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審決分類 |
審判 全部無効 発明同一 H01M 審判 全部無効 2項進歩性 H01M 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01M 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H01M 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 H01M 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 H01M |
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管理番号 | 1274156 |
審判番号 | 無効2010-800051 |
総通号数 | 163 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-07-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-03-25 |
確定日 | 2013-05-01 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3742144号「非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体」の特許無効審判事件についてされた平成22年12月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成23年 行ケ第10033号平成23年6月9日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3742144号は、平成8年5月8日に出願された特願平8-113710号の願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1?4に係る発明について、平成17年11月18日に特許権の設定登録がなされたものである。 そして、本件審判は、当該特許の無効を請求するものであり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 平成22年 3月25日:審判請求 6月21日:答弁書提出 8月20日:上申書提出(請求人) 10月 4日:審理事項通知 11月 5日:口頭審理陳述要領書提出(被請求人) 12日:口頭審理陳述要領書提出(請求人) 19日:上申書及び上申書(二)提出(請求人) 第1回口頭審理 26日:上申書提出(被請求人) 12月 1日:上申書(三)提出(請求人) 6日:審理終結通知 21日:審決 「結 論 特許第3742144号の請求項1?4に係る発明についての 特許を無効とする。 審判費用は、請求人の負担とする。」 平成23年 2月 3日:審決取消訴訟(平成23年 行ケ10033号) 提起 4月28日:訂正審判(訂正2011-390049)請求 6月 9日:審決取消決定 17日:訂正請求のための期間指定通知 21日:併合審理通知 (併合案件 無効2010-800119 無効2010-800240) 7月21日:訂正請求 訂正審判請求みなし取下 9月28日:審理事項通知 11月16日:口頭審理陳述要領書提出(請求人) 24日:上申書提出(請求人) 30日:口頭審理陳述要領書提出(被請求人) 12月 9日:上申書提出(請求人) 14日:第2回口頭審理 無効理由通知及び職権審理結果通知 16日:上申書提出(被請求人) 21日:意見書提出(被請求人) 訂正請求 先の訂正請求みなし取下 平成24年 1月 6日:上申書提出(請求人) 12日:併合分離通知 審理終結通知 2.訂正請求について 2-1.訂正の内容 平成23年12月21日付け訂正請求は、願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。 [訂正事項1] 請求項1に「マット面」(本件特許公報1頁6行)とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項2] 請求項1に「表面粗さとの差」(本件特許公報1頁7行)とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項3] 請求項1に「2.5μmより小さい」(本件特許公報1頁7?8行)とあるのを「1.3μm以下である」と訂正する。 [訂正事項4] 請求項2に「銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり」(本件特許公報1頁11行)とあるのを「銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり」と訂正する。 [訂正事項5] 請求項2に「マット面」(本件特許公報1頁12行)とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項6] 請求項2に「表面粗さとの差」(本件特許公報1頁13行)とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項7] 請求項2に「2.5μmより小さい」(本件特許公報1頁13行?14行)とあるのを「1.3μm以下である」と訂正する。 [訂正事項8] 請求項3に「上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池」(本件特許公報1頁16?17行)とあるのを「平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。」と訂正する。 [訂正事項9] 請求項4に「上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池」(本件特許公報1頁19?20行)とあるのを「平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。」と訂正する。 [訂正事項10] 本件特許公報3頁3行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項11] 本件特許公報3頁4?5行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項12] 本件特許公報3頁5行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。 [訂正事項13] 本件特許公報3頁8?9行に「マット面の表面粗さ」とあるのを「マット面及び光沢面の表面粗さ」と訂正する。 [訂正事項14] 本件特許公報3頁10行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項15] 本件特許公報3頁10行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。 [訂正事項16] 本件特許公報3頁16行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項17] 本件特許公報3頁18行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項18] 本件特許公報3頁18行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。 [訂正事項19] 本件特許公報3頁40行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項20] 本件特許公報3頁41行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項21] 本件特許公報3頁41?42行に「2.5μmより大きい」とあるのを「1.3μmより大きい」と訂正する。 [訂正事項22] 本件特許公報3頁49行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項23] 本件特許公報4頁1行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項24] 本件特許公報4頁1行に「2.5μmより小さく」とあるのを「1.3μm以下で」と訂正する。 [訂正事項25] 本件特許公報4頁14行に「長さLだけだけ」とあるのを「長さLだけ」と訂正する。 [訂正事項26] 本件特許公報9頁13行に「マット面の表面粗さ」とあるのを「マット面及び光沢面の表面粗さ」と訂正する。 [訂正事項27] 本件特許公報9頁13行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項28] 本件特許公報9頁14行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。 [訂正事項29] 本件特許公報9頁22行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。 [訂正事項30] 本件特許公報9頁23行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。 [訂正事項31] 本件特許公報9頁24行に「2.5μmより小さく」とあるのを「1.3μm以下で」と訂正する。 [訂正事項32] 請求項1に「銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり」(本件特許公報1頁5行)とあるのを「銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり」と訂正する(※審決注:訂正請求書下線部記載の「11行」は誤記と認められる。)。 2-2.訂正要件の検討 訂正事項1?32について、訂正の目的やその余の訂正要件について検討する。 まず、「マット面と反対側の光沢面との表面粗さとの差」を「マット面と反対側の光沢面との表面粗さの差」に訂正する訂正事項2,6,11,14,17,20,23,27,30と、「長さLだけだけ」を「長さLだけ」に訂正する訂正事項25は、いずれも表現上の誤りを正すものであるから、誤記の訂正を目的とするものである(※審決注:関連訂正箇所に下線、以下同様。)。 そして、これらの訂正は、本件特許の出願時の願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 次に、請求項1,2に記載された「電解銅箔」を、「クロメート処理が施された電解銅箔」に訂正する訂正事項4,32は、請求項1,2に係る発明の発明特定事項であった「電解銅箔」について、その前処理を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書段落0032には、当該発明の実施例において、電解銅箔にクロメート処理を施すことが記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 次に、請求項1,2に記載された「マット面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さとの差が10点平均粗さにして2.5μmより小さい」を、「マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下」に訂正する訂正事項1,3,5,7、及び請求項1の記載を引用する請求項3,4を上記の記載を含む独立請求項に書き改める訂正事項8,9は、請求項1?4に係る発明の発明特定事項であった「マット面の表面粗さ」「マット面と光沢面の表面粗さの差」さらにこの二つの発明特定事項から計算上発明特定事項となる「光沢面の表面粗さ」について、その数値範囲をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。一方、発明の詳細な説明において同様の訂正をする訂正事項10,12,13,15,16,18,19,21,22,24,26,28,29,31は、請求項の記載に発明の詳細な説明を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の請求項1には、光沢面の表面粗さの上限が、計算上5.5μmになること、段落0051には、当該発明の実施例において、光沢面の表面粗さが1.58?2.00μmであることが記載されていたから、該上限を3.0μmにすることが新たな技術的事項を導入することにはならない。むしろ、段落0015には、集電体表面の凹凸が大きい場合に充放電を繰り返すことより容量の劣化がおこること、段落0034には、実施例において、電解銅箔である負極集電体の両面に活物質を塗布することが記載されていたから、マット面と共に集電体表面を構成する光沢面の表面粗さの上限をマット面と同一にすることは、作用効果の観点から自明なことである。 また、段落0051には、実施例において、マット面と光沢面との表面粗さの差が0.28?1.3μmになることも記載されていた。 してみると、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-3.請求人の主張について 請求人は、本件訂正に関し、光沢面の表面粗さの上限が3.0μmであることは、本件特許明細書に記載されておらず、技術常識から自明でもなく、実施例の記載と矛盾し、本件特許の審査段階の手続に反するものであるから、これらの訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、実質上特許請求の範囲を変更するものであると主張している。 しかしながら、上述したように、この訂正は、請求項1や実施例等、本件特許明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質的に発明特定事項であった光沢面の表面粗さの上限をより限定するものにすぎない。 したがって、上記主張は採用できない。 2-4.まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1?32よりなる本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するものであるから、該訂正を認める。 3.本件発明の認定 本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1?4」という。)は、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。 【請求項1】 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする非水電解液二次電池。 【請求項2】 非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、 当該平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする平面状集電体。 【請求項3】 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。 【請求項4】 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。 4.本件特許の無効理由 これに対し、請求人が、本件訂正後において主張する本件特許の無効理由は、審判請求書、口頭審理陳述要領書及び上申書の記載からみて、次の無効理由I?VIである。 無効理由I:本件発明2は、甲第1号証(特開平9-143785号公報:特願平8-106743号の願書に最初に添付した明細書及び図面に相当)に記載された発明と同一であるから、その特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 無効理由II:本件発明2は、甲第2号証(特開平5-6766号公報)及び甲第3号証(特開平7-231152号公報)に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 無効理由III:本件発明2は、甲第4号証(特開平5-74479号公報)に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 無効理由IV:本件発明2は、甲第5号証(特開平6-260168号公報)に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 無効理由V:「マット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下である」ことを特徴とする本件発明1?4は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 無効理由VI:本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、「マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下である」電解銅箔を利用する本件発明1?4を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、その特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 なお、請求人は、上記無効理由に関連し、次の書証も提出している。 甲第 6号証:「リチウムイオン二次電池-材料と応用-」 日刊工業新聞社 1996年3月29日 初版1刷発行 26,27,49-51頁 甲第 7号証:特開平8-64201号公報 甲第 8号証:特開平7-192767号公報 甲第 9号証:特開平7-302594号公報 甲第10号証:特開平6-275270号公報 甲第11号証:特開平5-290853号公報 甲第12号証:特開平5-226004号公報 甲第13号証:特開平5-82171号公報 甲第14号証:1992 IEEE 35th International Power Sources Symposium, p.323-327(日本語訳添付) 甲第15号証:特開平10-21928号公報 甲第16号証:特開平2-68855号公報 甲第17号証:特許庁電子図書館 公報テキスト検索 検索結果 甲第18号証:警告状 (日本語訳添付) 甲第19号証:「MODERN ELECTROPLATING ThirdEdition」 A Wiley-Interscience Publication 1974年 188-203頁(日本語訳添付) 甲第20号証:金属表面技術協会編「金属表面技術便覧 改訂新版」 日刊工業新聞社(昭和51年)272-273頁 甲第21号証:FCF電解銅箔技術資料(2005年) 甲第22号証:JIS B 0601-1982 表面粗さの定義と表示 甲第23号証:Solid State Ionics 69(1994) p212-221 甲第24号証:第36回電池討論会 講演要旨集 平成7年 145-146頁、201-202頁 甲第25号証:第34回電池討論会 講演要旨集 平成5年 73-74頁、309-310頁 甲第26号証:Handbook of Batteries SECOND EDITION 1995年 35.1-35.13頁、36.27頁(日本語訳添付) 甲第27号証:甲第2号証(特願平3-130425 (特許第3182786号))の異議決定 甲第28号証:欧州特許出願公開第397523号明細書 甲第29号証:甲第5号証(特願平5-70997号) の拒絶査定不服審判の審決 甲第30号証:東京税関における輸入差止申立事件において、 専門委員により提出された意見書 甲第31号証:特開平4-88185号公報 甲第32号証:特開平6-270331号公報 甲第33号証:金属表面技術便覧(改訂新版) (昭和51年11月30日初版1刷, 昭和62年6月30日初版7刷発行)764-766頁 甲第34号証:Tech.Proc.Am.Co.Amer,Electroplat.Soc.,1959,46, p.293-297 PROTECTING SILVER AND COPPER AGAINST TARNISHING BY MEANS OF A CHROMATE PASSIVATING PROCESS 甲第35号証:「先端技術に対応する めっきの基礎」 槙書店(1994)204-209 甲第36号証:Electrolytic and Chemical CONVERSION COATINGS a Concise Survey of Their Production, Properties and Testing PORTCULLIS PRESS LIMITED(1976)4-22 甲第37号証:特開平2-312160号公報 甲第38号証:Surface Technology,26(1985)17-21 ELECTROLYTIC STAINPROOFING OF COPPER FOILS FOR PRINTED CIRCUIT APPLICATIONS 甲第39号証:DENKI KAGAKU 60 No.6(1992)543-546 Electrolytic Surface Modiffication of Copper Foil for Printed Circuit Use 甲第40号証:特開昭60-58698公報 甲第41号証:特公昭61-45720公報 甲第42号証:特開平5-29740公報 甲第43号証:特開平5-279896号広報 甲第44号証:US3625844 甲第45号証:US3896256 甲第46号証:平成22年(ワ)第29284号事件の原告準備書面(4) 甲第47号証:NEC TECHNICAL JOURNAL, Vol.1 N0.5/2006 68-71 甲第48号証:World Electric Vehicle Journal Vol.3,2009 1-9 甲第49号証:「新しい二次電池の開発と材料」33?63頁、72?73頁 (株式会社シーエムシー 1994年3月1日) 甲第50号証:「電池ハンドブック」360?363頁、610?617頁 電気化学会電池技術委員会編 株式会社オーム社 平成22年2月10日 甲第51号証:特開平6-231754号公報、 甲第52号証:特開平6-223878号公報 甲第53号証:ソウル大学副教授姜明周作成 鑑定書 甲第54号証:'98電池関連市場実態総調査 目次 富士経済 1998.6.23 甲第55号証:'99電池関連市場実態総調査 目次 19頁 富士経済 1999.10.14 参考資料1 :特願平3-255897号の拒絶理由通知書 5.書証の記載事項 甲第1号証 ○摘記1-1 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ファインパターン化が可能な電解銅箔、すなわち高いエッチングファクターが得られる電解銅箔、この電解銅箔を使用した銅張積層板並びにプリント配線板に関する。また、本発明による未処理銅箔は、従来に比べ両面がフラットなため、二次電池用電極やフラットケーブル、電線被覆シールド材等にも使用可能である。しかし、本発明による電解銅箔はこれらに限られるものではない。 ○摘記1-2 【0009】従来の電解銅箔がファインパターン化できない理由の大きな要因として、表面粗さが粗いことをあげることができる。電解銅箔は、通常、図1に示すような電解製箔装置により製箔された銅箔に、図2に示す表面処理装置により密着性向上のための粗化処理、防錆処理を施して製造される。電解製箔装置は回転するドラム状のカソード(表面はSUS又はチタン製)2と該カソードに対して同心円状に配置されたアノード1(鉛又は貴金属酸化物被覆チタン電極)からなる装置に、電解液3を流通させつつ両極間に電流を流して、該カソード表面に所定の厚さに銅を析出させ、その後該カソード表面から銅をはぎ取る。この段階の箔を未処理銅箔という。 【0010】この後、銅張積層板に必要とされる性能を付与するため、図2に示すような表面処理装置に未処理銅箔4を通し、電気化学的あるいは化学的な表面処理を連続的に行う。この処理のうち、絶縁樹脂基板と接着させるときの密着性を高めるために、粒状の銅を析出させる工程がある。これを粗化処理と呼んでいる。これらの表面処理した後の銅箔を表面処理銅箔8と呼び、銅張積層板に使用される。 ○摘記1-3 【0016】 【課題を解決するための手段】本発明は、電解銅箔であって、未処理銅箔の析出面の表面粗度R_(Z) が該未処理銅箔の光沢面の表面粗度R_(Z) と同じか、それより小さい箔の析出面上に粗化処理を施したことを特徴とする。ここで、表面粗度R_(Z) とは、JIS B 0601^(-1994) 「表面粗さの定義と表示」の5.1十点平均粗さ(R_(Z) )の定義に規定されたR_(Z) をいう。前記の未処理銅箔は、メルカプト基を持つ化合物並びにそれ以外の少なくとも1種以上の有機化合物及び塩化物イオンを添加した電解液を用いた電解にて得ることができる。 ○摘記1-4 【0024】 【発明の実施の形態】以下に本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0025】実施例1?5 (1)製箔 表1に示す組成の電解液(添加剤を添加する前の硫酸銅-硫酸溶液)を、活性炭フィルターに通して清浄処理した。ついで、この電解液に3-メルカプト1-プロパンスルホン酸ナトリウムと、高分子多糖類としてヒドロキシエチルセルロース及び低分子量膠(分子量3,000)と、塩化物イオンを表1に示す濃度となるように、それぞれ添加して製箔用電解液を調製した。尚、塩化物イオン濃度を全て30ppmに調整したが、本発明はこの濃度に限定されるものではない。このようにして調製した電解液を用い、アノードには貴金属酸化物被覆チタン電極、陰極にはチタン製回転ドラムを用いて表1に示す電解条件の下に、18μm厚みの 未処理銅箔を電解製箔によって製造した。 【0026】(2)粗面粗さ及び機械的特性の評価 (1)で得られた各実施例の未処理銅箔の表面粗さR_(Z) 、R_(a) を表面粗さ計(小坂研究所製SE-3C型)を用いて測定した(ここで、表面粗さR_(Z) 、Ra とは、JIS B 0601^(-1994) 「表面粗さの定義と表示」に規定されたR_(Z) 、R_(a) である。尚、基準長さ:lは、粗面測定時2.5mm、光沢面測定時0.8mmである)。そして幅方向の常温での、及び180℃の温度における5分間保持後での伸び率並びに各々の温度での引張り強さを引張り試験機(インストロン社製1122型)を用いて、それぞれ測定した。結果を、表2に示す。 ・・・(中略)・・・ 【0029】 【表2】 ![]() 甲第2号証 ○摘記2-1 【0006】これに対して活物質とバインダー粉末とを有機溶剤に分散したスラリーを集電体である帯状金属箔に塗布し乾燥して得られる帯状電極を、帯状セパレータとともにロール状(渦巻状)に巻回することによって得られる巻回電極体によれば、限られた空間内に大きな面積の電極を収容できるから、軽量でかつ高容量の非水電解質二次電池を得ることができる。なお、集電体として用いられる金属箔は、通常、圧延されたままの状態で用いられる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】ところが、上述のような巻回電極体の作製工程などの電池組立工程において、集電体である金属箔から活物質などから成る電極構成物質が脱落することがあり、電池製造の生産性に悪影響を及ぼしていた。 【0008】また、電池の使用中における充放電の繰返しに伴って活物質(または活物質担持体)が膨張及び収縮して集電体と電極構成物質層との間の密着性が低下することによって、容量の劣化、サイクル特性の低下といったような電池性能の低下が生じてしまうという欠点があった。 【0009】本発明の目的は、電極において集電体と電極構成物質層との間の密着性をよくして電池性能を改善した電池を提供することである。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するためには電極の集電体の表面が粗面化されていることが有効であるという本発明者による知見に基づいて成されたものであって、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されている電極を具備する電池において、上記電極構成物質層が形成される上記集電体の表面粗さは、中心線平均粗さで0.15μm以上、好ましくは0.17μm以上でかつ3.0μm以下、好ましくは0.60μm以下であることを特徴とする。 ○摘記2-2 【実施例】以下、本発明による実施例を図面を参照しながら説明する。 【0020】実験例(表面の粗面化処理) 最初に、集電体として用いるTi(チタン)箔の表面を粗面化した実験例を説明する。 【0021】厚さ10μmのチタン箔を30重量%のH_(2 )SO_(4)(硫酸)水溶液中に浸し、この硫酸水溶液を45℃に保持した。一定時間経過後に上述の硫酸水溶液からチタン箔を取り出して充分に水洗した後に、チタン箔の表面粗さ(Ra及びRmax)を測定した。 【0022】また、チタン箔を硫酸水溶液に浸す粗面化処理時間を変えてチタン箔の表面粗さをそれぞれ測定した。これらの測定結果を、硫酸水溶液による粗面化のための酸処理時間と表面粗さ(Ra及びRmax)との関係として図3に示す。図3に示すように、硫酸水溶液における処理時間と共に中心線平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rmax)は共に大きくなる。 【0023】次に、中心線平均粗さ(Ra)と最大高さ(Rmax)との関係を、厚さ100μmのチタン箔を同様に粗面化することによって調べた。図4にこの結果を、上述のチタン箔が10μmの場合と併せて示す。図から、0≦Ra≦4.5μmの範囲で、 Rmax=8.3Ra (2) の関係が得られた。 【0024】なお、上記表面粗さの測定は、株式会社小坂研究所の表面粗さ・輪郭形状測定機SEF-30D型を用いて下記の測定条件で行った。 縦倍率 : 5000倍 横倍率 : 100倍 基準長さ : 2.50mm カットオフ値: 0.8mm 送り速さ : 0.05mm/s 【0025】実施例1 実施例1では、上記実験例で得たチタン箔を集電体として図1に示すような負極1を作製し、この負極1を用いて図2に示すような非水電解質二次電池を作製した。まず、負極1を次のように得た。上記実験例で厚さ10μmのチタン箔から得たRaが0.15μmの粗面化表面9a、9bを有するチタン箔を図1に示すように負極集電体9とした。 【0026】負極活物質担持体としての炭素材料であるピッチコークス90重量部に結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)10重量部を混合し、負極合剤(負極構成物質)とした。この負極合剤を溶剤のN-メチルピロリドンに分散させてスラリー(ペースト状)にした。 【0027】この負極合剤スラリーを、上述のRaが0.15μmのチタン箔から成る負極集電体9の両面9a、9bに均一に塗布し、乾燥させた。しかる後に、圧縮成型し切断することによって、図1に示すように負極集電体9の両面9a、9bに負極構成物質層1aをそれぞれ備えた帯状負極1を得た。なお、この負極1の厚さは約170μmであった。 【0028】次に、正極2を次のようにして得た。正極活物質としてのLi Co O_(2 )91重量部に導電剤としてのグラファイト6重量、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン3重量部をそれぞれ混合し、正極合剤(正極構成物質)とした。この正極合剤をN-メチルピロリドンに分散させてスラリー(ペースト状)にした。正極集電体10として厚さ20μmの帯状アルミニウム箔を用い、この集電体10の両面に均一に正極合剤スラリーを塗布し、乾燥させた後、圧縮成型し切断して帯状正極2を得た。なお、この正極2の厚さは約180μmであった。 【0029】上述のような帯状負極1、帯状正極2及び厚さ25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムより成る一対の帯状セパレータ3a、3bを負極1、セパレータ3b、正極2、セパレータ3aの順に積層してから、この積層体を渦巻状に多数回巻回することによって、図2に示すような渦巻式の巻回電極体15を作製した。なお、符号33は巻芯である。 【0030】次いで、このような巻回電極体15を、図2に示すように、ニッケルメッキを施した鉄製の電池缶5内に収容した。 【0031】この際、上記巻回電極体15の上下両面には絶縁板4a及び4bを夫々配設し、負極集電体9から導出したニッケル製の負極リード11を電池缶5の底部に溶接するとともに、正極集電体10から導出したアルミニウム製の正極リード12を金属製の安全弁34の突起部34aに溶接した。 【0032】この電池缶5内に、プロプレンカーボネートと1,2-ジメトキシエタンとの等容量混合溶媒中にLi PF_(6)を1モル/リットルの割合で溶解した非水電解液を注入した。 ○摘記2-3 【0060】粗面化処理の方法は酸処理、エッチッグ、サンドブラシなどが用いられるがその方法は特に限定されるものではない。なお、本実施例では負極集電体を粗面化しているが、正極集電体を粗面化してもよく、同じ効果がある。また、集電体の材質について、本実施例ではチタンを用いたが、この他インコネル合金、銅、ニッケル、ステンレス鋼などの金属箔も使用することができる。 甲第3号証 ○摘記3-1 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、これら従来技術の課題を解決し、層間の信頼性を向上させ、また処理工程を削減し、しかも微細回路のエッチング性の向上と多層板で要望されている基材厚みの減少化による層間絶縁の低下を防止し、さらには銅箔両面の密着性の向上を同時に図れるプリント回路内層用銅箔およびその製造方法を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、次に示す銅箔によって達成される。すなわち、本発明は、両面の表面粗さRz=1?3μmの銅箔の両面に、長さ0.6?1.0μmで最大径0.2?0.8μmの逆涙滴状の微細なこぶが設けられていることを特徴とするプリント回路内層用銅箔にある。 【0009】以下、本発明の内容を詳細に説明する。本発明に用いる銅箔としては、特殊な電解により作成した表面粗さの著しく小さな電解銅箔、あるいは通常の電解銅箔の粗面の電析の山(凸部)を化学研磨によりエッチング除去し、粗さを低減せると共に、平滑面も若干エッチングして粗さを逆に大きくしたもの、または通常の電解銅箔を圧延することにより粗さを小さくしたもの、あるいは圧延銅箔の両面を化学研磨により粗化したものが好ましく用いられる。 ○摘記3-2 【0018】この電解によりこぶ付けされた銅箔は防錆処理される。銅箔に使用される防錆は、一般的に用いられている方法が使用可能である。亜鉛、亜鉛-錫または亜鉛-ニッケル合金による防錆は、回路用銅箔として使用される場合に樹脂基材とのプレス接着、回路エッチング、メッキ等の工程を経る際の加熱酸化防止、基材との密着性向上、銅箔へのサイドからのアンダーエッチングの防止に対して非常に有効であることが知られており、特公昭58-56758号公報、特公平4-47038号公報等に記載されている。 ・・・(中略)・・・ 【0021】さらに、上記防錆処理の後、加熱拡散処理前にクロメート処理やシランカップリング剤処理を施すことができる。クロメート処理液としては酸性、アルカリ性いずれも可能であり、浸漬法、電解法いずれでも良い。シランカップリング剤としてはγ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等があり、代表的な処理条件は以下に示す通りである。 甲第4号証 ○摘記4-1 【0003】リチウムイオンをドープ・脱ドープできる炭素質材料を用いた非水系二次電池(例えば特開昭62-90863号公報等)が、負極にリチウム金属又はその合金を使用した二次電池に比して、安全性の点で格段に優れており、高エネルギー密度を得られることから注目されている。 【0004】特開昭60ー25315号公報、特開平1-241767号公報、特開平3-93164号公報に、集電体としての金属箔を用いることが提案されている。一般に、金属箔は圧延してつくられるので表面は滑らかであり、電池活物質粒子を金属箔表面とよく接着するためにバインダーの選択が重要であり、塗布あるいは塗工条件も厳しく管理する必要があった。 【0005】箔厚み10μm?30μmの金属箔に塗布あるいは塗工する速度にも制約があった。すなわち、乾燥温度を上げて塗布あるいは塗工速度を高めようとすると、塗布あるいは塗工面に亀裂がはいり、良品が得られなかった。従って、塗布あるいは塗工の生産効率に難点があった。 ○摘記4-2 【0017】本発明に用いる非水系電解質溶液には、電解質としては、例えばLiClO_(4 )、LiAsF_(6 )、LiPF_(6 )、LiBF_(4 )、CH_(3 )SO_(3 )Li、CF_(3 )SO_(3 )Li、(CF_(3 )SO_(2 ))_(2 )NLi等のリチウム塩のいずれか1種又は2種以上を混合したものが使用できる。 【0018】また、前記電解溶液の溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のいずれか1種又は2種以上を混合したものが使用できる。 ○摘記4-3 【0020】本発明の集電体としての金属箔は、その表面粗度が平均として0.1?0.9μmであり、外観は艶消しを呈する。光沢、半光沢の外観を有する前記金属箔に、エッチング処理、レーザー処理、無電解メッキ、電解メッキ、サンドブラスト等により、表面粗度として0.1?0.9μm、好ましくは0.2?0.8μm、更に好ましくは0.6?0.8μmに制御する。また、電解メッキにより直接得られる銅箔、ニッケル箔等のうち上記表面粗度範囲に入るものを用いてもよい。 【0021】表面粗度0.1μm未満では接着性の向上は殆どなく、1μm以上では塗工中に金属箔の切断を招き好ましくない。表面粗度を測定するための試験片の調製は、まず金属箔から1cm角に切り出し、これを型に入れてエポキシ樹脂を流し込み硬化させる。常温で一日間放置後に型から取り出し、切断し、金属箔を含む樹脂切断面を自転および公転する研磨機で研磨し、エアブロー後、断面の顕微鏡写真を撮る。金属箔表面の凹部の深さを拡大写真で測定し、平均の深さを表面粗度とする。 甲第5号証 ○摘記5-1 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、銅箔もしくはニッケル箔などの金属箔を負電極の集電体に用いたリチウム二次電池において、該金属箔として厚さ50μm以下であり、両面に0.1μm以上で20μm以下の凹凸を有する電解金属箔を用いることにより上記課題を解決するものである。 【0007】 【作用】電解金属箔は、電解によって陰極表面に生成した金属膜を剥離させて製造する。この方法では、陽極に対向した面は粗面となり、また陰極から剥離された面も圧延金属箔に比較すれば若干粗面となっている。このため集電体表面の粗面化処理は、あえて必要ない。したがって、コスト上昇という問題が無い。 【0008】さらに、陰極より剥離された面を電鋳やエッチングなどの表面加工によって粗面化再処理し両面を充分粗面にしてやると活物質層と集電体との密着強度が著しく向上する。このような再処理はコスト上昇の問題があるが、50μm以下の金属薄膜を製造する方法としては、電解法の方が圧延法よりも生産性が圧倒的に優れているので、表面処理をした電解箔は、従来の圧延金属箔を用いた場合よりもなおコストの面で有利である。 ○摘記5-2 【0011】 【実施例】以下に、好適な実施例を用いて本発明を説明する。 【0012】図1に本発明によるリチウム二次電池を示す。このリチウム二次電池(A)は、厚みが7.8mm、幅が40mm、長さが48mmの角型リチウム二次電池である。電池ケース1および電池ケース蓋板2は、クロム酸処理後60μmのポリプロピレンフィルムで両面をコーティングした鋼板(厚み0.22mm)を絞り加工して製作した。 ・・・(中略)・・・ 【0014】負極板は、活物質の人造黒鉛(平均粒径25μm、90重量部)と結着剤のポリフッ化ビニリデン粉末(10重量部)とをNーメチルピロリドン中で混合してペースト化し、表面の凹凸が製造工程において陽極と対抗していた面で平均4ミクロン、陰極より引き剥された面で0.2μmの厚さ20μmの電解銅箔(負極集電体)上に片面厚さ60μmに両面塗布して得た。これら帯状の電極と微多孔膜セパレータ(厚さ25μm)とを楕円状に巻回して電極群3を形成した。 【0015】前記電極群の電極端子を電池端子と接続した。そして、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとを2:1:2の体積比で混合した溶媒に六フッ化燐酸リチウムを1モル/リットル溶解させた電解液を注入後、二重巻締め方式により封口した。この電池は、平均放電電圧が3.7Vで放電容量が1000mAhである。本電池は、負極板の方が正極板よりも1サイクル目の充放電効率が低いので、以後のサイクルにおいては負極制限電池となる。したがって、電池特性、例えば後で示すような高率放電特性は、負極性能によって規定される。 【0016】つぎに電解銅箔をさらに電解槽中に誘導して両面に銅を電析させていっそう粗面化した。このようにして得られた銅箔(20μm)は、両面に最大高さ6μm、平均高さ0.5μmの凸部を有する。そして、この銅箔を負極集電体に用いた以外は電池(A)と同様のリチウム二次電池を実施例の電池(B)を製作した。 甲第7号証 ○摘記7-1 【0040】(2)金属箔表面に金属箔を構成する材料とは異なる組成の物質を種々の形状で形成することで粗面化を行なう場合の粗面化手段としては、代表的なものに、化学薬品によるアルカリ酸化処理を挙げることができる。アルカリ酸化処理を用いて、たとえば銅を主成分とする金属箔の表面を粗面化したい場合には、アルカリ性処理溶液を加温し、その処理溶液中に金属箔を浸漬することで、その表面に金属材料とは組成の異なる酸化物からなる被膜が形成される。この酸化物からなる被膜の形成によって、金属箔の表面の凹凸の程度を大きくすることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0047】水性処理薬品のpH値、処理温度、処理時間が大きいほど金属箔表面での酸化物被覆の成長速度が高められるが、処理溶液のpH値、処理温度、処理時間の数値のいずれかが、上述した設定範囲を大きく上回ると、銅箔表面が分厚い酸化物被覆で覆われるため、金属箔表面の電気的絶縁性が高くなり、金属箔に本来要求されるべき集電機能が著しく低下してしまうことになる。また、処理溶液のpH値、処理温度、処理時間の数値のいずれかが上述した設定範囲より著しく下回っても、金属箔表面で酸化物被覆が成長する部分と成長しない部分が混在して得られるため、これを電極構成部材として用いた場合には局部的に電気抵抗の低い部分と電気抵抗の高い部分が生じ、電極の局部劣化を招く原因となってしまうことになる。したがってアルカリ酸化処理では、処理溶液のpH値、処理温度、処理時間を適切に設定した処理条件下で酸化処理を行なうことで、集電機能を喪失してしまうほどに厚くなくまた表面を全面的に覆えないほど薄くない酸化物被膜を再現性よく形成することができる。 ○摘記7-2 【0066】図1に示すように、表面が粗面化された銅箔1が圧着された炭素繊維2と、ステンレス製のラス板上にアルミニウムを20重量%含有させたリチウムアルミニウム合金電極4と、電解液を含む隔膜5とを積層し、銅箔1およびリチウムアルミニウム合金電極4の各々の片面に接するようにして2枚の絶縁処理を施したSUS板3でこれらを挟み込み、テフロン製テープで固定させた。 【0067】隔膜にはポリプロピレンおよびポリエチレンを含む不織布を、電解液には1mol/l LiBF_(4 )を含むプロピレンカーボネート溶液(三菱油化製 電池グレード)を使用するものとした。 ○摘記7-3 【0080】実施例3 炭素原料として平織状ピッチ系炭素繊維XN-40(日本石油製 商品名 グラノッククロス 300g/m^(2 ))を用いた。これに実施例1と同様の前処理を施し、電極材料とした。 【0081】金属箔には、実施例2と同様、福田金属箔粉社製の電解銅箔CF-T9-LP-18を用いた。この電解銅箔を5cm×5cmの大きさに切り、エタノール中で煮沸して、表面の汚れを除去した後、この電解銅箔に実施例1で行なったのと同様のアルカリ酸化処理を施した。酸化処理後、この電解銅箔の粒状銅が担持されている側の面をX線光電子分光法にて分析したところ、酸化銅(CuO、Cu_(2 )O)被覆の生成が認められた。この電解銅箔の粒状銅が担持されている側の面を炭素繊維に圧着した。 【0082】この表面処理を施した電解銅箔の粒状銅が担持されている表面粗さは、日本工業規格(JIS)に基づくと最大高さRmax7?9μm、中心線平均粗さRa0.5?0.9μmであった。 【0083】上記のようにして酸化処理が施された電解銅箔が圧着された炭素繊維を用いて、図1に示すような構造の単セルの炭素繊維電池を作製した。 【0084】得られたリチウム電池を用いて通電量1.13mAで充放電を行ない、第2サイクルから第100サイクルまでの平均電流効率を測定した。 甲第8号証 ○摘記8-1 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係る非水電解質二次電池(以下、「本発明電池」と称する。)は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な炭素層が金属箔の両面に塗布形成されてなる負極を、正極とともに、セパレータを介在させた状態で巻回して成る渦巻電極体を備える非水電解質二次電池において、前記銅箔の巻回状態における内面に多数の微小な凹凸が形成されてなる。 【0008】巻回状態における内面に多数の微小な凹凸が形成された金属箔としては、例えば電解銅箔が挙げられる。電解銅箔の片面(電析した側)には必然的に多数の微小な凹凸が形成されるので、電解銅箔を用いる場合は、この凹凸が存在する面を内面にして巻回すれば、これをそのまま本発明電池における負極集電体として用いることができる。その他、両面が平滑な圧延銅箔、鋼(SUS)箔、ニッケル箔などの片面に化学エッチング又は物理エッチングを施して凹凸を設けたものを用いてもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0010】本発明における金属箔として銅箔を用いる場合、その両面にニッケルめっきを施したものを用いることが好ましい。ニッケルは銅に比し電気化学的に安定な金属であるので、芯体たる銅の保護層としてニッケルめっき層を形成することにより銅の電解液中への溶出を抑制することができ、銅の溶出に起因する充放電サイクル特性の低下を抑制することができる。ニッケルめっき層の厚みは、0.5?1.5μm程度で通常充分であるが、内面に設けられた凹凸がニッケルめっき層の形成により打ち消されない程度の厚みでなければならい。 甲第15号証 ○摘記15-1 【0007】負極集電体として使用される銅箔には大きく分けて2種類がある。一つは鋳造により製造した銅の鋳塊に圧延加工を施して箔状とした圧延銅箔である。もう一つは硫酸銅を主成分とする溶液を電解して、チタンあるいはステンレス製の回転する陰極上に銅を析出させ、これを連続的に引き剥がして製造する電解銅箔である。 ○摘記15-2 【0014】また、二次電池用電極においては炭素粉と集電体用銅箔との接着性が要求される。その場合、炭素粉の粒度や加工方法によっては銅箔の表面粗度が小さいことが要求される場合がある。そのためには、電解条件を精密にコントロールして電解銅箔を作るか、あるいは通常に製造された電解銅箔をラッピングされたロールを用いて圧延する等の方法が採られる。 【0015】更に、前記の銅箔の少なくとも一方の面に表面処理、例えば、防錆処理(ベンゾトリアゾール系防錆処理、クロメート処理等)及び/又はシランカップリング処理を施すことが好ましい。表面処理が施されていない場合、製造後日数の経過にしたがって銅箔の表面に酸化銅が生成し(いわゆる錆の発生)、その量が多くなると該表面にコーティングされた炭素粉が該酸化銅層部で剥離することになり、結果として電池の放電容量の低下を招くからである。尚、シランカップリング剤は銅箔の表面を覆うという点において防錆処理と同様の効果を発揮するだけでなく集電体用銅箔と炭素粉との密着力を向上させる効果もある。 ○摘記15-3 【0038】〔3〕電極のサイクル寿命 セパレーターとして多孔性ポリプロピレンフィルムを使用し、負極、セパレーター、正極、セパレーターの順に重ねて渦巻型に巻き回して電池缶に入れ、非水電解液を注入してリチウムイオン二次電池を作製し、充放電サイクル試験を行った。その結果を表3に示す。 甲第33号証 ○摘記33-1(764頁第1?15行) 11-4-2.銅及び銅合金類の化成処理 (1)緒論 銅は通常純銅として用いられるが,目的に応じて,多数の合金が作られており,その工業上の重要性においては決して他金属に劣るものではない。銅を空中に放置すれば,容易に酸化銅などのきわめて薄い皮膜を生じ,銅の固有の色を失って,いわゆる銅色を呈する。このままで長く安定に保たれ,きわめて耐食性に富む金属であるが,湿った空気中や,長く雨露にさらすと,塩基性炭酸銅の緑色のいわゆる「ロクショウ」を生ずる。また銅及びその合金は塗装の目的には,あまり好適ではなく,密着性の点でははなはだ好ましくない結果を与えることが多い。すなわち,銅及び銅合金に対する化成処理は耐食性を強化し,塗装など,次の表面仕上げに適せしめるよう必然的に行なわなければならないことになる。 (2)各種化成処理 銅は安定な金属であるため,化成処理の困難な金属でもある。したがって,いまだ十分に満足を与える有効にして適切な処理方法はないともいえ,今後の開発にまつ部分が少なくない。しかし,最近の化成処理は,多くの場合に目的を満たすに十分なものがあり,これを大別すれば,クロメート系皮膜を作るもの,酸化銅の皮膜を作るものの2種に分けられよう。 甲第37号証 ○摘記37-1(第2頁右下欄第9行?第3頁左上欄第5行) 本発明により、セルのインピーダンス及び再充電性と高電流放出(電力)との繰返しが著しく改良された固体状態のアルカリ金属陽極の一次或いは二次セルが供給される。特にそのセルは陰極と陰極集電装置との間のしっかり付着した接触の保持性にその特徴がある。 ある具体例に関して、発明は アルカリ金属陽極層、 固体導イオン性電解質層、 陰極組成物層、及び 集電装室 とを含み、そこでの前記電解質層は前記アルカリ金属陽極層と前記陰極層との間にあり、さらにその陰極層は前記電解質層と前記集電装置との間に位置し、そしてその電解質層と接触している集電装置が陰極層をその集電装置にしっかりと付着できる様に微細なでこぼこがある。 ○摘記37-2(第4頁右下欄第1?8行) 望みとあらば、その微細なでこぼこのある表面は、処理により、その化学的特性を変化させることもできる。一例として、電着金属箔は適当な処理、例えば水に安定な酸化物をその上に被覆する処理、特に電着銅箔の亜鉛-ニッケル或いはニッケル処理を行う事により、それを不動に、すなわち、その化学性活性をなくしたり、或いは減じたりすることができる。 甲第43号証 ○摘記43-1 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は印刷回路用等に用いられる銅箔の表面処理方法に関し、さらに詳しくはランタン、セリウム等の希土類元素、チタン、アルミニウム、ストロンチウムから選択される少なくとも1種の陽イオンを含有するクロメート溶液で銅箔を処理することによって、電流密度により銅箔へのクロム付着量を制御し、銅箔と基材樹脂との加熱接着時に、基材樹脂の相違に基づく物性の変化に対応して耐酸化性、耐食性を高い水準でバランスよく維持することを可能とした銅箔の表面処理方法に関する。 【0002】 【従来の技術】印刷回路はテレビ、電算機、電話交換器等の電気機器の回路として広範に用いられている。この印刷回路としては、銅箔を用いた銅張積層板が一般的に使用されている。 【0003】この銅張積層板は、電解または圧延によって製造された銅箔の片面を粗面化処理し、粗面側を基材樹脂と積層することにより得られる。そして、この銅張積層板は、回路パターン以外の銅箔をエッチングにより溶解除去することにより印刷回路とされる。 【0004】この粗面化処理された銅箔に、耐熱性や耐食性等を付与すべくクロメート処理する方法が提案され、また実施されている。例えば特開昭56-87695号公報、特開昭56-11839号公報、特開昭60-58698号公報には、それぞれ銅箔へのクロメート処理法の一例が示されている。また、特公昭61-45720号公報においては銅箔光沢面へのクロメート処理法が示されている。 5.無効理由Iについて 5-1.甲1発明の認定 甲第1号証には、ファインパターン化が可能な電解銅箔の製造過程において、電解製箔により製造された未処理銅箔が、従来に比べ両面がフラットなため、二次電池用電極にも使用可能であること(摘記1-1,1-2参照)や、当該未処理銅箔の実施例2として、粗面粗さと光沢面粗さを共に、十点平均粗さ(R_(z))で2.1μmとしたもの(摘記1-3,1-4参照)が記載されている。 すなわち、甲第1号証には、 「二次電池用電極に使用可能な、電解製箔により製造された未処理銅箔であって、粗面粗さと光沢面粗さが、十点平均粗さ(R_(z))で2.1μmの未処理銅箔。」 の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 5-2.対比・判断 本件発明2と甲1発明を比較すると、後者の「電解製箔により製造された未処理銅箔」「粗面」がそれぞれ前者の「電解析出して形成された電解銅箔」「マット面」に相当するから、本件発明2のうち、 「銅を電解析出して形成された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下である」 点は甲1発明と一致し、次の点で両者は相違する。 相違点:本件発明2が「非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、クロメート処理が施された」銅箔であるのに対し、甲1発明は「二次電池用電極に使用可能な未処理」銅箔である点。 そこでこの相違点について検討するに、甲第1号証には、「未処理銅箔」が、電解製箔装置の回転するドラム状のカソード表面からはぎ取られた段階の箔である(摘記1-2参照)と記載されているから、これをクロメート処理が施されたものと解する余地はない。 ここで、請求人は、甲第1号証に係る特許出願前に、二次電池用電極に使用する電解銅箔が、非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体に使用する電解銅箔を意味し、かつ電解銅箔に防錆処理としてクロメート処理することが周知であるとして甲第6?21号証や甲第33?46号証を提出し、さらに、電解銅箔に防錆処理をすることは甲第1号証段落0009(摘記1-2参照)にも記載されているから、上記相違点に係る本件発明2の発明特定事項は、甲1発明に周知技術を付加したにすぎず、実質的な差異でないと主張している。 そこでこれらの書証について検討するに、甲第15号証に、非水電解液二次電池用負極集電体に、防錆処理としてクロメート処理した電解銅箔を使用すること(摘記15-1?15-3参照)が記載されているが、この甲第15号証は、甲第1号証に係る特許出願前の公知文献ではない。 一方、甲第1号証に係る特許出願前の公知文献である書証には、甲第7号証に、非水電解液二次電池の負極に、粗面化手段としてアルカリ酸化処理した電解銅箔を使用すること(摘記7-1?7-3参照)、甲第8号証に、非水電解液二次電池の負極を構成する集電体に、銅の溶出防止処理としてニッケルめっきした電解銅箔を使用すること(摘記8-1参照)、甲第37号証に、固体電解質二次セルの陰極集電装置に、不動態化処理として亜鉛-ニッケル或いはニッケル処理した電着銅箔を使用すること(摘記37-1,37-2参照)、甲第33号証に、銅の耐食性を強化するため、クロメート系皮膜や酸化銅皮膜を化成処理により作ること(摘記33-1参照)、甲第43号証に、銅張積層板の印刷回路に、耐熱性や耐食性等を付与すべくクロメート処理した電解銅箔を使用すること(摘記43-1参照)などが記載されているが、集電体について記載された文献にはクロメート処理について記載がなく、クロメート処理が記載された文献には集電体について記載がない。 むしろ、甲第7号証には、銅箔表面の酸化物被覆が本来要求されるべき集電機能を低下させること(摘記7-1参照)、甲第33号証には、銅の自然酸化膜にも十分な耐食性があること(摘記33-1参照)が記載されている。 そして、甲第1号証に記載された防錆処理も、粗化処理と一体の表面処理であって(摘記1-3参照)、甲第43号証の記載と同様、電解銅箔を銅張積層板に使用するため処理と解される。 してみると、上記主張は採用できない。 すなわち、非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体に、クロメート処理が施された銅箔を使用することは周知技術とはいえず、他に、上記相違点を実質的な差異でないとする根拠もない。 したがって、無効理由Iは失当である。 6.無効理由IIについて 6-1.甲2発明の認定 甲第2号証には、非水電解質二次電池の平面状集電体である圧延金属箔と電極構成物質との密着性をよくするため、集電体の表面を粗面化すること(摘記2-1参照)や、当該集電体の具体例として、その両面を中心線平均粗さ(Ra)で0.15μmに粗面化した圧延チタン箔を非水電解液を注入した電池の負極集電体とすること(摘記2-2参照)が記載されている。 すなわち、甲第2号証には、 「非水電解液二次電池の平面状集電体であって、その両面を中心線平均粗さ(Ra)で0.15μmに粗面化した圧延チタン箔を用いた負極集電体」 の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 6-2.対比・判断 本件発明2と甲2発明を比較すると、本件発明2のうち、 「非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、当該平面状集電体は箔からなる平面状集電体」 の点は甲2発明と一致し、次の点で両者は相違する。 相違点1:本件発明2が「銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔」である のに対し、甲2発明は「粗面化した圧延チタン箔」である点。 相違点2:本件発明2が「マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下である」のに対し、甲2発明は「その両面を中心線平均粗さ(Ra)で0.15μmに」したものである点。 そこで、これらの相違点について検討するに、まず、相違点2について、甲第2号証には、同1条件で粗面化したチタン箔において、中心線平均粗さと最大高さの間に「Rmax=8.3Ra」なる関係が成立すること(摘記2-2参照)が記載され、一方、その定義から、「10点平均粗さ(Rz)<最大高さ(Rmax)」である。 してみると、甲2発明のチタン箔の表面粗さは、その両面において10点平均粗さに換算して3.0μmより小さく、両面の表面粗さの差が10点平均粗さに換算して1.3μm以下であると認められるから、相違点2の表面粗さの数値限定は実質的な差異ではない。 次に、相違点1について、甲第2号証には、集電体の材質について、チタンだけでなく銅を使用すること(摘記2-3参照)が記載されているが、これは圧延金属箔を前提にしたもの(摘記2-1参照)であるから、電解銅箔の示唆ではない。また、クロメート処理について記載も示唆もない。一方、甲第3号証には、特殊な電解により作成した両面の表面粗さRz=1?3μmの銅箔について、その両面にこぶ付けしてプリント回路内層用銅箔とすること(摘記3-1参照)や、こぶ付け後に防錆亜鉛処理とクロメート処理をすること(摘記3-2参照)が記載されているが、当該電解銅箔を直接クロメート処理することや、集電体に使用することについて記載も示唆もない。 してみると、甲第2,3号証の記載から、甲2発明において、相違点1を解消することは容易でない。 したがって、無効理由IIは失当である。 6-3.請求人の主張について 請求人は上記相違点1について、クロメート処理することは、無効理由Iと同様、周知であると主張し、電解銅箔とすることは、そもそも本件発明2は物の発明であるから、その表面粗さが電解処理によるのか、化学処理や圧延処理によるのかという製法上の差異は、同一性や進歩性の判断に関係せず、仮にそうでないとしても、甲第3号証に、特定表面粗さにすることで基材との密着力を向上させる(摘記3-1参照)という甲2発明と共通する課題が記載されているから、甲第3号証の記載から容易になし得たことであると主張している。 そこで検討するに、「5-2」で述べたように、クロメート処理が施された電解銅箔を非水電解液二次電池の負極集電体に使用することは、甲第15号証に記載されているが、この甲第15号証は、本件特許の出願時においても公知文献ではない。一方、本件特許の出願前の公知文献である書証には、いずれも、非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体に、クロメート処理した銅箔を使用することについて記載や示唆がない。 また、金属箔の表面粗さが同一であっても、電解処理(電解製箔-電解光沢メッキ)による場合と、圧延処理-化学処理による場合では、金属組織が異なるのは技術常識であるから、この製法上の差異は、物の発明の構成上の差異になる。さらに、本件発明2では、プレス工程で活物質に沿った変形をさせるために表面粗さを数値限定している(本件訂正明細書段落0013?0016参照)ところ、圧延箔と電解箔では加工硬化の有無により硬度が異なるから、その変形の程度が異なり、作用効果上の差異もあると推認される。 最後に、甲第3号証に記載の「基材」が回路用の樹脂基材である(摘記3-2参照)のに対し、甲2発明の課題で基材に相当するのは活物質が分散したスラリー(摘記2-1参照)であって材質も性状も異なるから、二つの課題に共通性はない。 してみると、上記主張はいずれも採用できない。 7.無効理由IIIについて 7-1.甲4発明の認定 甲第4号証には、非水系電解質溶液を用いる非水系二次電池の負極集電体に圧延金属箔が用いられること(摘記4-1,4-2参照)や、光沢、半光沢の外観を有する当該金属箔の表面粗度をエッチング処理等により、0.1?0.9μmに制御すること(摘記4-3参照)が記載されている。 すなわち、甲第4号証には、 「非水系電解質溶液を用いる非水系二次電池の負極集電体であって、光沢、半光沢の圧延金属箔をエッチング処理等により表面粗度として0.1?0.9μmに制御してなる負極集電体。」 の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 7-2.対比・判断 本件発明2と甲4発明を比較すると、後者の「非水系電解質溶液を用いる非水系二次電池」が前者の「非水電解液二次電池」に相当し、圧延金属箔を用いた集電体が平面状であるのは明らかだから、本件発明2のうち、 「非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、当該平面状集電体は、箔からなる平面状集電体。」 の点は甲4発明と一致し、両者は次の点で相違する。 相違点1:本件発明2が「銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔」であるのに対し、甲4発明は「圧延金属箔をエッチング処理等」したものである点。 相違点2:本件発明2が「マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下である」のに対し、甲4発明は「表面粗度として0.1?0.9μmに制御してなる」ものである点。 そこでこれらの相違点について検討するに、相違点1について、甲第4号証には、甲4発明について、圧延金属箔をエッチング処理等したもののほか、電解メッキにより直接得られる銅箔を用いてもよいこと(摘記4-3参照)が記載されており、これは電解銅箔を用いることを示唆するものと認められるが、「6-3」で述べたように、集電体用の電解銅箔にクロメート処理することは周知でも公知でもない。 次に、相違点2について、甲第4号証には、金属箔表面の凹部の平均の深さを「表面粗度」とすること(摘記4-3参照)が記載されているが、この「表面粗度」と本件発明2の「10点平均粗さ」は測定方法が異なり両者の関係性が明らかでない。 ここで、請求人は、この「表面粗度」について、その大きさから中心線平均粗さ(Ra)と解され、直ちに10点平均粗さ(Rz)に換算できないとしても、甲4発明はその表面粗さにおいて本件発明2と重複しているから、本件発明2の数値限定は、例えば、電解銅箔の密着性の向上という甲4発明と共通する課題を有する甲第3号証記載の電解銅箔の表面粗さの数値限定を参酌するなどして、当業者が容易になし得た数値範囲の最適化であると主張している。 しかしながら、全証拠に基づいても、甲4発明における「表面粗度」が中心線平均粗さ(Ra)であると確認することができない。また、甲4発明の数値限定が、活物質の塗布工程において、滑らかな圧延箔の接着性向上を目的としたものである(摘記4-1,4-3参照)のに対し、甲第3号証記載の数値限定は、回路用樹脂基板との積層工程において、電解銅箔の接着性向上を目的としたものである(摘記3-1参照)から、目的の異なる両者を組み合わせる動機づけがない。さらに、「6-3」で述べたように、本件発明2の数値限定は、活物質の塗布工程ではなく、その後のプレス工程において、電解銅箔の変形性向上を目的としたものであって、そもそも甲4発明とはその目的が異なるから、本件発明2の数値限定は、甲4発明の数値限定を最適化することで容易になし得たものではない。 してみると、甲4発明において、相違点1,2を解消することは容易でない。 したがって、無効理由IIIは失当である。 8.無効理由IVについて 8-1.甲5発明の認定 甲第5号証には、金属箔を負電極集電体に用いたリチウム二次電池において、該金属箔として電解金属箔を用いること(摘記5-1参照)や、その実施例として、エチレンカーボネート等を混合した溶媒に六フッ化燐酸リチウムを溶解させた電解液を用いることや、表面の凹凸が陽極対抗面で平均4μm、陰極面で0.2μmの電解銅箔を電析によりさらに粗面化した、両面に最大高さ6μm、平均高さ0.5μmの凸部を有する銅箔を帯状の負極集電体に用いること(摘記5-2参照)が記載されている。 すなわち、甲第5号証には、 「エチレンカーボネート等を溶媒とする電解液を用いたリチウム二次電池の負極集電体であって、表面の凹凸が陽極対抗面で平均4μm、陰極面で0.2μmの電解銅箔を電析によりさらに粗面化した、両面に最大高さ6μm、平均高さ0.5μmの凸部を有する銅箔からなる帯状の負極集電体。」 の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 8-2.対比・判断 本件発明2と甲5発明を比較すると、後者の「エチレンカーボネート等を溶媒とする電解液を用いたリチウム二次電池」「陽極対抗面」「陰極面」「電解銅箔を電析により」「帯状」が、それぞれ前者の「非水電解液二次電池」「マット面」「光沢面」「電解析出して形成」「平面状」に相当し、また、後者の表面粗さは、粗面化後、両面において同等なものと解されるから、本件発明2のうち、 「非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、 当該平面状集電体は、銅を電解析出して形成された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下である平面状集電体。」 の点は甲5発明と一致し、両者は次の点で相違する。 相違点1:本件発明2は「クロメート処理が施された」ものである点。 相違点2:本件発明2は「マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さ」いのに対し、甲5発明が「両面に最大高さ6μm、平均高さ0.5μmの凸部を有する」点。 そこでこれらの相違点について検討するに、相違点1について、甲第5号証には、電池ケースとなる鋼板にクロム酸処理すること(摘記5-2参照)が記載されているが、「6-3」で述べたように、負極集電体となる電解銅箔にクロメート処理することは周知でも公知でもない。 次に、相違点2について、甲第5号証には、「最大高さ」「平均高さ」の意味するところについて記載がなく、これらの高さと「10点平均粗さ」の関係が明らかでない。 ここで、請求人は、本件発明2の数値限定は、例えば、電解銅箔の密着性の向上という甲5発明と共通する課題を有する甲第3号証記載の電解銅箔の表面粗さの数値限定を参酌するなどして、当業者が容易になし得た数値範囲の最適化であると主張している。 しかしながら、甲5発明の数値限定が、活物質の密着性向上を目的とした粗面化である(摘記5-1参照)のに対し、甲第3号証記載の数値限定は、回路用樹脂基板の接着性向上を目的とした平滑化であり(摘記3-1参照)、目的の異なる両者を組み合わせる動機づけがない。さらに、「6-3」で述べたように、本件発明2の数値限定は、集電体の変形性向上を目的とした平滑化であって、そもそも甲5発明とはその目的が異なるから、本件発明2の数値限定は、甲5発明の数値限定を最適化することで容易になし得たものではない。 してみると、甲5発明において、相違点1,2を解消することは容易でない。 したがって、無効理由IVは失当である。 9.無効理由Vについて 9-1.発明の詳細な説明 本件訂正明細書には、次の記載がある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、市販の電解銅箔を負極集電体に使用したリチウムイオン二次電池においては、電池特性、特に充放電でのサイクル特性が悪く、使用することができなかった。 【0007】 そこで、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、上述した問題は、電解金属箔の一方の主面に大きな凹凸が形成されて、電解金属箔の両主面の表面粗さの差が大きすぎるために生じていることがわかった。 【0010】 【課題を解決するための手段】 ・・・(中略)・・・ 【0013】 一般に、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極は、活物質とバインダーとを含有する電極構成物質層が集電体の表面に塗布され、その後ロール圧延等でプレスされて作製される。このプレス工程は、電極を所定の密度に圧縮する作用と、適切な導電性を有するように活物質粒子間を接近させる作用とを有する。プレス工程を経た電極は、活物質粒子間、及び活物質と集電体との接触性が良くなり、電気伝導度が大きくなる。 【0014】 さらに、十分な電池特性を得るには、活物質粒子間、及び活物質と集電体の距離を小さくすると共に、集電体の形状が活物質表面の形状に沿って変形することが重要である。活物質表面に沿って集電体が変形した場合には、活物質と集電体との接触性がさらに良くなり、電気伝導度がさらに大きくなり、望ましい電池特性が得られる。 【0015】 しかし、活物質表面に沿って集電体が変形しない場合には、活物質と集電体の接触部分が少なくなり、電気伝導度が小さい。また、集電体表面の凹凸が大きい場合には、活物質と集電体の接触点も少ない。このような接触抵抗が大きい電極は、充放電を繰り返すと、活物質の充放電に伴う膨張収縮によるストレスや、接着剤であるバインダーの電解液への溶解などによって、集電体と活物質との距離が段々と大きくなり、一部の活物質が充放電に利用できない電気伝導度になって容量の劣化が起きる。 【0016】 したがって、この電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより大きい場合、或いはこのマット面と光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μmより大きい場合には、活物質が負極集電体に塗布されてプレスされる際に、集電体が活物質の表面に沿った変形が十分起こらず、また、表面の凹凸が大きいために活物質との接触点が少なく、充放電に伴って容量の劣化が起きて十分な電池特性が得られない。 【0029】 【実施例】 以下、本発明を適用した非水電解液二次電池について、好適な実施例を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。 【0050】 そして、実施例1?実施例3及び比較例1で得られた電解銅箔において、その表面粗さ(10点平均粗さR_(Z))を表面粗さ計(株式会社小坂研究所製SE-3C型)で調べた。この結果を表1に示す。なお、光沢面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを0.8mmとし、マット面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを2.5mmとした。 【0051】 【表1】 ![]() 【0052】 また、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル後の容量維持率を調べた。その結果を図3、図4及び表2に示す。 【0053】 さらに、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル前後のインピーダンスの変化を調べた。その結果を図5、図6及び表2に示す。 【0054】 【表2】 ![]() 【0055】 図3、図5及び表2に示すように、マット面の表面粗さが3μm以上になると容量維持率が大幅に低下し、インピーダンスの変化が大きくなるため、マット面の表面粗さは、3μm未満が好ましい。また、図4及び図6に示すように、マット面と光沢面との表面粗さの差が大きくなるほど容量維持率が低くなり、インピーダンスが大きくなっている。このことから、マット面と光沢面との表面粗さの差は、2.5μm未満であることが好ましい。 ※審決注: 段落0055の下線部は、「1.3μm以下」の誤記と認められる。 9-2.サポート要件の判断 本件訂正明細書に記載された発明の詳細な説明には、本件発明1?4(以下、まとめて「本件発明」という。)が解決しようとする課題が、市販の電解銅箔を負極集電体に使用した場合の充放電サイクル特性の悪化にあり(段落0006)、当該課題が生じている原因が、市販の電解金属箔では、一方の主面に大きな凹凸が形成されて両主面の表面粗さの差が大きすぎるため、活物質の塗布後のプレス工程で、集電体が活物質に沿った変形をしないことにあることを見出し(段落0007、0013?0015)、その変形が容易になるように、電解銅箔の表面粗さを数値限定したこと(段落0016)が記載されている。 さらに、当該数値限定を満足する実施例1?3と、一方の主面であるマット面に大きな凹凸が形成されて両主面の表面粗さの差が大きすぎて当該数値限定を満足しない比較例1の電解銅箔を、それぞれ負極集電体に用いた円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル後の容量維持率とインピーダンスを測定し、前者が後者より優れたものであること(段落0050?0055)が記載されている。 すなわち、発明の詳細な説明には、本件発明の課題とその課題を解決する手段、その具体例において課題が解決されたことが記載されている。 してみると、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものである。 したがって、無効理由Vは失当である。 9-3.請求人の主張について 請求人は、目標とする容量維持率の目安について、発明の詳細な説明に記載がなく、実施例3の容量維持率70%は、本件特許の出願当時の要求水準を満足しないし、充放電条件等も明らかでないから、本件発明は、その課題を解決しているとはいえないと主張している。 また、本件発明の実施例1?3と比較例1の測定結果を図示した本件特許明細書添付の図4、6について、同図面は、「マット面の表面粗さ」を固定して測定されたものでなく、光沢面の表面粗さの異なる2グループの測定結果を合わせて記載したものであって、数学的にみても図4の記載から「マット面と光沢面の表面粗さの差」と容量維持率の間に相関関係があるとはいえないと主張し、さらに図6記載の「100サイクル後のインピーダンス」ではなく「100サイクル前後のインピーダンスの変化」では、実施例3と比較例1との間に顕著な差異がないから、本件発明の「マット面と光沢面の表面粗さの差」の数値限定には臨界的意義もないと主張している。 【図4】 【図6】 ![]() そこで検討するに、本件発明の課題は、市販の電解銅箔を負極集電体に使用した場合に充放電サイクル特性が悪化すること(段落0006)であり、容量維持率の目標値が達成できないことではない。 そして、この課題が解決されていることは、市販の電解銅箔相当のものを使用する比較例1と本件発明の実施例1?3の非水電解液二次電池を、同1条件で比較した測定結果(表1?2,図3?6)により確認することができる。 次に、本件発明の発明特定事項「マット面と光沢面の表面粗さの差」は、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果(段落0007)、上記課題を解決する手段が、プレス工程における集電体の変形にあることを見出したこと(段落0016)により導出されたのであって、図4,6に記載された測定点は好適な例示にすぎない(段落0029)。 そして、図4,6からは、少なくとも「マット面と光沢面の表面粗さの差」が本件発明の数値限定の範囲内にある実施例1?3が、市販の電化銅箔(比較例1)より優れた特性をもつことが確認できる。 また、活物質に対する電解銅箔表面の変形性が、特定の表面粗さにおいて急激に変化するような性格のものとは認められないから、本件発明の数値限定は臨界的意義を必要としないものである。 したがって、上記主張はいずれも採用できない。 10.無効理由VIについて 10-1.発明の詳細な説明 本件訂正明細書には、次の記載がある。 【0030】 実施例1 本実施例で作製したリチウムイオン二次電池は、図2に示すように、正極集電体1に正極活物質2を塗布してなる正極3と、負極集電体4に負極活物質5を塗布してなる負極6とから構成される。そして、この非水電解液二次電池は、正極3、セパレータ7、負極6、セパレータ7をこの順に積層して積層電極体とし、この積層電極体を多数回巻回されてなる渦巻式電極体の上下に絶縁体8、9を配置した状態で電池缶10に収納してなるものである。【0031】 先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は、次のようにして作製した。組成1で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm^(2)、液温50℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を得た。この電解銅箔の表面粗さについては、後述する測定法により測定し、表1に示した。 【0032】 (組成1) 硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l 硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l チオ尿素 0.4ppm アラビアゴム 0.8ppm 低分子量膠(分子量5000) 0.4ppm Cl- 30ppm 次いで、この電解銅箔をCrO_(3);1g/l水溶液に5秒間浸漬して、クロメート処理を施し、水洗後乾燥させた。なお、ここでは、クロメート処理を行ったが、ベンゾトリアゾール系処理、或いはシランカップリング剤処理、又はクロメート処理後にシランカップリング剤処理を行ってもよいことは勿論である。 【0033】 そして、負極6は次のようにして作製した。負極活物質5としては、出発原料として石油ピッチを用い、これを焼成して粗粒状のピッチコークスを得た。この粗粒状ピッチコークスを粉砕して平均粒径20μmの粉末とし、この粉末を不活性ガス中、1000℃にて焼成して不純物を除去し、コークス材料粉末を得た。 【0034】 このようにして得られたコークス材料粉末を90重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10重量部の割合で混合して負極合剤を調整した。次いで、この負極合剤を溶剤であるN-メチルピロリドンに分散させてスラリーにした。そして、このスラリーを上述した厚さ12μmの帯状の電解銅箔である負極集電体4の両面に塗布し、乾燥後ローラプレス機で圧縮形成して、帯状負極6を得た。この帯状負極6は、成形後の負極合剤の膜厚が両面共に90μmで同一であり、その幅が55.6mm、長さが551.5mmに形成される。 【0035】 次に、正極3は、次にようにして作製した。正極活物質(LiCoO_(2))2は、炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルと混合し、空気中で900℃、5時間焼成してLiCoO_(2)を得た。 【0036】 このようにして得られた正極活物質(LiCoO_(2))2を91重量%、導電剤としてグラファイトを6重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを3重量%の割合で混合して正極合材を作製し、これをN-メチル-2ピロリドンに分散してスラリー状とした。次に、このスラリーを厚み20μmの帯状のアルミニウムからなる正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥後ローラープレス機で圧縮成形して厚み160μmの帯状正極3を得た。この帯状正極3は、成形後の正極合剤の膜厚が表面共に70μmであり、その幅が53.6mm、長さが523.5mmに形成される。 【0037】 このようにして作製された帯状正極3と、帯状負極6と、厚さが25μm、幅が58.1mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ7とを、上述したように積層し、これを積層電極体とした。この積層電極体は、その長さ方向に沿って負極6を内側にして渦巻型に多数回巻回され、最外周セパレータの最終端部をテープで固定されて、渦巻式電極体となる。この渦巻式電極体の中空部分は、その内径が、3.5mm、外形が17mmに形成される。 【0038】 上述のように作製された渦巻式電極体を、その上下両面に絶縁板8、9が設置された状態で、ニッケルメッキが施された鉄製の電池缶10に収納した。そして、正極3及び負極6の集電を行うために、アルミニウム製の正極リード13を正極集電体1から導出して電池蓋11に接続し、ニッケル製の負極リード14を負極集電体4から導出して電池缶10に接続した。 【0039】 そして、この渦巻式電極体が収納された電池缶10に、プロピレンカーボネイトとジエチルカーボネイトとの等容量混合溶媒中にLiPF_(6)を1モル/lの割合で溶解した非水電解液5.0gを注入した。次いで、アスファルトで表面を塗布された絶縁封口ガスケット12を介して電池缶10をかしめることにより、電池蓋11を固定し、電池缶10内の気密性を保持させた。 【0040】 以上のようにして、直径18mm、高さ65mmの円筒形非水電解液二次電池(実施例1)を作製した。 10-2.実施可能要件の判断 本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の平面状集電体及び非水電解液二次電池について、平面状集電体を製造する方法(段落0031?0032)や、当該平面状集電体から非水電解液二次電池を製造する方法(段落0033?0040)が記載されている。 すなわち、発明の詳細な説明は、本件発明について、その物を作ることができ、かつ、その物を使用できるように記載されている。 してみると、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 したがって、無効理由VIは失当である。 10-3.請求人の主張について 請求人は、本件発明の実施例1?3と比較例1の測定結果を図示した本件特許明細書添付の図3、5について、4つの測定点を仮想線で結んでみると、実施例3から延伸させた部分、すなわち、実施例3よりもマット面の表面粗さを小さくした場合には、比較例1よりも容積維持率が低下し、またインピーダンス(の変化)が大きくなることは一目瞭然であり、本件発明には、比較例1よりも効果の劣る範囲が含まれているから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないと主張している。 【図3】 【図5】 ![]() そこで検討するに、本件発明は、容積維持率やインピーダンス(の変化)などの作用効果を発明特定事項にしているわけではないから、当該作用効果の優劣は、本件発明の実施とは関係がない。 したがって、上記主張は採用できない。 11.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由と証拠方法によっては、本件発明1?4についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体 (57)【特許請求の範囲】 [請求項1] 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする非水電解液二次電池。 [請求項2] 非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、 当該平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする平面状集電体。 [請求項3] 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。 [請求項4] 平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、 負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、 上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。 【発明の詳細な説明】 [0001] [発明の属する技術分野] 本発明は、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極を備える非水電解液二次電池に関し、特に平面状集電体の改良に関するものである。 [0002] [従来の技術] 近年の電子技術のめざましい進歩により、電子機器の小型化、軽量化、高性能化が進み、これら電子機器には、エネルギー密度の高い二次電池が要求されている。従来、これら電子機器に使用される二次電池としてニッケル・カドミウム電池や鉛電池などが挙げられるが、これら電池では、エネルギー密度が高い電池を得るという点で不十分であった。 [0003] このような状況下で、正極としてリチウムコバルト複合酸化物などのリチウム複合酸化物を使用し、負極として炭素材料などのようなリチウムイオンをドープ及び脱ドープ可能な物質を使用した非水電解液二次電池、いわゆるリチウムイオン二次電池の研究・開発が行われている。このリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度を有し、自己放電も少なく、サイクル特性に優れ、かつ軽量という優れた特性を有する。 [0004] ところで、上記リチウムイオン二次電池の集電体としては、一般に金属箔が使用されている。特に、銅からなる金属箔は、リチウム金属と合金を形成しない、電気伝導性が良い、低コストといった特徴を有するため、負極集電体として多用されている。この銅箔には、一般に、銅板を機械的にローラ圧延した、いわゆる厚み10?30μmの圧延銅箔が使用されている。しかしながら、圧延銅箔は、圧延装置のサイズの規制から、幅の広いものを得るのが難しい。 [0005] 一方、銅の電解析出によって形成される、いわゆる電解銅箔は、圧延銅箔に比べ比較的幅の広いものも容易に得られる。また、この電解銅箔をリチウムイオン二次電池の負極集電体に使用した場合には、生産性が飛躍的に向上し、電池生産のコストを大幅に下げることができる。 [0006] [発明が解決しようとする課題] しかしながら、市販の電解銅箔を負極集電体に使用したリチウムイオン二次電池においては、電池特性、特に充放電でのサイクル特性が悪く、使用することができなかった。 [0007] そこで、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、上述した問題は、電解金属箔の一方の主面に大きな凹凸が形成されて、電解金属箔の両主面の表面粗さの差が大きすぎるために生じていることがわかった。 [0008] これまで電解金属箔は、一般にその用途が主にプリント基板、フレキシブル基板であり、プラスチックとの密着性を良くするために(アンカー効果をねらうために)、その主面に大きな凹凸を形成していた。そのため、この電解金属箔を非水電解液二次電池の集電体に用いた場合には、活物質表面に沿った変形が十分に起こらないため、活物質と集電体の接触が悪く、容量の劣化やサイクル特性の低下が生じていた。 [0009] 本発明は、上述のような問題点を解決するために提案されたものであり、活物質表面に沿って集電体が十分に変形し、活物質と集電体の接触性を良好に保って、充放電サイクルに優れた安価な非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体を提供することを目的とする。 [0010] [課題を解決するための手段] 本発明に係る非水電解液二次電池は、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、負極の平面状集電体が、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔が、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする。 [0011] また、本発明は、非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、当該平面状集電体が、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔が、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする。 [0012] 本発明に係る非水電解液二次電池においては、上記平面状集電体の負極に、銅の電解析出から形成される電解銅箔を用いたことから、製造上の大きさの制約がなく、電池生産のコストを下げることができる。 また、本発明に係る非水電解液二次電池においては、集電体である電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることから、集電体と活物質との接触性が良く、電気伝導度が大きくなって、充放電サイクルに優れたものとなる。 [0013] 一般に、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極は、活物質とバインダーとを含有する電極構成物質層が集電体の表面に塗布され、その後ロール圧延等でプレスされて作製される。このプレス工程は、電極を所定の密度に圧縮する作用と、適切な導電性を有するように活物質粒子間を接近させる作用とを有する。プレス工程を経た電極は、活物質粒子間、及び活物質と集電体との接触性が良くなり、電気伝導度が大きくなる。 [0014] さらに、十分な電池特性を得るには、活物質粒子間、及び活物質と集電体の距離を小さくすると共に、集電体の形状が活物質表面の形状に沿って変形することが重要である。活物質表面に沿って集電体が変形した場合には、活物質と集電体との接触性がさらに良くなり、電気伝導度がさらに大きくなり、望ましい電池特性が得られる。 [0015] しかし、活物質表面に沿って集電体が変形しない場合には、活物質と集電体の接触部分が少なくなり、電気伝導度が小さい。また、集電体表面の凹凸が大きい場合には、活物質と集電体の接触点も少ない。このような接触抵抗が大きい電極は、充放電を繰り返すと、活物質の充放電に伴う膨張収縮によるストレスや、接着剤であるバインダーの電解液への溶解などによって、集電体と活物質との距離が段々と大きくなり、一部の活物質が充放電に利用できない電気伝導度になって容量の劣化が起きる。 [0016] したがって、この電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより大きい場合、或いはこのマット面と光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μmより大きい場合には、活物質が負極集電体に塗布されてプレスされる際に、集電体が活物質の表面に沿った変形が十分起こらず、また、表面の凹凸が大きいために活物質との接触点が少なく、充放電に伴って容量の劣化が起きて十分な電池特性が得られない。 [0017] [発明の実施の形態] 本発明に係る非水電解液二次電池は、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極を備えて構成され、上記平面状集電体の少なくとも負極が銅の電解析出から形成される電解銅箔からなる。そして、この電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面とは反対側の他方の主面である光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下で形成される。 [0018] なお、一般に、電解銅箔は、銅を主成分とする溶液を電解液とし、回転ドラムを電極として、ドラム表面に形成される。この時、形成された電解銅箔は、ドラム側の主面を光沢面と称し、電解液側のもう一方の主面をマット面と称す。 [0019] 上記電解銅箔は、表面の凹凸が小さく、マット面と光沢面との表面粗さの差が小さいため、プレス工程時に活物質表面に沿った変形が十分に起こり、活物質との接触性が良好に保たれる。 [0020] なお、上述する表面粗さは、JIS規格B0601において、10点平均線粗さ(R_(Z))についての定義がなされている。10点平均粗さ(R_(Z))は、図1に示すように、断面曲線から基準長さLだけ抜き取った部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Y_(p))の絶対値の平均値(|Y_(p1)+Y_(p2)+Y_(p3)+Y_(p4)+Y_(p5)|/5)と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Y_(v))の絶対値の平均値(|Y_(v1)+Y_(v2)+Y_(v3)+Y_(v4)+Y_(v5)|/5)との和を求めたものである。 [0021] 本発明は、電池を構成する物質について特に限定するものではないが、正極が少なくともリチウムを含む金属酸化物からなり、負極がリチウムをドープ及び脱ドープ可能な負極とからなるようないわゆるリチウムイオン二次電池において好適である。 [0022] また、本発明に係るリチウムイオン二次電池に用いられる負極集電体には、電解銅箔が用いられる。電解銅箔は、リチウム金属と合金を形成することがなく、電気伝導性が良く、低コストで生産できるなどの種々の利点を有している。 [0023] 上記電解銅箔の少なくとも一方の面には、銅箔の酸化を抑制するために、防錆被膜が被覆されていてもよい。また、上記電解銅箔の少なくとも一方の面には、銅箔表面と活物質との吸着性を向上させるために、シランカップリング剤からなる膜が被覆されていてもよい。 [0024] なお、上記リチウムイオン二次電池において、正極活物質としては、Li_(x)MO_(2)(但し、Mは、1種類以上の遷移金属を表す。xは、リチウムの組成比である。)を含んだ活物質が使用可能である。かかる活物質としては、Li_(x)CoO_(2)、Li_(x)NiO_(2)、Li_(x)Mn_(2)O_(4)、Li_(x)MnO_(3)、Li_(x)Ni_(y)Co_((1ーy))O_(2)などの複合酸化物が挙げられる。 [0025] 上記複合酸化物は、例えば、リチウム、コバルト、ニッケルの炭酸塩を出発原料とし、これら炭酸塩を組成に応じて混合し、酸素存在雰囲気下600℃?1000℃の温度範囲で焼成することにより得られる。また、出発原料は、炭酸塩に限定されず、水酸化物、酸化物からも同様に合成可能である。 [0026] 一方、負極活物質としては、リチウムをドープ及び脱ドープ可能なものであれば良く、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなど)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂などを適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭などの炭素質材料、あるいは、金属リチウム、リチウム合金(例えば、リチウム-アルミ合金)の他、ポリアセチレン、ポリピロールなどのポリマーも使用可能である。 [0027] 電解液には、リチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解させた電解液が用いられる。ここで有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、スルホラン、アセトニトリル、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの単独もしくは2種類以上の混合溶媒の使用が可能である。 [0028] 電解質には、LiClO_(4)、LiAsF_(6)、LiPF_(6)、LiBF_(4)、LiB(C_(6)H_(5))_(4)、LiCl、LiBr、CH_(3)SO_(3)Li、CF_(3)SO_(3)Liなどの使用が可能である。 [0029] [実施例] 以下、本発明を適用した非水電解液二次電池について、好適な実施例を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。 [0030] 実施例1 本実施例で作製したリチウムイオン二次電池は、図2に示すように、正極集電体1に正極活物質2を塗布してなる正極3と、負極集電体4に負極活物質5を塗布してなる負極6とから構成される。そして、この非水電解液二次電池は、正極3、セパレータ7、負極6、セパレータ7をこの順に積層して積層電極体とし、この積層電極体を多数回巻回されてなる渦巻式電極体の上下に絶縁体8、9を配置した状態で電池缶10に収納してなるものである。 [0031] 先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は、次のようにして作製した。組成1で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm2、液温50℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を得た。この電解銅箔の表面粗さについては、後述する測定法により測定し、表1に示した。 [0032] (組成1) 硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l 硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l チオ尿素 0.4ppm アラビアゴム 0.8ppm 低分子量膠(分子量5000) 0.4ppm Cl^(-) 30ppm 次いで、この電解銅箔をCrO_(3);1g/l水溶液に5秒間浸漬して、クロメート処理を施し、水洗後乾燥させた。なお、ここでは、クロメート処理を行ったが、ベンゾトリアゾール系処理、或いはシランカップリング剤処理、又はクロメート処理後にシランカップリング剤処理を行ってもよいことは勿論である。 [0033] そして、負極6は次のようにして作製した。負極活物質5としては、出発原料として石油ピッチを用い、これを焼成して粗粒状のピッチコークスを得た。この粗粒状ピッチコークスを粉砕して平均粒径20μmの粉末とし、この粉末を不活性ガス中、1000℃にて焼成して不純物を除去し、コークス材料粉末を得た。 [0034] このようにして得られたコークス材料粉末を90重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10重量部の割合で混合して負極合剤を調整した。次いで、この負極合剤を溶剤であるN-メチルピロリドンに分散させてスラリーにした。そして、このスラリーを上述した厚さ12μmの帯状の電解銅箔である負極集電体4の両面に塗布し、乾燥後ローラプレス機で圧縮形成して、帯状負極6を得た。この帯状負極6は、成形後の負極合剤の膜厚が両面共に90μmで同一であり、その幅が55.6mm、長さが551.5mmに形成される。 [0035] 次に、正極3は、次にようにして作製した。正極活物質(LiCoO_(2))2は、炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルと混合し、空気中で900℃、5時間焼成してLiCoO_(2)を得た。 [0036] このようにして得られた正極活物質(LiCoO_(2))2を91重量%、導電剤としてグラファイトを6重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを3重量%の割合で混合して正極合材を作製し、これをN-メチル-2ピロリドンに分散してスラリー状とした。次に、このスラリーを厚み20μmの帯状のアルミニウムからなる正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥後ローラープレス機で圧縮成形して厚み160μmの帯状正極3を得た。この帯状正極3は、成形後の正極合剤の膜厚が表面共に70μmであり、その幅が53.6mm、長さが523.5mmに形成される。 [0037] このようにして作製された帯状正極3と、帯状負極6と、厚さが25μm、幅が58.1mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ7とを、上述したように積層し、これを積層電極体とした。この積層電極体は、その長さ方向に沿って負極6を内側にして渦巻型に多数回巻回され、最外周セパレータの最終端部をテープで固定されて、渦巻式電極体となる。この渦巻式電極体の中空部分は、その内径が、3.5mm、外形が17mmに形成される。 [0038] 上述のように作製された渦巻式電極体を、その上下両面に絶縁板8、9が設置された状態で、ニッケルメッキが施された鉄製の電池缶10に収納した。そして、正極3及び負極6の集電を行うために、アルミニウム製の正極リード13を正極集電体1から導出して電池蓋11に接続し、ニッケル製の負極リード14を負極集電体4から導出して電池缶10に接続した。 [0039] そして、この渦巻式電極体が収納された電池缶10に、プロピレンカーボネイトとジエチルカーボネイトとの等容量混合溶媒中にLiPF_(6)を1モル/lの割合で溶解した非水電解液5.0gを注入した。次いで、アスファルトで表面を塗布された絶縁封口ガスケット12を介して電池缶10をかしめることにより、電池蓋11を固定し、電池缶10内の気密性を保持させた。 [0040] 以上のようにして、直径18mm、高さ65mmの円筒形非水電解液二次電池(実施例1)を作製した。 [0041] 実施例2 先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は次のようにして作製した。組成2で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm2、液温50℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を作成し、この電解箔にクロメート処理を行った。なお、この電解銅箔の表面粗さについては、後述する測定方法により測定し、表1に示した。 [0042] (組成2) 硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l 硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l 1-メルカプト3-プロパンスルホン酸ナトリウム 1ppm ヒドロキシエチルセルロース 4ppm 低分子量膠(分子量3000) 4ppm Cl^(-) 30ppm 上述した電解金属箔を使用した以外は、実施例1と同様にして円筒形非水電解液二次電池(実施例2)を作製した。 [0043] 実施例3 先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は次のようにして作製した。組成3で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm^(2)、液温58℃の条件で電解することによって、厚み9μmの電解銅箔を得た。 [0044] (組成3) 硫酸銅(CuSO4・5H2O) 350g/l 硫酸(H2SO4) 110g/l 膠(分子量60000) 2ppm Cl- 30ppm この電解銅箔の表面粗さは、後述する測定方法により測定した結果、光沢面がRZ=2.00μm、マット面がRZ=3.52μmであった。 [0045] 次いで、この電解銅箔に、組成4で示される電解液からなる銅電解浴を用いて、電流密度6A/dm2、液温58℃でマット面に光沢銅メッキを施し、この電解銅箔の表面粗さを後述する測定方法により測定し、表1に示した。なお、本発明では、マット面に光沢銅メッキを施した面もマット面と表現する。そして、この銅メッキが施された電解銅箔に同様にクロメート処理を施した。 [0046] (組成4) 硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 240g/l 硫酸(H_(2)SO_(4)) 60g/l 膠 2ppm 日本シェーリング(株)製カバシラド210 メイキャップ剤 10cc/l 光沢剤(A) 0.5cc/l 光沢剤(B) 補充にのみ使用 Cl^(-) 30ppm 光沢剤の補充は、電流量1000Ahに対して光沢剤(A)及び光沢剤(B)を各々300cc添加した。 [0047] 上述した電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様にして円筒形非水電解液二次電池(実施例3)を作製した。 [0048] 比較例1 先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は次のようにして作製した。組成5で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm2、液温58℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を作成し、この電解銅箔の表面粗さを後述する測定方法により測定し、表1に示した。そして、この電解銅箔にクロメート処理を行った。 [0049] (組成5) 硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l 硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l 膠 2ppm Cl^(-) 30ppm 上述した電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様にして円筒形非水電解液二次電池(比較例1)を作製した。 [0050] そして、実施例1?実施例3及び比較例1で得られた電解銅箔において、その表面粗さ(10点平均粗さR_(Z))を表面粗さ計(株式会社小坂研究所製SE-3C型)で調べた。この結果を表1に示す。なお、光沢面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを0.8mmとし、マット面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを2.5mmとした。 [0051] [表1] ![]() [0052] また、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル後の容量維持率を調べた。その結果を図3、図4及び表2に示す。 [0053] さらに、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル前後のインピーダンスの変化を調べた。その結果を図5、図6及び表2に示す。 [0054] [表2] ![]() [0055] 図3、図5及び表2に示すように、マット面の表面粗さが3μm以上になると容量維持率が大幅に低下し、インピーダンスの変化が大きくなるため、マット面の表面粗さは、3μm未満が好ましい。また、図4及び図6に示すように、マット面と光沢面との表面粗さの差が大きくなるほど容量維持率が低くなり、インピーダンスが大きくなっている。このことから、マット面と光沢面との表面粗さの差は、2.5μm未満であることが好ましい。 [0056] また、電解銅箔のマット面の粗さは、実施例1及び実施例2のように、最初の電解条件によって規制してもよいし、実施例3のように、銅メッキを後から施して規制してもよい。 [0057] 以上のことから、上述した非水電解液二次電池においては、圧延銅箔に比べ製造上大きさの制約がなく、生産性が高い電解銅箔を負極集電体に用いていることから、生産性が向上し、電池生産コストを大幅に下げることができる。 [0058] さらに、上述した非水電解液二次電池においては、集電体である電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが3.0μmより小さく、光沢面とマット面との表面粗さの差が1.3μm以下であることから、集電体と活物質との接触性が良く、電気伝導度が大きくなって、充放電サイクルに優れたものとなる。 [0059] [発明の効果] 以上の説明からも明らかなように、本発明に係る非水電解液二次電池は、集電体に銅を電解析出して形成される電解銅箔を用いてなることから、電池の生産性を向上させ、電池生産のコストを下げることができる。 [0060] また、この電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下で形成される。このことから、本発明に係る非水電解液二次電池においては、集電体と活物質との接触性が良く、電気伝導度が大きくなって、充放電サイクルに優れたものとなる。 【図面の簡単な説明】 [図1]10点平均粗さ(R_(Z))の定義を説明するための断面図である。 [図2]本発明を適用した円筒形非水電解液二次電池の概略断面図である。 [図3]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面の表面粗さと容量維持率との関係を示す特性図である。 [図4]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面と光沢面との表面粗さの差と、容量維持率との関係を示す特性図である。 [図5]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面の表面粗さと100サイクル後のインピーダンスとの関係を示す特性図である。 [図6]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面と光沢面との表面粗さの差と、100サイクル後のインピーダンスとの関係を示す特性図である。 [符号の説明] 1 正極集電体、2 正極活物質、3 正極、4 負極集電体、5 負極活物質、6 負極、7 セパレータ、8 絶縁体、9 絶縁体、10 電池缶、11 電池蓋、12 絶縁封口ガスケット、13 正極リード、14 負極リード、 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2012-01-12 |
結審通知日 | 2012-01-17 |
審決日 | 2012-02-09 |
出願番号 | 特願平8-113710 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(H01M)
P 1 113・ 841- YA (H01M) P 1 113・ 161- YA (H01M) P 1 113・ 537- YA (H01M) P 1 113・ 855- YA (H01M) P 1 113・ 536- YA (H01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 千歌子 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 田中 則充 |
登録日 | 2005-11-18 |
登録番号 | 特許第3742144号(P3742144) |
発明の名称 | 非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体 |
復代理人 | 小川 直樹 |
復代理人 | 小川 直樹 |
代理人 | 黒田 健二 |
代理人 | 上山 浩 |
代理人 | 吉見 京子 |
代理人 | 吉村 誠 |
代理人 | 松本 孝 |
復代理人 | 小川 直樹 |
代理人 | 上山 浩 |
代理人 | 石井 良夫 |
代理人 | 上山 浩 |