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審決分類 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A01K
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A01K
審判 全部無効 2項進歩性  A01K
管理番号 1274152
審判番号 無効2012-800005  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-01-26 
確定日 2013-05-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4616162号発明「犬のトイレ仕付け用サークル」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯は以下のとおりである。

平成17年12月 9日 本件出願(特願2005-356334)
平成21年 4月 7日 拒絶査定
平成21年 7月13日 審判請求(不服2009-12706)
手続補正
平成22年10月 5日 審決(不服2009-12706:原査定取り消し)
平成22年10月29日 設定登録(特許第4616162号)
平成24年 1月26日 本件無効審判請求(無効2012-800005)
平成24年 4月16日 審判事件答弁書及び訂正請求書提出
平成24年 6月 8日 弁駁書提出
平成24年 7月25日 審理事項通知
平成24年 9月12日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成24年 9月13日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成24年 9月27日 口頭審理


第2 当事者の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は,特許第4616162号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,甲第1?13号証を提出して,次の無効理由を主張した。

[無効理由の概要]
(1)第1の無効理由(特許法第29条第2項)
本件の請求項1に係る発明は,その出願前に頒布された刊行物(甲第1号証?甲第8号証)に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであり,よって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は特許法第123条の規定により無効である。
具体的には,甲第1号証に記載された発明に甲第1,2,4?8号証の周知技術を適用することは当業者が容易に推考しうるものであり,本件の請求項1に係る発明の効果も甲第1号証に記載のもの及び上記周知技術から予測できる以上のものではない。
(2)第2の無効理由(特許法第29条第2項)
本件の請求項1に係る発明は,その出願前に頒布された刊行物(甲第1号証及び甲第2号証)に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであり,よって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は特許法第123条の規定により無効である。
具体的には,甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証の周知技術を適用することは当業者が容易に推考しうるものであり,本件の請求項1に係る発明の効果も甲第1,2号証に記載された発明及び周知技術から予測できる以上のものではない。
(3)第3の無効理由(特許法第29条第2項)
〔撤回〕
(4)第4の無効理由(特許法第29条第2項)
本件の請求項1に係る発明は,その出願前に頒布された刊行物(甲第3号証)に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明することができたものであり,よって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は特許法第123条の規定により無効である。
具体的には,甲第3号証に記載された発明に甲第4号証に記載された発明及び甲第4?8号証の周知技術を適用することは当業者が容易に推考しうるものであり,本件の請求項1に係る発明の効果も甲第3,4号証に記載のもの及び上記周知技術から予測できる以上のものではない。
(5)第5の無効理由(特許法第29条第2項)
本件の請求項2に係る発明は,技術常識ないし周知技術と,第1?4の無効理由における刊行物,周知技術から当業者が容易に発明することができたものであり,よって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は特許法第123条の規定により無効である。

[証拠方法 ]
甲第1号証 杉浦基之監修,「赤ちゃん犬のしつけと育て方」2001年6月22日2刷発行,(株)主婦と生活社,50,51ページ
甲第2号証 実用新案登録第3059475号公報
甲第3号証 特開2003-23904号公報
甲第4号証 大友藤夫,小方宗次監修,「06.07年版 犬の医・食・住」2005年11月29日発行,株式会社どうぶつ出版,114,190,191ページ
甲第5号証 特許第3370834号公報
甲第6号証 特許第3409167号公報
甲第7号証 実用新案登録第3059420号公報
甲第8号証 特開昭62-294018号公報
甲第9号証 三村雅文,12to12,畠山孝雄編集,「うさぎパラダイス」1999年2月15日12刷発行,主婦と生活社,102,103ページ
甲第10号証 霍野晋吉著,「ハムスター・ウサギ・フェレットなどの飼い方」1996年11月20日発行,成美堂出版,82,83ページ
甲第11号証 斉藤久美子監修,「かわいい うさぎ」2004年4月20日2刷発行,株式会社西東社,78ページ
甲第12号証 斉藤久美子監修,「かわいい うさぎ」2004年4月20日2刷発行,株式会社西東社,104,105ページ
甲第13号証 杉浦基之監修,「赤ちゃん犬のしつけと育て方」2001年6月22日2刷発行,(株)主婦と生活社,68,69ページ

2 被請求人の主張の概要
被請求人は,特許第4616162号の明細書及び特許請求の範囲を,平成24年4月16日付け訂正請求書に添付した明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを求め,本件無効審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めた。

第3 訂正について
1 訂正の内容
平成24年4月16日付け訂正請求書による訂正事項は,以下のとおりである。
(1)訂正事項a
特許第4616162号における特許請求の範囲の請求項1および請求項2を
「【請求項1】
複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で,収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて,
前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており,
前記中仕切体には,犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに,この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ,この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていることを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。
【請求項2】
請求項1に記載の犬のトイレ仕付け用サークルにおいて。
前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられたことを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。」(以下,「訂正発明1」等という。)に訂正する。

(2)訂正事項b
明細書の【0001】の記載を
「【0001】
本発明は,内部に犬を入れてトイレの仕付けを行う犬のトイレ仕付け用サークルに関する。」に訂正する。

(3)訂正事項c
明細書の【0003】の記載を
「【0003】
ところで,犬の飼い主は,サークルの中に犬用トイレを置いて使用していることが多い。そして,犬にトイレの仕付けを行う際,飼い主が犬の排泄時が近づいたと察知すれば,まず犬をトイレに誘導し,犬がトイレで排泄を終えると,トイレで排泄ができたことを誉めて学習させるという手順を踏むのが通常である。
【特許文献1】特開2001-245545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】」に訂正する。

(4)訂正事項d
明細書の【発明の名称】,段落【0002】,【0004】,【0005】,【0006】,【0007】,【0008】,【0009】,【0010】,【0011】,【0012】,【0013】,【0015】,【0016】,【0019】,【0021】,【0022】,【0025】,【0030】,【0031】,【0032】,【0035】,【0036】,【0040】,【0041】,【0042】,【0043】,【0044】,【0045】,【0046】,【0047】,【0048】の記載において,「ペット」を「犬」に訂正する。

2 本件訂正の適否
これらの訂正事項について検討する。
上記訂正事項aは,訂正前の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された,「ペット」を「犬」に限定しようとするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ここで,「犬」との限定事項は,技術分野を記した【0001】において,「本発明は,内部に犬や猫などのペットを入れて・・・」と記載され,背景技術を記した【0003】に「ペット,特に犬の・・・」と記載されているから,当該限定事項による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正である。

また,上記訂正事項b?dについては,上記特許請求の範囲の減縮に伴い,明細書の記載と特許請求の範囲の記載との整合を図ったものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

したがって,上記訂正事項a?dは,特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明を目的とし,いずれも,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,本件訂正は,平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第134条の2ただし書き,及び同条第5項において準用する同法第126条第3項,4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。


第4 本件特許発明
上記「第3 訂正について」において,本件訂正を適法な訂正と認めたので,本件特許の請求項1及び2に係る発明は,「第3 訂正について 1 訂正の内容 (1)訂正事項a」に記載された訂正発明1及び2である。


第5 無効理由についての判断
1 証拠方法の記載内容
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第13号証には,次の事項が記載されている。

(1)甲第1号証(杉浦基之監修,「赤ちゃん犬のしつけと育て方」2001年6月22日発行,(株)主婦と生活社,50,51ページ)
(1a) 「「トイレ」といっても,トイレをしつけるためにサークルで作るスペースは赤ちゃん犬のお城。眠ったり遊ぶ場所でもあるので,できるだけ居心地よい空間にしてやりましょう。
1 トイレの場所を決める
赤ちゃん犬はトイレを場所でも覚えます。・・・」(50ページ)
(1b)「3 トイレとベッドを置いてサークルで囲う
新聞紙を敷き,ペットシーツをサークルの大きさより少し広めに敷き,ベッドになるものを置きます。ベッドは赤ちゃん犬の体の1.5倍前後が適当な大きさ。雑誌や木をベッドの下にあてがって床よりも5cmくらい高くすると,ベッドとトイレがより明確に区別できます。
人間の寝室のように,ベッドとトイレの間を板で仕切って区別するのもよい方法です。この場合,赤ちゃん犬がふたつの部屋を自由に行き来できるスペースを開けておきます。最後に,サークルでベッドとトイレを囲います。」(51ページ)

したがって,上記記載事項(1a),(1b)からみて,甲第1号証には以下の発明が記載されている。
「ベッドとトイレを有し,トイレをしつけるための犬用のサークルであって,
人間の寝室のように,ベッドとトイレの間を板で仕切って区別し,
犬がベッドとトイレを自由に行き来できるスペースが開けてある
犬用のサークル」(以下,「甲1発明」という。)

(2)甲第2号証(実用新案登録第3059475号公報)
(2a)「【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は,ペット(愛玩動物)を飼育するためのペット飼育容器に関し,詳しくは,たとえば,ウサギのように巣穴にもぐる習性のあるペットを飼育するのに適したペット飼育容器に関する。」
(2b)「 【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ペットを飼育するにあたっては,上手に躾ないとペットが飼育容器の至る所で排泄を行ってしまい,清掃しづらいところに排泄されると悪臭に悩まされることになりかねない。ところが,人間の言葉を理解できないペットに排泄の躾をすることは,必ずしも容易なことではない。また,ペットは,種類によって様々な習性を持っており,その習性に合わせて躾る必要がある。逆に,その習性を利用してペットの躾を行えば,習性を利用することなく漠然と行う場合に比べてより効果的な躾ができる,と考案者らは考えた。本考案が解決しようとする課題は,上述したように,ペットの習性,特に,巣穴にもぐる,という習性を利用してペットに排泄の躾を行うことができ,もって,巣穴と排泄場所とが分離された清潔なペット飼育容器を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために考案者らは,まず,ペット飼育容器のトレイ部に,巣穴に見立てた第2の飼育室を第1の飼育室とは別個に設けるとともに,この第2の飼育室の入口を開閉できるように構成した。これは,ペットが所定の場所で排泄するようになるまで,つまり,自分の排泄場所を認識するまで第2の飼育室に入ることを禁止し,認識してから入口を開放してペットが第2の飼育室,つまり,巣穴の中に入れるようにした。こうすれば,第2の飼育室の中でペットが排泄することはないので,第2の飼育室内が排泄物で汚れることはなく,したがって,悪臭を発生することがない,というわけである。本考案は,このような観点からなされたものである。その詳しい内容については,項を改めて説明する。なお,課題を解決するための手段の欄の随所において記載した用語の意義等は,その性質上可能な限り何れの請求項においても適用されるものとする。
【0005】
請求項1に記載した考案の構成
請求項1に記載した考案に係るペット飼育容器(以下,「請求項1の飼育容器」という)は,ペットを飼育するための第1の飼育室と,前記第1の飼育室の下端部に着脱自在に取り付けられるトレイ部と,を備えている。請求項1の飼育容器の特徴は,前記トレイ部は,ペットが入れる大きさの第2の飼育室と,当該第2の飼育室と隣接する凹所と,が設けられ,前記凹所から前記第2の飼育室に出入りするための開口部が,当該第2の飼育室を形成する壁部に形成され,前記開口部は,開閉ドアによって開閉されるように構成され,前記凹所の床部は,排泄物を受けるためのペットトイレによって構成され,当該ペットトイレは,前記トレイ部に対して着脱自在に構成されていることにある。第1の飼育室は,篭状のケージや合成樹脂製の枠体等によって構成されるのが一般的である。第2の飼育室は,ペットが巣穴として認識できる程度に周りを囲まれた空間のことをいう。ペットトイレは,少なくともペットの排泄物を受けられるように構成されており,トレイ部に取り付けたり取り外したりできるものであれば,どのような形状でもよい。」
(2c)「【0018】
開口部と開閉ドアの構成
図1及び3を中心にして,開口部37と開閉ドア7について説明する。図1に示すように開口部37は,ウサギが第2の飼育室31内へ入ったり外へ出たりできるように,第2の飼育室31を形成する壁部35に開けられている。開口部37は,ウサギの大きさに合わせた半円状に形成され,同じく半月状の開閉ドア7によって開閉されるようになっている。図3に示すように開閉ドア7は,壁部35に固定した枢軸53によってその中央部が支持され,この枢軸53の周りを回転するように構成されている。本実施形態における開閉ドア7を,このような回転方式にしたのは,回転方式であれば開閉ドア7を凹所55方向に開いたりする等の必要がないのため開放に必要な占有空間を不要にできるからである。図3の実線は閉鎖時の開閉ドア7を,同じく仮想線は開放時の開閉ドア7を,それぞれ示している。なお,符号7nは,開閉ドア7を開閉させるときに飼育者が指を掛けられるように形成した開閉ノブである。」
(2d)「【0020】
ウサギのトイレ躾方法
ペット飼育容器1を使用すれば,ほとんどのペットを飼育することができるが,ここでは,特にトイレ躾方法について図1を参照しながら説明する。ウサギに限らずトイレ躾は,そのペットの飼い始めが肝心である。既に説明したように,ウサギは巣穴で生活する習性を持っているが,飼い始めのウサギに何も躾を行わないと,巣穴である第2の飼育室31内で排泄するようになってしまう。そこで,飼い始めのウサギを飼育するときには開口部37の開閉ドア7を閉鎖しておき第2の飼育室31に入れないようにしておいて凹所55にて,すなわち,ペットトイレ9の上にて排泄するように躾る。図3に示す開閉ドア7を閉鎖するには,開閉ノブ7nに指を掛けて反時計方向に回転させることにより行う。
【0021】
上述したトイレ躾が完了したら,今度は,開口部37を開放してウサギが第2の飼育室31内に入れるようにする。開口部37の開放は,開閉ドア7を上記とは逆の時計方向に回転させればよい。ペットトイレ9の上で排泄するように躾られたウサギは,第2の飼育室31内で排泄することはなく,排泄するときは第2の飼育室31から出てペットトイレ9の上で行う。これによって,巣穴である第2の飼育室31と排泄場所を完全に分離させることができ,この結果,第2の飼育室31内はもとより,ペット飼育容器1全体が清潔に保たれるので排泄物が発生する悪臭によって飼育者が悩まされなくなる。さらに,前述したように,排泄物によって汚れたペットトイレ9を単独で洗浄できるので,この点からもペット飼育容器1全体を清潔に保つことができる。
【0022】
【考案の効果】
本考案に係るペット飼育容器を使用すれば,ペットの習性,特に,巣穴にもぐる,という習性を利用してペットに排泄の躾を行うことができ,もって,巣穴と併設場所が分離され,これによりペット飼育容器が清潔に保たれる。」

(3)甲第3号証(特開2003-23904号公報)
(3a)「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は,犬の習性を利用し,犬の排泄場所を特定させるしつけ(以下「トイレのしつけ」とします)を手助けする機器に関するものである
【0002】
【従来の技術】屋内で犬を飼う上で最初に行うしつけがトイレのしつけである。従来ではまず犬のトイレ場所を決め,排泄するであろう時間帯に飼い主が犬を決めた場所に連れて行き,排泄をするまで待つ。これを繰り返す。またドッグゲージに入れて育てようとした場合,ゲージの中にトイレ用シーツを敷きつめ,その上だけで排泄するように繰り返し覚えさせる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】トイレのしつけを覚えさせる時期は子犬なので,しつけを覚えさせるまでが非常に根気がいる作業です。まして初めて犬を飼う人は,どのようにしつけたらよいかわからないのが現状です。実際には次のような問題が犬を始めて飼う人を煩わせています。
・ トイレシーツの上や決まった場所で排泄するように促しても,子犬にとっては「遊んでくれている」としか思いません。
・ 排泄をするであろう時間(食事後)に飼い主が犬をトイレに連れて行っても,子犬はジャレ動き回り,飼い主が注意をそらしたころに子犬が排泄してしまった事に気づいてしまうことも多く,そのため,ある程度子犬が動き回らないように子犬を小さなドッグゲージ等に入れる必要がある。
・ 日頃ドッグゲージに入れていない子犬はドッグゲージのような何かに覆われている場所に対し,違和感をもち,排泄をしない。
・ 日頃からドッグゲージに入っている子犬は,ゲージ全体をトイレとみなし,ゲージ全体で排泄をしてしまう犬が多い。
・ またドッグゲージ内にトイレシーツを引いたところでも,その後ジャレ遊ぶことで子犬やゲージ全体が糞尿まみれになり,非常に不衛生である。
【0004】そこで本発明は上述したトイレのしつけの問題点を解消するために提案するもので,犬を初めて飼う人にも本発明を利用することで,短期間で確実に子犬のトイレのしつけができるものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】犬のトイレのしつけを行うために,犬の反復学習(スリコミ)を利用して,居住部分とトイレ部分を明確に分け,その境目に取り外し可能な仕切りを備え,トイレ部分にはトイレシーツが滑りにくく加工した引き出しトレーを備えたドッグサークル型トイレしつけ機を使用する」
(3b)「【0007】この実施の形態に係る子犬のトイレしつけ機は図1に示すように,全体を柵で囲まれています。床面はA居住エリアとBトイレエリアと2つに分かれており。AとBの境目には1段差が設けられています。また3脱着可能な仕切りでAとBの間は仕切られています。例えば3脱着可能な仕切りは網状であったり,板状であったりするもので,犬が容易にA居住エリアとBトイレエリアを通り抜けできないものとします。犬は自らの肉球の感触でそこがどんな場所か判別するので,A居住エリアの床は非常に心地が良い床面(タオル地,カーペット地)で構成されたほうがより高いトイレのしつけ効果を望めます。Bトイレエリアは例えばプラスティック素材や金属,セラミック等の清掃のしやすい素材を使用したほうがよい。3脱着可能な仕切りは両サイドがスライドして上から容易に脱着できます。Bには2引き出しトレイが設けられています。2引き出しトレイはトイレエリア全体に引き出しがついたものです。
【0008】平常時,図2を参照のとおり脱着可能な仕切りは取り外しておきます。犬は自由に走りまわることができます。
【0009】図3のとおり,犬の排泄のタイミングは食後,運動後ですが,そのタイミングに図3のとおり犬をBトイレエリアに入れ,3脱着可能な仕切りをスライド装着します。
【0010】排泄をしたら,犬をほめ,おやつをあげます。そしてA居住エリアに犬を移し,図4のように2引き出しトレイを引き,Bトイレエリアの排泄物の処理をします。
【0011】処理が終わり,3脱着可能な仕切りをはずします。図2のように元に戻します。」

以上のことから,甲第3号証には以下の発明が記載されている。
「トイレのしつけを行う犬用サークルであって,
床面はA居住エリアとBトイレエリアと2つに分かれており,
3脱着可能な仕切りでA居住エリアとBトイレエリアとの間は仕切られており,
平常時に3脱着可能な仕切りは取り外しておき,
犬の排泄のタイミングに犬をBトイレエリアに入れ,3脱着可能な仕切りをスライド装着する,
ドッグサークル型トイレしつけ機」(以下,「甲3発明」という。)

(4)甲第4号証(大友藤夫,小方宗次監修,「06.07年版 犬の医・食・住」2005年11月29日発行,株式会社どうぶつ出版,114,190,191ページ)
(4a)第114頁の絵には,「一端が開放した中間柵で二箇所に仕切られた扉のないサークル」が記載されている。
(4b)「部屋の中を自由に遊ばせるのは,トイレをきちんと覚えてからにしましょう。
■ トイレの設置
P114の犬の部屋を参考にしてください。サークルを使って,犬の行動範囲を制限する方法が一番無難で,人も犬も苦労しません。
まる1サークル内のスペース全体に新聞紙,もしくはペットシーツを敷きます。こうしておくと,犬の行動範囲全てがトイレなので,失敗するということがなくなります。
まる2この状況の中で,犬がどの場所に一番多く排泄するかをよく観察します。
最初は滅茶苦茶でも,次第に好んで排泄する場所が決まってきますから,そこを避けて寝床や運動するスペースを広げて行くのです。
しかし,いきなり広くしてしまうと,また失敗してしまう可能性があるので,少しずつ広げて行くように注意して下さい。
寝床となる部分には,肌触りの異なるもの(略)を敷きましょう。
まる3自由に動き回れるスペースが相当広くなっても失敗することがなくなれば,まもなくしつけ完了です。後は,サークルの扉を開けたままにし,犬がいつでもトイレに行けるようにしておくか,サークルを取り払うかしましょう。」(第190ページ?第191ページ)

(5)甲第5号証(特許第3370834号公報)
段落には,
(5a)「【0007】またこの発明は,上記の視力測定装置を用いて実験動物の視力を測定する方法であって,視力測定装置の一方の部屋に動物を入れ,この部屋の上部に透明天井板を配設して明室とするとともに,他方の部屋に黒色天井板を配設して暗室としたのち,隔壁の開口部を開けて動物が明室から暗室へ移動するまでの時間を測定し,次いで,黒色天井板と透明天井板の位置を交換して明室と暗室を交代させ,隔壁の開口部を開けて動物が明室から暗室へ移動するまでの時間を測定することを連続して繰り返し,各試行の移動時間を指標として動物の視力を評価することを特徴とする実験動物の視力測定方法をも提供する。」
(5b)「【0010】
【発明の実施の形態】この発明の視力測定装置は,例えば,図1に示した構成からなるものを例示することができる。この視力測定装置は,4枚の黒色板(11)(12)(13)(14)からなる方形の箱体(10)で,黒色の隔壁(20)により中央が仕切られて2つの部屋(31)(32)が形成されている。これらの部屋(31)(32)は相同である。隔壁(20)には開口部(21)が設けられており,この開口部(21)を通って動物は2つの部屋(31)(32)を行き来することができる。・・・」
(5c)「【0012】
・・・この発明の視力測定装置は,隔壁に開口部を形成し,この開口部には開閉扉を設けている。図4は,この隔壁と開口部,開閉扉の構成例を示した要部側断面図である。この図4の例の場合には,相対向した開口部(21)を有する2枚の隔壁(20)により隙間(23)を形成し,この隙間(23)に開閉扉(22)を挿入している。開閉扉(22)は,この図4に示したように上方に引き上げてもよく,あるいは側方に引き出すようにしてもよい。また,隙間(23)には,例えばタイマに接続した光電素子等を配設し,開閉扉(22)の引き上げ(引出し)から動物が開口部(21)を通過するまでの時間を自動計測できるようにしてもよい。もちろん,隔壁(20)は一枚の板材とすることもでき,その場合には,隔壁(20)の両側に開閉扉(22)を設けるなどの任意の構成を採用することができる。」
(5d)「【0014】次に,この発明の視力測定方法における操作手順を,添付した図5に沿って例示する。
〔1〕隔壁(20)の開口部(21)を開閉扉(22)で遮断した状態で,一方の部屋(31)にラット(50)を入れ,この部屋(31)の上部に透明天井板(41)を配設してを明室とするとともに,他方の部屋(32)に黒色天井板(42)を配設して暗室とする。この状態で,一定の時間(例えば,1分間),ラット(50)を新しい環境に馴化させる。
〔2〕開閉扉(22)を引き上げて開口部(21)を開ける。同時に時間の計測を開始する。
〔3〕ラット(50)が明室(31)から暗室(32)へ移動するまでの時間(移動潜時)を測定する。なお,設定時間内にラット(50)が暗室に移動しない場合には,実験者が強制的に移動させる。
〔4〕ラット(50)が暗室(32)への移動を完了したのち,開閉扉(22)を下ろして開口部(21)を遮断し,一定の時間(例えば,1分間),ラットを暗視野のもとに置く。
〔5〕黒色天井板(42)と透明天井板(41)を交換し,ラット側の部屋(32)を明室とし,他方の部屋(31)を暗室とする。この状態で,一定の時間(例えば,1分間),ラット(50)を明視野の環境に馴化させる。
【0015】そして,上記のステップ〔2〕?〔5〕を1試行とし,この試行を順次連続して繰り返して,各試行の移動潜時からラットの視力を判定する。すなわち,ラットの視力が正常であれば,その好暗所性によって短時間で明室から暗室へ移動する。一方,視力障害があれば暗室への開口部を視認することが困難または不可能となり,暗室への移動潜時は長くなるか,あるいは設定時間内には移動することができない。」

(6)甲第6号証(特許第3409167号公報)
(6a)「【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は,上記課題を,雌雄の小動物を収容するケージ本体と,そのケージ本体内に配設されケージ本体内を二室に区分する仕切板と,その仕切板に摺動自在に係止されたシャフト部材と,前記仕切板の適所に設けられ前記シャフト部材が付勢されると開放され収容された前記小動物が通抜け可能となるゲート部とを含んでなる小動物交配用ケージにより解決するものである。
【0008】
【作用】この発明による小動物交配用ケージでは,ゲート部を閉鎖することによりケージ本体内を暫時二室に区分し,その区分した二室に繁殖適齢期に達した雌雄の小動物を分離収容しておく。そして,その後,適当な時期を見計らい,人為的な制御下でシャフト部材を付勢してゲート部を開放し,その雌雄の小動物を事実上一室に同居収容することにより交配可能な状態にする。」

(7)甲第7号証(実用新案登録第3059420号公報)
(7a)「【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は,たとえば,イタチ科に属するフェレットのような愛玩動物を飼育するための飼育容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
・・・ペットを飼育する際の主な問題点は,ペットの糞尿の清掃とその運動不足の解消である。・・・ペットの例として挙げたフェレットなどは,食べたものの消化が極めて早く約3時間で排泄する動物であり,また,運動不足によるストレスの影響をたいへん受けやすい動物であるとも言われている。・・・
【0003】
・・・最近のペット飼育容器には,ケージ部が上部飼育室と下部飼育室の上下2段に仕切板によって仕切られているものがある。このように仕切られているのは,トレイ部をケージ部から取外したときにケージ部下端の開口部から逃げ出さないようにペットを上部飼育室に一時的に移動させておくためである。仕切板には,両者間の行き来ができるように通路が形成され,トレイ部を取り外すときにペットを上部飼育室に移動させた後にこの通路を扉で塞いで行き来させないようになっている。」
(7b)「【0006】
請求項1に記載した考案の構成
請求項1に記載した考案に係るペット飼育容器(以下「請求項1のペット飼育容器」という)は,ペットを飼育するための飼育室を備え,前記飼育室は,仕切板によって上端飼育室と下端飼育室とに分割され,前記仕切板には,ペット往来用開口部が形成され,前記開口部は,当該開口部周縁に着脱自在に取り付けられる閉鎖板によって閉鎖され,前記開口部周縁から取り外された前記閉鎖板は,前記下端飼育室と前記上端飼育室との間をペットが昇降できるように(傾斜又は垂直に)設置可能に構成されていることを特徴とする。「飼育室」の外形を形成するものは,ペットの種類によって様々であるが,そのようなものとして,たとえば,ケージ状(網状)のものでもよいし,透明プラスチックによって構成したものがある。
【0007】
請求項1に記載した考案の作用効果
請求項1のペット飼育容器は,次の作用効果を生じる。すなわち,飼育室内で飼育されるペットは,仕切板に形成された開口部を通じて下端飼育室と上端飼育室との間を,傾斜配置された閉鎖板を使って行う。すなわち,ペットは,下端飼育室から閉鎖板を使って一気に上端飼育室まで駆け上ったり,逆に,駆け下りたりすることができる。したがって,飼育室という限られた空間の中で相当な運動量を確保できるので運動不足によるストレスを感じることがほとんどなくなる。ペット飼育容器を清掃等する際には,まず,上端飼育室にペットを移動させた後に開口部を閉鎖板によって閉鎖する。次いで,ケージ部からトレイ部を取り外して清掃等を行う。清掃を完了したらトレイ部をケージ部に取り付け,その後,閉鎖板を取り外して開口部を開放する。取り外した傾斜版を上端飼育室と下端飼育室との間に傾斜配置して作業を完了する。」

(8)甲第8号証(特開昭62-294018号公報)
(8a)「問題を解決するための手段
この発明は,前記問題点を解決するものであって,以下その基本的概念を説明すると,床枠で囲繞された内部に醗酵床を設け,その醗酵床の外周を移動柵で囲繞して中央部にスライド扉を有する仕切柵で仕切って,左右に同一の面積の飼育室を設け,床面の汚損状態により左右何れえも移動して醗酵床を天地返しを施して養豚しようとする方法である。
作用
本発明は左右の柵は固定し,或いは左右側枠を仕切柵として中央部の仕切柵のみを移動してスライド扉を開いて豚を広い方に移動させて床面を天地返しする。この場合,移動柵を左側へ移動するときは,その柵の扉を開いて一たん豚を右側に移動させて,床面を天地返し作業を行うものであって,仕切柵の移動によって左右の豚を混向しないようにするものである。」(第2頁左上欄19行から右上欄第16行)

(9)甲第9号証(三村雅文,12to12,畑山孝雄編集,「うさぎパラダイス」1999年2月15日発行,主婦と生活社,102,103ページ)
(9a)「サークル内には,全面にスノコを敷き,その下の薄手のカーペットや敷布など簡単に洗えるもの(使い捨てでもいいでしょう)を敷きます。あとはサークル内にエサ入れ,水入れ,トイレ,そしてうさぎの巣箱(寝床)をセットすればOKです。」(102ページ上から3段落6行?12行)
(9b)103ページの絵には「うさぎがいる犬用サークル内の隅に箱状の巣箱を配置したもの」が記載されている。

(10)甲第10号証(霍野晋吉著,「ハムスター・ウサギ・フェレットなどの飼い方」1996年11月20日発行,成美堂出版,82ページ)
(10a)「まず,トイレにそのウサギの糞を入れて臭いをつけ,ウサギをいれて臭いを確かめさせます。そのトイレで糞をしたらごほうびをあげて。別のところでした場合は(その場所は掃除して臭いを消しておく),すぐトイレに連れて行き,トイレの場所を繰り返し教えます。そのうちにトイレを覚え,自分で行くようになるはず。
どの動物も,トイレのしつけは基本的に同じ方法で行います。」(82ページ上から3段落5行?15行)

(11)甲第11号証(斉藤久美子監修,「かわいい うさぎ」2004年4月20日発行,株式会社西東社,78ページ)
(11a)「昼 睡眠をとり,ときどき食事も取ります。」(図の右上部)
(11b)「うさぎは規則正しい生活リズムを持っています。」(左欄下から8?7行)

(12)甲第12号証(斉藤久美子監修,「かわいい うさぎ」2004年4月20日発行,株式会社西東社,104,105ページ)
(12a)「らくらくトイレ仕付け術
まる1トイレにおしっこのにおいをつける
おしっこのついたトイレ砂などをトイレに置く。同じ場所で排泄する習性を利用。
まる2そぶりを見せたらすぐトイレに
しっぽを持ち上げ,おしっこやフンをしそうなそぶりを見せたら,こまめにトイレに連れていく。
まる3上手にトイレができたらほめる
トイレで排泄できたらとにかくほめる。偶然にできたことでも,ほめることで徐々に覚えていく。」104ページ

(13)甲第13号証(杉浦基之監修,「赤ちゃん犬のしつけと育て方」2001年6月22日発行,(株)主婦と生活社,68,69ページ)
(13a)「1 こんな時がトイレタイム
寝ていた場合,起きてすぐ。これは,朝に限りません。ご飯を食べたあと。そして,遊んだあと。赤ちゃん犬は,起きている間は,だいたい1時間ごとにトイレに行きます。
2 ソワソワしたらトイレのサイン
クンクン鳴いたり,匂いをかぐようにソワソワウロウロしだしたらトイレのサイン。
遊んでいても,こういうサインがあったらトイレに連れていきます。また,よく観察すると,トイレが近くなった時にする表情があります。それも目安になります。
3 トイレに連れていく
抱き上げてトイレへ連れていきます。
4 終る頃,「オシッコ」と声をかける
終りそうになったら「オシッコ」と声をかけます。ウンチもオシッコも「オシッコ」という同じことばを使い,口調やトーンも統一すると覚えやすくなります。
くりかえしていると,オシッコ=排泄行為という回路ができて,オシッコということばとトイレタイムが結び付きます。このことばを教えることで,外でするトイレのしつけがスムーズになります(→146ページ)。
5 ほめて遊んであげる
ペットシーツの上できちんとトイレできたら,ほめて,それから,遊んでやります。
ほめたり遊んでやることでトイレで排泄する=気持ちよい体験になっていきます。」68,69ページ

2 各無効理由についての判断
(1)第1,2の無効理由について
審判請求書の(4-2),(4-3)の記載からみて,第1,2の無効理由は甲1発明を主引例として本件特許発明1と甲1発明とを対比し,相違点について容易であると主張するものであるので,まず訂正発明1と甲1発明とを対比する。
そうすると,甲1発明の「トイレをしつけるための犬用のサークル」は,訂正発明1の「サークル本体の内部で,収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークル」に,
以下同様に,「ベッドとトイレの間を板で仕切って区別し」との点は,「サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており」との点に,
「犬がベッドとトイレを自由に行き来できるスペースが開けてある」点は,「中仕切体には,犬が出入り可能な仕切出入口が開口される」点に,
それぞれ相当する。

したがって,訂正発明1と甲1発明は,
「サークル本体の内部で,収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて,
前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており,
前記中仕切体には,犬が出入り可能な仕切出入口が開口されることを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。」で一致し,以下の点で相違している。

<相違点1>
サークル本体が,訂正発明1では「複数のパネルが連結された」ものであるのに対し,甲1発明ではそのようなものであるかは明らかでない点。

<相違点2>
訂正発明1が,「仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ,この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されている」のに対し,甲1発明には扉が認められない点。

上記,相違点1,2について検討する。
<相違点1について>
犬用サークルを複数のパネルを連結して形成することは当業者に周知な技術事項であるから,訂正発明1の相違点1に係る構成は当業者が容易に想到したものである。

<相違点2について>
当該相違点の構成により,訂正発明1は仕切扉を開放し犬を住居スペースからトイレスペースに誘導する際,又は開放された開口を通って,犬が自発的に住居スペースからトイレスペースに移動した際,中仕切体の開口部以外はトイレスペースと住居スペースが仕切られているため,犬が元のスペースに戻ることが抑制され,仕切扉を迅速かつ容易に閉鎖できる効果を有すると認められる。
甲1発明は,「人間の寝室のように,ベッドとトイレの間を板で仕切って区別」するものであるが,「人間の寝室のように」とは,単にベッドとトイレの間を板で仕切って区別することが人間の寝室とトイレの間の構造に似ていることを示しているだけであって,人間の寝室とトイレの間の仕切りないし扉は,トイレの仕付けのためのものとは認められないから,甲1発明のトイレをしつけるための犬用のサークルに,人間の寝室とトイレの間の構造を用いることが容易であるとは認められない。
さらに,甲第2号証の「凹所55」,「第1の飼育室」,「第2の飼育室」と「開閉ドア7」は,記載事項(2d)「開口部37の開閉ドア7を閉鎖しておき第2の飼育室31に入れないようにしておいて凹所55にて,すなわち,ペットトイレ9の上にて排泄するように躾る。・・・上述したトイレ躾が完了したら,今度は,開口部37を開放してウサギが第2の飼育室31内に入れるようにする。」と示されており,トイレスペースに相当する凹所55には居住スペースに相当する2つの飼育室が隣接し,一方の飼育室である第2の飼育室31は凹所55との間を仕切扉に相当する開閉ドア7により閉鎖され,他方の飼育室である第1の飼育室は凹所55との間に中仕切体がないものである。そしてこのような巣穴にもぐる習性を有した動物用の特殊な構造をしたペット飼育容器の構成を,犬用のサークルである甲1発明に適用することが当業者にとって容易であるとはいえない。
また,訂正発明1は,犬が住居スペースからトイレスペースに移動する際に,中仕切体の開口部以外は仕切られているため,犬が元のスペースに戻ることが抑制され,仕切扉を迅速かつ容易に閉鎖できる効果を有するものであって,甲第2号証の開閉ドア7はトイレ躾の際にトイレに誘導して閉じるものではないから,当該効果を奏するものを容易に想到することはできない。
甲第3号証の着脱可能な仕切りは扉ではないから,上記の効果を有するものではない。
甲第4号証の記載事項(4a)は扉のないサークルであり,記載事項(4b)には,「自由に動き回れるスペースが相当広くなっても失敗することがなくなれば,まもなくしつけ完了です。後は,サークルの扉を開けたままにし,犬がいつでもトイレに行けるようにしておくか,サークルを取り払うかしましょう。」と記載されているものの,記載事項(4a)のサークル(114ページの絵参照)に扉が記載されていないことと,記載事項(4b)の「まる1」,「まる2」の記載はトイレとそれ以外の部分の間に仕切りが無い前提で記載されていると認められることから,記載事項(4a)のサークル(114ページの絵参照)が仕切られていることを前提として記載事項(4b)が記載されているとは認められない。さらに,記載事項(4b)のはじめに「部屋の中を自由に遊ばせるのは,トイレをきちんと覚えてからにしましょう。」と記載されていて,最後に「後は,サークルの扉を開けたままにし,犬がいつでもトイレに行けるようにしておくか,サークルを取り払うかしましょう。」と記載されていることからみて,扉はサークルと外部の間のものと考えることもでき,記載全体として扉がどこにあるのか不明確であるから,甲第4号証に「排泄する場所」と「寝床や運動するスペース」の間に扉のある仕切りを設けたものが記載されていると認めることはできない。
さらに,甲第5号証の「扉」は記載事項(5d)からみて,好暗所性があるラット明室と暗室の間に設けて,扉を開けてからの移動時間を測定することにより当該ラットの視力を判定するためのものであり,甲第6号証は雌雄の小動物を分離収容したり交配可能な状態にするためにゲート部を設けるものであり,甲第7号証に記載されたものは,ペット飼育容器の上部飼育室と下部飼育室の間の開口部を閉鎖板で閉鎖できるようにしたものであり,甲第8号証は移動柵に扉を設け,扉を開いて豚を片側に移動させて床面の天地返し作業を行うものであって,何れも「仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ,この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されている」犬のトイレ仕付けのためにのものではない。
そして,甲第4?8号証に記載されたものからは,訂正発明1の,「犬が住居スペースからトイレスペースに移動する際に,仕切り他の開口部以外は仕切られているため,犬が元のスペースに戻ることが抑制され,仕切扉を迅速かつ容易に閉鎖できる」効果を有するものを容易に想到することはできない。

さらに,甲第9?13号証を参酌しても,ウサギの飼い方や,ウサギや犬のトイレの仕付け方法が周知であることを示すだけであって,中仕切体,仕切出入口及び仕切扉を設けることが容易であることの根拠となる記載はなく,訂正発明1が容易であるということはできない。

以上のとおり,請求人が示した,甲第1号証?甲第8号証には住居スペースからトイレスペースの間に扉を有した犬用サークルは記載も示唆もされていないから,訂正発明1の相違点2に係る構成は当業者が容易になし得たものではない。

したがって,本件発明1は,甲1発明を主引例として,甲第1?8号証に記載された発明,又は甲第1,2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)第3の無効理由について
第3の無効理由は,平成24年9月13日付け口頭審理陳述要領書において請求人により撤回された。

(4)第4の無効理由について
審判請求書の(4-5)の記載からみて,第4の無効理由は甲3発明を主引例として本件特許発明1と甲1発明とを対比し,相違点について容易であると主張するものであるので,まず訂正発明1と甲3発明とを対比する。

そうすると,甲3発明の「トイレのしつけを行う犬用サークル」は,訂正発明1の「サークル本体の内部で,収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークル」に,
以下同様に,「3脱着可能な仕切り」は,「中仕切体」に,
「床面はA居住エリアとBトイレエリアとの2つに分かれており」との点は,「住居スペースとトイレスペースに区画されており」との点に,
それぞれ相当する。
また,甲3発明の「床面はA居住エリアとBトイレエリアとの2つに分かれており,3脱着可能な仕切りでA居住エリアとBトイレエリアの間は仕切られており」との構成からみて,甲3発明は訂正発明1の「サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されている」との構成を有していると認められる。
さらに,甲3発明の「平常時に3脱着可能な仕切りは取り外しておき,犬の排泄のタイミングに犬をBトイレエリアに入れ,3脱着可能な仕切りをスライド装着する」点と,訂正発明1の「中仕切体には,犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに,この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ,この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されている」点とは,「中仕切体において,住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されている」で共通していると認められる。

したがって,訂正発明1と甲3発明は,
「サークル本体の内部で,収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて,
前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており,
中仕切体において,住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていることを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。」で一致し,以下の点で相違している。

<相違点3>
サークル本体が,訂正発明1では「複数のパネルが連結された」ものであるのに対し,甲3発明ではそのようなものであるかは明らかでない点。

<相違点4>
中仕切体において,住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制される構成に関して,訂正発明1は,「中仕切体には,犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに,この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ,この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されている」ものであるのに対し,甲3発明は,「3脱着可能な仕切りでA居住エリアとBトイレエリアの間は仕切られており,平常時に3脱着可能な仕切りは取り外しておき,犬の排泄のタイミングに犬をBトイレエリアに入れ,3脱着可能な仕切りをスライド装着する」ものである点。

上記,相違点3,4について検討する。
<相違点3について>
犬用サークルを複数のパネルを連結して形成することは当業者に周知な技術事項であるから,訂正発明1の相違点3に係る構成は当業者が容易に想到したものである。

<相違点4について>
当該相違点の構成により,仕切扉を開放し犬を住居スペースからトイレスペースに誘導する際,又は開放された開口を通って,犬が自発的に住居スペースからトイレスペースに移動した際に,仕切体の開口部以外はトイレスペースと住居スペースが仕切られているため,犬が元のスペースに戻ることが抑制され,仕切扉を迅速かつ容易に閉鎖できる効果を有すると認められる。
そして,<相違点2について>で示したのと同様の理由で,訂正発明1の相違点4に係る構成は当業者が容易になし得たものではない。

さらに,甲第9?13号証を参酌しても,ウサギの飼い方や,ウサギや犬のトイレの仕付け方法が周知であることを示すだけであって,中仕切体,仕切出入口及び仕切扉を設けることが容易であることの根拠となる記載はなく,訂正発明1が容易であるということはできない。

したがって,本件発明1は,甲3発明を主引例として,甲第1?8号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)第5の無効理由について
上記のとおり,訂正発明1は当業者が容易に発明をすることができたものでないから,訂正発明1を引用し,さらに「仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段」との構成を有する訂正発明2は当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび
以上のとおり,請求人の主張する理由及び証拠方法によっては,訂正発明1,2を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
犬のトイレ仕付け用サークル
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に犬を入れてトイレの仕付けを行う犬のトイレ仕付け用サークルに関する。
【背景技術】
【0002】
犬用サークルは、複数のパネルを連結し、これらのパネルで囲まれた内部に犬を収容するものであって、サークルの内部空間は、仕切られることなく1つ空間として構成されているものが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、犬の飼い主は、サークルの中に犬用トイレを置いて使用していることが多い。そして、犬にトイレの仕付けを行う際、飼い主が犬の排泄時が近づいたと察知すれば、まず犬をトイレに誘導し、犬がトイレで排泄を終えると、トイレで排泄ができたことを誉めて学習させるという手順を踏むのが通常である。
【特許文献1】特開2001-245545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した一般的な犬用サークルにおいてその内部に犬用トイレを置くと、犬の住居空間が狭くなって使い勝手が悪い。その上、犬用トイレの他に食器やベッドを置くと、衛生上好ましくない。このように、犬がサークル内で快適に過ごすことができないという問題があった。
【0005】
また、犬用トイレと住居空間との境界がないので、飼い主が犬をトイレに誘導し難く、たとえトイレへの誘導に成功した場合であっても、犬がトイレの上で静止し難い。このため、犬に対するトイレの仕付けが困難であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み創案されたもので、サークル内部が住居スペースとトイレスペースとに区画され、トイレの仕付けが容易で、使い勝手がよく、犬が快適に過ごすことができる犬のトイレ仕付け用サークルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明は、複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で、収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて、前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており、前記中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、サークル本体の内部空間が住居スペースとトイレスペースに区画されているので、トイレスペースを犬用トイレを置くためだけの空間として使用することができる。したがって、サークル本体内に犬用トイレを置いた場合であっても、犬は、住居スペースでゆとりを持って快適に過ごすことができる。また、住居スペースには、食器やベッドを置くことができるので、使い勝手がよい。
【0009】
また、住居スペースとトイレスペースとの間が中仕切体によって仕切られ、この中仕切体には仕切出入口が開口されているので、トイレの仕付けを行う際に、飼い主が犬をトイレに誘導しやすいので、便利である。
【0010】
さらに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されているので、仕切扉の開閉に応じて犬をトイレスペースに誘導したり住居スペースに誘導することができる。
【0011】
本発明は、上記構成の犬のトイレ仕付け用サークルにおいて、前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、仕切出入口の開放時および閉鎖時に仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられているので、仕切出入口を開放状態および閉鎖状態で保持することができる。したがって、閉鎖した仕切出入口の仕切扉を犬が開けるのを防止できるとともに、仕切出入口を開放した状態で犬が住居スペースとトイレスペースとの間を安全で自由に行き来することができる。そして、トイレの仕付けを終えた犬に対しては、仕切出入口を常に開放状態に保持し、住居スペースとトイレスペースとの間を安全で自由に行き来できるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トイレの仕付けが容易で、使い勝手がよく、犬が快適に過ごすことができる犬のトイレ仕付け用サークルを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0015】
図1には、本実施形態の犬のトイレ仕付け用サークル1の全体が示されている。
【0016】
この犬のトイレ仕付け用サークル1は、複数のパネル2a,2b,2c,2dが連結されたサークル本体2と、サークル本体2の下部に取り付けられたトレー6とを備え、サークル本体2の内部空間は、中仕切体4によって仕切られ、住居スペース1aとトイレスペース1bに区画されている。
【0017】
サークル本体2は、正面・背面・左右の側面の4枚のパネル2a,2b,2c,2dが周囲壁を形成するように連結されており、各パネル2a,2b,2c,2dの隣り合うパネル同士は、固定棒20により固定されている。
【0018】
各パネル2a,2b,2c,2dは、木製の上フレーム21と下フレーム22と、これら上フレーム21と下フレーム22との間に取り付けられる金属製の網状体とから構成されている。
【0019】
なお、各パネル2a,2b,2c,2dは、上フレーム21と下フレーム22との間をすべて網状体で構成するものに限定されるものではなく、例えば、上フレーム21と下フレーム22との間の一部に板状体を挿入することにより、サークル本体2の内部空間への外部からの刺激を軽減して、犬が落ち着くことのできる空間となるようにしてもよい。また、下フレーム22の床面と接地する面に、床の傷付きを防止する滑り止め部材を設けてもよい。
【0020】
正面パネル2aの上フレーム21と背面パネル2bの上フレーム21において、住居スペース1aとトイレスペース1bの境界に対応する位置には、中仕切体4を嵌め込む仕切体嵌め込み部21aが切り欠かれている(図3参照)。
【0021】
正面パネル2aの住居スペース1aに対応する側には、犬が出入り可能な犬出入口2eが開口されており、この犬出入口2eを開閉する犬用扉3が開閉自在に取付けられている。
【0022】
犬出入口2eは、正面パネル2aの下端部から上端部にわたって広く開口されており、犬が出入りし易いように図られている。
【0023】
中仕切体4は、仕切フレーム41と網状体とが組み合わされたパネルで構成されており、仕切出入口4aが開口されている(図2、図3、図4参照)。
【0024】
仕切フレーム41は、両端に嵌入部42が形成された断面矩形状の角材であって、嵌入部42をサークル本体2の仕切体嵌め込み部21aに嵌め込むことにより、中仕切体4をサークル本体2に取り付けるようになされている。
【0025】
仕切出入口4aは、中仕切体4の下端部から上端部にわたって広く開口されており、犬が出入りし易いように図られており、この仕切出入口4aを開閉する仕切扉43が開閉自在に取り付けられている。
【0026】
仕切扉43は、中仕切体4の網状体の上部の横線材44に吊下げ部材45を介して摺動自在に取り付けられている。
【0027】
また、仕切扉43の上部の左右の端部には、突出枠46がそれぞれ形成されているとともに、この突出枠46に対応する正面パネル2aと背面パネル2bには、突出枠46の上端に当接して仕切扉43のずり上がりを阻止する係止棒24が設けられている(図2参照)。したがって、仕切扉43のずり上がりを仕切出入口4aの開放状態・閉鎖状態の双方において防止できるようになされている。
【0028】
さらに、仕切扉43の突出枠46よりも若干下側に位置する左右の端部には、把手47がそれぞれ形成されており、使用者(飼い主)がこの把手47に手を掛けて仕切扉43を動かすことができるように図られている。
【0029】
さらにまた、中仕切体4の仕切出入口4a側の端縁40には、掛け止め部材48が回動自在に取り付けられている。この掛け止め部材48は金属製の線材を屈曲して形成され、縦線材を挟み込んで係止するとともに、回動させることで係止を解除することができるようになされている。したがって、仕切扉43を閉じたときには、仕切扉43の一方の側端部43aを掛け止め部材48で係止することで、仕切出入口4aの閉鎖状態を保持することができる。一方、仕切扉43を開けたときには、仕切扉43の他方の側端部43bを掛け止め部材48で係止することで、仕切出入口4aの開放状態を保持することができる。
【0030】
なお、中仕切体4は、嵌入部42をサークル本体2の仕切体嵌め込み部21aから外すことにより、容易に取り外すことができる。このように、中仕切体4を取り外すことで、例えばトイレの仕付けが完了した犬に対しては、住居スペース1aとトイレスペース1bとの間を常に自由に行き来できるようにすることも可能になる。
【0031】
正面パネル2aのトイレスペース1bに対応する側の下部には、犬用トイレを出し入れ可能なトイレ出し入れ口5aが開口されており、このトイレ出し入れ口5aを開閉するトイレ用扉5が開閉自在に取付けられている。
【0032】
トイレ出し入れ口5aは、犬用トイレの幅よりも若干広幅の横長形状に形成されており、犬用トイレAを出し入れし易いように図られている(図2参照)。
トイレ用扉5は、トイレ出し入れ口5aに対応する形状に形成された網状のパネル体である。
【0033】
トレー6は、外周にわたって周壁部61が立ち上げられており、排泄物や飲食物がサークル本体2内にこぼれた場合であっても、これらの汚物などがサークル本体2の木製の下フレームに直接かかって木材が腐敗することがないように図られている(図5参照)。また、トレー6は、住居スペース1aに対応する住居側トレー部6aとトイレスペース1bに対応するトイレ側トレー部6bに区画されており、住居側トレー部6aとトイレ側トレー部6bの境界にわたって漏れ止め用突部62が形成されている。
【0034】
また、中仕切体4に対応する位置には、突起63が3個所形成されており、中仕切体4の下端部を突起63と漏れ止め用突部62との間(嵌入部)に嵌め込んで、中仕切体4のガタツキを防止できるようになされている。
【0035】
さらに、トイレ側トレー部6bには、犬用トイレを所定位置で静止させるトイレ静止用突部64が形成されている。このトイレ静止用突部64は、犬用トイレAの外枠が嵌め込まれるように形成されており、犬の動きに伴って犬用トイレAが動くことがなくなり、好適に排便等をさせることを可能にしている。
【0036】
次に、上記構成の犬用サークル1を組み立てる手順について説明する。
【0037】
まず、正面、背面、左右の側面の4枚のパネル2a,2b,2c,2dを固定棒20を介して連結し、サークル本体2を組み立てる。
【0038】
次いで、トレー6をサークル本体2内に設置する。
【0039】
続いて、サークル本体2の上方から中仕切体4を挿入していき、中仕切体4の下端部をトレー6の嵌入部に嵌め込むとともに、正面パネル2aの上フレーム21と背面パネル2bの上フレーム21の仕切体嵌め込み部21aに中仕切体4を嵌め入れる。中仕切体4を嵌め入れる際、突出枠46を係止棒24の下部に挿入する。
【0040】
次に、上記構成の犬用サークル1の使用方法の一例について説明する。
【0041】
まず、犬用トイレをサークル本体2のトイレスペース1bに設置する。この際、犬用トイレの外枠をトレー6のトイレ静止用突起64に嵌め込んで、犬用トイレAが不測に動かないようにする。
【0042】
次いで、犬出入口2eを開けて、犬をサークル本体2内に入れる。
【0043】
使用者が犬の排泄が近づいてきたと察知した場合、仕切扉43を開けて、犬をトイレスペース1bの犬用トイレAに誘導する。その後、仕切扉43を閉鎖し、ロックする。
【0044】
犬が犬用トイレAで排泄し終えると、トイレで排泄したことを誉め、仕切扉43を開けて、住居スペース1aに犬を入れる。
【0045】
犬用トイレAのシーツを交換する際には、トイレ出し入れ口5aを開けて、犬用トイレを取り出し、使用者は楽な姿勢でシーツを交換することがでる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られて住居スペースとトイレスペースとに区画され、この中仕切体には犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が開閉自在に取り付けられているから、トイレの仕付けが容易な犬のトイレ仕付け用サークルに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る犬のトイレ仕付け用サークルの全体を示す斜視図である。
【図2】犬のトイレ仕付け用サークルの各扉を開けた状態を示す斜視図である。
【図3】犬のトイレ仕付け用サークルを分解して示す斜視図である。
【図4】住居スペースとトイレスペースとを区画する中仕切体を部分拡大して示す斜視図である。
【図5】サークル本体内に設置するトレーを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 犬のトイレ仕付け用サークル
1a 住居スペース
1b トイレスペース
2 サークル本体
3 犬用扉
4 中仕切体
4a 仕切り出入口
43 仕切扉
5 トイレ用扉
6 トレー
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で、収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて、
前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており、
前記中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていることを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。
【請求項2】
請求項1に記載の犬のトイレ仕付け用サークルにおいて、
前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられたことを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-10-05 
出願番号 特願2005-356334(P2005-356334)
審決分類 P 1 113・ 853- YA (A01K)
P 1 113・ 121- YA (A01K)
P 1 113・ 851- YA (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 中川 真一
高橋 三成
登録日 2010-10-29 
登録番号 特許第4616162号(P4616162)
発明の名称 犬のトイレ仕付け用サークル  
代理人 布施 行夫  
代理人 上原 理子  
代理人 上原 健嗣  
代理人 池村 正幸  
代理人 上原 健嗣  
代理人 倉内 義朗  
代理人 ▲高▼橋 淳  
代理人 宇治 美知子  
代理人 上原 理子  
代理人 池村 正幸  
代理人 倉内 義朗  
代理人 宇治 美知子  
代理人 大渕 美千栄  

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