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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B44C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B44C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B44C
管理番号 1273778
審判番号 不服2011-17943  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-19 
確定日 2013-05-07 
事件の表示 特願2004-173359「金属装飾材料の製法および金属装飾材料およびそれらの用途」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月30日出願公開、特開2005-170030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成16年6月11日(優先権主張2003年12月9日、タイ国)の外国語書面出願であって、同年7月9日に翻訳文が提出され、平成22年6月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月24日に手続補正がなされ、平成23年4月15日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。
これに対し、同年8月19日に本件審判の請求とともに手続補正がなされ、同年10月17日に手続補足書が提出され、当審において同24年5月11日付けで拒絶理由が通知され、同年11月14日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。

第2.拒絶理由
当審において通知した拒絶理由は、特許法第29条第2項第36条第4項及び第6項を根拠とするものであり、概要は、以下のとおりである。

(第29条第2項)
1.実用新案登録第2507812号公報
2.実用新案登録第2577523号公報
3.特公平4-79840号公報
4.実公昭56-9404号公報
5.実願昭47-90014号(実開昭49-46959号)のマイクロフィルム
6.実願昭53-89827号(実開昭55-7915号)のマイクロフィルム
7.実願昭54-40943号(実開昭55-143086号)のマイクロフィルム
8.特開平11-20379号公報
9.特開2001-17305号公報
10.特開2002-475号公報
請求項1?23に係る発明は、刊行物1?3に記載された発明における素材を固定する手段として、刊行物4?10のごとく周知の花粉状ホルダーを用いることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(第36条第6項)
(1)請求項1において、「花粉状ホルダー」がどのようなものか、発明の詳細な説明を参酌しても理解できない。
(2)(以下略)

(第36条第4項)
発明の詳細な説明の記載が著しく不明であるため、具体的にどのようなことを行って、具体的にどのようなものを作成しているのかが全く理解できない。

第3.第36条第6項について
1.「花粉状ホルダー」についての翻訳文の記載
提出された翻訳文には、「花粉状ホルダー」について、以下の記載がある。

「【請求項1】
a)メイン金属の表面上に花粉状ホルダーを作製し、そして
b)模様を作り出す素材をメイン金属の表面に固定する
諸工程を含む、金属装飾材料の製造方法。
【請求項2】
花粉状ホルダーはメイン金属の表面をエッチングすることによって作製される、請求項1の方法。
【請求項3】
エッチングは4?8回または4?8方向にわたって横断方向に操作される、請求項2の方法。
【請求項4】
エッチング方向は、
4.1北から南へ又はその逆、
4.2西から東へ又はその逆、
4.3北東から南西へ又はその逆、
4.4北西から南東へ又はその逆、
の群から任意的に選ばれてもよい、請求項2または3の方法。
【請求項5】
前記方向は異なる度合の任意の角度をつくって傾かせてもよい、請求項4の方法。
【請求項6】
4.3および4.4に示された通りの方向を、場合によっては、4.1の方向に対して40?50°の角度を成すように選択してもよい、請求項4または5の方法。
【請求項7】
上記方向として、場合によっては、先行方向と同じ方向、逆方向または交叉方向でエッチングされてもよい、請求項4または5の方法。
【請求項8】
エッチング操作は同じ方向に、しかし1?5°異なる角度で、2回以上操作されてもよい、請求項3?7のいずれか一項の方法。
【請求項9】
場合によっては、請求項4に示された通りの方向で4.1、4.3、4.4そして4.2の順番で又は逆の順番でエッチングすることに選択されてもよい、請求項7の方法。
【請求項10】
場合によっては、追加エッチングを、請求項4の4.3、4.4、4.1そして4.2の順番の又は異なる順番の方向で行ってもよい、請求項9の方法。
【請求項11】
エッチングの各回で異なる力を加えるように選択されてもよい、請求項1?10のいずれか一項の方法。
【請求項12】
場合によって、エッチング用機器とメイン金属表面との間の角度は70?120°から選択されてもよい、請求項1?11のいずれか一項の方法。
【請求項13】
角度が80?100°である、請求項12の方法。」

「【0007】
本発明の金属装飾材料製造方法は、装飾材料の基材を形成しているところの又は装備品自体がその金属から成るところのメイン金属の表面上に花粉状ホルダー(pollenlike holder)を作製する工程;および、かかるメイン金属の表面に、模様を作り出す素材(design-creating material)をちりばめるのに、前記花粉状ホルダーを使用することによって、メイン材料の表面上に、模様を作り出す素材を固定する工程からなる。」

「【0009】
花粉状ホルダーの作製過程は、何ら化学物質を使用しないで、しかしかかるメイン金属の表面にマークを生じさせる何らかの機器たとえばノミ(chisel)などを使用して、かかるメイン金属の表面をエッチングすることによって、行うことができる。ここで、望まれる加工片(work-piece)の細かさ(fineness)に依存して、機械または人力を直接使用してもよい。
【0010】
本発明の態様としては、エッチングは模様を作り出す素材を保持できるようにするためにメイン金属の表面に花粉状ホルダーをマーキングすることとして定義される。これは、かかるマークが4?8回または4?8方向どちらかにわたって異なる方向に横切るやり方で、達成されることができる。
【0011】
かかるエッチングマークは次のように異なる方向に操作されてもよい:
1.北から南へ、すなわち、垂直な線でメイン金属の上から下に向かって、または、その逆。
2.西から東へ、すなわち、水平レベルの平行線でメイン金属の左から右に向かって、またはその逆。
3.上記第1番に従う線に対して40?50°の角度をつくって、北東から南西へ、またはその逆。
4.上記第1番に従う線に対して40?50°の角度をつくって、北西から南東へ、またはその逆。
【0012】
本発明の態様としては、エッチングは使用される機器に依って、毎度1方向以上で操作されてもよい。また、次回のエッチングは先行のそれと同じ方向、逆方向、反対方向、または交叉方向で操作されてもよい。操作は少なくとも4回(方向)またはそれ以上、そして8回(方向)まで、であってもよい。本発明の態様としては、エッチングはそれぞれ上記の1、3、4そして2の順番の方向に従って操作されてもよい、又はその逆に行うこともできる;またはエッチングは3、4、1および2の順番又はその逆の順番に従って5?8回または5?8方向まで増やすように選択されてもよい。
【0013】
加えて、本発明の特徴によって、エッチング操作の各回または各方向において、必要とされる通りの様々な度合の強い又は軽い力を適用することは任意である、たとえば、上記特徴によって、両方のエッチングが同じ方向に操作されるとしても5番目のエッチングにおいて加えられる力は2番目のエッチングにおいて適用された力より軽くてもよい。また、一揃いの操作を行うことも任意的である、すなわち、第一ラウンドのエッチングにおいて適用される力は第二ラウンドにおいて適用される力より強くてもよい。その上、エッチングは等しい角度または若干異なる角度における同じ方向で操作されてもよい。しかしながら、約1?5°異なる角度が適する;エッチング操作はエッチング用機器をメイン金属表面に対して70?120°の角度を成すように使用することによって操作されてもよい;より好ましいのは80?100°である。」

「【0018】
本発明の態様としては、本発明の金属装飾材料は、表面上の花粉状ホルダーであるようにエッチングされているメイン金属の片と、かかる花粉状ホルダーによって保持された模様を作り出す素材とからなるであろう。従って、この花粉状ホルダーは、何ら化学物質の使用なしで、模様を作り出す素材を移動できなくさせる固定手段(setter)として機能するであろう。それ故に、これは経済的であり且つ環境汚染を低減する。」

2.判断
これら記載によれば、「花粉状ホルダー」は、メイン金属の表面上に作製され、模様を作り出す素材を固定するためのものである(請求項1、段落0007)。
ノミ(chisel)などを使用し、表面をエッチングすることで形成することができる(請求項2、段落0009)。
エッチングは、4?8回または4?8方向でも良く(請求項3、段落0010)、その方向、形成順、溝深さ、溝角度は様々で良い(請求項4?13、段落0011?0013)。

すなわち、「花粉状ホルダー」は、ノミにより表面を削るものを含み、単なる直線を含む、様々な形状がありえ、形状は特定されていない。
一般に「花粉状」とは、「花粉のような形をしたもの」を意味するが、「花粉」は、植物によって形状を異にするものの、概して「粒状」である。
したがって、「花粉状ホルダー」の形状について、請求項1の文言から理解される「粒状」と、従属項の記載、発明の詳細な説明の記載から理解される「単なる直線を含む様々な形状」とは、整合していない。

請求人は、上記意見書で、以下のとおり主張している。
「「花粉状ホルダー」は、いかなる化学物質を使用せずに、メイン金属プレートの表面上にマーク(mark)を形成できる道具(例えば、ノミ:chisel)を使用することによって作られるものです。ここで、マークとは、短い直線であって、小さくて狭い、そして浅い溝のような形態をしています。これらのマークが、メイン金属プレートの表面上に、本願明細書段落番号0011に記載の各一連のエッチングによって様々な方向に作られます。そして、このエッチングによって作られるマークは、互いに交差して交点を生じます。・・・。そして、この交点が本願で「花粉状ホルダー」と呼んでいるものです。・・・。そして、短い直線であって、小さくて狭い、そして浅い溝のような形態をしているマークが互いに交差して生じた交点(即ち、模様を作り出す素材(design-creating material)をセット(固定)するためのセッティングポイント)は、いわゆる花の花粉に似たマークに見えるものであって、また、その交点は、模様を作り出す素材(design-creating material)のストリップ(細長い一片)を保持する(ホールド:hold)するものなので、本願においては「花粉状ホルダー」と称しています。」
しかし、エッチングによって作られるマークが交差して交点を生じることは、請求項1に何ら特定されていないから、請求人の主張は根拠がない。
さらに、請求人が提出した手続補足書の参考資料3によれば、右上の花模様周辺にみられる銀色の●のように、マークが交差して交点を生じることが、模様を作り出す素材を保持するために必須とは解されない例もみられるから、請求人の主張の信憑性も疑問である。

よって、請求項1の「花粉状ホルダー」がどのようなものか発明の詳細な説明を参酌しても、依然として明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4.第36条第4項について
上記第3のとおり、「花粉状ホルダー」の形状が不明である。
また、模様を作り出す素材をいかにして「花粉状ホルダー」に保持させるかについては、翻訳文の段落0014に「模様を作り出す素材は、何らかの過程例えば固定用機器(setting instrument)の使用を用いることによって花粉状ホルダーをして模様を作り出す素材を保持することをできるようにさせる、望まれる通りの何らかのデザインにおいて、既に花粉状ホルダーの状態にエッチングされているメイン金属の表面に固定されるであろう。」との記載があるにすぎない。
そのため、「花粉状ホルダー」の形状が不明なことと相まって、具体的にどのようなことを行って模様を作り出す素材を保持させ、どのようなものを作成しているのかが、発明の詳細な説明に記載されていない。
請求人は、上記意見書で「明細書全体の記載に基づいて、本願請求項に記載の発明を容易に理解できる」と主張するに留まり、具体的な主張はない。
よって、具体的にどのようなことを行って、どのような「金属装飾材料を製造」しているのか不明であり、発明の詳細な説明に、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第5.第29条第2項について
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)における「花粉状ホルダー」は、上記第3.のとおり、明確でない。
しかし、請求人の便宜のため、「花粉状ホルダー」が、上記第3.で検討したとおり「単なる直線を含む様々な形状のホルダー」と善解して、第29条第2項について検討する。
本願発明は、平成24年11月14日に補正された特許請求の範囲の請求項1を善解し、以下のとおりと認める。

「a)エッチングによって製造される、単なる直線を含む様々な形状のホルダーをメイン金属の表面上に作製する工程と、
b)前記メイン金属の表面上に模様を作り出す素材を固定する工程であって、前記模様を作り出す素材は、前記メイン金属の表面上の前記ホルダーの中に固定されている、
諸工程を含む、金属装飾材料を製造する方法。」

2.刊行物記載の発明
これに対し、本願優先日前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された実用新案登録第2507812号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0006?0007
「【0006】
【実施例】この考案の実施例について以下図面に基づいて説明する。この実施例の装飾用板1は、図1に示すように、板材2の表面に多方向反射ビーズ3を固定したものである。
【0007】板材2の種類は、・・・、外装材として使用する場合には、コンクリートパネル、金属板など種々の材質のものが使用され、その種類はとくに限定されるものではない。・・・。」

イ.段落0009
「【0009】多方向反射ビーズ3を板材2に固定するには、接着剤を塗布した裏面凸部4を板材2の表面に設けた小穴に表面凸部4が突出するようにして差し込むだけでよい。時間の経過に伴い接着剤が硬化することによって完全に固定される。・・・。」

上記記載を、図1?2を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「a)小穴を金属板2の表面上に作製する工程と、
b)前記金属板の表面上に多方向反射ビーズ3を固定する工程であって、前記多方向反射ビーズ3は、前記金属板2の表面上の前記小穴の中に固定されている、
諸工程を含む、装飾用板1を製造する方法。」

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明における「小穴」は本願発明における「単なる直線を含む様々な形状のホルダー」に相当し、同様に「金属板2」は「メイン金属」に、「多方向反射ビーズ3」は「模様を作り出す素材」に、「装飾用板1」は「金属装飾材料」に、相当する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「a)単なる直線を含む様々な形状のホルダーをメイン金属の表面上に作製する工程と、
b)前記メイン金属の表面上に模様を作り出す素材を固定する工程であって、前記模様を作り出す素材は、前記メイン金属の表面上の前記ホルダーの中に固定されている、
諸工程を含む、金属装飾材料を製造する方法。」

そして、以下の点で相違する。
ホルダーが、本願発明では「エッチングによって製造される」が、刊行物1発明は形成方法が明らかでない点。

4.判断
相違点について検討する。
本願発明の「エッチング」は、上記第3.で検討したとおり、ノミにより表面を削るものを含む。
ノミにより表面を削ることは、工芸技法である彫金、沈金、あるいは特開平11-170783号公報の段落0006、特開平1-208483号公報の請求項1のように周知であるから、ホルダー(小穴)形成のために、周知の「エッチング」を用いることに困難性は認められない。

5.小括
本願発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

第6.むすび
本願は、上記第3ないし第5、いずれの理由によっても拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-06 
結審通知日 2012-12-07 
審決日 2012-12-18 
出願番号 特願2004-173359(P2004-173359)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (B44C)
P 1 8・ 121- WZ (B44C)
P 1 8・ 537- WZ (B44C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 正博  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 野村 亨
刈間 宏信
発明の名称 金属装飾材料の製法および金属装飾材料およびそれらの用途  
代理人 浅野 裕一郎  
代理人 浅村 肇  
代理人 安藤 克則  
代理人 浅村 皓  

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