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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1273794 |
審判番号 | 不服2012-18484 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-21 |
確定日 | 2013-05-07 |
事件の表示 | 特願2010-179262「ELデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 9日出願公開、特開2010-278021〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成16年8月17日に出願した特願2004-237065号の一部を平成22年8月10日に新たな特許出願としたものであって、平成24年6月20日に拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月21日に審判請求がなされたものである。 第2 本願発明 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。 「板状の第1の電極と、透明基板の一方の面に設けられた板状の透明な第2の電極と、前記第1および第2の電極の間に配置された板状の単一の発光部とを備えたEL素子と、 前記透明基板の他方の面に設けられ、前記発光部から出射する光を前記他方の面の法線方向に向かって偏向させる光偏向素子と、を備え、 前記光偏向素子は、前記単一の板状の発光部に対して多数、設けられたドットまたは凹部を備え、該ドットまたは凹部が前記透明基板の他方の面の上に光学的に密着するように配置され、 前記ドットまたは凹部は曲面部を備え、前記透明基板内を伝搬する光を直接、入射させ、前記他方の面の法線方向に向かって偏向させる、 ことを特徴とするELデバイス。」 2.刊行物及びそれに記載された発明 引用文献1:特開平9-73983号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、以下の記載がある。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、時計の文字盤や液晶等のバックライト用として用いられるEL発光装置に関する。 【0002】 【従来の技術】この種のEL発光装置では、ELシートの射出光により直接発光するか、あるいは透光性カラーシート等をELシートの発光面に接合し、当該シートを通して間接的に発光するようになっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来構造では、ELシートの特性上、ELシートで発光した光が不必要な方向にも発するため、発光効率が悪く、ELシートを必要以上の輝度で発光させる必要があった。このため、消費電流に無駄が生じ、しかもELシートの寿命を促進するという問題があった。 【0004】本発明の目的は、発光効率を向上し、消費電流の無駄を解消するとともに長寿命化を図ることができるEL発光装置を提供することにある。」 (2)「【0012】 【実施例】本発明が適用されたEL発光装置を図面に基づいて説明する。このEL発光装置では、図1に示されるようにELシート1が設けられている。ELシート1としては、図2に詳細に示されるように透明フィルム1aの裏面に真空蒸着された酸化インジウム・スズ(ITO)等よりなる透明電極1bを有し、この透明電極1b上に発光層1c、絶縁層1d、背面電極1eをスクリーン印刷法などによって順次印刷形成したものが用いられ、透明電極1bと背面電極1eとの間に交流電場を印加すると、発光層1cが発光するようになっている。発光層1cは、硫化亜鉛に銅をドープしてなる発光体とフッ素樹脂バインダーとを混合・攪拌したインクを用いて印刷形成したものである。絶縁層1dは高誘電体であるチタン酸バリウムとフッ素樹脂バインダーとを混合・攪拌したインクを用いて印刷形成したものである。背面電極1eは、カーボンペーストを用いて印刷形成したものである。 【0013】ELシート1の発光面、すなわち透明フィルム1aの表面には、レンズシートの1例であるプリズムレンズシート2が接合し、このプリズムレンズシート2を通して発光するようになっている。 【0014】プリズムレンズシート2は、無色透明のアクリル樹脂製であって、その表面にはレンズ体としての複数の三角柱状のプリズム2aが形成されている。各プリズム2aは、図2に詳細に示されるように同一断面形状に形成されているとともに、シート平面に沿って同方向(紙面直角方向)に真っ直ぐに延出し、ELシート1の射出光を所定の一方向(矢印A方向)に指向するようになっている。すなわち、プリズムレンズシート2がELシート1の射出光を矢印A方向に指向し、この方向と反対の方向からELシート1の発光を視認できるようになっている。なお、プリズムレンズシート2は、アクリル樹脂製に限らず、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂等の他の透光性樹脂で形成してもよく、また無色透明に限らず、着色剤等を添加して有色透明とするようにしてもよい。 【0015】上記構成によれば、ELシート1の発光面がプリズムレンズシート2を通して発光し、この発光時にはプリズムレンズシート2がELシート1の射出光を所定の一方向(矢印A方向)に指向し、この方向と反対の方向からELシート1の発光を視認できる。なお、プリズム2aの形状を変えれば、ELシート1の射出光を任意の方向に指向させることができ、プリズム2aの形状変更によりELシート1の発光を任意の方向から視認できる。例えば、プリズム2aの形状を図3に示されるようにすれば、ELシート1の射出光を矢印B方向に指向させることができ、この方向と反対の方向からELシート1の発光を視認できる。 【0016】したがって、プリズムレンズシート2より、ELシート1の射出光を観察者にとって必要な方向に指向すれば、ELシート1の射出光が不必要な方向に散乱せず、発光効率を向上できる。これにより、ELシート1を必要以上の輝度で発光させる必要がなくなり、消費電流の無駄を解消するとともに長寿命化を図ることができる。」 (3)「【0023】上記実施例では、レンズシートとして、プリズムレンズシートを適用したが、ELシートの射出光を所定の方向に指向できるものであればよく、いわゆるレンチキュラーレンズシートやマイクロレンズシート等であっても、勿論適用可能である。」 (4)「【図2】 」 (5)図2を参酌すれば、出射光が指向する、所定の一方向である矢印A方向がELシート1の発光面の法線方向であることがわかる。 これらの記載を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されているものと認められる。 「透明フィルム(1a)の裏面に透明電極(1b)を有し、この透明電極上に発光層(1c)、絶縁層(1d)、背面電極(1e)を順次印刷形成したELシートの発光面、すなわち透明フィルムの表面に、プリズムレンズシート(2)が接合し、このプリズムレンズシートを通して発光するようになっており、 プリズムレンズシートは、無色透明のアクリル樹脂製であって、その表面にはレンズ体としての複数の三角柱状のプリズム(2a)がシート平面に沿って同方向に真っ直ぐに延出して形成されており、 ELシートの射出光をELシートの発光面の法線方向に指向するようになっている、 EL発光装置。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「背面電極」、「透明電極」、「発光層」、「ELシート」及び「EL発光装置」は、それぞれ本願発明の「第1の電極」、「透明な第2の電極」、「単一の発光部」、「EL素子」及び「ELデバイス」に相当する。 こここで、当業者の技術常識に照らせば、引用発明の「背面電極」、「透明電極」及び「発光層」が板状であることは明らかである。 (2)引用発明の透明フィルムの表面に接合するプリズムレンズシートは、無色透明のアクリル樹脂製であって、その表面にはレンズ体としての複数の三角柱状のプリズムがシート平面に沿って同方向に真っ直ぐに延出して形成されているから、引用発明の「レンズ体としての複数の三角柱状のプリズム」は本願発明の「光偏光素子」に相当し、同じく引用発明の「透明フィルム」とその「表面に接合するプリズムレンズシート」の上記プリズムまでの部分が、本願発明の「透明基板」に相当する。 (3)引用発明のプリズム(本願発明の「光偏光素子」に相当)は、プリズムレンズシートの表面に形成され、しかもプリズムレンズシートは透明フィルムの表面に接合しているから、本願発明の「透明基板」に相当する引用発明の「透明フィルムとその表面に接合するプリズムレンズシートの上記プリズムまでの部分」が、同じく本願発明の「光偏光素子」に相当する「プリズム」と光学的に密着するように配置されていることは明らかである。 (4)本願発明の偏光素子に相当する引用発明の「プリズム」が透明基板内を伝搬する光を直接入射させ、他方の面の法線方向に向かって偏向させることは明らかである。 してみると両者は、 「板状の第1の電極と、透明基板の一方の面に設けられた板状の透明な第2の電極と、前記第1および第2の電極の間に配置された板状の単一の発光部とを備えたEL素子と、 前記透明基板の他方の面に設けられ、前記発光部から出射する光を前記他方の面の法線方向に向かって偏向させる光偏向素子と、を備え、 前記光偏向素子は、前記単一の板状の発光部に対して前記透明基板の他方の面の上に光学的に密着するように配置され、 前記透明基板内を伝搬する光を直接、入射させ、前記他方の面の法線方向に向かって偏向させる、 ELデバイス。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点) 光偏光素子が、本願発明では「多数設けられたドットまたは凹部を備え、前記ドットまたは凹部は曲面部を備え」ているのに対して、引用発明では「複数の三角柱状」である点。 4.判断 上記相違点について検討する。 ELデバイスの射出面に設けられる光偏光素子として、多数設けられたドットを備え、ドットは曲面部を備えた構成の素子は、ごく普通に用いられる周知のもの(特開平11-74072号公報参照)である。 引用発明の光偏光素子として、複数の三角柱状のものに替えて当該周知技術の構成の素子を用いることに格別の技術的困難性も阻害要因もない。 してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。 そして、本願発明の効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-03-04 |
結審通知日 | 2013-03-07 |
審決日 | 2013-03-19 |
出願番号 | 特願2010-179262(P2010-179262) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 濱野 隆 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | ELデバイス |
代理人 | 丹澤 一成 |
代理人 | 松下 満 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 井野 砂里 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |