRFタグ30からレスポンスを受信したとき、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出し、ブザー音を鳴らして報知するステップ」は、本願発明4における「前記部分的な応答を受信すると、前記検問通路内に無許可の物品が存在することを示す警報を生成するステップ」に相当する。

したがって両者は、
「検問通路内において、選択された値と共にプログラムされた無線周波数識別タグから応答を受信するステップと、
前記応答を受信すると、前記検問通路内に無許可の物品が存在することを示す警報を生成するステップと、を含む方法。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点)
「検問通路内において、選択された値と共にプログラムされた無線周波数識別タグから応答を受信するステップ」に関し、本願発明4は「検問通路内において、選択された値と共にプログラムされた無線周波数識別タグから部分的な応答を受信するステップ」であるのに対し、先願明細書等に記載された発明は「ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」のRFタグ30の全てから同時にレスポンスを受信するステップ」であり、「応答を受信すると、前記検問通路内に無許可の物品が存在することを示す警報を生成するステップ」に関し、本願発明4は「前記部分的な応答を受信すると、前記検問通路内に無許可の物品が存在することを示す警報を生成するステップ」であるのに対し、先願明細書等に記載された発明は「EASが「0」であるRFタグ30からレスポンスを受信したとき、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出し、ブザー音を鳴らして報知するステップ」である点(以下、「相違点2」という。)。

6.判断(2)
上記相違点2について検討する。
本願発明4において、無線周波数識別タグから「部分的な応答」を受信するのは、RFリーダーは「チェックイン状態」値に設定されている全てのタグに応答させ(本願の明細書の段落【0046】)、「チェックアウト状態」に設定されたタグは応答しないためであり(同段落【0048】)、チェックイン・ステータスを有するタグの存在を迅速に判定するためには、各々のタグを個別に識別する必要がない(同段落【0041】)からである。
これに対し、先願明細書等に記載された発明は、ICチップ32内のメモリにおけるEASが「0」の場合のみレスポンスを応答するものであって、該レスポンスを受信したときにUIDと書籍タイトル等のデータを含むレスポンスを受信する前に、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出するものであり、「UIDおよびタグ情報が取得できなかった場合であっても、不正持ち出しの警告を行う」(上記2.(1)(カ)参照)ことによって、「より高速に必要な応答データを取得することが可能となる」(上記2.(1)(イ)参照)ものである。
してみると、上記相違点2で、本願発明4において無線周波数識別タグから「前記部分的な応答を受信すると、前記検問通路内に無許可の物品が存在することを示す警報を生成する」ことと、先願明細書等に記載された発明において「EASが「0」であるRFタグ30からレスポンスを受信したとき、持ち出し不可のRFタグ30の通過を検出」することの差異は、「チェックイン状態」値に設定されているタグの検知と各々のタグの個別の識別とを1つのステップで行うか、別のステップで行うかという、設計上の微差によるものであって、それによって新たな効果を奏するものではない。
したがって、上記相違点2は、課題解決のための具体化手段における微差であるから、実質的なものではなく、本願発明4と先願明細書等に記載された発明は実質的に同一である。

7.むすび
以上のとおり、本願発明1及び4は、先願明細書等に記載された発明であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-29 
結審通知日 2012-12-04 
審決日 2012-12-18 
出願番号 特願2006-539487(P2006-539487)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 哲  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
久島 弘太郎
発明の名称 RFIDセキュリティ用アルゴリズム  
代理人 河合 章  
代理人 青木 篤  
代理人 遠藤 力  
代理人 南山 知広  
代理人 鶴田 準一  

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