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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1274167
審判番号 不服2011-23707  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-02 
確定日 2013-05-16 
事件の表示 特願2005-315470「電子機器およびそのデータ表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月17日出願公開、特開2007-122519〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は,平成17年10月28日を出願日とする出願であって,
平成20年9月16日付けで審査請求がなされ,
平成23年2月25日付けで拒絶理由通知(同年3月8日発送)がなされ,
同年5月9日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,
同年7月28日付けで拒絶査定(同年8月2日謄本送達)がなされ,
同年11月2日付けで審判請求がされ,
その後,当審において平成24年12月18日付けで拒絶理由通知(同年同月25日発送)がなされ,
平成25年2月25日付けで意見書の提出,及び手続補正がなされたものであって,
その請求項1に係る発明は,平成25年2月25日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下,「本願発明」という。)

「作成されたデータがあるフォルダに対して,当該フォルダ内のデータを表示する場合,データの作成または更新が行われてからアクセス可能時間内のデータのみ表示する制御手段を
有する電子機器。」


2.引用文献

これに対して,当審において平成24年12月18日付けで通知した拒絶の理由に引用した,特開2003-244619号公報(以下,「引用文献」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下,同じ。)。

A「【請求項1】 撮像部と,
内蔵メモリと,
メモリを装着する装着部と,
前記装着部に装着されたメモリが書換え制限メモリであるか判別する判別部と,
前記装着部に装着されたメモリが書換え制限メモリである場合に,撮像した画像データを前記内蔵メモリに保持し,前記所定時間経過後に前記内蔵メモリに保管されていた画像データを前記書換え制限メモリに記録するように制御する制御手段とを有することを特徴とするデジタルカメラ。」

B「【0125】図20における第三の実施の形態では,Rawデータバッファ11の代わりにバッファメモリ311を備える点が異なる。
【0126】第三の実施の形態によるデジタルカメラ31は,スロット2にライトワンス記憶媒体4のメモリカードが装着されているときでも,撮像して得られた画像データを揮発性のバッファメモリ311に一時保管するように制御することで使用者が必要としない画像データがライトワンス記憶媒体4に記録されることを極力排除することを特徴とする。また,従来から連写用,画像処理用に使用される揮発性バッファメモリを兼用して使用することでコストアップすることなく実現できる。」

C「【0141】次に,デジタルカメラ31において撮影操作が行われたときに実行する記録制御について説明する。
【0142】一般に表示部を備えるデジタルカメラでは,撮影した画像を表示で確認して必要でない画像であれば削除する機能を備える。また,デジタルカメラでは,撮影直後に撮影した画像を表示部に所定時間だけ再生し,その時間内に削除ボタンを操作することにより,撮影した画像データをメモリカードから削除する機能を備えているものがある。この機能を使用することにより,撮影直後に撮影した画像を見て気に入らなければ削除して撮影しなおすといった作業が簡単に行える。
【0143】しかし,デジタルカメラ31にライトワンス記憶媒体4が装着されている場合には,一度記録してしまうと書換えすることができないので,削除ボタンを操作して削除しても記録してしまったメモリ容量を復活することはできない。
【0144】本発明の実施の形態3によるデジタルカメラ31は,装着されているメモリカードがライトワンス記憶媒体4の場合には,撮影後の所定時間内は画像データをライトワンス記憶媒体4に記録せず,バッファメモリ311に一時保管しておく。そして,所定時間が経過した後にバッファメモリ311からライトワンス記憶媒体4に画像データをコピーする。このように制御することにより,デジタルカメラ31に装着されたメモリカードが書換え可能記憶媒体3でもライトワンス記憶媒体4でも同様な機能を実現できる。」

D「【0246】次に,デジタルカメラ31における連写撮影制御について説明する。
【0247】連写撮影では,連続して数コマ撮影されるため,全ての画像データが必要でない可能性が高い。そのため,デジタルカメラ31では,ライトワンス記憶媒体4に記録する前に記録するか否かを問い合わせるようにした。
【0248】図42は,デジタルカメラ31で実行される連写撮影制御を示すフローチャート図である。本フローは,連写モードに設定されることによりスタートする。
【0249】先ず,ステップS2301では,撮影操作が行われたか否かを検出し,撮影操作が行われた場合にはステップS2302に進み,撮影操作が行われていない場合には撮影操作が行われたか検出を継続する。そして,ステップS2302では,装着されているメモリカードがライトワンス記憶媒体4であるか否かを検出し,ライトワンス記憶媒体4である場合にはステップS2303に進み,ライトワンス記憶媒体4でない場合にはステップS2310に進む。そして,ステップS2303では,撮像した画像データをバッファメモリ311に保管する。このとき,画像データはメモリカードに記録するファイル形式に生成されている。
【0250】次に,ステップS2304では,連写撮影が終了したか否かを検出する。終了している場合にはステップS2305に進み,終了していない場合にはステップS2303に戻る。そして,ステップS2305では,撮影した画像をLCD表示部6に再生し,再生した画像をライトワンス記憶媒体4に記録せずに削除するか問い合わせを行う。続いて,ステップS2306では,記録せずに削除する画像が選択されたか否かを検出する。選択された場合にはステップS2307に進み,選択されない場合にはステップS2308に進む。そして,ステップS2307では,削除選択されなかった画像データをライトワンス記憶媒体4に記録するとともに,バッファメモリ311に記録されている画像データを削除する。一方,ステップS2308では,画像をLCD表示部6に再生してから所定時間を経過したか否かを検出し,経過している場合にはステップS2309に進み,経過していない場合にはステップS2306に戻る。そして,ステップS2309では,撮影された連写画像を全てライトワンス記憶媒体4に記憶し,バッファメモリ311から画像データを削除する。
【0251】また,ライトワンス記憶媒体4でなかった場合に,ステップS2310では,バッファメモリ311に保管し,画像処理するとともに,メモリカードに記録する準備ができた画像データをメモリカードに記録していく。次に,ステップS2311では,撮影が終了したか否かを検出し,終了していれば本フローを終了し,終了していなければステップS2310に戻る。」

E「【0335】第四の実施の携帯によるデジタルカメラ31は,ライトワンス記憶媒体4への記録指示,またはライトワンス記憶媒体4に記録せずに削除する指示があるまでバッファメモリ311内に画像データを保持することを特徴とする。デジタルカメラ31では,バッファメモリ311内の領域を2にわけ,一方の領域では,通常のバッファメモリとして機能するための作業領域として画像処理等に使用され,他方の領域では,処理後の画像データを一時的に保管する一時保管領域として使用される。
・・・(中略)・・・
【0337】また,バッファメモリ311に画像データを格納するときに,撮影時,記録先に設定されていたメモリカードのフォルダ情報も格納する。そして,バッファメモリ311からライトワンス記憶媒体4に画像データを記録するときに,フォルダ情報を利用することにより,現在,設定されている記録先フォルダが撮影時に設定されていた記録先フォルダと異なっていても,撮影時に設定されていた記録先フォルダに記録することができる。これにより,同じフォルダに記録するように撮影された一連の画像データが異なるフォルダに記録されてしまうことがない。」

以下に,引用文献の記載事項について検討する。

(ア)引用文献は,上記Aに記載の“デジタルカメラ”の発明について説明する文献であり,また上記B?Dの記載は,上記“デジタルカメラ”の発明のうちの「第三の実施の形態」に係る発明について説明するものであるところ,
上記Cの「本発明の実施の形態3によるデジタルカメラ31は,装着されているメモリカードがライトワンス記憶媒体4の場合には,撮影後の所定時間内は画像データをライトワンス記憶媒体4に記録せず,バッファメモリ311に一時保管しておく。そして,所定時間が経過した後にバッファメモリ311からライトワンス記憶媒体4に画像データをコピーする。」との記載から,引用文献には,
“装着されているメモリカードがライトワンス記憶媒体の場合には,撮影後の所定時間内は画像データをライトワンス記憶媒体に記録せず,バッファメモリに一時保管し,
所定時間が経過した後にバッファメモリからライトワンス記憶媒体に画像データをコピーするデジタルカメラ”が記載されているといえる。

(イ)上記「第三の実施の形態」である“デジタルカメラ”に関し,
上記Dは,「連写撮影」時の制御について記載されているところ,
上記Dの「ステップS2304では,連写撮影が終了したか否かを検出する。終了している場合にはステップS2305に進み,・・・ステップS2305では,撮影した画像をLCD表示部6に再生し」との記載から,“連写撮影”時には,“連写撮影が終了したか否かの検出を行い,終了している場合には撮影した画像をLCD表示部に再生”することが記載されており,
また,上記Dの「ステップS2308では,画像をLCD表示部6に再生してから所定時間を経過したか否かを検出し,経過している場合にはステップS2309に進み,・・・ステップS2309では,撮影された連写画像を全てライトワンス記憶媒体4に記憶し,バッファメモリ311から画像データを削除する。」との記載から,同じく“連写撮影”時には,“画像をLCD表示部に再生してから所定時間を経過したか否かを検出し,経過している場合には,撮影された連写画像を全てライトワンス記憶媒体に記憶し,バッファメモリから画像データを削除する”ことが記載されている。
したがって,引用文献には,
“連写撮影時には,
連写撮影が終了したか否かの検出を行い,終了している場合には撮影した画像をLCD表示部に再生し,
画像をLCD表示部に再生してから所定時間を経過したか否かを検出し,経過している場合には,撮影された連写画像を全てライトワンス記憶媒体に記憶し,バッファメモリから画像データを削除する”ことが記載されているといえる。

以上,(ア)及び(イ)を踏まえると,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

装着されているメモリカードがライトワンス記憶媒体の場合には,撮影後の所定時間内は画像データをライトワンス記憶媒体に記録せず,バッファメモリに一時保管し,
所定時間が経過した後にバッファメモリからライトワンス記憶媒体に画像データをコピーするデジタルカメラであって,
連写撮影時には,
連写撮影が終了したか否かの検出を行い,終了している場合には撮影した画像をLCD表示部に再生し,
画像をLCD表示部に再生してから所定時間を経過したか否かを検出し,経過している場合には,撮影された連写画像を全てライトワンス記憶媒体に記憶し,バッファメモリから画像データを削除するデジタルカメラ。


3.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

3-1.引用発明の「画像データ」は,本願発明の「データ」に対応するものである。

3-2.ここで,引用発明の「LCD表示部に再生してから所定時間を経過したか否かを検出し,経過している場合には」,「全てライトワンス記憶媒体に記憶し,バッファメモリから」「削除する」対象である「画像データ」とは,「バッファメモリ」内の「画像データ」であるところ,
当該「バッファメモリ」内の「画像データ」に係る「画像」の「LCD表示部」での「再生」すなわち「表示」は,「連写撮影が終了したか否かを検出」し「終了している」と「検出」されてから,すなわち「撮影」の「終了」「検出」が行われてから開始され,また,「所定時間を経過したか否かを検出し,経過している場合には,撮影された連写画像を全てライトワンス記憶媒体に記憶し,バッファメモリから画像データを削除」した後は,「削除」された「バッファメモリ」内の「画像データ」は表示できないことから,「所定時間」「経過」後の「バッファメモリ」からの「削除」をもって終了しており,
したがって,引用発明の「バッファメモリ」内の「画像データ」の「表示」が可能な状態は,「撮影」の「終了」「検出」が行われてから開始し,「バッファメモリから画像データを削除」したことをもって終了しているといえる。
そして,引用発明の,当該“開始”と“終了”の間の「表示」が可能な状態についてさらに検討すると,上記Dの「ステップS2308では,画像をLCD表示部6に再生してから所定時間を経過したか否かを検出し,経過している場合にはステップS2309に進み,経過していない場合にはステップS2306に戻る。」,「ステップS2306では,記録せずに削除する画像が選択されたか否かを検出する。」との記載から,「画像」の「LCD表示部」での「再生」が行われてから「所定時間を経過した」と「検出」されるまでの間は,継続して,ユーザによる「記録せずに削除する画像」の「選択」を「検出」可能な状態であると解され,またその際に,ユーザにより「画像」を「選択」可能とするために「画像」を「表示」することは,当業者にとって自明な事項であるといえる。
したがって,引用発明において,「撮影」の「終了」「検出」が行われてから,「バッファメモリから画像データを削除」するまでの間,すなわち「所定時間」の間が,「バッファメモリ」内の「画像データ」の「表示」可能な状態であり,換言すれば,引用発明は,「撮影」の「終了」「検出」が行われてから「所定時間」内の「バッファメモリ」内の「画像データ」のみを表示可能とする,ものということができる。

3-3.一方,本願発明の「データの作成または更新が行われてからアクセス可能時間内のデータのみ表示する」における「データ」とは,本願発明の詳細な説明を記載を参酌すると,(注:下線は,参考のため当審で付加したものである。)
「【0042】
カメラのアプリケーションにより,ファイルの新規作成,または更新要求としてメモリ管理部16に撮影した写真のデータ(画像ファイル)が渡されると(ST11),メモリ管理部16は,一時保存バッファ17にファイルを作成する(続けて何枚か写真を撮影した場合も同様に一時保存バッファ17に保存される)。一時保存バッファ17にファイルが作成されると,予めファイルの種類によって決められている設定時間(図2の例では10分)タイマ11が起動される(ST12,ST13)。
カメラのアプリケーションで写真を見ようとすると,フォルダB(図2)がセキュリティ設定されているときは,表示可能なのはステップST11?ST13の処理の直前に撮影した画像ファイルのみとなる。
入力部12のキー操作がないとタイムアウトになるので(ST14,ST15),タイムアウト処理としてステップST12において一時保存バッファ17に保存されている画像ファイルは自動的に保存用メモリ18の画像用フォルダBに移動される(ST16)。・・・(後略)」,
「【0044】
ブラウザのアプリケーションにより,メモリ管理部16に履歴のデータが渡される(ST11)。一時保存バッファ17にファイルが作成されると予めファイルの種類によって決められている設定時間(図2の例では5分)タイマ11が起動される(ST12,ST13)。
ブラウザのアプリケーションで履歴ファイルを見ようとすると,フォルダDがセキュリティ設定されているときは,表示可能なのはステップST11?ST13の処理の直前に閲覧したWebページのみとなる。
入力部12のキー操作がないとタイムアウトになるので(ST14,ST15),タイムアウト処理として,ステップST12において一時保存バッファ17に保存されている履歴ファイルは自動的に履歴用フォルダDに移動される(ST16)。・・・(後略)」

との記載があり,これによれば,「作成」または更新され,「設定時間」(請求項の「アクセス可能時間」に相当)内にのみ「表示」可能な「データ」とは,「ステップST11?ST13の処理の直前に」作成され,「フォルダ」に「移動される」“前”のデータ,すなわち「一時保存バッファ」内の「データ」であり,よって,本願発明の「データの作成」または更新「が行われてからアクセス可能時間内のデータのみ表示する」における「データ」とは,“一時保存バッファ内”の「データ」を含むものと認められる。

3-4.以上から,引用発明の「バッファメモリ」内の「画像データ」,「所定時間」は,本願発明の“一時保存バッファ”内の「データ」,「アクセス可能時間」にそれぞれ相当し,
また,引用発明の「デジタルカメラ」は,本願発明の「電子機器」に相当するとともに,
引用発明の「画像」の「撮影」の「終了」「検出」と,本願発明の「データの作成または更新」は,ともに,“データ作成に伴う処理”である点で共通し,
よって,
引用発明の「撮影」の「終了」「検出」が行われてから「所定時間」内の「バッファメモリ」内の「画像データ」のみを表示可能とするための手段と,本願発明の「作成されたデータがあるフォルダに対して,当該フォルダ内のデータを表示する場合,データの作成または更新が行われてからアクセス可能時間内のデータのみ表示する制御手段」とは,ともに,“データ作成に伴う処理が行われてからアクセス可能時間内のデータのみ表示する制御手段”である点で共通する。

以上の対比から,両者は,
「データ作成に伴う処理が行われてからアクセス可能時間内のデータのみ表示する制御手段を有する電子機器。」

である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:「制御手段」による「データ」の「表示」として,本願発明においては,「作成されたデータがあるフォルダに対して,当該フォルダ内のデータを表示する場合」に行うとしているのに対し,引用発明においては,そのような「場合」による条件を付していない点。

相違点2:「アクセス可能時間内のデータのみ表示する」期間として,本願発明は,「データの作成または更新が行われてから」アクセス可能時間内としているのに対し,引用発明は,「撮影の終了検出が行われてから」所定時間内としている点。


4.当審の判断

そこで,上記相違点1及び2について検討する。

(相違点1について)
撮影(「作成」に相当)された画像データを有するフォルダに対して,フォルダ内に保存されるデータを表示する場合において,削除されるまでのアクセス可能時間内において表示可能とすることは,引用文献における上記D及びEに記載されており(上記Eに記載の「バッファメモリ」内の「画像データ」は,「メモリカードのフォルダ情報」を「格納」していることから,「ライトワンス記憶媒体」である「メモリカード」の「記録先フォルダ」内に「保存」されることになる「画像データ」であるといえるとともに,「バッファメモリ」自体においても「フォルダ」情報をもとに「画像データ」が保存されているものでもあり,上記Dには,上記「バッファメモリ」内の「画像データ」が,前提として「LCD表示部6に再生」されうること、すなわち表示可能であることが記載されている。),
引用発明における,「ライトワンス記憶媒体」に対応し「所定時間」経過後に移動するところの「バッファメモリ」内の「画像データ」の表示において,上記引用文献の上記D及びEの記載事項である,作成されたデータを有するフォルダに対して,フォルダ内のデータを表示する場合において,アクセス可能時間内のデータを表示可能とする技術を適用し,「作成されたデータがあるフォルダに対して,当該フォルダ内のデータを表示する場合」に行うものとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
よって,相違点1は格別のものではない。

(相違点2について)
データへのアクセスを時間的に無制限に行わせないという「アクセス制限」という技術思想の下において,「アクセス可能時間」を「データの作成」からとするか「作成」の「終了」「検出」からとするかに,技術上格別な差異はなく,いずれも一般的に行われている事項であることから,当業者が必要により適宜設定して行う設計的事項である。
してみれば,引用発明において,「データの作成または更新が行われてから」アクセス可能時間内のデータのみ表示するようにすることは,当業者が適宜になし得ることにすぎない。
よって,相違点2は格別のものではない。

(本願発明の作用効果について)
そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,引用発明及び上記引用文献の記載事項から当業者が容易に予測することができる程度のものであって,格別のものとはいえない。

(平成25年2月25日付けの意見書における請求人の主張について)
請求人は,上記意見書において,本願発明と引用文献に記載された発明との間に相違点がある旨の主張をしているので,その点について検討する。

請求人は,上記意見書の「(b)本願発明と引用発明の対比」において,
「本願発明は,『作成されたデータがあるフォルダに対して,当該フォルダ内のデータを表示する場合,データの作成または更新が行われてからアクセス可能時間内のデータのみ表示する』ことに特徴があります。
これに対し,審判官殿も御認識の通り,引用発明1は,画像データが撮像されると,所定時間経過後に内蔵メモリに保管されていた画像データを書換え制限メモリに記録するものであるので,当該書換え制限メモリに対応するデータを表示する場合,画像データの撮像が行われてから所定時間経過後のデータのみ表示するものであって,画像データの撮像が行われてから所定時間内のデータのみ表示するものではなく,上述した本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載ではありません。」
と主張し,
「上述のような相違点に起因して,本願発明は,引用発明に比べて,作成されたデータがあるフォルダ内のデータを表示する場合には,作成または更新が行われたデータのみ表示するので,利便性も確保しながら,セキュリティも確保することができるという顕著な効果を奏します。」と述べている。

しかしながら,本願発明の「データの作成または更新が行われてからアクセス可能時間内のデータのみ表示する」中の「データ」に対応する,引用発明の内蔵メモリすわなち「バッファメモリ」内の「画像データ」についても,撮影の終了検出が行われてからアクセス可能な時間を表す「所定時間」内の「画像データ」のみを表示することとなっており,このことから,引用文献には,「撮影の終了検出が行われてからアクセス可能時間内のデータのみ表示する」という構成が示されていると言え,上記「4.当審の判断」の「(相違点2について)」で述べたと同様の理由により,本願発明は,上記引用発明及び引用文献に記載の事項から当業者が適宜になし得ることにすぎないということができ,また,当該本願発明によりもたらされる効果も,上記引用発明及び引用文献に記載の事項より予想できる程度を越えるものではないことから,請求人の主張を採用することはできない。


5.むすび

以上のとおり,本願発明は,上記引用発明及び引用文献に記載の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-13 
結審通知日 2013-03-19 
審決日 2013-04-01 
出願番号 特願2005-315470(P2005-315470)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 間野 裕一  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 酒井 伸芳
田中 秀人
発明の名称 電子機器およびそのデータ表示方法  
代理人 佐藤 隆久  

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