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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 C10L |
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管理番号 | 1273782 |
審判番号 | 不服2011-22789 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-04 |
確定日 | 2013-05-07 |
事件の表示 | 特願2007-265938「遠心硫黄分離器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月19日出願公開、特開2009- 57532〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件審判に係る出願は、平成19年8月30日の特許出願であって、平成22年1月22日付けで手続補正書が提出された後、平成23年3月14日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年5月18日付けで意見書が提出されたが、同年6月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月4日付けで本件審判の請求がなされたものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、平成23年3月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由1を含むものであり、この理由1は、要するに、平成22年1月22日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものである。 3 当審の判断 (1)当初明細書等の記載 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、これらを併せて「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。 ア 明細書 「【発明の名称】遠心硫黄分離器 【技術分野】 【0001】 遠心力を利用して微粉炭と硫黄を分離する事に関するものである。 【背景技術】 【0002】 特願2007-147448等がある。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 微粉炭を燃す前に微粉炭と硫黄を分離する。 【課題を解決するための手段】 【0004】 断面円形の外枠3の中に芯に回転軸2を設けて回転軸2にプレートを固着し、プレートに外枠を固着し、微粉炭を上から入れる時は下部に飛び出し間4、6を設け、外枠の下部から微粉炭を入れる時は上部に飛び出し間を設けて回転軸2を高速回転して遠くに飛んだ硫黄と近くに飛んだ微粉炭を分ける。 【発明の効果】 【0005】 微粉炭は近くに落ち硫黄は遠くに落ちるので分離できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0006】 断面円形の外枠3の中にプレート1を3?4枚位等間隔に配置して中芯に回転軸2を設けて外枠とプレート及びプレートと回転軸を各各固着して下部に飛び出し間4、6を設けて底部に底板5を設ける。飛び出し間は4、6は360度外枠がない。 【実施例】 【0007】 外枠3はプレート1、より天端は上に出す、微粉炭を下から分離器に入れる時はプレートの下にプロペラを設けてプレートの上部に飛び出し間を設ける。 【産業上の利用可能性】 【0008】 火力発電所の石炭燃料の硫黄分離 【図面の簡単な説明】 【0009】 【図1】遠心硫黄分離器の断面図。 【図2】A-A断面図。 【符号の説明】 【0010】 1 プレート 2 回転軸 3 外枠 4、6 飛び出し間 5 底板」 イ 特許請求の範囲 「【請求項1】 外枠(3)の中に何枚かのプレート(1)を縦にして回転軸(2)に1端を固着し、外枠(3)の某部に飛び出し間(6)、(4)を設けてプレートに固着する回転軸(2)を縦回転して上又は下の小なくともどちらか1方の端から微粉炭を入れて硫黄と微粉炭を分離する事を特徴とした遠心硫黄分離器。」 ウ 図面 【図1】 【図2】 (2)補正の内容 平成22年1月22日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、当初明細書等について以下アないしタの補正をするものである。 ア 手続補正1:特許請求の範囲の請求項1を次の記載に変更する。 「【請求項1】 縦にした外枠(3)の中に石炭又は微粉炭を任意の方向に移動させるにはそれに合った任意の形の板を回転させて任意の所から石炭又は微粉炭を飛散させ、外枠の上部又は中程部又は下部に石炭又は微粉炭を入れて上記石炭又は微粉炭を入れた所以外の所に遠心硫黄分離器が高速回転して石炭又は微粉炭が飛び出す飛び出し間(4)、(6)を外枠で上部から石炭又は微粉炭を入れた時は飛び出し間は中程部又は下部に設け、石炭又は微粉炭を中程部から入れる時は飛び出し間を外枠の上部又は下部に設け石炭又は微粉炭を下部より入れる時は外枠の中程部又は上部に飛び出し間を設けて遠心硫黄分離器を高速回転させて飛び出し間から遠くに飛んだ石炭又は微粉炭と近くに飛んだ石炭又は微粉炭に分け硫黄分の多い石炭又は硫黄分の多い微粉炭と硫黄分の少ない石炭又は硫黄分の小ない微粉炭に分ける事を特徴とした遠心硫黄分離器。」 イ 手続補正2:明細書の段落【0005】を次の記載に変更する。 「【0005】 硫黄の方が石炭より重いので遠心硫黄分離器にかけると硫黄は硫黄分の多い石炭又は硫黄分の多い微粉炭は遠くに飛び、石炭又は硫黄分の少ない石炭又は硫黄分の少ない微粉炭は近くに落ちるので分離できる。近くに落ちた硫黄分の小ない石炭又微粉炭を使用する。出来れば近くに落ちた高精度の石炭又は微粉炭を何回か遠心硫黄分離器にかけてさらに精度を高めて使用し、又は精度の高まった石炭を微粉炭にして遠心硫黄分離器に何回かかけて精度を高めて使用そして遠くに落ちた硫黄分の多い石炭又は微粉炭を何回か遠心硫黄分離器にかけて高精度の石炭又は微粉炭にして使用する。遠くに飛んだ石炭を微粉炭にして遠心硫黄分離器にかけて近くに落ちた物を使用又は何回か遠心硫黄分離器にかけて石炭分の精度を高めて使用し、遠くに飛んだ微粉炭を何回か遠心硫黄分離器にかけて石炭分の精度を高めて使用する。」 ウ 手続補正3:明細書の段落【0007】を次の記載に変更する。 「【0007】 微粉炭又は石炭を外枠13、32、19の中段あたりに設けた1回転開口部を設けて石炭を入れる場合は上に広がる石炭受16、17、30、25を設け石炭受けは外枠に固定して1体回転又は石炭受けは外枠は力の伝動しない断絶とし石炭受けを石炭引き寄せ28、36、35、34、57、63を1体化又は石炭受けと石炭引き寄せは力の伝動しない断絶とし石炭引き寄せは回転方向に先端の方が曲がりそして先端部の方で外枠の外側及び石炭受けの下部の外側より外側に石炭寄せの上端の先端を石炭寄せの回転方向に曲げて石炭引き込み部28A、34A、62Aを設け石炭を外枠の中程部の空間を通して上部に移動させて上部から高速回転させた遠心硫黄分離器から石炭又は微粉炭を飛散させるには石炭引き寄せに略スクリュー、31又はスクリューを固着してそして石炭引き寄せと縦回転軸11、と固着しそして略スクリュー又はスクリューと縦回軸11と固着し、略スクリュー又はスクリューは外枠と固着又は断絶し略スクリュー又はスクリューは外枠と断絶した時は外枠を回転軸と断絶した天端板10に支持させる天端板は外力により支持させる。又石炭又は微粉炭を外枠53、の下部より入れる時は外枠の下部に1回転開口部を設けて回転軸52に石炭引き寄せを固着して先端部を1回転開口部より出して外枠より出した石炭引き寄せの上部に石炭引き寄せの回転方向に先端部を曲げで石炭引き込み部を設け石炭引き寄せにスクリュー62又は略スクリュー55を固着してそしてスクリュー又は略スクリューと回転軸を固着し、上に広がった石炭受けに下部板58を回転自由に支持し又は固着し、石炭受けと石炭引き寄せの間に板をかませるか又は石炭引き寄せと下部板の間に板をかませる。外枠の上部に設けた飛び出間から出た石炭又は微粉炭は下部の石炭受けより外側に飛ばすようにする。これは石炭又は微粉炭を外枠の中程に1回転開口部を設けて入れた仕組にも使える。」 エ 手続補正4:明細書の段落【0009】を次の記載に変更する。 「【0009】 【図1】遠心硫黄分離器の断面図。 【図2】A-A断面図 【図3】遠心硫黄分離器の断面図。 【図4】B-B断面図 【図5】D-D断面図 【図6】E-E断面図 【図7】C-C断面図 【図8】F-F断面図 【図9】G-G断面図 【図10】遠心硫黄分離器の断面図 【図11】H-H断面図 【図12】I-I断面図 【図13】J-J断面図」 オ 手続補正5:明細書の段落【0010】を次の記載に変更する。 「【0010】 1 プレート 2 回転軸 3 外枠 4、6 飛び出し間 5 底板 天端板 10、50 スクリュー 12、62 外枠 13、32、19、53 略スクリュー 31、55 石炭入れ 14、15、27、29、54、60 石炭受け 16、30、56、59、17、25 つなぎ 37、38、64、65 石炭引き寄せ 36、28、35、34、57、63、 飛び出し間 20、22、33、61、51 略縦板 23、24 回転軸 18、11、52 のせ板 26 底板 58 石炭引き込み 28A、62A、34A」 カ 手続補正6:図面に次の図3を追加する。 【図3】 キ 手続補正7:図面に次の図4を追加する。 【図4】 ク 手続補正8:図面に次の図5を追加する。 【図5】 ケ 手続補正9:図面に次の図6を追加する。 【図6】 コ 手続補正10:図面に次の図7を追加する。 【図7】 サ 手続補正11:図面に次の図8を追加する。 【図8】 シ 手続補正12:図面に次の図9を追加する。 【図9】 ス 手続補正13:図面に次の図10を追加する。 【図10】 セ 手続補正14:図面に次の図11を追加する。 【図11】 ソ 手続補正15:図面に次の図12を追加する。 【図12】 タ 手続補正16:図面に次の図13を追加する。 【図13】 (3)特許法第17条の2第3項について 本件補正の内容は、上記(2)に記載したとおりであるところ、本件補正後の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載のうち、例えば、外枠の中程部に石炭又は微粉炭を入れること(上記(2)ア)、近くに落ちた高精度の石炭又は微粉炭を何回か遠心硫黄分離器にかけてさらに精度を高めて使用すること(同イ)、「石炭受け」を設けること(同ウ、オ、カ、コ)、「石炭引き寄せ」を設けること(同ウ、オ?ク、サ)、「略スクリュー」を設けること(同ウ、オ、カ、ケ、タ)、「スクリュー」を設けること(同ウ、オ、カ、ス?ソ)及び「のせ板」を設けること(同オ、シ)、並びにこれらを含む構成を図示する図面(同カ?タ)は、いずれも当初明細書等(上記(1))に記載がなく、本件出願日当時の技術常識に照らしても、これらが当初明細書等に記載されているも同然であると認めることはできない。 よって、本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に違反してなされたものである。 (4)請求人の主張に対する付言 請求人は、審判請求書において、特許法第17条の2第3項の規定は、特許法第50条の規定による通知を受けた後の補正に適用され、同通知を受け取る前にした本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定を受けない旨の主張をしている。 しかしながら、特許法17条の2第1項は、「特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。」と規定しているところ、このただし書の規定は、拒絶理由通知を受けた後の補正ができる時期を限定しているにとどまり、そして、同条第3項は、「第1項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面・・・・に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」と規定して新規事項の追加を禁止しているところ、同条第3項は、「第1項の規定により・・・・について補正をするときは」と規定しているのであって、「第1項ただし書各号に掲げる場合において・・・・について補正をするときは」と規定してはいない。このことに鑑みれば、同条第3項中の「第1項の規定」とは、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」についての補正の全て、すなわち、同条第1項の本文及びただし書の全てを包含していることが文言上明らかであり、同条第3項の規定が同条第1項ただし書に限定して適用されると解すべき理由はない。 したがって、特許出願人は、拒絶理由通知を受ける前後を通じて、常に補正に当たって同条第3項の規定を受け、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてしなければならず(必要があれば、知財高裁平成24年(行ケ)第10021号判決参照。)、このことに反する請求人の上記主張は、採用することができない。 4 むすび 以上によれば、本件補正は、当初明細書等に記載した範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に違反してなされたものである。 したがって、本件審判に係る出願は、他の特許要件について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-02-26 |
結審通知日 | 2013-03-05 |
審決日 | 2013-03-18 |
出願番号 | 特願2007-265938(P2007-265938) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
Z
(C10L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森 健一 |
特許庁審判長 |
松浦 新司 |
特許庁審判官 |
目代 博茂 橋本 栄和 |
発明の名称 | 遠心硫黄分離器 |