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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1273784
審判番号 不服2011-25645  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-28 
確定日 2013-05-07 
事件の表示 特願2007-322509「発光ダイオードのための反射性マウント基板」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月 3日出願公開、特開2008-153669〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年12月13日(パリ条約による優先権主張2006年12月15日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成22年12月15日付け及び平成23年7月11日付けで手続補正がなされたところ、同年7月22日付けで前記平成23年7月11日付け手続補正が補正却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月28日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成24年8月13日付けで拒絶理由が通知され、同年11月14日付けで手続補正がなされたものである。

そして、本願の請求項に係る発明は、平成24年11月14日付け手続補正による補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?28に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のものである。

「III族窒化物材料系から形成された発光活性層と、
該III族窒化物の活性層を支持するボンディング金属層と、
マウント基板であって、該マウント基板は、該ボンディング金属層が該発光活性層と該マウント基板との間にあるように該ボンディング金属層を支持し、該マウント基板は、該活性層によって放出された所定の周波数を有する光の実質的な量を反射する該ボンディング金属層以外の材料を含む、マウント基板と
を備え、
前記マウント基板は、III族窒化物以外の材料を含み、
前記マウント基板の表面は、前記活性層によって放出された所定の周波数を有する光のうちの少なくとも50パーセントを反射する、発光ダイオード。」(以下「本願発明」という。)


2 引用刊行物の記載事項
当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-119807号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。

(1)「【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は…、従来問題となっていたAlGaN層のクラックを結晶成長の下地層とし、結晶成長後の降温時に掛かる大きな応力をそのクラックによる収縮自在な亀裂・空隙を応力吸収する衝撃吸収層(応力緩和機構)として利用するという画期的な方法により、Al高混晶の窒化物半導体結晶を形成するものであり、その結晶を素子構造に利用したものである。」

(2)「【0022】
以下、本発明の窒化物半導体結晶の成長方法に係る一実施の形態について説明する。ここで、図1は、本発明の成長方法における各工程を、順番に説明する模式断面図であり、図1(a)は下地層2形成工程(第1の層成長工程の前工程)、図1(b)は第1の層1成長工程、図1(c)は亀裂10形成工程、図1(d)は亀裂10収縮工程、図1(d)は第2の層5成長工程を説明するものである。また、…図4は、本発明の成長方法において、成長用基板1の上に形成した第1の層4、第2の層5を含む成長層表面に貼り合わせ用の支持基板40を貼り合わせて基板を除去して素子構造、チップを形成する方法を説明する模式断面図であり、支持基板(第1基板)40に貼り合わせる工程を図4(a)に、支持基板40にあり合わせた後、成長用基板1側から基板1と下地層などを除去する工程を除去領域50が異なる形態としてそれぞれ図4(b),(c)に、その除去工程後に別の支持基板(第2基板)41に貼り合わせる工程及び貼り合わせ後に第1基板を除去する工程を図4(d)に示すものであり、本発明の成長方法により得られる第2の層5及び/又は第1の層4を発光素子に用いた形態を説明する模式断面図である。
(第1の層成長工程)
本発明の成長方法では、図1に示すように、成長用の基板1、若しくは基板上に成長させた下地層2の上に、窒化物半導体からなる第1の層3を成長させる(図1(a),(b))。…
<基板1>:第1の層(第2の層)成長用の基板
本発明の成長方法に係る基板、特にエピタキシャル成長用の基板1としては、窒化物半導体と異なる材料の異種基板として、例えば、C面、R面、及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgA1_(2)O_(4))のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、Si、及び窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、窒化物半導体を成長させることが可能で従来から知られており、窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができ、また異種基板以外として、GaN、AlNなどの窒化物半導体基板なども用いることができる。…
<下地層2>
ここで下地層2は、基板材料、第1の層の成長条件により省略可能であり、基板1に異種基板を用いる場合には、バッファ層(低温成長層)、高温成長で単結晶の窒化物半導体(好ましくはGaN)からなる下地層を介して、第1の層3を形成すると、窒化物半導体の成長が良好なものとなる。…
<第1の層>
本発明に係る第1の層としては、好適には窒化物半導体が用いられ、特に好ましくはAlを含む窒化物半導体が用いられ、最も好ましくはAl_(x)Ga_(1-x)N(0<x≦1)が用いられる。…
(亀裂形成工程)
本発明の成長方法に係る亀裂形成工程は、図1(c)に示すように、第1の層3に亀裂が設る(審決注:「設けられる」の誤りと認められる。)ものであり、特に限定されないが、具体的な方法としては、機械的な方法と、熱処理による方法と、それらを組み合わせた複合的な方法とがある。

(第2の層成長工程)
図1(e)に示すように、第2の層成長工程として、亀裂10を設けた第1の層4の上に所望の温度(第3の成長温度)にて、第2の層5を成長させる。このように面内で縦横に走る亀裂10を跨って、それを覆うように成長された第2の層5は、従来困難であった窒化物半導体結晶、特にAlを含む窒化物半導体結晶を、高Al混晶化、厚膜化を実現させることができる。…
<第2の層>
本願発明の成長方法において、好適に用いられる窒化物半導体としては、上述したように、Alを含む窒化物半導体であり、このとき、第1の層と第2の層とでAl混晶比を同じとしても異なるものとすることもでき、好ましくは第1の層のAl混晶比より小さいAlを含む窒化物半導体である。…
【0023】

(第2の層成長後の工程)
…後述する素子構造を形成する場合には、第2の層成長工程の後に続けて、素子構造を構成する第1導電型層、第2導電型層、発光素子ではそれら第1,2導電型層の間の活性層、などの各層を積層しても良い。…
【0024】
また、第2の層成長工程後に、一旦反応炉からウエハを取り出し、後述の基板接着・剥離などの工程、電極などの素子加工工程などを経た後、反応炉にウエハを移送して第2の層の上に、素子構造を積層することもできる。
<支持基板の接着・剥離>
本発明の成長方法により得られる第2の層を素子構造などに好適に利用するために、成長用基板1とは別に、支持基板となる第1基板40に、基板1上に形成した成長層を貼り付けて、素子構造に不要な基板1側の層、例えば下地層2、第1の層4、第2の層5の一部を除去することもできる。
【0025】
本発明の成長方法において、図4に示すように、第2の層5を成長させた後(第2の層成長工程後)、第2の層5の上に素子構造30となる各層31?33を積層した後、若しくは、電極形成、エッチングによる素子領域の分離などの素子加工工程を経た後、などに、支持基板の接着工程(貼合せ工程)、剥離工程(成長用基板の除去)、積層体の一部除去工程を実施することができる。
【0026】
基板接着としては、図4(a)に示すように、第2の層5成長後、基板上に、更に第1導電型層31、活性層32、第2導電型層33などの素子構造30を積層した後、これら基板1上の成長層表面に支持基板40を貼り合わせる。
この時、支持基板40,41の材料としては、その目的により種々の材料を用いることができ、素子の放熱性を高めるためには、放熱用の基板として、AlN、BN、SiC、GaAs、Si、C(ダイヤモンド)が用いられる。…
また、図4(c)に示すように、支持基板40側に素子の電極を設ける場合には、導電性を有する基板を用いることが好ましく、導電性基板としては、例えば、Si、SiC、GaAs、GaP、InP、ZnSe、ZnS、ZnO等の半導体から成る半導体基板、又は、金属単体基板、又は相互に非固溶あるいは固溶限界の小さい2種以上の金属の複合体から成る金属基板を用いることができるが、金属基板を用いることが好ましい。金属基板は、半導体基板に比べ機械的特性が優れており、弾性変形、さらには塑性変形し易く、割れにくく、更に素子構造を発光素子とする場合において、発光素子からの反射性に富み、すなわち反射性基板として好適に発光装置に使用されるからである。さらに、金属基板には、Ag,Cu,Au,Pt等の高導電性金属から選択された1種以上の金属と、W,Mo,Cr,Ni等の高硬度の金属から選択された1種以上の金属と、から成るものを用いることができる。さらに、金属基板としては、Cu-WあるいはCu-Moの複合体を用いることが好ましい。…
【0027】
本発明の基板貼合せ工程(接着工程)としては、基板1と成長用基板1上に成長させた成長層の表面に、図4に示すように、接合層60を介して貼り合わせても良く、その時に接合層60の一部を素子構造30の第2導電型層にオーミック接触させた電極72としても良い。…
【0028】
以下、接合層60を用い、尚かつ、支持基板40に導電性基板を用いて、接合層60の一部で素子構造の層にオーミック接触させて、基板側に電極を取り出す構造について説明する。
また、接合層60を構成する層として、予め素子構造30の第1導電型層33に設ける電極72を形成し、すなわち、成長用基板1上に成長させた成長層表面に、接合層60の一部となる第1の接合層を設ける。以下、第2導電型層がp型層である場合について述べるが、n型層の場合も、p型層と同様にn電極(電極材料の一部など)が形成され、同様な構成(共晶層、接着方法など)とできる。第1の接合層は、少なくとも、第2導電型層がp型窒化物半導体層である場合、p型層とオーミック接触し、高い反射率を有するp電極をp型窒化物半導体層に接して有することが好ましい。p電極には、Rh,Ag,Ni-Au,Ni-Au-RhO及びRh-Irのいずれか、より好ましくは、Rhを用いることができる。ここで、p電極は、n型窒化物半導体層に比べ抵抗率の高いp型窒化物半導体層上に形成するため、p型窒化物半導体層のほぼ全面に形成することが好ましい。…
また、第1の接合層のp電極の上に第1の共晶形成層を設けるとともに、第2の接合層に、導電性基板の主面の上に第2の共晶形成層を設けることが好ましい。第1及び第2の共晶形成層は、接合時に互いに拡散して共晶を形成する層であり、それぞれ、Au、Sn、Pd、In等の金属から成る。第1及び第2の共晶形成層の組合せは、Au-Sn、Sn-Pd、又はIn-Pdが好ましい。さらに好ましくは、第1の共晶形成層にSnを、そして第2の共晶形成層にAuを用いる組合せである。

また、接合用積層体と導電性基板とを加熱圧接する際の温度は、150℃?350℃が好ましい。150℃以上とすることにより、共晶形成層の金属の拡散が促進され均一な密度分布の共晶が形成され、接合用積層体と導電性基板との密着性を向上させることができる。…
また、導電性基板40,41を接着後に成長用基板1を除去するには、研磨、エッチング、電磁波照射、あるいはこれらの方法を組み合せた複合的な方法を用いることができる。

【0030】

<第2の層を用いたい素子に関する実施形態>
以上説明した本発明の成長方法により得られる第2の層を用いた素子の発明に係る一実施形態について以下説明する。
(半導体素子)
また、窒化物半導体層に用いるn型不純物としては、Si、Ge、Sn、S、O、Ti、Zr等のIV族、若しくはVI族元素を用いることができ、好ましくはSi、Ge、Snを、さらに最も好ましくはSiを用いる。また、p型不純物としては、特に限定されないが、Be、Zn、Mn、Cr、Mg、Caなどが挙げられ、好ましくはMgが用いられる。…
【0031】
また、半導体素子となる素子構造30は、図4に示すように、第2の層5の上に、設けられても良く、第2の層を素子構造30の一部として含む構造で合っても良い。素子構造は、成長用基板1側の第1の導電型層31と、それよりも基板1から離れて第2の導電型層33とが積層された構造とできる。…
【0032】
このように素子構造において、図4に示すように、素子に電流を注入する電極の形成形態は、図4(c)に示すように支持基板40の接着面に対向する面側に電極73を設けても良く、同図に示すように成長用基板1を剥離した除去領域50側の成長層表面に電極71を設けても良く、…。
(発光素子)
本発明の成長方法により得られる成長層(積層体)の少なくとも一部、例えば、第2の層5、第1の層4など、を上述したように素子構造に用いることができ、発光素子に用いることもできる。具体的には、上記第1導電型層31、第2導電型層33との間に、活性層32を設けた素子構造30の積層体となる。活性層32、発光層、井戸層などに窒化物半導体を用いる場合には、Inを含む窒化物半導体が発光効率に優れるため好ましく用いられ、更に好ましくは、In_(x)Ga_(1-x)N(0<x≦1)が特に優れた発光効率の発光素子が得られる。その他に、発光層として、AlGaN、GaNなども用いることができる。…」

上記の記載を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「成長用の基板1、若しくは基板上に成長させた下地層2の上に、窒化物半導体からなる第1の層3を成長させ、第1の層3に亀裂を設け、亀裂10を設けた第1の層4の上に第2の層5を成長させ、第2の層成長工程の後に続けて、素子構造を構成する第1導電型層、第2導電型層、それら第1,2導電型層の間の活性層、などの各層を積層し、成長用基板1とは別に、支持基板となる第1基板40に、基板1上に形成した成長層を貼り付けて、素子構造に不要な基板1側の層、例えば下地層2、第1の層4、第2の層5の一部を除去することにより製造される発光素子であって、
第2の層5成長後、基板上に、更に第1導電型層31、活性層32、第2導電型層33などの素子構造30を積層した後、これら基板1上の成長層表面に支持基板40を貼り合わせ、
活性層32に窒化物半導体を用いる場合には、Inを含む窒化物半導体が発光効率に優れるため好ましく用いられ、
支持基板40側に素子の電極を設ける場合には、導電性を有する基板を用いることが好ましく、導電性基板としては、半導体基板に比べ機械的特性が優れており、弾性変形、さらには塑性変形し易く、割れにくく、更に素子構造を発光素子とする場合において、発光素子からの反射性に富み、すなわち反射性基板として好適に発光装置に使用される金属基板を用いることが好ましく、さらに、金属基板には、Ag,Cu,Au,Pt等の高導電性金属から選択された1種以上の金属と、W,Mo,Cr,Ni等の高硬度の金属から選択された1種以上の金属と、から成るものを用いることができ、
基板貼合せ工程としては、基板1と成長用基板1上に成長させた成長層の表面に、接合層60を介して貼り合わせても良く、その時に接合層60の一部を素子構造30の第2導電型層にオーミック接触させた電極72としても良く、接合層60を構成する層として、予め素子構造30の第1導電型層33に設ける電極72を形成し、すなわち、成長用基板1上に成長させた成長層表面に、接合層60の一部となる第1の接合層を設け、第2導電型層がp型層である場合、第1の接合層は、p型層とオーミック接触し、高い反射率を有するRh,Ag,Ni-Au,Ni-Au-RhO及びRh-Irのいずれかを用いることができ、また、第1の接合層のp電極の上に第1の共晶形成層を設けるとともに、第2の接合層に、導電性基板の主面の上に第2の共晶形成層を設けることが好ましく、第1及び第2の共晶形成層は、接合時に互いに拡散して共晶を形成する層であり、それぞれ、Au、Sn、Pd、In等の金属から成り、接合用積層体と導電性基板とを加熱圧接する際の温度は、150℃?350℃が好ましく、
導電性基板40,41を接着後に成長用基板1を除去するには、研磨、エッチング、電磁波照射、あるいはこれらの方法を組み合せた複合的な方法を用いることができる、発光素子。」


3 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「(Inを含む窒化物半導体が用いられる)活性層32」は、本願発明の「(III族窒化物材料系から形成された)発光活性層」に相当する。

(2)引用発明の「(その一部が、p型層とオーミック接触し、高い反射率を有するRh等の電極72(第1の接合層)である)接合層60」は、「支持基板40」とともに「活性層32」を支持するものであるといえるから、本願発明の「(該III族窒化物の活性層を支持する)ボンディング金属層」に相当する。

(3)引用発明の「(発光素子からの反射性に富む金属基板を用いることが好ましく、Ag,Cu,Au,Pt等の高導電性金属から選択された1種以上の金属と、W,Mo,Cr,Ni等の高硬度の金属から選択された1種以上の金属と、から成るものを用いることができる)支持基板40」は、「接合層60」が「活性層32」と該「支持基板40」との間にあるように該「接合層60」を支持するものであって、「(Rh等の電極72である)接合層60」とは異なる材料のものであるといえるから、本願発明の「(マウント基板であって、該マウント基板は、該ボンディング金属層が該発光活性層と該マウント基板との間にあるように該ボンディング金属層を支持し、該マウント基板は、該活性層によって放出された所定の周波数を有する光の実質的な量を反射する該ボンディング金属層以外の材料を含む、)マウント基板」に相当する。

(4)引用発明の「支持基板40」は、「Ag,Cu,Au,Pt等の高導電性金属から選択された1種以上の金属と、W,Mo,Cr,Ni等の高硬度の金属から選択された1種以上の金属と、から成るものを用いることができる」ものであって、III族窒化物以外の材料のものであるといえるから、引用発明は、本願発明の「前記マウント基板は、III族窒化物以外の材料を含み」との事項を備える。

(5)引用発明の「支持基板40」は、「発光素子からの反射性に富む金属基板」であるから、引用発明の「『支持基板40』が『発光素子』からの光の反射性に富む」との事項と、本願発明の「前記マウント基板の表面は、前記活性層によって放出された所定の周波数を有する光のうちの少なくとも50パーセントを反射する」との事項とは、「前記マウント基板の表面は、前記活性層によって放出された所定の周波数を有する光を反射する」との点で一致する。
なお、請求人は、平成24年11月14日付け意見書において、「本願の請求項1に係る発明の『マウント基板の表面…』は、本願の図2に示すように「側面」側の表面も反射性表面です。しかし、引用刊行物1(審決注:本審決における「引用刊行物」)の『(発光素子からの反射性に富んだ)支持基板40』…の『側面』側の表面が反射性表面であることは、引用刊行物1…から明らかではありません…。」(4.<第1 進歩性(第29条第2項)について>)と主張する。しかしながら、引用刊行物の図4(a)?図4(c)に照らせば、引用発明の「(発光素子からの反射性に富む金属基板である)支持基板40」は、その側面側の表面も反射性表面であるといえるから、請求人の上記の主張を採用することはできない。

(6)引用発明の「発光素子」は、本願発明の「発光ダイオード」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「III族窒化物材料系から形成された発光活性層と、
該III族窒化物の活性層を支持するボンディング金属層と、
マウント基板であって、該マウント基板は、該ボンディング金属層が該発光活性層と該マウント基板との間にあるように該ボンディング金属層を支持し、該マウント基板は、該活性層によって放出された所定の周波数を有する光の実質的な量を反射する該ボンディング金属層以外の材料を含む、マウント基板と
を備え、
前記マウント基板は、III族窒化物以外の材料を含み、
前記マウント基板の表面は、前記活性層によって放出された所定の周波数を有する光を反射する、発光ダイオード。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

マウント基板の表面が、本願発明では、活性層によって放出された所定の周波数を有する光のうちの少なくとも50パーセントを反射するのに対し、引用発明では、活性層によって放出された所定の周波数を有する光のうちどの程度を反射するのか明らかではない点(以下「相違点」という。)。


4 判断
上記相違点につき検討する。
引用発明の「支持基板40」は、「発光素子からの反射性に富み、すなわち反射性基板として好適に発光装置に使用される金属基板を用いることが好まし」いものであるから、その金属基板の表面が、発光素子からの光をより多く反射するようになすことは当業者が容易になし得ることである。そして、発光素子からの光をどの程度より多く反射するようにするかは、当該引用発明を実施する上で当業者が適宜に定めるべき事項であって、その反射の程度を少なくとも50パーセントと定めることが当業者において格別困難なことであるとはいえない。
また、本願発明の奏する効果が、引用発明から当業者が予測困難な程の格別顕著なものということはできない。
したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜になし得ることである。

よって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-03 
結審通知日 2012-12-04 
審決日 2012-12-17 
出願番号 特願2007-322509(P2007-322509)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 知久  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 松川 直樹
江成 克己
発明の名称 発光ダイオードのための反射性マウント基板  
代理人 林 鉐三  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 大日方 和幸  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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